JP3712100B2 - 回転子の組立方法、回転子、ステッピングモータ - Google Patents
回転子の組立方法、回転子、ステッピングモータ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種モータの回転子、回転子の組立方法、ステッピングモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、カメラ、ビデオカメラのフォーカシングやズーミング、プリンターのの印字機能に小型のステッピングモータが用いられている。このようなステッピングモータには、その用途に関連した理由から、低消費電力であること、できるだけ低い入力値(電流)で駆動に必要なトルクが得られること、作動精度を高めるために振動を低くすること、駆動の高速化のために高周波数域まで回転が可能であること、角度精度が良いこと等の特性を要求される。このようにモータの小型化、高性能化に伴い、回転子の寸法精度の向上が要求される。
【0003】
図12は、従来のステッピングモータの回転子の構造を示す縦断面図である。同図に示すように、回転子10は、シャフト11(回転軸)と、金属板121を積層してなる一対のコア12と、両コア12の間に配置された永久磁石13とで構成されている。
【0004】
また、ローレット加工によって、シャフト11の外周面111の一部に、シャフト11の回転方向の滑りを防止するための、ローレット部(凹凸)112が形成されている。シャフト11とコア12とは、このローレット部112の凹凸を介して圧着固定されている。
【0005】
しかし、このような従来の回転子10では、ローレット加工する際のシャフトに加わる応力によりシャフト11自身が変形し、要求される真直度が得られないという欠点がある。
【0006】
また、ローレット部112に成形される凹凸は、高い寸法精度で形成することができないため、シャフト11の径寸法にばらつきが生じ、シャフト11とコア12との固定力に不均一が生じやすい。さらには、コア4の真直度が要求される基準よりも大きくなる。
【0007】
また、ローレット部112の代わりに、例えば、ステーキング加工によるステーキング(圧痕)を形成する方法もあるが、この場合でも、前記ローレット加工と同様に、加工時に、シャフト11の変形を起こし、同様の欠損を生じる。
【0008】
このようなことから、従来の回転子10では、シャフト11をコア12の孔内に嵌入したとき、シャフト11とコア12の高い同軸度を得ることができず、固定強度にもばらつきが生じる。したがって、回転子10を回転させたとき、偏心回転により振動・騒音が生じ、モータにおける回転精度の向上・高性能化の妨げとなっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、シャフトとコアとの同軸度を向上し、モータの高性能化に寄与する回転子、その組立方法およびステッピングモータを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(19)の本発明により達成される。
【0011】
(1) 金属板を複数枚積層してなるコアと、前記コアの中心部に固定されるシャフトとを備えた回転子の組立方法であって、
前記シャフトの外周部に硬化層を形成する工程と、
そのシャフトを前記コアの中心部に形成された孔内に圧入する工程とを有することを特徴とする回転子の組立方法。
【0012】
(2) 金属板を複数枚積層してなるコアと、前記コアの中心部に固定されるシャフトとを備えた回転子の組立方法であって、
前記シャフトの外周部に硬化層を形成する工程と、
前記硬化層の表面を研磨して、その厚さ方向の一部を除去する工程と、
そのシャフトを前記コアの中心部に形成された孔内に圧入する工程とを有することを特徴とする回転子の組立方法。
【0013】
(3) 前記研磨による前記硬化層の除去量は、平均厚さ20μm以下である上記(2)に記載の回転子の組立方法。
【0014】
(4) 前記研磨による前記硬化層の除去量は、研磨以前の硬化層の厚さの0.03〜0.85倍である上記(2)または(3)に記載の回転子の組立方法。
【0015】
(5) 前記コアは、前記孔の内面の形状により、その少なくとも一部が、前記硬化層の表面に圧着されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0016】
(6) 前記コアを構成する各金属板のうちの少なくとも1つの金属板は、前記孔内において、当該金属板の厚さ方向の一部が、前記硬化層の表面に圧着されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0017】
(7) 前記コアを構成する各金属板のうちの少なくとも1つの金属板が、前記シャフトの圧入に関与している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0018】
(8) 前記コアを構成する各金属板のうちの少なくとも1つの金属板は、前記孔内において、当該金属板の周方向の一部が、前記硬化層の表面に圧着されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0019】
(9) 前記硬化層の形成は、熱処理によりなされたものである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0020】
(10) 処理温度が450〜650℃、処理時間が0.1〜3時間である上記(9)に記載の回転子の組立方法。
【0021】
(11) 前記硬化層の形成は、窒化処理によりなされたものである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0022】
(12) シャフトの圧入工程の直前における前記硬化層の厚さが、3〜100μmである上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0023】
(13) 前記シャフトは、軟磁性または非磁性材料で構成される上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0024】
(14) 前記コアの内周面のビッカース硬度をHv1、前記硬化層のビッカース硬度をHv2としたとき、Hv2>Hv1である上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0025】
(15) 前記コアの内周面のビッカース硬度をHv1、前記シャフトの前記硬化層より中心側の部分のビッカース硬度をHv3としたとき、Hv1≧Hv3である上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0026】
(16) 前記シャフトの前記コアに対し圧着している部分の圧着力は、20〜700kgf/mm2である上記(1)ないし(15)のいずれかに記載の回転子の組立方法。
【0027】
(17) 前記回転子は、ステッピングモータに用いられるものである上記(1)ないし(16)いずれかに記載の回転子の組立方法。
【0028】
(18) 上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の回転子の組立方法により組み立てられたことを特徴とする回転子。
【0029】
(19) 上記(18)に記載の回転子をインナーロータとして備えたことを特徴とするステッピングモータ。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の回転子、回転子の組立方法およびステッピングモータを添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明で、シャフトの回転軸方向(図1、3、6、7、8、9、11中の上下方向)を、単に「軸方向」、シャフトの周軸方向を、「周方向」と言う。
【0031】
図1は、本発明の回転子の第1実施形態を示す縦断面図、図2は、図1中の円形で囲んだ部分の拡大図である。
【0032】
図1、図2に示す回転子1は、後述する本発明の回転子の組立方法により組み立てられたものであり、シャフト(回転軸)2と、永久磁石3と、一対のコア4とを備えている。この回転子1は、例えば、PM型、VR型、HB型のステッピングモータにおけるステータ(図示せず)の内側に配置されるインナーロータ型の回転子である。以下、これらの構造について詳述する。
【0033】
図1に示すように、回転子1は、一対のコア4を有し、各コアの中心部には、孔42が形成されている。シャフト2は、この孔42に圧入され、固定されている。このとき、シャフト2の外周面21は、後述するような孔42の内面の形状により、コア4の少なくとも一部に圧着されている。また、永久磁石3は、一対のコア4により挟持され、回転子1を構成している。
【0034】
本実施形態において、コア4は、複数枚の円盤形状の金属板41を積層、一体化したものである。また、各金属板41同士の固定は、例えば、接着剤による接着、溶接、カシメ等の方法により行なわれている。
【0035】
図2に示すように、コア4を構成する各金属板41のうちの少なくとも一部の金属板41は、このコア4の孔42内において、この金属板41の厚さ方向の一部が、シャフト2の外周面21、すなわち硬化層5の表面に圧着されている。特に、コア4を構成する金属板41の全てが、このような圧着に関与していることが好ましい。
【0036】
各金属板41の厚さをT1、各金属板41のシャフト2に圧着されている部分の厚さをT2としたとき、T2/T1は、特に限定されないが、T2/T1が、0.1〜0.9であることが好ましく、0.3〜0.8がより好ましい。T2/T1が、0.1未満であると、シャフト2とコア4との固定が不安定となり易く、また、0.9超であると、固着力は高いが、シャフト2を圧入する際に、高い押込力が必要となる。
【0037】
図2に示すように、金属板41の内周面(孔42に臨む部分)の形状は、金属板41の片面側の角部が、テーパ状に欠損した形状であり、この欠損部6以外の部分が、シャフト2の外周面21(硬化層5の表面)と圧着されている。
【0038】
このように、金属板41の内周面の形状により、金属板41のシャフト2に対する圧着面積を調整することができる。この圧着面積を所望に設定することにより適度な圧着力で圧入固定することができる。また、この実施形態の場合、後述する実施形態4、5、6に比べ、シャフト2の圧着力が軸方向に適度に分散され、シャフト2の曲りをより有効に防止することができるという利点がある。
【0039】
なお、欠損部6の形状は、図示のテーパ状に限らず、例えば、円弧状等の曲線状でもよい。
【0040】
また、コア4を構成する各金属板41は、プレス加工により成形されたものが好ましい。プレス加工によれば、所望の形状の金属板41が、連続的に製造可能であり、そのため、生産性が高く、量産に適している。
【0041】
コア4を構成する全ての金属板41の形状は、同じであるのが好ましい。同形状の金属板41を使用することにより、例えば、プレス成形で製造したときに、同じ金型で、連続的に製造することができる。このため、量産性が高く、生産性に優れて、安価となる。
【0042】
金属板41の構成材料としては、例えば、珪素鋼板、ステンレス鋼板、純鉄のような金属材料等が挙げられる。
【0043】
シャフト2は、円柱状の部材であり、コア4の孔42内に圧入され、固定されている。
【0044】
このとき、シャフト2の外周面21とコア4の内周面とが圧着している部分の圧着力(圧入力)は、20〜700kgf/mm2であることが好ましく、80〜500kgf/mm2であることがより好ましい。圧着力が、20kgf/mm2未満であると、シャフト2の固定が不安定となり、700kgf/mm2超であると、圧着部の変形や破損が生じるおそれがある。
【0045】
シャフト2を構成する材料としては、インナーロータ型の回転子の機能上、磁化されないまたはされ難いもの、すなわち、弱磁性または非磁性材料が好ましい。その具体的な例としては、オーステナイト系ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金、真鍮、銅または銅合金等の金属材料が挙げられる。本実施形態において、オーステナイト系ステンレス鋼製のシャフト2について代表的に説明する。
【0046】
シャフト2は、その外周部に硬化層5を有する。シャフト2に使用される弱磁性または非磁性材料は、比較的硬度の低い材料が多いため、このような硬化層5を設けることにより、シャフト2をコア4の孔42に圧入する際、シャフト2の外周面21の傷付きや破損が防止される。この硬化層5の形成方法については、後に詳述する。
【0047】
シャフト2に形成される硬化層5は、コア4の内周面(シャフト2に対する圧着面)のビッカース硬度をHv1、硬化層5のビッカース硬度をHv2としたとき、Hv2>Hv1を満足するようなものであるのが好ましく、Hv2>3Hv1を満足するようなものがより好ましい。これにより圧入の際のシャフト2の外周面21の傷付き、破損をより有効に防止することができる。
【0048】
また、コア4の内周面のビッカース硬度をHv1、シャフト2の硬化層5より中心側の部分のビッカース硬度をHv3としたとき、Hv1≧Hv3を満足することが好ましく、Hv1≧1.2Hv3を満足することがより好ましい。この場合には、硬化層5が有効に機能し、圧入の際のシャフト2の外周面21の傷付き、破損をより確実に防止することができる。
【0049】
前記Hv2と、前記Hv3とは、その差Hv2−Hv3が、200以上であるのが好ましく、400以上であることがより好ましい。これによりシャフト2の圧入の際、シャフト2の外周面21の傷付き、破損をより有効に防止することができる。
【0050】
前記Hv1は、50〜400であるのが好ましく、100〜300であるのがより好ましい。Hv1が、50未満では、コア4の内周面が変形してしまう。400超では、圧入時の圧着力が増大することとなる。
【0051】
前記Hv2は、600以上であるのが好ましく、800以上であることがより好ましい。このような値とすることにより、圧入の際、シャフト2の外周面21の傷付きをより有効に防止することができる。
【0052】
シャフト2の材料として前述した非磁性や弱磁性材料を用いた場合、Hv3は、通常、100〜400程度となる。
【0053】
なお、硬化層5は、図1に示すように、シャフト2の外周部の全体にわたって形成する場合に限らず、一部分であってもよい。例えば、図3に示すように、シャフト2をコア4に対し、矢印Y方向に圧入する場合、圧入する方向の先端(シャフト2の図中下端)から圧入完了時にコア4の孔42に対応する部分までの範囲に形成されていてもよい。すなわち、圧入の際、シャフト2の孔42を通過しない部分には、硬化層5が形成されていなくてもよい。このような場合でも、前記と同様に、圧入の際、シャフト2の外周面21の傷付きが防止できる。
【0054】
永久磁石3は、リング状(円盤状)であり、両コア4間に挟持され、固定されている。また、この永久磁石3は、厚さ方向に二極着磁されている。
【0055】
永久磁石3としては、磁気特性に優れたものが用いられ、例えば、希土類元素と遷移金属とを基本成分とするもの(例:Sm−Co系磁石)、あるいは希土類元素と遷移金属とボロンとを基本成分とするもの(例:Nd−Fe―B系磁石)のような各種希土類磁石が好適に使用される。また、永久磁石3の形態(種類)は、例えば、ボンド磁石、焼結磁石、鋳造磁石等、いずれでもよい。
【0056】
次に、第2実施形態について説明する。この場合、第1実施形態の回転子1との共通点については説明を省略し、主な相違点を説明する。
【0057】
図4は、本発明の回転子の第2実施形態を示す部分拡大断面図である。
【0058】
本実施形態の回転子1は、コア4を構成する金属板41において、金属板41の内周面の形状が前記第1実施形態と異なる。すなわち、金属板41の両面側の角部が、テーパ状に欠損した形状(欠損部7)であり、金属板41の厚さ方向の中央部分がシャフト2の外周面21に圧着される。これによる作用・効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0059】
次に、第3実施形態について説明する。この場合、第1実施形態の回転子1との共通点については説明を省略し、主な相違点を説明する。
【0060】
図5は、本発明の回転子の第3実施形態を示す部分拡大断面図である。
【0061】
本実施形態の回転子1は、コア4を構成する金属板41において、金属板41の内周面の形状が前記第1実施形態と異なる。すなわち、金属板41の中央部が、円弧状に欠損した形状(欠損部8)であり、金属板41の厚さ方向の両端部がシャフト2の外周面21に圧着される。これによる作用・効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0062】
次に、第4実施形態について説明する。この場合、第1実施形態の回転子1との共通点については説明を省略し、主な相違点を説明する。
【0063】
図6は、本発明の回転子の第4実施形態を示す縦断面図である。
【0064】
本実施形態の回転子1は、コア4の積層構造が前記第1実施形態と異なる。すなわち、コア4は、シャフト2の圧入に関与しない金属板41aとシャフト2の圧入に関与する金属板41bとで構成されている。
【0065】
金属板41aは、中心部にシャフト2の外径よりも大きい孔43を有し、シャフト2との間に、所定の間隙が形成されている。一方、金属板41bの内周面は、シャフト2の外周面21(硬化層5の表面)に圧着している。
【0066】
各コア4における金属板41bの軸方向における位置は、コア4、4中、それらが互いに接近するような配置(すなわち、永久磁石3に近い側とされている)とされている。
【0067】
このような構成の回転子1では、圧入に関与する金属板41bの枚数を調整することにより、圧入の圧着面積を調節することができる。したがって、適度な圧着力で、シャフト2とコア4とを安定的に圧入、固定することができる。
【0068】
金属板41の全枚数をN1、圧入に関与する金属板41の枚数をN2としたとき、N2/N1は、特に限定されないが、N2/N1が0.1〜0.9であることが好ましく、0.3〜0.8がより好ましい。N2/N1が、0.1未満であれば、シャフト2とコア4との固定が不安定となり易く、また、0.9超であれば、固着力は高いが、シャフト2を圧入する際に、高い押込力が必要となる。
【0069】
次に、第5実施形態について説明する。この場合、第4実施形態の回転子1との共通点については説明を省略し、主な相違点を説明する。
【0070】
図7は、本発明の回転子の第5実施形態を示す縦断面図である。
【0071】
本実施形態の回転子1は、コア4の積層構造が前記第4実施形態と異なる。すなわち、厚入に関与する金属板41bが、軸方向に、両コア4の中、永久磁石3を介して、互いに離間するように配置されている。これによる作用・効果は、前記第4実施形態と同様である。
【0072】
次に、第6実施形態について説明する。この場合、第4実施形態の回転子1との共通点については説明を省略し、主な相違点を説明する。
【0073】
図8は、本発明の回転子の第6実施形態を示す縦断面図である。
【0074】
本実施形態の回転子1は、コア4の積層構造が前記第4実施形態と異なる。すなわち、圧入に関与する金属板41bは、1つのコア4において、金属板41bが、コアの厚さ方向の中心部に配置されている。これによる作用・効果は、前記第4実施形態と同様である。
【0075】
次に、第7実施形態について説明する。この場合、第4実施形態の回転子1との共通点については説明を省略し、主な相違点を説明する。
【0076】
図9は、本発明の回転子の第7実施形態を示す縦断面図である。
【0077】
本実施形態の回転子1は、コア4の積層構造が前記第4実施形態と異なる。すなわち、圧入に関与する金属板41bは、軸方向に、両コア4の中、金属板41aと、金属板41bとが、交互に積層されている。これによる作用・効果は、前記第4実施形態と同様である。なお、この実施形態の場合、前述した実施形態4、5、6に比べ、シャフト2の圧着力が軸方向に適度に分散され、シャフト2の真直度がより良好となるという利点がある。
【0078】
なお、コア4の積層構造を各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、図6〜図9では、両コア4は、永久磁石3を介して対称的な構造となっているが、これに限らず、非対称であってもよい。
【0079】
次に、第8実施形態について説明する。この場合、第1実施形態の回転子1との共通点については説明を省略し、主な相違点を説明する。
【0080】
図10は、本発明の回転子の第8実施形態を示す平面図、図11は、本発明の回転子の第8実施形態を示すA-A線断面図である。
【0081】
本実施形態の回転子1は、コア4を構成する金属板41の形状が異なる。すなわち、コア4を構成する各金属板41のうちの少なくとも一部の金属板41は、孔42内において、金属板41の周方向の一部が、シャフト2の外周面21(硬化層5の表面)に圧着されている。
【0082】
図10、図11に示すように、金属板41は、孔42に連通する切り欠き44を有し、切り欠き44のない部分がシャフト2の外周面21(硬化層5の表面)に圧着されている。この切り欠き44は、周方向に沿って、等角度間隔に配置されている。本実施形態においては、周方向に、4つの切り欠き44が90°の角度間隔で配置されている。
【0083】
また、各金属板41は、それら切り欠き44が軸方向に一致するように積層、配置されている。なお、図11に示すように、各金属板41において切り欠き44の位置は、軸方向に一致しているが、この限りではなく、切り欠き44の位置は、必ずしも一致していなくてもよい。
【0084】
このように、シャフト2と圧着される金属板41の内周面に、切り欠き44を設けることにより、シャフト2の外周面21との圧着面積を調整することができる。特に、切り欠き44の面積や個数を調整することにより、適度な圧着力で、シャフト2とコア4とを安定的に圧入、固定することができる。
【0085】
このとき、シャフト2の圧入部における外径をL1、金属板41のシャフト2に接触している部分の周方向の長さの合計をL2としたとき、L2/L1が、0.5〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.5がより好ましい。L2/L1が、0.5未満であると、シャフト2とコア4との固定が不安定となり易く、また、3.0超であると、固着力は高いが、シャフト2を圧入する際に、高い押込力が必要となる。
【0086】
切り欠き44の形状は、図10に示すように、ほぼ台形であるが、これに限らず、例えば、円弧状、V字状等でもよい。
【0087】
なお、図4〜図11に記載の回転子1においても、硬化層5の形成領域は、シャフト2の全長に限らず、例えば、図3に示すように、シャフト2の軸方向の一部でもよい。
【0088】
以上より、本発明は、第1に、図1〜図5に示すような、圧着に関与する金属板41の内周面の形状により、第2に、図6〜図9に示すような、圧着に関与する金属板41bの枚数を調整することにより、第3に、図10〜図11に示すような、金属板41の圧着する部分の周方向の長さを調整することにより、シャフト2との圧着面積を調整し、シャフト2との適度な圧着力で、シャフト2とコア4とを安定的に圧入、固定することができる。
【0089】
また、本発明では、上記第1〜第3の構成のうち、2つ以上の構成を組み合わせてもよい。
【0090】
次に、回転子1の組立方法の一例について説明する。
【0091】
回転子1は、シャフト2の外周部に硬化層5を形成する工程と、硬化層5の表面を研磨して、その厚さ方向の一部を除去する工程と、このシャフト2をコア4の中心部に形成された孔42内に圧入する工程とを経て組み立てられる。
【0092】
[1] 硬化層の形成工程
シャフト2の外周部に硬化層5を形成する。その方法は、例えば、熱処理、めっき、蒸着、スパッタリングのような表面硬化処理等が挙げられる。本実施形態の硬化層5の形成は、熱処理によりなされたものである。熱処理は、処理雰囲気、加熱温度、処理時間等を適宜調節することにより、容易に、必要な条件の硬化層5を形成することができる。
【0093】
この熱処理は、処理温度が400〜800℃、処理時間が0.1〜3時間であることが好ましく、処理温度が450〜650℃、処理時間が0.5〜2時間であることがより好ましい。低温、短時間の熱処理では、シャフト2の構成材料等の条件によっては、硬化層5の硬度が不十分となるかまたは硬化層5の厚さが薄くなることがあり、また、高温、長時間の熱処理では、シャフト2自体の機械的特性(強度、靭性)等が必要以上に変化してしまうことがある。
【0094】
この熱処理としては、例えば、窒化処理、浸炭処理、高周波焼き入れのような熱処理等が挙げられる。本実施形態は、窒化処理によりなされたものである。これにより幅広い金属材料に対応でき、必要な硬化層5を形成させることができる。また、窒素を利用することでコストの低減化が図れる。
【0095】
また、窒化処理としては、例えば、塩浴窒化処理、ガス窒化処理のような軟窒化処理等が挙げられる。これらのうちでも、塩浴窒化処理の1種であるタフトライド処理により軟窒化処理された硬化層5が好ましい。
【0096】
[2]硬化層の研磨工程
次に、必要に応じ、工程[1]で形成された硬化層5の表面を研磨して、その厚さ方向の一部を除去する。このように、硬化層5の一部を研磨することにより、シャフト2の真直度を向上させることができる。また、この研磨により、シャフト2の外径の寸法精度や面粗度等が向上し、シャフト2とコア4との固定力の安定化が図れる。このように、シャフト2の真直度や外径寸法精度等の向上により、回転子1の回転精度、同軸度をより高いものとすることができる。
【0097】
また、シャフト2の面粗度が向上することは、シャフト2を保持する軸受け(滑り軸受け)との摩擦が緩和されることになるため、シャフト2および軸受けの耐久性が向上し、寿命が長くなる。
【0098】
研磨方法としては、例えば、バフ研磨、バレル研磨、ショットブラストのような砥粒加工、化学研磨、電解研磨のような特殊加工等の研磨方法が挙げられる。これらのうちでも特に、砥粒加工により硬化層5を研磨することが好ましい。
【0099】
本実施形態において、研磨の際の硬化層5の除去量は、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。除去量が、20μm超であると、硬化層5の形成の際にその厚さを厚くしなければならないので、硬化層5の形成に手間と時間がかかり、また、研磨作業にも手間と時間がかかる。
【0100】
本実施形態において、研磨による硬化層5の除去量は、特に限定されないが、研磨以前の硬化層5の厚さの0.03〜0.85倍以下であることが好ましく、0.1〜0.75倍がより好ましく、0.2〜0.6倍がさらに好ましい。硬化層5の除去量の硬化層5の研磨前の厚さに対する比率が小さすぎると、前述の研磨による効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、この比率が0.85倍を超えると、硬化層5の残存部分が少なくなり、硬化層5を形成したことによる前述の効果が十分に発揮されないおそれがある。
【0101】
シャフト2の圧入工程(次記工程[3])の直前における硬化層5の厚さ(以下単に「硬化層の厚さ」と言う)T3は、3〜100μmであることが好ましく、10〜80μmはより好ましい。3μm未満であると、硬化層5を形成したことによる前述の効果が十分に発揮されないことがあり、また、100μmを超えても、その効果の向上がみられない。なお、本発明は、硬化層5の研磨を行なわない場合も含んでおり、この場合には、厚さT3は、工程[1]で形成された硬化層5の厚さそのものとなる。
【0102】
[3]圧入工程
次に、この硬化層5を有するシャフト2を両コア4の中心部に形成された孔42内に圧入する。これにより永久磁石3を介して接合された一対のコア4に、シャフト2が同軸で固定され、回転子1の組み立てが完了する。
【0103】
圧入方法としては、例えば、油圧プレス機、エアプレス機、ハンドプレス機等が挙げられる。これらのうちでも特に、油圧プレス機によりシャフト2を圧入することが好ましい。
【0104】
このとき、シャフト2を圧入するコア4の内周面の形状、すなわち、孔42の形状は、図6〜図11のいずれでもよい。
【0105】
なお、本発明の回転子1の組立方法を各工程に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、[1] 〜[3]の各工程の前後に、任意の工程があってもよい。
【0106】
以上のようにして得られた各実施形態の回転子1を、ステータの内側に組み込んで本発明のステッピングモータとすることができる。この場合、当該ステッピングモータを構成する回転子以外の部品、すなわち、ステータ、モータハウジング、通電回路等は、公知の任意の構成のものとすることができるので、本明細書では、それらの図示および詳細な構造、作用等の説明は省略する。
【0107】
以上、本発明の回転子およびステッピングモータを各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0108】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、シャフトが硬化層を有することにより、圧入の際のシャフトの傷付きや破損を防止することができる。
【0109】
また、シャフト側に、ローレット加工やステーキング加工等を施さなくてもよいので、加工時のシャフトの変形がなく、高い真直度を保持することができるとともに、コアとシャフトとの同軸度の向上が図れる。
【0110】
また、硬化層の表面を研磨することにより、シャフトの真直度、外径の寸法精度、面粗度等がより高まり、同軸度や歩留まりの向上、固定の安定化、均一化が図れる。
【0111】
また、シャフトとコアとを、部分的に圧着した場合には、圧入作業が容易であるとともに、コアとシャフトの接触面圧を調整し、圧着力を適度な値に設定することができる。
【0112】
以上のことから、ステッピングモータ等のモータに適用した場合、駆動時の振動・騒音が低減され、高トルク(高性能)なモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転子の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1中の円形で囲んだ部分の拡大図である。
【図3】本発明の回転子の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の回転子の第2実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明の回転子の第3実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明の回転子の第4実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の回転子の第5実施形態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の回転子の第6実施形態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の回転子の第7実施形態を示す縦断面図である。
【図10】本発明の回転子の第8実施形態を示す平面図である。
【図11】図10中のA-A線断面図である。
【図12】従来の回転子を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 回転子
2 シャフト
21 外周面
3 永久磁石
4 コア
41 金属板
41a 金属板
41b 金属板
42 孔
43 孔
44 切り欠き
5 硬化層
6 欠損部
7 欠損部
8 欠損部
10 回転軸
11 シャフト
111 外周面
112 ローレット部
12 コア
121 金属板
13 永久磁石
Claims (18)
- 金属板を複数枚積層してなるコアと、前記コアの中心部に固定されるシャフトとを備えた回転子の組立方法であって、
前記シャフトの外周部に硬化層を形成する工程と、
前記コアを構成する各金属板のうち、前記シャフトの表面と接触する個々の金属板は、前記コアの中心部に形成された孔内において、当該金属板の厚さの範囲内に、その厚さ方向に平らな平坦部と、円周方向に欠損した欠損部とを備え、前記平坦部のみが前記シャフトの表面に圧着されるように構成されたコアの前記孔内に、前記工程で得るシャフトを圧入する工程とを有することを特徴とする回転子の組立方法。 - 金属板を複数枚積層してなるコアと、前記コアの中心部に固定されるシャフトとを備えた回転子の組立方法であって、
前記シャフトの外周部に硬化層を形成する工程と、
前記硬化層の表面を研磨して、その厚さ方向の一部を除去する工程と、
前記コアを構成する各金属板のうち、前記シャフトの表面と接触する個々の金属板は、前記コアの中心部に形成された孔内において、当該金属板の厚さの範囲内に、その厚さ方向に平らな平坦部と、円周方向に欠損した欠損部とを備え、前記平坦部のみが前記シャフトの表面に圧着されるように構成されたコアの前記孔内に、前記工程で得るシャフトを圧入する工程とを有することを特徴とする回転子の組立方法。 - 前記研磨による前記硬化層の除去量は、平均厚さ20μm以下である請求項2に記載の回転子の組立方法。
- 前記研磨による前記硬化層の除去量は、研磨以前の硬化層の厚さの0.03〜0.85倍である請求項2または3に記載の回転子の組立方法。
- 前記コアを構成する各金属板のうちの少なくとも1つの金属板は、前記孔内において、当該金属板の厚さ方向の一部が、前記硬化層の表面に圧着されている請求項1ないし4のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- 前記コアを構成する各金属板のうちの少なくとも1つの金属板が、前記シャフトの圧入に関与している請求項1ないし5のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- 前記コアを構成する各金属板のうちの少なくとも1つの金属板は、前記孔内において、当該金属板の周方向の一部が、前記硬化層の表面に圧着されている請求項1ないし6のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- 前記硬化層の形成は、熱処理によりなされたものである請求項1ないし7のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- 処理温度が450〜650℃、処理時間が0.1〜3時間である請求項8に記載の回転子の組立方法。
- 前記硬化層の形成は、窒化処理によりなされたものである請求項1ないし9のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- シャフトの圧入工程の直前における前記硬化層の厚さが、3〜100μmである請求項1ないし10のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- 前記シャフトは、軟磁性または非磁性材料で構成される請求項1ないし11のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- 前記コアの内周面のビッカース硬度をHv1、前記硬化層のビッカース硬度をHv2としたとき、Hv2>Hv1である請求項1ないし12のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- 前記コアの内周面のビッカース硬度をHv1、前記シャフトの前記硬化層より中心側の部分のビッカース硬度をHv3としたとき、Hv1≧Hv3である請求項1ないし13のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- 前記シャフトの前記コアに対し圧着している部分の圧着力は、20〜700kgf/mm2である請求項1ないし14のいずれかに記載の回転子の組立方法。
- 前記回転子は、ステッピングモータに用いられるものである請求項1ないし15いずれかに記載の回転子の組立方法。
- 請求項1ないし16のいずれかに記載の回転子の組立方法により組み立てられたことを特徴とする回転子。
- 請求項17に記載の回転子をインナーロータとして備えたことを特徴とするステッピングモータ。
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