JP3711358B2 - 銅箔の乾燥方法及びそのための銅箔乾燥装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅箔の乾燥方法及びそのための銅箔乾燥装置に関し、特に、プリント配線板などにおいて樹脂製の絶縁板と銅箔を張り合わせた銅張積層板に用いられる銅箔の乾燥方法及び銅箔乾燥装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクス産業の発達に伴い、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)などの電子部品を実装するプリント配線板の需要が急激に増加している。
【0003】
このプリント配線板を製造するには、先ず、クラフト紙、ガラスクロス、ガラス不織布などにフェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸して得られた半硬化状態の絶縁板基材(プリプレグ)と銅箔とを加熱圧着等によって接着して張り合わせる。その後、回路パターン形成のために穴開け後、レジストの印刷やマスキングフィルムをラミネートして、不要な部分の銅箔を酸またはアルカリでエッチング処理を行うことによって所定の回路パターンを形成した後、レジストやマスキングフィルムを除去して、所定の回路パターンが形成されたプリント配線板を作成している。そして、このように所定の回路パターンが作成された後、電子部品を所定の位置にセットした後、半田浴中に浸漬することによって電子部品がプリント配線板に固定される。
【0004】
ところで、このプリント配線板に用いられる銅箔には、電解銅箔と圧延銅箔とがあるが、広範に使用可能であり、しかもより薄い銅箔を容易に且つ安価で形成可能であるので、昨今では電解銅箔を使用しているのが多く用いられている。
【0005】
このようにプリント配線板に用いる電解銅箔は、従来より下記のような工程を経て製造されている。
すなわち、電解槽中に電解液である硫酸銅水溶液を収容するとともに、電解槽中に不溶性陽極からなるアノードを配置する。そして、カソードを構成する回転陰極ドラムをこのアノードに対向するように、その略半分が電解槽の硫酸銅水溶液中に浸漬するようにしている。この状態で、高密度電流をアノードとカソードドラムに印加して、連続的に銅箔が造られる。
この場合、カソードドラムの表面側に接する電解銅箔の表面がシャイン面(光沢面)であり、電解銅箔の背面側(電解液側)がマット面(粗面)となっている。
【0006】
そして、この電解工程で得られた銅箔は、表面処理工程に移行する。この表面処理工程では、基材と貼り合わせた際にアンカー効果を付与させるため、コブ付け処理が行われ、続いて防錆効果を付与させるため、亜鉛メッキ工程、クロメート処理工程、シランカップリング処理工程を経て、最後に乾燥してプリント配線用の電解銅箔が造られている。
なお、造箔されたままの圧延銅箔の場合、箔の両表面側ともシャイン面(または平滑面)である。これらのシャイン面のうちの片側または両側が表面処理される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、表面処理工程を経た銅箔は、その表面に電解液などが付着しているので、乾燥工程の前に、図示しないが、水洗を行った後、乾燥機にてその表面の水分を乾燥する必要がある。
【0008】
従って、従来より乾燥処理が行われているが、このための乾燥方法として、熱風による乾燥方法と、遠赤外線による乾燥方法とがあるが、銅箔の表面に付着している水分を除去する程度で、100℃以下の温度になるように乾燥を行っているのが現状である。
【0009】
ところで、100℃以上に銅箔の表面を加熱すれば、例えば、銅箔表面の亜鉛メッキ層中の亜鉛が銅箔中に拡散して亜鉛−銅の合金化(真鍮化)が行われ、回路パターンを作成する際に使用する塩酸などの酸に対して、亜鉛が溶出する脱亜現象が生じず、耐酸性が向上する。また、本発明者等の知見によれば、図3に示したように、銅箔の表面温度が高くなるにつれて、樹脂基板とのピール強度が増加し、130℃付近でピール強度がピークとなる。
【0010】
しかしながら、熱風による乾燥方法では、このように130℃以上に銅箔を加熱調整することは可能であるが、熱風による熱伝達での加熱(乾燥)であるため、熱風が持ち去るエネルギーロスが大きく、しかも、図5に示したように、熱風乾燥装置700では、ヒータ701、ファン702ならびに水蒸気を伴った多量の排気ガスを装置外部に排出するための経路703などの循環経路704が必要であり、そのため装置が大型化し、設置スペースが大きく、コストも高くなる。
【0011】
一方、遠赤外線による乾燥方法では、遠赤外線の波長領域(波長4μm〜1,000μm)において、銅箔が遠赤外線をほとんど約97%以上反射してしまい(「American Institute of Physics Handbook」、6-120参照)、銅箔表面にお ける遠赤外線の吸収率が低いので、エネルギーロスが大きく、銅箔表面の温度がなかなか上昇せず、上記の130℃以上の温度にするには、遠赤外線照射装置を多数配置するなど装置的にも、電力消費も大きくなり、コストも高くなる。
【0012】
本発明はこのような実情に鑑み、表面処理工程を経た銅箔を乾燥する際に、低電力でしかも簡単な装置で、その乾燥温度を、防錆金属と銅箔との共晶合金、例えば、銅箔の表面の亜鉛−銅の合金化(真鍮化)が行われる100℃以上に、銅箔の表面の加熱を制御することが可能な銅箔の乾燥方法及びそのための銅箔乾燥装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明なされたものであって、本発明の銅箔の乾燥方法は、銅箔に各種の表面処理を行った後に銅箔を乾燥するための方法であって、銅箔の片方または両方の表面に近赤外線を照射することによって、銅箔を乾燥させることを特徴とする。
なお、以下、本発明で、「表面処理」とは、粗化処理(こぶ付け処理)、防錆処理、その他の表面処理を、単独でもしくは組み合わせた表面処理を含むことを意味する。
【0014】
また、本発明の銅箔の乾燥方法は、前記銅箔が、電解銅箔であることを特徴とする。
すなわち、近赤外線が銅箔の表面に吸収され易く吸収率が高いので、エネルギー効率良く、銅箔表面を所定の温度に加熱することが可能であり、しかも、近赤外線を照射するための近赤外線装置への電圧、電流などの出力を変化させることによって、銅箔表面を所定の温度に加熱調整することが可能である。その結果、銅箔表面を亜鉛−銅の合金化(真鍮化)が行われる100℃以上の温度に加熱して乾燥することができるので、耐酸性が向上するとともに、樹脂基板と接着した際にも密着力が大きくなり、ピール強度が向上し、樹脂基板との剥離が生じることがない。
【0015】
また、本発明の銅箔の乾燥方法では、前記銅箔の少なくとも一方の表面処理を行った側の表面に近赤外線を照射することによって、銅箔を乾燥させることを特徴とする。
すなわち、銅箔の粗面側表面では近赤外線の吸収率が高くなるので、銅箔表面の加熱乾燥をよりエネルギー効率よく実施することが可能である。
【0016】
さらに、本発明の銅箔の乾燥方法では、前記銅箔に対してその表面に微細粒子を付着させる粗化処理を行った後に、銅箔の粗面側表面に近赤外線を照射することを特徴とする。
【0017】
これによって、銅箔に対して防錆処理前にその表面に微細粒子を付着させる粗化処理、すなわち、樹脂基板との接着力(ピール強度)を向上させるコブ付け処理が行われた粗面に近赤外線を照射するので、これらのコブによる凹凸によって、近赤外線の吸収率が高くなるので、銅箔表面の加熱乾燥をよりエネルギー効率よく実施することが可能である。
【0018】
また、本発明の銅箔の乾燥方法は、前記銅箔に対してその表面に防錆処理を行った後に、銅箔の粗面側表面に近赤外線を照射することを特徴とする。
この場合、前記防錆処理が、防錆金属による防錆処理であり、前記防錆処理が、Zn、Ni、Sn、Cr、Mo、Coからなるグループから選択した少なくとも1種の防錆金属による防錆処理であるのが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の銅箔の乾燥方法では、前記近赤外線による乾燥が、銅箔の表面温度が、100℃〜170℃、好ましくは、120〜150℃となるように行うことを特徴とする。
【0020】
これによって、銅箔の表面を100℃〜170℃に加熱すれば、防錆金属と銅箔との共晶合金の形成、例えば、亜鉛−銅の合金化(真鍮化)に代表されるような防錆金属と銅箔との共晶合金が銅箔表面に形成され耐酸性が向上し、亜鉛が溶出する脱亜現象が生じず、耐酸性が良好となり、しかも、樹脂基板との間の接着力であるピール強度も向上する。
【0021】
また、本発明の銅箔乾燥装置は、銅箔に各種の表面処理を行った後に銅箔を乾燥するための銅箔乾燥装置であって、
乾燥室内に連続的に供給される銅箔に対して、該銅箔の少なくとも表面処理を行った側の表面に近赤外線を照射するように、前記銅箔の表面処理を行った側の表面に対向するように近赤外線照射装置を乾燥室内に配置したことを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明の銅箔乾燥装置は、前記銅箔が、電解銅箔であることことを特徴とする。
さらに、前記近赤外線照射装置への出力を制御して、前記銅箔の表面の乾燥温度を制御するように構成したことを特徴とする。
【0023】
このように構成することによって、近赤外線ランプの立ち上がりが素早い(すなわち、電源を入れた時のスタートアップまでのリード時間が短い)ので所定の温度に速やかに達し、しかも、近赤外線ランプへの電圧又は電流を制御することによって、銅箔の表面温度を連続的に調整することができるので、防錆金属と銅箔との共晶合金の形成、例えば、亜鉛−銅の合金化(真鍮化)に代表されるような防錆金属と銅箔との共晶合金が銅箔表面に形成され、亜鉛が溶出する脱亜現象が生じず、耐酸性が良好となり、しかも、樹脂基板との間の接着力であるピール強度も向上するように、銅箔の表面を100℃〜170℃に加熱調整して乾燥することが可能となる。
【0024】
さらに、本発明の銅箔の乾燥方法では、前記近赤外線照射装置を銅箔の両面側に、対向するように配置するとともに、前記乾燥室内に供給される銅箔の表面の状態に応じて、何れか一方側又は両方側の近赤外線照射装置を選択的に作動させるように制御するように構成したことを特徴とする。
【0025】
これによって、電解銅箔のマット面側にのみコブ付け処理、防錆処理などを行って銅箔を乾燥する場合にも、一方側の近赤外線照射装置を選択的に作動させれば適用可能であるとともに、エッチング後の絶縁信頼性の向上、回路特性の向上を目的として、銅箔のシャイン面側にコブ付け処理(粗化処理)などの接着促進処理を行ったシャイン面処理電解銅箔に対しても、両方側の近赤外線照射装置を選択的に作動させることによって適用可能であり、その対象とする銅箔が制限されることがない。
また、本発明の銅箔の乾燥方法は、前記近赤外線が、0.8〜2μmの波長を有することを特徴とする。
さらに、本発明の銅箔乾燥装置は、前記近赤外線照射装置が、0.8〜2μmの波長を有する赤外線を照射することを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態(実施例)について説明する。
図1は、本発明の銅箔の乾燥方法を実施するための乾燥装置の第1の実施例の概略断面図である。
【0027】
従来のように、電解槽に銅精製電解液(酸性の硫酸銅溶液)を供給して電気分解することによって、不溶性陽極に対向配置され回転する回転陰極ドラム上に析出する銅を連続的に巻き取る造箔工程でえられた銅箔は、そのマット面側に、コブ付け処理工程、亜鉛メッキを施す工程、クロメート化処理を行う工程などの防錆処理を行う防錆処理工程を経た後、適宜、樹脂基板との接着力を高めるシランカップリング処理工程が行われる。このように、表面処理工程を経た銅箔は、その表面に電解液などが付着しているので、乾燥工程の前に、図示しないが、水洗を行った後、乾燥機にてその表面の水分を乾燥する必要がある。
【0028】
このため、図1に示したように、これらの表面処理が行われた銅箔1は、ロール2とロール3との間を通過することによって、ある程度水分などが絞り取られた後、乾燥装置10の乾燥装置本体20の下方に設けられた銅箔導入孔22内へと送給され、乾燥装置本体20の上方に設けられた銅箔出口孔24を通過する間に乾燥されるようになっている。そして、銅箔出口孔24から出た乾燥された銅箔は、巻き取りリール30に巻き取られる。
【0029】
この乾燥装置本体20の内部には、銅箔1の表面処理されたマット面1a側に対向して、銅箔1の送給方向と平行な方向(本実施例では上下方向)に近赤外線照射ユニット40が配置されている。この近赤外線照射ユニット40には、銅箔の送給方向とは垂直な方向に延びるハロゲンランプ42が複数個、銅箔1の送給方向と平行な方向(本実施例では上下方向)に並設されている。また、それぞれのハロゲンランプ42の背面側には、鏡面を有し、ハロゲンランプ42から照射される近赤外線を反射して、被乾燥体である銅箔1の表面処理されたマット面1aに近赤外線を照射するデフレクター44が配置されている。
【0030】
一方、乾燥装置本体20の銅箔導入孔22の近傍には、給気装置26が配設されており、図示しないブロワーを介して、外部の乾燥した新鮮な空気が乾燥装置本体20内に導入されるようになっている。また、乾燥装置本体20の銅箔出口孔24近傍には、排気装置28が配設されており、銅箔の表面から蒸発した水蒸気を含んだ空気を乾燥装置本体20内から排出されるようになっており、これにより銅箔1の表面の水分蒸発が促進されるようになっている。
【0031】
近赤外線照射ユニット40のハロゲンランプ42は、それぞれ制御装置50に接続されており、制御装置50によって、それぞれのハロゲンランプ42へ電源から供給する電圧または電流を制御することによって、ハロゲンランプ42の出力、すなわち、ハロゲンランプ42から銅箔1表面へ輻射される近赤外線の輻射量を調整して、乾燥の際の銅箔1の表面処理されたマット面1a側の表面の温度を調整できるように構成されている。
【0032】
このような電圧または電流の制御方法として、電圧のON−OFFで時間比率を調整するON−OFF制御方式、電圧・電流調整制御を行う位相制御方式、負荷電力の時間比率を調整(ON−OFF制御)を行うゼロクロススイッチング方式などがある。
【0033】
また、この場合、制御装置50による電圧または電流の制御方法としては、全てのハロゲンランプ42に対して、電圧または電流の値を同じとなるように制御することも可能であるが、個々のハロゲンランプ42に対して、選択的に電圧または電流の値を制御することも、個々のハロゲンランプ42への電圧または電流を選択的に入切するように制御することも可能である。
【0034】
なお、この場合、ハロゲンランプ42への電圧または電流の制御方法として、図示しないが、銅箔1の表面処理されたマット面1a近傍に温度センサーを配置して、この温度センサーの検知温度に基づいて、制御装置50によりハロゲンランプ42への電圧または電流の供給値を制御すれば、自動的に連続的な制御が可能となる。
【0035】
また、近赤外線の波長としては、波長のピークが、0.8μm〜2μm、好ましくは、1〜1.5μmとするのが、銅箔表面への近赤外線の吸収率が高くなるので望ましい。このため、制御装置50を制御することによって、ハロゲンランプ42への電圧または電流を制御して、ハロゲンランプ42の温度を2000℃〜2200℃に加熱することによって発生する近赤外線の波長を上記の範囲内に調整すればよい。これによって、銅箔1の表面処理されたマット面1a側の表面温度を、100〜170℃、好ましくは、120〜150℃となるように設定すればよい。
【0036】
すなわち、図3に示したように、銅箔1の表面の温度が高くなるにつれて、樹脂基板とのピール強度が増加し、130℃付近でピール強度がピークとなるとともに、銅箔の表面を150℃以上加熱すれば、例えば、銅箔表面の亜鉛メッキ層中の亜鉛が銅箔中に拡散して亜鉛−銅の合金化(真鍮化)が行われ、回路パターンを作成する際に使用する塩酸などの酸に対して、亜鉛が溶出する脱亜現象が生じず、耐酸性が向上する。このため、このような防錆金属と銅箔との共晶合金の形成と、樹脂基板との間の接着力であるピール強度を考慮すれば、銅箔1の表面処理されたマット面1a側の表面温度を、100〜170℃、好ましくは、120〜150℃となるように設定するのが望ましいからである。すなわち、銅箔1の表面処理されたマット面1aの表面温度が100℃より低ければ、亜鉛−銅の合金化(真鍮化)に代表されるような防錆金属と銅箔との共晶合金が銅箔表面に形成されず、耐酸性が良好でなく、逆に、銅箔1の表面処理されたマット面1aの表面温度が170℃より高ければ、合金化の進行は速いが防錆剤として使われているクロメートが破壊され、銅箔と樹脂基板との間の接着力、すなわちピール強度が低くなるためである。
【0037】
さらに、銅箔1の乾燥装置本体20内での滞留時間(通過時間)としては、設備上から、10秒間程度が一般的である。
また、ハロゲンランプ42と銅箔1の表面処理されたマット面1aとの間の距離としては、エネルギー効率を考慮すれば、20〜100mm、好ましくは30〜50mmに設定するのが望ましい。
【0038】
このように、近赤外線を銅箔1のマット面1a側に照射することによって、近赤外線が銅箔の表面に吸収され易く吸収率が高いので、エネルギー効率良く、銅箔表面を所定の温度に加熱することが可能であり、しかも、近赤外線を照射するための近赤外線装置の近赤外線ランプへの電圧、電流などの出力を変化させることによって、銅箔表面を所定の温度に加熱調整することが可能である。その結果、銅箔表面を、例えば、亜鉛−銅の合金化(真鍮化)などの、防錆金属と銅箔との共晶合金が行われる100℃以上の温度に加熱して乾燥することができるので、耐酸性が向上するとともに、樹脂基板と接着した際にも密着力、すなわちピール強度が向上し、樹脂基板との剥離が生じることがない。
【0039】
図2は、本発明の銅箔の乾燥方法を実施するための乾燥装置の第2の実施例の概略断面図である。
本実施例の乾燥装置は、前述した第1の実施例と同様な構成であり、基本的に同じ構成部材については、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
本実施例の乾燥装置10では、乾燥装置本体20の内部銅箔1の表面処理されたシャイン面1b側にも、これに対向するように、上下方向に近赤外線照射ユニット40と同様な近赤外線ユニット60を配置した点が、上記の第1の実施例の乾燥装置と相違する。なお、この近赤外線ユニット60については、その構造については、上記第1の実施例の近赤外線照射ユニット40と同様であるのでその詳細な説明は省略する。
【0041】
すなわち、銅箔によっては、エッチング後の絶縁信頼性の向上、回路特性の向上を目的として表面処理されたシャイン面を基材接着側とすることもあり、基材との接着性向上のため、シャイン面1b側にコブ付け処理を行う場合もあり、この場合には、表面処理されたシャイン面1b側が粗面となっているので、近赤外線を吸収することができる。従って、この表面処理されたシャイン面1b側にも近赤外線を照射して銅箔表面を乾燥させれば、よりエネルギー効率的に銅箔の乾燥が実施できるためである。
【0042】
なお、この乾燥装置10では、上記のように近赤外線ユニット60のハロゲンランプ62も、近赤外線照射ユニット40と同様に、それぞれ制御装置50に接続されており、制御装置50によって、それぞれのハロゲンランプ62へ電源から供給する電圧または電流を制御することによって、ハロゲンランプ62の出力、すなわち、ハロゲンランプ62から銅箔1のシャイン面1b表面へ輻射される近赤外線の輻射量を調整して、乾燥の際の銅箔1の表面処理されたシャイン面1b側の表面の温度を調整できるように構成されている。
【0043】
また、この場合、制御装置50によって、近赤外線照射ユニット40、近赤外線ユニット60の何れか一方側又は両方側を選択的に作動させるように制御するように構成してもよい。
【0044】
これによって、銅箔の表面処理されたマット面側にのみ、例えば、コブ付け処理、防錆処理などの接着促進処理を行って銅箔を乾燥する場合にも、一方側の近赤外線照射装置を選択的に作動させれば適用可能であるとともに、エッチング後の絶縁信頼性の向上、回路特性の向上を目的として、銅箔のシャイン面側にコブ付け処理(粗化処理)を行った銅箔に対しても、両方側の近赤外線照射装置を選択的に作動させることによって適用可能であり、その対象とする銅箔が制限されることがない。
【0045】
以上説明した第1および第2実施例では、乾燥装置10において、近赤外線照射ユニット40、60を用いたが、図示しないが、近赤外線照射ユニット40、60とともに熱風乾燥を併用することも、また、遠赤外線照射装置を併用することも勿論可能である。
【0046】
また、上記実施例では、コブ付け処理工程、亜鉛メッキを施す工程、クロメート化処理を行う工程などの防錆処理を行う表面処理工程を経た後、適宜、樹脂基板との接着力を高めるシランカップリング剤処理工程を行い、銅箔乾燥装置にてその表面の水分を乾燥装置で加熱乾燥するようにしたが、これら何れかの工程または組み合わせ処理の工程を経た後に乾燥装置で乾燥しても良い。さらに、これらの防錆処理工程としては、上記の工程に限定されるものではなく、例えば、防錆金属として、Zn、Ni、Sn、Cr、Mo、Coからなるグループから選択した少なくとも1種の防錆金属による防錆処理工程であってもよい。
【0047】
また、本実施例では、乾燥処理する銅箔として、電解銅箔について説明したが、片側または両側のシャイン面側に、例えば、コブ処理、防錆処理などの表面処理を行った後の圧延銅箔などにも適用可能であることは勿論である。
【0048】
【実施例】
(実施例1)
電解銅箔で得られた厚さ35μmの電解銅箔のマット面に、酸性の硫酸銅溶液中で電気メッキすることによって、銅メッキを施すことによりコブ付け処理を行い、粒状銅層を形成した。
【0049】
その後、ピロリン酸亜鉛10g/L、ピロリン酸カリウム100g/L、pH11.0の亜鉛浴中で、室温にて電流密度5A/m2で、6秒間、電気メッキを 行い、銅箔のマット面上に亜鉛400mg/m2の亜鉛メッキを施した。
【0050】
続いて、クロム酸2g/L、pH10のクロメート処理液中で、室温にて電流密度0.5A/m2で、5秒間、電気メッキを行い、銅箔のマット面の表面にク ロム酸亜鉛からなるクロメート被膜層を形成した。
【0051】
その後、クロム酸0.5g/lを含むγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5g/L水溶液をシャワーしてシランカップリング処理を行い、その後水洗浴中を通過させた後、水切りロールを通して、本発明の図1に示した近赤外線乾燥装置にて乾燥させた。
【0052】
その際、近赤外線ランプへの出力電圧を調整することによって、銅箔の表面処理されたマット面の裏面に貼着したサーモテープの色の変化によって、銅箔のマット面表面の温度を測定しつつ、種々の温度条件にて銅箔を乾燥させた。
【0053】
そして、これらの銅箔を、ガラスエポキシ含有基材(NELCO社製)に熱圧着し、これを10mm幅にエッチングして、JIS−C−6481に基づいて、90°剥離を実施して、それぞれピール強度を測定した。
【0054】
比較として、上記の銅箔を熱風乾燥によって、銅箔の表面処理したマット面の裏面(シャイン面)に貼着したサーモテープの色の変化によて、銅箔の表面の温度を変更して乾燥して、上記と同様にそのピール強度を測定した。
【0055】
これらの結果を、図3に示した。図3から明らかなように、ピール強度は、銅箔の表面の乾燥温度が130℃近傍でピーク値を示すことがわかる。
また、同じ水切り後の銅箔の表面の乾燥温度でも、熱風乾燥に比較して、近赤外線による方がピール強度が向上しているのがわかる。
【0056】
これは、近赤外線の照射によって、シランカップリング層、クロメート処理層、ならびに亜鉛メッキ層において、何らかの組織変化があり、樹脂基板との接着性が向上するものと推測される。
(実施例2)
上記実施例1と同様にして得られる水切り後の銅箔の表面の温度をそれぞれ、所定の温度に上昇するために必要な、エネルギーについて、近赤外線、遠赤外線、および熱風乾燥について、その電力、銅箔の表面の温度が所定の温度に達するまでの時間などを比較した。その結果を表1および図4に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
図4の結果から明らかなように、同一容量の近赤外線および遠赤外線ヒータを使用し、銅箔表面の温度が130℃に達するまでの時間を比較した場合、近赤外線乾燥では1秒で到達するのに対し、遠赤外線乾燥では約15秒を要している。
【0059】
また、表1の結果から明らかなように、単位重量当たりの所要電力量は近赤外線乾燥を100とした場合、遠赤外線乾燥、熱風乾燥ともにそれぞれ350、250で、近赤外線による乾燥が、エネルギー効率的にみても、その即応性からしても非常に優れていることがわかる。
(実施例3)
実施例1と同様にして得られた水切り後の銅箔について、近赤外線による乾燥の際に、銅箔の表面の乾燥温度を、それぞれ変化させて得られた銅箔について、ガラスエポキシ含有基材に熱圧着し、これを0.8mm幅にエッチングした後、室温にて、12%の塩酸溶液中に30分間浸漬することによって、その耐酸性を比較した。
【0060】
また、比較として、同じ乾燥温度にて、熱風乾燥による乾燥した際の耐酸性を比較した。
その結果を下記の表2に示した。
【0061】
【表2】
【0062】
表2の結果から明らかなように、近赤外線による乾燥の際に、銅箔の表面の乾燥温度を100℃以上にすることにより、耐塩酸性(塩酸に浸漬後のピール強度)が向上することがわかる。これは、100℃以上で亜鉛メッキ中の亜鉛が、銅箔中に拡散して銅−亜鉛の二元系の共晶合金を形成して、脱亜現象が生じないためである。
【0063】
なお、熱風乾燥の場合では、同様な結果が得られる。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、銅箔の表面に近赤外線を照射することによって、銅箔を乾燥させる近赤外線が銅箔の表面に吸収され易く吸収率が高いので、エネルギー効率良く、銅箔表面を所定の温度に加熱することが可能であり、しかも、近赤外線を照射するための近赤外線装置への電圧、電流などの出力を変化させることによって、銅箔表面を所定の温度に加熱調整することが可能である。
【0065】
その結果、銅箔表面を亜鉛−銅の合金化(真鍮化)が行われる150℃以上の温度に加熱して乾燥することができるので、耐酸性が向上するとともに、樹脂基板と接着した際にも密着力が大きくなり、ピール強度が大きくなり、樹脂基板との剥離が生じることがない。
【0066】
さらに、遠赤外線による乾燥では、銅箔表面における遠赤外線の吸収率が低いので、エネルギーロスが大きく、所定の温度になるまで、時間とエネルギーが非常にかかり、効率的にも優れていず、装置が大型化し、その銅箔の滞留時間がかかってしまう。また、熱風乾燥でも、エネルギー効率的にも優れていず、ヒータ、ブロワー、ならびに水蒸気を伴っ
た多量の排気ガスを装置外部に排出するための経路などの循環経路が必要であり、そのため装置が大型化し、設置スペースが大きく、コストも高くなる。これに対して、近赤外線による乾燥方法が、エネルギー効率的にみても、その即応性からしても非常に優れている。
【0067】
従って、本発明によれば、コンパクトな装置で、エネルギー効率良く、銅箔表面を所定の温度に加熱乾燥でき、耐酸性が向上するとともに、樹脂基板と接着した際にも密着力が大きくなる銅箔を提供できるなど幾多の作用効果を奏する極めて優れた発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の銅箔の乾燥方法を実施するための乾燥装置の第1の実施例の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の銅箔の乾燥方法を実施するための乾燥装置の第2の実施例の概略断面図である。
【図3】図3は、銅箔の乾燥温度とピール強度との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、銅箔の表面を近赤外線、遠赤外線を用いて昇温した際の時間と箔温度との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、従来の熱風乾燥装置の概略図である。
【符号の説明】
1・・・・銅箔
2、3・・・・ロール
4・・・・絞りロール
10・・・・乾燥装置
20・・・・乾燥装置本体
22・・・・銅箔導入孔
24・・・・銅箔出口孔
26・・・・給気装置
28・・・・排気装置
30・・・・巻き取りロール
40、60・・・・近赤外線照射ユニット
42,62・・・・ハロゲンランプ
44・・・・デフレクター
50・・・・制御装置
Claims (8)
- 電解銅箔に対して、その表面に微細粒子を付着させる粗化処理を行い、防錆金属による防錆処理を行う表面処理を行った後に銅箔を乾燥するための方法であって、
前記銅箔の少なくとも一方の表面処理を行った側の表面に近赤外線を照射することによって、銅箔を乾燥させることを特徴とする銅箔の乾燥方法。 - 前記防錆処理が、Zn、Ni、Sn、Cr、Mo、Coからなるグループから選択した少なくとも1種の防錆金属による防錆処理であることを特徴とする請求項1に記載の銅箔の乾燥方法。
- 前記近赤外線による乾燥が、銅箔の表面温度が、100℃〜170℃となるように行うことを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の銅箔の乾燥方法。
- 電解銅箔に対して、その表面に微細粒子を付着させる粗化処理を行い、防錆金属による防錆処理を行う表面処理を行った後に銅箔を乾燥するための銅箔乾燥装置であって、
乾燥室内に連続的に供給される銅箔に対して、該銅箔の少なくとも表面処理を行った側の表面に近赤外線を照射するように、前記銅箔の表面処理を行った側の表面に対向するように近赤外線照射装置を乾燥室内に配置したことを特徴とする銅箔乾燥装置。 - 前記近赤外線照射装置への出力を制御して、前記銅箔の表面の乾燥温度を制御するように構成したことを特徴とする請求項4に記載の銅箔乾燥装置。
- 前記近赤外線照射装置を銅箔の両面側に、対向するように配置するとともに、前記乾燥室内に供給される銅箔の表面の状態に応じて、何れか一方側又は両方側の近赤外線照射装置を選択的に作動させるように制御するように構成したことを特徴とする請求項4から5のいずれかに記載の銅箔乾燥装置。
- 前記近赤外線が、0.8〜2μmの波長を有することを特徴とする請求項1に記載の銅箔の乾燥方法。
- 前記近赤外線照射装置が、0.8〜2μmの波長を有する赤外線を照射することを特徴とする請求項4に記載の銅箔乾燥装置。
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