JP3709683B2 - 車両用乗員保護装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗員の肩部を拘束するショルダーベルトと、乗員の腰部を拘束するラップベルトとを有するシートベルトによって乗員を保護する車両用乗員保護装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平6−234342号公報に示されるように、車両の衝突およびその方向を検出するセンサと、このセンサの検査結果に基づいて複数の衝突時対策システムを作動させる制御手段とを備え、例えば車両の前突時に、乗員の前方に配設された前面エアバッグを展開させるとともに、乗員の姿勢を保持するプリローダシートベルト(シートベルトのプリテンショナー)を作動させるように制御する衝突時集中制御装置が知られている。
【0003】
上記衝突時集中制御装置は、車両に作用する加速度を二次元的に検出するGセンサによって検出された加速度の絶対値が、所定のしきい値よりも大きいと判定されて車両に衝突事故が発生したことが確認された場合に、上記プリテンショナーを作動させる制御信号を出力して乗員の肩部を拘束するシートベルト、つまりショルダーベルトを巻き取り、このショルダーベルトによって乗員の姿勢を保持することにより、障害を軽減するように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにプリテンショナーは、車両の衝突時にシートに着座した乗員の姿勢を効果的に保持できるように、乗員の肩部を拘束するショルダーベルトを巻き取るように構成され、車両が横転するような事故が発生した場合に、プリテンショナーを作動させても乗員の腰部を拘束するラップベルトを積極的に引き締めることができないため、乗員の腰部とラップベルトとの間に隙間が形成されて乗員の姿勢が不安定になるのを効果的に防ぐことができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、車両の横転時に、シートベルトによって乗員を適正に保持して乗員に保護することができる車両用乗員保護装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、乗員の肩部を拘束するショルダーベルトと、乗員の腰部を拘束するラップベルトとを備えたシートベルトによって乗員を保護する車両用乗員保護装置において、車両が横転したことを検出する横転検出手段と、上記ラップベルト側に設けられて上記横転検出手段によって車両が横転したことが検出された場合に上記ラップベルトを引き締める方向に駆動するプリテンショナーと、車両の衝突時に、シートベルトに規制値以上の引出力が作用した場合にシートベルトが引き出されるのを許容しつつ衝突エネルギーを吸収するように構成されたロードリミッタとを備え、上記横転検出手段によって車両が横転したことが検出された場合に、上記ロードリミッタを非作動状態とするように構成したものである。
【0007】
上記構成によれば、車両の横転時にプリテンショナーが作動してラップベルトが引き締められる方向に駆動されることにより、このラップベルトと乗員の腰部との間に隙間が形成されることが防止され、乗員の姿勢が安定して保持されるとともに、上記ロードリミッタが非作動状態に維持されて、このロードリミッタからシートベルトが引き出されることが禁止されることにより、シートベルトによって乗員が効果的に保持されることになる。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の車両用乗員保護装置において、車両の横転時に、ショルダーベルト側に設けられてこのショルダーベルトを引き締める方向に駆動する第1プリテンショナーと、ラップベルト側に設けられてこのラップベルトを引き締める方向に駆動する第2プリテンショナーとを備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、車両の横転時に上記第1,第2プリテンショナーが作動してショルダーベルトおよびラップベルトがそれぞれ引き締められる方向に駆動されることにより、このショルダーベルトおよびラップベルトと、乗員の腰部および肩部との間に隙間が形成されることが防止され、乗員の姿勢が安定して保持されることになる。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項2記載の車両用乗員保護装置において、車両の横転時に、ショルダーベルトを引き締める第1プリテンショナーの引締め部と、ラップベルトを引き締める第2プリテンショナーの引締め部とを共通の駆動手段によって駆動するように構成したものである。
【0011】
上記構成によれば、車両の横転時に上記第1,第2プリテンショナーの引締め部が共通の駆動手段により同時に駆動されてショルダーベルトおよびラップベルトがそれぞれ引き締められることにより、簡単な構成で上記ショルダーベルトおよびラップベルトと、乗員の腰部および肩部との間に隙間が形成されることが防止されることになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る車両用乗員保護装置の実施形態を示している。この車両用乗員保護装置は、乗員の肩部を拘束するショルダーベルト1および乗員の腰部を拘束するラップベルト2からなるシートベルト3と、上記ショルダーベルト1の基端部に設けられたロードリミッタ4および第1プリテンショナー5と、上記ラップベルト2の基端部に設けられた第2プリテンショナー6と、車両に作用する加減速度を検出するGセンサ7と、車両に対する重力の作用方向を検出する検出する重力センサ8と、各センサの検出信号に基づいて車両の状態を判別し、この判別結果に応じて上記ロードリミッタ4および第1,2プリテンショナー5,6を作動させる制御信号を出力する制御ユニット9とを有している。
【0015】
上記ロードリミッタ4は、図2に示すように、ショルダーベルト1が巻き付けられた規制部材10と、ショルダーベルト1を挟持するように相対向して設置された一対の第1クランプ11,12と、一方の第1クランプ11を他方の第1クランプ12側に押動するロックレバー13と、このロックレバー13を揺動変位させるアクチュエータ14と、上記ロックレバー13の揺動変位を規制するストッパ15と、上記第1クランプ11,12の下方に相対向して配設された一対の第2クランプ16,17と、上記規制部材10を回転駆動してショルダーベルト1を巻き取る巻取軸18とを有している。
【0016】
そして、車両の衝突時に、上記制御ユニット9から出力される制御信号に応じ、アクチュエータ14が作動してロックレバー13が下方の待機位置から上方の押動位置に揺動変位することにより、図3に示すように、上記一方の第1クランプ11が他方の第1クランプ12側に押動され、この両第1クランプ11,12によりショルダーベルト1が挟持されるようになっている。また、車両の衝突時に、乗員に作用する慣性力によって上記ロードリミッタ4からショルダーベルト1が引き出されると、これに伴って上記第1クランプ11,12がロードリミッタ4のケーシングに沿って上昇し、上記ストッパ15に当接した時点で上記第1クランプ11,12の上昇が規制されることになる。
【0017】
上記ストッパ15によって両第1クランプ11,12の上昇が規制されるのに応じ、一方の第1クランプ11に係合された上記ロックレバー13の揺動変位が阻止され、これに伴って上記両第1クランプ11,12によって一定の挟持力がショルダーベルト1に付与される。したがって、上記両第1クランプ11,12による挟持力以上の引出力が作用すると、上記規制部材10が圧縮されて塑性変形することにより、この規制部材10の径変化に対応した量だけショルダーベルト1がロードリミッタ4から引き出され、この際に上記両第1クランプ11,12の挟持力に応じた摩擦抵抗が作用することによって衝突エネルギーが吸収されるとともに、上記規制部材10が塑性変形することによっても衝突エネルギーが吸収されるようになっている。
【0018】
また、上記第1クランプ11,12の下方に配設された第2クランプ16,17は、ロードリミッタ4を非作動状態に維持する必要が生じた場合、例えば車両の横転時に、制御ユニット9から出力される制御信号に応じて作動する図外のアクチュエータによって駆動され、上記ショルダーベルト1を挟持することによってこのショルダーベルト1がロードリミッタ4から引き出されるのを禁止するように構成されている。
【0019】
上記第1プリテンショナー5は、車両の衝突時等に乗員の肩部を保持するショルダーベルト1を巻き取るように構成されたものであり、例えば図4に示すように、ケーシングに回転自在に支持されたピニオンギア19と、このピニオンギア19を回転駆動するラックギア20と、このラックギア20を駆動するガス発生器21とを有している。そして、上記ラックギア20およびガス発生器21からなる駆動手段によって上記ピニオンギア19を回転駆動することにより、上記ショルダーベルト1を引き締めるように構成されている。
【0020】
すなわち、車両の衝突時等に、上記制御ユニット9から出力された制御信号に応じてガス発生器21が作動し、上記ラックギア20を矢印に示すように下方の待機位置から上方の駆動位置に移動させるガス圧が発生することにより、上記ピニオンギア19が回転駆動されるとともに、このピニオンギア19に連結された上記ロードリミッタ4の巻取軸18が回転駆動され、上記ショルダーベルト1が巻き取られて引き締められるようになっている。
【0021】
上記ラックギア20は、ガス発生器21の作動後に、図5に示すように、ピニオンギア19の上方に配設された板ばね材からなるストッパ22に係合されて上記駆動位置に係止されるように構成されている。これによって一旦引き締められたショルダーベルト1に弛みが生じる方向にピニオンギア19が回動することが阻止されることになる。
【0022】
また、上記第2プリテンショナー6は、車両の横転時等に乗員の腰部を保持するラップベルト2を巻き取るように構成されたものであり、例えば図6〜図8に示すように、ラップベルト2の固定部23の上方において回転自在に支持された巻取軸25と、この巻取軸25の一側端部に形成されたピニオンギア部26に係合されて上記巻取軸25を回転駆動するラックギア27と、このラックギア27を駆動するガス発生器28とを有し、上記巻取軸25にはラップベルト2の挿通孔24が形成されている。
【0023】
そして車両の横転時等に、上記制御ユニット9から第2プリテンショナー6に出力された制御信号に応じてガス発生器28が作動し、上記ラックギア27を図7の矢印に示すように上方の待機位置から下方の駆動位置に移動させるガス圧が発生して上記巻取軸25が回転駆動されることにより、この巻取軸25上にラップベルト2が巻取られて引き締められるようになっている。上記巻取軸25のピニオンギア部26は、図9に示すように、ラックギア27の側方に配設された板ばね材からなるストッパ29に係止されている。これによって、ガス発生器28の作動後に、一旦引き締められたラップベルト2に弛みが生じる方向に上記巻取軸25が回動することが阻止されるようになっている。
【0024】
上記Gセンサ7は、車体の前後方向に作用する減速度を検出してこの検出信号を上記制御ユニット9に出力するように構成されている。この制御ユニット9には、図10に示すように、上記Gセンサ7から出力される検出信号に応じ、車両が衝突状態となったか否かを検出する衝突状態検出手段29と、上記重力センサ8の検出信号に応じて車両が横転状態となったか否かを検出する横転検出手段30とが設けられている。
【0025】
上記衝突状態検出手段29は、Gセンサ7によって検出された加減速度に基づき、車両が衝突状態となったか否かを検出するとともに、車両の衝突時に、上記第1,第2プリテンショナー5,6を作動させるか否かの判定基準となるしきい値およびその作動時期を設定し、かつ衝突前の所定時期から衝突時までの間における乗員の頭部の移動速度および移動距離を演算によって求めるように構成されている。そして、上記衝突状態検出手段29において求めた乗員の頭部の移動速度および移動距離が上記しきい値よりも大きいことが確認された場合には、上記第1プリテンショナー5と、ロードリミッタ4とをそれぞれ所定のタイミングで作動させる制御信号が出力されるようになっている。
【0026】
また、上記横転検出手段30は、重力センサ8の検出信号に応じて車両が横転状態となったことが確認された時点で、上記第1,第2プリテンショナー5,6トベルト1を作動させる制御信号を出力するとともに、上記ロードリミッタ4を非作動状態とするように構成されている。すなわち、上記横転検出手段30からロードリミッタ4の第2クランプ16,17を締結状態とする制御信号が出力され、この両第2クランプ16,17によってショルダーベルト1が挟持されることにより、上記ロードリミッタ4からショルダーベルト1が引き出されることが禁止されるようになっている。
【0027】
上記制御ユニット9において実行される制御動作を、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。この制御動作がスタートすると、上記各センサの検出値を入力した後(ステップS1)、上記重力センサ8の検出信号に応じて車両が横転状態となったか否かを判定する(ステップS2)。このステップS2でYESと判定された場合には、上記第1,第2プリテンショナー5,6を作動させた後(ステップS3,S4)、上記ロードリミッタ4を非作動状態とする制御信号を出力する(ステップS5)。
【0028】
また、上記ステップS2でNOと判定されて車両が横転状態にないことが確認された場合には、上記Gセンサ7によって検出された減速度Gが、予め設定された3g(gは重力加速度)程度の衝突判定値以上となって衝突事故が発生したか否かを判定し(ステップS6)、NOと判定された場合には、上記ロードリミッタ4および第1,第2プリテンショナー5,6の作動制御を実行する必要がないと判断してリターンする。
【0029】
また、上記ステップS6でYESと判定され、車体に3g以上の減速度Gが作用したこと、つまり車両の衝突事故が発生したことが確認された場合には、上記各センサの検出値等に基づき、上記第1プリテンショナー5を作動させるか否かの判定基準となるしきい値V1,L1と、第1プリテンショナー5の作動タイミングT1とを設定する(ステップS7)。例えば、予め記憶手段に記憶されたマップのデータと、上記各センサの検出値とに基づき、乗員の頭部の移動速度に対応したしきい値V1及び同移動距離に対応したしきい値L1と、上記作動タイミングT1とを読み出して設定する。
【0030】
次いで、上記減速度Gの検出値に基づき、乗員の頭部の移動速度Vと同移動距離Lとを演算する(ステップS8)。すなわち、車両が衝突状態となったことが確認された現時点よりも所定時間αだけ前(例えば1秒前)から現時点までの時間内において上記減速度Gの値を積分することにより上記頭部の移動速度V{=∫Gdt,(t=−α〜0)}を求めるとともに、同時間内において上記移動速度Vの値を積分することにより上記頭部の移動距離L{=∫Vdt,(t=−α〜0)}を求める。
【0031】
その後、上記頭部の移動速度V及び移動距離Lの演算値が、ステップS7で設定された上記しきい値V1,L1以上であるか否かをそれぞれ判定し(ステップS9,S10)、この両ステップS9,S10のいずれかでNOと判定された場合には、乗員に作用する慣性力が小さいために、上記第1プリテンショナー5の作動制御を実行する必要がないと判断してリターンする。
【0032】
また、上記ステップS9,S10でそれぞれYESと判定された場合には、上記ステップS3で設定された作動タイミングT1に基づいて上記第1プリテンショナー5を作動させてショルダーベルト1を引き締める方向に巻き取った後(ステップS11)、上記ロードリミッタ4のアクチュエータ14を作動させて上記ショルダーベルト1の引き出しを規制するとともに(ステップS12)、シートに着座した乗員の前方に配設された図外のエアバッグを展開させる制御信号を出力する(ステップS13)。
【0033】
このように乗員の肩部を拘束するショルダーベルト1と、乗員の腰部を拘束するラップベルト2とを備えたシートベルト3によって乗員を保護する車両用乗員保護装置において、車両が横転したことを検出する横転検出手段30を設けるとともに、上記ラップベルト2側にプリテンショナー6を設け、上記横転検出手段30によって車両が横転したことが検出された場合に上記プリテンショナー6を作動させてラップベルト2を引き締める方向に駆動するように構成したため、車両の横転時に、上記ラップベルト2と乗員の腰部との間に間隙が形成されるのを防止して、横転した車両内で乗員の体を上記ラップベルト2により乗員を安定して保持することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、ショルダーベルト1を引き締める方向に駆動する第1プリテンショナー5をショルダーベルト1側に設けるとともに、ラップベルト2を引き締める方向に駆動する第2プリテンショナー6をラップベルト2側に設けたため、車両の横転時に、第1,第2プリテンショナー5,6をそれぞれ作動させることにより、上記ショルダーベルト1およびラップベルト2を引き締めて乗員の肩部および腰部の両方を拘束し、横転した車両内で乗員の体を、より安定して保持することができる。
【0035】
特に、上記ショルダーベルト1とラップベルト2とが一体に連結されてなる肩腰一体式のシートベルト3では、ショルダーベルト1の弛みがラップベルト2に移行する可能性があるため、上記のように車両の横転時に、第1,第2プリテンショナー5,6の両方を作動させるように構成することにより、上記ショルダーベルト1の弛みがラップベルト2に影響を与えるのを防止してラップベルト2と乗員の腰部との間に間隙が形成されるのを防ぐようにすることが望ましい。
【0036】
また、上記のようにショルダーベルト1に作用する衝突エネルギーを吸収するロードリミッタ4を備えた車両用乗員保護装置において、上記横転検出手段30によって車両が横転したことが検出された場合に、上記ロードリミッタ4を非作動状態とするように構成したため、上記第1,第2プリテンショナー5,6を作動させてシートベルト3を引き締める方向に駆動した後に、上記ロードリミッタ4からシートベルト3が引き出されるのを確実に防止することができる。したがって車両の横転時に、上記ロードリミッタ4からシートベルト3が引き出されるのに起因して乗員の保持状態が不安定になるという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0037】
そして、車両が横転することのない前突事故等が発生した場合には、上記ロードリミッタ4を作動させてショルダーベルト1が引き出されるのを規制することにより、このショルダーベルト1によって乗員の姿勢を適正に保持しつつ、一定値以上の引出力が作用してショルダーベルト1が引き出される際に、上記ロードリミッタ4により衝撃エネルギーを吸収して乗員に過大な荷重が作用するのを効果的に防止することができる。なお、ショルダーベルト1の基端部等に上記ロードリミッタ4と第1プリテンショナー5とが設けられた車両用乗員保護装置において、車両の横転時に、上記第1プリテンショナー5を作動させることなく、ロードリミッタ4を非作動状態としてショルダーベルト1の引き出しを禁止するように構成してもよい。
【0038】
なお、上記実施形態では、衝突状態検出手段29によって車両の衝突事故が発生したことが確認された場合に、第1プリテンショナー5のみを作動させてショルダーベルト1を引き締めるように構成した例について説明したが、車両の衝突時に、第1,第2プリテンショナー5,6の両方を作動させるように構成してもよい。この場合には、上記ショルダーベルト1およびラップベルト2の両方を引き締める方向に駆動することにより、ラップベルト2の弛みがショルダーベルト1に影響するのを防止し、このショルダーベルト1によって乗員を、さらに効果的に保護することができる。
【0039】
上記構成を採用する場合には、ショルダーベルト1を引き締める第1プリテンショナー5の引締め部と、ラップベルト2を引き締める第2プリテンショナー5の引締め部とを共通の駆動手段によって駆動するように構成してもよい。例えば、図12に示すように、第1プリテンショナー5のピニオンギア19からなる引締め部と、第2プリテンショナー6の巻取軸25からなる引締め部とを上下に配設するとともに、両引締め部をそれぞれ回転駆動するラックギア32と、このラックギア32を下方の待機位置から上方の駆動位置に移動させるガス発生器33とからなる共通の駆動手段34を設けた構造としてもよい。
【0040】
上記のように構成した場合には、車両の横転時および衝突時に、上記第1,第2プリテンショナー5,6を略同時に駆動することにより、簡単な構成で上記ショルダーベルト1およびラップベルト2の両方を引き締めて乗員を効果的に保持することができる。また、図例のように上記待機位置にあるラックギア32の先端部を、下方に位置する第2プリテンショナー6の巻取軸25に係合させるとともに、上記ラックギア32を、上方に位置する第1プリテンショナー5のピニオンギア19から離間させるように配設した構成によると、通常時には上記第1プリテンショナー5のピニオンギア19に連結されたロードリミッタ4の巻取軸18を回転可能に支持しつつ、上記駆動手段34の作動時には第2プリテンショナー6の巻取軸25を迅速に回転駆動できるという利点がある。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、乗員の肩部を拘束するショルダーベルトと、乗員の腰部を拘束するラップベルトとを備えたシートベルトによって乗員を保護する車両用乗員保護装置において、車両が横転したことを検出する横転検出手段と、上記ラップベルト側に設けられて上記横転検出手段によって車両が横転したことが検出された場合に上記ラップベルトを引き締める方向に駆動するプリテンショナーと、車両の衝突時に、シートベルトに規制値以上の引出力が作用した場合にシートベルトが引き出されるのを許容しつつ衝突エネルギーを吸収するように構成されたロードリミッタとを設け、上記横転検出手段によって車両が横転したことが検出された場合に、上記ロードリミッタを非作動状態とするように構成したため、車両の横転時に、上記プリテンショナーを作動させてラップベルトを引き締める方向に駆動することにより、上記ラップベルトと乗員の腰部との間に間隙が形成されるのを防止することができ、横転した車両内で乗員の体を上記ラップベルトにより乗員を安定して保持できるとともに、上記ロードリミッタを非作動状態に維持して、このロードリミッタからシートベルトが引き出されることを禁止することにより、このシートベルトが引き出されること起因して乗員の保護状態が不安定になるという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両用乗員保護装置の実施形態を示す説明図である。
【図2】ロードリミッタの具体的構成を示す説明図である。
【図3】ロードリミッタの作動状態を示す説明図である。
【図4】第1プリテンショナーの具体的構成を示す断面図である。
【図5】第1プリテンショナーの作動状態を示す断面図である。
【図6】第2プリテンショナーの具体的構成を示す断面図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【図8】図6のB−B線断面図である。
【図9】第2プリテンショナーのピニオンギア部の係止状態を示す断面図である。
【図10】制御ユニットの具体的構成を示すブロック図である。
【図11】上記制御ユニットによる制御動作を示すフローチャートである。
【図12】第1,第2プリテンショナーの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ショルダーベルト
2 ラップベルト
3 シートベルト
4 ロードリミッタ
5 第1プリテンショナー
6 第2プリテンショナー
19 ピニオンギア(引締め部)
25 巻取軸(引締め部)
30 横転検出手段
34 共通の駆動手段
Claims (3)
- 乗員の肩部を拘束するショルダーベルトと、乗員の腰部を拘束するラップベルトとを備えたシートベルトによって乗員を保護する車両用乗員保護装置において、車両が横転したことを検出する横転検出手段と、上記ラップベルト側に設けられて上記横転検出手段によって車両が横転したことが検出された場合に上記ラップベルトを引き締める方向に駆動するプリテンショナーと、車両の衝突時に、シートベルトに規制値以上の引出力が作用した場合にシートベルトが引き出されるのを許容しつつ衝突エネルギーを吸収するように構成されたロードリミッタとを備え、上記横転検出手段によって車両が横転したことが検出された場合に、上記ロードリミッタを非作動状態とするように構成したことを特徴とする車両用乗員保護装置。
- 車両の横転時に、ショルダーベルト側に設けられてこのショルダーベルトを引き締める方向に駆動する第1プリテンショナーと、ラップベルト側に設けられてこのラップベルトを引き締める方向に駆動する第2プリテンショナーとを備えたことを特徴とする請求項1記載の車両用乗員保護装置。
- 車両の横転時に、ショルダーベルトを引き締める第1プリテンショナーの引締め部と、ラップベルトを引き締める第2プリテンショナーの引締め部とを共通の駆動手段によって駆動するように構成したことを特徴とする請求項2記載の車両用乗員保護装置。
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