JP3709435B2 - 改変デキストランスクラーゼ、その遺伝子組み換え体、グルカンの製造法 - Google Patents

改変デキストランスクラーゼ、その遺伝子組み換え体、グルカンの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、改変デキストランスクラーゼ、その遺伝子組み換え体およびグルカンの製造法に関し、詳しくはロイコノストック・メセンテロイデスのデキストランスクラーゼの活性中心領域の一部を、同菌の異種のデキストランスクラーゼの活性中心領域と交換してなる改変デキストランスクラーゼ、その遺伝子組み換え体およびグルカンの製造法に関する。
本発明の改変デキストランスクラーゼを用いて製造されるグルカンは、α−1,3結合、α−1,4結合およびα−1,6結合の割合が、本来のものとは異なるという特性を有している。
【0002】
【従来の技術】
グルカンは、デンプンやセルロース等のD−グルコースを構成単位とする多糖(デキストラン等)の総称であり、微生物や植物の細胞壁の主要構成成分として知られているものもある。
様々な構造を有するグルカンを生産するために、これまでは異なった構造のグルカンを生産する菌をスクリーニングし、それらの菌株を培養してグルカンの発酵生産を行う方法が採用されている。
また、ロイコノストック(Leuconostoc)属菌のデキストラン生産性向上を目的としてニトロソグアニン等を用いた変異処理も試みられている。さらには、ロイコノストック属菌やストレプトコッカス(Streptococcus)属菌によって産生されるデキストランスクラーゼ[EC 2.4.1.5](以下、DSと略記することがある。)あるいはグルコシルトランスフェラーゼ[EC 2.4.1.125](以下、GTFと略記することがある。)をコードする遺伝子を大腸菌に導入して、該酵素を生産させ、この酵素を用いてデキストランを生産することは研究室レベルで行われている。
【0003】
DSは、前記の微生物等により生産される分子量16万前後の酵素で、基質であるスクロースを分解する反応を触媒し、フルクトースを遊離すると同時にグルコース部分を多糖またはオリゴ糖に転移して、α−1→6結合を主体とする高分子の水溶性α−D−グルカンであるデキストランを合成する酵素である。
また、ロイコノストック属菌由来のグルカン合成酵素には、水溶性のグルカンを合成する酵素の他に、α−1→3結合を主体とする非水溶性のグルカンを合成する酵素が存在し、いずれもGTFと呼ばれている。複数のGTFの作用で、固着性の強いムタンと呼ばれるグルカンを形成する。
本来のデキストランとは異なる構造を有するデキストランを得るには、これまでは目的の構造を有するデキストランを生産する菌株を、スクリーニングにより探し出すこと以外には有効な方法がなく、膨大な時間と労力を必要としていた。
【0004】
DSやGTFによって生産されるグルカンの構造を変化させるために、これらの酵素をコードする遺伝子に、3’−末端のグルカン結合領域のデレーション処理を行い、該結合領域を異なる酵素同士で交換する、部位特異的変異法を用いて特定のアミノ酸残基を別のアミノ酸に置き換える等の処理を行い、変異酵素を作製することが行われている。
ここで、グルカン結合領域とは、カルボキシ末端の繰り返し構造を持った領域を言い、これをデレーション処理することによって、カルボキシ末端が短くなった酵素が生産されるのである。
【0005】
しかし、上記した3’−末端のグルカン結合領域のデレーション処理や異なる酵素間での同領域の交換等の従来の方法では、生産するグルカンの構造をほとんど変えることはできなかった。これは、グルカン結合領域の役割が、単純にグルカンと結合するのみで、酵素反応自体には関与していないことが明らかとなったことからも裏付けられている。
また、部位特異的変異法では、生産するグルカンの構造をある程度変えることが可能であるが、構造を大きく変化させることは未だ成功していない。そのため、酵素の転移反応様式を決める部位が特定されておらず、生産物の構造制御を行うことは困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、DSやGTFにおいて、従来注目されていなかった重要な酵素の活性中心部位を探索し、これらの部位を異なる酵素同士で交換して改変酵素を得ることにより、生産されるグルカンの構造を大きく変えることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、ロイコノストック・メセンテロイデスのデキストランスクラーゼのスクロース・デキストラン結合リシン部位を、同菌の異種のデキストランスクラーゼのスクロース・デキストラン結合リシン部位と交換してなる改変デキストランスクラーゼである。
請求項2記載の本発明は、ロイコノストック・メセンテロイデスのデキストランスクラーゼのムタン結合部位を、同菌の異種のデキストランスクラーゼのムタン結合部位と交換してなる改変デキストランスクラーゼである。
請求項3記載の本発明は、ロイコノストック・メセンテロイデスのデキストランスクラーゼのデキストラン結合リシン部位を、同菌の異種のデキストランスクラーゼのデキストラン結合リシン部位と交換してなる改変デキストランスクラーゼである。
請求項記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかの改変デキストランスクラーゼをコードする遺伝子を挿入したベクターである。
請求項記載の本発明は、請求項のベクターで形質転換された遺伝子組み換え体である。
請求項記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかの改変デキストランスクラーゼを基質に作用させることを特徴とするグルカンの製造法である。
請求項記載の本発明は、請求項載の遺伝子組み換え体が生産する改変デキストランスクラーゼを基質に作用させることを特徴とするグルカンの製造法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の改変DSは、ロイコノストック・メセンテロイデスのDSのムタン結合部位、スクロース・デキストラン結合リシン部位またはデキストラン結合リシン部位を、同菌の異種のDSのムタン結合部位、スクロース・デキストラン結合リシン部位およびデキストラン結合リシン部位のうち対応する部位と交換してなるものである。すなわち、DSのN末端側に存在するデキストランおよび/またはスクロースの結合に関与するリシンを含む部位、硫酸アンモニウム存在下でムタンに結合する部位およびその近傍を含む部位を、遺伝子組み換え技術により2種類のDS酵素分子間で交換したキメラ酵素である。
【0009】
本発明の改変DSを得るには、まず改変していないDSをコードする遺伝子を取得する必要がある。具体的には、公知のロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)株、たとえばNRRL B−512F株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)、NRRL B−1299株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U38181,AF030129)、NRRL B−1355株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:AJ250172)、NRRL B−742CB株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:AF294469)等およびDS様遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)に塩基補完をして活性型DSをコードするよう改変した遺伝子(K. Funane et al., Bioschi. Biotechnol, Biochem., 64(2000)29-38)を用いることができる。ここで、DS様遺伝子とは、DSをコードする領域中に塩基の欠損が存在するためにフレームシフトが生じ、この欠損部分の直後(欠損個所から4塩基下流)に終止コドンが現れるため、通常のDSよりも分子量が3分の2程度と小さく、グルカン結合領域のすべてを欠損したタンパクをコードする遺伝子のことである。
【0010】
ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株の場合、まず改変していないDS遺伝子を組み込んだ組み換えDNAを、舟根らの方法(K. Funane et al., Bioschi. Biotechnol, Biochem., 64(2000)29-38)に従って作製する。すなわち、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株を2%グルコースを含む培地(組成:2%グルコース,1.5%リン酸水素二カリウム,0.5%酵母エキス,0.25%ペプトン,0.005%CaCl2・2H2O,0.001%MgSO4・7H2O,0.001%MnCl2・4H2O,0.001%NaClを塩酸でpH7.4に調整したもの)等で嫌気的に25〜30℃、好ましくは30℃で、12〜24時間、好ましくは一晩培養する。
【0011】
培養した該菌株からのゲノムDNAの精製は、Wilsonらの方法(Wilson et al.,“Current Protocols in Molecular Biology”(1987)2.4.1-2.4.2, Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience)に従って行う。すなわち、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株を2%グルコースを含む培地(組成:2%グルコース,1.5%リン酸水素二カリウム,0.5%酵母エキス,0.25%ペプトン,0.005%CaCl2・2H2O,0.001%MgSO4・7H2O,0.001%MnCl2・4H2O,0.001%NaClを塩酸でpH7.4に調整したもの)5mlに植菌し、嫌気的に30℃で一晩培養する。
培養終了後、遠心分離により集菌し、これを12mgリゾチーム,10mMトリス−塩酸(pH8.0),1mMEDTA溶液567μlを加え、37℃で3時間インキュベートし、菌体を溶解(溶菌)する。さらに、10%SDSを30μlと20mg/mlプロテアーゼKを3μl加え、37℃で1時間インキュベートする。
続いて、CTAB/NaCl(10%セチルトリメチルアンモニウムクロリド,0.7M NaCl)80μlを加え、65℃で10分間インキュベート後、常法に従いフェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿を行い、目的とするゲノムDNAを回収する。
【0012】
DSをコードする遺伝子は、該遺伝子を有する菌株から上記の方法により抽出したゲノムDNAを鋳型として、ポリメラーゼチェーンリアクション(以下、PCRと略記することがある。)法を行うことによっても取得することができる。PCRを行う際のプライマーは、たとえばロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)の場合、DS遺伝子の上流と下流について明らかになっている塩基配列を基に設計した30ベース(塩基)前後の長さの1対を用いる。具体的には、配列表の配列番号1および2記載の1対のプライマーを用いる。また、プライマーとしては、適当な制限酵素認識部位、たとえば5’−末端側にNcoI認識部位、3’−末端側にXhoI認識部位を導入するように設計されたプライマー(配列表の配列番号3および4)を用いることもできる。
このとき行うPCRについては、長鎖DNAの増幅に適したDNAポリメラーゼ、たとえばTakara LATaq(タカラ酒造社製)等を用いて、常法に従って行うことができる。たとえば、PCRについては、DNAの変性は94℃で1分間、プライマーとのアニーリングは50℃で1分間、ポリメラーゼ伸長反応72℃で5分間のサイクルを30回行う。
【0013】
また、DSをコードする遺伝子は、上記の方法の他に、ゲノムDNAを適当な制限酵素で切断してから、ファージベクター等に挿入したゲノムDNAライブラリーより得ることもできる。具体的には、たとえば制限酵素EcoRIでゲノムDNAを完全に切断し、EcoRI認識部位を有するファージであるλgt10(Stratagene社製)等にライゲーションした後、Gigapack II gold packaging extract (Stratagene社製)等と共にパッケージングする。
上記によって得られたゲノムDNA断片を組み込んだバクテリオファージが、ゲノムDNAライブラリーである。これを、常法によってコンピテントセルとした大腸菌NM514株等にインフェクションし、形質転換した大腸菌を得る。
【0014】
たとえば、大腸菌NM514株の場合、0.2%マルトース,10mM MgSO4を含むTB培地(0.5%NaCl,1%トリプトンをNaOHでpH7.4に調整)に植菌し、37℃で4〜6時間培養する。
培養後、該大腸菌をNZY固体培地(組成:0.5%NaCl,0.2%MgSO4・7H2O,0.5%酵母エキス,1%NZアミンをNaOHでpH7.5に調整したもの)に植菌し、37℃で一晩培養する。培養後のプレートからコロニーを1つ取り、これを上記の0.2%マルトース,10mM MgSO4を含むTB培地に接種して、37℃で4〜6時間程度培養する。
【0015】
培養後、遠心分離(2000rpm、10分間)により沈殿した該大腸菌を集菌し、これをOD600が0.5となるように10mM MgSO4に懸濁し、これをコンピテントセルとする。この大腸菌懸濁液600μlに、上記で調製したロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のゲノムDNAのEcoRI断片を含むλgt10等のバクテリオファージ1〜5μlを加え、37℃で15分間保温する。
続いて、NZY固体培地に2%アガーロースを添加したトップアガー4mlを溶解した後に48℃以下に冷却したものを加えて混合し、固まらないうちにNZY固体培地のプレートに重層する。トップアガーが固まった後、30〜37℃、好ましくは37℃で、6〜12時間、好ましくは8時間培養する。これにより得られたプラークは、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のゲノムDNAのEcoRI断片を組み込んだλgt10等のバクテリオファージによるものであり、このプラークをナイロン膜等にトランスファーさせ、これをスクリーニングする。
【0016】
スクリーニングは、次の手順で行う。まず、先に抽出したゲノムDNAを鋳型として、一般的にDS遺伝子を検出するために相同性のあるアミノ酸配列から設計したプライマー(配列表の配列番号5)およびロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)配列から設計したプライマー(配列表の配列番号6)を用いて、DNA断片をPCR法で増幅する。なお、配列番号5記載のプライマーについては、7番目のチミン(t)をシトシン(c)に置換したものについても同様に用いることができる。PCRについては、DNAの変性は92〜96℃、好ましくは94℃で、30秒〜1分間、好ましくは1分間、プライマーとのアニーリングは50〜60℃、好ましくは50℃で、1〜2分間、好ましくは1分間、ポリメラーゼ伸長反応70〜76℃、好ましくは72℃で、1〜2分間、好ましくは1分30秒間のサイクルを25〜30回、好ましくは25回行う。
こうして得たPCR増幅産物を、Dig DNA labeling and detection kit(Boehringer Mannheim社製)等を用いてジゴキシゲニンでラベルし、これをDNAプローブとする。このDNAプローブと同キット等を用いて、ナイロン膜等にトランスファーさせたプラークをスクリーニングすることにより、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)を含むクローンを得ることができる。
【0017】
上記の方法で得られるロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)のクローンは、配列表の配列番号7記載の塩基配列において、4067番目のアデニン(a)のところにEcoRI認識部位があるため、これより上流のDNA断片、すなわち4067番目のアデニン(a)以降が欠損している1〜4066番目までのDS遺伝子の断片しか得られない。
このため、再びゲノムDNAを鋳型として、4067番目より上流に位置する配列を基に設計したプライマー(配列表の配列番号8)と終止コドン(taa)の下流にXhoI認識部位を導入するように設計されたプライマー(配列表の配列番号9)を用いてPCR法により増幅することにより、4067番目以降のDS遺伝子のDNA断片を得た後、2つのDNA断片をつなげ、完全長のクローンとする必要がある。
【0018】
すなわち、上記によって作製したXhoI認識部位を導入した4067番目以降のDS遺伝子のDNA断片については、制限酵素であるEcoRIとXhoIで切断してEcoRI−XhoI断片とした後、1〜4066番目までのEcoRI断片において塩基が欠損している3’−末端部分とつなげることによって、塩基の欠損を補う。
上記によって得られた1〜4066番目までのEcoRI断片と4067番目以降のEcoRI−XhoI断片で3’−末端部分を補ったものを、pBluescript SK+(Stratagene社製)等に制限酵素処理およびライゲーション処理を行うことにより、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株の完全なDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)を含むクローンを得ることができる。
なお、PCRについては、DNAの変性は92〜96℃、好ましくは94℃で、30秒〜1分間、好ましくは1分間、プライマーとのアニーリングは50〜60℃、好ましくは50℃で、1〜2分間、好ましくは1分間、ポリメラーゼ伸長反応70〜76℃、好ましくは72℃で、1〜2分間、好ましくは1分30秒間のサイクルを25〜30回、好ましくは25回行う。
【0019】
得られたDS遺伝子をプラスミド等のベクター(たとえばpET23d(Novagen社製))に挿入した組み換えベクターを作製し、該組み換えベクターを大腸菌等の宿主に取り込ませて形質転換することにより、DS遺伝子を保持した遺伝子組み換え体が得られる。
組み換えプラスミドの調製は、得られたDS遺伝子のDNA断片を適当な制限酵素で切断した後、同じ制限酵素で切断したpET23dベクター(Novagen社製)等のベクターにライゲーションすることにより、完全なDSをコードするDNAフラグメントを含む組み換えベクターを作製することができる。
【0020】
また、鋳型とするDNAによっては、塩基を補完する必要がある。たとえば、DDBJにおいてアクセッション・ナンバー:AB020020として登録されている塩基配列については、翻訳領域中に5塩基(cagat)の欠損があり、フレームシフトが生じるため、通常の位置とは異なる位置に現れる終止コドンによって通常のDSの3分の2程度の長さしかコードされていない。このため、C末端の繰り返し配列であるグルカン結合領域すべてが、欠損したものとなる。
このような場合、欠損している塩基を補完する変異を導入することによって、フレームシフトが生じず、通常の長さの繰り返し構造を有するDSが得られる。このため、塩基の欠損がある場合には、欠損している塩基を補完する変異を導入することが好ましい。
【0021】
上記の塩基を補完する変異を導入する場合には、塩基を補完した後に、組み換えベクターにライゲーションする。
塩基を補完した組み換えベクターの作製は、まず上記した方法により、塩基を補完していないDNAフラグメントを含む組み換えベクターを作製する。次に、該組み換えベクターを鋳型として、配列表の配列番号10記載のプライマーとMutant−super kmキット(タカラ酒造社製)等のキットを用い、欠損している塩基を補完する変異を入れたDNA断片を作製し、該変異部分を含む部位を適当な制限酵素で切断し、これと塩基を補完していないDNAフラグメントを含む組み換えベクターの相当する部分と交換することによって行う。
【0022】
本発明において、交換導入するDSの活性中心領域としては、次の3種類が存在する。すなわち、ムタン結合部位、スクロース・デキストラン結合リシン部位およびデキストラン結合リシン部位である。
DSのN末端活性中心領域中におけるスクロースおよびデキストランと結合するリシン残基を含むと考えられる部位は、酵素の種類によって多少異なるが、既に公知である(K. Funane et al., Oyo Toshitsu Kagaku., 42(1995)27-35 )。たとえば配列表の配列番号11に示すように、塩基を補完したDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)では、322番目のアミノ酸であるアスパラギン(Asn)から341番目のトリプトファン(Trp)付近、391番目のイソロイシン(Ile)から410番目のセリン(Ser)付近である。
また、配列番号12記載のDS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)では、355番目のアミノ酸であるアスパラギン(Asn)から374番目のトリプトファン(Trp)付近、424番目のイソロイシン(Ile)から443番目のアラニン(Ala)付近である。
【0023】
デキストランのみと結合するリシン残基を含むと考えられる部位も、酵素の種類によって多少異なるが、既に公知であり(K. Funane et al., Oyo Toshitsu Kagaku., 42(1995)27-35)、たとえば配列表の配列番号11に示すように、塩基を補完したDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)では、957番目のアミノ酸であるセリン(Ser)から971番目のグリシン(Gly)付近、1000番目のアラニン(Ala)から1019番目のアスパラギン(Asn)付近である。
また、DS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)では、配列表の配列番号12に示すように、970番目のアミノ酸であるセリン(Ser)から984番目のグリシン(Gly)付近、1013番目のアラニン(Ala)から1032番目のアスパラギン(Asn)付近である。
【0024】
N末端の活性中心領域におけるムタンと結合する部位も、同様に酵素の種類によって多少異なるが、既に公知であり(K. Funane et al., Bioschi. Biotechnol, Biochem., 62(1998)123-127)、たとえば配列表の配列番号11記載のアミノ酸配列に示すように、塩基を補完したDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)では、278番目のアミノ酸であるグルタミン酸(Glu)から293番目のセリン(Ser)付近、681番目のフェニルアラニン(Phe)から701番目のプロリン(Pro)付近、1000番目のアラニン(Ala)から1009番目のメチオニン(Met)付近である。
また、配列表の配列番号12記載のアミノ酸配列に示すように、DS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)では、311番目のアミノ酸であるグルタミン酸(Glu)から326番目のアラニン(Ala)付近、709番目のチロシン(Tyr)から729番目のプロリン(Pro)付近、1013番目のアラニン(Ala)から1022番目のイソロイシン(Ile)付近である。
【0025】
上記の活性中心部位ロイコノストック・メセンテロイデスのDSと、同菌の異種のDSの間で交換して種々の改変DSを作製する
【0026】
改変酵素群を作製するためには、置換すべきアミノ酸配列をコードする遺伝子を適当な制限酵素で切断した後、これを異種のDSまたはGTFをコードする遺伝子を同じ制限酵素で切断した置換すべきアミノ酸配列をコードする遺伝子を除いた部分と互いに結合させることにより、他のDS遺伝子に交換導入することができる。
適当な制限酵素認識部位が存在しない場合には、PCR技術を応用することにより、コードするアミノ酸を変化させずに制限酵素部位を導入し、同様に遺伝子の交換導入を行うことができる。
また、公知のストレプトコッカス属菌由来のGTF遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:M17361、M29296、M17391、D90213、M30943、U12643、M64111、L35495、L35928、D13928、M22054、Z11872、Z11873等)間での部分的交換、あるいはDS遺伝子とGTF遺伝子間での部分的交換によって作製した改変DSを用いても、本発明によるグルカンの生産を行うことができる。
【0027】
他のDS遺伝子のムタン結合部位、スクロース・デキストラン結合リシン部位および/またはデキストラン結合リシン部位と交換した改変DS遺伝子を、プラスミド等のベクター(たとえばpET23d(Novagen社製))に挿入し、大腸菌(たとえばBL21(DE3))等の宿主に取り込ませることによって、形質転換された遺伝子組み換え体を得ることができる。この組み換え体を常法に従い適当な条件下で培養後、遠心分離(5000rpm、10分間)等の固−液分離により微生物菌体を回収する。
回収した菌体を超音波処理等によって細胞破砕をした後、遠心分離(15000rpm、20分間)等を行い、改変されたDSを含む上清を回収し、これを粗酵素液とする。粗酵素液は、必要に応じて、常法による精製を行うことによって改変されたDSの精製物とすることもできる。
本発明においては、改変DS、特に遺伝子組み換え体から産生される改変DSを用いてグルカンを製造するが、上記粗酵素液のまま用いてもよく、精製された改変DSを使用してもよい。
【0028】
得られた改変DS酵素液を用いてグルカンを製造する方法は通常の方法を適用すればよい。1例を示すと、改変DS粗酵素液を10%スクロースを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)50〜100ml、好ましくは100mlに、緩衝液100mlあたり0.05〜0.3U/ml、好ましくは0.1U/ml以上添加し、30℃で一晩インキュベートする。インキュベート終了後、反応液と等量のエタノールを加え、沈殿した画分を遠心分離によって回収する。なお、1Uはスクロースを基質として、1分間に1μmoleのグルコースに相当する還元糖を生じる酵素量である。
この沈殿を再び蒸留水に溶解させ、50%エタノール沈殿を行う。この操作を2回繰り返し、得られた沈殿を蒸留水に溶解した後、蒸留水に対して一晩透析を行い、得られたグルカン溶液を常法により凍結乾燥することにより、本発明のグルカンを得ることができる。
本発明のグルカンの製造方法によれば、本来のDSが生産するグルカンとは異なる構造を有するグルカンを安定的に生産することができる。
【0029】
【実施例】
以下において、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1(サイト1の交換)
配列表の配列番号11記載のロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)アミノ酸配列の307番目のチロシン(Tyr)から477番目のアスパラギン(Asn)と配列表の配列番号12記載の同菌株のDS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)アミノ酸配列の340番目のチロシン(Tyr)から510番目のアスパラギン(Asn)の2つのスクロース・デキストラン結合リシン部位を含む領域をそれぞれサイト1と名づけ、これを交換導入することによって、改変していないDS遺伝子を組み込んだ組み換えDNAを作製した。
【0030】
(1)ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)遺伝子を含むクローン作製
ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株について、改変していないDS遺伝子を組み込んだ組み換えDNAを、舟根らの方法(K. Funane et al., Bioschi. Biotechnol, Biochem., 64(2000)29-38)に従って作製した。
まず、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株(NRRL社製)を2%グルコースを含む培地(組成:2%グルコース,1.5%リン酸水素二カリウム,0.5%酵母エキス,0.25%ペプトン,0.005%CaCl2・2H2O,0.001%MgSO4・7H2O,0.001%MnCl2・4H2O,0.001%NaClを塩酸でpH7.4に調整したもの)5mlに植菌し、嫌気的に30℃で一晩培養した。
【0031】
培養した該菌株からのゲノムDNAの精製は、Wilsonらの方法(Wilson et al.,“Current Protocols in Molecular Biology”(1987)2.4.1-2.4.2, Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience)に従って行った。すなわち、上記の培養終了後、遠心分離により集菌し、これを12mgリゾチーム,10mMトリス−塩酸(pH8.0),1mM EDTA溶液567μlを加え、37℃で3時間インキュベートし、菌体を溶解(溶菌)した。さらに、10%SDSを30μlと20μg/mlプロテアーゼKを3μl加え、37℃で1時間インキュベートした。
続いて、CTAB/NaCl(10%セチルトリメチルアンモニウムクロリド,0.7M NaCl)80μlを加え、65℃で10分間インキュベート後、常法に従いフェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿を行い、目的とするゲノムDNAを回収した。
また、DSをコードする遺伝子は、上記のゲノムDNAを制限酵素EcoRI(ニッポンジーン社製)で完全に切断してから、EcoRI認識部位を有するファージであるλgt10(Stratagene社製)にライゲーションした後、Gigapack II gold pakaging extract(Stratagene社製)と共にパッケージングし、これをゲノムDNAライブラリーとした。
【0032】
大腸菌NM514株(Stratagene社製)をライゲーションし、該大腸菌を0.2%マルトース,10mM MgSO4を含むTB培地(0.5%NaCl,1%バクトトリプトンをNaOHでpH7.4に調整)に植菌し、37℃で4〜6時間培養した。培養後、遠心分離(2000rpm、10分間)により集菌し、これをOD600が0.5となるように10mM MgSO4に懸濁し、コンピテントセルとしたものに、前記において調製したロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株の完全なDSをコードするDNAフラグメントを導入したバクテリオファージを感染させ、形質転換した大腸菌を得た。該大腸菌をNZY固体培地で37℃で8時間培養することによって得られたプラークを、ナイロン膜にトランスファーさせ、スクリーニングを行う。
【0033】
スクリーニングは、次の手順で行った。ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株の完全なDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)DNAをスクリーニングするために用いるDNAプローブとしては、通常のDSの内部アミノ酸配列のうち、種間の相同性の高いものから設計したオリゴヌクレオチド(配列表の配列番号13および14、15および16)を用い、先に得たゲノムDNAを鋳型としてPCRで増幅したものを用いた。なお、配列番号13記載のプライマーについては、6番目のチミン(t)をグアニン(g)に、15番目のチミン(t)をシトシン(c)に置換したものについても同様に用いることができた。配列番号14記載のプライマーについては、4番目のチミン(t)をシトシン(c)に置換したものについても同様に用いることができた。配列番号15記載のプライマーについては、7番目のチミン(t)をシトシン(c)に置換したものについても同様に用いることができた。PCRについては、DNAの変性は94℃で1分間、プライマーとのアニーリングは50℃で1分間、ポリメラーゼ伸長反応72℃で、1〜2分間で1分30秒間のサイクルを25回行った。
こうして得たPCR増幅産物を、Dig DNA labeling and detection kit(Boehringer Mannheim社製)を用いてジゴキシゲニンでラベルし、これをDNAプローブとした。このDNAプローブと同キット等を用いて、ナイロン膜(商品名:Hybond-N+、Amersham社製)にトランスファーさせたプラークをスクリーニングした。
【0034】
次に、スクリーニングにより得られた5.2kbと4.3kbの2本のEcoRI DNA断片を、プラスミドpBluescript SK+(Stratagene社製)にライゲーションした。すなわち、制限酵素EcoRI(ニッポンジーン社製)で上記のDNA断片を処理した後、プラスミドの制限酵素サイトにライゲーション処理した。
これにより、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株の完全なDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)遺伝子を含むクローンを得た。
【0035】
(2)同菌株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)遺伝子を含むクローン作製
DDBJにアクセッション・ナンバー:U81374として登録されているロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS遺伝子について、サイト1の交換に必要な制限酵素認識部位を作製するのに支障をきたした。しかも、該遺伝子については、他のDSやGTF間で相同性が高い部分に異なる箇所がいくつか見られた。このため、確認のために該遺伝子の塩基配列について、シークエンシングを行った。この結果、数カ所の塩基が異なっていることがわかった。このため、以下のサイト1の交換においては、配列表の配列番号7記載の塩基配列を用いて行った。
(1)と同様に、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株について、改変していないDS遺伝子を組み込んだ組み換えDNAを得た後、ゲノムDNAライブラリーを作製し、形質転換した大腸菌を得た。該大腸菌をNZY固体培地で37℃で8時間培養することによって得られたプラークを、ナイロン膜にトランスファーさせ、以下の手順でスクリーニングを行った。
【0036】
すなわち、配列表の配列番号7記載のロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDSのDNAをスクリーニングするために用いるプライマーとしては、先に抽出したゲノムDNAを鋳型として、一般的にDS遺伝子を検出するために相同性のあるアミノ酸配列から設計したプライマー(配列表の配列番号5)およびロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)配列から設計したプライマー(配列表の配列番号6)を用い、PCR法で増幅した。PCRについては、DNAの変性は94℃で1分間、プライマーとのアニーリングは50℃で1分間、ポリメラーゼ伸長反応72℃で、1〜2分間で1分30秒間のサイクルを25回行った。
こうして得たPCR増幅産物を、Dig DNA labeling and detection kit(Boehringer Mannheim社製)を用いてジゴキシゲニンでラベルし、これをDNAプローブとした。このDNAプローブと同キット等を用いて、ナイロン膜(商品名:Hybond-N+、Amersham社製)にトランスファーさせたプラークをスクリーニングした。
【0037】
次に、スクリーニングにより得られた7kbのEcoRI−EcoRI DNA断片を、プラスミドpBluescript SK+(Stratagene社製)にライゲーションした。すなわち、制限酵素EcoRI(ニッポンジーン社製)で上記のDNA断片を処理した後、プラスミドのEcoRIサイトに常法によりライゲーション処理した。
これにより、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)遺伝子を含むクローンを得た。
しかし、上記のDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)遺伝子を含むクローンは、配列表の配列番号7記載の塩基配列において、4067番目のアデニン(a)のところにEcoRI認識部位があるため、4067番目のアデニン(a)以降が欠損している1〜4066番目までのDS遺伝子の断片しか得られなかった。
【0038】
このため、再びゲノムDNAを鋳型として、4067番目より上流に位置する配列を基に設計したプライマー(配列表の配列番号8)と終止コドンの下流にXhoI認識部位を導入するように設計されたプライマー(配列表の配列番号9)を用いてPCR法により増幅することにより、4067番目以降のDS遺伝子のDNA断片を得た。PCRについては、DNAの変性は94℃で1分間、プライマーとのアニーリングは50℃で1分間、ポリメラーゼ伸長反応72℃で1分30秒間のサイクルを25回行った。
こうして得た4067番目以降のDS遺伝子のDNA断片については、制限酵素であるEcoRI(ニッポンジーン社製)とXhoI(ニッポンジーン社製)で切断してEcoRI−XhoI断片とした後、塩基が欠損している3’−末端部分を補った。すなわち、上記によって作製したXhoI認識部位を導入した4067番目以降のDS遺伝子のDNA断片については、制限酵素であるEcoRI(ニッポンジーン社製)とXhoI(ニッポンジーン社製)で切断してEcoRI−XhoI断片とした後、1〜4066番目までのEcoRI断片において塩基が欠損している3’−末端部分とつなげることによって、塩基の欠損を補った。
【0039】
上記によって得られた1〜4066番目までのEcoRI断片と4067番目以降のEcoRI−XhoI断片で3’−末端部分を補ったものを、pBluescript SK+(Stratagene社製)等に制限酵素処理およびライゲーション処理を行うことにより、ロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株の完全なDS遺伝子(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)を含むクローンを得た。
【0040】
(3)組み換えプラスミドpDSRSの調製
上記(2)で得たロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株の完全なDS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)遺伝子をpBluescript SK+(Stratagene社製)に結合したDNAを鋳型として、配列表の配列番号17および18記載の1対のプライマーを用いて、PCR法により増幅してDS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)の5’−末端より1408番目のcまでのDNA断片を得た。PCRは、DNAの変性を94℃で1分間、プライマーとのアニーリングを55℃で2分間、ポリメラーゼ伸長反応を72℃で1分間のサイクルを30回行った。これにより、遺伝子上流の余分な部分を取り除くと共に、NcoI認識部位を導入することができる。NcoI認識部位を導入すると、開始コドンのATGのすぐ後のシトシン(c)がグアニン(g)に置き換わり、アミノ酸配列についてもプロリン(Pro)からアラニン(Ala)に変わった。
【0041】
このDNA断片を、制限酵素NcoI(ニッポンジーン社製)およびSpeI(ニッポンジーン社製)で切断して得られたDNA断片と、XhoI(ニッポンジーン社製)およびSpeI(ニッポンジーン社製)で切断した鋳型として用いたDNA断片とを、NcoI(ニッポンジーン社製)およびXhoI(ニッポンジーン社製)で切断したpET23dベクター(Novagen 社製)にライゲーションすることにより、完全なDS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)をコードするDNAフラグメントを含む組み換えDNAを作製し、これをpDSRSと名づけた。
【0042】
(4)組み換えプラスミドpDSRT5の調製
前記(1)で得たロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株の完全なDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)遺伝子をpBluescript SK+(Stratagene社製)に結合したDNAを鋳型として、配列表の配列番号13および14記載の1対のプライマーを用いて、PCR法により増幅してDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)のDNA断片を得た。PCRは、DNAの変性を94℃で1分間、プライマーとのアニーリングを55℃で2分間、ポリメラーゼ伸長反応を72℃で1分間のサイクルを30回行った。このDNA断片を、制限酵素NcoI(ニッポンジーン社製)およびPstI(ニッポンジーン社製)で切断し、NcoI−PstIフラグメントを作製した。
同様に、前記(1)で得たロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株の完全なDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)遺伝子をpBluescript SK+(Stratagene社製)に結合したDNAを鋳型として、配列表の配列番号15および16のプライマーを用いて、PCR法により増幅してDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)のDNA断片を得た。PCRは、上記と同様に行った。このDNA断片を、制限酵素SphI(ニッポンジーン社製)およびXhoI(ニッポンジーン社製)で切断し、SphI−XhoIフラグメントを作製した。
【0043】
こうして得たNcoI−PstIフラグメント、SphI−XhoIフラグメントおよび前記(1)で得たプラスミドpBluescript SK+(Stratagene社製)に組み込まれたDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)遺伝子を、制限酵素PstI(ニッポンジーン社製)およびSphI(ニッポンジーン社製)で切断した。これらのフラグメントを、制限酵素NcoI(ニッポンジーン社製)とXhoI(ニッポンジーン社製)で切断したpET23dベクター(Novagen社製)にライゲーション処理することにより、組み換えDNAであるpDSRTを作製した。
【0044】
続いて、pDSRTを鋳型として、配列表の配列番号10記載のプライマーとMutant−super kmキット(タカラ酒造社製)を用い、欠損している5塩基(cagat)を補完する変異を入れたDNA断片を作製した。
次に、該変異部分を含む部位を制限酵素SphI(ニッポンジーン社製)およびAflII(ニッポンジーン社製)で切断し、0.347kbのSphI−AflII断片を作製した。これを、pDSRTの相当する部分である、配列表の配列番号19記載の塩基配列の3003番目のグアニン(g)から3054番目のグアニン(g)と交換し、これを5塩基(cagat)の補完された組み換えDNAであるpDSRT5とした。
【0045】
(5)DS活性中心部位(サイト1)の交換導入
次に、こうして得たpDSRSとpDSRT5について、DSの活性中心の1つであるサイト1の交換導入を行った。
サイト1の交換を行うにあたり、pDSRSについては、配列表の配列番号7記載の塩基配列において、コードするアミノ酸を変異させることなく制限酵素KpnI認識部位を導入するために、1017番目のシトシン(c)をグアニン(g)に、1020番目のチミン(t)をシトシン(c)に、1021番目のチミン(t)をシトシン(c)にする変異を導入した。
同様に、コードするアミノ酸を変異させることなく制限酵素BstXI認識部位を導入するため、1533番目のシトシン(c)をチミン(t)に、1536番目のチミン(t)をグアニン(g)にする変異を導入した。
pDSRT5については、すでに存在するKpnI認識部位およびBstXI認識部位を利用した。
【0046】
pDSRSおよびpDSRT5について、それぞれ制限酵素KpnI(ニッポンジーン社製)およびBstXI(ニッポンジーン社製)で切断した。切断後、生成した約500bp断片とベクターDNAを含む約7.5bp断片をそれぞれ抽出した後、常法により精製した。
pDSRT5由来の500bp断片をpDSRS由来の7.5bp断片にライゲーションすることにより作製した改変pDSRSをpS1と名づけた。また、pDSRS由来の500bp断片をpDSRT5由来の7.5bp断片にライゲーションすることによって作製した改変pDSRT5をpT1と名づけた。
【0047】
(6)DSの酵素タンパクの発現
上記(5)で作製したpS1とpT1を、それぞれコンピテントセルとした大腸菌BL21(DE3)(Novagen 社製)に取り込ませ、形質転換体である大腸菌BL21(DE3)を作製した。これをアンピシリン200μg/mlを含むLuria-Bertani平板培地で37℃で9時間から一晩培養し、これをアンピシリン200μg/mlを含むLuria-Bertani培地3mlを用いて37℃で一晩振盪培養した。培養後、同培地150mlに1:60となるように培養後の培地を加えたのち、37℃で2時間振盪培養した。
【0048】
いったん培養を止め、イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド(以下、IPTGと略記することがある。)(ワコー社製)を0.5mMとなるように加え、さらに30℃で8時間培養を続け、タンパクの生産誘導を行った。培養終了後、培養物を遠心分離(5000rpm、10分間、4℃)することにより菌体を沈殿として回収した。続いて、回収した菌体を30%グリセリンを含む20mM酢酸ナトリウム溶液(pH5.2)に懸濁し、超音波によって細胞破砕をした。細胞破砕後、遠心分離(15000rpm、20分間、4℃)を行い、上清を回収し、これを粗酵素液とした。
なお、それぞれの粗酵素液に含まれている酵素タンパクについて、pS1から得られたものをS1、pT1から得られたものをT1とそれぞれ名づけた。
【0049】
実施例2(サイト2の交換)
配列表の配列番号11記載のロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)アミノ酸配列の668番目のリシン(Lys)から740番目のグリシン(Gly)と配列表の配列番号12記載の同菌株のDS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)アミノ酸配列の696番目のリシン(Lys)から768番目のグリシン(Gly)のムタン結合部位を含む領域をそれぞれサイト2と名づけ、これを交換導入することによって、改変していないDS遺伝子を組み込んだ組み換えDNAを作製した。
【0050】
実施例1で作製したpDSRSとpDSRT5について、DSの活性中心の1つであるサイト2の交換導入を行った。サイト2の交換導入以外は、すべて実施例1と同様に行った。
サイト2の交換を行うにあたり、pDSRSについては、配列表の配列番号7記載の塩基配列において、コードするアミノ酸を変異させることなく制限酵素DraI認識部位を導入するために、2085番目のシトシン(c)をチミン(t)にする変異を導入した。また、BalI認識部位については、すでに存在するものを利用した。
同様に、pDSRT5については、配列表の配列番号19記載の塩基配列において、コードするアミノ酸を変異させることなく制限酵素BalI認識部位を導入するため、2217番目のシトシン(c)をチミン(t)に、2220番目のグアニン(g)をシトシン(c)にする変異を導入した。
【0051】
pDSRSおよびpDSRT5について、それぞれ制限酵素DraI(ニッポンジーン社製)およびBalI(ニッポンジーン社製)で切断した。切断後、生成した約200bp断片とベクターDNAを含む約7.8bp断片をそれぞれ抽出した後、常法により精製した。
pDSRT5由来の200bp断片をpDSRS由来の7.8bp断片にライゲーションすることによって作製した改変pDSRSをpS2と名づけた。また、pDSRS由来の200bp断片をpDSRT5由来の7.8bp断片にライゲーションすることによって作製した改変pDSRT5をpT2と名づけた。
実施例1と同様に、改変されたDSの酵素タンパクの発現を行い、サイト2を交換導入した粗酵素液を得た。なお、それぞれの粗酵素液に含まれている酵素タンパクについて、pS2から得られたものをS2、pT2から得られたものをT2とそれぞれ名づけた。
【0052】
実施例3(サイト3の交換)
本実施例においては、配列表の配列番号11記載のロイコノストック・メセンテロイデスNRRL B−512F株のDS(DDBJアクセッション・ナンバー:AB020020)アミノ酸配列の902番目のヒスチジン(His)から1118番目のリシン(Lys)と配列表の配列番号12記載の同菌株のDS(DDBJアクセッション・ナンバー:U81374)アミノ酸配列の915番目のヒスチジン(His)から1131番目のリシン(Lys)の2つのデキストラン結合リシン部位を含む領域をそれぞれサイト3と名づけ、これを交換導入した。
【0053】
実施例1で作製したpDSRSとpDSRT5について、DSの活性中心の1つであるサイト3の交換導入を行った。サイト3の交換導入以外は、すべて実施例1と同様に行った。
サイト3の交換を行うにあたり、pDSRSについては、配列表の配列番号7記載の塩基配列において、コードするアミノ酸を変異させることなく制限酵素NspV認識部位を導入するために、2748番目のアデニン(a)をグアニン(g)にする変異を導入した。また、コードするアミノ酸を変異させることなく制限酵素AflII認識部位を導入するために、3388番目のチミン(t)をシトシン(c)に、3390番目のグアニン(g)をチミン(t)に、3393番目のアデニン(a)をグアニン(g)にする変異を導入した。
同様に、pDSRT5については、配列表の配列番号19記載の塩基配列において、コードするアミノ酸を変異させることなく制限酵素NspV認識部位を導入するため、2709番目のアデニン(a)をグアニン(g)にする変異を導入した。制限酵素AflII認識部位については、すでに存在する部位を用いた。
【0054】
pDSRSおよびpDSRT5について、それぞれ制限酵素NspV(Stratagene社製)およびAflII(Stratagene社製)で切断した。切断後、生成した約600bp断片とベクターDNAを含む約7.4bp断片をそれぞれ抽出した後、常法により精製した。
pDSRT5由来の600bp断片をpDSRS由来の7.4bp断片にライゲーションすることによって作製した改変pDSRSをpS3と名づけた。また、pDSRS由来の600bp断片をpDSRT5由来の7.4bp断片にライゲーションすることによって作製した改変pDSRT5をpT3と名づけた。
実施例1と同様に、改変DSの酵素タンパクの発現を行い、サイト3を交換導入した粗酵素液を得た。なお、それぞれの粗酵素液に含まれている酵素タンパクについて、pS3から得られたものをS3、pT3から得られたものをT3とそれぞれ名づけた。
【0055】
実施例4
実施例1〜3で調製した粗酵素液について、SDSポリアクリルアミド電気泳動(以下、SDS−PAGEと略記することがある。)およびウエスタンブロット分析を行った。
SDS−PAGEは、Laemmliの方法(Laemmli, U. K., Nature, 227, 680-685)に従って行った。すなわち、電気泳動装置としてはミニスラブゲル電気泳動槽(アトー社製)を使用し、7.5%アクリルアミドゲル(ワコー社製)および0.1%SDSを含む25mMトリス−グリシン緩衝液を用いて20mAで2時間電気泳動を行った。分子量マーカーとして、HMW Calibration kit for SDS Electrophoresis(Pharmacia社製)を用いた。
電気泳動終了後、ゲルをクマシー ブリリアントブルー(以下、CBBと略記することがある。)(Fluka社製)でタンパク質の泳動パターンを染色した。
【0056】
また、ウエスタンブロット分析は、Towbinらの方法 (Towbin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76, 4350-4354(1979))に従って行った。すなわち、電気泳動装置としてはミニスラブゲル電気泳動槽(アトー社製)を使用し、7.5%ゲル(ワコー社製)および0.1%SDSを含む25mMトリス−グリシン緩衝液を用いて20mAで2時間電気泳動を行った。電気泳動終了後、同じ緩衝液を満たしたブロッティング装置(日本エイドー社製)にセットしブロッティングを行い、電気泳動したタンパク質をPVDF膜(ミリポア社製)にトランスファーさせた。ブロッティングは室温で2.5mA/cm2で20分間で行った。なお、PVDF膜は、あらかじめメタノールに数秒浸漬した後、25mMトリス,20%メタノール,40mM6−アミノカプロン酸(pH9.4)に浸漬した。
【0057】
ブロッティング終了後、PVDF膜は、1%スキムミルクを含む20mMトリス−塩酸,0.15M NaCl(pH7.5)20mlに一晩浸漬した。次に、第1抗体(10mg/ml)を、0.5%スキムミルクを含む20mMトリス−塩酸,0.15M NaCl(pH7.5)に1/1000(v/v)となるように加え、これにPVDF膜を1時間30分浸漬した。続いて、スキムミルクを含まない20mMトリス−塩酸,0.15M NaCl(pH7.5)20mlで5分間洗浄し、これを4回繰り返した。
洗浄後、第2抗体をスキムミルクを含まない20mMトリス−塩酸,0.15M NaCl(pH7.5)に1/3000(v/v)となるように加え、これにPVDF膜を1時間浸漬した。浸漬後、スキムミルクを含まない20mMトリス−塩酸,0.15M NaCl(pH7.5)20mlで5分間洗浄し、これを3回繰り返した。
【0058】
なお、第1抗体としてはマウス抗グルコシルトランスフェラーゼ(日本大学(千葉県松戸市)の福島教授より供与)、第2抗体としてはペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG((γ−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ−マウスIgG (BRL社製))を用いた。
抗体と反応させたPVDF膜は、生乾きした後、ECL Western blotting detection reagent(Amersham Pharmacia biotech社製)を用いて、hyperfilm (Amersham LIFE SCIENCE 社製)に感光した。
図1は、SDS−PAGE終了後のタンパク質の泳動パターンを染色したものである。また、図2は、ウエスタンブロット分析の結果を示したものである。
【0059】
SDS−PAGEを行った結果、pS1から生産されたタンパクS1はpDSRSより生産されたDSRSタンパクと、pT1から生産されたタンパクT1はpDSRT5より生産されたDSRT5タンパクと分子量が同じであることが明らかとなった。S1の分子量は200kDa、T1の分子量は210kDaであった。
また、pS2から生産されたタンパクS2、pS3から生産されたタンパクS3、pT2から生産されたタンパクT2およびpT3から生産されたタンパクT3についても、上記したS1とT1の場合と同様の結果であった。S2の分子量は200kDa、S3の分子量は200kDa、T2の分子量は210kDa、T3の分子量は210kDaであった。
一方、ウエスタンブロット分析においても、SDS−PAGEの結果と同様の傾向を示し、図中の矢印の位置にバンドが認められた。
【0060】
実施例5
実施例1〜3で調製した粗酵素液20mlを、20mM酢酸ナトリウム(pH5.2)1000ml中で一晩透析し、これを精製DSとした。
この精製DS150μlを、12.5%スクロースを含む20mM 酢酸ナトリウム(pH5.2)溶液100μlに添加し、30℃で20分〜1時間反応を行った。反応終了後、スクロースの分解によって生じる還元糖の増加をネルソン・ソモギー法(M. Somogyi, J. Biol. Chem., 160(1945)69-73)で測定し、これをスクロース分解活性とした。結果を第1表に示す。表中、DSRSはpDSRSから生産されたタンパク、DSRT5はpDSRT5から生産されたタンパクを、それぞれ表している。DS酵素1ユニット(U)は、1分間に1μmoleのグルコースに相当する還元糖を生産する酵素量である。
【0061】
【表1】
第1表
Figure 0003709435
【0062】
第1表から明らかなように、発現させたすべての酵素タンパクについて、スクロース分解活性があることが明らかとなった。このうち、S1、S2およびT2については、DSRSまたはDSTR5とそれぞれ同等の活性を保持していた。しかし、S3についてはDSRSの26%、T1についてはDSRT5の15%、T3についてはDSTR5の4%程度に、活性が低下していることが明らかとなった。
【0063】
実施例6
実施例5で透析を行い精製した各種DS0.05〜0.3Uを、10%スクロースを含む20mM 酢酸ナトリウム(pH5.2)緩衝液100mL中で30℃の恒温器でゆるく振盪させながら8時間反応を行った。
上記によって生成したグルカン(デキストラン)を50%エタノールで沈殿させた後、これを遠心分離(10000rpm、30分間)して回収した。次いで、この沈殿を蒸留水50mlに溶解し、さらに50%エタノール沈殿を3回繰り返した。最後のグルカン水溶液を蒸留水20mlに対して一晩透析した。
透析終了後、遠心分離(18000rpm、30分間)を行い、上清と沈殿に分けた。すなわち、上清を水溶性画分として、沈殿を非水溶性画分として、それぞれ凍結乾燥して重量を測定し、各DSを作用させることによって得られたグルカンについて、水溶性画分と非水溶性画分の存在比率を算出した。結果を第2表に示す。
【0064】
【表2】
第2表
Figure 0003709435
【0065】
第2表から明らかなように、DSRSを作用させたグルカンまたはDSRT5を作用させたグルカンと比較して、S1を作用させたグルカンおよびT1を作用させたグルカンともに水溶性画分が増えることが明らかとなった。
また、S2を作用させたグルカンは非水溶性画分が増加し、T2を作用させたグルカンは水溶性画分が増加していることが明らかとなった。
さらに、DSRSを作用させたグルカンが主に水溶性グルカンであるのに対し、S3を作用させたグルカンは非水溶性画分が増加していることが明らかとなった。また、DSRT5を作用させたグルカンが主に非水溶性グルカンであるのに対し、T3を作用させたグルカンは主に水溶性グルカンであることが明らかとなった。
したがって、本発明のようにDSの活性中心部位を交換導入することによって、生産されるグルカンの性質を変化させることが可能であることが示された。
【0066】
実施例7
実施例6で調製した各種グルカンについて、化学構造をメチル化分析法(W. S. York et al., Methods Enzymol., 118(1985)3-40)により、グルカンの結合様式の比率について分析した。
常法により凍結乾燥したグルカン100〜150μgを脱水DMSO(ワコー社製)0.5mlに溶解した。グルカン溶解液にN2充填した後、70℃で1時間インキュベートし、一晩攪拌した。次に、150μmol K+DMSO-(水素化カリウムはアルドリッチ社製、DMSOはワコー社製)を100μl加え、2時間室温で攪拌した後、氷中で冷却し、1.5μmol MeI(関東化学)を100μlを加え、室温で一晩攪拌し、メチル化反応を行った。
蒸留水を0.5ml加えて反応をとめ、N2をバブリングすることにより、CH3Iを除去した。これを蒸留水1000mlに対して一晩透析し、常法に従って凍結乾燥した。
【0067】
凍結乾燥したものに、2Mトリフルオロ酢酸(以下、TFAと略記することがある。)(ワコー社製)250μlを加え、121℃で1時間加温した。加温終了後、直ちに冷却し、イソプロピルアルコール(ワコー社製)250μlを加え、室温でエバポレートしてTFAを除去すると共に、乾固した。
次に、50%メタノール(ワコー社製)100μlを加え、1.5M NH4OH(ワコー社製)に10mg/ml NaBD4(シグマ化学社製)を溶解した溶解液を200μl加え、室温で1時間放置した。
放置後、酢酸(ワコー社製)50μlを加え、さらに酢酸:メタノール(1:9)200μlを加え、混和した後に室温でエバポレートし、この操作を3回繰り返した。続いて、メタノール(ワコー社製)200μlを加え、室温でエバポレートし、この操作を3回繰り返した。これに、無水酢酸(ワコー社製)50μlを加えて121℃で3時間反応させた後、直ちに冷却した。冷却後、蒸留水500μlを加え、固体Na2CO3(ワコー社製)を泡が出なくなるまで加えた。
【0068】
続いて、CH2Cl2(ワコー社製)500μlを加えて混和した後に生じた有機層を別の試験管へ移し、室温でエバポレートした。これをアセトン500μlに溶解し、再度室温でエバポレートした。エバポレート後、アセトン20μlに溶解したもののうち、1μlを試料としてガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC−14A)を用いて分析した。このとき、分析用カラムとしてカラムSP−2330(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.2μm)(スペルコ社製)を用い、カラム温度170℃で分離し、クロマトパック(島津製作所製、C−R126A)で検出した。
また、ガスクロマトグラフィー質量分析(以下、GC/MSと略記することがある。)についても、上記の試料1μlを用いて行い、それぞれのピークに由来する物質について同定した。GC/MSには、HP6890シリーズ GCシステム、Benchtop Quadrupole Mass Spectrometer JEOL Automass SystemII(いずれもヒューレットパッカード社製)およびカラムSP−2330(スペルコ社製)を用いた。
【0069】
グルカンの結合様式の構成比率(%)についての結果を、第3表に示す。表中、T-Glcpは末端のグルコース残基、3-Glcpはα−1→3直鎖結合、4-Glcpはα−1→4直鎖結合、6-Glcpはα−1→6直鎖結合、3,6-Glcpはα−1→3,6分岐結合、4,6-Glcpはα−1→4,6分岐結合を表している。また、たとえばS−S1はS1を作用させることによって得られる水溶性画分に含まれるグルカン、I−S1はS1を作用させることによって得られる非水溶性画分に含まれるグルカンという意味である。
【0070】
【表3】
第3表
Figure 0003709435
−:痕跡程度
S-:水溶性画分
I-:非水溶性画分
【0071】
この結果、S1グルカンの主成分である水溶性画分に含まれるS−S1グルカンは、DSRSを作用させることによって得られるDSRSグルカンよりもα−1→6直鎖結合が増加する一方で、分岐結合が減少していることが明らかとなった。
また、T1グルカンの主成分である非水溶性画分I−T1グルカンは、DSRT5グルカンやDSRSグルカンとは全く異なり、ほとんどがα−1→4直鎖結合となり、α−1→3結合およびα−1→3,6分岐結合が減少していることが明らかとなった。
【0072】
S2グルカンは、DSRSグルカンよりもα−1→6直鎖結合がやや減少する一方で、α−1→4,6分岐結合が増加していることが明らかとなった。
また、T2グルカンは、DSRT5グルカンよりもα−1→6直鎖結合がやや減少するが、α−1→4直鎖結合がやや増加していることが明らかとなった。
S3グルカンは、α−1→6直鎖結合が減少するが、α−1→3直鎖結合が増加していることが明らかとなった。また、T3グルカンは、水溶性画分および非水溶性画分について、α−1→6直鎖結合およびα−1→3直鎖結合が減少するが、α−1→4直鎖結合が増加していることが明らかとなった。
【0073】
以上のことから、改変DSであるS1を作用させることによって得られるグルカンは、酵素活性中心部位の改変を行っていないDSRSやDSRT5を作用させることによって得られる従来のグルカンとは糖の結合様式の割合が異なっているため、生産されるグルカンの構造自体も異なるものであることが明らかとなった。このS1グルカンは、従来のグルカンよりも水溶性が高いため、代用血漿やサイクロデキストラン等の製造に適したデキストランを安定的に生産できると考えられる。
さらに、改変DSであるT1は、ほぼアミロースに近い構造のグルカンを生産することから、植物体からアミロースを調製するよりも純度の高いα−1→4直鎖結合のグルカンを、スクロースから1段階の反応で生産するのに有効であると考えられる。
【0074】
改変DSであるS2またはT2が生産するグルカンは、DSRSやDSRT5が生産するグルカンと比較して、糖の結合様式の割合がわずかに異なるため、グルカンの構造においてもわずかな変化が起こっているものと考えられる。
また、改変DSであるS3およびT3は、DSRSやDSRT5が生産するグルカンと比べて、糖の結合様式の割合が異なった、かなり構造の異なるグルカンを生産することが明らかとなった。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、ロイコノストック・メセンテロイデスのデキストランスクラーゼ(DS)のムタン結合部位、スクロース・デキストラン結合リシン部位またはデキストラン結合リシン部位を、同菌の異種のDSのムタン結合部位、スクロース・デキストラン結合リシン部位およびデキストラン結合リシン部位のうち対応する部位と交換して作製した改変DSと、この改変DSをコードする遺伝子を挿入したベクター、該ベクターにより形質転換された遺伝子組み換え体が提供される。
さらに、改変DSを基質に作用させることによって、糖の結合様式の割合が変化し、構造が改変されたグルカンを安定的に製造する方法が提供される。
また、改変DSを作製する際に交換導入する部位をムタン結合部位、スクロース・デキストラン結合リシン部位およびデキストラン結合リシン部位の中から選択することにより、酵素反応生産物の構造や性質を大きく変化させることが可能で、様々な用途への応用が期待される。
【0076】
【配列表】
Figure 0003709435
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【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例4におけるSDS−PAGE終了後のタンパク質の泳動パターンを示したものである。
【図2】 実施例4におけるウエスタンブロット分析の結果である。

Claims (7)

  1. ロイコノストック・メセンテロイデスのデキストランスクラーゼのスクロース・デキストラン結合リシン部位を、同菌の異種のデキストランスクラーゼのスクロース・デキストラン結合リシン部位と交換してなる改変デキストランスクラーゼ。
  2. ロイコノストック・メセンテロイデスのデキストランスクラーゼのムタン結合部位を、同菌の異種のデキストランスクラーゼのムタン結合部位と交換してなる改変デキストランスクラーゼ。
  3. ロイコノストック・メセンテロイデスのデキストランスクラーゼのデキストラン結合リシン部位を、同菌の異種のデキストランスクラーゼのデキストラン結合リシン部位と交換してなる改変デキストランスクラーゼ。
  4. 請求項1〜3のいずれかの改変デキストランスクラーゼをコードする遺伝子を挿入したベクター。
  5. 請求項のベクターで形質転換された遺伝子組み換え体。
  6. 請求項1〜3のいずれかの改変デキストランスクラーゼを基質に作用させることを特徴とするグルカンの製造法。
  7. 請求項記載の遺伝子組み換え体が生産する改変デキストランスクラーゼを基質に作用させることを特徴とするグルカンの製造法。
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