JP3709124B2 - コポリエーテルエステルの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維、ボトル、フィルム用途等で広汎に使用された後、回収されるポリエステルを新規な手法で化学処理する結果得られる生分解性、易焼却性あるいは伸長回復性等の付加価値を備え、繊維、プラスチックに再利用することができるコポリエーテルエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは合成繊維やボトル、フィルム用プラスチック、その他各種成形材料として広く用いられている。特に半芳香族ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(以下PETと略することがある)はその優れた繊維形成能とバランスの取れた機械特性により各種ポリエステルの中でも最も汎用性の高い素材として大量に製造、使用されている。現在、その世界生産量は年間1300万トン以上であり、環境問題との関連も相俟って使用済みの廃棄PET回収と再利用の課題解決が待たれるようになった。
【0003】
これまでに、PETの回収処理方法としては、そのまま焼却する他、容器等は傷みの少ないものは再度容器として、またその他は衣料用繊維へのマテリアルリサイクルが検討され、また触媒を用い、高温、強アルカリ条件下に原料に戻すケミカルリサイクルが検討され、一定の成果を上げている。
【0004】
しかしながらこれらのマテリアルリサイクルしたPETは強度、色調、価格、安全性の問題から、衣料繊維用途以外の使用が制限され、またケミカルリサイクルによるPET再生は特に価格的な面で大規模に事業展開することが困難であり、これら増大する使用済みPETの処理をまかなうには十分ではない。更に焼却による処理もポリオレフィンに比べると単位重量当たりの燃焼熱が小さいものの、紙や綿のような天然高分子材料よりはかなり発熱量が大きい為、大量の処理では焼却炉の寿命を縮めることになり好ましくない。
【0005】
もしポリエステルに生分解性、あるいは紙や綿のように簡単に焼却できる特徴や、弾性回復性のような高機能な機械特性を廉価に付与できれば、単に焼却や廃棄を容易にするのみならず、更なる付加価値を有する再利用ポリマーとしての有効利用も可能となると考えられる。例えば生分解性に限っても、ポリエステルには生分解性を示すものもあるが、産業用に使用される半芳香族ポリエステルの多くは生分解性を示さない。
【0006】
これまでに生分解性まで考慮したポリエステルの処理方法として、例えば特開平9−264011号公報ではシクロデキストリン化合物によりポリエステルを加水分解して生分解性の低分子量体とし、これを廃棄処理する方法が開示されているが、用いるシクロデキストリンの価格やプロセスを考えると決して廉価な処理方法とは言えず、かつ処理後の低分子量体はもはや商品価値のない廃棄物であるなど、増大するポリエステルの将来的な処理方法としては不十分といえる。
【0007】
更に高付加価値化まで考えたポリエステル再利用としては、例えば特開平8−82372号公報、特開平10−265566号公報などにPETを脂肪族、または芳香族ジアミンと長時間加圧下に反応させることによるポリアミド、またはポリエステルアミドの製造法が開示されているが、反応に長時間を要し、更に得られるポリアミドの分子量は実用に供せられるには不充分で固相重合などの煩雑なプロセスを経由する必要があり生産性やコスト面で実用的なものとは言い難い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、大量に発生するポリエステル廃棄物を回収後、効率的かつ廉価に解重合を行い、次いで重合及び/又は鎖延長反応を行うことにより繊維、フィルムその他の成形材料として十分な重合度を有し、しかもそれらを廃棄する際には都合の良い易焼却性、生分解性を有するのみならず、エラストマーの様な弾性回復性をも有する高付加価値型の廉価かつ実用的なリサイクルコポリエステルの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、ポリエステルの解重合試剤として、廉価かつ高エステル反応性であると同時に、共重合成分として組み込まれたときに化学的、生物学的に容易に加水分解を受け、しかも分子内に高濃度に酸素原子を有するため燃焼時の発熱量の小さいのみならず、構造組成によっては物理化学的に低Tgのソフトセグメントとなり得るポリエーテルグリコールを選択した。そしてこれを回収したリサイクルポリエステルと共に反応釜、あるいは反応型混練押し出し機に通すだけで極めて短時間に解重合が進み、しかも解重合後、高真空下での後重合及び/又は常圧で鎖延長剤を添加することにより短時間で繊維、フィルムその他の成形材料として十分な重合度を有し、しかもそれらを廃棄する際には都合の良い易焼却性、生分解性を有するのみならず、組成によってはエラストマーの様な弾性回復性をも付与することが可能な高付加価値型の廉価なリサイクルコポリエステルを製造できる方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明はポリエステルをポリエーテルグリコールで解重合し、次いで鎖延長剤を用いて重合せしめることを特徴とするコポリエーテルエステルの製造方法に関するものである。
【0012】
更に該回収ポリエステルとして固有粘度0.2以上である芳香族ポリエステルを用いることが好ましい。また該ポリエーテルグリコールとしては、重合度3〜1000のオキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、オキシトリメチレン鎖、オキシテトラメチレン鎖からなる群から選ばれる少なくとも一種を繰り返し単位とするグリコールであることが好ましい。さらに解重合を、ポリエーテルグリコールの濃度が5〜95重量%となる条件で、180〜280℃下に行うことことが好ましい。更に本発明は鎖延長剤として少なくとも一種の縮合型及び/又は付加型のカップリング剤の何れかをポリエステルとポリエーテルグリコールの総量100重量部に対して0.1〜30重量部添加、使用することが好ましい。そしてポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルグリコールがポリエチレングリコール、鎖延長剤がジフェニルオキザレート及び/又はテレフタロイルビスカプロラクタムであり、鎖延長剤をポリエステルとポリエーテルグリコールの総量100重量部に対して0.1〜30重量部添加、使用することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のポリエステルの化学処理によるコポリエーテルエステルは、第一にポリエステルをポリエーテルグリコールを解重合剤として、反応釜あるいは反応型混練押し出し機を用いて解重合を行う段階、次いで解重合物を高重合度化する段階の2つから製造されることを特徴とする。これら一連の操作は反応釜を用いる場合、及び反応型混練押し出し機を用いる場合何れについても連続して行うことが好ましい。
【0014】
またポリエステルはあらかじめ溶融した状態でポリエーテルグリコールと混練するか、フレークあるいはチップ化された状態でポリエーテルグリコールと混練することが好ましい。溶融、解重合温度としてはポリエステルの融点近傍であれば良いが、ポリエーテルグリコール濃度が十分に高い場合はポリエステルがポリエーテルグリコールに熱時溶解する形で反応が進行する為ポリエステルの融点より20℃程度低い温度で操作することも可能である。解重合は、180〜280℃下に行うことことが好ましい。
【0015】
また、解重合物の高重合度化については、解重合後に鎖延長剤を用いることにより達成される。解重合物に後述する鎖延長剤を添加し、そのまま混練することで常圧下に高重合度化しても良い。更にはこれら減圧重合と鎖延長剤を併用しても良い。
【0016】
最終的に得られるコポリエーテルエステルは、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比6/4)混合溶媒を用いて測定した固有粘度が0.5以上であることを特徴とする。該固有粘度は好ましくは0.7以上であり、10以下である。
【0017】
得られるコポリエーテルエステルの好ましい構造について、ポリエーテルエステル単位の成分比を繰り返し数m、ポリアルキレンエステル単位をnと表現すると、m/n=0.01〜1200、さらに好ましくは0.05〜300である。
【0018】
本発明で対象とするポリエステルは、主に繊維、ボトル、フィルム用途等で広汎に使用後、回収された芳香族ポリエステルであり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンイソフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリトリメチレン2,6−ナフタレート、ポリテトラメチレン2,6−ナフタレートをあげることができる。このうち好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレートを、より好ましくはポリエチレンテレフタレートをあげることができる。
【0019】
これらのポリエステルは、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比6/4)混合溶媒を用いて測定した固有粘度が0.2以上であればよい。回収ポリエステルの重合度がこれより低いと後重合時の高重合度化が困難となり、満足する重合度のコポリエーテルエステルを円滑に得ることができないことがある。
【0020】
本発明で用いる解重合剤であるポリエーテルグリコールは、重合度5〜1000のオキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、オキシトリメチレン鎖、オキシテトラメチレン鎖からなる群から選ばれる少なくとも一種を繰り返し単位とするグリコールであることが好ましい。ポリエーテルグリコールの重合度が5未満である場合、これらのユニットは本質的に生分解性や易焼却性、あるいはソフトセグメントとしての物性発現に乏しく、得られるコポリエーテルエステルの融点や物性を単に大きく損なうだけとなることがある。これはポリエステルの共重合において低分子量の共重合成分はブロック性に乏しく結晶構造を大きく乱してしまうためである。またポリエーテルグリコールの重合度が1000を超える場合、これらのユニットの分子量があまりに高いものとなり解重合反応活性な末端濃度が極端に低下し解重合剤としての機能を失う上、ユニット分子量が必要以上に巨大な為に得られる共重合体が成形性、物性的にも優れたものにならない為である。解重合剤として用いるポリエーテルグリコールの重合度は5〜1000、好ましくは10〜500、より好ましくは20〜400である。
【0021】
また、解重合に用いるポリエーテルグリコールの量はポリエステルとの混合物全体100重量部に対し、5〜95重量部である。ポリエーテルグリコールの量がこれより少ないと実質的に解重合が進まず、かつ得られるコポリエーテルエステルに求められる生分解性、弾性回復性などの物性が発現しない。ポリエーテルグリコールの量がこれより多いと回収ポリエステルの処理効率が極端に低くなり実用価値を失う。
【0022】
更に用いるポリエーテルグリコールの種類は、目的とするコポリエーテルエステルの物性に応じて使い分けることができる。例えば生分解性、易焼却性を対象物性とするとオキシエチレン鎖やオキシプロピレン鎖を主たる構成単位とするポリエーテルグリコールを使用することが好ましく、一方で弾性回復性発現にはオキシトリメチレン鎖やオキシテトラメチレン鎖を選択することが好ましい。当然、実際の使用ではこれらを適当量混在して使用することも好ましく実施することができる。
【0023】
本発明において、ポリエステルのポリエーテルグリコールによる解重合反応は、回収ポリエステル中に製造時添加されている重合触媒により進行し得るため、特に新たな触媒を添加せずとも行なうことができるが、反応の促進の為に適当な触媒を加えても良い。解重合反応触媒としては、一般的なポリエステルのエステル交換触媒を用いることができる。具体的にはアンチモン、ゲルマニウム、錫、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マンガン、コバルト、ニッケル等の金属化合物の他、スルホサリチル酸、オルソ−スルホ安息香酸無水物等の有機スルホン酸化合物が好ましく用いられる。触媒添加量は、ジカルボン酸酸成分1モルに対して1×10-5〜1×10-2モル、好ましくは5×10-5〜5×10-3モルが適当である。
【0024】
また本発明で用いられる鎖延長剤としては、ポリエステルの鎖延長剤として使用されている一般的な縮合型及び/又は付加型のカップリング剤を用いることができる。
【0025】
縮合型のカップリング剤としては、二官能性の活性エステル化合物、カルボン酸無水物、アシルラクタム、カルボン酸塩化物などを用いることができる。例えば活性エステル化合物ではジフェニルオキザレート、ジフェニルマロネート、ジフェニルスクシネート、ジフェニルグルタレート、ジフェニルアジペート、ジフェニルテレフタレート、ジフェニルイソフタレート、ジフェニル−2,6−ナフタレート、ジフェニルカーボネート、ジフェニル4,4’−ジフェニルジカルボキシレートが、またカルボン酸無水物としてはピロメリット酸無水物が、アシルラクタムとしてはテレフタロイルビスカプロラクタム、アジポイルビスカプロラクタム、スクシニルビスカプロラクタム、イソフタロイルビスカプロラクタム、ジフェニル4,4’−ジフェニルジカルボニルカプロラクタムが、カルボン酸塩化物としてはテレフタロイルクロリド、アジポイルクロリド、スクシニルクロリド、イソフタロイルクロリド、2,6−ナフタロイルクロリド、ジフェニル4,4’−ジフェニルジカルボニルクロリド等を好適に用いることができる。これらのうちジフェニルオキザレート、ジフェニルカーボネート、テレフタロイルビスカプロラクタム、ピロメリット酸無水物等が好ましい。
【0026】
一方付加型のカップリング剤としては、二官能性のエポキシド、イソシアナート、オキサゾリン、ベンゾオキサジノン、ポリカルボジイミドなどを用いることができる。具体的には二官能性のエポキシドとしてビスフェノールAのビスグリシジルエーテル、二官能性のイソシアナートとしてエタンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ペンタメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ヘプタメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート、ノナメチレンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、二官能性のオキサゾリンとしてビス−オキサゾリン、ビス−1,4−テトラメチレンオキサゾリン、ビス−1,4−フェニレンオキサゾリン、ビス−1,4−(2−ニトロフェニレン)オキサゾリン、ビス−1,4−(2−メチルフェニレン)オキサゾリン、二官能性のベンゾオキサジノンとしてはビスベンゾオキサジノン、ビス−1,4−テトラメチレンベンゾオキサジノン、ビス−1,4−フェニレンベンゾオキサジノン、ビス−1,4−(2−ニトロフェニレン)ベンゾオキサジノン、ビス−1,4−(2−メチルフェニレン)ベンゾオキサジノン、ポリ(4,4’−(1,1’−メチリデンジフェニレン)カルボジイミド)などを用いることができる。これらのうちビス−オキサゾリン、ビスベンゾオキサジノン、ヘキサメチレンジイソシアナート、ポリカルボジイミド等が好ましい。
【0027】
本発明方法で使用する鎖延長剤の添加量としては、ポリエステルとポリエーテルグリコールの総量100重量部に対して0.1〜30重量部とすることが好ましく、特に0.5〜20重量部とすることが好ましい。鎖延長剤の添加量がポリエステルとポリエーテルグリコールの総量100重量部に対して0.1重量部未満であると、解重合体の重合度増加が十分に進行せず、所望の高重合度化効果を得ることができないことがある。また、添加量が30重量部より多くなると鎖延長剤の骨格がポリマー中に過剰に組み込まれたり、未消費の剤がポリマー中に残存することになり最終ポリマーの目標物性や成形性、コスト、生産性等に悪影響を及ぼすことがある。本発明における好ましい添加量は、ポリエステルとポリエーテルグリコールの総量100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲である。
【0028】
上記の鎖延長剤の添加時期は、ポリエーテルグリコールによる解重合反応が終了してから添加することが好ましい。なお、解重合後に真空下で重合反応を行う場合は、重合反応終了後に鎖延長剤を添加することでより効果的に最終ポリマーの高重合度化を達成することができる。
【0029】
また、本発明において特に良好な生分解性を有するポリエーテルエステルへの再生処理を目的とする場合、ポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルグリコールがポリエチレングリコール、鎖延長剤がジフェニルオキザレート及び/又はテレフタロイルビスカプロラクタムであり、鎖延長剤をポリエステルとポリエーテルグリコールの総量100重量部に対して0.1〜30重量部添加、使用することが特に好ましい。
【0030】
重合反応に際して、その簡便化、プロセス改良等のために添加剤を加えることができる。かかる添加剤の例として、金属又はその塩、包接化合物、キレート剤、有機金属化合物等をあげることができる。また、ポリマーの品質向上のための抗酸化剤、安定剤として、例えばヒンダードフェノール化合物のようなラジカル捕捉剤、あるいは蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料等の添加物をポリマーに含有してもよい。
【0031】
また、上記コポリエーテルエステルは、該ポリマーの物性操作のために、その特性が本質的に損なわれない範囲(例えばポリマー全繰り返し単位の30モル%以下、好ましくは15モル%以下)で他の成分を共重合成分として含有させてもよい。
【0032】
共重合させる他の成分としては、蓚酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族、あるいはフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のポリエステルの他、グリコール酸、乳酸、p−オキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸のポリエステルやジフェニルスルホンを主たる繰り返し単位として含有するポリエーテルスルホン、ジフェニルスルホンとビスフェノールAの縮合物を主たる繰り返し単位として含有するポリスルホン、またはビスフェノールAの炭酸エステルを主たる繰り返し単位として含有するポリカーボネート等が挙げられる。
【0033】
共重合成分の導入方法としては、重合時点で共重合成分を導入しても良いし、原料ポリエステルとして共重合が導入されてたものを用いても良い。重合物の組成制御という意味で、好ましくは重合時点での導入が好ましい。
【0034】
【発明の効果】
本発明では、繊維、ボトル、フィルム用途等で広汎に使用された後回収されるポリエステルを原料として、比較的安価で反応活性なポリエーテルグリコールをその化学処理剤に使用することを特徴としている。これらの回収ポリエステルは用途的にほぼ純粋な素材を用いて構成される為、洗浄、乾燥処理を行えば殆どそのままの状態で解重合に移すことができる。また基本的にエステル交換反応により、同一の機構で解重合と高重合度化を行う為、重合や鎖延長剤による分子量増加はポリエステル製造や成型時に使用するものと同一の設備を流用することができる。更にポリエーテルグリコールの組成、構造により得られるコポリエーテルエステルの物性をさまざまに操作することも可能で、生分解性、易焼却性の素材や弾性回復性のポリマーを目的に応じて製造可能である。そのため本発明の手法で化学処理する結果得られる生分解性、易焼却性あるいは伸長回復性等の付加価値を備えたコポリエーテルエステルは、廉価であると同時に生分解性繊維、プラスチック及び易焼却性の樹脂製品、更には弾性回復性を要するエラストマーとしての弾性繊維、成型体等の高付加価値型の製品に再利用することができる。
【0035】
【実施例】
以下、参考例及び実施例によって本発明を更に詳しく説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。なお、例中の「部」は、特にことわらない限り「重量部」を表す。また、固有粘度[η]は、ポリマー120mgをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)10mlに溶解させて測定した還元粘度から算出した値であり表1及び表2中の()内に示す数値は分子量である。また、融点はDSC測定装置を用い、昇温速度10℃/分で測定することにより求めた。更に繊維物性はテンシロン引張試験機を用いて測定した。ここで200%弾性回復率は、長さ10cmの試料をヘッドスピード50cm/分(500%/分)で20cm伸張し、すぐに同ヘッドスピードでチャックを元の位置まで戻し、その応力が0となった時の試料長Lcmを測定し、次式により算出した。
【0036】
【数1】
{[20−(L−10)]/20}×100(%)・・・・・(1)
【0037】
[参考例1
100ml重合フラスコにポリエチレンテレフタレート37.67部(帝人製、FK−OMグレード、[η]=0.7)を所定量とり、十分に窒素置換した。その後、フラスコ全体を270℃の熱媒に浸漬し、PETが均一溶解したところで一旦フラスコを上げ、窒素気流下これに8部のポリエチレングリコール#2000(数平均分子量2000)を加えた。その後260℃の熱媒中に浸漬し、30分間攪拌を行い解重合反応を行った。その後一旦攪拌を止め、内部を減圧にしてから再度攪拌を30分継続することで重合反応を行うことで無色の結晶性コポリエーテルエステルを得た。このポリマーのフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比6/4)混合溶媒を用いて測定した固有粘度は1.0であった。更にDSC測定によるポリマー熱特性評価を行った。その結果を後掲の表1の参考例1欄に示す。
【0038】
[実施例1]
100ml重合フラスコにポリエチレンテレフタレート37.67部(帝人製、FK−OMグレード、[η]=0.7)を所定量とり、十分に窒素置換した。
その後、フラスコ全体を270℃の熱媒に浸漬し、PETが均一溶解したところで一旦フラスコを上げ、窒素気流下これに8部のポリエチレングリコール#2000(数平均分子量2000)を加えた。その後260℃の熱媒中に浸漬し、30分間攪拌を行い解重合反応を行った。その後一旦攪拌を止め、鎖延長剤であるジフェニルオキザレート1.28部を加え、再度系を窒素置換してから260℃で10分間攪拌、反応することでフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比6/4)混合溶媒を用いて測定した固有粘度が1.2のコポリエーテルエステルを得た。結果を以下の表1の実施例1欄に示す。
【0039】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレートを36.51部、ポリエチレングリコール#2000(数平均分子量2000)を20部用いた以外は実施例1と同様の反応を行い、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比6/4)混合溶媒を用いて測定した固有粘度が1.4のコポリエーテルエステルを得た。結果を後掲の表1の実施例2欄に示す。
【0040】
[実施例3]
ポリエチレンテレフタレートを36.51部と、ポリエチレングリコール#2000(数平均分子量2000)の代わりにポリプロピレングリコール#1000を10重量部用いた以外は実施例1と同様の反応を行い、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比6/4)混合溶媒を用いて測定した固有粘度が1.1の目的とするコポリエーテルエステルを得た。結果を後掲の表1の実施例3欄に示す。
【0041】
[実施例4]
小型二軸反応押し出し機を用い、270℃にてポリエチレンテレフタレートを720部と、ポリエチレングリコール#2000(数平均分子量2000)を400部を10分間融解混練した。その後鎖延長剤としてビスオキザゾリン22部を混練物に添加し、更に5分間溶融状態で混練して吐出することで固有粘度1.0のコポリエーテルエステルを得た。結果を後掲の表1の実施例4欄に示す。
【0042】
[実施例5]
200ml重合フラスコにポリエチレンテレフタレート32.67部(帝人製、FK−OMグレード、[η]=0.7)を所定量とり、十分に窒素置換した。その後、フラスコ全体を270℃の熱媒に浸漬し、PETが均一溶解したところで一旦フラスコを上げ、窒素気流下これに60部のポリテトラメチレングリコール#2000(数平均分子量2000)を加えた。その後260℃の熱媒中に浸漬し、30分間攪拌を行い解重合反応を行った。その後一旦攪拌を止め、鎖延長剤であるテレフタロイルビスカプロラクタム1.21部を加え、再度系を窒素置換してから260℃で10分間攪拌、反応することでフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比6/4)混合溶媒を用いて測定した固有粘度が2.1の目的とするコポリエーテルエステルを得た。結果を後掲の表1の実施例5欄に示す。
【0043】
[参考例2、実施例6〜10]
参考例1および実施例1〜4で重合したコポリエーテルエステルを、卓上熱プレスを用い、各々の融点より15℃高い温度で融解加圧し、平均厚み約100μmのフィルムを作成した。このものを10cm×10cmに切断し、土中(個人住宅の庭、表層5〜10cm程度の場所)に埋め込み、初期、六ヶ月、1年後のフィルムの状態を目視ならびに粘度測定により調べることで生分解性の評価を行った。その結果を表2に示す。何れのコポリエーテルエステルにおいても明確な生分解性を有することが確認された。
【0044】
[実施例11]
実施例5で重合したコポリエーテルエステルを、モノホール紡機を用い220℃で融解、巻き取り速度5m/分で紡糸し、100deの未延伸弾性糸を作成した。このものの繊維物性を評価したところ、引張り強度0.65g/de、伸度800%であった。また200%伸張時の伸長回復率は70%であった。
【0045】
【表1】
Figure 0003709124
【0046】

1)PEG#2000:ポリエチレングリコール(数平均分子量2000)
PPG#1000:ポリプロピレングリコール(数平均分子量1000)
PTMG#2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)
2)DPO:ジフェニルオキザレート
Boxz:ビスオキサゾリン
TCL:テレフタロイルビスカプロラクタム
3)ポリマー120mgをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン混合溶媒(重量比6/4)10mlに溶解させて測定した還元粘度から算出した値
【0047】
【表2】
Figure 0003709124

Claims (6)

  1. ポリエステルをポリエーテルグリコールで解重合し、次いで鎖延長剤を用いて重合せしめることを特徴とするコポリエーテルエステルの製造方法。
  2. ポリエステルとして、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比6/4)混合溶媒を用いて測定した固有粘度が0.2以上である芳香族ポリエステルを用いることを特徴とする請求項に記載のコポリエーテルエステルの製造方法。
  3. ポリエーテルグリコールが、重合度3〜1000のオキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、オキシトリメチレン鎖、およびオキシテトラメチレン鎖からなる群から選ばれる少なくとも一種を繰り返し単位とするグリコールであることを特徴とする請求項1または2に記載のコポリエーテルエステルの製造方法。
  4. 解重合を、ポリエーテルグリコールの濃度が5〜95重量%で、かつ180〜280℃下に行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエーテルエステルの製造方法。
  5. 鎖延長剤として、少なくとも一種の縮合型及び/又は付加型のカップリング剤をポリエステルとポリエーテルグリコールの総量100重量部に対して0.1〜30重量部添加、使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエーテルエステルの製造方法。
  6. ポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルグリコールがポリエチレングリコールであり、鎖延長剤がジフェニルオキザレート及び/又はテレフタロイルビスカプロラクタムであり、かつ鎖延長剤をポリエステルとポリエーテルグリコールの総量100重量部に対して0.1〜30重量部添加、使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエーテルエステルの製造方法。
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