JP3708474B2 - 半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体チップと固体電解質二次電池を共存可能な半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の小型化、軽量化に伴い、電池についても小型化、軽量化の要望が強くなっている。これまで、半導体チップのように劇的に縮小化が進んでいる分野もある一方で、電池のように遅々として縮小化が進まない分野もある。これらを合わせて一機に縮小化を進めるため、従来から固体電解質二次電池を用いた半導体基板一体型二次電池が注目されており、特許開示もいくつかある。固体電解質二次電池を半導体基板上に形成した半導体装置に関して、米国特許第5,567,210号、第5,597,660号、特公昭61−165965、特開平6−153412、特開平10−284130等がある。
【0003】
しかしこれらは、固体電解質二次電池の充電および放電を担うイオンが半導体基板に与える影響についての記述が全くない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
固体電解質二次電池である発電要素から半導体基板にイオンが拡散されると、半導体基板に形成されている集積回路の誤動作が生じる。例えば、リチウムイオンがアルミ配線と合金化したり、トランジスタの拡散層にリチウムイオンが拡散されその応答性や耐電圧性が劣化したり、集積回路のリーク電流が増大するなど様々なトラブルが懸念される。
【0005】
本発明は、このような課題を払拭するもので、固体電解質二次電池の充電および放電を担うイオンの半導体基板への拡散を防ぐ信頼性に優れた半導体装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の半導体装置は、半導体基板の上に固体電解質二次電池が形成された半導体装置であって、前記固体電解質二次電池直下の半導体基板が、N型の不純物をドープした基板であるか、またはN型の不純物をドープした拡散層を有し、拡散層の領域内に前記固体電解質二次電池を形成したものであり、さらに、N型の不純物をドープした半導体基板、またはN型の不純物をドープした拡散層は、固体電解質二次電池の負極に対するそれらの電位差が固体電解質二次電池の負極に対する正極の電位差と同じか、あるいはそれ以上の電位差となっている。
【0008】
請求項2記載の半導体装置は、請求項1において、固体電解質二次電池の正極集電体の金属膜のサイズが、その上に形成される正極活物質と固体電解質と負極活物質と負極集電体の積層膜よりも大きいものである。
【0009】
請求項3記載の半導体装置は、請求項1において、固体電解質二次電池の正極が半導体基板側であるものである。
【0011】
請求項4記載の半導体装置は、半導体基板の上に固体電解質二次電池が形成された半導体装置であって、前記半導体基板と前記固体電解質二次電池の接する部分に前記固体電解質二次電池のイオンに対するバリア層を有し、前記固体電解質二次電池の直下の半導体基板が、N型の不純物をドープした半導体基板であること、またはN型の不純物をドープした拡散層を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5記載の半導体装置は、請求項4において、バリア層が無機化合物であり、チッ化ケイ素、および二酸化ケイ素から選択されたものである。
【0013】
請求項6記載の半導体装置は、請求項4において、バリア層が有機化合物であり、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、およびフェノール樹脂から選択されたものである。
【0014】
請求項7記載の半導体装置は、請求項4において、バリア層が金属であり、白金、金、ニッケル、銅、タングステン、モリブデン、およびこれらを主体としてなる合金から選択されたものである。
【0015】
請求項8記載の半導体装置は、請求項1から請求項7のいずれか1項において、拡散層のサイズは、その上に形成する固体電解質二次電池のサイズよりも大きく、前記拡散層の領域内に前記固体電解質二次電池が形成されているものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、例えば半導体装置である集積回路が形成された半導体基板において、固体電解質二次電池を形成する予定の領域に、あらかじめ例えば燐や砒素等の5価元素の不純物をドープした拡散層を設け、その燐や砒素等の不純物をドープした拡散層は固体電解質二次電池の負極に対する電位差が固体電解質二次電池の負極に対する正極の電位差と同じか、あるいはそれより大きい電位差となっていることを特徴とする半導体装置である。
【0017】
この半導体装置によれば、固体電解質二次電池直下の半導体基板を固体電解質二次電池の負極に対する電位差が固体電解質二次電池の負極に対する正極の電位差と同じか、あるいはそれより大きい電位差に固定できるため、発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができる。この半導体装置によれば、発電要素から半導体基板へのイオンの拡散が抑えられるため、半導体基板に形成されている集積回路の誤動作が生じない半導体装置を提供できる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、半導体装置である集積回路が形成された半導体基板において、固体電解質二次電池を形成する際に、正極の集電体である金属膜が固体電解質膜、負極活物質膜、負極集電体膜の積層膜よりも大きく、固体電解質二次電池を上面から見ると、最外周に正極の金属集電体が例えば0.1μm以上突出していることを特徴とする半導体装置である。
【0019】
この半導体装置によれば、固体電解質二次電池を形成する正極活物質、固体電解質、負極活物質と半導体基板の境界部に正極集電体の金属バリア層が設けられるため、後述の請求項4から請求項7の特徴と同様に発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができる。更に、固体電解質二次電池直下の半導体基板を固体電解質二次電池の負極に対する電位差が固体電解質二次電池の負極に対する正極の電位差と同じか、あるいはそれより大きい電位差に固定できるため、発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができ、半導体基板に形成されている集積回路の誤動作が生じない信頼性の高い半導体装置を提供できる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、上述の固体電解質二次電池の正極が半導体基板と接する側に形成されていることを特徴とする半導体装置である。
【0021】
この半導体装置によれば、固体電解質二次電池の放電時に負極からデインターカレーションしたイオンが半導体基板に拡散することを抑えることができるため、半導体基板に形成されている集積回路の誤動作が生じない半導体装置を提供できる。
【0022】
請求項4から請求項7に記載の発明は、例えば半導体装置である集積回路が形成された半導体基板において、固体電解質二次電池を形成する予定の領域に、あらかじめ例えば燐や砒素等の5価元素の不純物をドープしたN型拡散層を設け、そのN型の不純物をドープした拡散層は固体電解質二次電池の負極に対する電位差が固体電解質二次電池の負極に対する正極の電位差と同じか、またはそれ以上の電位差で固定されており、更に半導体基板と固体電解質二次電池との境界部にバリア層として例えばポリイミド等の有機化合物の膜がスピンコーター装置を使った塗布・乾燥法により成膜されるか、またはCVD法により窒化珪素膜等が成膜されているか、蒸着法かスパッタ法により金属銅の膜等が成膜されていることを特徴とする半導体装置である。
【0023】
バリア層は、無機化合物として例えばチッ化ケイ素、および二酸化ケイ素から選択され、有機化合物としてポリイミド、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、およびフェノール樹脂から選択され、金属として白金、金、ニッケル、銅、タングステン、モリブデン、およびこれらを主体としてなる合金から選択される。
【0024】
この半導体装置によれば、固体電解質二次電池と半導体基板の境界部にバリア層が設けられているため、発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができる。更に、固体電解質二次電池の直下部の半導体基板を固体電解質二次電池の負極に対する電位差が固体電解質二次電池の負極に対する正極の電位差と同じか、あるいはそれより大きい電位差で固定できるため、発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができ、半導体基板に形成されている集積回路の誤動作が生じない信頼性の高い半導体装置を提供できる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、半導体装置である集積回路が形成された半導体基板において、固体電解質二次電池を形成する予定の領域に、あらかじめ例えば燐や砒素等の5価元素の不純物をドープしたN型拡散層を設け、そのN型の不純物をドープした拡散層が固体電解質二次電池のサイズよりも0.1μm以上大きく、拡散層の領域内に固体電解質二次電池が形成されていることを特徴とする半導体装置である。
【0026】
この半導体装置によれば、固体電解質二次電池を形成する際にズレが生じても例えば5価元素のN型拡散層領域から固体電解質二次電池がはみ出すことが無く発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができ、信頼性の高い半導体装置を提供できる。
【0027】
請求項1から請求項8を兼ね備えた半導体装置の一実施の形態の断面図を図3に示す。ここで、固体電解質二次電池の正極が半導体基板と接する側に形成されていることが重要であることを示すため、負極が半導体基板と接する側に形成されている半導体装置の断面図を図4に示す。図3と図4において、それぞれ放電時の電池のイオンの動きをA、Bの矢印で示している。aは半導体基板、gはN型拡散層、hはポリイミド膜、iは正極集電体、kはN型拡散層電位取りだし端子、mは正極活物質、nは固体電解質、oは負極活物質、pは負極集電体、rは表面保護膜である。
【0028】
図4に示す通り負極が半導体基板aと接する側に形成されている半導体装置では、イオンが基板に引っ張られるBの動きが生じる。ポリイミド膜hおよび負極集電体pで防ぐことはできるが、膜ピンホール等の欠陥があれば基板中へのイオンの拡散は進行するため、図3に示すように固体電解質二次電池の正極を半導体基板aと接する側に形成して、信頼性の高い半導体装置とした。ここで用いる固体電解質薄膜材料としては、銀イオン導電性固体電解質、銅イオン導電性固体電解質、リチウムイオン導電性固体電解質、プロトン導電性固体電解質を用いることができる。リチウムイオン導電性固体電解質薄膜を用いた場合には、電極材料薄膜としては、LixCoO2 、LixNiO2 、LixMn2O4 、LixTiS2 、LixMoS2 、LixMoO2 、LixV2O5 、LixV6O13 、金属リチウム、Li3/4Ti5/3O4等通常リチウム電池に用いられる化合物を所望する電池電圧により組み合わせて用いることができる。リチウムイオン導電性固体電解質としては、Li2S−SiS2 、Li3PO4−Li2S−SiS2 、LiI−Li2S−SiS2 、LiI、LiI−Al2O3 、Li3N、Li3N−LiI−LiOH、Li2O−SiO2 、Li2O−B2O3 、LiI−Li2S−P2O5 、LiI−Li2S−B2S3 、Li3.6Si0.6P0.4O4 、LiI−Li3PO4−P2S5等が用いることができる。また、固体電解質薄膜に銅イオン導電体を用いた場合には,金属Cu、Cu2S、CuxTiS2 、Cu2Mo6S7.8等を用いることができる。銅イオン導電性固体電解質としては、RbCu4I1.5Cl3.5 、CuI−Cu2O−MoO3 、Rb4Cu16I7Cl13等を用いることができる。また、固体電解質薄膜に銀イオン導電体を用いた場合には、金属Ag、Ag0.7V2O5 、AgxTiS2等を用いることができる。銀イオン導電性固体電解質膜としてはα―AgI、Ag6I4WO4,C6H5NHAg5I6 、AgI−Ag2O−MoO3 、AgI−Ag2O−B2O3 、AgI−Ag2O−V2O5等を用いることができる。さらにプロトン導電性固体電解質を用いた場合には形成する電池がニッケル水素電池の場合には、負極にTiFe、ZnMn2,ZrV2 、ZrNi2 、CaNi5 、LaNi5 、MmNi5 、Mg2Ni、Mg2Cu、正極にはNi(OH)2を用いることができる。プロトン導電体としてはLaMg0.5Ce0.5O3 、La2Zr2O7 、α―Al2O3等を用いることができる。
【0029】
【実施例1】
以下、本発明の実施例について図を参照して説明する。
【0030】
図1の(1)〜(5)および図2の(1)〜(4)は本発明にかかる形成方法の工程順断面図を示している。図1の(1)は半導体集積回路が搭載されるシリコン基板aを示す。まず図1(2)に示すようにプラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition)によってシリコン酸化膜cを1500Å形成する。反応ガスはSiH4、N2Oを用いて、成長温度は380℃、プラズマは50kHz、4kWで発生する。その上に感光性レジストをスピンコーター(2000rpm)を用いて3000Åの膜厚に塗布し、100℃で15分間のベーキングを行いレジスト膜bを形成する。
【0031】
次に図1(3)に示すようにパターニングされた石英マスクdを用いてPLA露光装置(Paraller Line Aliener)により、短波長光線eを照射する。その後、有機アルカリの現像液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)に浸しレジスト膜bのパターニングが完了する。次に、RIEドライエッチングにより、レジスト膜bが被覆していない部分のシリコン酸化膜cをエッチングする。ドライエッチングはRF:13.56MHz、エッチングガス:CHF3で行う。この時、マスク合わせマークも形成しておく。以降のレジスト露光工程はこのマークを基準にしてマスク合わせを行う。これによって後工程で形成され、パターニングされる成膜が各々の間でずれが生じないことになる。最後にレジスト膜bをレジスト剥離液に浸漬して除去する。
【0032】
次に図1(4)に示すようにイオン注入機によりN型の不純物である燐イオンfを100KeVの電圧で加速し、1014/cm2の量を打ち込む。その後1000℃、1時間の加熱処理を炉で行い、N型拡散層gを形成する(図1(5))。N型拡散層領域は深さ3μmで面積は縦横1cmの1cm2とした。その後、フッ酸水溶液(5vol%)に5分間浸漬してシリコン酸化膜cを除去する。ここまでの工程は、半導体装置の形成工程の中で行う。
【0033】
半導体装置である集積回路が形成された半導体基板の上に、スピンコーター(1000rpm)を用いてポリイミド膜hを1μmの厚みで形成する(図2(1))。その後、図1(3)と同じフォトリソグラフィ技術を使ってバリア層としてポリイミド膜hを縦横1.5cmの面積2.25cm2にパターニングし、その上に正極の集電体として金属アルミ膜iを真空蒸着装置により(10mTorr)、厚み1μm、縦横9mmの81mm2形成し、前述同様のフォトリソグラフィ技術とRIEドライエッチング装置を用いて、集電体金属アルミ膜iとN型拡散層gの電位取りだし端子kをパターニングする(図2(2))。その上にLiCoO2の正極活物質膜mを金属マスク(SUS304)を用いてスパッタする。スパッタ条件は200Wパワー、Ar/O2=3/1を20SCCM、20mTorrとする。成膜は厚み5μm、縦横8mmの64mm2で形成し、400℃で2時間アニ−ルを行い、その上にLi2S−SiS2−Li3PO4の固体電解質膜nを厚み2μmで形成し、更にその上に、グラファイトの負極活物質膜oを厚み5μmで形成し、順にレーザーアブレーション法により積層する。レーザーアブレーションの条件は、レーザー:YAGレーザー266nm、エネルギー密度:2025mJ/cm2、繰り返し周波数10Hz、ショット数:36000、基板温度:800℃、10-2Torrで行う。それらの成膜はそれぞれ、前述と同様のフォトリソグラフィ技術とRIEドライエッチング装置を用いて面積が縦横7mmの49mm2にパターニングする。更にその上に負極の集電体の金属銅膜pをパターニングされた金属マスク(SUS304)を用いて、真空蒸着法で1μm、縦横7mmの49mm2形成する(図2(3))。最後にスピンコーター(1500rpm)を用いて、液状エポキシ樹脂(日立化成製:CEL−C−1102)を1μm形成し、150℃3時間の熱硬化で表面保護膜rを形成し、前述と同様のフォトリソグラフィ技術とRIEドライエッチング装置を用いてパターニングする(図2(4))。
【0034】
この様にして作成した電池は、正常に充放電が行えて300μAhの容量が得られた。また電池に隣接するMOSトランジスタの基本特性異常も認められなかった。
【0035】
【実施例2】
実施例1と同様に、N型拡散層を形成した半導体基板の上に、プラズマCVD法によりシリコン窒化膜を1000Å形成する。反応ガスはSiH4、NH3を用いて、成長温度は420℃、プラズマは50kHz、4kWで発生させる。その後、その上に感光性レジストをスピンコーター(2000rpm)を用いて3000Åの膜厚に塗布し、100℃で15分間のベーキングを行いレジスト膜を形成する。次にパターニングされた石英マスクを用いてPLA露光装置(Paraller Line Aliener)により、短波長光線を照射する。その後、有機アルカリの現像液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)に浸しレジスト膜のパターニングが完了する。次に、RIEドライエッチングにより、レジスト膜が被覆していない部分のシリコン窒化膜をエッチングする。ドライエッチングはRF:13.56MHz、エッチングガス:CHF3で行う。最後にレジスト膜をレジスト剥離液に浸漬して除去し、シリコン窒化膜をバリア層として縦横1.5cmの面積2.25cm2にパターニングする。その上に正極の集電体の金属アルミ膜を真空蒸着法で(10mTorr)、厚み0.7μm、縦横9mmの81mm2形成し、前述と同様のフォトリソグラフィ技術とRIEドライエッチング装置を用いて、集電体金属アルミ膜とN型拡散層の電位取りだし端子をパターニングする。その上にLiMn2O4の正極活物質膜を金属マスク(SUS304)を用いてスパッタする。スパッタ条件は200Wパワー、Ar/O2=4/1を30sccm、10mTorrとする。成膜は厚み5μm、縦横8mmの64mm2で形成し、その上にLi3PO4をターゲットとしてN2雰囲気中でスパッタ(RFパワー35W、20mToor)を実施して、Li3PO4-XNXの固体電解質膜を厚み1000Å、縦横8mmの64mm2で形成する。更にその上にパターニングされた金属マスク(SUS304)を用いて、金属Liを蒸着する(10mTorr)。金属Liは厚み2000Åで形成する。更にその上にパターニングされた金属マスク(SUS304)を用いて、負極の集電体の金属銅膜を蒸着法で厚み1000Åで形成する。それらの成膜はそれぞれ、前述と同様のフォトリソグラフィ技術とRIEドライエッチング装置を用いて面積が縦横8mmの64mm2にパターニングする。最後にスピンコーター(1000rpm)を用いて、表面保護膜として感光性のポリイミドを1μm形成し、前述と同様のフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングする。
【0036】
この様にして作成した電池は、半導体基板上のシリコン窒化膜を含めた厚みが2.6μmと薄型で、正常に充放電が行えた。また電池に隣接するMOSトランジスタの基本特性異常も認められなかった。
【0037】
Liイオンの固体電解質としてはLi2O−SiO2、Li2O−B2O3、
Li−Li2S−P2O5、LiI−Li2S−B2S3、Li3.6Si0.6P0.4O4、LiI−Li3PO4−P2S5なども有効であった。
【0038】
【実施例3】
実施例1と電池の構成(形状、膜厚、構造)、製造方法は同じにして、負極にCu、固体電解質としてRbCuI1.5Cl3.5、正極にTiS2を用いて固体電解質二次電池を作製した。レート特性は実施例1のLi系に比べて低下したが、サイクル寿命等は同等であった。また、電池と混成した集積回路の誤動作も認められなかった。
【0039】
Cu系の固体電解質としては他にRb4Cu16I7Cl13、Rb4Cu16I7Cl13、CuI−Cu2O−MoO3等も有効であった。
【0040】
【実施例4】
実施例2と電池の構成(形状、膜厚、構造)、製造方法は同じにして、負極にAg、固体電解質としてAg6I4WO4、正極にV2O5を用いて固体電解質二次電池を作製した。レート特性は実施例1のLi系に比べて低下したが、サイクル寿命等は同等であった。また、電池と混成した集積回路の誤動作も認められなかった。
【0041】
Ag系の固体電解質としては他にAgI−Ag2O−MoO3、α―AgI、C6H5NHAg5I6、AgI−Ag2O−B2O3、AgI−Ag2O−V3O5等も有効であった。
【0042】
【実施例5】
実施例1と電池の構成(形状、膜厚、構造)、製造方法は同じにして、バリア層の有機化合物がエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂でも有効であった。またポリイミドを含めたそれらの有機化合物の厚みが1000Å以上(1000Å、5000Å)でも電池と混成した集積回路の誤動作は認められず、有効であった。
【0043】
【実施例6】
実施例2と電池の構成(形状、膜厚、構造)、製造方法は同じにして、バリア層の無機化合物が二酸化ケイ素でも有効であった。またチッ化ケイ素を含めたそれらの無機化合物の厚みが100Å以上(100Å、500Å)でも電池と混成した集積回路の誤動作は認められず、有効であった。
【0044】
【実施例7】
実施例1と電池の構成(形状、膜厚、構造)、製造方法は同じにして、N型拡散層領域を形成するイオンが砒素でも有効であった。イオン注入機により砒素イオンを150KeVの電圧で加速し、1016/cm2の量を打ち込み、その後で1200℃、1時間の加熱処理を炉で行い、N型拡散層を形成した場合でも電池と混成した集積回路の誤動作は認められず、有効であった。
【0045】
【実施例8】
実施例1において完成した集積回路と電池の混成チップを、半導体装置で用いられるリードフレーム上に銀ペーストで接着し、200℃加熱硬化15分の後、集積回路と電池の混成チップとアウターリードを金ワイヤーでワイヤーボンダ−を使って接続した。その後、半導体チップをパッケージングするようにエポキシ樹脂(日立化成製)を使って、トランスファー成形した。あるいは、ブチルゴム系樹脂(日東電工製:LSS810)をディップした。あるいは、アウターリードが外部端子となるように液晶ポリマーフィルム(クラレ製)で挟み、280℃加熱シールを行った。これらいずれの場合も集積回路の誤動作は認められず、固体電解質二次電池は正常に充放電が行えた。
【0046】
なお、この発明において、半導体基板がN型の不純物をドープした基板であってもよい。この場合は拡散層を設けずに直接またはバリア層を介して基板上に固体電解質二次電池が形成される。
【0047】
また、この発明は、固体電解質二次電池の負極が半導体基板側であってもよい。
【0048】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、固体電解質二次電池直下の半導体基板は固体電解質二次電池の負極との電位差が固体電解質二次電池の負極に対する正極との電位差と同じ、またはそれより大きい電位差で固定できるため、発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができる。この半導体装置によれば、発電要素から半導体基板へのイオンの拡散が抑えられるため、半導体基板に形成されている集積回路の誤動作が生じない、信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。
【0049】
請求項2に記載の発明によれば、固体電解質二次電池を形成する正極活物質、固体電解質、負極活物質と半導体基板の境界部に正極集電体の金属バリア層が設けられるため、請求項4から請求項7の特徴と同様に発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができる。更に、固体電解質二次電池直下の半導体基板は固体電解質二次電池の負極との電位差が固体電解質二次電池の負極に対する正極の電位差と同じか、またはそれより大きい電位差で固定できるため、発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができ、半導体基板に形成されている集積回路の誤動作が生じない信頼性の高い半導体装置を提供できる。
【0050】
請求項3に記載の発明によれば、固体電解質二次電池の放電時に負極からデインターカレーションしたイオンが半導体基板に拡散することを抑えることができるため、半導体基板に形成されている集積回路の誤動作が生じない半導体装置を提供できる。
【0051】
請求項4から請求項7に記載の発明によれば、固体電解質二次電池と半導体基板の境界部にバリア層が設けられているため、発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができる。更に、固体電解質二次電池の直下部の半導体基板は固体電解質二次電池の負極との電位差が固体電解質二次電池の負極に対する正極の電位差と同じか、またはそれより大きい電位差で固定できるため、発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができ、半導体基板に形成されている集積回路の誤動作が生じない信頼性の高い半導体装置を提供できる。
【0052】
請求項8に記載の発明によれば、固体電解質二次電池を形成する際にズレが生じても例えば5価元素のN型拡散層領域から固体電解質二次電池がはみ出すことが無く発電要素から半導体基板にイオンが拡散されることを防ぐことができ、信頼性の高い半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の電池の製造プロセスを示し、N型拡散層の形成までの断面図である。
【図2】図1に続き、さらに電池を形成する製造プロセスの断面図である
【図3】本発明の一実施の形態における電池の放電時のイオンの動きを示す図2(4)の拡大図である。
【図4】電池の負電極を基板側に配置した場合の電池の放電時のイオンの動きを示す断面図である。
【符号の説明】
a 半導体基板
b フォトレジスト膜
c シリコン酸化膜
d マスク
e 短波長光線
f イオン注入
g N型拡散層
h ポリイミド膜
i 正極集電体
k N型拡散層電位取りだし端子
m 正極活物質
n 固体電解質
o 負極活物質
p 負極集電体
r 表面保護膜
Claims (8)
- 半導体基板の上に固体電解質二次電池が形成された半導体装置であって、前記固体電解質二次電池直下の半導体基板が、N型の不純物をドープした半導体基板であるか、またはN型の不純物をドープした拡散層を有し、前記拡散層の領域内に前記固体電解質二次電池を形成したものであり、
かつ、前記N型の不純物をドープした半導体基板、または前記N型の不純物をドープした拡散層は、前記固体電解質二次電池の負極に対するそれらの電位差が前記固体電解質二次電池の負極に対する正極の電位差と同じか、あるいはそれ以上の電位差となっている半導体装置。 - 前記固体電解質二次電池の正極集電体の金属膜のサイズが、その上に形成される正極活物質と固体電解質と負極活物質と負極集電体の積層膜よりも大きい請求項1記載の半導体装置。
- 前記固体電解質二次電池の正極が半導体基板側である請求項1記載の半導体装置。
- 半導体基板の上に固体電解質二次電池が形成された半導体装置であって、前記半導体基板と前記固体電解質二次電池の接する部分に前記固体電解質二次電池のイオンに対するバリア層を有し、前記固体電解質二次電池の直下の半導体基板が、N型の不純物をドープした半導体基板であること、またはN型の不純物をドープした拡散層を有することを特徴とする半導体装置。
- 前記バリア層が無機化合物であり、チッ化ケイ素、および二酸化ケイ素から選択されたものである請求項4記載の半導体装置。
- 前記バリア層が有機化合物であり、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、およびフェノール樹脂から選択されたものである請求項4記載の半導体装置。
- 前記バリア層が金属であり、白金、金、ニッケル、銅、タングステン、モリブデン、およびこれらを主体としてなる合金から選択されたものである請求項4記載の半導体装置。
- 前記拡散層のサイズは、その上に形成する前記固体電解質二次電池のサイズよりも大きく、前記拡散層の領域内に前記固体電解質二次電池が形成されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置。
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