JP3707131B2 - 蛍光体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子の射突を受けて主として青色に発光する蛍光体に関するものである。本発明の蛍光体は、蛍光表示装置や、電界放出形陰極を電子源とする蛍光表示装置等において、発光部である陽極に設けられる蛍光体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
蛍光表示管( VFD、Vacuum Fluorescent Display) は、高真空状態とした外囲器の内部において、陰極から放出した電子を陽極に射突させ、陽極に設けた蛍光体を発光させて表示を行う表示素子である。また、このVFDの陰極に特に電界放出形陰極( FEC、Field Emission Cathode) を用いたものもある。電界放出形陰極は、エミッタの近傍に設けたゲートが形成する電界によってエミッタの先端から電子が電界放出する現象を利用したものであり、このFECを利用したVFDを特にFED( Field Emission Display) と呼んでいる。
【0003】
上記FEDの発光表示部である陽極に設ける蛍光体には、輝度特性が良く、抵抗が低く、またエミッタに害のある物質を分解飛散しない等の条件が要求される。例えばZnS:Ag,Clのような硫化物系の蛍光体は、使用につれて硫化物系ガスの放出や蛍光体自体の分解飛散によってエミッタを汚染する等の問題がある。従ってFED用の蛍光体としては、安定性という観点から硫化物系以外の蛍光体、例えば酸化物系の蛍光体が候補として考えられるが、現在のところ、特に青色の発光が得られる酸化物系の蛍光体で前記条件を満たすものは知られていない。Y2 SiO5 :Ce蛍光体が公知であるが、この蛍光体は抵抗が高く、寿命特性も満足できるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、輝度特性が良く、抵抗が低く、電子源である陰極に害のある物質を分解飛散せず、良好な青色の発光を得ることが可能で、VFD、FEDに適した蛍光体を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された蛍光体は、(Ga1-X AlX )2 O3 を母体とし、Mおよび/又はNがドーパントとして添加された蛍光体である。但し、MはMg,Zn,Liから選択された少なくとも1つの元素であり、NはSi,Sn,Geから選択された少なくとも1つの元素である。
【0006】
請求項2に記載された蛍光体は、請求項1に記載の蛍光体において、0.005≦X≦0.4であることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明者は、前記の目的を達成するために硫化物系以外の蛍光体、例えば酸化物系の蛍光体について研究を進め、Ga2 O3 に着目するに至った。Gaの原子価は3価以外に1価もあるといわれており、このような材料は価数を変えることによって抵抗が下がると考えられる。そこで、本発明者等は、種々検討の結果、周期律表でGaと価数が異なりGaとイオン半径が大きく異ならない元素、例えば両者のイオン半径の差が20%以内の元素を選択し、Ga2 O3 に混合して焼成することにより同元素をGa2 O3 中にドープし、その後必要に応じて還元焼成を行うことにより、青色に発光する蛍光体を得ることに成功した。
【0008】
Gaに対して前述のような条件を満たし、母体となるGa2 O3 にドープするのに適した元素としては、M=Mg,Zn,Li及びN=Si,Sn,Geから選択した少なくとも1つの元素が好ましいことを本発明者等は見いだした。
【0009】
得られた蛍光体の発光輝度は、前述した元素のドープ量に関係する。図5に示すように、前記ドープ量が、母体であるGa2 O3 に対するmol%で、0.003%〜6%の範囲において、相対輝度が50%以上となる効果が得られ、さらに0.01%〜1%の範囲において、相対輝度が80%以上となり最も高い効果が得られた。
【0010】
本発明者は、前記蛍光体の青色の色度を改善するための研究を続行し、その結果、前記蛍光体にAlを固溶させることによって青色の色度を改善できることを見いだした。この効果は、蛍光体母体(Ga1-X AlX )2 O3 のエネルギーギャップの変化によるものであると考えられ、前述したドーパントの種類や量を変化させても同様の効果が得られる。
【0011】
Alの固溶量を増やすと、蛍光体の発光スペクトルのピーク値は波長の短い方にずれていき、青色の色調が改善される。ドーパントの種類や量を固定した場合の前記蛍光体の発光輝度は、Alの固溶量にかかわらず略一定であるが、Alの量がある値を越えると急激に減少しはじめる。蛍光体母体(Ga1-X AlX )2 O3 におけるAlの量(mol/Ga)は、青色の色調を改善する観点からは、CIE色度図上のy値が0.16以下となる0.005以上が好ましく、輝度をある程度以上に保つという観点からは、輝度が最大値の50%以上を保ちうる0.4以下が好ましい。即ち、本蛍光体におけるAlの量の好ましい範囲は、0.005≦X≦0.4となる。
【0012】
【実施例】
(1) 実施例1
Ga2 O3 とAl(HO)3 をよく混合した蛍光体母体用材料にMgCO3 とSnCl2 を各々0.1mol%づつ混合し、アルミナルツボに充填して1000℃〜1300℃で焼成を行った。Ga2 O3 とAl(HO)3 の混合比率を変化させた複数種類の蛍光体試料(Ga1-X AlX )2 O3 :Mg,Snを作製した。
【0013】
前記蛍光体の性能を評価するため、前記蛍光体を陽極に備えた蛍光表示管を作製する。ガラス等の絶縁材料からなる陽極基板の上に所望のパターンで陽極導体を形成する。陽極導体からは配線導体を引き出しておき、陽極電圧を印加できるようにしておく。有機バインダを用いて前記蛍光体を前記陽極導体の上に塗布し、陽極基板を400℃以上でベーキングする。この陽極基板の上に制御電極を設け、さらに制御電極の上にフィラメント状の陰極を設け、これら各種電極等を覆って陽極基板の上に箱形の容器部を封着して外囲器を構成する。各種電極等を収納する外囲器の内部を排気して高真空状態とする。陽極導体に400Vの陽極電圧を加えて前記蛍光表示管を駆動する。陰極から放出された電子は、制御電極によって加速制御され、陽極に射突して蛍光体を発光させる。
【0014】
図1は各試料のスペクトル分布図である。Al量が多い試料ほどスペクトルが短波長側にシフトして青色の色度が改善されていくことが分かる。
【0015】
図2は、各試料と比較用の蛍光体をプロットしたCIE色度図である。表1は、図2上に示した各試料と比較用の蛍光体のx値及びy値である。
【0016】
【表1】
【0017】
図2によれば、Al量が多い試料ほどCIE色度図上のy値が小さくなり、図1においてAl量が多くなる場合と同様に、青色の色度が改善されていくことが分かる。CIE色度図においては、yが0.16より小さいと純度の高い青色と認識されるが、本例においてはAl量が0.005の時、y=0.16となった。青色の色度が改善されるAlによる効果は、Ga2 O3 にAlを固溶させた結果蛍光体母体におけるエネルギーギャップが変化することによるものであると考えられる。従って、前述したドーパントを変化させても同様の効果が得られる。
【0018】
図3は各試料と発光輝度の関係を示す。この蛍光体の発光輝度は、Alの固溶量にかかわらず略一定であるが、Alの量がある値を越えると急激に減少しはじめる。この蛍光体におけるAlの量(mol/Ga)は、青色の色調を改善する観点からは、前述のようにCIE色度図上のy値が0.16以下となる0.005以上が好ましいが、輝度をある程度以上に保つという観点からは、輝度が最大値の50%以上を保ちうる0.4以下のAl量が好ましい。
【0019】
以上のデータから、本蛍光体におけるAlの量の好ましい範囲は、0.005≦X≦0.4となる。
【0020】
図4は、本実施例の試料と、青色発光の蛍光体であるZnS:Agと、通常高抵抗蛍光体と考えられているY2 SiO5 :CeやY2 O3 :Euの各々を、前述のような蛍光表示管の陽極に用いた場合の陽極電圧と陽極電流の特性図である。蛍光表示管の駆動条件は、陽極電圧50V、陰極電圧17V、制御電極電圧12Vである。本例の蛍光体を用いた蛍光表示管においては、陽極電圧が10V程度の時から陽極電流が流れだし、ZnS:AgやY2 SiO5 :Ce等に比べてはるかに低抵抗であることが分かる。蛍光体の抵抗が高いと、陽極電圧が低い場合には陽極に電子がチャージしてしまうが、本実施例の蛍光体によれば、そのような不都合が生じない。
【0021】
本実施例において、MgとSnのドープ量を種々変化させて検討したところ、蛍光体の発光強度と該蛍光体が含むドープ物質(本実施例ではMgとSn)の量との間には、図5に示すような関係があった。この関係は他の実施例のドープ物質の場合にも当てはまる。このグラフから分かるように、ドープ物質の(Ga1-X AlX )2 O3 に対するmol%が0.003%〜6%の範囲にあると、蛍光体の発光輝度が最大値の50%を越える。この範囲がドープ量の実用範囲と考えられる。さらにドープ物質の(Ga1-X AlX )2 O3 に対するmol%が0.01%〜1%の範囲にあると、蛍光体の発光輝度が同80%〜100%となる。この範囲がドープ量の最も好ましい範囲と考えられる。
【0022】
(2) 実施例2
8.43gのGa2 O3 と、0.27gのAl(HO)3 と、0.006gのZnCO3 と、0.003gのSi O2 とをよく混合した後、アルミナルツボに充填して1000℃〜1300℃で焼成を行い、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Zn,Si0.1mol% を作製した。また、比較用にAlを用いないGa2 O3 :Zn,Si0.1mol% も作製した。
【0023】
第1の実施例と同様に、本例の蛍光体と前記比較例の蛍光体を用いてそれぞれ蛍光表示管を作製し、輝度特性を評価した。輝度は比較例に比べると95%であった。CIE色度図上のy値は、比較例の0.178に対し、本実施例は0.152であり青色の色度が改善されている。
【0024】
(3) 実施例3
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、MgCO3 5.2mgを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成する。その後、必要に応じて還元雰囲気内において1200℃で焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Mg0.07mol%蛍光体を作製する。
【0025】
前記蛍光体の性能を評価するため、第1実施例と同様に前記蛍光体を陽極に備えた蛍光表示管を作製する。陽極導体に400Vの陽極電圧を加えて前記蛍光表示管を駆動する。蛍光体は、発光輝度が約50cd/m2 の青色発光を示した。CIE色度図上のy値は0.160であった。
【0026】
(4) 実施例4
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、LiCl1.2mgと、SnO2 4mgを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成する。その後、必要に応じて還元雰囲気内において1100℃で焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Li,Sn0.035mol% 蛍光体を作製する。
【0027】
実施例1と同様にして評価したところ、約80cd/m2 の青色発光が得られた。CIE色度図上のy値は0.158であった。
【0028】
(5) 実施例5
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、等量のMgCO3 とSnO2 を混合する。Ga2 O3 に対するMg及びSnの合計のドープ量を、mol%で0.001mol%〜10mol%の範囲で様々に変えて多種類の(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Mg,Sn蛍光体の試料を作製する。他の条件等は実施例5と同一である。その際のMg及びSnのドープ量と得られた蛍光体の発光強度の関係は図5に示すグラフと同様となった。ドープ量の実用範囲と好ましい範囲は前述した通りである。得られた蛍光体の発光スペクトルは好ましい青色発光を示し、CIE色度図上のy値は0.157であった。
【0029】
(6) 実施例6
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 13gと、ZnO2.4mgと、SnO2 4mgを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Zn,Sn0.036mol% 蛍光体を作製する。実施例1と同様にして評価したところ、前記各実施例と同程度の性能が得られた。
【0030】
(7) 実施例7
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 13gと、ZnO2.4mgと、SiO2 1.8mgを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Zn,Si0.035mol% 蛍光体を作製する。実施例1と同様にして評価したところ、前記各実施例と同程度の性能が得られた。
【0031】
(8) 実施例8
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、SiO2 0.9mgと、MgCO3 1.3mgとを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Si,Mg0.019mol% 蛍光体を作製する。実施例1と同様にして評価したところ、前記各実施例と同程度の性能が得られた。
【0032】
(9) 実施例9
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、GeO2 1.6mgと、MgCO3 1.3mgとを混合し、アルミナルツボに充填し、1300℃で4時間焼成して(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Ge,Mg0.018mol% 蛍光体を作製する。実施例1と同様にして評価したところ、前記各実施例と同程度の性能が得られた。
【0033】
【発明の効果】
本発明の蛍光体は、輝度特性が良く、抵抗が低く、電子源である陰極に害のある物質を分解飛散することがない。また、Ga2 O3 を母体とし、M=Mg,Zn,Li及びN=Si,Sn,Geから選択された少なくとも1つの元素が添加されている本発明者の提案になる蛍光体は、良好な青色の発光を得ることが可能であるが、本発明はこの蛍光体の青色発光の色調をさらに改善することができる。本発明の蛍光体は、他の青色高抵抗の蛍光体に導電剤として使用することもでき、VFD、FEDにも適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例において、Al量の異なる各試料の発光スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の第1実施例において、Al量の異なる各試料と比較例の発光スペクトルを示すCIE色度図である。
【図3】本発明の第1実施例において、Al量と発光輝度の関係を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例の蛍光体と比較例の蛍光体をそれぞれ用いた蛍光表示管における陽極電圧と陽極電流の関係を示す図である。
【図5】本発明の各実施例の蛍光体において、母体に対するドーパントのドープ率(mol%)と当該蛍光体の発光強度との関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子の射突を受けて主として青色に発光する蛍光体に関するものである。本発明の蛍光体は、蛍光表示装置や、電界放出形陰極を電子源とする蛍光表示装置等において、発光部である陽極に設けられる蛍光体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
蛍光表示管( VFD、Vacuum Fluorescent Display) は、高真空状態とした外囲器の内部において、陰極から放出した電子を陽極に射突させ、陽極に設けた蛍光体を発光させて表示を行う表示素子である。また、このVFDの陰極に特に電界放出形陰極( FEC、Field Emission Cathode) を用いたものもある。電界放出形陰極は、エミッタの近傍に設けたゲートが形成する電界によってエミッタの先端から電子が電界放出する現象を利用したものであり、このFECを利用したVFDを特にFED( Field Emission Display) と呼んでいる。
【0003】
上記FEDの発光表示部である陽極に設ける蛍光体には、輝度特性が良く、抵抗が低く、またエミッタに害のある物質を分解飛散しない等の条件が要求される。例えばZnS:Ag,Clのような硫化物系の蛍光体は、使用につれて硫化物系ガスの放出や蛍光体自体の分解飛散によってエミッタを汚染する等の問題がある。従ってFED用の蛍光体としては、安定性という観点から硫化物系以外の蛍光体、例えば酸化物系の蛍光体が候補として考えられるが、現在のところ、特に青色の発光が得られる酸化物系の蛍光体で前記条件を満たすものは知られていない。Y2 SiO5 :Ce蛍光体が公知であるが、この蛍光体は抵抗が高く、寿命特性も満足できるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、輝度特性が良く、抵抗が低く、電子源である陰極に害のある物質を分解飛散せず、良好な青色の発光を得ることが可能で、VFD、FEDに適した蛍光体を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された蛍光体は、(Ga1-X AlX )2 O3 を母体とし、Mおよび/又はNがドーパントとして添加された蛍光体である。但し、MはMg,Zn,Liから選択された少なくとも1つの元素であり、NはSi,Sn,Geから選択された少なくとも1つの元素である。
【0006】
請求項2に記載された蛍光体は、請求項1に記載の蛍光体において、0.005≦X≦0.4であることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明者は、前記の目的を達成するために硫化物系以外の蛍光体、例えば酸化物系の蛍光体について研究を進め、Ga2 O3 に着目するに至った。Gaの原子価は3価以外に1価もあるといわれており、このような材料は価数を変えることによって抵抗が下がると考えられる。そこで、本発明者等は、種々検討の結果、周期律表でGaと価数が異なりGaとイオン半径が大きく異ならない元素、例えば両者のイオン半径の差が20%以内の元素を選択し、Ga2 O3 に混合して焼成することにより同元素をGa2 O3 中にドープし、その後必要に応じて還元焼成を行うことにより、青色に発光する蛍光体を得ることに成功した。
【0008】
Gaに対して前述のような条件を満たし、母体となるGa2 O3 にドープするのに適した元素としては、M=Mg,Zn,Li及びN=Si,Sn,Geから選択した少なくとも1つの元素が好ましいことを本発明者等は見いだした。
【0009】
得られた蛍光体の発光輝度は、前述した元素のドープ量に関係する。図5に示すように、前記ドープ量が、母体であるGa2 O3 に対するmol%で、0.003%〜6%の範囲において、相対輝度が50%以上となる効果が得られ、さらに0.01%〜1%の範囲において、相対輝度が80%以上となり最も高い効果が得られた。
【0010】
本発明者は、前記蛍光体の青色の色度を改善するための研究を続行し、その結果、前記蛍光体にAlを固溶させることによって青色の色度を改善できることを見いだした。この効果は、蛍光体母体(Ga1-X AlX )2 O3 のエネルギーギャップの変化によるものであると考えられ、前述したドーパントの種類や量を変化させても同様の効果が得られる。
【0011】
Alの固溶量を増やすと、蛍光体の発光スペクトルのピーク値は波長の短い方にずれていき、青色の色調が改善される。ドーパントの種類や量を固定した場合の前記蛍光体の発光輝度は、Alの固溶量にかかわらず略一定であるが、Alの量がある値を越えると急激に減少しはじめる。蛍光体母体(Ga1-X AlX )2 O3 におけるAlの量(mol/Ga)は、青色の色調を改善する観点からは、CIE色度図上のy値が0.16以下となる0.005以上が好ましく、輝度をある程度以上に保つという観点からは、輝度が最大値の50%以上を保ちうる0.4以下が好ましい。即ち、本蛍光体におけるAlの量の好ましい範囲は、0.005≦X≦0.4となる。
【0012】
【実施例】
(1) 実施例1
Ga2 O3 とAl(HO)3 をよく混合した蛍光体母体用材料にMgCO3 とSnCl2 を各々0.1mol%づつ混合し、アルミナルツボに充填して1000℃〜1300℃で焼成を行った。Ga2 O3 とAl(HO)3 の混合比率を変化させた複数種類の蛍光体試料(Ga1-X AlX )2 O3 :Mg,Snを作製した。
【0013】
前記蛍光体の性能を評価するため、前記蛍光体を陽極に備えた蛍光表示管を作製する。ガラス等の絶縁材料からなる陽極基板の上に所望のパターンで陽極導体を形成する。陽極導体からは配線導体を引き出しておき、陽極電圧を印加できるようにしておく。有機バインダを用いて前記蛍光体を前記陽極導体の上に塗布し、陽極基板を400℃以上でベーキングする。この陽極基板の上に制御電極を設け、さらに制御電極の上にフィラメント状の陰極を設け、これら各種電極等を覆って陽極基板の上に箱形の容器部を封着して外囲器を構成する。各種電極等を収納する外囲器の内部を排気して高真空状態とする。陽極導体に400Vの陽極電圧を加えて前記蛍光表示管を駆動する。陰極から放出された電子は、制御電極によって加速制御され、陽極に射突して蛍光体を発光させる。
【0014】
図1は各試料のスペクトル分布図である。Al量が多い試料ほどスペクトルが短波長側にシフトして青色の色度が改善されていくことが分かる。
【0015】
図2は、各試料と比較用の蛍光体をプロットしたCIE色度図である。表1は、図2上に示した各試料と比較用の蛍光体のx値及びy値である。
【0016】
【表1】
【0017】
図2によれば、Al量が多い試料ほどCIE色度図上のy値が小さくなり、図1においてAl量が多くなる場合と同様に、青色の色度が改善されていくことが分かる。CIE色度図においては、yが0.16より小さいと純度の高い青色と認識されるが、本例においてはAl量が0.005の時、y=0.16となった。青色の色度が改善されるAlによる効果は、Ga2 O3 にAlを固溶させた結果蛍光体母体におけるエネルギーギャップが変化することによるものであると考えられる。従って、前述したドーパントを変化させても同様の効果が得られる。
【0018】
図3は各試料と発光輝度の関係を示す。この蛍光体の発光輝度は、Alの固溶量にかかわらず略一定であるが、Alの量がある値を越えると急激に減少しはじめる。この蛍光体におけるAlの量(mol/Ga)は、青色の色調を改善する観点からは、前述のようにCIE色度図上のy値が0.16以下となる0.005以上が好ましいが、輝度をある程度以上に保つという観点からは、輝度が最大値の50%以上を保ちうる0.4以下のAl量が好ましい。
【0019】
以上のデータから、本蛍光体におけるAlの量の好ましい範囲は、0.005≦X≦0.4となる。
【0020】
図4は、本実施例の試料と、青色発光の蛍光体であるZnS:Agと、通常高抵抗蛍光体と考えられているY2 SiO5 :CeやY2 O3 :Euの各々を、前述のような蛍光表示管の陽極に用いた場合の陽極電圧と陽極電流の特性図である。蛍光表示管の駆動条件は、陽極電圧50V、陰極電圧17V、制御電極電圧12Vである。本例の蛍光体を用いた蛍光表示管においては、陽極電圧が10V程度の時から陽極電流が流れだし、ZnS:AgやY2 SiO5 :Ce等に比べてはるかに低抵抗であることが分かる。蛍光体の抵抗が高いと、陽極電圧が低い場合には陽極に電子がチャージしてしまうが、本実施例の蛍光体によれば、そのような不都合が生じない。
【0021】
本実施例において、MgとSnのドープ量を種々変化させて検討したところ、蛍光体の発光強度と該蛍光体が含むドープ物質(本実施例ではMgとSn)の量との間には、図5に示すような関係があった。この関係は他の実施例のドープ物質の場合にも当てはまる。このグラフから分かるように、ドープ物質の(Ga1-X AlX )2 O3 に対するmol%が0.003%〜6%の範囲にあると、蛍光体の発光輝度が最大値の50%を越える。この範囲がドープ量の実用範囲と考えられる。さらにドープ物質の(Ga1-X AlX )2 O3 に対するmol%が0.01%〜1%の範囲にあると、蛍光体の発光輝度が同80%〜100%となる。この範囲がドープ量の最も好ましい範囲と考えられる。
【0022】
(2) 実施例2
8.43gのGa2 O3 と、0.27gのAl(HO)3 と、0.006gのZnCO3 と、0.003gのSi O2 とをよく混合した後、アルミナルツボに充填して1000℃〜1300℃で焼成を行い、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Zn,Si0.1mol% を作製した。また、比較用にAlを用いないGa2 O3 :Zn,Si0.1mol% も作製した。
【0023】
第1の実施例と同様に、本例の蛍光体と前記比較例の蛍光体を用いてそれぞれ蛍光表示管を作製し、輝度特性を評価した。輝度は比較例に比べると95%であった。CIE色度図上のy値は、比較例の0.178に対し、本実施例は0.152であり青色の色度が改善されている。
【0024】
(3) 実施例3
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、MgCO3 5.2mgを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成する。その後、必要に応じて還元雰囲気内において1200℃で焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Mg0.07mol%蛍光体を作製する。
【0025】
前記蛍光体の性能を評価するため、第1実施例と同様に前記蛍光体を陽極に備えた蛍光表示管を作製する。陽極導体に400Vの陽極電圧を加えて前記蛍光表示管を駆動する。蛍光体は、発光輝度が約50cd/m2 の青色発光を示した。CIE色度図上のy値は0.160であった。
【0026】
(4) 実施例4
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、LiCl1.2mgと、SnO2 4mgを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成する。その後、必要に応じて還元雰囲気内において1100℃で焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Li,Sn0.035mol% 蛍光体を作製する。
【0027】
実施例1と同様にして評価したところ、約80cd/m2 の青色発光が得られた。CIE色度図上のy値は0.158であった。
【0028】
(5) 実施例5
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、等量のMgCO3 とSnO2 を混合する。Ga2 O3 に対するMg及びSnの合計のドープ量を、mol%で0.001mol%〜10mol%の範囲で様々に変えて多種類の(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Mg,Sn蛍光体の試料を作製する。他の条件等は実施例5と同一である。その際のMg及びSnのドープ量と得られた蛍光体の発光強度の関係は図5に示すグラフと同様となった。ドープ量の実用範囲と好ましい範囲は前述した通りである。得られた蛍光体の発光スペクトルは好ましい青色発光を示し、CIE色度図上のy値は0.157であった。
【0029】
(6) 実施例6
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 13gと、ZnO2.4mgと、SnO2 4mgを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Zn,Sn0.036mol% 蛍光体を作製する。実施例1と同様にして評価したところ、前記各実施例と同程度の性能が得られた。
【0030】
(7) 実施例7
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 13gと、ZnO2.4mgと、SiO2 1.8mgを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Zn,Si0.035mol% 蛍光体を作製する。実施例1と同様にして評価したところ、前記各実施例と同程度の性能が得られた。
【0031】
(8) 実施例8
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、SiO2 0.9mgと、MgCO3 1.3mgとを混合し、アルミナルツボに充填して1300℃で4時間焼成し、(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Si,Mg0.019mol% 蛍光体を作製する。実施例1と同様にして評価したところ、前記各実施例と同程度の性能が得られた。
【0032】
(9) 実施例9
Ga2 O3 14gと、Al(HO)3 1.3gと、GeO2 1.6mgと、MgCO3 1.3mgとを混合し、アルミナルツボに充填し、1300℃で4時間焼成して(Ga0.9 Al0.1 )2 O3 :Ge,Mg0.018mol% 蛍光体を作製する。実施例1と同様にして評価したところ、前記各実施例と同程度の性能が得られた。
【0033】
【発明の効果】
本発明の蛍光体は、輝度特性が良く、抵抗が低く、電子源である陰極に害のある物質を分解飛散することがない。また、Ga2 O3 を母体とし、M=Mg,Zn,Li及びN=Si,Sn,Geから選択された少なくとも1つの元素が添加されている本発明者の提案になる蛍光体は、良好な青色の発光を得ることが可能であるが、本発明はこの蛍光体の青色発光の色調をさらに改善することができる。本発明の蛍光体は、他の青色高抵抗の蛍光体に導電剤として使用することもでき、VFD、FEDにも適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例において、Al量の異なる各試料の発光スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の第1実施例において、Al量の異なる各試料と比較例の発光スペクトルを示すCIE色度図である。
【図3】本発明の第1実施例において、Al量と発光輝度の関係を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例の蛍光体と比較例の蛍光体をそれぞれ用いた蛍光表示管における陽極電圧と陽極電流の関係を示す図である。
【図5】本発明の各実施例の蛍光体において、母体に対するドーパントのドープ率(mol%)と当該蛍光体の発光強度との関係を示す図である。
Claims (2)
- (Ga1-X AlX )2 O3 を母体とし、Mおよび/又はNがドーパントとして添加された蛍光体。(但し、MはMg,Zn,Liから選択された少なくとも1つの元素であり、NはSi,Sn,Geから選択された少なくとも1つの元素。)
- 0.005≦X≦0.4である請求項1に記載の蛍光体。
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JPH108046A (ja) | 1998-01-13 |
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