JP3706665B2 - 自己接着性フィルムまたはシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自然分解性の重合体からなる新規自己接着性フィルムまたはシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
フィルムやシートの重要な用途は食品や各種製品の容器、袋、包装材料、チューブなどである。それらは、フィルムやシートを用い、必要な場所を加熱や超音波を用いて接着して製造されたり使用されることが多い。この場合、用いるフィルムやシートが、加熱や超音波によって容易にしかも強固に接着されることが望まれる。従来このような用途に合成樹脂からなるフィルムやシートが用いられて来たが、これらの用途のかなりの部分は使い捨てられるもので、環境保護の見地から見直しが必要である。通常の合成樹脂は、使用後廃棄する時、自然環境下では分解性が低く、焼却時は発熱量が大きく炉を痛めるなどの問題があるからである。このため、そのような用途には自然環境下で分解する脂肪族ポリエステル樹脂に置き換えることが望ましい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
脂肪族ポリエステルは各種のものが知られているが、そのフイルムは、必ずしも加熱や超音波による接着性(以下ヒートシール性と記すことがある)に優れておらず、特に耐熱性に優れる高融点脂肪族ポリエステルではむしろヒートシール性に劣る傾向があり、その改良が必要である。
【0004】
本発明の目的は、自然分解性で環境保護の見地から好ましく、しかもヒートシール性に優れるフィルムまたはシートを提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の目的は、(1)融点または軟化点が50〜150℃の脂肪族ポリエステルを主成分とする重量平均分子量が2万〜30万の低融点重合体(A)からなる層と、該融点または軟化点よりも少なくとも20℃高い融点を有する脂肪族ポリエステルを主成分とする高融点重合体(B)からなる層とが複合(接着)されており、(2)高融点重合体(B)の成分の少なくとも1部と低融点重合体(A)の成分の少なくとも1部とが同一であり、(3)低融点重合体(A)が表面の少なくとも1部を占め、かつ(4)前記低融点重合体(A)を構成する脂肪族ポリエステルがポリカプロラクトン、ポリエチレンスベレート、ポリエチレンセバケート、ポリエチレンデカメチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケートおよびポリヘキサメチレンセバケートから選ばれるものであることを特徴とする自己接着性フィルムまたはシートによって達成される。
【0006】
ここで、高融点重合体(B)を構成する脂肪族ポリエステルを主成分とする重合体とは、(1)グリコール酸、乳酸、ヒドロキシブチルカルボン酸などのような脂肪族ヒドロキシカルボン酸、(2)グリコリド、ラクチド、ブチロラクトン、カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン、(3)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのような脂肪族ジオール、(4)コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などの、脂肪族ポリエステル重合原料に由来する成分を主要な成分すなわち40重量%以上(特に50%以上)とするものであって、脂肪族ポリエステルのホモポリマー、脂肪族ポリエステル共重合ポリマー、および脂肪族ポリエステルに他の成分、例えば芳香族ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリオルガノシロキサンなどの成分を60重量%以下(特に50%以下)共重合(ブロック共重合または/及びランダム共重合)又は/及び混合した変性体をすべて包含する。
【0007】
脂肪族ポリエステルを共重合や混合によって変性する目的は、結晶性の低下、融点の低下(重合温度、成型温度、加工温度の低下)、溶融流動性、強靭性、柔軟性や弾性回復性の改良、接着性、耐熱性やガラス転移温度の低下または上昇、親水性や撥水性の改良、染色性の改良、分解性の向上または抑制などが挙げられる。
【0008】
脂肪族ポリエステルの特徴は、自然環境下(土壌中、淡水中、海水中、堆肥中など)、比較的短期間(例えば5年以内、特に2年以内)で分解することである。この自然分解性は、脂肪族ポリエステルを主成分とする共重合体や混合体でも維持されるが、共重合や混合の成分や比率を変えることにより各種分解速度のものを得ることが出来、目的や用途に応じて、適切なものを選ぶことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1および2に本発明の自己接着性フィルム(またはシート)の横断面を示す。図において1は低融点重合体(A)であり、2は高融点重合体(B)である。低融点重合体(A)は、加熱によって容易に溶融し、互いにまたは他の物体に融着する。高融点重合体(B)は、その接着のための加熱によって殆ど影響を受けず、フィルム(シート)の形や強度を保持する。本発明の複合フィルム(シート)は、このように接着剤なしに加熱だけで接着するので、自己接着性フィルム(またはシート)という。
【0010】
図1は低融点重合体(A)の1つの層(接着層)と、高融点重合体(B)の1つの層とが複合(接着)された2層フィルム(シート)の例を示し、図2は低融点重合体(A)の2つの層と高融点重合体(B)の1つの層とが複合(接着)された3層フィルム(シート)の例を示す。低融点重合体(A)は、図1ではフィルム(シート)の表面積の約50%を占め、図2ではほぼ100%を占める例である。図1および2以外にも、本発明によって色々な複合フィルムや複合シートが得られる。たとえば層の数が4以上の多層ィルム、接着層が一様な膜でなく縞状、格子状、市松模様状、多円状、多点状、モザイク状その他任意の形のものなど、多様な応用が可能である。
【0011】
低融点重合体(A)(以下接着層と記すことがある)は加熱によって溶融し、冷却固化することによりフィルムやシートを接着する。しかし、接着性を更に改善し、より高い接着強度を実現するために本発明者らは鋭意研究し、低融点重合体(A)の成分の少なくとも1部、好ましくは3重量%以上と、高融点重合体(B)の成分の1部、好ましくは3重量%以上とを同一とすることにより、極めて優れた接着強度が得られること、特に好ましくは両者に同一のセグメントを持たせることにより最も優れた接着強度が得られることを見出だし、本発明を完成したものである。
【0012】
ここで重合体の成分とは、重合体の繰返し単位、重合原料、モノマー、又は/およびポリマー分子鎖の一部分すなわちセグメントを意味する。セグメントは、重合度2〜20程度のオリゴマー級のもの及び更に重合度の大きいポリマー級のものの両方を包含するが、本発明の目的には、ある程度分子量の大きいもの例えば重合度5以上のもの、特に重合度10以上のものが好ましく、重合度20以上のものが効果が著しく最も好ましい。2種のポリマーが同じ成分を持つとは、同じ重合原料やモノマーに由来するものすなわち共通の繰返し単位を持つこと又は/および共通のセグメントを持つことを意味する。ここでセグメントは重合度が異なっていても、構成単位が同じまたは実質的に同じであれば同一とみなす。例えばポリ乳酸セグメントと、ポリ乳酸に5モル%程度以下のポリグリコール酸がランダム共重合されたセグメントとは(接着性の見地からは)実質的に同じとみなされる。
【0013】
接着層ポリマーの融点は、低目の方が接着工程が容易となり好ましい。しかし融点があまり低すぎると接着強度が劣る。このため、低融点重合体(A)の融点または軟化点は、50〜150℃の範囲がであることが必要であり、55〜140℃が特に好ましく、60〜130℃が最も好ましい。ここで、融点は走査型示差熱量計(DSC)で測定した結晶の溶融吸熱ピークのピーク値であり、軟化点は溶融粘度が100000ポイズになる温度である。一般に接着温度は、接着時の圧力により異なるが、上記融点または軟化点±50℃程度の範囲、特に±30℃程度の範囲であることが多い。
【0014】
低融点重合体(A)を構成する脂肪族ポリエステルは、ポリカプロラクトン(融点約60℃)、ポリエチレンスベレート(同64℃)、ポリエチレンセバケート(同72℃)、ポリエチレンデカメチレート(同85℃)、ポリブチレンサクシネート(同116℃)、ポリブチレンアジペート(同69℃)、ポリブチレンセバケート(同65℃)およびポリヘキサメチレンセバケート(同75℃)から選ばれる。このようなホモポリマーやそれを主成分(例えば90%以上)とする共重合ポリマーの多くは結晶性であり、DSCの測定で明瞭な溶融吸熱ピークを示す。
【0015】
結晶性の高いポリマーは、融点以下の温度に冷却されると速やかに固化するので製造や取扱いおよび接着処理が容易であり、接着層用に特に好ましい。結晶性が高いほど、DSC分析での溶融吸熱量が大きい。接着層ポリマーとしては、溶融吸熱量がポリマー1グラム当たり5ジュール(J)以上が好ましく、10J/g以上が特に好ましく、20J/g以上が最も好ましい。
【0016】
例えば、上記低融点ホモポリマーの一つ(例えばポリカプロラクトン)を低融点重合体(A)とし、その低融点ポリマー(ポリカプロラクトン)をセグメントとして組み込んだポリ乳酸ブロック共重合体を高融点重合体(B)として組み合わせると、両者は共通のセグメント(ポリカプロラクトン)を持つので、特に優れた接着強度が得られる。すなわち融点50〜150℃の前記脂肪族ポリエステルホモポリマーを接着層ポリマー(A)とし、該ホモポリエステルと同一成分、特に同一セグメントを分子内に組み込んだ脂肪族ポリエステル共重合体を高融点重合体(B)とする組み合わせは、本発明の特に好ましい実施態様の第1グループである。
【0017】
本発明の好ましい実施態様の第2グループは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネートなど、融点110℃以上、好ましくは融点150℃以上の脂肪族ポリエステルを高融点重合体(B)とし、融点50〜150℃の低融点脂肪族ポリエステルの分子内に、その結晶性を維持しつつ、該高融点ポリエステル(B)と同一成分、特に同一セグメントを導入したものを接着層(A)とする組み合わせである。具体例としては、高融点重合体(B)をポリ乳酸とし、接着層(A)としてはポリカプロラクトンを主成分とし、それに対し5〜20%程度のポリ乳酸セグメントをブロック共重合したものとする組み合わせが挙げられる。
【0018】
本発明の実施態様の第3グループは、接着層(A)及び/又は高融点重合体(B)として、第2成分、第3成分などを適宜共重合または混合して変性したものを用いるものである。変性の目的の例は、前述の通りである。このグループの例としては、ポリ乳酸にその光学異性体や他のポリエステル原料をランダム共重合して融点を150℃以下、特に130℃以下に低下させたものや、さらに共重合を進め非晶化し軟化点を50〜150℃としたものなどを、接着層(A)とするものが挙げられる。一般に、ブロック共重合では融点の低下が少ない傾向があり、融点を適度に低下させるため少量の(例えば2〜20重量%)ランダム共重合と、接着性などを改良するためのブロック共重合(例えば5〜30%)を併用することも好ましい。
【0019】
上記第1〜第3グループに用いるポリマーの具体例としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、それらの共重合体などのみを示したが、勿論、ポリ乳酸の代わりに他の高融点脂肪族ポリエステル、例えばポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレートなどを用いることが出来、ポリカプロラクトンの代わりに他の低融点脂肪族ポリエステル、例えばポリエチレンセバケート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサンスベレートなどを用いることが出来る。
【0020】
接着性ポリマーの分子量が低いものは溶融速度が大きく、従って例えばヒートシール速度が高い傾向があるので、重量平均分子量2万〜30万のものが用いられる。好ましい重量平均分子量の範囲は3万〜25万であり、特に好ましい範囲は5万〜20万である。
【0021】
本発明のフィルムまたはシートの厚さは特に限定されず、ここでは比較的厚いもの例えば厚さ100μm以上を便宜上シートと呼ぶ。フィルムの場合、例えば厚さ5〜100μm程度、特に10〜50μm程度のものが多く用いられる。同じくシートの場合、厚さ100〜500μm程度のものが多く用いられる。
【0022】
接着層の厚さも、特に限定されないが、例えばフィルムまたはシート全体の厚さの1〜50%、特に3〜30%程度、厚さ1〜100μm程度、とくに3〜50μm程度が好ましく用いられる事が多い。
【0023】
高融点重合体(B)は、フィルム又はシートの形、強度、耐熱性などを支えるもので、接着工程の熱では殆ど影響を受けないことが必要である。このため、その融点は低融点重合体(A)の融点または軟化点よりも20℃以上高いことが必要であり、30℃以上高いことが特に好ましく、40℃以上高いことが最も好ましい。さらに高融点重合体の融点は、沸騰水に耐えるという実用的見地からも、110℃以上であることが好ましく、130℃以上であることが特に好ましく、150℃以上であることが最も好ましい。好ましい高融点ポリマーとしてはポリブチレンサクシネートが挙げられ、特に好ましい高融点ポリマーとしては、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレートおよびそれらを主成分(50重量%以上)とする各種共重合体が挙げられる。また、高融点重合体(B)は、強度の高いことが望ましく、そのため重量平均分子量は5万以上、特に8万以上が好ましく、10〜30万の範囲が最も広く用いられる。
【0024】
高融点重合体(B)の別の必要条件は、低融点重合体(A)に対し高い接着性を持つことであり、そのために高融点重合体(B)の成分の少なくとも1部は低融点重合体(A)の成分の少なくとも1部と同一である必要がある。両者が同一(共通)成分を持つことにより、両者の接着性が強化され、特に共通のセグメントを持つ場合、接着された製品の接着強度が顕著に改善される。一般に、共通成分の量が多いほど、接着強度が大きくなる傾向が認められる。高融点重合体(B)と低融点重合体(A)とが共通して持つ成分の重量比率は、両者で同じでも異なってもよいが、低い共通成分比率を持つ重合体(A又はB)において、1%以上、特に3〜50%程度の範囲が好ましく、5〜30%程度の範囲が最も広く用いられる。前記の本発明の好ましい実施態様の第1グループは、低融点重合体(A)の共通成分比率が100%で、高融点重合体(B)のそれが比較的低い(例えば5〜30%)例である。同じく第2グループは、高融点重合体(B)の共通成分比率が100%で、低融点重合体(A)のそれが比較的低い(例えば5〜30%)例である。
【0025】
本発明複合フィルムは、低融点重合体(A)及び高融点重合体(B)を同時に溶融多層押出し後、必要に応じて延伸、熱処理して製造することが出来る。同様に、あらかじめ高融点重合体(B)よりフィルムを製造しておき、それに対して接着性ポリマー(A)を、溶融法または溶剤法により、ラミネートまたはコーティングして製造することが出来る。ポリマーの溶剤溶液をコーティングする場合、低融点重合体(A)は溶解するが、高融点重合体(B)は溶解しないような溶剤を選ぶことが好ましい。高融点重合体(B)として融点150℃以上の結晶性ポリマーを用い、延伸又は/および熱処理したフィルムを用いると、加熱や溶剤に対する抵抗性が高く、溶融法又は溶剤法によるラミネートやコーティングが容易となり、好ましいことが多い。本発明複合フィルムまたはシートにおいて、低融点重合体(A)及び高融点重合体(B)は、使用目的に応じて、1軸または2軸延伸されたもの又は延伸されていないものとする事ができる。しかし、一般に高い強度が必要な場合には、少なくとも高融点重合体(B)は1軸または2軸延伸されていることが好ましい。薄いフィルムを製造する場合も、延伸した方が有利であることが多い。
【0026】
本発明の複合フィルムまたはシートを形成するポリマーには、必要に応じ、顔料、染料などの着色剤、無機系または有機系粒子、ガラス繊維、ウイスカー、雲母などの充填剤、結晶核剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、滑剤、離型剤、撥水剤、可塑剤、抗菌剤その他の副次的添加剤を配合することが出来る。
以下の実施例において、%、部は特に断らない限り重量比である。脂肪族ポリエステルの分子量は、試料の0.1%クロロホルム溶液のGPC分析において、分子量500以下の成分をのぞく高分子成分の分散の重量平均値である。DSC測定は、試料10mg、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/minの条件で行った。接着強度は、試料フィルム(シート)を2枚重ね、電熱シール装置で所定温度で1秒間接着した後、幅2cm、長さ8cmに切断し、引張り試験機で、試験片長さ5cm、接着(シール)線と直角方向に引張り速度5cm/min、測定室温度20℃で、引張り試験したときの剥離強度である。なお、以下の実験例では、フィルムの例のみを示すが、シートの場合も厚さを大きくするだけで、ほぼ同様に実施できる。
【0027】
【実施例】
片末端が水酸基で重量平均分子量15.6万(数平均7万)のポリカプロラクトン5部、光学純度99.5%以上のL−ラクチド95部、重合触媒としてオクチル酸錫100ppm、酸化防止剤としてチバガイギー社イルガノックス1010、0.1部を混合し2軸混練押出機に連続的に供給し、195℃で平均18分間反応させたのち口金より押出し、水中で冷却した後、切断乾燥してチップC1を得た。
【0028】
さらにチップC1を140℃の窒素気流中で4時間加熱(固相重合)してポリマーP1を得た。ポリマーP1は、ポリカプロラクトンが約5%ブロック共重合されたポリL−乳酸で、重量平均分子量147000、融点169℃であった。なお、このブロック共重合体の分子量は、原料ポリカプロラクトンの分子量よりも小さいが、これは重合中に微量の水によりポリカプロラクトンが一部分解したりエステル交換反応が生じたためと推定される。しかしこの重合体は、融点の低下がほとんど無く、その透明性や強靭性が単なる混合物よりもはるかに優れている事などから、ブロック共重合体であると認められる。
【0029】
ポリマーP1とほぼ同様にして、但しポリカプロラクトンを共重合しないで得たポリL−乳酸ホモポリマーをP2とする。ポリマーP2の重量平均分子量は155000、融点は172℃であった。ポリマーP1とほぼ同様にして、ただしポリカプロラクトン95部、L−ラクチド5部、オクチル酸錫20ppm、イルガノックス1010、0.1%を混合、以下同様に重合して得たポリマーをP3とする。ポリマーP3は重量平均分子量約8000のポリL−乳酸が約5%ブロック共重合されたポリカプロラクトンで重量平均分子量172000、融点58℃、溶融吸熱量は45J/gであった。
【0030】
ポリマーP1を、220℃のスクリュウ押出機で溶融し220℃のTダイを用いて押出した後、30℃の冷却ロールで冷却しつつその上に、別のスクリュウ押出機で溶融した重量平均分子量15.6万、融点58℃、溶融吸熱量51J/gのポリカプロラクトンを180℃のTダイより押出してラミネートし、冷却後50℃で長さ方向に3.3倍、横方向に3.6倍延伸して複合フィルムF1を得た。フィルムF1は、厚さ6μmのポリカプロラクトン接着層(低融点重合体(A))と、厚さ22μmのポリ乳酸ブロック共重合体(高融点重合体(B))の層からなっている。
【0031】
フィルムF1とほぼ同様にして、但し低融点重合体(A)としてポリマーP3を、高融点重合体(B)としてポリマーP2をそれぞれ用いて得たものをフィルムF2とする。
【0032】
比較のため、フィルムF1とほぼ同様にして、但し低融点重合体(A)として上記ポリカプロラクトン(ホモポリマー)を、高融点重合体(B)としてポリマーP2(ポリL−乳酸ホモポリマー)をそれぞれ用いて得たものをフィルムF3とする。同じく、ポリマーP2のみからほぼ同じ条件で製造した厚さ25μmの単層フィルムをF4とする。
【0033】
フィルムF1〜F4を、同じ物同志電熱シール装置で接着し、その接着力を測定した。接着方法は、接着層同志を接着した場合と、接着層と高融点重合体(B)からなる層とを接着した場合の両方について実験した。接着温度はフィルムF1〜F3が80℃、F4が同じく168℃である。各フィルムの接着力を表1に示す。表に見るように、本発明のフィルムは比較例に比べて優れた接着力を持ち、ヒートシール性に優れることが明らかである。なお、本発明フィルムまたはシートは、接着層同志の接着性に優れるだけでなく、接着層と高融点重合体(B)からなる層とを接着してもほぼ同じ強い接着力を示すという優れた特色がある。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明によって、廃棄された場合、従来の合成樹脂の製品よりも焼却時の発熱が少なく、土壌中、淡水中、海水中、堆肥中などで自然に分解され環境への悪影響がほとんど無く、しかもヒートシール性に優れ強い接着力を示す新規複合フィルムまたはシートが提供され、各種容器、袋、包装材料、チューブその他の用途に極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体例をしめす2層複合フィルムの断面図である。
【図2】本発明の具体例をしめす3層複合フィルムの断面図である。
【符号の説明】
1低融点重合体(A) 2高融点重合体(B)
Claims (3)
- (1)融点または軟化点が50〜150℃の脂肪族ポリエステルを主成分とする重量平均分子量が2万〜30万の低融点重合体(A)からなる層と、該融点または軟化点よりも少なくとも20℃高い融点を有する脂肪族ポリエステルを主成分とする高融点重合体(B)からなる層とが複合されており、(2)高融点重合体(B)の成分の少なくとも1部と低融点重合体(A)の成分の少なくとも1部とが同一であり、(3)低融点重合体(A)が表面の少なくとも1部を占め、かつ(4)前記低融点重合体(A)を構成する脂肪族ポリエステルがポリカプロラクトン、ポリエチレンスベレート、ポリエチレンセバケート、ポリエチレンデカメチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケートおよびポリヘキサメチレンセバケートから選ばれるものであることを特徴とする自己接着性フィルムまたはシート。
- 低融点重合体(A)と高融点重合体(B)とが、同一のセグメントを持つものである、請求項1記載の自己接着性フィルムまたはシート。
- (1)高融点重合体(B)の融点が150℃以上であり、(2)低融点重合体(A)が結晶性であり、かつ(3)両者の融点差が30℃以上である請求項1又は2記載の自己接着性フィルムまたはシート。
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