JP3705823B2 - エンジンのベーパ発生検出装置 - Google Patents

エンジンのベーパ発生検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はエンジンのベーパ発生検出装置及びエンジンの制御装置に関し、詳しくは、燃料供給通路内における燃料ベーパの発生量を推定し得る装置、及び、燃料ベーパの発生量の検知結果に応じたペーパ処理及び燃料噴射制御の技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、エンジンの電子制御燃料噴射装置においては、燃料噴射弁の開弁制御時間によってエンジンへの燃料供給量を制御することが行われている。
かかる燃料供給装置では、燃料噴射弁に対する燃料の供給圧力と、燃料噴射弁の噴孔部付近の吸気圧力との差圧が一定でないと、噴射弁の開弁時間に対応して一定した燃料を供給させることができなくなる。そこで、燃料噴射弁に対して燃料ポンプから圧送される燃料の供給圧力(以下、単に燃圧という。)を調整するためのプレッシャレギュレータの基準圧力室に、スロットル弁下流側の吸入負圧を導き、前記基準圧力室内の圧力と燃料ポンプからの供給圧力との差圧、即ち、噴孔部の吸気圧力と燃圧との差圧が所定値以上になると、燃料タンクに燃料を戻すリターン通路を開いて、前記差圧を一定に保つようにしていた(特開昭60−212634号公報等参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような燃料供給装置では、要求燃料量の急増などがあっても前記差圧を一定に保つ必要があるので、前記燃料ポンプを必要よりも大きな負荷で駆動させて、燃料ポンプから必要量よりも多めに燃料が吐き出されるようにしており、前記余分に供給された燃料は、プレッシャレギュレータから余剰燃料として燃料タンクに戻されることになっていた。
【0004】
ここで、前記プレッシャレギュレータから燃料タンクに戻される余剰燃料は、エンジンの熱で暖められているために、前記余剰燃料を燃料タンクに戻すことは、燃料タンク内の燃料温度を上昇させることになり、燃料タンク内に燃料ベーパを発生させてしまうことがあった。
かかる問題点を解消し得る技術として、所望の燃料供給圧(所望の差圧)が得られるように、燃料ポンプの吐出量を制御するシステムがある。しかしながら、このようなシステムでは、前記問題点を解消するために噴射弁付近の燃料供給通路から燃料をタンク内に戻すことをしない(又は僅かな量しか戻さない)から、燃料供給通路内に燃料ベーパが発生している状態で始動を行わせるときに、リターン燃料による積極的な燃料循環が期待できず、燃料ベーパがそのまま噴射弁から噴射されてしまうことになる。このため、エンジンの要求燃料よりも実際に噴射供給される燃料量が少なくなって混合気の空燃比がリーン化し、始動性が悪化することがあった。
【0005】
ここで、始動時及び始動直後に冷却水温度に応じて燃料噴射量の増量補正を行うことが行われているが、前記燃料ペーパの発生状態を冷却水温度の状態から精度良く推定することはできず、最適な増量補正を施すことは困難であった。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、燃料供給通路内におけるベーパの発生量を高精度に推定することができる装置を提供すると共に、ベーパ発生量の推定結果に基づいてベーパ発生時における空燃比制御性の悪化を防止できる装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そのため本発明にかかるエンジンのベーパ発生検出装置は、燃料タンク内の燃料を燃料ポンプにより吸引し、該吸引された燃料を燃料供給通路を介して燃料噴射弁に圧送する構成としたエンジンのベーパ発生検出装置であっては、図1に示すように構成される。
【0007】
図1において、燃圧検出手段は、燃料供給通路における燃料の供給圧力を検出し、圧力上昇演算手段は、燃料ポンプの作動開始後所定時間における燃料供給圧力の上昇分を前記燃圧検出手段で検出された燃料供給圧力に基づき演算する。そして、ベーパ発生量推定手段は、圧力上昇演算手段で演算された上昇分に基づいて、燃料ポンプの作動開始時における燃料供給通路内の燃料ベーパの発生量を推定する。
【0008】
ここで、圧力上昇演算手段で演算された上昇分を、燃料ポンプの作動開始時に燃圧検出手段で検出された燃料供給圧力のレベルに基づいて補正設定する圧力レベルによる補正手段を設けることが好ましい。また、圧力上昇演算手段で演算された上昇分を、燃料ポンプの電源電圧に基づいて補正する電源電圧による補正手段を設けると良い。
【0009】
更に、前記ベーパ発生量推定手段で推定された燃料ベーパの発生量に応じて、前記燃料供給通路からリターン通路を介して燃料タンクに戻される燃料量を調整するリターン燃料量調整手段を設けることができる。
また、前記燃料噴射弁の開弁時間を前記ベーパ発生量推定手段で推定された燃料ベーパの発生量に応じて補正する噴射量補正手段を設けることができる。
【0011】
【作用】
かかる構成のエンジンのベーパ発生検出装置によると、燃料ポンプの作動開始後所定時間における燃料供給圧力の上昇分が求められ、ベーパ発生時に圧力上昇が鈍る特性に基づいてベーパ発生量が検出される。ここで、燃料供給圧力のレベルや燃料ポンプの電源電圧によって、前記上昇分が変化するので、演算された上昇分を前記パラメータに基づいて補正するようにした。
【0012】
更に、燃料ベーパの発生量の推定に応じて燃料供給通路からリターン通路を介して燃料タンクに戻される燃料量を調整する。また、燃料ベーパの発生量の推定に応じて燃料噴射弁による燃料噴射量を補正することで、ベーパ発生による実際の噴射量の低下を補償する。
【0013】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。一実施例の燃料供給装置を示す図2において、燃料タンク1内の燃料は、燃料ポンプ2によって吸引され、該燃料ポンプ2から吐き出された燃料は燃料供給通路3を介して各燃料噴射弁4に圧送される。
【0014】
前記燃料噴射弁4は、ソレノイドに通電されて開弁し、通電停止されて閉弁する電磁式燃料噴射弁であり、後述するコントロールユニット9から送られるエンジンの要求燃料量に対応する所定パルス幅(開弁時間)の駆動パルス信号に応じて開弁制御され、図示しないエンジンのスロットル弁下流側の吸気管内に燃料を噴射供給する。
【0015】
前記燃料供給通路3には、燃料フィルタ5が介装されると共に、燃料噴射弁4の近傍で燃料供給圧力(以下、単に燃圧という。)PFを検出する燃圧検出手段としての燃圧センサ6が設けられている。該燃圧センサ6で検出される燃圧RPFは、後述する燃料ポンプ2の駆動制御に用いられ、前記燃圧RPFに基づいて燃料ポンプ2への印加電圧VFPが調整されるようになっている。
【0016】
また、前記燃料噴射弁4で噴射されなかった燃料を燃料タンク1に戻すためのリターン通路7が燃料供給通路3から延設されており、該リターン通路7の燃料供給通路3からの分岐部には、リターン燃料量調整手段としての電磁開閉弁8が介装されている。そして、前記電磁開閉弁8が開制御されると、燃料供給通路3と燃料タンク1とが絞りを介して連通されるようになり、燃料供給通路3内から所定量の燃料が燃料タンク1内に戻される。
【0017】
前記燃料ポンプ2の駆動電圧VFP及び前記電磁開閉弁8の開閉動作は、マイクロコンピュータを内蔵したコントロールユニット9によって制御されるようになっており、かかる制御のために前記コントロールユニット9には、前記燃圧センサ6からの検出信号が入力されると共に、図示しないエンジンの吸入負圧PBを検出するブーストセンサ10、スタートスイッチ11、イグニッションスイッチ(IGSW)12などからの信号が入力されるようになっている。
【0018】
コントロールユニット9は、前記燃圧センサ6で検出される燃圧RPFと、前記ブーストセンサ10で検出される吸入負圧PBとの差圧が一定値になるように、燃料ポンプ2への印加電圧VFPを調整して燃圧RPFを制御する。また、電磁開閉弁8の開閉制御については後述する。
また、本実施例において、前記コントロールユニット9は、燃料噴射弁4の開弁時間を介してエンジンへの燃料供給量を制御する機能(噴射量制御手段としての機能)を有しており、かかる制御のために、エアフローメータ13からの吸入空気流量検出信号Q、クランク角センサ14からの回転速度信号Neなどが入力されるようになっている。
【0019】
そして、コントロールユニット9は、燃圧と吸入負圧との差圧が一定値に調整されていることを前提として、吸入空気流量Qと回転速度Neとに基づいて基本噴射パルス幅Tp(基本開弁時間)を演算する一方、始動及び始動後補正係数等を含む各種補正係数COEFを設定し、前記基本噴射パルス幅Tpを各種補正係数COEFで補正して最終的な噴射パルス幅Tiを設定する。そして、前記噴射パルス幅Tiの駆動パルス信号を燃料噴射弁4に対して所定タイミングで出力することで、エンジンの要求に見合った燃料を、間欠的に噴射供給させる。
【0020】
ここで、コントロールユニット9は、図3のフローチャートに示すように、エンジン始動時に燃料供給通路3内に発生しているベーパ量を推定する機能(ベーパ発生量推定手段としての機能)を有しており、更に、後述するようにかかる推定結果に基づいて前記電磁開閉弁8の開閉制御及び前記燃料噴射弁4による噴射量の補正制御を行うようになっている。
【0021】
図3のフローチャートにおいて、まず、ステップ1(図中ではS1としてある。以下同様)では、イグニッションスイッチ(IGSW)12がOFF状態からONに切り換えられたか否かを判別する。ここで、イグニッションスイッチ12がOFF状態からONに切り換えられると、ステップ2へ進み、燃圧センサ6で検出された燃圧RPFを読み込み、該燃圧RPFを初期燃圧としてSTPFにセットする。
【0022】
次に、ステップ3へ進み、イグニッションスイッチ12がONされてからの経過時間を計測するためのタイマーTIMをゼロスタートさせる。
また、ステップ4では、燃料ポンプ2に対する実際の供給電圧VFPのレベルを読み込む。
このような初期処理が終了すると、次回からはステップ1からステップ5へ進む。
【0023】
ステップ5では、イグニッションスイッチ12がONされたときにゼロスタートさせたタイマーTIMと所定値とを比較し、タイマーTIMが所定値にまでカウントアップされるまでは、ステップ6へ進んで、タイマーTIMのカウントアップを実行させる。
そして、前記タイマーTIMが所定値にまでカウントアップされると、ステップ5からステップ7へ進み、そのときに燃圧センサ6で検出された燃圧RPFを読み込む。
【0024】
次のステップ8では、上記ステップ7で読み込んだ燃圧RPFと、前記ステップ2で設定したイグニッションスイッチ12がONされたときの初期燃圧STPFとの偏差DPFを演算する。前記偏差DPFは、イグニッションスイッチ12がONされてから所定時間内における燃圧RPFの上昇分(上昇割合)に相当し、上記ステップ8が圧力上昇演算手段に相当する。
【0025】
また、ステップ9では、前記初期燃圧STPFに基づいて前記偏差DPFを補正するための補正係数DPSTを設定する。このステップ9の機能が、圧力レベルによる補正手段に相当する。
更に、ステップ10では、ステップ4で求めた燃料ポンプ2に対する供給電圧VFPに基づいて前記偏差DPFを補正するための補正係数DPVFを設定する。このステップ10の機能が、電源電圧による補正手段に相当する。
【0026】
そして、ステップ11では、前記偏差DPFに前記補正係数DPST,DPVFを乗算して補正し、該補正結果をベーパ発生量を推定するために用いる燃圧RPFの上昇割合DPとする。ステップ12では、前記上昇割合DPに基づいてベーパ発生量ランクを決定する。即ち、エンジン停止直後の再始動時などで、燃料供給通路3内にベーパが発生している状態で燃料ポンプ2の作動を開始させると、図4に示すように、ベーパがない場合に比べ燃圧RPFの上昇が鈍る傾向を示す。そこで、始動時に実際の燃圧RPFの上昇割合を求め、該上昇割合からベーパの発生量を推定させるものであり、前記ステップ12がベーパ発生量推定手段に相当する。
【0027】
尚、前記燃圧RPFの上昇割合は、ベーパ発生量の他に、圧力上昇開始時の圧力レベルや燃料ポンプ2の電源電圧に応じて変化するので、前記補正係数DPST,DPVFで偏差DPFを補正することで、前記圧力上昇開始時の圧力レベルや燃料ポンプ2の電源電圧の影響を排除するようにした。ところで、前記図2に示した燃料供給システムでは、燃圧センサ6により検出される燃圧RPFとブーストセンサ10で検出される吸入負圧PBとの差圧が一定値になるように、燃料ポンプ2の印加電圧(吐出量)を制御するから、前記電磁開閉弁8を閉じてリターン燃料を零とした状態で燃料供給が行える。
【0028】
しかしながら、上記のようにしてベーパ発生量を推定した結果、多量のベーパが燃料供給通路3内に発生していると推定される場合には、リターン燃料をゼロとした状態では、燃料噴射弁4から燃料と共にベーパが噴射されて、所期の燃料量を噴射供給させることができなくなる。そこで、本実施例では、図5のフローチャートに示すようにして、ベーパ発生量の推定結果に基づいてリターン通路7を開いて、ベーパを燃料タンク1内に排出させるようにする。尚、本実施例において、リターン燃料量制御手段としての機能は、前記図5のフローチャートに示すようにコントロールユニット9が備えている。
【0029】
図5のフローチャートにおいて、まず、ベーパ検知手段としてのステップ21では、前記図3のフローチャートに示すようにして、始動時における燃圧の上昇割合に基づいてベーパ発生量のランクを検出する。ステップ22では、前記ベーパ発生量の推定結果に基づく初期設定が終了しているか否かを判別し、初期設定がなされていない場合には、ステップ23へ進む。
【0030】
ステップ23では、ステップ21で求めた前記ベーパ発生量ランクに基づいて、電磁開閉弁8を開制御する時間VOTをセットする。ここで、ベーパ発生量ランクが高く、多量のベーパが発生していると推定されているときほど、前記時間VOTとして長い時間を設定させるようにしてある。
次のステップ24では、上記ステップ23で設定された時間VOTを計測するためのタイマーTIMVをゼロスタートさせ、ステップ25では、前記電磁開閉弁8を開制御する。
【0031】
尚、前記ステップ21におけるベーパ発生量ランクの検出においては、電磁開閉弁8は閉状態に固定しておく。
上記のように、ベーパ発生量ランクに応じて電磁開閉弁8を開く時間VOTを設定すると、今度はステップ22からステップ26へ進み、前記時間VOTとタイマーTIMVによる計測時間とを比較し、タイマーTIMVによる計測時間が時間VOTに達していないときには、ステップ27へ進み、電磁開閉弁8を開状態に保ったままタイマーTIMVを更新させる。
【0032】
一方、ステップ26で時間VOTが経過したことが判別されると、ステップ28へ進み、電磁開閉弁8を閉じて、ベーパ排出のための電磁開閉弁8の開制御を終了させる。
このように、始動時にベーパ発生量の推定結果に基づいて電磁開閉弁8を開くようにすれば、燃料供給通路3内の燃料が速やかに循環されて、燃料噴射弁4からベーパが噴射されてしまうことを回避できると共に、時間VOTをベーパ発生量の推定結果に応じて設定することで、無駄なリターン燃料の発生が防がれる。尚、上記実施例では、電磁開閉弁8の開弁時間VOTをベーパ発生量に応じて可変設定したが、電磁開閉弁8の開度をベーパ発生量に応じて調整させても良い。
【0033】
上記実施例では、ベーパ発生量の推定結果に基づいて電磁開閉弁8を開制御させてベーパを燃料タンク1内に排出させるようにしたが、リターン燃料を発生させてベーパを排出させる代わりに、燃圧RPFを強制的に上昇させて、同じ噴射時間(開弁時間)に対して得られる噴射量を通常よりも多くし、ベーパを含むことによる噴射量の減少分を補償させるようにしても良い。
【0034】
かかる燃圧補正を行う実施例を図6のフローチャートに従って以下に説明する。尚、図6のフローチャートに示す制御は、燃圧の増大制御によって噴射量を増大させるものであり、コントロールユニット9における噴射量補正手段としての機能を示す。図6のフローチャートにおいて、まず、ベーパ検知手段としてのステップ31では、前記図3のフローチャートに示すようにして、燃圧RPFの上昇割合からベーパ発生量のランクを判定する。
【0035】
次のステップ32では、燃圧補正の初期設定が終了しているか否かを判別し、非終了時には、ステップ33へ進む。
ステップ33では、ベーパ発生量のランクに応じて燃圧の増大補正代DLTPを設定する。ここでは、ベーパの発生量が多いときほど、噴射弁の開弁時間に対する実際の噴射量の減少度合いが大きくなるから、ベーパ発生量のランクが高いときほど増大補正代DLTPを大きく設定するようにしてある。
【0036】
上記ステップ33で設定された増大補正代DLTPは、ステップ34で所定値ΔPずつ減少修正され、該修正結果が0以下となったことがステップ35で判別されると、ステップ36で増大補正代DLTPを零として、ベーパ発生量に応じた燃圧補正を終了させる。
前記増大補正代DLTPは、ステップ37において、基本差圧に加算され、該加算結果が最終的な目標差圧CPFとして設定される。コントロールユニット9では、燃圧センサ6で検出される燃圧RPFとブーストセンサ10で検出される吸入負圧PBとの差圧が、前記目標差圧CPFになるように燃料ポンプ2の印加電圧を制御する。
【0037】
更に、始動時のベーパを含む燃料の噴射による噴射量の減少を補償する技術としては、図7のフローチャートに示すように、噴射パルス幅Tiを増大補正するようにしても良く、前記パルス幅Tiの増大補正機能が噴射量補正手段に相当する。図7のフローチャートにおいて、まず、ステップ41では、前記図3のフローチャートに示すようにして、燃圧RPFの上昇割合からベーパ発生量のランクを判定する。
【0038】
ステップ42では、ベーパ発生量に基づく噴射パルス幅の補正制御の初期セットが終了しているか否かを判別し、非終了時にはステップ43へ進む。
ステップ43では、前記各種補正係数COEF(←1+KSTPF+KASPF+・・・)に含まれる始動時増量補正係数KSTPFを、ベーパ発生量ランクに応じて設定する。また、ステップ44では、同じく前記各種補正係数COEFに含まれる始動後増量補正係数KASPFを、やはりベーパ発生量ランクに応じて設定する。
【0039】
ここで、始動時増量補正係数KSTPF及び始動後増量補正係数KASPFは、ベーパ発生量ランクが高くベーパ発生量が多いときほど大きな値として設定され、より噴射パルス幅を増大補正するようになっている。
上記のようにして始動時増量補正係数KSTPF及び始動後増量補正係数KASPFを、ベーパ発生量ランクに応じて設定すると、ステップ45ではスタートスイッチ11のオン・オフを判別する。
【0040】
スタートスイッチ11がON状態であるときには、前記ステップ43,44で設定した始動時増量補正係数KSTPF及び始動後増量補正係数KASPFをそのまま用いて噴射パルス幅Tiの補正を行わせる。
一方、スタートスイッチ11がOFFされると、ステップ46へ進み、前記始動後増量補正係数KASPFを所定値aずつ減少修正し、次のステップ47では、前記始動時増量補正係数KSTPFをゼロリセットする。
【0041】
ステップ48では、ステップ46で減少修正された前記始動後増量補正係数KASPFが0以下になったか否かを判別し、0にまで減少修正されたときには、ステップ49で補正係数KASPFを0とするが、0にまで減少していないときには、再度ステップ46における減少修正を実行させるべくそのまま終了させる。
即ち、スタートスイッチ11がOFFされると、直ちに始動時増量補正係数KSTPFをゼロリセットし、始動後増量補正係数KASPFについては徐々に0にまで減少させるようにする。
【0042】
上記のようにして始動時のベーパ発生量の推定結果に基づいて始動時増量補正係数KSTPF及び始動後増量補正係数KASPFを設定させることで、ベーパを含んだ燃料を噴射弁4が噴射することによる噴射量の減少を補償することができる。尚、上記図5〜図7の各フローチャートに示す制御では、始動時の燃圧上昇割合に基づいたベーパ発生量の推定結果を用いて各種の制御を実行させるようにしたが、他のベーパ検知方法を用いても良いことは明らかである。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によると、始動時における燃料供給通路内におけるベーパ発生量を精度良く推定することができる一方、ベーパ発生時にベーパが燃料と共に燃料噴射弁から噴射されることを抑止でき、また、ベーパを含む燃料を噴射することによる噴射量の減少を補償することができるようになるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を示すブロック図。
【図】本発明の実施例のシステム構成を示す図。
【図】実施例におけるベーパ発生量の推定制御を示すフローチャート。
【図】ベーパ発生量による燃圧上昇特性の違いを示すタイムチャート。
【図】実施例におけるリターン燃料量制御を示すフローチャート。
【図】実施例における燃圧補正制御を示すフローチャート。
【図】実施例における噴射パルス幅の補正制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…燃料タンク
2…燃料ポンプ
3…燃料供給通路
4…燃料噴射弁
6…燃圧センサ
7…リターン通路
8…電磁開閉弁
9…コントロールユニット
10…ブーストセンサ
11…スタートスイッチ
12…イグニッションスイッチ
13…エアフローメータ
14…クランク角センサ

Claims (5)

  1. 燃料タンク内の燃料を燃料ポンプにより吸引し、該吸引された燃料を燃料供給通路を介して燃料噴射弁に圧送する構成としたエンジンのベーパ発生検出装置であって、
    前記燃料供給通路における燃料の供給圧力を検出する燃圧検出手段と、
    前記燃料ポンプの作動開始後所定時間における燃料供給圧力の上昇分を前記燃圧検出手段で検出された燃料供給圧力に基づき演算する圧力上昇演算手段と、
    該圧力上昇演算手段で演算された燃料供給圧力の上昇分に基づいて、前記燃料ポンプの作動開始時における前記燃料供給通路内の燃料ベーパの発生量を推定するベーパ発生量推定手段と、を含んで構成されたエンジンのベーパ発生検出装置。
  2. 前記圧力上昇演算手段で演算された上昇分を、前記燃料ポンプの作動開始時に前記燃圧検出手段で検出された燃料供給圧力のレベルに基づいて補正設定する圧力レベルによる補正手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のエンジンのベーパ発生検出装置。
  3. 前記圧力上昇演算手段で演算された上昇分を、前記燃料ポンプの電源電圧に基づいて補正する電源電圧による補正手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のエンジンのベーパ発生検出装置。
  4. 前記ベーパ発生量推定手段で推定された燃料ベーパの発生量に応じて、前記燃料供給通路からリターン通路を介して燃料タンクに戻される燃料量を調整するリターン燃料量調整手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンのベーパ発生検出装置。
  5. 前記燃料噴射弁の開弁時間を前記ベーパ発生量推定手段で推定された燃料ベーパの発生量に応じて補正する噴射量補正手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンのベーパ発生検出装置。
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