JP3704914B2 - Egr制御装置付ディーゼルエンジンのトルク制御装置 - Google Patents
Egr制御装置付ディーゼルエンジンのトルク制御装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、EGR制御装置付ディーゼルエンジンのトルク制御装置に関し、特にEGR率の変化により発生するエンジントルクの段差を緩和する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の内燃機関のEGR制御装置として、例えば特開平5−231212号公報に開示されるようなものがある。これは、EGR制御を行う火花点火式内燃機関において、EGRの開始時、または、逆にEGRの停止時に発生するトルク段差を押さえることによって、運転性を向上させることを目的としている。
【0003】
図14に基づいて概要を説明すると、運転状態に基づいて切り替え手段51が、EGRを行なう第1の状億と、EGRを停止する第2の状態とのいずれであるかを選択し、その選択結果をもとにEGR52を操作する。
そして、第1の状態が選択されたときに、吸入空気量増量手段53例えば、ISC(アイドルスピードコントロール)バルブを操作することによって吸入空気量を増量補正する。この吸入空気量の増量補正によって、上記切り替えによって発生するトルクの変化を押弓えることができる。
【0004】
該従来例の効果を図9を用いて具体的に説明する。図9はスロットル開度に対するエンジントルクの関係を表したものである。スロットル開度がTA1のとき、第1の状態54と第2の状態55の切り替えが行われるものとする TA1より低開度側が第1の状態(EGRを行なっている状態)で、TA1より高開度側が第2の状態(EGRを停止している状態)である。
【0005】
吸入空気量の増量補正を行なわない場合は、スロットル開度がTA1以下のとき、曲線Aに従ってトルクが上昇し、TA1以上になると曲線Bに移る。(第2の状態はEGRが停止されることによって、同じスロットル開度に対するエンジントルクは、第1の状態よりも大きくなる。)
一方、前記従来例のように、第1の状態のとき吸入空気量の増量補正を行なう場合は、TA1以下のとき、曲線Cに従ってトルクが上昇する。曲線Aに対する曲線Cの増加は、吸入空気量の増量補正によって発生する。よって補正量が適切であれば、曲線Cから曲線Bにほぼ連続的に移行することが可能である。これによって、運転性の向上を実現することができる。
【0006】
しかしながら、このように吸入空気量の増量によってトルク段差を解消する方式は、ディーゼルエンジンのようにエンジントルクが吸入空気量と殆ど無関係なエンジンでは効果を発揮できない。
従来の一般的なディーゼルエンジンのEGR制御装置(特開平9−53519号公報等参照)について説明する。
【0007】
このものでは目標EGR率を設定し、実際のEGR率が目標EGR率に追従するようにEGR弁を操作する。通常、目標EGR率は運転状態に合わせて変化するように設定されている。この設定の傾向としては、低負荷で低速運転時ほど、目標EGR率が高くなるようにするのが一般的である。これは、NOxの低減のためには、EGR率を高くすべきであるが、燃焼の安定および、黒煙の発生の抑制のためには、高負荷、高速運転時は、高いEGR率が好ましくないためである。ここで、機関の負荷状態を表すものとして目標燃料噴射量を用いると、目標EGR率は例えば図4に示すようなマップで設定することができる。図4では、低負荷、低回転で高EGR領域が存在し、高負荷または、高回転をEGR禁止領域とし、この2つの領域の間では、目標EGR率が段階的に変化するようにしている。
【0008】
また、目標燃料噴射量は、基本的にアクセル踏み込み量と機関回転速度とから設定される。設定の傾向としては、図5のようなものが一般的である。同じ機関回転速度で比較すると、アクセル踏み込み量が大きいほど目標燃料噴射量が大きくなり、また、同じアクセル踏み込み量で比較すると、機関回転速度が大きくなるほど目標燃料噴射量が小さくなるようにしてある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記第2の従来例のような一般的なディーゼルエンジンのEGR制御装置にあっては、以下のような問題がある。
以下、前記図4と図5が実際に使われているものとし、例として、アクセルペダルの踏み込み量をほぼ一定にして加速状態を継続している場合を想定して説明する。
【0010】
このような場合、目標燃料噴射量は設定マップ上で、図10に示すような軌跡をたどることによって、図11のように変化する。図10は図5に軌跡を書き加えたものである。
また、図のように目標燃料噴射量が変化するとすれば、目標EGR率は設定マップ上で、図12に示すような軌跡をたどることによって、図13のように変化する。図12は図4に軌跡を書き加えたものである。
【0011】
上記の例のように運転者が特別にエンジントルクの変化が発生するような操作を行なっていなくても、目標EGR率の変化に、実際のEGR率が追従することによって、エンジントルクに変化が生じてしまい、運転性が悪化するという問題がある。
本発明は、このような従来の間題点に注目してなされたもので、目標燃料噴射量の補正を行うことによって、EGR率の変化に伴うエンジントルクの変化を緩やかにして、上記問題点を解決することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明は、図1に実線で示すように、
排気の一部を吸気中に還流するEGR制御装置を備えたディーゼルエンジンにおいて、
エンジン運転状態に基づいて目標燃料噴射量を設定する目標燃料噴射量設定手段と、
エンジン運転状態に基づいて目標EGR率を設定する目標EGR率設定手段と、
エンジン運転状態に基づいて吸気系に流入した気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性を算出する動特性算出手段と、
前記目標EGR率と、吸気系に流入した気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性とに基づいて、目標EGR率の変化によるエンジントルクの変化を緩和する方向に前記目標燃料噴射量の補正量を算出する目標燃料噴射量補正量算出手段と、
該目標燃料噴射量の補正量によって目標燃料噴射量を補正する目標燃料噴射量補正手段と、
前記目標燃料噴射量と目標EGR率とに基づいて、前記目標燃料噴射量の補正を行う条件を判別する目標燃料噴射量補正条件判別手段と、
を含んで構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項1に係る発明によると、
動特性算出手段はエンジン運転状態に基づいて吸気系に流入した気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性を算出する。
目標燃料噴射量補正量算出手段は、前記目標EGR率と吸気系に流入した気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性とに基づいて、実際にシリンダに吸入されるガス中のEGR率の変化に応じたエンジントルクの変化特性を把握できるので、該エンジントルクの変化特性に応じて目標燃料噴射量の補正量を算出する。
【0016】
目標燃料噴射量補正手段は、前記算出された目標の補正量によって目標燃料噴射量を補正する。これにより、目標EGR率変化時のエンジントルクの段差を効果的に緩和することができる。
【0017】
また、目標燃料噴射量補正条件判別手段は、目標EGR率の変化に対して目標燃料噴射量を補正すべきでない場合があるので、このような場合を除き、目標EGR率の変化によるエンジントルクの変化を良好に緩和できる条件を目標燃料噴射量と目標EGR率とに基づいて判別する。
【0018】
また、請求項2に係る発明は、図1に二点鎖線で示すように、
前記目標燃料噴射量の変化速度を算出する目標燃料噴射量変化速度算出手段と、
前記目標EGR率の変化速度を算出する目標EGR率変化速度算出手段と、
を含んで構成され、
前記目標燃料噴射量補正条件判別手段は、該目標燃料噴射量の変化速度が設定値より小さく、目標EGR率の変化速度が設定値より大きいときに、目標燃料噴射量を補正する条件が成立したと判定することを特徴とする。
【0019】
請求項2に係る発明によると、
目標燃料噴射量変化速度算出手段によって算出された目標燃料噴射量の変化速度が設定値より小さく、目標EGR率変化速度算出手段によって算出された目標EGR率の変化速度が設定値より大きいときに、目標燃料噴射量補正条件判別手段は目標燃料噴射量を補正する条件が成立したと判定する。
【0020】
例えば、変速時の変速ショックを緩和するように目標燃料噴射量が設定されている場合、変速時は目標EGR率,目標燃料噴射量共に大きく変化するがこのような場合に、目標EGR率の変化に合わせた目標燃料噴射量の補正を行うと、変速ショックの緩和を損なう方向に補正が行われてしまうことが考えられる。
したがって、目標燃料噴射量の変化は小さく、目標EGR率の変化が大きいときに限って目標燃料噴射量を補正するように補正条件を設定することにより、上記のような場合には目標EGR率の変化に応じた目標燃料噴射量の補正が行われないようにする。
【0021】
また、請求項3に係る発明は、
前記動特性算出手段は、エンジン回転速度に基づいて吸気系に流入する気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性を算出することを特徴とする。
請求項3に係る発明によると、
エンジン回転速度によって吸気の流速が変化し、吸気系に流入された気体がシリンダに吸入されるまでの時間が変化するので、エンジン回転速度によって該気体の動的な特性例えば時定数を高精度に算出することができる。
【0022】
また、請求項4に係る発明は、図1に破線で示すように、
前記目標燃料噴射量補正条件判別手段によって目標燃料噴射量を補正する条件が成立してから所定期間経過後の前記目標EGR率と、前記目標燃料噴射量補正条件の成立時の目標EGR率との差によって目標EGR率の変化量を算出する目標EGR率変化量算出手段を含んで構成され、前記目標燃料噴射量補正量算出手段は、該目標EGR率の変化量と前記吸気系に流入した気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性とに基づいて前記目標燃料噴射量の補正量を算出することを特徴とする。
【0023】
請求項4に係る発明によると、
目標燃料噴射量の補正条件成立時と所定時間経過後との目標EGR率の差によって算出された目標EGR率の変化量と、吸気系に流入された気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性とに基づいて、シリンダに吸入されるEGRガスのEGR率の変化に応じたエンジントルク変化に見合った目標燃料噴射量の補正量を高精度に設定することができ、エンジントルクの段差の発生を効果的に緩和することができる。
【0024】
また、請求項5に係る発明は、
前記目標燃料噴射量補正量算出手段は、該目標燃料噴射量の補正量を、前記目標燃料噴射量を補正する条件が成立してから、所定時間経過後から0に収束させるように算出することを特徴とする。
請求項5に係る発明によると、目標燃料噴射量を補正することによりトルクの急な変化が回避されたあとは、補正量を徐々に小さくして0に収束させる。これにより、補正を行うことによる排気性能の悪化を抑えることができる。
【0025】
【発明の実施の形憶】
以下に本発明の実施形態を図に基づいて説明する。一実施形態の全体構成を示す図2において、過給機1は、エアフィルタ2でダストを除去されて吸気通路3に吸入された空気を吸気コンプレッサ1Aにより圧縮過給して下流側の吸気マニホールド4へ送り込む。
【0026】
一方、ディーゼルエンジン5の燃焼室に装着された燃料噴射ノズル6には、噴射ポンプ7から各気筒に分配して燃料が圧送供給され、該燃料噴射ノズル6から燃焼室に向けて燃料が噴射され、該噴射された燃料は圧縮工程末期に着火して燃焼される。
また、排気マニホールド8と吸気マニホールド4とを結んでEGR制御弁9を介装したEGR通路10が接続されると共に、前記吸気通路3の吸気コンプレッサ1Aの上流側にEGR制御時に吸気を絞って排気圧と吸気圧との差圧を拡大してEGRしやすくするための吸気絞り弁31が介装され、主としてアイドル時や低負荷時に排気改善,駆音対策のために前記吸気絞り弁31を絞ると同時にEGR制御弁9の開度を制御してEGR制御を行う。具体的には、バキュームポンプ11からの負圧を電磁弁32を介してダイアフラム装置33に導いて前記吸気絞り弁31を絞ると同時に、前記負圧をデューテイ制御される電磁弁12で大気との希釈割合を制御することによって前記EGR制御弁9の圧力室に導かれる圧力を制御し、もって開度を制御することによりEGR率を制御している。これらEGR率や燃料噴射制御は、コントロールユニツト13により行われる。
【0027】
前記EGR制御弁9には、弁体のリフト量を検出するリフトセンサ34が設置されている。
燃焼後の排気は、排気マニホールド8より前記過給機1の排気タービン1Bを回転駆動させた後、排気中に含まれるパーティキュレート(排気微粒子)等がフィルタ14で捕集され、マフラー15で消音された後に大気中に放出される。
【0028】
前記過給機1の吸気コンプレッサ1A上流の吸気通路3には、吸入空気流量を検出するエアフローメータ16が設けられ、また、機関回転速度Neを検出する回転速度センサ17、前記燃料噴射ポンプ7のコントロールレバー開度(アクセル開度)を検出するレバー開度センサ18、水温を検出する水温センサ19等が設けられ、これらの検出値に基づいて後述するEGR制御及び燃料噴射量制御が実行される。
【0029】
以下、コントロールユニット13によるEGR制御及び燃料噴射量制御について、図3のフローチャートに従って説明する。
ステップ(図ではSと記す。以下同様)1では、エンジンの運転状態、例えば前記レバー開度センサ18によって検出されたアクセル開度及び回転速度センサ17によって検出されたエンジン回転速度に基づいて、図4で示したマップからの検索等により目標EGR率Megrを設定する。即ち、このステップ1の機能が目標EGR率設定手段を構成する。
【0030】
ステップ2では、前記ステップ1で設定した目標EGR率Megrに、EGR弁開度指令値演算用係数Kaegrを乗じて、EGR制御弁開度指令値IAegrを算出する(IAegr==Megr×Kaegr)。
ここで、前記係数Kaegrは、実験又はシミュレーションにより予め設定しておき、運転状態によって可変に設定するようにしてもよい。
【0031】
ステップ3では、前記ステップ2で算出されたEGR弁制御開度指令値IAegrの信号を出力して、前記EGR制御弁9を該指令された開度に制御する。
ステップ4では、前記目標EGR率Megrの変化速度VMegrを、例えば次式により算出する。このステップ4の機能が目標EGR率変化速度算出手段を構成する。
【0032】
VMegr=(Megr−Z-1Megr)/△t
ここで、ZはZ変換の演算子でZ-1は1演算遅れを表す(以下同様)。また、△tは、演算(サンプリング)周期を示す。
ステップ5では、エンジンの運転状態、例えば目標EGR率設定時と同様にアクセル開度及びエンジン回転速度に基づいて、図5で示したマップからの検索等により目標燃料噴射量MQfを設定する。このステップ5の機能が目標燃料噴射量設定手段を構成する。
【0033】
ステップ6では、前記目標燃料噴射量MQfの変化速度VMQfを、例えば次式により算出する。このステップ6の機能が目標燃料噴射量変化速度算出手段を構成する。
VMQf=(MQf−Z-1Qf)/△t
ステップ7では、EGR率変化に対する燃料噴射量補正を行う条件を判別する。このステップ7の機能が燃料噴射量補正条件判別手段を構成する。具体的には、前記ステップ5で算出した目標燃料噴射量の変化速度の大きさ|VMQf|が設定境界値LMQfより小さく、かつ、前記ステップ3で算出した目標EGR率の変化速度の大きさ|VMegr|が設定境界値LVMegrより大きいときを燃料噴射量の補正を行う条件とする。該補正条件としたのは、目標燃料噴射量が運転性を考慮して設定されているものであることを前提とすれば、燃料噴射量を補正することによって逆に運転性が悪くなる可能性がある場合には、補正を禁止するためである。例えば、変速機がシフトアップした場合、エンジン回転速度が減少することによって、目標燃料噴射量が増加するように設定しているとすれば、目標燃料噴射量によるエンジントルクの操作が駆動輪への駆動力の変化を抑える方向に作用し、変速ショックが軽減される。このような場合、たとえ目標EGR率が変化したとしても燃料噴射量の補正を行うべきではない。例えば、目標EGR率が減少したとすれば、補正量は負の値となるが、これは変速ショックを抑えようとする効果を減少させてしまうことになる。
【0034】
したがって、燃料噴射量の補正条件を、EGR制御を行っていることによる、目標燃料噴射量の設定では対応できない運転性の悪化を、燃料噴射量の補正によって行えるときに限って行うように、目標燃料噴射量の変化は小さく、目標EGR率の変化が大きいときに限って目標燃料噴射量を補正するように補正条件を設定する。
【0035】
なお、前記設定境界値LMQf,設定境界値LVMegrは、実験またはシミュレーションにより予め設定しておき、運転状態によって可変に設定するようにしてもよい。
そして、前記ステップ7で、燃料噴射量補正条件が成立した場合には、ステップ8へ進み、燃料噴射量の補正量の算出に必要な目標EGR率の変化量DMegrを、次式により算出する。このステップ8の機能が目標EGR率変化量算出手段を構成する。
【0036】
DMegr=Megr2−Megrl
ここで、Megrlは前記燃料噴射量補正条件成立時における目標EGR率であり、Megr2は該補正条件成立時から所定時間経過時の目標EGR率である。
ステップ9では、同様に燃料噴射量の補正量の算出に必要な吸気管のコレクタによって生じる動特性の時定数τを次式のように算出する。このステップ9の機能が動特性算出手段を構成する。ここで、コレクタによって生じる動特性の時定数τとは、コレクタに吸入される気体がシリンダに吸入されるまでの応答特性を一次遅れで近似した場合の時定数に相当する。
【0037】
τ=30×Vcol/(Ne×Vcyl×ηv)
ここで、Vcolはコレクタ容積[m3 ],Vcylは行程容積[m3 ],Neはエンジン回転速度,ηvは体積効率である。なお、コレクタ容積vcolと行程容積Vcylは、定数として与えるか、または運転状態によって可変に設定するようにしてもよい。
【0038】
ステップ10では、前記目標EGR率の変化量DMegrと、コレクタによって生じる動特性の時定数τと、を用いて、目標燃料噴射量の補正量HQfを、次式のように算出する。このステップ10の機能が燃料噴射量補正量算出手段を構成する。
HQf={kl・k2τs/(1+k2・τs)・(1+τs)}・DMegr
ここで、sはラプラス変換の演算子を表す。また、k1は補正量演算用係数1,k2は補正量演算用係数2であり、これら係数k1,k2は、実験またはシミュレーションにより予め設定しておき、運転状態によって可変に設定するようにしてもよい。
【0039】
上式の伝達関数で、k1==10-6、k2=10とした場合のインデシャル応答を図6に示す。図示のようにτによって立ち上がりの応答が変化し、これによって、運転状態の変化に合わせて適切な補正量を算出することができる。
上式の伝達関数の考え方について図7に示したボード線図(ゲイン特性)を用いて説明する(折れ線状に近似している。)。
【0040】
前記係数k2は、ゲインが最大となる帯域幅の設定を行うものである。帯域幅が確保されていれば、ゲインの最大値をk1から容易に演算でき、設計が容易になる。このためには、係数k2は少なくとも1以上であり、折れ線近似によるゲインの誤差を考慮すれば、実際は10以上とすべきである。ただし、k2を大きくすると、低周波数領域のゲインが大きくなるため、補正量の収束性の点からk2の上限が決まる。
【0041】
一方、係数k1は、ゲインの最大値を設定するものである。EGR率の変化量とエンジントルクの変化量が線形な関係に近似できるならば、k1は定数とすることができる。
ステップ11では、前記目標燃料噴射量MQfを、前記補正量HQfによって補正した燃料噴射量指令値Qf(=MQf+HQf)を算出する。これにより、目標EGR率の変化によるエンジントルクの変化を緩和する方向に燃料噴射量が補正される。
【0042】
ステップ12では、前記燃料噴射量指令値Qfの信号を出力して、指令された燃料噴射量が得られるように制御する。
次に、本実施の形態の効果について図8を参照して説明する。
図8は、目標EGR率が変化し、前記燃料噴射量補正条件が成立した場合を想定したものである。図8の▲1▼は、点線が目標EGR率で実線が実際のEGR率を示す。コレクタに吸入されるEGRがシリンダに吸入されるまでの遅れを考慮せずにEGR弁開度指令値を設定している場合、例えば、目標EGR率からテーブル変換によってEGR弁開度指令値を求めている場合、EGR率は目標EGR率に対して、前記コレクタによって生じる動特性の時定数τに従った遅れが発生する。
【0043】
図8の▲2▼は、補正要求信号である。目標EGR率が変化した際に、前記燃料噴射量補正条件が成立したとき出力される。
図8の▲3▼は、目標EGR率の変化量である。前記したように、補正要求信号が出されてから所定期間経過後の目標EGR率から、補正要求信号が出されたときの目標EGR率を引いた値を目標EGR率の変化量とする。補正要求信号が出されて所定期間経過後に求められ、以後、次の補正要求信号が出されるまで値を保持する。
【0044】
図8の▲4▼は燃料噴射量の補正量であり、目標EGR率の変化量DMegrを入力して、前記伝達特性の式に従って算出される。ここで、コレクタにより生じる動特性の時定数τが前記伝達関数に入っていることによつて、入力(目標EGR率の変化量)に対する立ち上がりの応答特性が、図8の▲1▼での応答特性と、略一致するようになっている。
【0045】
図8の▲5▼は、エンジンの出カトルクである。実線は本発明による場合であり、点線は従来例のように目標燃料噴射量の補正を行わない場合である。補正を行わない場合は、▲1▼に点線で示した目標EGR率の増加に従ってトルクが減少する。これに対して、本実施の形態では、EGR率の増加によるトルクの減少と、目標燃料噴射量の補正によるトルクの増加が相殺することによって、従来例にみられるような、トルクの変化を緩やかにすることができる。なお、本発明は、トルクの変化による運転性の悪化を減少させることが目的であるため、トルクの急な変化が回避されたあとは、補正量を徐々に変化させる。これによって、補正を行うことによる排気性能の悪化を抑えることができる。ここで、前記したように、補正係数k2によって補正量の減少速度を変えることができる。
【0046】
次に、コレクタによって生じる動特性を考慮して、EGR開度指令値を設定している場合に対応して燃料噴射量の補正量を設定する実施の形態について説明する。
例えば、前記第2の従来例に開示されているように、コレクタによって生じる遅れを考慮することによって、目標EGR率に対する実際のEGR率の遅れの時定数を自由に設定することができる(実際にはEGR弁について開度が有限であり、また動作速度に上限があるため、限りなく目標EGR率に一致するような応答は期待できない)。該第2の従来例と同様の方法でEGR弁開度指令値を演算している場合は、前記伝達関数の式を次式に変更して燃料噴射量の補正量を算出する。なお、この伝達関数の式ではコレクタによって生じる動特性の時定数τは使用しない。
【0047】
HQf={k1・k2λs/(1+k2・λs)・(1+λs)}DMegr
ここで、上式のλは目標EGR率に対するEGR率の応答遅れの設定された時定数である。
以上説明してきたように、本発明によれば、目標EGR率によって変化するエンジントルクを、目標燃料噴射量の補正によって補償する構成としたことによって、エンジントルクの段差を少なくすることができ、その結果運転性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項2,請求項3に係る発明の構成・機能を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施の形態を示すシステム構成図。
【図3】同上実施の形態のEGR制御及び燃料噴射量制御ルーチンのフローチャート。
【図4】目標EGR率設定マップ例を示す線図。
【図5】目標燃料噴射量設定マップ例を示す線図。
【図6】同上実施の形態の燃料噴射量補正量の算出に使用する伝達関数のインデシャル応答を示す線図。
【図7】同上伝達関数のボード線図。
【図8】本発明の効果を説明するためのタイムチャート。
【図9】従来例のスロットル開度に対するエンジントルク特性を示す線図。
【図10】従来例の加速時の目標燃料噴射量のマップ上の軌跡を示す線図。
【図11】同じく加速時の目標燃料噴射量の時間変化を示す線図。
【図12】同じく加速時の目標EGR率のマップ上の軌跡を示す線図。
【図13】同じく加速時の目標EGR率の時間変化を示す図。
【図14】従来例を示す図。
【符号の説明】
5 ディーゼルエンジン
6 燃料噴射ノズル
7 燃料噴射ポンプ
9 EGR制御弁
13 コントロールユニット
16 エアフローメータ
17 回転速度センサ
18 レバー開度センサ
19 水温センサ
Claims (5)
- 排気の一部を吸気中に還流するEGR制御装置を備えたディーゼルエンジンにおいて、
エンジン運転状態に基づいて目標燃料噴射量を設定する目標燃料噴射量設定手段と、
エンジン運転状態に基づいて目標EGR率を設定する目標EGR率設定手段と、
エンジン運転状態に基づいて吸気系に流入した気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性を算出する動特性算出手段と、
前記目標EGR率と、吸気系に流入した気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性とに基づいて、目標EGR率の変化によるエンジントルクの変化を緩和する方向に前記目標燃料噴射量の補正量を算出する目標燃料噴射量補正量算出手段と、
該目標燃料噴射量の補正量によって目標燃料噴射量を補正する目標燃料噴射量補正手段と、
前記目標燃料噴射量と目標EGR率とに基づいて、前記目標燃料噴射量の補正を行う条件を判別する目標燃料噴射量補正条件判別手段と、
を含んで構成したことを特徴とするEGR制御装置付ディーゼルエンジンのトルク制御装置。 - 前記目標燃料噴射量の変化速度を算出する目標燃料噴射量変化速度算出手段と、
前記目標EGR率の変化速度を算出する目標EGR率変化速度算出手段と、
を含んで構成され、
前記目標燃料噴射量補正条件判別手段は、該目標燃料噴射量の変化速度が設定値より小さく、目標EGR率の変化速度が設定値より大きいときに、目標燃料噴射量を補正する条件が成立したと判定することを特徴とする請求項1に記載のEGR制御装置付ディーゼルエンジンのトルク制御装置。 - 前記動特性算出手段は、エンジン回転速度に基づいて吸気系に流入する気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のEGR制御装置付ディーゼルエンジンのトルク制御装置。
- 前記目標燃料噴射量補正条件判別手段によって目標燃料噴射量を補正する条件が成立してから所定期間経過後の前記目標EGR率と、前記目標燃料噴射量補正条件の成立時の目標EGR率との差によって目標EGR率の変化量を算出する目標EGR率変化量算出手段を含んで構成され、前記目標燃料噴射量補正量算出手段は、該目標EGR率の変化量と前記吸気系に流入した気体がシリンダに吸入されるまでの動的な特性とに基づいて前記目標燃料噴射量の補正量を算出することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のEGR制御装置付ディーゼルエンジンのトルク制御装置。
- 前記目標燃料噴射量補正量算出手段は、該目標燃料噴射量の補正量を、前記目標燃料噴射量を補正する条件が成立してから、所定時間経過後から0に収束させるように算出することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のEGR制御装置付ディーゼルエンジンのトルク制御装置。
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