JP3704810B2 - 磁気ヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリカルスキャンシステムで記録・再生を行うVTRやデータストレージ装置等に用いられ、いわゆるメタルテープ等の高抗磁力磁気記録媒体に対して記録・再生を行うのに好適とされる磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録の分野においては、記録信号の高密度化が進行しており、これに対応して高い抗磁力、高い残留磁束密度を有する高性能磁気記録媒体、例えば強磁性金属材料を非磁性支持体上に直接被着せしめてなるメタルテープ等が使用されるようになっている。
【0003】
これに伴い、磁気ヘッドについては、コア材料が高飽和磁束密度を有することが必要になり、更に高効率を得るために高透磁率を有することが要求されている。
【0004】
かかる要求を満たすために、従来から補助コア材に酸化物軟磁性材であるフェライトを使用し、該フェライトのギャップとなる面上に高飽和磁束密度を有する軟磁性金属薄膜を主コア材として形成し、ギャップ部が該軟磁性金属薄膜より形成され、高いギャップ中磁界の得られる、いわゆるメタル・イン・ギャップ(Metal in Gap)型の磁気ヘッド(以下、MIGヘッドと称する。)が提案されており、メタルテープ等の記録・再生に好適なものとなっている。
【0005】
ところで、この種の磁気記録媒体においては、近年の高密度化の著しい進展に伴い、上記メタルテープ等のように高抗磁力の磁気記録媒体に対してより良好に記録・再生を行うべく、記録磁界を十分とるためにより高い飽和磁束密度を持ち、かつ優れた軟磁気特性を有する金属磁性材料が求められている。
【0006】
これに対して、Feを主成分とする微結晶金属磁性薄膜が高い飽和磁束密度を持ち、面内方向において優れた軟磁気特性を示すことから、従来の磁気ヘッド用金属磁性材料に代わり実用化され始めている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記MIGヘッドにおいて、従来の金属磁性材料の代わりに上記Feを主成分とする微結晶金属磁性薄膜を使用してフェライト上に該微結晶金属磁性薄膜を成膜しても、この種の磁気ヘッドでは面内方向の軟磁気特性だけでなく膜厚方向の軟磁気特性も重要となるため、上記微結晶金属磁性薄膜の面内方向の優れた軟磁気特性から期待されるほどヘッド効率は改善されておらず、再生出力もさほど向上していない。
【0008】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであって、MIGヘッドの金属磁性薄膜としてFeを主成分とする微結晶金属磁性薄膜を使用した場合においてその軟磁気特性を改善し、再生出力が大幅に向上された磁気ヘッドを提供する事を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述の目的を達成するために鋭意検討した結果、Fe−M−N磁性薄膜層(ここで、MはTa,Zr,Hf,Nb,Tiのうちの少なくとも一種である。)においては、PtにB,C,N,Oを少なくとも1つ以上含みPtの格子が広がった中間層を下地層として設けることにより、上記Fe−M−N磁性薄膜層が強いα−Fe(110)面配向を示すとともに、その結晶格子を広げる効果がPtのみの場合よりも強くなり、窒素原子の取り込み、結合が進み、軟磁性化がさらに促進され、また格子の歪みにより誘起される膜厚方向での磁気異方性がヘッド時の磁束の磁気的伝達を改善しヘッド効率が向上することで、良好な記録・再生を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の磁気ヘッドは、一対の磁気コア半体同士が磁気ギャップ形成面を突き合わせて接合一体化され、これら磁気コア半体のうち少なくとも一方の磁気コア半体の磁気ギャップ形成面に金属磁性薄膜が成膜されてなる磁気ヘッドにおいて、上記金属磁性薄膜が軟磁性膜部と中間層とが交互に積層されてなる多層膜から構成され、上記軟磁性膜部はFexMyNz(但し、MはTa,Zr,Hf,Nb,Tiのうちの少なくとも一種であり、x,y,zは原子パーセントを示し、それぞれ71≦x≦85,6≦y≦15,9≦z≦16である。)なる組成からなり、上記中間層はPtにB,C,N,Oのうちの少なくとも1種を含有するとともに、B又はCはターゲットに添加することにより含有され、C,N,Oは炭素、窒素、若しくは酸素を含む雰囲気中で成膜することにより含有させることを特徴とする。
【0011】
本発明の磁気ヘッドにおいて、上記金属磁性薄膜を構成する中間層の下地効果を十分なものとするために、該中間層の1層当たりの平均膜厚は0.2〜10nmとすることが好ましい。
【0012】
上記中間層の1層当たりの平均膜厚が0.2nm未満であると、十分な下地効果が得られず、逆に10nmを越えると、膜厚が厚くなり、厚膜化による形状効果によって該中間層が疑似ギャップとして作動し再生出力特性でのうねりの発生を招く虞れがある。
【0013】
この中間層及び上記軟磁性膜部は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等に代表される真空薄膜形成技術により形成される。
【0014】
この時、例えばスパッタリング法により成膜される上記中間層の厚みが0.2nmのときは、該中間層はきれいな薄膜状態ではなく、粒子がアイランド状に点在した状態をなしていると考えられる。そこで、該中間層の厚さは1層当たりの平均膜厚と表現している。
【0015】
また、上記金属磁性薄膜を構成する上記軟磁性膜部が上記中間層の下地効果を十分に受けられるように、その1層当たりの膜厚を0.05〜1μmとすることが好ましい。
【0016】
上記軟磁性膜部の1層当たりの膜厚が0.05nm未満であると、該軟磁性膜部を形成するためのスパッタリング等の成膜工程が増大し生産性が劣化する上に、上記中間層の総数が増え実効的な飽和磁束密度が低下する。逆に、この軟磁性膜部の1層当たりの膜厚が10nmを越えると、上記中間層の下地効果が薄れてしまう。
【0017】
かかるFe−M−N磁性薄膜層を形成するに際し、成膜後にアニールが行われるが、この時Fe−Pt化合物が生じる。このFe−Pt化合物はマイナス磁歪の硬質磁性材料であるため、上記金属磁性薄膜中のFe−Pt化合物が多くなると、該金属磁性薄膜の保磁力の増加だけでなく、該金属磁性薄膜の磁歪が大きくマイナス側にシフトし、好ましくない。そこで、上記Fe−Pt化合物の量を抑え、このような現象を回避するべく、上記金属磁性薄膜を構成する上記中間層の割合は5重量%以下とされることが好ましい。
【0018】
また、本発明の磁気ヘッドにおいては、上記磁気コア半体がフェライト材により構成され、該フェライト材と上記金属磁性薄膜との接触界面に反応防止膜としてPt層又はSiO2 層が形成されていることが好ましい。
【0019】
なお、この磁気ヘッドにおいては、上述のような条件を複数に亘って満たすようになされても良い。
【0020】
本発明の磁気ヘッドにおいては、一対の磁気コア半体のうち少なくとも一方の磁気コア半体の磁気ギャップ形成面に、金属磁性薄膜としてFe−M−N磁性薄膜層と中間層が積層された多層膜が形成されており、この磁気ヘッドの製造工程においてFe−M−N磁性薄膜層を成膜した後に熱処理を行ってアモルファス状態から微結晶を形成させる際には、上記中間層の下地効果により、熱処理後のFe−M−N磁性薄膜層に強いα−Fe(110)配向を起こすこととなり、更にその結晶格子を広げる効果が上記中間層がPtのみから構成される場合に比べて強くなり、窒素原子の取り込み、結合が進み、軟磁性化が更に促進され、更に格子の歪みにより誘起される膜厚方向での磁気異方性がヘッド時の磁束の磁気的伝達を改善しヘッド効率が向上することで、高い飽和磁束密度による記録能力を発揮するのみならず、高い再生特性が得られる。
【0021】
また、本発明の磁気ヘッドにおいては、上記金属磁性薄膜を上記Fe−M−N磁性薄膜層と中間層とが交互に積層されてなる多層膜としていることから、上記金属磁性薄膜内において上記Fe−Pt化合物が生じ、磁気的にハードな部分が生じる。この部分は、磁区の移動を防止する働きをするため、回転磁化が促進され、金属磁性薄膜における高周波領域の透磁率が高まる。
【0022】
なお、本発明において、上記金属磁性薄膜を構成する中間層の1層当たりの平均膜厚を0.2〜10nmとしたり、上記金属磁性薄膜を構成する上記軟磁性膜部の1層当たりの膜厚を0.05〜1μmとすることで、上記中間層の下地効果による上記軟磁性膜部における上述のような優先配向が膜全体に亘って生じ易くなる。また、上記中間層を上述のような厚さとすれば、該中間層が疑似ギャップとして作動することもない。
【0023】
更に、本発明の磁気ヘッドにおいて、上記金属磁性薄膜内に占められるPt層の割合を5重量%以下とすることにより、実効的な飽和磁束密度の低下は非常に小さくなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明がこの実施の形態に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0025】
本実施例にかかる磁気ヘッドは、図1及び図2に示すように、記録媒体対接触面の略中央に位置する磁気ギャップgを境として左右別々に作製された一対の磁気コア半体1,2が突き合わせ面である磁気ギャップ形成面をトラック幅部が一致するような位置で突き合わせて接合一体化されてなる。
【0026】
上記磁気コア半体1,2は、補助コアである基体3,4と、主コア部である金属磁性薄膜5,6とから構成されている。
【0027】
上記基体3,4は、例えばMn−Zn系フェライトやNi−Zn系フェライト等の酸化物磁性材料からなり、上記金属磁性薄膜5,6とともに閉磁路を構成する補助コア部となっている。上記基体3,4の前記磁気ギャップ形成面と対向する面には、上記磁気ギャップgのトラック幅Twを規制するためのトラック幅規制溝7,8,9,10が磁気ギャップgの両端縁近傍部よりそれぞれデプス方向に亘って円弧状に形成されている。
【0028】
なお、上記トラック幅規制溝7,8,9,10内には、それぞれ磁気記録媒体との当たり特性を確保するとともに、摺接による偏摩耗を防止する目的で、ガラス等の非磁性材料11が充填されている。
【0029】
また、上記基体3,4のうち、少なくとも一方の磁気ギャップ形成面と対向する面には、上記磁気ギャップgのデプスを規制するとともにコイル(図示は省略する。)を巻装するための巻線溝12,12が側面形状が略矩形状となるように形成されている。
【0030】
一方、上記金属磁性薄膜5,6は、上記基体3,4のギャップ形成面を含む全面に亘って成膜される。つまり、ギャップ形成面のみならずトラック幅規制溝7,8,9,10内、巻線溝12,12にも成膜される場合を図示してあるが、ギャップ面に成膜してあれば、他の溝内部の部分はマスクスパッタ等の手法により成膜されないような構成とすることも可能である。
【0031】
また、上記金属磁性薄膜5,6は、Fe−M−N磁性薄膜層(ここで、MはTa,Zr,Hf,Nb,Tiよりなる群から少なくとも一種類以上選択された金属)とPtを基としてB,C,N,Oを少なくとも一つ以上含有した中間層からなる多層構造とされている。この時、上記基体3,4上に上記金属磁性薄膜5,6を直接成膜すると、フェライトと磁性薄膜間で拡散反応が起こり疑似ギャップが生じるため、反応防止膜13,14を介して上記金属磁性薄膜5,6を成膜する必要がある。
上記金属磁性薄膜5,6を一方の基体3に成膜される上記金属磁性薄膜5を例にとって説明すると、該金属磁性薄膜5は、図3に示すように、上記反応防止膜13上に上記Fe−M−N磁性薄膜層15及びPtを基としてB,C,N,Oを少なくとも1つ以上含有した中間層16の順で順次交互に積層されて多層膜として構成されている。
【0032】
上記反応防止膜13は、上記金属磁性薄膜5の下地層をかねてPtを基としてB,C,N,Oを少なくとも一つ以上含有した層、若しくは単に反応防止膜として従来公知のPtやSiO2 膜を用いても良い。
【0033】
更に、上記金属磁性薄膜5は、上記反応防止膜13のPtやSiO2 上に、Ptを基としてB,C,N,Oを少なくとも一つ以上含有した中間層16、上記Fe−M−N磁性薄膜層15の順で交互に積層されて多層膜としても良い。
【0034】
なお、他方の基体4に形成される上記金属磁性薄膜6も上記金属磁性薄膜5と同様の構成となる。
【0035】
ここで、Ptは、格子定数3.9240オングストロームで面心立方格子(FCC)構造を持つ金属であり、FCC構造であることから{111}面配向を示しやすく、Pt{111}が表面に現れることで、配向に対応した格子間隔dはd=2.2655オングストロームとなる。
【0036】
同様に、Fe−M合金は主成分が鉄であり、常温では鉄はα−Feであり、格子定数2.8665オングストロームで体心立方格子(BCC)構造を持ち、該(BCC)構造に起因して配向は{110}を示す傾向にあり、その傾向に対応する格子間隔はd=2.02692オングストロームとなる。
【0037】
FeTa合金は、スパッタ雰囲気に含まれる窒素がTaと選択的に結合してα−Feの成長を阻害し、微細な結晶粒が生成されることで軟磁性が得られることが知られているが、この際窒素が有効に膜中に取り込まれることが必要になる。単に、スパッタ雰囲気中の窒素分圧を増加させると、Taに加えFeまでが窒化されるために軟磁性が劣化してしまう。
【0038】
このため、スパッタ時には窒素はFeやX(Ta等)と反応しないかたちで(窒化物をつくらないかたちで)取り込まれ、後に施される熱処理により化学的に活性なTaのみが選択的に窒化するような処理が優れた軟磁性を得るために必要となる。
【0039】
先願で我々は、Pt膜をFe−M合金の下地とすることで、Fe−Mの格子間隔d=2.02692オングストロームが下地であるPt膜の格子間隔d=2.2655オングストロームに対応して本来の格子間隔より広がりやすくなり、広がった格子間を埋めるように窒素原子がFeTa合金中に侵入することで窒素の取り込みが進み、更にPtを下地とすることで配向が改善されPtによる積層構造を持たない単層膜の場合に比べ軟磁性が改善され、ヘッド時の効率が改善されることを発明したが、その結果として得られるヘッド特性は、単層膜Fe−Mの場合に比べて2dB程度改善されるものの、従来の磁性材料であるセンダストやFe−Ru−Ga−Siにより構成されたヘッドとほぼ同等であった。
【0040】
本発明では、Pt膜成膜中の雰囲気に窒素を導入することで下地のPt膜の格子を歪ませ拡大させることで、この下地膜上に成膜されるFe−M膜の格子を従来のPtのみの場合に比べさらに拡大し、窒素の取り込まれる量を増加させた。これにより、従来は熱処理時にTaを十分に窒化するだけの窒素量が膜中に溜め込むことができなかったが、Pt−X(XはN等)とすることでPtの格子間隔dがd=2.27オングストローム程度に0.2〜0.5%程度拡大し、その結果Fe−M合金の格子間隔も従来のPt下地でのd=2.04〜2.05オングストロームよりd=2.05〜2.06オングストロームとさらに拡大し、窒素の取り込み量が15%程度増加する。また、配向も改善され、下地が窒素を含むため、従来のPt膜による窒素の吸収も起こらず、逆に、熱処理時にPt−N膜からの窒素供給がFe−M側に起こり、また格子が大きく歪む効果により膜の膜厚方向の軟磁性がヘッド時に好適なものとなり、ヘッド時にPtの積層膜の場合と比べて0.5dBの改善が見られた。
【0041】
これらの効果は、PtをB,C,Oを含有させるように成膜した場合もFeTa側への窒素の供給源にはならないが、ほぼ同等の効果が確認された。
【0042】
上記Fe−M−N軟磁性膜層15の膜厚は、十分な下地効果を得るために0.05〜1μm程度とすることが望ましい。該Fe−M−N軟磁性膜層15の膜厚が0.05μmに満たないと、スパッタリング等の成膜工程が増大し生産性が劣化する上に、Pt層の総数が増え実効的な飽和磁束密度が低下する。逆に、1μmを越えると、Ptの下地効果が薄れてしまう。
【0043】
一方、中間層(Pt−X層)16の膜厚は、十分な下地効果を得る観点より0.2〜10nm程度とすることが望ましい。該中間層(Pt−X層)16の膜厚が0.2nm未満であると、十分な下地効果を得ることができず、逆に10nmを越えると、厚膜化部が非磁性であるため、ギャップとして作用し、疑似ギャップとして動作し再生周波数特性でのうねりの発生を招く。また、上記金属磁性薄膜5の成膜後のアニールでFe−Pt化合物が生じるが、該Fe−Pt化合物はマイナス磁歪の硬質磁性材料であるため、上記金属磁性薄膜5中に含まれるFe−Pt化合物が大きくなると、磁性膜の保磁力の増加だけでなく、磁性膜の磁歪が大きくマイナス側にシフトしていく。このため、上記金属磁性薄膜5の総膜厚に占めるPt−X層16の割合は5%以下にする必要があり、好ましくは2%とされる。また、磁性膜の磁歪をほぼゼロとするように総膜厚に占めるPt−X層16の割合を考慮に入れて、Fe−M−N軟磁性膜層15の磁歪をプラスの符号を持つ適当な大きさとすることが好適である。
【0044】
また、上記Fe−M−N軟磁性膜層15は、成膜後はアモルファス状態であるが、熱処理後に微結晶化が生じる。このFe−M−N軟磁性膜層15と上記Pt−X層16を順次交互に積層することで、熱処理後に強いα−Fe(110)配向が起こり、格子の拡大による窒素取り込み効果を示すが、磁性膜の膜厚が厚くなると格子が本来の間隔に戻る傾向にあり、上記Pt−X層16の層数を増やし磁性膜の膜厚をある程度薄くすることで、上記Pt−X層16による格子拡大と配向性の維持が積層膜全体に亘って生じる。
【0045】
また、上記Fe−M−N軟磁性膜層15を上記Pt−X層16を介して多層膜とすることにより、Fe−Pt化合物を生じ磁気的にハードな部分を生じる。この部分は、磁区の移動を防止する働きをするため、回転磁化が促進され高周波領域の透磁率を高める働きをする。更に、上記金属磁性薄膜5内に占める上記Pt−X層16の割合は数%であり、実効的な飽和磁束密度Bsの低下は殆ど見られない。また、上記Pt−X層16は磁気ギャップgと平行に配列されているが、膜厚が数nmであり磁気ギャップとして作動することがない。
【0046】
このように、下地効果のある上記Pt−X層16を介してFe−M−N軟磁性膜層15が積層された金属磁性薄膜5をメタル・イン・ギャップ型の磁気ヘッドに適応することで軟磁気特性が向上し、特に膜厚方向の透磁率の改善が図られ、再生特性の大幅な向上が期待できる。
【0047】
また、上記反応防止膜13,14をPt−Xとすることで、上記金属磁性薄膜5,6の軟磁気特性を改善する働きをするばかりでなく、上記基体3,4との界面で起こる拡散反応を抑制し本来の磁気ギャップgに発生する磁束と干渉を起こす反応層の形成を防止する働きをする。
【0048】
上記Fe−M−N軟磁性膜層15と上記Pt−X層16の成膜方法としては、スパッタリング法が用いられる。
【0049】
また、上記界面での拡散反応の防止をより確実なものとするため反応防止膜13,14としては、Pt−X以外にも、第一層目のFe−M−Nに対する本発明の効果はなくなるが、従来反応防止膜として実績のあるPtやSiOx (x=1〜2)でも良いし、更に例えばTi,Mo,V,Cr,W,Co,Ni等のFeの融点である1500℃以上の融点を持つ金属がいずれも使用可能である。この他、Si3 N、Al2 O3 等の化合物や上記金属との積層構成での膜が使用可能である。更には、上記反応防止膜13,14の上にPt−Xを成膜した積層膜を用いれば、反応防止と下地効果の両方が得られより望ましい。
【0050】
この反応防止膜13,14が非磁性の場合、疑似ギャップとして動作しないように薄い膜とする必要がある。従って、該反応防止膜13,14の膜厚は1〜10nm程度とすることが好ましい。膜厚が1nmより薄いと、反応防止効果が少なくなり、逆に10nmよりも厚すぎると疑似ギャップとして動作する虞がある。 以上のような構成を有する磁気ヘッドは、次のようにして作製される。
【0051】
即ち、先ず、図4に示すように、Mn−Znフェライト若しくはNi−Znフェライト等の酸化物軟磁性材料によって例えば長さ34.5mm、幅2.5mm、厚み1mm程度の基体21を形成する。
【0052】
次に、図5に示すように、この基体21の主面21aの幅方向にトラック幅となるフェライト断面が21μm残存するようにトラック幅規制溝22を切り込む。
【0053】
この時、このトラック幅規制溝22の上記基体21の主面21aに接する部分での側面の角度は、通常8〜45°程度とされるが、これに限定されるものではなく、0°でもなんら問題を生じない。
【0054】
また、このトラック幅規制溝22の深さは200〜300μmとされることが望ましい。
【0055】
更に、このトラック幅規制溝22の断面形状も通常はU字型若しくはV字型であるが、多角形による断面であってももちろん構わない。但し、この多角形の上記基体21の主面21aに接する部分での側面の角度が小さいと電磁変換効率の低下を招き、逆に大きいと記録媒体上の目的以外のトラックからの信号を読み出す可能性が高くなり、この結果ノイズの増加をもたらすため30°程度が望ましい。
【0056】
続いて、図6に示すように、磁気ギャップのギャップデプスを規制し、巻線を巻装するための巻線溝23を形成する。
【0057】
そして、上記基体21の主面21aを表面粗度が20〜100オングストローム程度になるように研磨する。
【0058】
次いで、得られた基体(図7に拡大図を示す。以下、図11まで同様。)21に対して図8に示すように、下地膜としてPt−X膜からなる反応防止膜24を形成する。
【0059】
この反応防止膜24としては、界面剥離を防止する目的で、本実施例で使用したPt−X膜以外にも、例えば単なるPt膜やSiO2 若しくはSiO膜等でも使用可能であり、またSiOx (1<x<2)のようなケイ素原子に対し、酸素原子数が整数比とならないような、SiO2 とSiOの混合状態の膜でも使用可能である。
【0060】
この反応防止膜24の膜厚は、1〜10nmであれば、この部分が非磁性であることにより疑似ギャップとして作用する可能性は少ないが、より望ましくは4〜5nm程度とされる。
【0061】
また、この反応防止膜24の成膜手段としては、例えばスパッタリング法が好適であるが、Pt−XでXとして窒素と酸素を選ばない場合やPt−X以外の膜の場合には、蒸着法、MBE法等の他のPVD(Phisical vapordeposition method)やCVD(Chemical vapor deposition method)も使用可能である。
【0062】
本実施例では、Ptを30%の窒素雰囲気中でスパッタリングすることによりPt−N膜を厚さ4.5nmとなるように成膜した。
【0063】
続いて、図9に示すように、この反応防止膜24上に第一層目の金属磁性薄膜の一部を構成するFe−M−N磁性薄膜層25を形成する。
【0064】
このFe−M−N磁性薄膜層25の膜厚は、0.05〜1μm程度が好適である。
【0065】
ここで、フェライトとの界面での磁性膜の剥離を防止するためPt−X以外を選択した場合には、この第一層目の金属磁性薄膜は本発明の効果がないので、該第一層目の金属磁性薄膜の容量比を減らすために第一層のみ0.05μm以下にして、なるべく薄く形成することも可能である。
【0066】
このFe−M−N磁性薄膜層25の成膜に際し、スパッタリングが用いられるが、本発明の主旨である下地への格子整合を取りながら、更に雰囲気中窒素を取り込む他の物理的や化学合成による手法を用いても良い。
【0067】
そして、図10に示すように、このFe−M−N磁性薄膜層25上に上記第一層目の金属磁性薄膜中の中間層(Pt−X層)26を形成する。
【0068】
この中間層26の膜厚は0.2〜10nmとする。なお、ここでは、該中間層26の膜厚は0.6nmとした。
【0069】
この後、上述と同様にして第二層目の金属磁性薄膜の一部を構成するFe−M−N磁性薄膜層25を形成し(図11)、更に上述と同様の構成による中間層26、Fe−M−N磁性薄膜層25の形成を所定の層数だけ繰り返し積層構造を有する金属磁性薄膜を形成する。
【0070】
この金属磁性薄膜の層数は総膜中のPtが5重量%以下となるように上記Pt−X層の膜厚との兼ね合いで決めることが軟磁性を得るために望ましい。
【0071】
本実施例では、0.11μmのFe−Ta磁性薄膜総を36層に積層して総膜厚が4μmの金属磁性薄膜を構成した。
【0072】
最終層のFe−M−N磁性薄膜層25を成膜して金属磁性薄膜27を形成した後(図12)、ギャップスペーサ28を必要に応じて形成し図13に示すようなコアブロック29を得る。
【0073】
上記ギャップスペーサ28としては、通常この種の磁気ヘッドにおいて使用されているSiOx やTa2 O5 だけでなく、例えば磁性材料の融着ガラス中酸素による反応を防ぐためにCr等とSiO2 の積層構成にすることも有効である。
【0074】
本実施例では、上記ギャップスペーサ28としてSiO2 膜を使用した。
【0075】
次に、図14に示すように、上記コアブロック29と、上述と同様に作製されたコアブロック30とをギャップスペーサ28を介して端面を突き合わせ、ガラス等の非磁性材31により両コアブロック32を接着する。
【0076】
このようにして接着を行った合体ブロックの磁気記録媒体に対接する面を円筒研磨して適当な形状に加工する。
【0077】
そして、図14中の点線a〜eで示す位置でスライシングを行い、ヘッドチップを完成する。
【0078】
このように、金属磁性薄膜27をFe−M−N磁性薄膜層25とPt−X膜からなる中間層26とが交互に積層された多層膜とすることにより、中間層26としてPt膜を用いた場合に比べて、成膜後の上記Fe−M−N磁性薄膜層25における窒素取り込み量を増やすことができ、更に配向の改善等で再生特性が向上し、本実施例では10MHzで0.5dBの再生特性の向上が見られた。
【0079】
以上のような構成は、ヘッドの走行方向に対しギャップが直角にならないようなアジマスを有する場合について示したが、もちろんギャップが直角に形成されていても構わない。
【0080】
また、本実施例では、コアブロックに対し、巻線溝形成後に磁性膜の成膜を行う場合について例示したが、巻線溝形成前に磁性膜を形成する構成でも良い。
【0081】
また、巻線溝形成後に磁性膜の成膜を行う場合、基板として非磁性の、例えばZrO2 基板等を用いても良い。
【0082】
更に、各Fe−M−N磁性薄膜層の組成をそれぞれ変え、例えばギャップ近傍に近づくにつれ飽和磁束密度の高くなるような構成としても良い。
【0083】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の磁気ヘッドにおいては、一対の磁気コア半体の磁気ギャップ形成面に形成される金属磁性薄膜がFe−M−N磁性薄膜層(ここで、MはTa,Zr,Hf,Nb,Tiよりなる群から少なくとも一種類以上選択された金属)とPtを基としてB,C,N,Oを少なくとも一つ以上含有した中間層からなる多層構造とされているので、該中間層なるPt−X層の下地効果により上記Fe−M−N磁性薄膜層に強いα−Fe(110)面の優先配向とその格子間隔の拡大が生じ、窒素取り込み量の増大にともなう軟磁気特性の改善と、配向性の改善や格子歪みに伴う異方性が膜厚方向の軟磁性をヘッド化時に好適なものとする。
【0084】
従って、本発明の磁気ヘッドによれば、金属磁性薄膜の軟磁気特性の改善により、再生出力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる磁気ヘッドの一構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる磁気ヘッドを磁気記録媒体対接面より拡大して見た一構成例を示す要部拡大平面図である。
【図3】基体上に形成された金属磁性薄膜の構成を示す要部拡大断面図である。
【図4】本発明にかかる磁気ヘッドの製造工程を示す図であり、基体作製工程を示す斜視図である。
【図5】トラック幅規制溝形成工程を示す斜視図である。
【図6】巻線溝形成工程を示す斜視図である。
【図7】金属磁性薄膜の形成工程を示す要部拡大図であり、トラック幅規制溝形成工程を示す斜視図である。
【図8】反応防止膜形成工程を示す斜視図である。
【図9】第一層目のFe−M−N磁性薄膜層形成工程を示す斜視図である。
【図10】第一層目の中間層形成工程を示す斜視図である。
【図11】第二層目のFe−M−N磁性薄膜層形成工程を示す斜視図である。
【図12】金属磁性薄膜形成工程を示す斜視図である。
【図13】コアブロック形成工程を示す斜視図である。
【図14】両コアブロックのスライシング工程を示す斜視図である。
【符号の説明】
1,2 磁気コア半体、3,4 基体、5,6 金属磁性薄膜、7〜10 トラック幅規制溝、11 非磁性材、12 巻線溝、13,14反応防止膜、15
Fe−M−N磁性薄膜層、16 中間層
Claims (7)
- 一対の磁気コア半体同士が磁気ギャップ形成面を突き合わせて接合一体化され、これら磁気コア半体のうち少なくとも一方の磁気コア半体の磁気ギャップ形成面に金属磁性薄膜が成膜されてなる磁気ヘッドにおいて、
上記金属磁性薄膜が軟磁性膜部と中間層とが交互に積層されてなる多層膜から構成され、
上記軟磁性膜部はFexMyNz(但し、MはTa,Zr,Hf,Nb,Tiのうちの少なくとも一種であり、x,y,zは原子パーセントを示し、それぞれ71≦x≦85,6≦y≦15,9≦z≦16である。)なる組成からなり、
上記中間層はPtにB,C,N,Oのうちの少なくとも1種を含有するとともに、B又はCはターゲットに添加することにより含有され、C,N,Oは炭素、窒素、若しくは酸素を含む雰囲気中で成膜することにより含有されることを特徴とする磁気ヘッド。 - 上記中間層の1層当たりの膜厚が0.2〜10nmであることを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
- 上記軟磁性膜部の1層当たりの膜厚が0.05〜1μmであることを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド。
- 上記金属磁性薄膜内に占められるPt層が5重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の磁気ヘッド。
- 上記磁気コア半体がフェライト材により構成され、該フェライト材と上記金属磁性薄膜との接触界面に反応防止膜としてPt層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の磁気ヘッド。
- 上記反応防止膜として形成されるPt層は、PtにB,C,N,Oのうちの少なくとも1種を含有するとともに、B又はCはターゲットに添加することにより含有され、C,N,Oは炭素、窒素、若しくは酸素を含む雰囲気中で成膜することにより含有されていることを特徴とする請求項5記載の磁気ヘッド。
- 上記磁気コア半体がフェライト材により構成され、該フェライト材と上記金属磁性薄膜との接触界面に反応防止膜としてSiO2層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の磁気ヘッド。
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