JP3704607B2 - ダブルラッシェル機における導糸筬の振り位置調整装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダブルラッシェル機における導糸筬の振り位置調整装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、前後2列のニードル列を有するダブルラッシェル機により二面式経編地を編成する際には、両ニードル列に対応して設けられた導糸筬が、各ニードル列のニードルフックに対して編み目を形成するための編糸の掛け渡し動作を行うため、編機の前後方向に運動する揺動運動を行う。
【0003】
この揺動運動の振り幅は、相対する両ニードル列の間隔や編成組織によって異なり、各々役割を持った複数の導糸筬がニードル列の上方に配設されている。一般的には、前部ニードル列での基布編成のために設けられる前部地糸用筬、後部ニードル列での基布編成のために設けられる後部地糸用筬、及び、前記前後ニードル列によりそれぞれ編成される前部基布及び後部基布を連結するための連結糸を導糸するための連結糸用筬が用いられる。
【0004】
以上のように配列される導糸筬により、二面式経編地の編成を行うのであるが、生地厚の厚いもの、例えば厚さ20mm〜50mmあるいはこれ以上の生地厚のものを編成するには、前後ニードル列の間隔をこの生地厚に対応して広くすることが必要となる。
【0005】
ところで、導糸筬の特に連結糸用筬の振り幅については、前後の基布を編成する前後のニードル列に対する掛け渡し動作をすることから、生地厚の厚いものを編成する場合ほど振り幅は大きくなる。
【0006】
一方、基布形成用の前後部の地糸用筬については、前部または後部の基布のみの編成でよいので、それらの振り幅は小さくてよい。従って、前記連結糸用筬の振り幅に比べ、前後部地糸用筬の振り幅については大きくする必要がないことから、前後部地糸用筬それぞれの振り幅と連結糸用筬の振り幅を変更可能なように、これらの導糸筬を支持する支持部材の揺動用支軸をそれぞれ別々に並列して設けることが一般的であった。
【0007】
しかしながら、前記の場合には、揺動用の回動可能な支軸が2〜3個必要となり、各々の支軸について、該支軸を保持するメタル等の取付スペースが多く必要となったり、また、該支軸に回動変位を付与するために、各支軸毎に駆動レバーを設けることが必要となるとともに、各支軸に一連に付属するアーム、レバー、カム等の多くの駆動部材を必要とし、この種の導糸筬の駆動機構が複雑となることは否めなかった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解消し、二面式経編地を編成するダブルラッシェル機において、導糸筬の揺動運動のための駆動機構を簡潔にし、レバー、アーム、カム等の駆動部材の数を大幅に削減でき、振り位置の調整も容易に行え、さらに好適には、生地厚の大きい生地を編成する際も、導糸筬の過大な揺動運動を抑え、揺動量を少なくして必要最小限の揺動量にとどめることができる導糸筬の振り位置調整装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前後2列のニードル列と、この2列のニードル列に対応して前部地糸用筬、連結糸用筬、後部地糸用筬よりなる導糸筬を備え、これらの導糸筬が支軸に支持された支持部材に取着されてなるダブルラッシェル機における導糸筬の振り位置調整装置であって、連結糸用筬の揺動に同調する前後部の地糸用筬の揺動に対し、これとは別の揺動変位を生起し合成する手段を設けて、連結糸用筬の揺動変位とは独立した揺動変位を前後部の地糸用筬に付与し、前後部地糸用筬のニードル列への作用位置を調整可能にしたことを特徴とする。
【0010】
これにより、前後部の地糸用筬及び連結糸用筬よりなる全導糸筬の揺動変位が、一つの支軸を中心とした簡潔な駆動機構に纏められることになり、その結果、各導糸筬の振り位置の調整が容易になり、特に厚みの大きい二面式経編地の編成においても、連結糸用筬の揺動変位に対して前後部地糸用筬の揺動量つまり振り幅を少なくできる。
【0011】
前記における前後部の地糸用筬の揺動変位を合成する手段は、回動可能な支軸に取着されて揺動する部材であって連結糸用筬が取着された第1の支持部材と、前記第1の支持部材の一部に設けられた揺動支軸に回動自在に支持され、かつ前部地糸用筬および後部地糸用筬が取着された第2の支持部材とから構成され、前記支軸に付与される回動変位により生起する揺動変位に対し、第2の支持部材の一端部に付与される往復変位に基づき前記揺動支軸を支点にして生起する第2の支持部材の揺動変位を合成する構成とする。
【0012】
これにより、連結糸用筬が取着された第1の支持部材の揺動変位と、前後部地糸用筬が取着された第2の支持部材の揺動変位とが効果的に合成され、前後部地糸用筬の揺動変位が連結糸用筬の揺動変位に対して独立したものとなり、この結果、各導糸筬の振り位置を容易に調整でき、前後部地糸用筬の揺動量つまり振り幅を少なくできる。
【0013】
前記2列のニードル列が導糸筬の揺動方向に対して反対方向に揺動される構成とするのが好ましい。これにより、導糸筬の揺動量がニードル列の揺動量と分担されるので、最小限度の揺動量に抑えることができ、その結果、編機の振動が効果的に抑えられ、以て、編機の回転数の向上につながる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に本発明のダブルラッシェル機における導糸筬の振り位置調整装置の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の導糸筬の振り位置調整装置を含むダブルラッシェル機の概略を示す側断面図、図2は同上のダブルラッシェル機について釜間つまり前後のトリックプレート間の間隔を大きくした場合の側断面図である。図3は前図の装置の導糸筬部分の拡大側断面図、図4は前図のIV−IV線の一部断面図である。
【0016】
図において、1aは前部のニードル列、1bは後部のニードル列であり、それぞれニードルが編機幅方向(図1の紙面に対し垂直方向)に多数並列している。2aは前部のトリックプレート、2bは後部のトリックプレートであって、それぞれ前記ニードル列1a,1bに対応して編機幅方向に延びている。3aは前部のステッチコーム、3bは後部のステッチコームであり、前記ニードル列1a,1bに対応して編機幅方向に整列して設けられている。
【0017】
これら前後部のニードル列1a,1b、前後部のトリックプレート2a,2b、前後部のステッチコーム3a,3bは、それぞれ後述する前後部の中間フレームに貫設された前後部の支承軸4a,4bに保持部材やレバーを介して支持されており、それぞれ後述するカム軸の回転により駆動されて編成上の所定の昇降及び/又は揺動運動が生起されるようになっている。通常、ニードル列1a,1bは、後述する導糸筬の揺動方向とは反対方向に揺動するように構成される。
【0018】
5aは前部ニードル列1aでの基布編成のための前部地糸用筬、5bは後部ニードル列1bでの基布編成のための後部地糸用筬、5cは前部基布及び後部基布を連結するための連結糸を導糸するための連結糸用筬であり、それぞれ前記ニードル列1a,1bに対応して多数の導糸ガイドが編機幅方向に整列してなる。これらの各導糸筬は、それぞれ前記ニードル列1a,1bによる編成部分の上方部に並列して配設されている。図の実施例の場合、前後部の地糸用筬5a,5bはそれぞれ3列が、連結糸用筬5cは2列が並列している。図中のFは編成された立体経編地を示している。
【0019】
6は前記編成部分の上方において前記各導糸筬を揺動可能に支持するための揺動用の支軸であり、編機幅方向に延在してトラバース30の下部に有するブラケット31に軸受(図示せず)を介して回動可能に支承されている。前記支軸6には、第1の支持部材7が編機幅方向に所要の間隔をおいて複数取着されており、さらに前記第1の支持部材7に、それぞれ揺動支軸8を介して、例えば図のようにアーチ形をなす第2の支持部材9が揺動可能に取着されている。そして、前記連結糸用筬5cは前記第1の支持部材7に取着され、また、前後部の地糸用筬5a,5bはそれぞれ前記連結糸用筬5cを挟んで前後両側で前記第2の支持部材9に取着されている。
【0020】
前後部の地糸用筬5a,5b及び連結糸用筬5cの各先端の間隔やセット角度は、釜間つまり前後部のトリックプレート2a,2b間の間隔に応じて異なる。すなわち、前後部地糸用筬5a,5bと連結糸用筬5cとは僅かに離れた配置になるようにセットされるが、図1に示す釜間が24mmの場合に比して、図2(図3)に示す釜間が50mmの場合のほうが、前後部地糸用筬5a,5bと連結糸用筬5cとの間が広くなるようにセットされている。このようなセット角度の調整は、第1の支持部材7及び第2の支持部材9に対する各導糸筬の取付位置や角度を調整することにより容易に行える。
【0021】
10は前記支軸6に連結された駆動レバーであり、後述するようにカム軸の回転により駆動されて揺動し、前記支軸6を回動変位させ、第1の支持部材7とこれに取着された連結糸用筬5c、さらには揺動支軸8を介して連結された第2の支持部材9とこれに取着された前後部の地糸用筬5a,5bに、支軸6を中心とする揺動運動を付与するように設けられている。
【0022】
11a,11bは前後の機台(図示省略)上に編機幅方向に間隔をおいて複数が立設された前後の中間フレームである。この前後の中間フレーム11a,11bの上部に、それぞれ前記支承軸4a,4bが編機幅方向に(紙面に対して垂直方向)に貫通して設けられている。
【0023】
12a,12bは、前後部の中間フレーム11a,11bの下部においてそれぞ編機幅方向に設けられた駆動用のカム軸であり、双方のカム軸12a,12bには、それぞれ前記各構成部材に所要の運動を与える複数のカム13a,13bが固定されている。
【0024】
前後一方のカム軸、例えば図のように前部のカム軸12aの側には、前記駆動レバー10を介して支軸6を回動変位させ、第1の支持部材7を駆動し揺動させるカム13aに関連してカムレバー14aが設けられる。また、他方のカム軸、例えば図のように後部のカム軸12bの側には、前記第1の支持部材7とは別に前記第2の支持部材9を駆動し揺動変位させるカム13bに関連してカムレバー14bが設けられる。
【0025】
これにより、前記第1の支持部材7に取着された連結糸用筬5cの揺動に同調する前後地糸用筬5a,5bの揺動に対して、これとは別の揺動変位を生起し合成して、前後部の地糸用筬5a,5bに連結糸用筬5cの揺動変位とは独立した揺動変位を付与できるように構成される。15aは前部のカムレバー14aを軸支するカムレバー軸、15bは後部のカムレバー14bを軸支するカムレバー軸である。
【0026】
図示する実施例の場合、前部のカムレバー14aは、連結ロッド16aを介して、回動可能に軸支されたアーム17aと連結され、さらに該アーム17aは、その一部に一端部が軸着されて上方に延びる駆動ロッド18aを介して前記駆動レバー10と連結されており、これによりカム軸12aの回転に連動して、駆動レバー10を介して前記支軸6が駆動して回動変位し、第1の支持部材7つまりは連結糸用筬5cが揺動変位するように構成されている。19aは前記アーム17aを支持する軸であり、中間フレーム11aを貫通して回動可能に設けられている。
【0027】
前記カムレバー14a、連結ロッド16a、アーム17a、駆動ロッド18a及び駆動レバー10の各連結部は、相互に回動可能な連結構造で連結される。また前記連結位置は、第1の支持部材7に対して、釜間すなわち前後のトリックプレート2a,2b間の間隔に応じた所望の揺動変位を生起できるように調整可能に設けられる。そのため、前記アーム17aおよび駆動レバー10に、前記連結ロッド16aおよび駆動ロッド18aを連結するための連結用穴20a、21aおよび22aがそれぞれ複数並列して設けられている。通常、これらの連結用穴20a、21aおよび22aの1個分の変更で、トリックプレート2a,2b間の2mm程度の間隔変更に対応できるように設定される。またこれらの連結位置の組み合わせによって、微調整も可能に設けられる。また、カムレバー14aについても、連結ロッド16aの連結位置を調整できるように設けておくことができる。
【0028】
なお、図1に対して、前後のトリックプレート2a,2b間の間隔を大きくした図2では、前部側の連結ロッド16a、アーム17aおよび駆動ロッド18aの連結位置を変更して示している。
【0029】
また、後部のカムレバー14bは、連結ロッド16bを介して、回動可能に軸支されたアーム17bと連結されるとともに、該アーム17bと同期して回動するように同軸上に設けられたアーム17dが、その一部に一端部(下端部)が軸着されて上方に延びる駆動ロッド18bを介して、前記第2の支持部材9の後方側の延長端部9aと連結されており、カム軸12bの回転に連動して、前記第2の支持部材9つまりは前後部の地糸用筬5a,5bが前記揺動支軸8を支点に揺動運動するように構成されている。19bは前記アーム17b,17dを支持する軸であり、中間フレーム11bを貫通して回動可能に設けられている。
【0030】
前記カムレバー14b、連結ロッド16b、アーム17b,17d、駆動ロッド18b及び第2の支持部材9の各連結部は、相互に回動可能な連結構造で連結される。また前記連結位置は、第2の支持部材9に対して揺動支軸を中心とする所望の揺動を生起できるように調整可能に設けられる。そのため、例えば前記のアーム17bおよび17dには、前記連結ロッド16bおよび駆動ロッド18bを連結するための連結用穴20b、21bがそれぞれ複数並列して設けられている。また、前記カムレバー14bについても、連結ロッド16bの連結位置を調整できるように設けておくことができる。
【0031】
なお、前記の前後部のカム軸12a,12bの部分には、前記第1の支持部材7や第2の支持部材9等を駆動するカムレバー14a,14bのほか、前記の前後部のニードル列1a,1bおよびトリックプレート2a,2b、前後部のステッチコーム3a,3bを駆動するカムレバーがそれぞれ設けられ、カム軸の回転に伴うカムレバーの変位がロッドやレバー等の駆動部材を介して前記支承軸4a,4b上のアームに連結構成される。この点については本発明の要旨ではないので詳しい図示説明を省略している。
【0032】
前記第1の支持部材7に取着された連結糸用筬5cの揺動に同調する前後地糸用筬5a,5bの揺動に対して、これとは別の揺動変位を生起し合成する手段を設けて、前後部の地糸用筬5a,5bに連結糸用筬5cの揺動変位とは独立した揺動変位を付与する構造について、さらに詳しく説明する。
【0033】
図3および図4に示すように、連結糸用筬5cが取着される第1の支持部材7が支軸6に対し上下から挟着するように固定されている。71は固定用の締結ボルトを示す。この第1の支持部材7にそれぞれ揺動支軸8が固定され、該揺動支軸8に軸受部材23を介して前後部の地糸用筬5a,5bが取着される第2の支持部材9が揺動可能に嵌合され取着されている。そして第2の支持部材9の一端部すなわち後方側端部が延長形成されて、該延長端部9aに前記駆動ロッド18bが連結されている。これにより、前記第2の支持部材9は、前部カム軸12aの回転に連動する支軸6の回動変位により第1の支持部材7と共に支軸6を支点に揺動し、またこれと同時に、前記の揺動とは別に、カム軸12bの回転に連動する駆動ロッド18bの往復変位により揺動支軸8を支点に揺動できるようになっている。
【0034】
この結果、前記第1の支持部材7に取着された連結糸用筬5cの揺動に同調する前後地糸用筬5a,5bの揺動に対して、これとは別の揺動変位が生起され合成されることになって、前後部の地糸用筬5a,5bに連結糸用筬5cの揺動変位とは独立した揺動変位が付与されることになる。
【0035】
すなわち、第1の支持部材7の揺動に同調する第2の支持部材9の揺動に対して、該支持部材9の一端部(延長端部9a)に往復変位を作用させることで、揺動支軸8を中心とする揺動変位を生起させて、この揺動を支軸6を中心とする揺動変位に合成することで、前後部の地糸用筬5a,5bに対して連結糸用筬5cの揺動変位とは独立した揺動変位を付与することができる。
【0036】
この際、前後部の地糸用筬5a,5bの揺動変位が、前記連結糸用筬5cの揺動変位に対して小さい揺動量(振り幅)となるように、カム軸12bの回転により前記支持部材9の一端部に対し所定の往復変位を与える。
【0037】
すなわち、連結糸用筬5cについては、前後の基布を編成する前後部のニードル列1a,1bに対し交互に連結糸を掛け渡すことから、トリックプレート2a,2b間の間隔が大きい場合ほど、その揺動量を大きくする必要があるが、前後部の地糸用筬5a,5bについては、前部の基布を編成する前部ニードル列1aあるいは後部の基布を編成する後部ニードル列2bに対してのみ導糸するだけでよいので、その揺動変位量をそれほど大きくする必要はない。そのため、前記のように、前後部の地糸用筬5a,5bの揺動変位は、連結糸用筬5cの揺動変位に対して小さい振り幅となるように設定する。
【0038】
これについて、図5および図6に基づいて説明する。図5はトリックプレート2a,2b間の間隔が50mmの場合において、後部のニードル列1bに対する導糸筬のオーバーラッピングの編成タイミングの状態を示し、図6は前部のニードル列1aに対する導糸筬のオーバーラッピングの編成タイミングの状態を示している。
【0039】
図5において、第1の支持部材に取着されている連結糸用筬5cは、駆動レバーを介して回動変位する支軸を中心にして、これに取着された第1の支持部材と共に、図中の白抜き矢印A1の方向(後部のニードル列1bの側)に揺動せしめられている。
【0040】
これに対し、第2の支持部材に取着された前後部の地糸用筬5a,5bについては、前記第1の支持部材に揺動支軸を介して取着された前記第2の支持部材と共に、前記白抜き矢印A1の方向に揺動することになるが、これと同時に、前記第2の支持部材に対して揺動支軸を中心に別の揺動が生起され、これが前記矢印A1の方向の揺動に合成される結果、全体的に揺動変位が抑えられて、前部の地糸用筬5aは連結糸用筬5cに対して離反するように変位し、また後部の地糸用筬5bは連結糸用筬5cに対して接近するように変位している。
【0041】
また、図6において、第1の支持部材に取着された連結糸用筬5cは、前記とは反対に、支軸を中心にして第1の支持部材と共に図中の白抜き矢印A2の方向(前部のニードル列1aの側)に揺動せしめられている。
【0042】
これに対し、第2の支持部材に取着された前後部の地糸用筬5a,5bについては、前記第2の支持部材と共に前記白抜き矢印A2の方向に揺動することになるが、これと同時に、前記第2の支持部材に対して揺動支軸を中心に別の揺動、特に図5の場合とは反対方向の揺動が生起され、これが前記矢印A2の方向の揺動に合成される結果、全体的に揺動変位が抑えられて、前部の地糸用筬5aは連結糸用筬5cに対して接近するように変位し、また後部の地糸用筬5bは連結糸用筬5cに対して離反するように変位している。
【0043】
すなわち、前記連結糸用筬5cは、前後のニードル列1a,1b間に渡って揺動変位するのに対して、前後部の地糸用筬5a,5bの揺動変位は小さい振り幅となっている。この揺動変位による振り位置、つまりはニードル列への作用位置は、第1の支持部材7の揺動量と、該支持部材7に対する連結糸用筬5cの取着位置、及び第2の支持部材9の揺動量と、該支持部材9に対する前後部の地糸用筬5a,5bの取着位置を調整することによって、これらの地糸用筬5a,5bの振り位置を容易に調整することができる。
【0044】
なお、図1のトリックプレート2a,2b間の間隔が24mmの場合においても、基本的に前記と同様であるが、前記連結糸用筬5cの振り幅(揺動量)、及び前後部の地糸用筬5a,5bの揺動変位による振り幅は小さくなる。ただし、連結糸用筬5cの振り幅と、前後部地糸用筬5a,5bの振り幅との差は小さくなる。
【0045】
特に、実際の編成では、前後のニードル列1a,1bとトリックプレート2a,2bも、基本的に前記前後部の地糸用筬5a,5b及び連結糸用筬5c等の各導糸筬の揺動方向に対して反対方向に揺動することになるので、前記地糸用筬5a,5b及び連結糸用筬5cの揺動量(振り幅)はさらに小さくなる。通常、ニードル列が非揺動の場合の1/2程度になる。
【0046】
図7の線図は、前記トリックプレート2a,2b間の間隔が24mmの場合についての、前後のニードル列1a,1bの昇降運動と、地糸用筬5a,5b及び連結糸用筬5cの揺動運動とを示している。また、図8の線図は、前記トリックプレート2a,2b間の間隔が50mmの場合についての、前後のニードル列1a,1bの昇降運動と、地糸用筬5a,5b及び連結糸用筬5cの揺動運動とを示している。
【0047】
これらの両線図によれば、前後部の地糸用筬5a,5bの振り幅は、連結糸用筬5cの振り幅より小さく、特に、トリックプレート2a,2b間の間隔が大きい場合ほど、前後部の地糸用筬5a,5bの振り幅は、連結糸用筬5cの振り幅に対して小さくなり、その振り幅の差が大きくなっている。
【0048】
すなわち、トリックプレート2a,2b間の間隔、つまりは編成される二面式経編地の厚みが大きい場合ほど、本発明装置を採用することによる効果は大きくなる。
【0049】
【発明の効果】
上記したように、本発明の導糸筬の振り位置調整装置を採用することにより、二面式経編地を編成するダブルラッシェル機の導糸筬の揺動運動のための駆動機構を簡潔にして、レバー、アーム等の駆動部材の数を大幅に削減でき、振り位置の調整も容易に行える。さらには、前後の基布間の厚みの大きい生地を編成する際も、導糸筬の過大な揺動運動を抑え、揺動量を少なくして必要最小限の揺動量にとどめることができる。その結果、編機の振動や騒音が効果的に抑えられ、以て、編機の回転数の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導糸筬の振り位置調整装置を含むダブルラッシェル機の概略を示す側断面図である。
【図2】同上のダブルラッシェル機について釜間つまり前後のトリックプレート間の間隔を大きくした場合の側断面図である。
【図3】前図の装置の導糸筬部分の拡大側断面図である。
【図4】前図のIV−IV線の一部を断面図である。
【図5】後部のニードル列に対する導糸筬のオーバーラッピングの編成タイミングの状態を示す要部の拡大側断面図である。
【図6】前部のニードル列に対する導糸筬のオーバーラッピングの編成タイミングの状態を示す要部の拡大側断面図である。
【図7】前後のトリックプレート間の間隔が24mmの場合についての、前後のニードル列の揺動運動と、前後部地糸用筬及び連結糸用筬の揺動運動とを示す線図である。
【図8】前後のトリックプレート間の間隔が50mmの場合についての、前後のニードル列の揺動運動と、前後部地糸用筬及び連結糸用筬の揺動運動とを示す線図である。
【符号の説明】
F 立体経編地
1a,1b 前後のニードル列
2a,2b 前後のトリックプレート
3a,3b 前後のステッチコーム
4a,4b 前後の支承軸
5a,5b 前後の地糸用筬
6 支軸
7 第1の支持部材
8 揺動支軸
9 第2の支持部材
10 駆動レバー
11a,11b 前後の中間フレーム
12a,12b 前後のカム軸
13a,13b カム
14a,14b 前後のカムレバー
15a,15b カムレバー軸
16a,16b 連結ロッド
17a,17b,17d アーム
18a,18b 駆動ロッド
20a,21a,22a 連結用穴
20b,21b 連結用穴
23 軸受部材
30 トラバース
Claims (3)
- 前後2列のニードル列と、この2列のニードル列に対応して前部地糸用筬、連結糸用筬、後部地糸用筬よりなる導糸筬を備え、これらの導糸筬が支軸に支持された支持部材に取着されてなるダブルラッシェル機において、
連結糸用筬の揺動に同調する前後部の地糸用筬の揺動に対し、これとは別の揺動変位を生起し合成する手段を設けて、連結糸用筬の揺動変位とは独立した揺動変位を前後部の地糸用筬に付与し、前後部地糸用筬のニードル列への作用位置を調整可能にしたことを特徴とするダブルラッシェル機における導糸筬の振り位置調整装置。 - 揺動変位を合成する手段は、回動可能な支軸に取着されて揺動する部材であって連結糸用筬が取着された第1の支持部材と、前記第1の支持部材の一部に設けられた揺動支軸に回動自在に支持され、かつ前部地糸用筬および後部地糸用筬が取着された第2の支持部材とから構成され、前記支軸に付与される回動変位により生起する揺動変位に対し、第2の支持部材の一端部に付与される往復変位に基づき前記揺動支軸を支点にして生起する第2の支持部材の揺動変位を合成するようにしたものである請求項1に記載のダブルラッシェル機における導糸筬の振り位置調整装置。
- 2列のニードル列が、導糸筬の揺動方向に対して反対方向に揺動されることを特徴とする請求項1または2に記載のダブルラッシェル機における導糸筬の振り位置調整装置。
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