JP3704228B2 - ポリオレフィン系樹脂用難燃剤及び難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂用難燃剤及び難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系樹脂は、本来、燃焼し易い樹脂であるものが多く、近年使用用途の拡大に伴い難燃材料であることが強く要求され、各種の方法で難燃化処理が施されている。ポリオレフィン系樹脂を難燃化する方法としては、一般にハロゲン含有化合物を添加する方法が用いられてきた。これらの難燃化処理は確かに難燃化効果があり、成形性の低下や成形品の機械的強度の低下も比較的少ないが、加工時や燃焼時に多量のガスを発生し、機器を腐食させたり、人体への被害が拡大する等、問題化し、安全性の面でノンハロゲン難燃化処理が強く要望されている。
【0003】
この様な状況下で、燃焼時に有害なガスを発生しない水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の水和金属酸化物の添加による樹脂難燃化の検討が盛んになされるようになった。
しかし、これら水和金属酸化物のみで易燃性であるポリオレフィン系樹脂に十分な難燃性を付与するためには、多量の上記水和金属酸化物を添加しなければならず、その結果、これらのポリオレフィン系樹脂組成物から得られる各種製品は、その機械的強度の低下が著しく実用上種々の問題がある。
【0004】
又、特開平5−50536号公報に開示されている難燃剤は、縮合リン酸化合物とトリアジン系化合物の組合せになるものであるが、ポリオレフィン系樹脂を難燃性(JIS K7201による酸素指数28以上)とするためには、上記難燃剤を多量に添加する必要があり、得られるポリオレフィン系樹脂製品の機械的強度を著しく低下させ、好ましいものではない。
【0005】
又、特開昭60−152542号公報には、ポリエチレン樹脂またはエチレンを主体とする共重合樹脂に、これら樹脂の透明性を損なわないリン系難燃剤とトリフェニルアンチモンを添加してなる難燃性透明ポリオレフィン樹脂組成物が開示されているが、上記リン系難燃剤とトリフェニルアンチモンからなる組合わせで、規格にいう酸素指数28以上の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を得ようとすれば、上記リン系難燃剤とトリフェニルアンチモンの大量添加が必要であり、得られるポリオレフィン系樹脂製品の機械的強度は著しく低下してしまうので好ましいものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、叙上の事実に鑑みなされたもので、その目的とするところは、顕著な難燃化効果を有するノンハロゲン系のポリオレフィン系樹脂用難燃剤及びこれを用いた優れた難燃性を有するポリオレフィン系樹脂組成物を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、下記構造式で表される窒素含有化合物5〜40重量%と、ポリリン酸アンモニウム40〜94.9重量%と、二酸化チタン0.05〜10重量%と、二酸化硅素0.05〜10重量%とからなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂用難燃剤をその要旨とするものである。
【化2】
(式中R1 〜R3 は、それぞれ水素または炭素数1〜16のヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基またはジヒドロキシアリール基を示す。)
【0008】
請求項2記載の本発明は、窒素含有化合物がトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂用難燃剤をその要旨とするものである。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項1記載のポリオレフィン系樹脂用難燃剤を、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し5〜200重量部添加してなるポリオレフィン系樹脂組成物をその要旨とするものである。
【0010】
本発明で用いる窒素含有化合物は、下記構造式で表される。
【0011】
【化3】
(式中R1 〜R3 は、それぞれ水素または炭素数1〜16のヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基またはジヒドロキシアリール基を示す。)
【0012】
上記窒素含有化合物を具体的に例示すると、例えば、イソシアヌール酸、モノ(ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、モノ(ジヒドロキシメチル)イソシアヌレート、ビス(ジヒドロキシメチル)イソシアヌレート、トリス(ジヒドロキシメチル)イソシアヌレート、モノ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(1,2−ジヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3−ジヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(4−ヒドロキシブチル)イソシアヌレート、トリス(3,4−ジヒドロキシブチル)イソシアヌレート、トリス(8−ヒドロキシオクチル)イソシアヌレート、トリス(4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(2,4−ジヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(2,3−ジヒドロキシフェニル)イソシアヌレート等が挙げられる。就中、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートがポリオレフィン系樹脂との親和性や難燃化効果の面から好適に使用される。
【0013】
上記窒素含有化合物の内、請求項2記載の発明で用いるトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(分解温度:207〜314℃)は、ポリオレフィン系樹脂の分解温度の下限を含む温度範囲に分解温度を形成するので、ポリオレフィン系樹脂の燃焼時、不燃ガスの発生が円滑に起こり、ポリリン酸アンモニウムが形成する不燃性被膜と相俟ってポリオレフィン系樹脂の難燃性付与に極めて有効に作用する。
【0014】
更に、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートは、ポリオレフィン系樹脂と極めて良好な相溶性を有するのでポリオレフィン系樹脂製製品の優れた諸物性に影響を与えることなくポリオレフィン系樹脂に難燃性を付与できるのである。
【0015】
本発明で用いる上記ポリリン酸アンモニウムは、一般式(NH4 PO3 )n (式中、nは、100〜1,000がポリオレフィン系樹脂への分散性の面から好ましい。)で表される水に難溶性の易流動性粉末である。上記ポリリン酸アンモニウムは、更に表面がメラミン−ホルムアルデヒド樹脂等で被覆された水に難溶性の易流動性粉末として使用されてもよい。
【0016】
本発明で用いる二酸化チタン及び二酸化硅素は、それぞれが、ポリオレフィン系樹脂の燃焼時、上記ポリリン酸アンモニウムが更に重合する方向の反応を強く触媒する作用を有するため、ポリリン酸アンモニウムが形成する不燃性皮膜を更に補強する。
本発明は、二酸化チタン及び二酸化硅素を共に用いることによって、それぞれを単独で用いるより大きな効果を生じることを利用したものであり、前記する窒素含有化合物の作用と相俟ってポリオレフィン系樹脂の難燃性付与に極めて有効に作用する。
【0017】
本発明で用いる難燃剤は、下記構造式で表される窒素含有化合物5〜40重量%と、ポリリン酸アンモニウム40〜94.9重量%と、二酸化チタン0.05〜10重量%及び二酸化硅素金属酸化物0.05〜10重量%からなるが、上記3成分の配合構成を外れると、不燃性ガスの発生量と不燃性被膜の形成量のバランスが崩れ、ポリオレフィン系樹脂に対し十分な難燃性を付与し得ない。
【0018】
【化4】
(式中R1 〜R3 は、それぞれ水素または炭素数1〜16のヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基またはジヒドロキシアリール基を示す。)
【0019】
本発明の難燃剤によって難燃化し得るポリオレフィン系樹脂は、特に限定されるものではなく、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(1−ブテン)系樹脂、ポリペンテン系樹脂等が例示される。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体又はプロピレンを主成分とする共重合体、これらの混合物のいずれでもよい。共重合体としては、例えばプロピレン成分を主成分とするプロピレン−α−オレフィン共重合体を挙げることができる。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等を挙げることができる。
【0020】
上記ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(低密度、中密度、高密度)、エチレンを主成分とする共重合体、これらの混合物のいずれでもよい。共重合体としては、例えばエチレンを主成分とするエチレン−αオレフィン共重合体を挙げることができる。α−オレフィンとしては、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等を挙げることができる。更にα−オレフィン以外の共重合体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等を用いてもよい。
【0021】
請求項3記載の発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、上記難燃剤5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部を添加して用いるものである。上記添加量が5重量部未満の場合、ポリオレフィン系樹脂組成物は十分な難燃性が得られず、200重量部を超えると、得られる難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物から成形された各種製品の機械的強度が低下し実用に供することができない。
【0022】
本発明において、上記4成分系難燃剤に加えて、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドーソナイト等の水和金属酸化物からなる難燃助剤が添加されてもよい。これらの難燃助剤の添加量は、請求項1及び請求項2記載の発明の4成分系難燃剤の添加量にもよるが、上記4成分系難燃剤100重量部に対し100重量部以下の量で添加されることが好ましい。上記添加量が100重量部を超えると、高い難燃性は得られるが、機械的強度が低下し実用に供し得る製品を得ることができないおそれがある。就中、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物として、発泡性樹脂組成物に適用する場合、発泡特性を損ない、微細にして均質な発泡構造が得られず、外観も機械的強度も悪くなるおそれがある。
【0023】
更に、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、安定剤、炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコール系、アミド系、エステル系及び金属石鹸系滑剤等を添加することは、本発明の精神を逸脱せざる範囲において許される。
【0024】
(作用)
請求項1記載の発明のポリオレフィン系樹脂用難燃剤は、叙上の如く、前記構造式で表される窒素含有化合物5〜40重量%と、ポリリン酸アンモニウム40〜94.9重量%と、二酸化チタン0.05〜10重量%と、二酸化硅素金属酸化物0.05〜10重量%とからなるものであるので、ポリリン酸アンモニウム、前記構造式で表される窒素含有化合物の各々単独の化合物からは推測し得ない複合された優れた難燃性が発揮され、ノンハロゲン難燃化による自己消火性の優れた難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を得ることができる。
又、請求項1記載の発明のポリオレフィン系樹脂用難燃剤は、発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物に適用されると、ノンハロゲン難燃化による自己消火性の優れた難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができる。
【0025】
請求項2記載の発明のポリオレフィン系樹脂用難燃剤は、叙上の如く、請求項1記載の難燃剤において窒素含有化合物がトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートであるので、ポリオレフィン系樹脂の分解温度の下限を含む温度範囲に分解温度を有し、ポリリン酸アンモニウムとの複合体もまた上記温度範囲(分解温度:252〜640℃)に分解温度を有するので、ポリオレフィン系樹脂の燃焼時、不燃ガスの発生が円滑に起こり、ポリリン酸アンモニウムが形成する不燃性被膜と相俟ってポリオレフィン系樹脂の難燃性付与に極めて有効に作用する。
【0026】
更に、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートは、ポリオレフィン系樹脂と極め良好な相溶性を有するのでポリオレフィン系樹脂製製品の優れた諸物性に影響を与えることなくポリオレフィン系樹脂に難燃性を付与できるのである。就中、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物として、発泡性樹脂組成物に適用する場合、発泡性やポリオレフィン系樹脂の優れた諸物性に悪影響を与えることのないポリオレフィン系樹脂用難燃剤を提供する。
【0027】
請求項3記載の発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、上記の如く顕著な難燃性を有しており、燃焼時にハロゲン系の有害なガスの発生もなく、しかも価格的に安価である点で従来技術にない優れた特徴を有するものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例及び比較例を説明する。猶、実施例において、燃焼試験は以下に示した方法で測定、評価した。
【0029】
(実施例1〜6)、(比較例1〜3)
表1に示す配合に従って各成分をラボプラストミルを用いて溶融混練し、同表中の成形温度で熱プレスして試験片を作製した。
得られた試験片について下記の試験を行った。結果は表1に示す。
【0030】
(燃焼試験)
JIS K7201(自動車室内用有機資材の燃焼性試験方法)に従ってA−1号試験片(長さ150mm、幅6.5mm、厚さ3.0mm)の酸素指数を測定し、○:酸素指数が28以上のもの、×:28未満のもの、の2段階で評価した。
【0031】
上記実施例1〜6及び比較例1〜3において下記の各成分を使用した。
ポリエチレン系樹脂:MI=3.4、密度0.92g/cm3
窒素含有化合物:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート〔和光純薬工業社製〕
ポリリン酸アンモニウム:ヘキスト社製、商品名「APP422」
二酸化チタン:石原産業社製、商品名「MC90」
二酸化珪素:旭硝子社製、商品名「シルデクスH−51」
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
請求項1記載の発明のポリオレフィン系樹脂用難燃剤は、叙上の如く構成されており、不燃性被膜が強化され火源を確実に隠蔽し得るものであるので、ポリオレフィン系樹脂、就中、気泡を多数含むポリオレフィン系樹脂発泡体の難燃剤として優れた性能を示す。
【0034】
請求項2記載の発明のポリオレフィン系樹脂用難燃剤は、叙上の如く、請求項1記載の難燃剤において窒素含有化合物がトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートであり、その分解温度が、ポリオレフィン系樹脂の分解温度の下限を含む温度範囲に存在し、不燃性ガスの発生が円滑に起こり、速やかに火源を隠蔽し得るものであるので、上記ポリリン酸アンモニウムと相俟ってポリオレフィン系樹脂、就中、気泡を多数含むポリオレフィン系樹脂発泡体の難燃剤として優れた性能を示す。
【0035】
更に、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートは、ポリオレフィン系樹脂と極めて良好な相溶性を有するのでポリオレフィン系樹脂製製品の優れた諸物性に悪影響を与えることのないポリオレフィン系樹脂に難燃性を付与できるのである。
【0036】
請求項3記載の本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、上記の如く顕著な難燃性を有しており、燃焼時にハロゲン系の有害なガスの発生もなく、しかも価格的に安価である点で従来技術にない優れた特徴を有するものである。
Claims (3)
- 窒素含有化合物がトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂用難燃剤。
- 請求項1記載のポリオレフィン系樹脂用難燃剤を、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し5〜200重量部添加してなる難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
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