JP3704194B2 - 経皮吸収促進物質及びその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬剤の経皮吸収を促進させるための新規物質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
薬物を皮膚から効率良く吸収させて全身或いは局所の薬理効果を発揮させる経皮吸収システム(TTS)には、経皮吸収促進剤の使用による薬物の皮膚吸収性向上が不可欠である。一般に皮膚最外層は、角質層と呼ばれる角化細胞が分化した後重積した角質細胞で覆われており、薬物だけではなく細菌等の外界からの異物の侵入に対する防御の役割を演じている。そのため薬物を皮膚より吸収させるためには、角質層中に存在している角質細胞間脂質や細胞内ケラチン等の蛋白質と強く相互作用し、これらの秩序構造を乱したり破壊する必要がある。このような作用を有する物質は、一般に経皮吸収促進剤と呼ばれており、これまでに多くの低分子極性有機化合物が検討され、薬物の経皮吸収促進剤を飛躍的に亢進する作用が報告されている。
当初は、角質細胞間脂質を抽出あるいは脂質二分子構造を破壊する作用を有するジメチルスルフォキシド等の極性溶媒、ピロリドンカルボン酸等の自然保湿因子、高級脂肪酸等の各種界面活性剤が検討され、続いてエイゾンと云う商品名で知られる1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンが細胞間脂質のみならず、細胞内ケラチン等の含有蛋白質を変性させて更に高い吸収促進作用を示すことが報告されている。
本発明者他3名らは”種々の経皮吸収促進剤による皮膚角質層内の水の構造変化とインドメタシン透過性への影響”(Drug Delivary System Vol.7No.21992年発行)で角質層結合水量及び%抽出とP値との関係について角質層結合水量が0.20g/g以上で0.25g/g未満の時にP値は増大することが発表しており,角質層結合水量が0.20g/g以上で0.25g/g未満となるような経費吸収促進物質が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら経皮吸収促進剤は、いずれも低分子有機化合物であり、角質細胞と相互作用するだけではなく、皮膚下組織へと浸透し、これら組織を構成する細胞にも強く作用して長期間にわたって使用すると細胞毒性や皮下炎症を引き起こすことが判明した。
すなわちこれら経皮吸収促進物質は、単に角質層の秩序構造に影響を与えるだけでなくそれ自身が角質層を透過して角質下の体内、具体的には真皮及び皮下組織へと浸透していき、結果的に皮膚刺激性や皮膚毒性を示すという問題点を有していた。
従来使用されていた経皮吸収促進剤はこのことから、安全な経皮吸収促進剤を求めて新しいアプローチがなされている。その一つが柑橘類に含まれるリモネン等のように皮下組織に吸収されても安全な低分子化合物であり、もう一つは角質細胞に作用しても皮下組織に吸収されない高分子化合物である。しかしながら、いずれの化合物も角質層への薬物の分配を向上させることが特徴であり、多くの薬物について皮膚吸収性を向上させるに足りる薬物拡散性を向上させるには至らなかった。
そこで本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑みなされたもので、高分子有機化合物を用いて皮膚の薬物吸収性を向上させながら皮膚刺激性や毒性を回避することのできる経皮吸収促進剤を見出したのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、α,β又はγ−シクロデキストリンからなる環状化合物と、該環状化合物の空洞を貫通しうる直鎖状高分子化合物と、この直鎖状高分子化合物の両端部に結合させた生体内分解性部位とからなり、前記α,β又はγ−シクロデキストリンをヒドロキシプロピル化した超分子構造の生体内分解性高分子集合体からなる経皮吸収促進物質により本目的を達成する。請求項2の発明は前記経皮吸収促進物質の製法に関するもので、a)カルボベンゾキシ-L-フェニルアラニンとN-ヒドロキシスシンイミド(N-HOSu)と反応させてZ-L-Phe-スクシンイミドを合成する工程と、b)シクロデキストリン水溶液にα-(3-アミノプロピル)-ω-(3-アミノプロピル)ポリ(オキシエチレン)を添加して擬ポリロタキサンを作成する工程と、c)前記a)の工程で得られたZ-L-Phe-スクシンイミドの溶解液に前記b)の工程で得られた擬ポリロタキサンを添加しZ-L-Phe-ポリロタキサンを合成する工程と、d)前記c)の工程で得られたZ-L-Phe-ポリロタキサンをヒドロキシプロピル化する工程とからなる。
α,β又はγ−シクロデキストリンとこれらのシクロデキストリンの空隙を貫通するポリマーとの関係は、既に大阪大学の原田博士の研究(表面談話会・コロイド懇話会1994年Vol.32No.2)により、以下のようなポリマーが貫通可能であることが指摘されている。
1)α−シクロデキストリンの場合ポリエチレングリコール2)β−シクロデキストリンの場合ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレン3)γ−シクロデイストリンの場合ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレン、ポリメチルビニルエーテルそして、末端にかさ高い基例えば2,4-ジニトロフェニル基、3,6-ジニトロベンゾイル基が結合していると貫通しえないので、末端にはメチル基、メトキシ基、アミン基等の小さな官能基を結合させたものを用いる。尚、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレンあるいはこれらのブロック共重合体の平均分子量が200〜5000で、望ましくは400〜2000である。
【0005】
直鎖状高分子化合物の両端部に結合させる生体内分解性部位としては、繰返し単位が1〜5であり、構成アミノ酸としてアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、リシン、アルギニン、ヒスチジンのいずれか単独若しくは複数からなるオリゴペプチド鎖、あるいは繰返し単位が1〜5であり、構成多糖としてデキストラン、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、デンプン、プルランからなるオリゴ糖鎖を有する部位を用いるのが好ましい。
【0006】
【作用】
本発明にかかる超分子経皮吸収促進剤では、直鎖状高分子であるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールあるいはこれらのブロック共重合体に貫通したシクロデキストリンが強い水素結合性によって角質層成分と相互作用して薬物拡散性を亢進させ、さらに本超分子経皮吸収促進剤の分子形態によっては皮下に浸透しないか、若しくは皮下に浸透した後に皮下分解性部位であるオリゴペプチド鎖、オリゴ糖鎖、或いはエステル基等が分解することによって、シクロデキストリンがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール或いはこれらのブロック共重合体から一度に脱離して皮下組織に対する安全性を保証する。すなわち超分子の形態によっては角質層以下の組織中には吸収させず、あるいは吸収されても皮下分解性部位であるオリゴペプチド鎖、オリゴ鎖或いはアステル基等の分解によって皮下組織への刺激性・毒性を回避することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明を以下に実施例に従って詳細に説明する。
実施例−1
以下に示す工程A〜Dを経て本発明に使用する超分子構造の経皮吸収促進剤を作成した。
A)Z-L-Phe-スクシンイミドの合成
ジオキサン(140ml)にカルボベンゾキシ-L-フェニルアラニン((Z-L-Phe)(14.5g)と、N-ヒドロキシスクシンイミド(N-HOSu)(5.58g)を溶解した。
この溶液を冷蔵庫で冷却(12℃)し。DDC(9.99g)を撹拌しながら添加したところ白濁した。この溶液を冷凍室(4℃)で一晩撹拌したところ凝固した。これを数時間かけて溶解し、副生成物であるN-N'-ジシクロヘキシル尿素を濾過により除去した。
濾液をエバポレーターで減圧濃縮し、エーテル中に滴下すると白色沈殿が生じた。この沈殿物を遠心濾過により回収し、ジクロロメタンに溶解した。この溶液を軽く揺すりながら石油エーテル(貧溶媒)を滴下し、僅かに白濁が見られたところで、冷蔵庫に一晩静置して再結晶を行った。生じた結晶は濾過により回収し、減圧乾燥した(収率48%)。生成物の純度は示差走査熱量測定による融点測定(138℃)により確認した。
【0008】
【化1】
【0009】
B)擬ポリロタキサン(α-CD-PEG4000-BA)の調製
飽和α-シクロデキストリン(CD)水溶液(1.45g/10ml、1.49×102mM)にα-(3-アミノプロピル)-ω-(3-アミノプロピル)ポリ(オキシエチレン)(PEG4000-BA、Mn=4120)を(0.13g、3.2×10-4mmol)添加し、3時間撹拌したところ溶液が白濁した。この溶液に30分超音波処理を行った後、一晩静置して白色沈殿物を得た。この沈殿物を遠心濾過により回収し、2回水洗を行った後、6時間減圧乾燥して白色粉末を得た(収率85%)。H-NMRよりPEG:-OCH2CH2(δ=3.5)とα-CD:C(1)H(δ=4.8)の積分比からPEG4000-BA鎖一分子に貫通しているα-CDの平均分子数を求めたところ35〜40であった。
【0010】
C)Z-L-Phe-ポリロタキサン(α-CD-PEG4000)の合成
Z-L-Phe-Su(5.4g)をDMSO(7ml)に溶解した。擬ポリロタキサン(α-CD-PEG4000-BA)を添加し、N2雰囲気下で三日間撹拌した(この間更にDMSO(5ml)を3回追加した)。反応溶液をエーテル中に滴下し、生じた沈殿物を遠心濾過で回収した。回収物をアセトンと水で洗浄してZ-L-Phe-ポリロタキサンを得た(2.06g、収率42%)。
H-NMRよりZ基:CH2O-(δ=5.0)とPhe:-CH2CH-(δ=4.8)の存在から導入を確認した。
【0011】
【化2】
【0012】
D)Z-L-Phe-ポリロタキサンのヒドロキシプロピル化
Z-L-Phe-ポリロタキサン(α-CD貫通数35〜40個)(0.2g)を1NのNaOH 15mlに溶解した。この溶液にプロピレンオキシド(PPO)を2.6ml滴下し、24時間撹拌を行った後塩酸で中和した。生成した塩を除去するため透析膜(MW=500以下を透過)で5時間(蒸留水3リットル3回)透析を行った。この溶液をエバポレータで減圧濃縮し、アセトン中に滴下すると沈殿物が生じた。これを遠心濾過により回収し、一晩減圧乾燥してHP Z-L-Phe-ポリロタキサンを得た。
H-NMRよりヒドロキシプロピル基:CH2-(δ=2.1)とPhe:-CH3(δ=1.0)の存在から導入を確認した。
【0013】
【化3】
【0014】
E)Z基の脱保護
Z基の脱保護は接触還元法により行った。HP Z-L-Phe-ポリロタキサン(0.45g)を蒸留水11mlに溶解した。この水溶液にパラジウムカーボン(0.46g)を添加し、水素を30分間流入した。大気が充分水素置換された後、撹拌を開始した。三日間水素中で撹拌した後、パラジウムカーボンを除去するため遠心濾過(3400rpmで10分間)とマイクロフィルター(コスモナイスフィルター、水溶液用、膜孔0.45μl)で濾過した。濾液をエバポレーターで減圧濃縮し、アセトン200mlに滴下すると、白色沈殿が生じた。この沈殿物を遠心濾過で回収し、一晩減圧乾燥を行った(0.25g)。
【0015】
(試験1)
前記実施例で得られたZ-L-Phe-ポリロタキサンを経皮吸収促進剤を用いた、インドメタシンの皮膚透過試験を行った。
薬物溶液の作成
Z-L-Phe-ポリロタキサンの12.1%水溶液(本発明)、比較例として精製水(比較例1)、PBS(リン酸水素カリウム)(pH:7.4、0.14M)(比較例2)を作成し,ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンの薬物透過性能を下記の方法で比較検討した。
【0016】
皮膚透過試験
1)皮膚の前処理
7週齢の雄性ヘアレスラット(体重150g)を用い、25%ウレタン(5ml/5kg、i.p.)麻酔下で除毛後腹部皮膚を摘出し、直ちに37℃の温湯を循環した2−チャンバー拡散セル(有効拡散面積0.79cm2,容量2.5ml)に挾み、角質側(ドナー側)に前記薬物溶液をそれぞれを2.0ml、真皮側(レシーバー側)にPBS(pH:7.4、0.14M)を2.5ml入れ、18時間マグネティックスターラーにより撹拌した。その後両セルをPBSで2回洗浄した。
2)透過試験
両セルを洗浄後、ドナー側にインドメタシン懸濁液(飽和溶解度の約2倍量をPBSに加えた)を、レシーバー側にPBSをそれぞれ2.5mlづつ入れ、マグネティックスターラーによる撹拌下、37℃で8時間透過試験を行った。サンプリングは、実験開始後2,4,6及び8時間目にそれぞれ500μlづつ抜き取ると共に同量のPBSを加えて、レシーバー側の液量を一定に保った。尚、比較のために前処理として薬物溶液を施さないものを比較例3とした。
3)サンプル中のインドメタシンの濃度測定方法
サンプル液500μlに内標準液(メフェナム酸のメタノール溶液、10μg/ml)500μlを加え混合した後、遠心分離(10000r.p.m.、室温、5min.)し、その上澄(20μl)をHPLCにより測定した。HPLCの条件は以下の表1の通りである。
【0017】
【表1】
【0018】
(透過試験結果)
ヘアレスラットの摘出皮膚を用いたインドメタシンの透過実験で、ポリロタキサンの透過促進効果を検討したところ、比較例として設けた精製水では、Flux:1.90μg/cm2/hr及び8時間累積透過量:9.10μg/cm2を示したのに対して、ポリロタキサンで前処理を施したものはFlux:3.46μg/cm2/hr、8時間累積透過量:19.27μg/cm2と約2倍程度増加した。またLag timeもH2O群の3.5時間から2.5時間と短縮した。またPBSの場合及び前処理を施さない場合は、以下の表2及び図1に示す通りとなった。
【0019】
【表2】
【0020】
(試験2)
ヒドロキシプロピル化Z-L-Phe-ポリロタキサンの角質層に対する影響を調べるために以下の表3からなるHP(L-Phe-α-CD・PEG4000)及び比較例として他の有機溶媒(精製水、エタノール、DMSO、エイゾン並びに下記のF),G)の製法により作成したヒドロキシプロピル化シクロデキストリン及びL-Phe・PEG4000)を作成し,これらをそれぞれにラット角質層を18時間浸漬した後、水洗して乾燥した。この角質層を60%程度含水させ、DSC測定を行い、得られた水の融解熱から結合水量を求めた。さらに高感度DSCを用いて溶液処理による角質層脂質の変化を調べた。
その結果は以下の表3に示す通りとなった。
【0021】
F)α-CDのヒドロキシプロピル化
α-CD(10g)を1NのNaOH 100mlに溶解した。この溶液にプロピレンオキシド(PPO)を8.6ml滴下し、24時間撹拌を行った後塩酸で中和した。生成した塩を除去するため透析膜(MW=500以下を透過)で5時間(蒸留水3リットル3回)透析を行った。この溶液をエバポレータで減圧濃縮し、アセトン中に滴下すると沈殿物が生じた。これを遠心濾過により回収し、一晩減圧乾燥してHP α-CDを得た。
【0022】
G)L-Phe-PEG4000の合成
Z-L-Phe-Su(1.7g :4.8×10-4mmol)をDMSO(2ml)に溶解した。この溶液にPEG4000-BA(Mn=4120)を0.5g(1.2×10-4mmol)添加し、N2雰囲気下で三日間撹拌した(この間更にDMSO(2ml)を3回追加した)。反応溶液をエーテル中に滴下し、生じた沈殿物を遠心濾過で回収した。回収物をエーテルで二回洗浄してZ-L-Phe-ポリロタキサンを得た(0.3g)。
【0023】
【表3】
【0024】
(考察)
表3よりDMSOは結合水の増加を伴う抽出が見られることから,疎水性の脂質の抽出が考えられる。エタノール,AZONE,ヒドロキシプロピル化シクロデキストリンは結合水の減少を伴う抽出がみられ,極性脂質の抽出が考えられる。またヒドロキシプロピル化シクロデキストリンは濃度依存的に抽出することが示唆された。一方ヒドロキシプロピル化シクロデキストリンとL-Phe-PEG4000の混合液とヒドロキシプロピル化Z-L-Phe-ポリロタキサンは,ともに10%程度の抽出がみられたものの,結合水の減少はヒドロキシプロピル化Z-L-Phe-ポリロタキサンにみられた。しかも,この結合水減少効果はヒドロキシプロピル化Z-L-Phe-ポリロタキサンの方がヒドロキシプロピル化シクロデキストリンの41%水溶液よりも高かった。このことは,ポリロタキサン構造の形成によってヒドロキシプロピル化シクロデキストリンの局部濃度が高くなったためと考えられる。
また高感度DSC測定からAZONEやDMSO処理では,脂質の抽出が見られたが,ヒドロキシプロピル化Z-L-Phe-ポリロタキサンでは脂質の存在が認められた。これらの結果からヒドロキシプロピル化Z-L-Phe-ポリロタキサンは他の有機溶媒に比較して,皮膚に対する刺激性の低い薬物透過促進効果を示すことが期待される。
【0025】
【発明の効果】
以上述べたように本発明にかかる経皮吸収促進剤(ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン)は、薬物吸収性を亢進することが期待される角質層の秩序構造を乱したり破壊したりすると共に角質層以下の皮下組織中に浸透しないか、浸透しても皮下組織内で自動的に或いは疾患特異的に分解することによって皮膚刺激性・細胞毒性・炎症性を回避することができる。また本発明にかかるヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを利用したインドメタシンの水溶液は、これまでのものに比較して透過性に優れることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるインドメタシン懸濁液に皮膚透過の平均を示すグラフである。
Claims (3)
- α,β又はγ−シクロデキストリンからなる環状化合物と、該環状化合物の空洞を貫通させた直鎖状高分子化合物と、この直鎖状高分子化合物の両端部に結合させた生体内分解性部位とからなり、前記α,β又はγ−シクロデキストリンをヒドロキシプロピル化した超分子構造の生体内分解性高分子集合体からなり、前記環状化合物とそれに対する直鎖状高分子化合物の組合せが次のいずれかである経皮吸収促進物質。
(1)α−シクロデキストリンに対してポリエチレングリコール
(2)β−シクロデキストリンに対してポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレンから選ばれる直鎖状高分子化合物、あるいはこれらのブロック共重合体
(3)γ−シクロデキストリンに対してポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレンから選ばれる直鎖状高分子化合物、あるいはこれらのブロック共重合体 - 次のa〜dの各工程、a)カルボベンゾキシ-L-フェニルアラニン(Z-L-Phe)とN-ヒドロキシスクシンイミド(N-HOSu)と反応させてZ-L-Phe-スクシンイミドを合成する工程と、b)シクロデキストリン水溶液にα-(3-アミノプロピル)-ω-(3-アミノプロピル)ポリ(オキシエチレン)を添加して擬ポリロタキサンを作成する工程と、c)前記a)の工程で得られたZ-L-Phe-スクシンイミドの溶解液に前記b)の工程で得られた擬ポリロタキサンを添加しZ-L-Phe-ポリロタキサンを合成する工程と、d)前記c)の工程で得られたZ-L-Phe-ポリロタキサンをヒドロキシプロピル化する工程と、からなる経皮吸収促進物質の製法。
- 前記d)の工程で得られたヒドロキシプロピル化Z-L-Phe-ポリロタキサンを還元法によりZ基の脱保護を行うことを特徴とする請求項2記載の経皮吸収促進物質の製法。
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