JP3703679B2 - 布帛の柔軟処理用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は布帛の柔軟処理用組成物に関し、詳しくは、布帛に優れた柔軟性や吸水性を付与し、かつ、皮膚刺激の少ない布帛の柔軟処理用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
衣料および繊維製品は、着用・使用と洗濯・乾燥を繰り返すうちに繊維処理剤が洗い落とされたり、繊維が本来保有している柔らかさ・嵩高さ・しっかり感等の風合いが損なわれたり、繊維同士の摩擦力が上昇して損傷が促進されることによって風合いが低下するので、これを防止するために従来から柔軟処理剤が使用されている。家庭で用いられる柔軟処理剤としては、洗濯後の濯ぎ時に使用される柔軟仕上剤が一般的であり、このような柔軟仕上剤として、1分子中に2個の長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩や各種のアミンまたは高分子化合物等の有機系柔軟基材を主成分とする水性組成物が知られている。
一方、オルガノポリシロキサン系化合物は、繊維に吸着すると繊維間や繊維表面の摩擦を軽減して、優れた柔軟性,平滑性,滑らかさ,感触の良い肌触り,絹のような感触,ふんわり感,弾力性,乾燥時の非油性感,帯電防止性,防皺性等の良好な風合いを付与し、加えて、再湿潤時間の低減,縮み防止,皺除去,へたり防止,ごわつき防止,乾燥時間の短縮,アイロンかけを容易にする等の効果が発現することから、柔軟処理剤の基材として使用されたり、各種の有機系柔軟基材と組み合わせて使用されている。しかしながら、ポリジメチルシロキサンに代表されるような非親水性のポリシロキサンを用いた場合は、水分散性が悪いため水性組成物に配合し難い上に吸水性が乏しく、さらに繊維に吸着し難いので柔軟性付与効果が低いといった問題点があり、アミノ基やアミド基等の窒素原子を有するポリシロキサンを用いた場合には、繊維が黄変したり、ぬめり感が強すぎたり、皮膚刺激性がある等の問題点があった。アルキル変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシ変性ポリシロキサン等の有機変性ポリシロキサンを用いた場合には、吸水性や柔軟性が不十分で良好な風合いが得られないという問題点があった。また、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンとしては、従来、ジメチルシロキサン単位の重合度が100程度の低重合度の共重合体が使用されているが、この場合は吸水性が良好であるものの、柔軟性が不十分で優れた風合いが得られないという問題点があった。さらに、炭素原子数6以上の長鎖アルキル基を有するポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンも知られているが(特開平1−162878号公報参照)、このようなポリシロキサンにより処理された繊維は親水性が低く、ごわついた風合いを有するといった欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、重合度の高いポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンを使用することにより、各種繊維に優れた風合いを付与できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の目的は、皮膚刺激性や黄変の問題が無く、繊維製品に優れた柔軟性や肌触り等の風合いと吸水性を付与し得る布帛の柔軟処理用組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、平均構造式(1):
【化2】
[式中、Pは式:−(R3)cO(C2H4O)a(C3H6O)bR4{R3は炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、R4は水素原子,炭素原子数1〜6の1価炭化水素基,式:−OCR5または−COOR5(R5は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)で示される基である。aおよびbはそれぞれ0〜50の数であり、かつ、(a+b)は1以上であり、cは0または1である。}で表される基であり、R1は炭素原子数1〜5の1価炭化水素基,水素原子,水酸基またはアルコキシ基であり、全R1の内90モル%以上がメチル基であり、R2は上記R1またはPで示される基である。xは450〜1000の数であり、yは1〜50の数である。]で示され、ポリオキシアルキレン鎖部分の重量割合が全重量の50%未満であるポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンを配合してなることを特徴とする布帛の柔軟処理用組成物に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明組成物に使用される上記平均構造式(1)で示されるポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン中、Pは式:−(R3)cO(C2H4O)a(C3H6O)bR4で表される基である。式中、R3は炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、エチレン基,プロピレン基,ブチレン基が例示されるが、これらの中でもプロピレン基が好ましい。R4は水素原子,炭素原子数1〜6の1価炭化水素基,式:−OCR5または−COOR5(R5はメチル基,エチル基,イソプロピル基のような炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。)で示される基であり、メチル基,エチル基,プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、ビニル基,アリル基,ヘキセニル基等のアルケニル基、式:−OCCH3,式:−COOCH3で示される基が例示されるが、これらの中でも水素原子またはメチル基であることが好ましい。aおよびbはそれぞれ0〜50の数であり、かつ、(a+b)は1以上であるが、aが5〜40の範囲であり、bが0〜30の範囲であるものが好ましい。また、ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン基の比率は、a/(a+b)=0.4〜1.0の範囲であることが好ましい。cは0または1であり、通常は1であるが、cが0であり、かつ、R4がアルケニル基であるポリオキシアルキレン鎖が少量存在していてもよい。尚、1分子中のポリオキシアルキレン鎖は、同一でも異なっていてもよい。R1は炭素原子数1〜5の1価炭化水素基,水素原子,水酸基またはアルコキシ基であり、1価炭化水素基としては、メチル基,エチル基,プロピル基等のアルキル基;ビニル基,アリル基等のアルケニル基のような非置換の1価炭化水素基の他、アミノ基,カルボキシル基,エポキシ基等で置換された炭素原子数1〜5のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基としてはメトキシ基,エトキシ基,イソプロポキシ基が例示される。但し、全R1の90モル%以上がメチル基であることが必要であり、すべてのR1がメチル基であることが好ましい。R2は上記R1で示される基またはPで示されるポリオキシアルキレン鎖であり、中でもメチル基が好ましい。xは450〜1000の数である。yは1〜50の数であり、5〜20の範囲であることが好ましい。また、上記平均構造式(1)において、Pで示されるポリオキシアルキレン鎖部分の重量割合は、該ポリオキシアルキレン変性シロキサン全重量の50%未満であり、25〜40%の範囲であることが好ましい。これは、50%未満であると適度な親水性が得られるためである。このポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンの25℃における粘度は3000mm2/s以上であることが好ましく、5000mm2/s以上であることがより好ましい。
【0006】
上記平均構造式(1)で示されるポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンは、例えば、少なくとも一つのケイ素原子結合水素原子を有する直鎖状のポリシロキサンと、構造式:CH2=CH(CH2)nO(C2H4O)a(C3H6O)bR4(式中、nは0〜8の整数であり、R4,aおよびbは前記と同じである。)で表されるようなアルケニル基含有ポリエーテル化合物とを、白金を代表とする遷移金属系化合物を触媒として用いて無溶媒または溶媒中で反応させることにより製造することができる。ここで使用されるケイ素原子結合水素原子を有する直鎖状のポリシロキサンは、環状もしくは鎖状のケイ素原子結合水素原子含有シロキサンと環状のジメチルシロキサンとを、活性白土等の固体酸性触媒や塩酸,硫酸,トリフロロ酢酸およびトリフルオロメタンスルホン酸等の酸性化合物を触媒として用いて公知の方法により製造することができる。アルケニル基含有ポリエーテル化合物は各種構造のものが市販されており、容易に入手することができる。尚、このポリエーテル化合物として、構造の異なる2種類以上を組み合わせた混合物を使用してもよい。 反応に使用される溶媒としては、エタノール,イソプロパノールおよびこれらとトルエンとの混合物が好ましい。また、ポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子に対するポリエーテル化合物中のアルケニル基のモル比は、通常、0.7〜3.0の範囲であり、0.9〜2.0の範囲が好ましい。
【0007】
このような平均構造式(1)で示されるポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンとしては、下記式で表されるシロキサンが例示される。
【化3】
【化4】
【0008】
このようなポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンは、側鎖のポリオキシアルキレン鎖が長く、ポリシロキサン主鎖の重合度が大きいものほど粘度が高くなるので、製造時の作業性改善および水性組成物への配合を容易にするために、各種の有機溶剤または水に溶解させて使用するのが好ましい。使用される有機溶剤としては、エタノール,ジプロピレングリコール,ブチルカルビトールが挙げられる。また、界面活性剤を使用して水中に乳化してから使用することも可能である。本発明組成物に使用されるポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンに比べて親水性なので、該ポリジメチルシロキサンよりも容易に溶解、乳化できるという利点を有する。また、上記ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンの配合量は、通常、0.05重量%以上であり、経済性の点からは15重量%を越えない量が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲である。
【0009】
本発明組成物には、必要に応じて、炭素原子数8〜30の長鎖アルキル基または長鎖アルキルエステル基を1個または2個有するアミン化合物やその中和塩,4級アンモニウム塩,4級化イミダゾリニウム系化合物,ポリアンモニウム化合物,ポリアミン塩およびポリアルキレンイミン塩等の有機系柔軟剤を配合することができる。さらに本発明の効果を妨げない範囲であれば、この他の任意成分としてジメチルポリシロキサン以外の、柔軟剤に添加配合される公知の成分を添加してもよい。このような成分としては、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物,牛脂アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性界面活性剤;ステアリン酸,オレイン酸等の高級脂肪酸;2―エチルヘキサン酸とグリセリンまたはペンタエリスリトールとの部分エステル化物等の非イオン性界面活性剤;食塩,塩化アンモニウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウム,塩化カリウム等の水溶性塩;エチレングリコール,プロピレングリコール,ヘキシレングリコール等の溶剤;尿素,殺菌剤,酸化防止剤,染料,顔料,高級アルコール,液状炭化水素および液状エステル等の油性物質;セルロース誘導体,紫外線吸収剤,蛍光増白剤,香料が挙げられる。
【0010】
本発明組成物が適用される布帛としては、麻,綿,ウール,シルク等の天然繊維;ポリアミド系,ポリエステル系,ポリアクリル系,ポリビニルアルコール系,ポリ塩化ビニリデン系,ポリオレフィン系,ポリウレタン系またはポリテトラフロロエチレン系等の合成繊維;再生繊維,半合成繊維,ガラス繊維およびこれら繊維の混紡や交織製の製品や不織布が挙げられる。本発明組成物を用いて布帛を処理する際には、上記ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンが0.005〜1.0重量%になるような量付着させることが必要である。
【0011】
以上のような本発明の柔軟処理用組成物は、各種衣料や繊維製品に優れた柔軟性,親水性,帯電防止性を付与して風合いを著しく向上させるという特徴を有する。特に、これまでポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンの欠点であった柔軟性等の良好な風合いを、ジメチルポリシロキサンや長鎖アルキル基含有シロキサンの不存在下で付与できるという利点を有する。このような本発明組成物は、家庭で洗濯後の濯ぎ時に使用される家庭用柔軟仕上剤として最も有効であるが、この他にも、衣料洗濯用の液体洗浄剤に配合したり、アイロンがけ助剤やタンブル乾燥器用シートのコーティング組成物中に添加した場合にも同様の効果が期待できる。
【0012】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。尚、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンとしては、表1に示した平均構造を有するシロキサンを使用した。
【0013】
【表1】
【0014】
【実施例1】
表1に示したポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンA8〜A14のそれぞれ5gを、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5gを使用して94.5gの水中に乳化分散したものを柔軟処理用試験液とした。
一方、全自動洗濯機[松下電器(株)製]を使用して、市販の木綿タオル、綿Tシャツおよびアクリルジャージを、市販の家庭用衣料洗剤を用いて50℃で2回繰り返し洗濯した後、常温の水道水で充分濯ぎ、脱水後乾燥したものを試験布とした。
次に、上記全自動洗濯機漕内に30Lの水道水を溜め、上記で調製した柔軟処理用試験液10gを添加した後、上記の試験布1kgを投入して3分間標準速度で攪拌した。次いで30秒間脱水して、その後、室温で48時間乾燥した。このように処理した試験布について、柔軟性,滑らかさ,ふっくらさ,吸水性および皮膚刺激性を次の方法で測定した。これらの結果を表2に示した。表2の結果から明らかのように、本発明組成物で処理した布帛は、皮膚刺激性がなく、吸水性と共に柔軟性等の風合いにも非常に優れていた。
<柔軟性、滑らかさ、ふっくらさ>
男女5名づつ計10名のパネラーが、柔軟処理用試験液で処理した試験布(木綿タオル、アクリルジャージ)と、柔軟処理用試験液を添加せずに同様に処理した試験布(無処理布)とを手で触り、これらを下記の基準に従って測定した。評価としては、最も回答人数の多かったものを採用した。
◎:無処理布に比べて処理布の方が非常に優れていた。
○:無処理布に比べて処理布の方が良好であった。
△:処理布と無処理布はほぼ同じであった。
×:無処理布に比べて処理布の方が明らかに劣っていた。
<吸水性>
処理した試験布(木綿タオル)に水を数滴落とし、その後の水の状態を下記の基準に従って測定した。
◎:試験布に滴下直後にしみ込んだ。
○:すぐにはしみ込まず、滴下してから60秒以内にしみ込んだ。
×:滴下後60秒経過してもしみ込まなかった。
<皮膚刺激性>
健康な男女10名づつ計20名を被験者とし、処理した綿Tシャツを24時間着用した後の皮膚の様子を目視で観察した。炎症が起きた人はいなかった場合を皮膚刺激性なしとし、炎症が起きた人がいた場合を皮膚刺激性ありとした。
【0015】
【比較例1】
表1に示したポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンA1〜A7のそれぞれ5gを、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5gを使用して94.5gの水中に乳化分散したものを柔軟処理用試験液とした。得られた試験液を使用して、市販の木綿タオル、綿Tシャツおよびアクリルジャージを、実施例1と同様にして処理した。処理後の試験布について、柔軟性,滑らかさ,ふっくらさ,吸水性および皮膚刺激性を実施例1と同様の方法で測定した。これらの結果を表2に示した。
【0016】
【比較例2】
重合度410のポリジメチルシロキサンD1および重合度600のポリジメチルシロキサンD2のそれぞれ5gを、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5gを使用して94.5gの水中に乳化分散したものを柔軟処理用試験液とした。得られた試験液を使用して、市販の木綿タオル、綿Tシャツおよびアクリルジャージを、実施例1と同様にして処理した。処理後の試験布について、柔軟性,滑らかさ,ふっくらさ,吸水性および皮膚刺激性を実施例1と同様の方法で測定した。これらの結果を表2に示した。
【0017】
【表2】
【0018】
【発明の効果】
本発明の布帛の柔軟処理用組成物は、高重合度のポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンを配合しているので、皮膚刺激や黄変がなく、各種繊維製品に優れた柔軟性,滑り性等の風合いと吸水性を付与するという特徴を有する。
Claims (2)
- 平均構造式(1):
- 家庭用柔軟仕上剤である請求項1に記載の柔軟処理用組成物。
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