JP3703358B2 - トラクションドライブ流体用低温流動性向上剤及びトラクションドライブ流体組成物 - Google Patents

トラクションドライブ流体用低温流動性向上剤及びトラクションドライブ流体組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なトラクションドライブ流体用低温流動性向上剤、及び該低温流動性向上剤を含有するトラクションドライブ流体組成物に関し、さらに詳しくは、トラクション係数が高く、かつ低温流動性に優れるトラクションドライブ流体用の低温流動性向上剤として有用なシリコーン変性物、及び該低温流動性向上剤を含有するトラクションドライブ流体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
トラクションドライブ流体は、トラクションドライブによる動力伝達機構に使用される流体である。トラクションドライブ流体は、自動車無段変速機(CVT)等のトラクションドライブ装置において、転がり接触面に介在し、動力を伝達するとともに、転動体同士の直接の接触を防止する潤滑油としての役割を果たしている。トラクションドライブは、転がり伝動であるため、歯車伝動に比べて機構が簡単であり、低騒音で、滑らかな無段変速ができるため、自動車用トラクションドライブヘの発展が期待されている。
【0003】
トラクションドライブで重要な性能は、動カ伝達能であって、法線荷重(垂直力)Pに対する接線カ(トラクションカ)Tの比で定義されるトラクション係数μ(μ=T/P)で表され、このトラクション係数が大きいほど、伝達容量が大きい。トラクションドライブ流体は、一般に、液状の潤滑油と半固体状又は固体状のグリースに大別されるが、主成分となる基油によって鉱油系と合成油系とがあり、種々の用途に使用されている。
このように、無段変速機等のトラクションドライブ装置においては、動力伝達能の観点から、トラクション係数の高いトラクションドライブ流体が望まれている。特に近年、自動車用途を中心に高性能化あるいは小型軽量化の研究が進み、トラクションドライブ流体も、粘度温度特性や低温流動性などの性能に優れた実用的で、かつ高いトラクション係数を示すものが要求されている。
【0004】
従来より、トラクションドライブ流体については、特公昭53−36105号公報、特公平2−11639号公報、特公平5−87117号公報、特公平5−88918号公報、特公平6−31373号公報、特公平7−47752号公報、特開平6−271588号公報、特開平7−242891号公報、特開平9−59660号公報、特開平10−25489号公報など数多くの特許や文献等で種々の化合物が提案されている。
【0005】
例えば、特公昭53−36105号公報には、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンに例示される化合物を動力伝達流体として利用した動力伝達方法が提案されている。
特公平5−87117号公報には、ポリシクロヘキシルアルカンと、スクワラン又はポリオレフィン油とを混合したトラクションドライブ用流体組成物が提案されている。
特公平5−88918号公報には、ナフテン系炭化水素とポリイソブテンを混合した基油に、ホスフェタン誘導体を配合した、トラクションドライブ機構を備えた伝動装置用潤滑剤が提案されている。
特公平6−31373号公報には、シクロヘキサノールシクロヘキサンカルボン酸エステル又はその誘導体にポリブテンを混合したトラクションドライブ用流体が提案されている。
また、特公平7−47752号公報には、シクロペンタジエン系の3〜6量体で、ノルボルネン環二重結合上とシクロペンテン環二重結合上の水素量の比(ND/CD)が0.9〜1.3であるシクロペンタジエン系縮合炭化水素の水素化物と、分岐を有するポリα−オレフィンとを混合したトラクションドライブ用流体組成物が提案されている。
特開平7−242891号公報には、シクロペンタジエン系の3〜6量体で、ノルボルネン環二重結合上とシクロペンテン環二重結合上の水素量の比(ND/CD)が0.9〜1.3であるシクロペンタジエン系縮合環炭化水素の水素化物と、アルキル基中に炭素原子を1〜3個有するα−アルキルスチレンの二量体水素化物とを混合したトラクションドライブ用流体組成物が提案されている。
さらに、特開平9−59660号公報や特開平10−25489号公報には、ジシクロヘキシル化合物と、シクロペンタジエン類とビニル芳香族炭化水素類との熱共重合物又はその水素化物とを混合したトラクションドライブ用流体が提案されている。
さらにまた、シリコーン系化合物を用いたトラクションドライブ流体も若干ではあるが、特公平2−11639号公報、特開平6−271588号公報などに検討され、例えば、特開平6−271588号公報では、シクロヘキシルメチルシリコーンを用いたトラクションドライブ流体が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの提案にも拘わらず、トラクション係数が高いことに加えて、実用的なトラクションドライブ流体は、少なかった。特に、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンに例示されるα−アルキルスチレンの二量体水素化物は、トラクション係数は高いものの、低温における流動性が劣るため、自動車用無段変速機油としての実用化が困難となっている。そのため、低温流動性に優れた実用的なトラクションドライブ流体の開発が強く望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低温流動性に優れ、かつトラクション係数が高く、実用的に優れたトラクションドライブ流体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、新規に合成した特定の構造を有するシリコーン変性物が、トラクション係数が高く、かつ低温流動性に優れるため、トラクションドライブ流体用の低温流動性向上剤として有用であることを見い出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、下記の化学式[1]で表されるトラクションドライブ流体用低温流動性向上剤が提供される。
【0010】
【化2】
Figure 0003703358
【0011】
(式中、Rは、C〜C20の単環性若しくは二環性のシクロアルカン、又はそれらの環を有するアルキル基を示し、Rは、C〜Cのアルキル基を示す。また、Xは、酸素原子又はCOO基を示し、nは、1〜10の整数である。)さらに、本発明によれば、化学式[1]において、Rは、シクロヘキシル基であり、Rは、メチル基であり、Xは、酸素原子である上記の低温流動性向上剤が提供される。
また、上記の低温流動性向上剤を含有することを特徴とするトラクションドライブ流体組成物が、また、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンからなる基油に、上記の低温流動性向上剤を配合してなることを特徴とするトラクションドライブ流体組成物が、さらに、配合割合は、基油60〜95重量%に対して、上記の低温流動性向上剤5〜40重量%であることを特徴とするトラクションドライブ流体組成物が提供される。
さらに、平均分子量が300〜3500のポリブテンからなる基油を配合することを特徴とする上記のトラクションドライブ流体組成物が提供される。
さらにまた、摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、消泡剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をトラクションドライブ流体組成物に配合することを特徴とする上記のいずれかに記載のトラクションドライブ流体組成物が提供される。
【0012】
そして、本発明は、前述したように、特定のシリコーン変性物であるトラクションドライブ流体用低温流動性向上剤及び該低温流動性向上剤を配合したトラクションドライブ流体組成物に係るものであるが、好ましい態様として下記のものも包含される。
(1)2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンとシクロヘキサンカルボン酸シクロヘキシルエステルとを混合した基油に、上記の低温流動性向上剤を配合してなることを特徴とするトラクションドライブ流体組成物。
(2)2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンと、平均分子量が190〜250のシクロペンタジエンオリゴマー水添物とを混合した基油に、上記の低温流動性向上剤を配合してなることを特徴とするトラクションドライブ流体組成物。
(3)シクロペンタジエンオリゴマー水添物が、ノルボルネン環二重結合量Xとシクロペンテン環二重結合量Yの比X/Yが0.10〜0.90のシクロペンタジエンオリゴマーを水素添加したものである前記のトラクションドライブ流体組成物。
(4)シクロペンタジエンオリゴマー水添物が、シクロぺンタジエンの三量体と四量体との混合物の水添物である前記のトラクションドライブ流体組成物。
(5)化学式[1]において、Rは、デカリル基であり、Rは、メチル基であり、Xは、酸素原子である前記の低温流動性向上剤。
(6)化学式[1]において、Rは、シクロヘキシル環を有するメチレン基であり、Rは、メチル基であり、Xは、酸素原子である上記の低温流動性向上剤。
(7)化学式[1]において、Rは、シクロヘキシル基であり、Rは、メチル基であり、Xは、COO基である上記の低温流動性向上剤。
(8)トラクション係数が0.09以上、−40℃における低温粘度が100Pa・s以下である前記のトラクションドライブ流体組成物。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.トラクションドライブ流体用低温流動性向上剤
本発明のトラクションドライブ流体用低温流動性向上剤は、次の化学式[1]で表される特定構造を有するシリコーン変性物である。
【0014】
【化3】
Figure 0003703358
【0015】
(式中、Rは、C〜C20の単環性若しくは二環性のシクロアルカン、又はそれらの環を有するアルキル基を示し、Rは、C〜Cのアルキル基を示す。また、Xは、酸素原子又はCOO基を示し、nは、1〜10の整数である。)
【0016】
本発明の化学式[1]で表されるシリコーン変性物の構造上の第1の特徴は、シロキサン結合の骨格を形成するケイ素原子と、置換基Rの間に、X基として、酸素原子又はCOO基が結合していることである。本発明者らは、この酸素原子又はCOO基の働きにより、低温流動性が向上するものと推察している。
次に、構造上の第2の特徴は、シリコーン変性物が高いトラクション係数を有するために、置換基Rが、シクロアルカン又はシクロアルカンを有するアルキル基であることである。
シクロアルカンとしては、C〜C20の単環性又は二環性のものであり、具体的には、例えば、単環性のものでは、C〜Cのものが好ましく、Cのシクロヘキシル環(シクロヘキシル基)が特に好ましい。また、これらのシクロヘキシル環などには、炭素数1〜6のアルキル基等の置換基を有していてもよい。また、二環性のものでは、C10のデカリン、又は炭素数1〜6のアルキル基等の置換基を有したその誘導体などが挙げられる。置換基Rとしては、単環性と二環性のものを、1種類でも、2種以上を混合して用いてもよい。
シクロアルカンを有するアルキル基としては、具体的に、例えば、C11−CH−基やC11−CH−CH−基などであり、前者のものが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の化学式[1]で表されるシリコーン変性物の、シロキサン結合の骨格を形成するケイ素原子に結合した置換基Rは、C〜Cの炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、特に低温粘度の観点からメチル基が好ましい。また、本発明の化学式[1]で表されるシリコーン変性物は、nが1〜10の整数であり、好ましくは1〜6の整数であり、特に1〜4の整数、すなわち、合計ケイ素原子数が2、3、4または5であるジシロキサン、トリシロキサン、テトラシロキサン、ペンタシロキサン骨格を有するものが、他のトラクションドライブ流体などの潤滑剤に対する溶解性の観点から好ましい。
【0018】
本発明のトラクションドライブ流体用低温流動性向上剤として用いられる化学式[1]で表される特定構造を有するシリコーン変性物は、原料および製造方法について特に制限はなく、例えば、次の方法により製造することができる。
原料としては、化学式[1]のR−X基に対応する化合物としての、例えばシクロヘキサノールやシクロヘキサンカルボン酸と、両末端が塩素であるシロキサン化合物、例えば1,5−ジクロロ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンや1,7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサンとを用い、溶媒としてピリジンを用いて、両者を反応させる。反応が活性であるため、反応条件としては、水分などを避け、窒素等のイナートガス雰囲気で行い、反応温度は、低温の0〜5℃とする。反応生成物として、化学式[1]で表される特定構造を有するシリコーン変性物と、発生した塩化水素がピリジンと反応した塩化ピリジンとが生成される。生成した反応生成物をろ過や蒸留などで精製して、化学式[1]で表される特定構造を有するシリコーン変性物を得ることができる。
【0019】
このようにして製造された化学式[1]で表される特定構造を有するシリコーン変性物は、低温流動性に優れ、トラクション係数も高く、かつ公知のトラクションドライブ流体や、通常使われる鉱油、合成油及び潤滑油用添加剤との相溶性にも優れているため、トラクションドライブ流体用の低温流動性向上剤として有用である。
【0020】
2.トラクションドライブ流体組成物
本発明の化学式[1]で表される特定構造を有するシリコーン変性物は、通常、公知のトラクションドライブ流体に、低温流動性向上剤として配合され、トラクションドライブ流体組成物に用いられる。
本発明の低温流動性向上剤が配合されるトラクションドライブ流体としては、先ず、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンが挙げられる。この2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンは、次の一般式[2]で表される化合物で、トラクションドライブ流体として極めて公知のものであり、優れたトラクション係数を有するものの、−40℃における低温粘度が高く、低温流動性に劣るという欠点を有する。
【0021】
【化4】
Figure 0003703358
【0022】
上記以外の公知のトラクションドライブ流体としては、シクロペンタジエンオリゴマー(CPオリゴマー)の水添物やポリブテンなども挙げることができる。
【0023】
CPオリゴマー水添物としては、公知のものを使用することができるが、好ましくは、平均分子量が190〜250のものであって、シクロペンタジエンの三量体及び四量体の水添物を主成分とするものである。二量体以下又は五量体以上のCPオリゴマー水添物が少量含まれていてもよい。一般に、CPオリゴマー水添物の平均分子量が上記範囲内にあることによって、トラクションドライブ流体のトラクション係数を安定で高いものとすることができ、平均分子量が190未満では、引火点が低下し、一方、250超過では、低温流動性が悪化する。
CPオリゴマーは、通常、ノルボルネン環とシクロペンテン環を含むが、トラクションドライブ流体として用いられるCPオリゴマー水添物は、CPオリゴマーであって、ノルボルネン環二重結合量Xと、シクロペンテン環二重結合量Yの比X/Yが0.10〜0.90の範囲内にあるものの水添物が好ましい。
【0024】
ポリブテンとしては、平均分子量が300〜3500のものが好適に用いることができ、特に好ましくは450〜1500のものである。ポリブテンの平均分子量が300未満では、高温での蒸発損失が増加し、蒸発によるトラクションドライブ流体の物性変化が大きくなる。一方、ポリブテンの平均分子量が3500を超えると、流動性が低下し、低温粘度が高くなり、低温流動性が悪化する。ポリブテンとしては、炭素炭素二重結合を水素添加して飽和したものも含まれる。ポリブテンは、好ましくはポリイソブチレン又はその水添物である。また、ポリブテンは、特に、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンと組合せることにより、許容しうる範囲の高いトラクション係数を維持しながら、実用性能、例えばオイルシールゴム適合性などを改善することができる。
【0025】
本発明では、トラクションドライブ流体組成物の基油として、上記の2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタン、平均分子量が190〜250のシクロペンタジエンオリゴマー水添物、及びポリブテンなどを用いることができ、これらの基油は、種々の用途に応じたトラクションドライブ流体の要求性能に合わせて、適宜、単独でも、種々組合せて用いることもできる。これらの基油に又はこれらの基油の組合せたものに、化学式[1]で表される特定構造を有するシリコーン変性物を低温流動性向上剤として配合することにより、トラクション係数を高く保持しつつ、低温流動性を向上させることができる。
【0026】
本発明のトラクションドライブ流体組成物の配合例としては、例えば、基油として、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタン単独を用いた場合、配合割合は、基油60〜95重量%に対して、低温流動性向上剤5〜40重量%の範囲が好適である。低温流動性向上剤の配合割合が、5重量%未満では、低温流動性が改善できず、一方、40重量%を超えると、若干トラクション係数が低下する。このように、化学式[1]で表される特定構造を有するシリコーン変性物、すなわち低温流動性向上剤の配合割合は、種々の基油の組合せにより、性能のバランスに応じて、適宜変えることができる。すなわち、低温流動性向上剤の配合割合を適宜変えることによって、トラクション係数を高く保持すると共に、低温粘度が低く、寒冷地や冬期でも使用可能である実用的なトラクションドライブ流体ができる。
【0027】
本発明のトラクションドライブ流体組成物には、トラクションドライブ流体の基油に、上記の特定構造を有するシリコーン変性物の低温流動性向上剤を配合するものであるが、種々の用途に適応した実用性能を確保するため、さらに必要に応じて、自動車用動力伝達油、例えば自動変速機油やミッションギヤ油に用いられている各種添加剤、すなわち摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、消泡剤等を本発明の目的を損なわない範囲で適宜添加することができる。
【0028】
本発明のトラクションドライブ流体組成物は、トラクション係数が高いこと、−40℃における低温粘度が低く、低温流動性に優れていること、蒸発特性に優れていること等の特徴を有している。本発明のトラクションドライブ流体組成物は、トラクション係数が、通常、0.09以上の高い値を示す。また、本発明のトラクションドライブ流体組成物は、−40℃における低温粘度が100Pa・s以下であり、低温での使用が可能である。すなわち、寒冷地や冬期に装置を作動する場合、屋外では0℃以下、場合によっては−40℃付近になることがある。そのため、本発明のトラクションドライブ流体組成物は、低温流動性が優れているため、−40℃付近の低温条件下でもトラクションドライブ装置を作動することができる。
なお、−40℃における低温粘度は、ASTM D2983−80に規定するブルックフィールド粘度計で測定したブルックフィールド粘度である。
【0029】
さらに、本発明のトラクションドライブ流体組成物は、前記のような特徴を活かして、自動車無段変速機等のトラクションドライブ装置において、動力を伝達するとともに、転動体同士の直接の接触を防止する潤滑油としての役割を果たす潤滑剤として好適に使用することができる。しかも、本発明のトラクションドライブ流体組成物は、トラクション係数が高いため、前記したように、転動体の押し付け荷重を低減させることができ、トラクションドライブ装置本体の疲労寿命を大幅に延長することができるため、装置の信頼性が向上し、装置の小型化に寄与することができる。
【0030】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で得たトラクションドライブ流体組成物の評価は、下記の方法で行った。
【0031】
1.物性の評価、測定法
<トラクション係数測定装置及び測定条件>
四円筒型トラクション試験機
周 速 :5m/sec
すべり率 :2%
平均ヘルツ圧:1.0GPa
ローラー温度:室温
トラクション係数は、0.090以上を開発目標とした。
<低温粘度の測定方法>ASTM D2983−80に規定するブルックフィールド粘度計で、−40℃におけるブルックフィールド粘度を測定した。低温粘度は、−40℃におけるブルックフィールド粘度が100Pa・s以下を開発目標とした。
【0032】
2.特定構造を有するシリコーン変性物の合成
[実施例1]
原料として、シクロヘキサノールと1,5−ジクロロ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンとを用いた。ピリジンを溶媒として用い、2.1モルのシクロヘキサノールを、0℃で攪拌しながら、1時間の間に、1モルの1,5−ジクロロ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンを窒素雰囲気で滴下して反応を開始させる。滴下終了後、反応温度を低温の0〜5℃に保って、3時間攪拌し、反応を終了させる。反応中に発生した塩化水素は、ピリジンと結合して塩化ピリジンになる。この塩化ピリジンと、1,5−ジシクロヘキシル−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンとの反応生成物の混合物に、ヘプタン500mlを加え、ろ紙により塩化ピリジンをろ過する。ろ液に精製のため、水を400ml加え洗浄する。分液ロートで有機部分を分離した後、20gの硫酸マグネシウムで12時間乾燥し、その後ろ過する。このろ液を減圧蒸留(122℃、2mmHg)して、純度98%の1,5−ジシクロヘキシル−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンを収率90%で得た。この得られた1,5−ジシクロヘキシル−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンの物性等の評価結果を表1に示す。
【0033】
[実施例2]
原料として、シクロヘキサノールと1,5−ジクロロ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンとを用い、反応条件を若干マイルドにした以外は、実施例1と同様にして、化学式[1]で表されるシリコーン変性物(A)を得た。得られたシリコーン変性物(A)は、化学式[1]において、Rは、シクロヘキシル基であり、Rは、メチル基であり、Xは、酸素原子であり、nは、1〜5の混合したものであり、この物性等の評価結果も表1に示す。
【0034】
[比較例1]
上記、実施例1、2と比較するため、低温流動性向上剤として、市販のジメチルシリコーン油も、評価した。この物性等の評価結果も表1に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0003703358
【0036】
3.トラクションドライブ流体組成物
[実施例3]
トラクションドライブ流体組成物において、基油と低温流動性向上剤の全量基準で、基油としての2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタン90重量%に、低温流動性向上剤として、実施例2で合成したシリコーン変性物(A)10重量%を配合したトラクションドライブ流体組成物を調製し、さらに、トラクションドライブ流体組成物全量基準で、各種添加剤、すなわち、酸化防止剤(アルキル化ジフェニルアミン)、摩耗防止剤(酸性リン酸エステル)、清浄分散剤(コハク酸イミド)及び金属不活性化剤(ベンゾトリアゾール)の一定量、合計3.41重量%を処方した。トラクションドライブ流体組成物の組成及び物性の測定結果を表2に示す。
【0037】
[実施例4〜10]
表2に示すような基油及び低温流動性向上剤の配合割合で、実施例3と同様な方法にてトラクションドライブ流体組成物を調製し、いずれも実施例3と同様の添加剤を同量処方した。尚、実施例7〜10には、分子量が1000のポリブテンを配合している。トラクションドライブ流体の組成及び物性の測定結果を表2に示す。
【0038】
[比較例2〜4]
比較例2は、表2に示すような基油、すなわち2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンのみに、実施例3と同様の添加剤を同量処方した。比較例3及び4は、表2に示すような基油及び低温流動性向上剤の配合割合で、実施例3と同様な方法にてトラクションドライブ流体組成物を調製し、いずれも実施例3と同様の添加剤を同量処方した。これらのトラクションドライブ流体の組成及び物性の測定結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
Figure 0003703358
【0040】
これらの評価結果から、低温流動性に優れ、かつトラクション係数が高く、実用的に優れたトラクションドライブ流体組成物は、公知のトラクションドライブ流体に、低温流動性向上剤として特定構造のシリコーン変性物を配合することにより得られることが判明した。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、低温流動性に優れ、かつトラクション係数が高く、実用的に優れたトラクションドライブ流体組成物が提供される。本発明のトラクションドライブ流体組成物は、自動車無段変速機等のトラクションドライブ装置において、動力を伝達するとともに、転動体同士の直接の接触を防止する潤滑油としての役割を果たす潤滑剤として使用することができる。また、本発明のトラクションドライブ流体組成物は、トラクション係数が高く、低温流動性に優れ、実用的であるため、装置の小型化及び信頼性に寄与することができる。

Claims (7)

  1. 下記の化学式[1]で表されるトラクションドライブ流体用低温流動性向上剤。
    Figure 0003703358
    (式中、Rは、C〜C20の単環性若しくは二環性のシクロアルカン、又はそれらの環を有するアルキル基を示し、Rは、C〜Cのアルキル基を示す。また、Xは、酸素原子又はCOO基を示し、nは、1〜10の整数である。)
  2. 化学式[1]において、Rは、シクロヘキシル基であり、Rは、メチル基であり、Xは、酸素原子である請求項1記載の低温流動性向上剤。
  3. 請求項1又は2のいずれか1項に記載の低温流動性向上剤を含有することを特徴とするトラクションドライブ流体組成物。
  4. 2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタンからなる基油に、請求項1又は2のいずれか1項に記載の低温流動性向上剤を配合してなることを特徴とするトラクションドライブ流体組成物。
  5. 配合割合は、基油60〜95重量%に対して、低温流動性向上剤5〜40重量%であることを特徴とする請求項4記載のトラクションドライブ流体組成物。
  6. さらに、平均分子量が300〜3500のポリブテンからなる基油を配合することを特徴とする請求項4記載のトラクションドライブ流体組成物。
  7. 摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、消泡剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をトラクションドライブ流体組成物に配合することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のトラクションドライブ流体組成物。
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