JP3702212B2 - 軸シール機構及びタービン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスタービン、蒸気タービン、圧縮機、ポンプなどの大型流体機械の回転軸等に用いて好適な軸シール機構に関する。また、流体の熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生させるタービンに関し、特にその回転軸に適用される軸シール機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、ガスタービンや蒸気タービンには、回転軸の軸周りに、高圧側から低圧側に漏れる燃焼ガスの漏れ量を低減するための軸シール機構が設けられている。この軸シール機構の一例として、図18に示すリーフシール1がある。
【0003】
このリーフシール1は、回転軸2の軸方向に所定の幅寸法を有する平板状の薄板3を、回転軸2の周方向に多層に配置した構造となっている。
これら薄板3は、その外周基端側が、ろう付け部4を介してリーフシールリング5に固定され、内周側の先端が、回転軸2に所定の予圧で摺接している。各薄板3の先端は、同図及び図19に示すように、回転軸2の回転方向(図中の矢印dに示す方向)に対して、回転軸2の周面と成す角が鋭角となるようして、回転軸2の周面に摺接している。
このようにしてリーフシールリング5に取り付けられた各薄板3は、回転軸2の外周をシールすることによって、回転軸2の周囲空間を高圧側領域と低圧側領域とに分けている。
リーフシールリング5には、各薄板3を間に挟む両側において、高圧領域側には高圧側側板7、低圧領域側には低圧側側板8が、圧力作用方向のガイド板として配置されている。
【0004】
上記のように構成されたリーフシール1において、回転軸2が回転されると、回転軸2の回転によって生じる動圧効果により、各薄板3の先端が、回転軸2の周面から浮上し、各薄板3の先端と回転軸2との接触が回避される。これにより摩耗が防止される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記リーフシール1では、回転軸2の回転開始時などの低速回転時には、各薄板3の受ける浮上力が弱く、図20に示すように、各薄板3の先端が回転軸2に接触したまま回転軸2の周面に対して摺動するため、各薄板3と回転軸2との摩耗が生じる恐れがあった。
また、回転軸2の高速回転時においては、リーフシールリング5及びこのリーフシールリング5が取り付けられる静止部(図示せず)の熱膨張量が、回転軸2の熱膨張量よりも大きい場合、つまり、熱によるリーフシールリング5の径の拡大が回転軸2の径の拡大より大きい場合は、図21に示すように、各薄板3の先端と回転軸2との間に間隙9が生じてしまうため、ガスの漏れ量が多くなり、シール機能が低下する恐れがあった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高圧側から低圧側へのガスの漏れ量を低減すると共に、各薄板と回転軸との摩耗の発生を抑えることのできる軸シール機構及びこの軸シール機構を備えたタービンを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の軸シール機構は、回転軸と静止部との環状空間を通って、前記回転軸の軸方向に流れる流体を阻止する軸シール機構において、前記静止部の内部に保持されたリーフシールリングと、前記回転軸の周方向に互いに隙間を開けて設けられ、各外周基端側が前記リーフシールリング内に固定され、各先端が前記回転軸の周面と鋭角を成し、かつ前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板とを有し、前記静止部と前記リーフシールリングとの間には、該リーフシールリングを前記回転軸より離間させる径方向外側に向かって付勢する付勢部材と、前記各薄板を境として高圧側の流体圧を、前記リーフシールリングの外周面と前記静止部の内周面との間に導き、前記付勢部材の付勢方向とは逆方向に前記流体圧を前記リーフシールリングに作用させるとともに、前記リーフシールリングを低圧側に押圧し、前記リーフシールリングの頭部側面、頭部底面、及び低圧側側板が前記静止部の内周面のうちこれらリーフシールリングの頭部側面、頭部底面、及び低圧側側板に対向する位置で当接するように作用させる導圧溝とが設けられていることを特徴としている。
【0008】
したがって、シール差圧が小さくかつ各薄板に十分な浮上力が受けられない回転軸の低速回転時には、付勢部材によってリーフシールリングを径方向外側に向かって付勢し、静止部内にて回転軸から離間する方向に浮上させて、このリーフシールリングに設けられた各薄板の各先端と回転軸の周面とを非接触状態に保つので、回転軸の回転に伴う各薄板及び回転軸の摩耗を防止することができる。また、シール差圧が大きい時には、導圧溝より高圧側の流体圧をリーフシールリングの外周面と静止部の内周面との間に導き、この流体圧によって付勢部材の付勢力を打ち消し、リーフシールリングを回転軸に接近する内周側へ移動させ、熱膨張により生じた隙間を減少させることができるので、回転軸と各薄板の各先端との間を通って高圧側から低圧側へ漏れるガスの漏れ量を低減することができる。
【0009】
請求項2記載の軸シール機構は、請求項1の軸シール機構において、付勢部材が、リーフシールリング側に設けられていることを特徴としている。
したがって、付勢部材の設けられたリーフシールリングを、付勢部材の設けられていない既存の静止部等に取り付けることで、静止部の内部に特別な加工を施すことなく、簡単に静止部とリーフシールリングとの間に付勢部材を設けることができる。また、付勢部材が劣化または破損した場合、これを静止部側に取り付けた場合よりも取り外しの簡単なリーフシールリング側に設けているので、付勢部材のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0010】
請求項3記載の軸シール機構は、請求項1または請求項2記載の軸シール機構において、付勢部材が、静止部とは別体の保持部材に保持され、この保持部材が静止部側に設けられていることを特徴としている。
したがって、付勢部材を静止部の内部に直接取り付ける必要がなく、付勢部材が保持された保持部材を静止部に取り付けることで、簡単にリーフシールリングと静止部との間に付勢部材を設けることができる。また、ある付勢部材が劣化または破損した場合、その付勢部材が保持された保持部材のみを静止部から取り外すことができるので、付勢部材のメンテナンス等を効率よく行うことができる。
【0011】
請求項4記載の軸シール機構は、請求項1〜3記載の何れかに記載の軸シール機構において、付勢部材が、各薄板を挟んで高圧側と低圧側のそれぞれに設けられていることを特徴としている。
したがって、リーフシールリングを回転軸の外周側へ安定して浮上させることができ、シール差圧が小さい回転軸の低速回転時において、各薄板の各先端が回転軸の周面に接するのをより確実に防ぐことができる。また、付勢部材が各薄板の片側だけに設けられた場合と比べて、各付勢部材に掛かるリーフシールリングの荷重が半減するため、各付勢部材のリーフシールリングの荷重による劣化を抑えることができる。
【0012】
請求項5のタービンは、高温高圧の流体をケーシングに導き、このケーシング内部に回転可能に支持された回転軸の動翼に吹き付けることで、流体の熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生するタービンにおいて、請求項1〜4のいずれか1項記載の軸シール機構を備えたことを特徴としている。上記請求項5記載のタービンによれば、上記請求項1〜4の何れかに記載の軸シール機構と同様の作用を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る軸シール機構及びこれを備えたタービンの各実施の形態について説明を行うが、本発明がこれらのみに限定解釈されるものではない。また、本発明に係るタービンを、ガスタービンにおいて説明するが、本発明のタービンは、特にガスタービンに限定されるものではないことは勿論である。
【0014】
まず、図1〜図7を参照しながら、第1の実施形態について説明を行う。
図1は、ガスタービンの概略構成を示す図である。同図において、符号20は圧縮機、符号21は燃焼器、符号22はタービンである。圧縮機20は、多量の空気をその内部にとり入れて圧縮するものである。通常、ガスタービンでは、後述する回転軸23で得られる動力の一部が、圧縮機20の動力として利用されている。燃焼器21は、圧縮機20で圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させるものである。タービン22は、燃焼器21で発生した燃焼ガス(流体)をその内部に導入して膨張させ、回転軸23に設けられた動翼23eに吹き付けることで、燃焼ガスの熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生させるものである。
【0015】
タービン22には、回転軸23側の複数の動翼23eの他に、ケーシング24側に複数の静翼(静止部)24aが設けられている。これら動翼23eと静翼24aとは、回転軸23の軸方向に交互に配列されている。動翼23eは、回転軸23の軸方向に流れる燃焼ガスの圧力を受けて回転軸23を回転させ、回転軸23に与えられた回転エネルギーが軸端から取り出されて利用されるようになっている。静翼24aと回転軸23との間には、静翼24aと回転軸23との環状空間を通り、高圧側から低圧側に向かって回転軸23の軸方向に流れる燃焼ガスを阻止する軸シール機構として、リーフシール25が設けられている。
【0016】
このリーフシール25は、図2に示すように、静翼24aの内部に保持されたリーフシールリング26と、回転軸23の周方向に互いに隙間27を開けて設けられ、各外周基端28a側がリーフシールリング26内に固定され、各先端28bが回転軸23の周面23aと鋭角を成し、かつ回転軸23の軸方向に幅を有して回転軸23の周面23aに摺接される複数の薄板28とを有している。リーフシールリング26には、各薄板28を間に挟む両側において、高圧領域側には高圧側側板29、低圧領域側には低圧側側板30が、圧力作用方向のガイド板として配置されている。各薄板28は、回転軸23の軸方向に、板厚で決まる所定の剛性を有し、回転軸23の周方向には、柔らかい可撓性を有している。
【0017】
図3は、リーフシール25を図2の矢印Aより見た場合の断面図である。この図に示すように、リーフシールリング26の横断面及び各薄板28は、それぞれT字型をしている。リーフシールリング26は、静翼24aに形成されたT字型の凹部31内に、外周側の頭部が挿入されて保持されている。静翼24aの凹部31は、リーフシールリング26の外形よりもやや大きく形成されており、リーフシールリング26は、この凹部31内にて、回転軸23の軸方向及び径方向に移動可能となっている。
静翼24aには、リーフシールリング26の高圧側の頭部底面Uに対向する壁面U’に、穴32が形成されてる。この穴32内には、一端が穴32の底面に固定され、他端がリーフシールリング26の高圧側の頭部底面Uに固定されたスプリング(付勢部材)33が設けられている。このスプリング33は、リーフシールリング26を、回転軸23より離間させる径方向外側に向かって付勢するものである。
【0018】
図4は、図3におけるリーフシール25のB−B’断面図である。同図に示すように、スプリング33は、回転軸23の周方向に等間隔をあけて複数個が設けられている。したがって、回転軸23の停止時及び低速回転時には、各スプリング33からの付勢力F1により、リーフシールリング26を、静翼24aの凹部31内にて浮上させる(リーフシールリング26を拡大させる)。これにより、回転軸23の停止時及び低速回転時では、リーフシールリング26内の各薄板28の各先端28bが、回転軸23の周面23aと非接触状態となる。
【0019】
リーフシールリング26には、高圧側の頭部底面Uに、アーチ状の導入溝34が、リーフシールリング26の周方向に等間隔をあけて4つ(複数)設けられている。
図5は、図4におけるリーフシール25のC−C’断面図である。同図に示すように、各導圧溝34は、回転軸23の軸方向に沿って長く設けられており、静翼24aの凹部31とリーフシールリング26の高圧側側板29との隙間35に連通している。
【0020】
上記リーフシール25において、シール差圧が大きくなると、回転軸23と静翼24aとの間の高圧側の燃焼ガスが、静翼24aの凹部31とリーフシールリング26との隙間35から入り込み、リーフシールリング26の頭部底面Uと凹部31の壁面U’との間及び導圧溝34を通り、リーフシールリング26の外周面と凸部31の内周面との間に達する。すると、この燃焼ガスの圧により、リーフシールリング26の上面Vには、リーフシールリング26を内周側に押す力F2が働き、高圧側の頭部側面V’には、リーフシールリング26を低圧側に押す力F3が働く。
【0021】
リーフシールリング26の上面Vに働く力F2が、リーフシールリング26を外周側へ浮上させようとする各スプリング33の付勢力F1を打ち消すと、図6に示すように、リーフシールリング26が内周側に移動し、リーフシールリング26の高圧側の頭部底面Uと低圧側の頭部底面Wとが、凹部31の内周面に当接される。したがって、図7に示すように、リーフシールリング26に設けられた各薄板28の各先端28bと回転軸23の周面23aとの隙間が減少し、微少な隙間が形成される。これにより、静翼24aと回転軸23との環状空間を通り、低圧側に向かって回転軸23の軸方向に流れる燃焼ガスを低減することができる。
【0022】
また、図6に示したように、リーフシールリング26の高圧側の頭部側面V’は、力F3で低圧側へ押されるため、凹部31内にて低圧側へと移動し、低圧側の頭部側面X、低圧側の頭部底面W及び低圧側側板30が、それぞれ凹部31の内周面に当接される。したがって、凹部31の内周面とリーフシールリング26の外周面との間に導かれた高圧側の燃焼ガスは、低圧側に抜けることがなく、シールが良好に保たれる。
【0023】
リーフシールリング26が完全に内周側に移動した後も、高圧側の燃焼ガスの圧は、凹部31とリーフシールリング26との隙間35に連通する導圧溝34から、リーフシールリング26の上面Vと高圧側の頭部側面V’とに導かれる。
【0024】
上記構造のリーフシール25によれば、シール差圧が小さくかつ各薄板28に十分な浮上力を受けられない回転軸23の低速回転時には、各スプリング33によってリーフシールリング26が径方向外側に向かって付勢され、静翼24aの凹部31内にて回転軸23から離間する方向に浮上されて、このリーフシールリング26に設けられた各薄板28の各先端28bと回転軸23の周面23aとが非接触状態に保たれる。したがって、回転軸23の回転に伴う各薄板28及び回転軸23の摩耗が防止される。
【0025】
また、シール差圧が大きい時には、導圧溝34より高圧側の燃焼ガスの圧が、リーフシールリング26の外周面と静翼24aの凹部31の内周面との間に導かれ、この燃焼ガスの圧によって各スプリング33の付勢力が打ち消されて、リーフシールリング26が回転軸23に接近する内周側へ移動されるので、各薄板28の各先端28bが回転軸23の周面23aに所定の圧力で接触される。これにより、回転軸23と各薄板28の各先端28bとの間を通って高圧側から低圧側へ漏れるガスの漏れ量が低減される。
【0026】
これより以下、本発明の他の実施形態について、説明する。なお、他の実施形態において、上記第1の実施形態と同様の構成要素については、同符号を付してその説明を省略し、異なる構成要素についてのみ、新たな符号を付してその説明を行う。また、ガスタービンの概略構成については、上記第1の実施形態と同様であるとして説明を省略する。
【0027】
本発明の第2の実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
図8は、回転軸23の軸方向に沿う面でのリーフシール25及び静翼24aの断面図であり、図9は、図8におけるリーフシール25及び静翼24aのE−E’断面図である。これら図8及び図9中の符号36は、波形状の板バネ、符号37は、この板バネ36を収納するために静翼24aの凹部31に形成された長穴である。
このように、第2の実施形態のリーフシール25は、第1の実施形態のリーフシール25において、スプリング33の代わりに板バネ36を付勢部材として採用したものである。
【0028】
第2の実施形態のリーフシール25によれば、スプリング33のように各端部をそれぞれ静翼24aとリーフシールリング26とに固定させる必要がなく、静翼24aに形成された長穴37内に板バネ36を挿入するだけで、簡単に静翼24aとリーフシールリング26との間に板バネ36を設けることができる。
【0029】
また、第1の実施形態と同様に、シール差圧が小さくかつ各薄板28に十分な浮上力を受けられない低速回転時には、各板バネ36によってリーフシールリング26が静翼24aの凹部31内にて回転軸23から離間する方向に浮上されて、各薄板28の各先端28bと回転軸23の周面23aとが非接触状態に保たれるので、回転軸23の回転に伴う各薄板28及び回転軸23の摩耗が防止され、シール差圧が大きい時には、導圧溝34よりリーフシールリング26の外周面と静翼24aの凹部31の内周面との間に導かれた燃焼ガスの圧によって、各板バネ36の付勢力が打ち消されて、各薄板28の各先端28bが回転軸23の周面23aに所定の圧力で接触させるので、回転軸23と各薄板28との間を通って高圧側から低圧側へ漏れるガスの漏れ量が低減される。
【0030】
次に、本発明の第3の実施形態について、図10及び図11を参照して、説明する。
第3の実施形態のリーフシール25は、第1の実施形態のリーフシール25において、スプリング33を静翼24aとは別体の保持部材に保持させたものである。
以下、その保持部材について詳しく説明する。
【0031】
図10中の符号38が、保持部材である。この保持部材38は、リングを径方向に複数分割したセグメント状の部材からなり、静翼24aに取り付けられることで、静翼24aと共にリーフシールリング26の頭部を保持する凹部31を形成する。
図11は、図10におけるリーフシール25と保持部材38とのF−F’断面図である。この図11及び図10に示すように、保持部材38には、静翼24aに向かってボルトが挿入される挿入穴39が、各端部にそれぞれ設けられている。また、各挿入穴39の間には、2つの穴38aが形成され、各穴38a内には、スプリング33がそれぞれ設けられている。
【0032】
保持部材38を静翼24aに取り付けるには、挿入穴39からボルト(図示せず)を挿入し、このボルトの螺子部を静翼24aに形成された螺子穴39aに螺合させる。これにより、保持部材38が静翼24aに取り付けられる。
同様にして複数の保持部材38を静翼24aに取り付けることで、回転軸23の周方向に沿って、リーフシールリング26と静翼24aとの間にスプリング33が設けられる。
【0033】
上記第3の実施形態のリーフシール25によれば、静翼24aの内部に直接スプリング33を取り付ける必要がなく、スプリング33が保持された保持部材38を静翼24aに取り付けることで、簡単にリーフシールリング26と静翼24aとの間にスプリング33を設けることができる。また、静翼24aに穴32あるいは長穴37を加工する場合と比べ、穴38aの加工を容易に行うことができる。さらに、あるスプリング33が劣化または破損した場合、そのスプリング33が保持された保持部材38のみを静翼24aから取り外すことができるので、スプリング33のメンテナンス等を効率よく行うことができる。
【0034】
また、第1の実施形態と同様に、シール差圧が小さくかつ各薄板28に十分な浮上力を受けられない回転軸23の低速回転時には、各スプリング33によってリーフシールリング26が静翼24aの凹部31内にて回転軸23から離間する方向に浮上されて、各薄板28の各先端28bと回転軸23の周面23aとが非接触状態に保たれるので、回転軸23の回転に伴う各薄板28及び回転軸23の摩耗が防止され、シール差圧が大きい時には、導圧溝34よりリーフシールリング26の外周面と静翼24aの凹部31の内周面との間に導かれた燃焼ガスの圧によって、各スプリング33の付勢力が打ち消されて、各薄板28の各先端28bが回転軸23の周面23aに所定の圧力で接触させるので、回転軸23と各薄板28との間を通って高圧側から低圧側へ漏れるガスの漏れ量が低減される。
【0035】
なお、スプリング33の代わりとして、第2の実施形態のリーフシール25と同様に、板バネ36を用いても良い。また、各保持部材38に設けられた挿入穴39及びスプリング33の個数はそれぞれ2つに限定されるものではなく、必要に応じた個数とすれば良い。同様に、保持部材38の長さも必要に応じた長さに設定すれば良い。
【0036】
次に、本発明の第4の実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。
第4の実施形態のリーフシール25は、第1の実施形態のリーフシール25において、各スプリング33がリーフシールリング26の高圧側の頭部底面Uに設けられたものである。
図12中の符号40は、リーフシールリング26の頭部底面Uに形成された穴である。この穴40内に、スプリング33が設けられている。
この穴40及びスプリング33は、図13に示すように、リーフシールリング26の周方向に沿って複数個が設けられている。
【0037】
第4の実施形態のリーフシール25によれば、スプリング33の設けられたリーフシールリング26を、スプリング33の設けられていない既存の静翼24aの凹部31内に取り付けることで、静翼24aの凹部31内に特別な加工を施すことなく、簡単に静翼24aとリーフシールリング26との間にスプリング33を設けることができる。また、スプリング33は、これが静翼24a側に取り付けられた場合よりも取り外しの簡単なリーフシールリング26側に設けられているので、スプリング33が劣化または破損した場合、スプリング33のメンテナンス等が容易に行われる。
【0038】
また、第1の実施形態と同様に、シール差圧が小さくかつ各薄板28に十分な浮上力を受けられない回転軸23の低速回転時には、各スプリング33によってリーフシールリング26が静翼24aの凹部31内にて回転軸23から離間する方向に浮上されて、各薄板28の各先端28bと回転軸23の周面23aとが非接触状態に保たれるので、回転軸23の回転に伴う各薄板28及び回転軸23の摩耗が防止され、シール差圧が大きい時には、導圧溝34よりリーフシールリング26の外周面と静翼24aの凹部31の内周面との間に導かれた燃焼ガスの圧によって、各スプリング33の付勢力が打ち消されて、各薄板28の各先端28bが回転軸23の周面23aに所定の圧力で接触させるので、回転軸23と各薄板28との間を通って高圧側から低圧側へ漏れるガスの漏れ量が低減される。
【0039】
次に、本発明の第5の実施形態について、図14及び図15を参照して、説明する。
図14は、回転軸23の軸方向に沿う面でのリーフシール25及び静翼24aの断面図であり、図15は、図14中におけるリーフシール25及び静翼24aのH−H’断面図である。
これら図14及び図15中の符号41は、リーフシールリング26の頭部底面Uに形成された長穴である。この長穴41内には、付勢部材である波形状の板バネ36が設けられている。
つまり、第5の実施形態のリーフシール25は、第4の実施形態のリーフシール25において、スプリング33の代わりに板バネ36を付勢部材として採用したものである。
【0040】
第5の実施形態のリーフシール25にれば、第4の実施形態のリーフシール25と同様に、板バネ36の設けられたリーフシールリング26を、板バネ36の設けられていない既存の静翼24aの凹部31内に取り付けることで、静翼24aの凹部31内に特別な加工を施すことなく、簡単に静翼24aとリーフシールリング26との間に板バネ36を設けることができる。また、板バネ36は、これが静翼24a側に取り付けられた場合よりも取り外しの簡単なリーフシールリング26側に設けられているので、板バネ36が劣化または破損した場合、板バネ36のメンテナンス等が容易に行われる。
さらに、第2の実施形態のリーフシール25と同様に、スプリング33の各端部をそれぞれ静翼24aとリーフシールリング26とに固定させる必要がなく、リーフシールリング26に形成された長穴41内に板バネ36を挿入するだけで、簡単に静翼24aとリーフシールリング26との間に板バネ36を設けることができる。
【0041】
また、第1の実施形態と同様に、シール差圧が小さくかつ各薄板28に十分な浮上力を受けられない回転軸23の低速回転時には、各板バネ36によってリーフシールリング26が静翼24aの凹部31内にて回転軸23から離間する方向に浮上されて、各薄板28の各先端28bと回転軸23の周面23aとが非接触状態に保たれるので、回転軸23の回転に伴う各薄板28及び回転軸23の摩耗が防止され、シール差圧が大きい時には、導圧溝34よりリーフシールリング26の外周面と静翼24aの凹部31の内周面との間に導かれた燃焼ガスの圧によって、各板バネ36の付勢力が打ち消されて、各薄板28の各先端28bが回転軸23の周面23aに所定の圧力で接触させるので、回転軸23と各薄板28との間を通って高圧側から低圧側へ漏れるガスの漏れ量が低減される。
【0042】
なお、第1〜第5の実施形態では、各スプリング33を、リーフシールリング26の高圧側の頭部底面Uと、この頭部底面Uに対向する静翼24a側の壁面U’との間にそれぞれ設けていたが、図16に示す第6の実施形態のように、リーフシールリング26の頭部上面Vと、この頭部上面Vに対向する凹部31の内周面との間に設けても良い。あるいは、リーフシールリング26の低圧側の頭部底面Wと、この低圧側の頭部底面Wに対向する凹部31の内周面との間に設けても良い。また、各スプリング33は、板バネ36とされても良い。
【0043】
さらに、各スプリング33は、各薄板28を境として高圧側または低圧側のどちらか片側にのみ設けられるものではなく、図17に示すように、高圧側と低圧側とにそれぞれ設けられても良い。
高圧側と低圧側とにそれぞれスプリング33が設けられた第7の実施形態のリーフシール25によれば、リーフシールリング26が回転軸23の外周側へ安定して浮上されるため、回転軸23の低速回転時において、各薄板28の各先端28bが回転軸23の周面23aに接するのがより確実に防止される。また、各スプリング33が各薄板28の片側だけに設けられた場合と比べて、各スプリング33に掛かるリーフシールリング26の荷重が半減されるため、各スプリング33のリーフシールリング26の荷重による劣化が抑えられる。
各スプリング33の代わりに板バネ36を採用した場合においても、同様の効果が得られるのは勿論である。
【0044】
なお、第6及び第7の実施形態のリーフシール25において、付勢部材は、保持部38により静翼24a側に取り付けられるものとしても良い。この場合、第3の実施形態のリーフシール25と同様に、静翼24aの内部に直接付勢部材を取り付ける必要がなく、付勢部材が保持された保持部材38を静翼24aに取り付けることで、簡単にリーフシールリング26と静翼24aとの間に付勢部材を設けることができる。また、ある付勢部材が劣化または破損した場合、その付勢部材が保持された保持部材38のみを静翼24aから取り外すことができるので、付勢部材のメンテナンス等を効率よく行うことができる。
【0045】
また、付勢部材は、リーフシールリング26側に設けても良い。この場合、第4及び第5の実施形態と同様に、付勢部材の設けられたリーフシールリング26を、付勢部材の設けられていない既存の静翼24aの凹部31内に取り付けることで、静翼24aの凹部31内に特別な加工を施すことなく、簡単に静翼24aとリーフシールリング26との間に付勢部材を設けることができる。また、付勢部材は、これが静翼24a側に取り付けられた場合よりも取り外しの簡単なリーフシールリング26側に設けられているので、付勢部材が劣化または破損した場合、付勢部材のメンテナンス等が容易に行われる。
【0046】
また、上記の各実施形態において、付勢部材は、スプリング33または板バネ36に限定されるものではなく、シール差圧の小さい時に、リーフシールリング26を径方向外側に付勢し、シール差圧の大きい時に、リーフシールリング26と静翼24aとの間に導かれた燃焼ガスの圧により、その付勢力が打ち消されるものであれば良い。
【0047】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の軸シール機構及びこれを備えたタービンによれば、下記の効果を得ることができる。
請求項1記載の軸シール機構は、静止部とリーフシールリングとの間に、このリーフシールリングを回転軸より離間させる径方向外側に向かって付勢する付勢部材と、各薄板を境として高圧側の流体圧を、リーフシールリングの外周面と静止部の内周面との間に導く導圧溝とを設ける構成を採用した。この構成によれば、シール差圧が小さくかつ各薄板28に十分な浮上力を受けられない回転軸の低速回転時には、付勢部材によってリーフシールリングを径方向外側に向かって付勢し、静止部内にて回転軸から離間する方向に浮上させ、このリーフシールリングに設けられた各薄板の各先端と回転軸の周面とを非接触状態に保ち、回転軸の回転に伴う各薄板及び回転軸の摩耗を防止することができる。また、シール差圧が大きい時には、導圧溝より高圧側の流体圧をリーフシールリングの外周面と静止部の内周面との間に導き、この流体圧によって付勢部材の付勢力を打ち消し、リーフシールリングを回転軸に接近する内周側へ移動させ、各薄板の各先端を回転軸の周面に所定の圧力で接触させて、回転軸と各薄板の各先端との間を通って高圧側から低圧側へ漏れるガスの漏れ量を低減することができる。
【0048】
請求項2記載の軸シール機構によれば、請求項1の軸シール機構において、付勢部材が、リーフシールリング側に設けられているので、このリーフシールリングを、付勢部材の設けられていない既存の静止部等に取り付けることで、静止部の内部に特別な加工を施すことなく、簡単に静止部とリーフシールリングとの間に付勢部材を設けることができる。また、付勢部材が劣化または破損した場合、付勢部材は、静止部側に取り付けた場合よりも取り外しの簡単なリーフシールリング側に設けられているので、付勢部材のメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0049】
請求項3記載の軸シール機構によれば、請求項1または請求項2記載の軸シール機構において、付勢部材が、静止部とは別体の保持部材に保持され、この保持部材が静止部側に設けられているため、付勢部材をリーフシールリングと静止部との間に取り付ける際は、静止部の内部に、直接付勢部材を取り付けるための特別な加工が必要なく、付勢部材が保持された保持部材を静止部に取り付けることで、簡単にリーフシールリングと静止部との間に付勢部材を設けることができる。また、ある付勢部材が劣化または破損した場合、その付勢部材が保持された保持部材のみを静止部から取り外すことができるので、付勢部材のメンテナンス等を効率よく行うことができる。
【0050】
請求項4記載の軸シール機構によれば、請求項1〜3記載の何れかに記載の軸シール機構において、付勢部材が、各薄板を挟んで高圧側と低圧側のそれぞれに設けられているので、静止部内にて、リーフシールリングを回転軸の外周側へ安定して浮上させることができ、回転軸の低速回転時において、各薄板の各先端が回転軸の周面に接するのをより確実に防ぐことができる。また、付勢部材が各薄板の片側だけに設けられた場合と比べて、各付勢部材に掛かるリーフシールリングの荷重が半減され、各付勢部材のリーフシールリングの荷重による劣化を抑えることができる。
【0051】
請求項5のタービンによれば、高温高圧の流体をケーシングに導き、該ケーシング内部に回転可能に支持された回転軸の動翼に吹き付けることで、前記流体の熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生するタービンにおいて、請求項1〜4の何れかに記載の軸シール機構を備えているので、上記請求項1〜4の何れかに記載の軸シール機構と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る軸シール機構を備えたガスタービンの第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】 同実施形態のリーフシール(軸シール機構)の斜視図である。
【図3】 同実施形態のリーフシールを回転軸の軸線を通る断面より見た断面図である。
【図4】 同実施形態のリーフシールをB−B’線より見た断面図である。
【図5】 同実施形態のリーフシールをC−C’線より見た断面図である。
【図6】 同実施形態のリーフシールを回転軸の軸線を通る断面より見た断面図である。
【図7】 同実施形態のリーフシールをD−D’線より見た断面図である。
【図8】 第2の実施形態のリーフシールを回転軸の軸線を通る断面より見た断面図である。
【図9】 同実施形態のリーフシールをE−E’線より見た断面図である。
【図10】 第3の実施形態のリーフシールを回転軸の軸線を通る断面より見た断面図である。
【図11】 同実施形態のリーフシールをF−F’線より見た断面図である。
【図12】 第4の実施形態のリーフシールを回転軸の軸線を通る断面より見た断面図である。
【図13】 同実施形態のリーフシールをG−G’線より見た断面図である。
【図14】 第5の実施形態のリーフシールを回転軸の軸線を通る断面より見た断面図である。
【図15】 同実施形態のリーフシールをH−H’線より見た断面図である。
【図16】 第6の実施形態のリーフシールを回転軸の軸線を通る断面より見た断面図である。
【図17】 第7の実施形態のリーフシールを回転軸の軸線を通る断面より見た断面図である。
【図18】 従来の軸シール機構を示す図である。
【図19】 従来の軸シール機構を矢印Iから見た場合の断面図である。
【図20】 従来の軸シール機構の断面図である。
【図21】 従来の軸シール機構の断面図である。
【符号の説明】
23 回転軸
23a 周面
23e 動翼
24 ケーシング
24a 静翼(静止部)
25 リーフシール(軸シール機構)
26 リーフシールリング
27 隙間
28 薄板
28a 外周基端
28b 先端
33 スプリング(付勢部材)
34 導圧溝
36 板バネ(付勢部材)
38 保持部材

Claims (5)

  1. 回転軸と静止部との環状空間を通って、前記回転軸の軸方向に流れる流体を阻止する軸シール機構において、
    前記静止部の内部に保持されたリーフシールリングと、前記回転軸の周方向に互いに隙間を開けて設けられ、各外周基端側が前記リーフシールリング内に固定され、各先端が前記回転軸の周面と鋭角を成し、かつ前記回転軸の軸方向に幅を有して前記回転軸の周面に摺接される複数の薄板とを有し、前記静止部と前記リーフシールリングとの間には、該リーフシールリングを前記回転軸より離間させる径方向外側に向かって付勢する付勢部材と、
    前記各薄板を境として高圧側の流体圧を、前記リーフシールリングの外周面と前記静止部の内周面との間に導き、前記付勢部材の付勢方向とは逆方向に前記流体圧を前記リーフシールリングに作用させるとともに、前記リーフシールリングを低圧側に押圧し、前記リーフシールリングの頭部側面、頭部底面、及び低圧側側板が前記静止部の内周面のうちこれらリーフシールリングの頭部側面、頭部底面、及び低圧側側板に対向する位置で当接するように作用させる導圧溝とが設けられていることを特徴とする軸シール機構。
  2. 前記付勢部材は、前記リーフシールリング側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の軸シール機構。
  3. 前記付勢部材は、前記静止部とは別体の保持部材に保持され、該保持部材が前記静止部側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の軸シール機構。
  4. 前記付勢部材は、前記各薄板を挟んで高圧側と低圧側のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の軸シール機構。
  5. 高温高圧の流体をケーシングに導き、該ケーシング内部に回転可能に支持された回転軸の動翼に吹き付けることで、前記流体の熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生するタービンにおいて、
    請求項1〜4の何れか1項記載の軸シール機構を備えたことを特徴とするタービン。
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