JP3701925B2 - 水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム及びメンテナンス方法並びにその工法 - Google Patents

水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム及びメンテナンス方法並びにその工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム及びメンテナンス方法並びにその工法に係り、特に小口径管によって大容量の海洋深層水を取水するシステム及びメンテナンス方法並びにその工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、海洋表層水又は深層水を取水するシステムとしては各種の提案がなされている。例えば船体を洋上に係留して、表層水又は深層水をポンプ等で汲み上げる技術、大口径の管体を海底の所定深水位置に敷設して、この大口径の管体から表層水又は深層水を汲み取る技術等が知られている。
【0003】
船体を洋上に係留して、表層水又は深層水をポンプ等で汲み上げる技術としては、「移動式取水船」方式があり、陸上設置型に比べ、各種施工が不要であり、施工費用等を大幅に節減できる。つまり、大・中都市から離れた場所に施工する陸上設置型に比べ、表層水又は深層水の搬入時Mm単価も約1/5から1/10となる。
【0004】
上記船体で取水するシステムの場合、洋上へ船体を移動して行う必要があり、表層水又は深層水を移動するための温度管理や移動量、船体と接続して表層水又は深層水を陸上に移動する等が必要であった。例えば、取水船方式は毎日(約20〜25日/月)海上でのオペレーションが必要であり、安定供給、低水温保持等に不都合がある。
【0005】
また、大口径の管体を用いる技術では、陸上設置型として内径200mm−300mmの高密度ポリエチレン管を水深300m−700mの海域まで敷設し、海岸に設置されたポンプで1000−3000m/24時間取水しているのが現状である。
【0006】
しかしこの技術は、高密度ポリエチレン管の購入コスト、海底掘削・埋め戻しコスト、パイプ敷設コストならびに漁業補償費等により、総事業費が相当高価なものになり、また漁業関係者との交渉にも相当な時間が必要である。従って、この技術は公共事業として採用されることが多く、民間事業用としては馴染まない。
【0007】
また、大口径の管体を用いて表層水又は深層水を汲み上げるためには、先ず大口径の管体を敷設する必要があった。このため、大型の敷設台船に大口径の管体を載置して敷設する必要があったり、陸岸近くは波風の影響を受けやすいため、敷設管を保護する目的で、管体を埋設したり、固定したりする必要があるが、大口径であるために、大がかりの前工事が必要となっていた。
【0008】
例えば、海洋表層水又は深層水取水用パイプを海岸浅水域に敷設する場合、従来パイプを保護するために−60mまでトレンチを掘り、パイプを入れて埋設している。海岸が岩盤であったり、防波堤があったりすると工事費は高く、工期は長く、大きなネックになっている。
【0009】
また海岸近くの陸上に陸上モータポンプを設置し、取水することも考えられる。これは陸地に近い場所にモータポンプを設置し、海洋深層水または表層水を取水する方法であるが、このためには陸の近くに大きなポンプピットを構築して、陸上モータポンプを設置する必要があった。このように陸上モータポンプによる取水方法は、ポンプピットの構築に費用がかかり、大がかりとなるだけでなく、陸上から海洋深層水または表層水を吸い上げることは、水圧等の関係から所定深さに至る距離に限度があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、前記各不都合は、取水するためのパイプが大口径である点に着目して、本発明をなしたものである。すなわち、本発明の目的は、敷設工事が容易で、取水装置のメンテナンスが容易な水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム及びメンテナンス方法並びにその工法を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的は、海底に沈殿している、又は将来沈殿するかもしれない有害物質の吸引を防止することのできる水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム及びメンテナンス方法並びにその工法を提供することにある。
【0012】
さらに本発明の目的は小口径のパイプ又はホースを使用することにより、容易に取水装置を海面に上げてメンテナンスを可能とする水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム及びメンテナンス方法並びにその工法を提供することにある。
【0013】
さらにまた、本発明の目的は取水装置のメンテナンス作業をしながらも同時に取水処理を継続して行うことを可能とし、また複数の取水装置を低コストで設置することが可能な水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム及びメンテナンス方法並びにその工法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明に係る水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムによれば、陸上と深層水取水位置との間に敷設された小口径のパイプ又はホース及び電源ケーブルと、前記パイプ又はホースの先端に配設された取水装置と、を備えた水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムであって、前記取水装置は、海底面より所定距離はなれて配置され深層水取水位置での水圧に耐える駆動源を備えた取水ポンプと、該取水ポンプに一体に設けられ、前記取水ポンプの上方で海底に沈殿している物質を吸い込まないように配置された吸込口とを備え、前記取水ポンプは傾斜した取水ポンプ配置部が形成された筐体に配設され、前記取水ポンプ配置部に前記取水ポンプを前記吸込口が海面側に位置するように配置しており、前記吸込口よりも下方位置で前記取水ポンプに前記小口径のパイプ又はホースが接続されると共に、該小口径のパイプ又はホースは海底に沿って配設されることにより解決される。
【0015】
のようにすると、海底に沈殿し又は将来沈殿するかもしれない有害物質の吸引を避けることが可能となる。また前記電源ケーブルは制御・信号用光ファイバーケーブルと一体に形成すると好適である。
【0016】
またさらに、水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムによれば、前記小口径のパイプ又はホースは分岐部を有しており、該分岐部によって分かれた各先端に前記取水装置がそれぞれ配設された構成とすることにより、例えば、取水装置のメンテナンスを行う場合、一方のパイプまたはホースのメンテナンス作業をしながら同時に他方のパイプ又はホースにおいて取水を行うことが可能となる。
【0017】
前記課題は、本発明の水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムによれば、陸上側に配設された水中モータポンプと、該水中モータポンプと深層水取水位置との間に敷設された小口径のパイプ又はホース及び電源ケーブルと、前記パイプ又はホースの先端に配設された取水装置と、を備えた水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムであって、前記取水装置は、海底面より所定距離はなれて配置され深層水取水位置での水圧に耐える駆動源を備えた取水ポンプと、該取水ポンプに一体に設けられ、前記取水ポンプの上方で海底に沈殿している物質を吸い込まないように配置された吸込口とを備え、前記取水ポンプは傾斜した取水ポンプ配置部が形成された筐体に配設され、前記取水ポンプ配置部に前記取水ポンプを前記吸込口が海面側に位置するように配置しており、前記吸込口よりも下方位置で前記取水ポンプに前記小口径のパイプ又はホースが接続されると共に、該小口径のパイプ又はホースは海底に沿って配設されること、により解決される。
0018
このような構成によれば、パイプ又はホースの先端に配設された取水装置に支障が生じた場合(例えばモータポンプの故障など)、陸上側に配設された水中モータポンプをバックアップとして稼動させることで、取水作業が中断することのないように構成することが可能となる。
0019
前記課題は、本発明に係る水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水システムの工法によれば、小口径のパイプ又はホースを敷設する工程と、パイプ又はホースの先端に取水装置を配設する工程と、を有する水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムの工法であって、敷設船に配設されたリールに巻回された小口径のパイプ又はホースを埋設用トレンチの中又は弧状推進工法によって掘られた地中の穴に引き込み、陸上からウインチで引っ張るか、又は弧状推進工法で使用したビットに接続して陸側に引き出すことにより解決される。
【0020】
前記課題は、本発明に係る水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水システムの工法によれば、小口径のパイプ又はホースを敷設する工程と、パイプ又はホースの先端に、海底面より所定距離はなれた位置に傾斜した取水ポンプ配置部が形成された筐体と、前記取水ポンプ配置部に吸込口が海面側に位置するように配置された取水ポンプとを備えた取水装置を配設する工程と、を有する水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムの工法であって、前記小口径のパイプ又はホースを敷設する工程は、小口径のパイプ又はホースを陸地から所定距離埋設した後、小口径のパイプ又はホースの先端を海底面上に露出させ、敷設船に配設されたリールに巻回された小口径のパイプ又はホースと前記海底面上に露見させた小口径のパイプ又はホースの先端と接続し、リールから小口径のパイプ又はホースを繰り出して所定距離間敷設し、前記パイプ又はホースの先端に取水装置を配設する工程は、前記吸込口よりも下方位置で前記取水ポンプに前記小口径のパイプ又はホースを接続すると共に、前記小口径のパイプ又はホースを海底に沿って配設することにより解決される。
0021
このとき前記小口径のパイプ又はホースには電源ケーブルを付設し、海底曝露部のみ所定間隔で小口径のパイプ又はホースと電源ケーブルとを固定する。また、小口径のパイプ又はホースを陸地から所定水深まで配設する手段は、弧状推進工法又はトレンチを掘り埋設する工法を含むものである。
0022
なお、ここで「弧状推進工法」とは、計画軌跡上を高精度制御技術により掘進する高指向性、高速の超小径(約120mmφ〜150mmφ)の削孔法で、ほとんどすべての土質、岩質に対応できる。土質、パイプ径により1000m〜1500mの距離を連続に掘進し、パイプ又はホースを引き込むことが可能であり、海底の自然破壊を行わず、汚泥が発生せず、削進距離が長くなれば掘削、埋め戻しよりも安価であり、防波堤などの障害物は問題としない。特に漁協の賛同を得やすく、又、海の状況に左右されないので工期が早く、波による先掘の心配がなく、メンテナンスは不要等の利点がある。「弧状推進工法」の詳細は後述する。
0023
以上のように、パイプ又はホースが小口径であるため「弧状推進工法」で海岸から海面上を掘削のため荒らすことなく地中ボーリングで孔を掘り、パイプ又はホースを引き込むことが可能となる。
0024
前記課題は、本発明に係る水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水装置のメンテナンス方法によれば、陸上と深層水取水位置との間に敷設された小口径のパイプ又はホース及び電源ケーブルと、前記パイプ又はホースの先端に配設された取水装置と、を備えた水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムのメンテナンス方法において、マーカーブイ等により取水装置の位置を確認した後、水中探査装置を海中に降ろし、該水中探査装置を用いて、取水装置に形成された引き揚げ用着脱部材にメンテナンスを行う船体と連結された索条とを連結し、この索条を引き揚げるものであって、前記取水装置の引き揚げをダイナミック・ポジショニング推進装置を装備する作業船により、パイプ又はホースに許容以上の曲げ、捻れを生じさせないためのコンピュータプログラムに従った操船によって行い、海底の取水装置を引き揚げてからメンテナンス処理を行うことにより解決される。
0025
パイプ又はホースが小口径であるために、巻取りリールのサイズ(直径)が極めて小さく、その製作・敷設工事が従来工法に比べて極めて容易に成る。またポンプ・モータのメンテナンスのために作業船を使って海面に容易に引き上げることが可能となる。メンテナンス終了後、海底に戻すのも容易である。
0026
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
0027
小口径管大容量海洋深層水取水システムは、陸上と取水位置との間に小口径のパイプ又はホース及び電源ケーブルを敷設し、さらにパイプ又はホースの先端に取水装置を配設し、取水装置に、取水ポンプを配設して構成したものである。
0028
ここで、小口径のパイプ又はホースとは、小口径(115mmφ−80mmφ)の高密度ポリエチレン管約115mmφ、コイルド・チュービング約80−115mmφなどである。ここで、コイルド・チュービングの化学成分は、C:.10−016、Mn:.70−.90、P:.025 Max、S:.005〜0.06 Max、Si:.30−.50、Cr:.50−.70、Cu.25 Max、Ni:.20 Max、Mo:21 Maxである。このときの物理特性は、最小耐力(Minimum Yield Strength)は、70,000〜80.000psi、最小引張強さ(Minimum Tensile Strength)は、80,000〜90,000psi、最小伸び(Minimum Elongation)は、28〜30%、最大硬度(Maximum Hardness)は、Rockwell C22、であり、コイルド・チュービングには窒素などの気体を封入してある。なお、本例では約150mmφケーシングパイプ、80〜115mmφホース又はパイプ、約50mmφ電源ケーブル、削孔 80〜115mmφホース又はパイプを用いている。
0029
陸上と深層水取水位置との間に小口径のパイプ又はホース及び電源ケーブルを敷設する手段として、陸地と、この陸地から所定距離の間に配設する手段と、所定距離配設した後にさらに所定距離を敷設する手段とに分けて説明する。
0030
なお本明細書において「電源ケーブル」には、文字通りの電源と接続され電力を供給するためのケーブルと、このケーブルを利用して制御等を行うための双方向制御情報・信号を利用する場合と、電源ケーブルとは別に、後述する制御・信号用光ファイバーケーブル等を利用するものを含むものとする。「電源ケーブル」を情報通信制御用として使用する技術は、信号線及び電力線を重畳させるもので公知であり、例えば特開2000−341181号公報、特開2000−165304号公報、特開2000−32686号公報などで示される技術を利用することが可能である。
0031
小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12を陸地から所定距離の間に配設する手段としては、次の二つの例を示す。先ず第1の例としては、図1で示すように、従来と同様に、前工事により敷設管13を埋設したり、直接、小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12を埋設する場合である。この場合には、従来技術と同様に、不図示の陸上クレーン、クレーン台船により所定位置まで海底を掘削する。当然のことながら、クレーン台船による場合には係留ワイヤー等により台船を固定し、掘削後、小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12或いはこれらを収容する保護管体を埋設し、養生作業を行う。この場合にも、小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12であるので、従来のような大口径の管体の埋設作業と異なり、大幅に少ない掘削作業となる。
0032
第2の例としては、弧状推進工法による掘進方法を採用する場合である。すなわち、図2乃至図5で示すような工法を行うものであり、陸側に掘進装置21を配置し、掘進を行い、所定量の掘進に続いて、敷設船31に搭載されたリール32に、巻回された小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブ12を、陸側へ引き込むものである。なお、陸上側から小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12を配設するように構成してもよいが、この場合には、陸上側から敷設した小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12の先端と、深層水の取水位置まで敷設する小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12と、を接続する作業を行う。
0033
この掘進装置21には、ドリルパイプを回転させたり、押し込んだり、引き込む機能を備えたドリル装置22を備えている。ドリル装置22は、ドリルパイプ23、非磁性カラー24、測定器25、ベントサブ26、マッドモータ27、ビット28が接続されている。またドリル装置22にはポンプユニット(不図示)が設けられており、掘削液をドリルパイプ23内に送ってマッドモータ27を回転させて、ビット28のノズルからジェットを噴出させる。このようにビット28の回転とジェット噴射により掘進させて穴を掘る。なお、測定器25によってモニターされた穴の方向・傾斜・位置に応じてジェット噴射の傾向あるいはベントサブ26の作用によって穴の軌跡をコントロールするものである。なお、穴は適正な掘削流体で常に満たして安定させる。
0034
このようにして最初の穴の到達側からリーマー29をドリルパイプ23に接続し、回転させながら引き込み穴を広げる。そして、海底側に突き出たリーマー29と、敷設船31のリール32に巻回された小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12の端部とを連結し、陸側へ引き込むものである。なお、陸側から小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12を押し込むようにして敷設することもできることは、前述のとおりである。また小口径のパイプ又はホース11と、電源ケーブル12は一つのリールに巻回させても、それぞれ別のリールへ巻回させておいてもよい。また、電源ケーブル12には陸上側にトランス45を配置しているが、後述するように取水装置41側にトランス45を配置するように構成してもよい。
0035
このようにして、概略−60m地点で地中から海底面に先端を出し、そのパイプ又はホース11を取水管の一部として利用するか、他管を挿入するケーシング13に利用する。市販のコイルドチュービングを使用する場合の最大内径は31/2”(88.9mmφ)であり、(41/2”114mmφまで製作可)、陸上にポンプを設置して取水する場合、管内流速をキャビテーション限界の約1m/秒とすると20m/時、480m/日となる。この数字はパイプ長に反比例して減少し、数km長になると取水量は大幅に減少する。なお、いずれの手段を利用するかは、その時々の各種状況に合わせて任意に設定することが可能である。
0036
次に、所定距離埋設した小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12を、深層水取水位置へ敷設する手段について説明する。上記小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12は、予め敷設船31にリール32に巻回されているが、パイプ又はホース11の先端部が、スイベル29aを介してリーマー29と接続されて、陸上側へ引き込む。そして、引き込みが終了すると、敷設船31を運行して深層水取水場所まで、小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12の海底に敷設を行う。小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12を海底へ敷設するには、小口径のパイプ又はホース11であるので、敷設船31にリール32を搭載し、このリール32に小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12を巻回しておくことが可能であり、従来のような大口径の管体と異なり、巻取りリール32のサイズ(直径)が極めて小さく、その製作・敷設工事が従来工法に比べて極めて安く、且つ容易に敷設をすることが可能となる。
0037
電源ケーブル12(6600BOLT3相)とコントロールケーブル(光ファイバーケーブル)は同じコンダクターの中に入れ、直径約55mφの一本のケーブルとして、パイプ又はホースを沿わせて敷設。「弧状推進工法」によるボーリング孔に80mmφ〜115mmφのパイプ又はホース11と、約55mmφのケーブルを同時に2本挿入することは可能であり、−60mまでのケーブルの保護は万全である。それより以深はパイプ又はホース11にケーブルをクランプで適当なピッチで固縛することにより海底での潮流により別々の動きをしないようにする。
0038
次に、電源ケーブル12について説明すると、本例ではパイプ又はホース11の先端の取水ポンプまでの電圧降下を小さくするために6600Voltを使用している。例えば、図8は、陸側にある電源と、取水装置41との間を電源ケーブル12を介して、6600Voltで対応の取水ポンプと接続している。また、6600V/440Vトランス(防水型)を用いることにより、440Volt対応の取水ポンプと接続している。
0039
本例の制御・信号用光ファイバーケーブルは、電源ケーブル12の3心ストランドの内部に光ファイバーケーブルを内蔵させ、ポンプ駆動用モータ内の1.防水OILの圧力、2.防水オイルの温度、3.海水の侵入の検知、4.ポンプ及びモータの位置を海上の作業船に知らせるためのマーカーブイの着脱信号、5.ポンプ地点の海水圧を検知して水深の確認等に使用しているものである。
0040
そして、深層水を採取可能な水深位置(この位置は予め測定等で検知しておく)で、小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12と取水装置41とを接続する。
【0041】
図10は、参考例に係る取水装置を示すものであり、取水装置41は、鋼製ケージ42内に水中ポンプ駆動用モータ43及び取水ポンプ44、トランス45が配設され、浮力体46、鋼製ケージ42の引き揚げ用着脱装置47、コイルドチューブ48、シンカー51、1〜2個の水中フローター(浮体、マーカーブイなど)52、電触型の離脱装置53などが付設されている。これらのうちポンプ44,モータ43,トランス45等は、上記鋼製ケージ42の中に取付けて保護されている。より詳しくは、取水装置41は、全体の水中重量は約2トン,空中重量は約4トン,潮流対策として水中重量約3トン(潮流推抗により決定)のシンカー51を海底に置き上向きの張力約2トンを与えるように浮力体46の浮力を決定しケージに取付ける。
【0042】
水ポンプ44は、120m/H〜140m/H容量のものであり、この取水ポンプ44を深海側に設置することによりキャビテーションをなくし、小口径のパイプ又はホース11内の流速を6〜7m/秒にすることにより、取水量は、従来の120m/時、140m/時から、2880m/日、3360m/日へと大幅に増加することが可能となる。これは従来工法による内径250mmφ〜300mmφの高密度ポリエチレン管を使用した場合と同じ能力であり、1m当たりの工事費は数分の1となる。
0043
取水装置41には水中ポンプ駆動用モータ43が配設されるが、この水中ポンプ駆動用モータ43は、30kg/cm〜70kg/cmの水圧に耐えるものであり、この水中ポンプ駆動用モータ43には油を充填し、ゴム風船とスプリングで構成されたパッシブ圧力コンペンセーターシステム(ダイヤフラム)により常に内外の水圧差が一定になるように構成され、モータ内への水の侵入を防ぐことが可能である。このため、後述する海底から海面への水深変化にも充分に対応可能となっている。
0044
ここで、パッシブ圧力コンペンセーターについて説明すると、パッシブ圧力コンペンセーターは、水中用浚渫機(ドレッジ)ポンプ・ユニットの補助的部分であり、電動モータに接続されている。パッシブ圧力コンペンセーターは、どんな深さでも使用可能であり、電動モータ内への水の浸入を防ぐため、電動モータ内の圧力を、周囲を支配している海水圧よりも多少高くなるようにすること。コンペンセーターは、様々な深さに応じて周囲の水圧を検知できるように構成されている。
0045
パッシブ圧力コンペンセーターは、主たる要素である円錐ドラムカバーと土台と、ゴム薄膜・レベル指示器・ネジばね等から成っている。これら2つの主要部分は、特別なゴム薄膜によってお互いに接続されている。コンペンセーターの内部は、油圧オイルで完全に満たされている。2つの主要部分は、5セットの予め張られたネジばねによってお互いに引っ張られており、電動モータ内の過圧力を決定している。支配的な加圧力値は、システム内オイルの量と、温度によって左右される。電動モータの充満手順中、外部温度指示器によって、パッシブ圧力コンペンセーターを望ましい圧力へ調節することが可能となる。作動中のパッシブ圧力コンペンセーターを鋭利な物体から保護するために、特別な保護キャップが備えられている。保護キャップは、パッシブ圧力コンペンセーターの上方に位置する、分離したパーツである。
【0046】
た水中ポンプ駆動用モータ43には油温、油圧、海水侵入を検知できるセンサーを内蔵し、リード線をモータ駆動用ケーブルに内蔵させて陸上まで配線し、陸上の監視板に接続されている。
0047
深海での取水装置41(水中ポンプ、駆動モータを含む)の設置は、コイルドチューブ48又は小口径の高密度ポリエチレン管の柔軟性を利用し、海底より約10m上のポイントで保持するために、シンカー51と1〜2個の水中フローター(浮体)52で構成した保持装置を設置している。海底より10m程度上方の位置で、かつポンプ44の吸込口(不図示)を上に向けて配設する。このように構成することにより、海底に蓄積している、又は将来蓄積する可能性のある有害物質の吸引を防ぐことが可能となる。
【0048】
た、電触型の離脱装置53を作動させて、マーカーブイ52を水中から離脱させて海面に浮かせ、位置を知らせる。この海面上のマーカーブイ52によって、取水装置41の海底の位置に向けて、小型水中探査船(R.O.V)を作業船から降ろして、ケージ引き揚げのための着脱装置と、作業船のウインチ先端に配設された係合手段とを連結し、ウインチ等により取水装置を引き揚げる。
【0049】
なお、図11で示す参考例に係る取水装置の例では、1段マーカーブイ52bを海面から−20m程度の位置、二段マーカーブイ52aを取水装置41から海面方向に100m程度の位置に配設した例を示すものである。また、二段マーカーブイ52a、つまり下部水中フローターには位置を知らせるためのトランスポンダ(不図示)を配設し、メンテナンスの際、作業船が海面上のフローターの流出事故により位置確認ができない場合のバックアップとしている。
0050
また、電触型の離脱装置53により、フローター52を海面に浮上させ、ポンプ、モータは鋼製ケージ42の中に収納し、シンカー51の引張荷重、作業船よりの引き上げ、下げ荷重をケージ及びケージにつくパットプレートで支持し、ポンプ、モータにはできるだけ荷重をかけないように構成している。なお、シンカー51は、水中重量約3トンのものを用いている。
0051
取水装置41(ポンプ、モータを含む)のメンテナンスのために、取水装置41自体を作業船上に引き上げる。小口径のパイプ又はホース11及び電源ケーブル12であるコイルドチュービング又は高密度ポリエチレン管は極めて小さい曲率半径で曲げることが可能であり、また引張強度が90,000PSI(63kg/mm)と強靱であるため、作業船上のウインチで巻き上げても破損することはない。しかし潮流により作業船がコイルドチュービング又は高密度ポリエチレン管の髷を助長するような方向に流されることを避け、常に一定カテナリーで巻き上げ、巻き下げをできるように、あらかじめ組み込まれたソフトプログラム通りに船を移動できるようDPS(Dynamic PositioningSystem 自動船位保持装置)を装備し、また船上に収納した後のチューブ又は管の捻れ、よりを避けるため船の方向をパイプ又はホース11及び電源ケーブル12の船上に軸を合わせる自動方位保持装置も装備する。このようにして、緊急点検、定期点検ともに安全に行うことができる。
0052
なお、万が一メンテナンスが遅れたときのために陸上に20m/H〜36m/Hクラスのポンプを設置し、最小限の取水を確保するバックアップも有効である。
0053
また、海底のポンプ、モータの引き上げ、引き下げのためのワイヤーロープ又はナイロンロープを本体のより着脱する装置をR.O.V(Remote Obsenetion Vehicle)を使って作業させることも可能である。
0054
またケーブルの保守のために、ケーブルトラッキング手法を用いることも可能である。つまり、ケーブルの位置を測定するために、ケーブル内部の給電線に低周波数の交流電流を流し、その交流電流によって発生する交流磁界を、探索ロボットを用いて、探索ロボット(飛行機タイプのものであれば前翼の内部)に配置した2台の3軸直交型磁気センサで探知する。実際に海底ケーブルに流す電流は数十mAと微小なので、ケーブルを効率よく探知して、埋設深度を正確に測定するためには、ロボット自身から発生する磁気雑音を低減し、検知信号のS/Nを高めることが重要である。そして雑音源である電気モータに磁気シールドを施すことにより、磁気雑音レベルを1/10程度に減衰させることができる。さらに、帯域幅±1Hzの狭帯域バンドパスフィルタを用いることにより、等価的雑音レベルを0.05nt(nano Tesla)以下に押さえ、これにより、ケーブルに50mAの交流電流が流れている場合、60mの距離から10dBのS/Nでケーブルを探知することができる。
0055
次に、取水装置41(ポンプ及びモータを含む)のメンテナンス方法について説明する。前記のように配設された取水装置41を定期的にメンテナンスするには、取水装置41に形成された引き揚げ用着脱部材にメンテナンスを行う船体と連結された索条とを連結する。そして、この索条を引き揚げる。このとき、取水装置41の引き揚げをダイナミック・ポジショニング推進装置を装備する作業船により、パイプ又はホース11に許容以上の曲げ、捻れを生じさせないためのコンピュータプログラムに従った操船によって行う。そして、海底の取水装置41を引き揚げてからメンテナンス処理を行う。メンテナンス処理の内容は、通常行う公知のものであるので、ここでは省略する。
0056
上記取水装置41を引き揚げるときに、その位置を確認することが可能なように、各種の手段を用いる。本例では前述した電触型着脱装置53を作動させマーカーブイを海面に浮かせ位置を知らせる技術を用いている。
0057
また、取水装置41の引き揚げは、ケージ(取水装置41)引き揚げ用着脱装置47、R.O.V.(Remote Obsenetion Vehicle)により作業を行う。これは、予め潮流と、作業船の位置と、取水装置41の位置とを確認し、かつ常時流動する潮流、風向き等の作業船への影響を計算し、常にパイプ又はホース11に負担がかからないようにして、取水装置41を引き揚げるものである。R.O.V.自体は公知技術であるので、その内容は省略する。
0058
次に引き揚げ作業自体について、より詳しく説明すると、マーカーブイ等により取水装置41の位置を確認したあと、図12で示すように、作業船61から水中探査装置62を降ろし、ケージ42に配設された着脱装置47と、引き揚げのために作業船61に配設された引き揚げワイヤ63を降ろし、ワイヤ63の係合部64と、ケージ42の着脱装置47とを連結する。そして、引き揚げワイヤ63により取水装置41を引き揚げる。このとき、潮流により作業船61が、パイプ又はホース11又は電源ケーブル12であるコイルドチュービング又は高密度ポリエチレン管の曲げを助長するような方向に流されることを避け、常に一定カテナリーで巻き上げ、巻き下げをできるように、あらかじめ組み込まれたソフトプログラム通りに船を移動できるようDPS(Dynamic Positioning System 自動船位保持装置)で操作される。また船上に収納した後の、パイプ又はホース11及び電源ケーブル12の捻れ、よりを避けるため、自動方位保持装置により、作業船61の方向がパイプ又はホース11及び電源ケーブル12と作業船61上の軸が一致するように制御される。なお、海面の所定位置にシンカー51が上昇したときに、別のウインチ等により、シンカー51を引き揚げるようにすることも可能である。
0059
なお図13に示すように、前記水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムにおいて、前記取水装置を2本に分岐したパイプ又はホース11にそれぞれ設けた構成としても良い。すなわち、本例のパイプ又はホース11は、陸上に通じる1本の小口径のパイプ又はホース11の先端に、二股に分かれた分岐マニホールド14を付設し、この分岐マニホールド14の分岐部に、それぞれ、パイプ又はホース11が取着された構成となっている。
0060
そのとき、分岐マニホールド13は取水装置の設置された箇所の水深(図示せず)の約3倍程度の距離(L)陸地側に向かった位置に付設するのが好適である。前記分岐マニホールド13の付設位置を、取水装置の設置された箇所の水深の約3倍程度の距離とすることにより、メンテナンス作業のための取水装置の引き揚げ時に、常時流動する潮流、風向き等で多少パイプ又はホース11が流されても、長さに余裕があるため負担がかかることが軽減される。また適度な長さを有するため捻じれを生ずることもなく、作業をする際に邪魔にはならない丁度良い長さを得ることができる。
0061
そして、2本に分岐したパイプ又はホース11の先端に、それぞれ取水装置が設けられている。なお、分岐マニホールド14の分岐部に接続されるパイプ又はホース11は、陸上に通じる1本のパイプ又はホース11と同じサイズのものを用いる。さらに前記実施例と同様に、電源ケーブル12が、陸上に通じる1本のパイプ又はホース11、及び分岐したそれぞれのパイプ又はホース11とともに配設される。
0062
このように2本に分岐したパイプ又はホース11に、取水装置が設けられた構成とすることにより、一方のパイプ又はホース11のメンテナンスを行いながら、同時に他方から取水することができるので、メンテナンス作業を行っているときにおいても取水処理を中断することなく継続して行うことが可能となり、常に一定の取水量を確保することができる。
0063
また、2本に分岐したパイプ又はホース11に、取水装置が設けられた構成とすることにより、分岐した2本のうちそれぞれを切替えて、隔日に交互に取水作業を行うことができるため、1本で取水を行うよりも取水装置にかかる負担を軽減することができる。
0064
また、小口径のパイプ又はホース11を用いているため、取水装置の設置作業や敷設作業が従来工法よりも容易となるため、複数の取水装置を低コストで設置することが可能である。
【0065】
お、水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムにおいて、取水装置を、2本に分岐したパイプ又はホース11にそれぞれ設けた構成として使用する場合、2本に分岐させるポイントは、海底が緩傾斜で比較的浅い場所とすると好適である。これは、作業時において、ダイバーによる飽和潜水が容易になるためである。
0066
なお、本実施例では、小口径パイプ又はホース11に二股に分かれた分岐マニホールド14を取着し、その分岐マニホールド14に小口径パイプ又はホース11をそれぞれ接続するという構成を有しているが、あらかじめ先端が二股に分岐した小口径のパイプ又はホース11を用いても良い
【0067】
図14及び図15は本発明の一実施形態に係る取水装置を示すものであり、図14は取水装置の例を示す概略構成説明図、図15は図14で使用する水中モータポンプの一例を示す説明図である。本例の取水装置は、格子状の筐体Kに水中モータポンプMP1を配設したものであり、格子状の筐体Kは、下部に土台K1が形成され、この土台K1には海底に没入しないように、脚部(3本或いはそれ以上)が形成されている。脚部の先端は海底に突き刺されるように鋭角になっている。また筐体Kには、上部に引き揚げ用の係合部K2が形成され、この係合部K2にフック等(図示せず)を引っ掛けて、取水装置の引き揚げが可能になっている。水中モータポンプMP1の一端側が小口径のパイプ又はホース11(12)と接続されており、他端側がモータと、吸込口102となっているものである。また格子状の筐体Kには、傾斜した水中モータポンプ配置部K3が形成されており、この水中モータポンプ配置部K3に、水中モータポンプMP1を吸込口102が海面側に位置するように配置している。
【0068】
なお水中モータポンプMP1は、ストレーナー109付のケーシング内に水中モータポンプを配置したものであり、図15で示すように、スプラインプロテクター71、ワッシャー72、スリンガー73、上部ブラケット74、フィルター75、オーリング76、ステーター77、ローター78、下部ブラケット79、ピン80、スラストベアリング81、スラスト受座82、ピン/受座83、ロック84、スラストサポート85、調整スクリュー86、ダイアフラム87、スクリュー88、カップ/スプリング89、スプリング/ダイアフラム90、カバー91、スラストハウジング92、キー93、ボルト94、オーリング95、ベアリング96,97、スタッド98、シャフト99などから構成されている。他の構成や動作等は前記した参考例に係る取水装置と同様である。
0069
図16乃至図19は参考例に係る陸上設置型深層水取水施設を示すものであり、図16は陸上設置型深層水取水施設の説明図、図17は陸上側に配設された水中モータポンプの構成例を示す説明図、図18は図17のX−X及びY−Yによる矢視説明図、図19は水中モータポンプの一例を示す説明図である。
0070
本例では、陸のすぐ近くにケーシング101を設置し、ケーシング101の中にスリーブで覆われた水中モータポンプMP2を据え付ける。スリーブの下側からはチューブ11が延びており、その先端には吸込口102が取り付けられ、吸込口102はシンカー103と索条104で係留され、ブイ105と連結されて、海底から所定位置で固定されている。なお符号106はバルブである。
0071
図19は、取水用の水中モータポンプの概略構成説明図であり、本例の水中モータポンプMP2は、チェッキケーシング111、弁座112、弁体113、バネ114、上部ケーシング115、上部軸受116、ライナーリング117、中間ケーシング118、中間軸受119、羽根車120、吸込ケーシング121、吸込軸受122、ポンプ軸123、羽根車キィー124、スナップリング125、軸継手126、ケーブルカバー128、などから構成されている。
0072
本例において、深層水を吸い上げる水中モータポンプMP2を2台設置し、交互運転するように構成している。もし、1台の水中モータポンプMP2が故障などした場合、他の1台の水中モータポンプMP2を単独運転とし、その間に故障した水中モータポンプMP2を修理する。水中モータポンプMP2の着脱は、なるべく簡単にできるように構成されている。
0073
また本例では、上記のように、深層水を吸い上げる水中モータポンプMP2とは別に、ストレーナー109付のケーシング内に水中モータポンプMP1を設置し、この水中モータポンプMP1によってストレーナー109を介して吸水し、定期的にチューブ107、切替弁108を介して、海水を逆に送り込み、海中側に配設した深層水などの吸水する吸込口102に吸いついた異物を取り除くように構成されている。つまり、水中モータポンプMP2のバルブ106を閉じ、水中モータポンプMP1のバルブ106を解放し、切替弁108でチューブ107からの海水のみを送り出すように構成する。本例のような構成によれば設備費が安価で、また維持管理が容易となる。逆洗用の水中モータポンプMP1は、前記した図15と同じストレーナー付のケーシング内に水中モータポンプを配置したものを使用することが可能である。
【0074】
図20は参考例に係る水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムの例を示す説明図、図21はさらに他の例を示す水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムの説明図である。これらの例においては、前記した各実施例及び参考例と同様部材、配置等には同一符号を付して、その説明を省略する。
0075
図20の例では、図10で示す取水装置などと、図16〜図19で示す装置などとを組み合わせたものであり、図16で示す吸込口102、シンカー103、索条104、ブイ105の代わりに、図10で示す装置を連結したものである。つまり、陸上側と海洋水を取水する装置の両方に水中モータポンプを設けた構成としている。同様に、図21の例では、図14で示す取水装置などと、図16〜図19で示す装置などとを組み合わせたものである。なお、図11で示す取水装置などと図16〜図19で示す装置などとを組み合わせることも可能であり、既に説明した各種変形例を適用できることはもちろんである。このように陸上側に水中モータポンプを設置しているために、海洋の気象状況に拘わらず取水が可能であると共に、陸上側に水中モータポンプがあるためメンテナンスが容易であり、設置コストも低減させることが可能となる。
0076
【発明の効果】
本発明によれば、パイプ又はホースが小口径であるために、巻取りリールのサイズ(直径)を極めて小さく、その製作・敷設工事が従来工法に比べて極めて容易で、安価なものとなる。また取水装置(ポンプ・モータを含めて)のメンテナンスのために作業船を使って海面に容易に引き上げ、メンテナンス終了後、海底に戻すのも容易となる。
0077
また海底に沈殿し、又は将来沈殿するかもしれない有害物質の吸引を避けることが可能である。そして、パイプ又はホースが小口径であるため、従来に比して大がかりな掘削が不要であり、また「弧状推進工法」により陸側から掘削を行うことが可能であるので、海面上を掘削のため荒らすことが少なくなる。
0078
また、二股に分かれた分岐マニホールドを用いて、前記取水装置を設置した小口径のパイプ又はホース及び電源ケーブルを、陸上に通じる1本のパイプ又はホースから分岐させた2本のパイプ又はホースに設置することにより、一方のパイプ又はホースのメンテナンスをしながら同時に他方から取水することができる。海底の取水装置を引き揚げてメンテナンス作業を行っても取水作業を中断することなく継続して取水処理を行うことができるため、常に一定の取水量を得ることが可能となる。
0079
陸上側に水中モータポンプを設置しているために、海洋の気象状況に拘わらず取水が可能であると共に、陸上側に水中モータポンプがあるためメンテナンスが容易であり、設置コストも低減させることが可能となる。また、逆洗用の水中モータポンプを配設し、吸込口側へ向けて流体を送出することが可能なように構成すると好適である。このように構成することにより、深層水を取水するための吸込口が、取水に伴って塞がれるような事態になっても、吸込口側へ向けて流体を送出することによって、吸込口を洗浄することが可能となり、吸込口の目詰まり等を防止することが可能となる。
0080
また、陸上側に水中モータポンプを配設し、パイプ又はホースの先端に配設された取水装置に取水ポンプを設ける構成にすると、パイプ又はホースの先端に配設された取水装置に支障が生じた場合(例えばモータポンプの故障など)、陸上側に配設された水中モータポンプをバックアップとして稼動させることで、取水作業が中断することのないように構成することが可能となる。
0081
さらにまた、前記構成において、本発明では小口径のパイプ又はホースを使用している為、前記分岐マニホールドの付設作業、前記分岐マニホールドに接続される2本の小口径のパイプ又はホースの敷設作業も容易に行うことができ、工事費の増加を最小限におさえながら、複数の取水装置の設置を行うことができる。
0082
以上のように本発明によれば、敷設工事が容易で、取水装置のメンテナンスが容易で、海底に沈殿し、又は将来沈殿するかもしれない有害物質の吸引を防止することのでき、小口径のパイプ又はホースを使用することにより、容易に取水装置を海面に上げてメンテナンスを可能とする水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム及びメンテナンス方法並びにその工法を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ケーブル及びホース又はチューブの埋設状態を示す説明図である。
【図2】弧状推進工法によるホース又はチューブの配設状態を示す説明図である。
【図3】弧状推進工法の説明図である。
【図4】弧状推進工法の説明図である。
【図5】弧状推進工法の説明図である。
【図6】配設管体の説明断面図である。
【図7】配設管体の説明断面図である。
【図8】電源ケーブルの説明図である。
【図9】電源ケーブルの説明図である。
【図10】参考例に係る取水装置の説明図である。
【図11】参考例に係る取水装置の説明図である。
【図12】ダイナミックポジショニングプログラムによる取水装置の引き上げ説明図である。
【図13】海面側上方から見た小口径のパイプ又はホースに分岐マニホールドを用いた説明図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る取水装置を示す概略構成説明図である。
【図15】図14で使用する水中モータポンプの一例を示す説明図である。
【図16】参考例に係る陸上設置型深層水取水施設の説明図である。
【図17】陸上側に配設された水中モータポンプの構成例を示す説明図である。
【図18】図17のX−X及びY−Yによる矢視説明図である。
【図19】水中モータポンプの一例を示す説明図である。
【図20】参考例に係る水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムを示す説明図である。
【図21】本発明の一実施形態に係る水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムの説明図である。

Claims (9)

  1. 陸上と深層水取水位置との間に敷設された小口径のパイプ又はホース及び電源ケーブルと、前記パイプ又はホースの先端に配設された取水装置と、を備えた水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムであって、
    前記取水装置は、海底面より所定距離はなれて配置され深層水取水位置での水圧に耐える駆動源を備えた取水ポンプと、該取水ポンプに一体に設けられ、前記取水ポンプの上方で海底に沈殿している物質を吸い込まないように配置された吸込口とを備え、
    前記取水ポンプは傾斜した取水ポンプ配置部が形成された筐体に配設され、前記取水ポンプ配置部に前記取水ポンプを前記吸込口が海面側に位置するように配置しており、
    前記吸込口よりも下方位置で前記取水ポンプに前記小口径のパイプ又はホースが接続されると共に、該小口径のパイプ又はホースは海底に沿って配設されることを特徴とする水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム。
  2. 前記電源ケーブルは制御・信号用光ファイバーケーブルと一体に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム。
  3. 前記小口径のパイプ又はホースは分岐部を有しており、該分岐部によって分かれた各先端は、前記取水装置がそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1記載の水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム。
  4. 陸上側に配設された水中モータポンプと、該水中モータポンプと深層水取水位置との間に敷設された小口径のパイプ又はホース及び電源ケーブルと、前記パイプ又はホースの先端に配設された取水装置と、を備えた水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムであって、
    前記取水装置は、海底面より所定距離はなれて配置され深層水取水位置での水圧に耐える駆動源を備えた取水ポンプと、該取水ポンプに一体に設けられ、前記取水ポンプの上方で海底に沈殿している物質を吸い込まないように配置された吸込口とを備え、
    前記取水ポンプは傾斜した取水ポンプ配置部が形成された筐体に配設され、前記取水ポンプ配置部に前記取水ポンプを前記吸込口が海面側に位置するように配置しており、
    前記吸込口よりも下方位置で前記取水ポンプに前記小口径のパイプ又はホースが接続されると共に、該小口径のパイプ又はホースは海底に沿って配設されることを特徴とする水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システム。
  5. 小口径のパイプ又はホースを敷設する工程と、パイプ又はホースの先端に取水装置を配設する工程と、を有する水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムの工法であって、前記小口径のパイプ又はホースを敷設する工程は、敷設船に配設されたリールに巻回された小口径のパイプ又はホースを埋設用トレンチの中又は弧状推進工法によって掘られた地中の穴に引き込み、陸上からウインチで引っ張るか、又は弧状推進工法で使用したビットに接続して陸側に引き出すことを特徴とする水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水システムの工法。
  6. 小口径のパイプ又はホースを敷設する工程と、パイプ又はホースの先端に、海底面より所定距離はなれた位置に傾斜した取水ポンプ配置部が形成された筐体と、前記取水ポンプ配置部に吸込口が海面側に位置するように配置された取水ポンプとを備えた取水装置を配設する工程と、を有する水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムの工法であって、
    前記小口径のパイプ又はホースを敷設する工程は、小口径のパイプ又はホースを陸地から所定距離埋設した後、小口径のパイプ又はホースの先端を海底面上に露出させ、敷設船に配設されたリールに巻回された小口径のパイプ又はホースと前記海底面上に露見させた小口径のパイプ又はホースの先端と接続し、リールから小口径のパイプ又はホースを繰り出して所定距離間敷設し、
    前記パイプ又はホースの先端に取水装置を配設する工程は、前記吸込口よりも下方位置で前記取水ポンプに前記小口径のパイプ又はホースを接続すると共に、前記小口径のパイプ又はホースを海底に沿って配設することを特徴とする水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水システムの工法。
  7. 前記小口径のパイプ又はホースには電源ケーブルを付設し、海底曝露部のみを所定間隔で小口径のパイプ又はホースと電源ケーブルとを固定してなることを特徴とする請求項5又は6記載の水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水システムの工法。
  8. 小口径のパイプ又はホースを敷設する工程において、小口径のパイプ又はホースを陸地から所定水深まで配設するときに、弧状推進工法又はトレンチを掘り埋設する工法を含むこと特徴とする請求項5又は6記載の小口径管大容量海洋深層水システムの工法。
  9. 陸上と深層水取水位置との間に敷設された小口径のパイプ又はホース及び電源ケーブルと、前記パイプ又はホースの先端に配設された取水装置と、を備えた水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水システムのメンテナンス方法において、マーカーブイ等により取水装置の位置を確認した後、水中探査装置を海中に降ろし、該水中探査装置を用いて、取水装置に形成された引き揚げ用着脱部材にメンテナンスを行う船体と連結された索条とを連結し、この索条を引き揚げるものであって、前記取水装置の引き揚げをダイナミック・ポジショニング推進装置を装備する作業船により、パイプ又はホースに許容以上の曲げ、捻れを生じさせないためのコンピュータプログラムに従った操船によって行い、海底の取水装置を引き揚げてからメンテナンス処理を行うことを特徴とする水中モータポンプ使用小口径管大容量海洋深層水取水装置のメンテナンス方法。
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