JP3700881B2 - 冷却構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノート型パソコン等に使用されるIC素子等の発熱素子の冷却構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、計算機(コンピューター)をはじめ、その他各種電気機器の小型化が進みつつある。パソコンとしても、小型で軽量なノート型パソコンの普及が急速に進んでいる。ノート型パソコンやラップトップ型、デスクトップ型パソコンに搭載される演算素子の高性能化とそれに伴う発熱量の増大傾向は、素子の高密度実装化も相まって、その放熱を重要な技術課題として注目させるに至っている。コンピューター以外においても、発熱素子の放熱は重要な課題として注目されている。
【0003】
従来から、比較的大型の計算機においては、電源回路や素子等の冷却は、ファンを用いた強制空冷方式による場合が多かった。これはファンを用いて、外気を電気機器の筐体内に導入、排気することで強制空冷する方式である。一方、近年は、電気機器も小型化される傾向にあり、そのため、その内部空間に制限が大きくなってきている。このように内部空間の制限が大きくなると、充分な空冷機能の発現も難しくなりやすい。また空冷性能を向上させるには、電気機器の内部スペースやコスト面の制約が許せばであるが、単純にはそのファンの大型化や高回転化により実現させることは可能であろう。しかしファンの発生音の増大は、電気機器のユーザーに敬遠される傾向にある。
【0004】
そこで近年は、筐体の一部が放熱体を兼ねる小型ファン装置を用いて、その放熱体に、特に冷却が要求されている素子(被冷却部品)を取り付けて、その素子を冷却する方法が実用化されている。この方法は、特に冷却が必要な素子の冷却を実現させるもので、ファンの小型化が容易である等、電気機器のスペース制限に対応しやすい方法である。
【0005】
その他、ファンの使用に替えて、或いは併用してヒートパイプを適用した冷却構造も提案、一部実用化されている。例えば、発熱素子の熱を受熱する金属プレート等にヒートパイプを取り付けることで、その金属プレートの均熱化を進めるという機構、或いは、発熱素子の熱をヒートパイプを介して放熱体に運ぶ、という機構等である。前者の場合は金属プレートの均熱化による放熱性能の向上が期待でき、後者の場合は、電気機器内の発熱素子と離れた箇所にある放熱体に熱を効率的に運ぶことができる、という利点が期待できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特に小型のコンピューターの場合、かつては冷却対象たる被冷却部品は、その中央演算子のみであると言っても良い状況であった。しかし近年は、その他の部品も冷却の対象として挙げられるに至っている。例えばACアダプターである。これは、かつては別パーツとしてコンピューター本体の外にある場合が多かったが、最近は本体内に組み込まれる場合も多くなってきており、その冷却が技術課題として重要になってきている。
【0007】
上述のACアダプターに限らず、このように電気機器内には、冷却すべき部品が複数ある場合が多くなってきている。しかし、機器内に備わる各発熱部品の発熱量はそれぞれ異なっているのが普通であり、またその要求される冷却程度も一定とは限らない。このような発熱量や要求される冷却程度も異なる複数の部品の冷却を、より効率的に行うことが重要な技術課題となっている。
【0008】
さて、ヒートパイプを用いた冷却構造の場合、被冷却部品の熱を効率的に放熱部に運べる利点があるが、ある1本のヒートパイプに直列に複数の被冷却部品を接続すると、各々の被冷却部品に対する冷却性能が低下するばかりか、場合によっては、ヒートパイプで熱が逆流してしまうこともあり得る。つまり、ある被冷却部品より下流にある(放熱部に近い)他の被冷却部品の熱が逆流してしまうことも場合によってはあり得たのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、ヒートパイプを複数本用意して、各被冷却部品毎に独立に放熱機構を設ける方法も提案、一部実用化してきている。しかし独立に複数の冷却機構を設けると、電気機器の小型化と相まって、内部スペース上の制限の問題が生ずる。そこで、複数の放熱機構の放熱部を共通化することも考えられる。具体的にはヒートパイプを複数本用意し、各被冷却部品毎に熱を一つの放熱体に運ぶ機構である。しかし、各被冷却部品の発熱量やその冷却すべき程度は往々にして異なっているので、各被冷却部品からヒートパイプを介して運ばれてきた熱が、互いに熱的干渉を起こして、効率的な冷却が阻害されてしまうことがあった。
【0010】
本発明は複数の被冷却部品を効率的に冷却させる機構を提供することを目的としている。即ち、本発明の冷却構造は、ヒートシンクブロックが通気性のある断熱シートを介して積層され、積層された前記ヒートシンクブロックには、各々被冷却部品が熱的に接続されている、というものである。前記ヒートシンクブロックに被冷却部品を熱的に接続しても良いし、各々ヒートパイプの放熱側を熱的に接続し、前記ヒートパイプの吸熱側に各々被冷却部品を熱的に接続した形態でも良い。
【0011】
また前記ヒートシンクブロックを放熱するためのファン機構を備えた冷却構造も提案する。前記ファン機構は、それを構成する筐体の少なくとも一部に、ヒートシンク機能が備わっていると効率的である。そのヒートシンク機能が備わっている筐体の一部にヒートパイプの放熱側を熱的に接続した機構も提案する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1を参照しながら説明する。
被冷却部品11、12、13をそれぞれ、受熱プレート21、22、23の上に接触させておく。尚、受熱プレート材質はAl材、Cu材等、伝熱性に優れる材質が望ましい。特にAl材は伝熱性に優れ、また軽量であるので望ましい。受熱プレート21、22、23には、その側部に各々ヒートパイプ61、62、63の一端側をかしめておく。ヒートパイプ61、62、63のそれぞれ他端側を、ヒートシンクブロック31、32、33に各々取り付け、それらのヒートシンクブロック31、32、33を通気性のある断熱シート41、42を挟んで積層しておく。ヒートシンクブロック31、32、33は、図の上下方向に風が通るように、その主面およびその反対面に孔またはスリットが設けられている。またヒートシンクブロック31、32、33には、図の裏面側にも通気するように孔またはスリットが設けられている。各々のヒートシンクブロック31、32、33の内部には、放熱性を高めるためにフィン51が設けられている。尚、被冷却部品11、12、13と受熱プレート21、22、23との間や、受熱プレート21、22、23にヒートパイプ61、62、63をかしめた部分、ヒートパイプ61、62、63をヒートシンクブロック31、32、33に取り付けた部分に伝熱体を介在させても構わない。
【0013】
積層させたヒートシンクブロック31、32、33の上面にはファン機構71を取り付けた。尚、図1ではファン機構71と、ヒートシンクブロック31、32、33の積層体との位置関係は、ファン機構71が上方に位置している。このようなファンとヒートシンクブロックの上下関係は特に限定されないが、熱の性質上、ファンはヒートシンクブロックの積層体より上に位置していることが望ましい。
【0014】
ファン機構71により通気される風は、概念的には図示する矢印の方向に概ね流れる。ファン機構71により導入される風は、電気機器の外気から直接導入した方が望ましい。当該電気機器の筐体内を経由して温度が高まった空気であると、ヒートシンクブロック31、32、33で放熱する効率が低下するからである。またヒートシンクブロック31、32、33から流れ出る風は、電気機器の筐体内に放出させるより、筐体の外部に放出させた方が良い。
【0015】
図1では、ファン機構71により吸気し、吸気した空気をヒートシンクブロック31、32、33を経由して放出する形態が描かれているが、この逆、即ち図1の矢印の方向を逆向きにした風の流れにしても構わない。
【0016】
ヒートシンクブロック31、32、33を積層する数は任意である。また図1の場合のように、積層したヒートシンクブロック31、32、33の各々全てにヒートパイプを取り付ける必要はない。例えば、一番下のヒートシンクブロック33には、ヒートパイプ63を取り付ける替わりに、図の下面側に被冷却部品を直接、熱的に接続しても良い。
【0017】
ヒートシンクブロック31、32、33は通気性のある断熱シート41、42を挟んで積層してあるので、互いの熱的干渉は抑制される。尚、断熱シート41、42の断熱性能を一定にする必要はない。被冷却部品の要求される冷却程度や、熱的干渉の許容程度等を考慮して、適宜選定すれば良いことである。従って、断熱シート41、42は、材質やその厚さ、或いは通気性のための孔等につき、各々異なっていても構わない。特に発熱量の大きい発熱部品の熱を放熱するヒートシンクブロックと他のブロックとの間には、特に高い断熱性を備えるシートを適用することが望ましい。断熱シートの材質は特に限定されないが、発泡ポリウレタン等が好適に適用できる。
【0018】
図1の冷却構造ではファンの数は一つであるが、このファンの数は特に限定されない。図1の冷却構造では、3個のヒートシンクブロック31、32、33が積層され、それより少ない1つのファン機構71により放熱できるようになっているので、スペース的にコンパクトでコスト的にも有利である。複数あるヒートシンクブロック31、32、33は断熱シート41、42により互いの熱的干渉が抑制されているので、被冷却部品11、12、13がそれぞれ効率的に冷却できる。また、ヒートシンクブロック31、32、33の各々にファンを取り付ける必要がないため、コスト面でも有利である。ファンの数は特に1個に限定されることはなく、例えば2個のファンを重ねても構わないし、或いは図1の下面側にもファンを設置するような形態も可能である。
【0019】
またヒートシンクブロック31、32、33の少なくとも1個に電磁シールドの機能を持たせると良い。この場合、別個に電磁シールドを設ける場合に比べ、スペース効率の一層の向上が実現する。また、ファンを構成する筐体にも、ヒートシンク機能を備えさせればより効率的である。その場合、そのヒートシンク機能を備える筐体の一部にヒートパイプの放熱側を熱的に接続すると、スペース的にも一層効率的になる。
【0020】
【実施例】
本発明を実施例に則して説明する。
本発明例1
本発明の冷却構造の性能を調べた。図2に示すように、発熱源としてラバーヒータ91、92、93(30×30mm厚さ5mm)を用意し、それぞれ受熱プレート24、25、26(いずれも40×40mmで厚さ1mmのAl製の板)の上に貼りつけた。受熱プレート24、25、26には、その側部に各々ヒートパイプ64、65、66(径3mm)の一端をかしめておく。ヒートパイプ64、65、66のそれぞれ他端を、ヒートシンクブロック34、35、36(40mm×40mm厚さ5mm)に取り付けた。各々のヒートシンクブロック34、35、36は通気性のある断熱シート43、44(発泡ポリウレタン、厚さ2mm)を挟んで積層した。ヒートシンクブロック34、35、36はいずれも図2の上下方向に風が通るように、その主面およびその反対面に孔が設けられている。但し、ヒートシンクブロック36は、その下面が電気機器の筐体内壁に面しており、殆ど通気はしない。またヒートシンクブロック34、35、36はいずれも、この図の裏面側の面に、孔が設けられている。各々のヒートシンクブロック34、35、36の内部には、放熱性を高めるためにフィン52が設けられている。ヒートシンクブロック34上面には、ファン機構72を取り付けてある。
【0021】
比較例1
比較のために、断熱シート43、44を挟まなかった以外は本発明例1と同様の比較例を用意した。
【0022】
比較例2
図3に示すように、Al製の受熱プレート81(80mm×140mm厚さ1mm)の片面に本発明例1と同様のラバーヒータ91、92、93を5mm間隔で貼り付け、他面にヒートシンクブロック37、38、39の積層体を取り付けた。そして積層されたヒートシンクブロック37、38、39の上面には、ファン機構73を取り付けた。ここでヒートシンクブロック37、38、39は、図2(本発明例1)におけるヒートパイプ64、65、66の取り付け部分がない以外は、ヒートシンクブロック34、35、36と同様のものである。またファン機構73も図2(本発明例1)で使用したファン機構72と同様のものを使用した。
【0023】
ラバーヒータ91、92、93の貼り付け位置は、ラバーヒータ92が概ねヒートシンクブロック37の中央部に位置するようにした。なお、図3のヒートシンクブロック37、38、39の間には断熱シートを挟んでいない。
【0024】
従来例1
図4に示すように、Al製の受熱プレート82(ヒートパイプ67をかしめる部分以外は、220mm×220mmの正方形の板を図示する如く4分の1の部分を切り取って形成したもの)に、ヒートパイプ67を図示するようにかしめて取り付けた。本発明例1と同様のラバーヒータ91、92、93を間隔5mmで、図示するように、ヒートパイプ67のかしめた部分に近接する位置に貼り付けた。この従来例2の冷却構造の場合、ファンは備えていない。また、この冷却構造を電気機器の筐体内壁(発泡ポリウレタン製)の上に置いておいた。
【0025】
以上、本発明例1、比較例1、2、従来例1につき、3個のラバーヒータにそれぞれ5W、10W、20Wの電力を供給し、連続5分間通電した後、および20分間通電した後のラバーヒータの温度を測定した。その結果を表1に記す。また表1にはラバーヒータ単体を宙に浮かした状態で、同じく通電した場合の温度状況も併記しておく。
【0026】
【表1】
Figure 0003700881
【0027】
表1を見ると比較例1は、5Wの通電をしたラバーヒーター91が、10Wの通電をしたラバーヒーター92および20Wの通電をしたラバーヒーター93と熱的干渉を起こしたと想像でき、十分な冷却がなされなかったことが判る。また5W通電のラバーヒーター91がラバーヒーター単体の場合より高温になっている。比較例2では、ラバーヒーター91、92の冷却が不十分である上、5Wの通電をしたラバーヒーター91が、ラバーヒーター単体の場合より高温になっていることが判る。
【0028】
従来例1は、ラバーヒーター91、92の冷却が不十分である上、5Wの通電をしたラバーヒーター91が、ラバーヒーター単体の場合より高温になっていることが判る。
【0029】
【発明の効果】
本発明による冷却構造によれば、スペース的に優れ、効率的に複数の被冷却部品の冷却をなすことができる。従ってコンピューターに代表される各種電気機器の小型化を促進する等の産業上の貢献をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる冷却構造の構成を説明する斜視図である。
【図2】実施例(本発明例)に係わる冷却構造の構成を説明する斜視図である。
【図3】実施例(従来例)に係わる冷却構造の構成を説明する斜視図である。
【図4】実施例(従来例)に係わる冷却構造の構成を説明する斜視図である。
【符号の説明】
11、12、13 被冷却部品
21、22、23、24、25、26 受熱プレート
31、32、33、34、35、36、37、38、39 ヒートシンクブロック
41、42、43、44 断熱シート
51、52 フィン
61、62、63、64、65、66、67 ヒートパイプ
71、72、73 ファン機構
81、82 受熱プレート
91、92、93 ラバーヒーター

Claims (5)

  1. ヒートシンクブロックが通気性のある断熱シートを介して積層され、積層された前記ヒートシンクブロックには、各々被冷却部品が熱的に接続されている、冷却構造。
  2. ヒートシンクブロックが通気性のある断熱シートを介して積層され、積層された前記ヒートシンクブロックには、各々ヒートパイプの放熱側が熱的に接続されており、前記ヒートパイプの吸熱側には各々被冷却部品が熱的に接続されている、冷却構造。
  3. 前記ヒートシンクブロックを放熱するためのファン機構が備わっている、請求項1記載の冷却構造。
  4. 前記ファン機構を構成する筐体の少なくとも一部が、ヒートシンク機能を有している、請求項1または2記載の冷却構造。
  5. 前記筐体のヒートシンク機能を有する部分に、ヒートパイプの放熱側が熱的に接続され、当該ヒートパイプの吸熱側には被冷却部品が熱的に接続されている、請求項3記載の冷却構造。
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