JP3700713B2 - 窒素−3族元素化合物半導体素子 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は青色発光の窒素−3族元素化合物半導体素子に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、青色の発光ダイオードとしてGaN 系の化合物半導体を用いたものが知られている。そのGaN 系の化合物半導体は直接遷移型であることから発光効率が高いこと、光の3原色の1つである青色を発光色とすること等から注目されている。
【0003】
最近、GaN においても、Mgをドープして電子線を照射することによりp型のGaN が得られることが明らかとなった。この結果、従来のn層と半絶縁層(i層)との接合に換えてpn接合を有するGaN 発光ダイオードが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のpn接合を有する発光ダイオードであっても、発光輝度は未だ十分ではなく、また、寿命に関しても十分なものが得られていない。
そこで、本発明の目的は、窒素−3族元素化合物半導体(AlxGaYIn1-X-YN;X=0,Y=0,X=Y=0 を含む) 素子の結晶性の向上、駆動電圧の低下及び素子寿命を長期化することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明の特徴は、窒素−3族元素化合物半導体から成る素子において、p型の層に接する正電極と、n型の層に接する負電極とを有し、負電極は、正電極が接するp型の層とは絶縁分離されたp型の層の表面まで連続的に形成されており、正電極と負電極の一部とが略同一平面上に形成されていることを特徴とする。
関連する発明の特徴は、負電極が形成されたn型の窒素−3族元素化合物半導体から成る高キャリア濃度n + 層と、正電極が形成された高キャリア濃度p + 層と、高キャリア濃度n + 層よりも低い電子濃度を有する窒素−3族元素化合物半導体から成る低キャリア濃度n層と、高キャリア濃度p + 層よりもホール濃度の低いp型の窒素−3族元素化合物半導体から成る低キャリア濃度p 層とを有することを特徴とする。
更には、高キャリア濃度n + 層はシリコン (Si) が添加され、低キャリア濃度n層は高キャリア濃度n + 層よりもp型層側に形成され、不純物が添加されておらず電子濃度が1× 10 14 以上であり、低キャリア濃度p層及び項キャリア濃度p + 層はマグネシウム (Mg) の添加されていることを特徴とする。
さらに他の特徴は、高キャリア濃度p + 層は、ホール濃度が1× 10 16 /cm 3 以上である第1高キャリア濃度p + 層と、当該第1高キャリア濃度p + 層よりもホール濃度の高い第2高キャリア濃度p + 層とから成ることを特徴とする。
【0006】
【発明の作用及び効果】
本発明は、電気的に絶縁分離されている複数のp伝導型層を有し、n型の層に接する負電極が、正電極が接するp型の層とは絶縁分離されたp型の層の表面まで連続的に形成されており、正電極と負電極の一部とが略同一平面上に形成されている。よって、正電極の形成された当該p伝導型層に電流が集中する素子となる。これにより駆動電圧を低下させ、素子寿命を長期化することができた。また、シリコン(Si)が添加されたn型の窒素−3族元素化合物半導体からなる高キャリア濃度n+ 層と、高キャリア濃度n+ 層よりもp型層側に形成された不純物無添加のn型の窒素−3族元素化合物半導体からなる電子濃度が1×1014以上の低キャリア濃度n層との構成、又は、n型の窒素−3族元素化合物半導体から成り、p型層から遠ざかる方向に電子濃度がステップ増加する複層で形成されるとの構成により、結晶性が向上し、発光素子においては発光輝度が向上すると共により純粋な青色を得ることができた。さらに、電子の注入効率が向上し、駆動電圧が低下すると共に発光素子においては発光輝度が向上した。又、これらの構成により、発光輝度は10 mcdであり、この発光輝度は従来のpn接合GaN 発光ダイオードの発光輝度に比べて、2 倍に向上した。又、発光寿命は104 時間であり、従来のpn接合GaN 発光ダイオードの発光寿命の1.5 倍である。
【0007】
【実施例】
第1実施例
図1において、発光ダイオード10は、サファイア基板1を有しており、そのサファイア基板1に500 ÅのAlN のバッファ層2が形成されている。そのバッファ層2の上には、順に、膜厚約2.2 μm、電子濃度2 ×1018/cm3のシリコンドープGaN から成る高キャリア濃度n+ 層3、膜厚約 1.5μm、電子濃度1 ×1016/cm3のノンドープGaN から成る低キャリア濃度n層4が形成されている。更に、低キャリア濃度n層4の上には、順に、膜厚約0.5 μm、ホール濃度1 ×1016/cm3のMgドープGaN から成る低キャリア濃度p層51、膜厚約0.2 μm、ホール濃度 2×1017/cm3の高キャリア濃度p+ 層52が形成されている。そして、高キャリア濃度p+ 層52に接続するニッケルで形成された電極7と高キャリア濃度n+ 層3に接続するニッケルで形成された電極8とが形成されている。電極8と電極7とは、溝9により電気的に絶縁分離されている。
【0008】
次に、この構造の発光ダイオード10の製造方法について説明する。
上記発光ダイオード10は、有機金属化合物気相成長法( 以下「M0VPE 」と記す) による気相成長により製造された。
用いられたガスは、NH3 とキャリアガスH2とトリメチルガリウム(Ga(CH3)3)(以下「TMG 」と記す) とトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)(以下「TMA 」と記す) とシラン(SiH4)とビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5H5)2)(以下「CP2Mg 」と記す)である。
【0009】
まず、有機洗浄及び熱処理により洗浄したA面を主面とする単結晶のサファイア基板1をM0VPE 装置の反応室に載置されたサセプタに装着する。次に、常圧でH2を流速2 liter/分で反応室に流しながら温度1100℃でサファイア基板1を気相エッチングした。
【0010】
次に、温度を 400℃まで低下させて、H2を20 liter/分、NH3 を10 liter/分、TMA を 1.8×10-5モル/分で供給してAlN のバッファ層2が約 500Åの厚さに形成された。次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20 liter/分、NH3 を10 liter/分、TMG を 1.7×10-4モル/分、H2で0.86ppm まで希釈したシラン(SiH4)を 200 ml/分の割合で30分間供給し、膜厚約 2.2μm、電子濃度 2×1018/cm3のGaN から成る高キャリア濃度n+ 層3を形成した。
【0011】
続いて、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20 liter/分、NH3 を10 liter/分、TMG を1.7 ×10-4モル/分の割合で20分間供給し、膜厚約1.5 μm、電子濃度 1×1016/ cm3 のGaN から成る低キャリア濃度n層4を形成した。
【0012】
次に、サファイア基板1を1150℃にして、H2 を20 liter/分、NH3 を10 liter/分、TMG を 1.7×10-4モル/分、CP2Mg を 8×10-8モル/分の割合で 7分間供給して、膜厚0.5 μmのGaN から成る低キャリア濃度p層51を形成した。この状態では、低キャリア濃度p層51は、まだ、抵抗率108 Ωcm以上の絶縁体である。
【0013】
次に、サファイア基板1を1150℃にして、H2 を20 liter/分、NH3 を10 liter/分、TMG を 1.7×10-4モル/分、CP2Mg を 3×10-7モル/分の割合で 3分間供給して、膜厚0.2 μmのGaN から成る高キャリア濃度p+ 層52を形成した。この状態では、高キャリア濃度p+ 層52は、まだ、抵抗率108 Ωcm以上の絶縁体である。
【0014】
次に、反射電子線回析装置を用いて、上記の高キャリア濃度p+ 層52及び低キャリア濃度p層51に一様に電子線を照射した。電子線の照射条件は、加速電圧10KV、試料電流 1μA 、ビームの移動速度0.2mm/sec 、ビーム径60μmφ、真空度2.1 ×10-5Torrである。この電子線の照射により、低キャリア濃度p層51は、ホール濃度1 ×1016/cm3、抵抗率40Ωcmのp伝導型半導体となり、高キャリア濃度p+ 層52は、ホール濃度 2×1017/cm3、抵抗率 2Ωcmのp伝導型半導体となった。このようにして、図2に示すような多層構造のウエハが得られた。
【0015】
以下に述べられる図3から図7は、ウエハ上の1つの素子のみを示す断面図であり、実際は、この素子が連続的に繰り返されたウエハについて、処理が行われ、その後、各素子毎に切断される。
【0016】
図3に示すように、高キャリア濃度p+ 層52の上に、スパッタリングによりSiO2層11を2000Åの厚さに形成した。次に、そのSiO2層11上にフォトレジスト12を塗布した。そして、フォトリソグラフにより、高キャリア濃度p+ 層52上において、高キャリア濃度n+ 層3に至るように形成される孔15に対応する電極形成部位Aとその電極形成部を高キャリア濃度p+ 層52の電極と絶縁分離する溝9を形成する部位Bのフォトレジストを除去した。
【0017】
次に、図4に示すように、フォトレジスト12によって覆われていないSiO2層11をフッ化水素酸系エッチング液で除去した。次に、図5に示すように、フォトレジスト12及びSiO2層11によって覆われていない部位の高キャリア濃度p+ 層52とその下の低キャリア濃度p層51、低キャリア濃度n層4、高キャリア濃度n+ 層3の上面一部を、真空度0.04Torr、高周波電力0.44W/cm2 、BCl3ガスを10ml/分の割合で供給しドライエッチングした後、Arでドライエッチングした。この工程で、高キャリア濃度n+ 層3に対する電極取出しのための孔15と絶縁分離のための溝9が形成された。
【0018】
次に、図6に示すように、高キャリア濃度p+ 層52上に残っているSiO2層11をフッ化水素酸で除去した。次に、図7に示すように、試料の上全面に、Ni層13を蒸着により形成した。これにより、孔15には、高キャリア濃度n+ 層3に電気的に接続されたNi層13が形成される。そして、そのNi層13の上にフォトレジスト14を塗布して、フォトリソグラフにより、そのフォトレジスト14が高キャリア濃度n+ 層3及び高キャリア濃度p+ 層52に対する電極部が残るように、所定形状にパターン形成した。
【0019】
次に、図7に示すようにそのフォトレジスト14をマスクとして下層のNi層13の露出部を硝酸系エッチング液でエッチングした。この時、絶縁分離のための溝9に蒸着されたNi層13は、完全に除去される。次に、フォトレジスト14をアセトンで除去し、高キャリア濃度n+ 層3の電極8、高キャリア濃度p+ 層52の電極7が残された。その後、上記の如く処理されたウエハは、各素子毎に切断され、図1に示すpn構造の窒化ガリウム系発光素子を得た。
【0020】
このようにして製造された発光ダイオード10の発光強度を測定したところ10 mcdであり、この発光輝度は、従来のpn接合のGaN 発光ダイオードの発光輝度に比べて 2倍であった。又、発光寿命は、104 時間であり、従来のpn接合のGaN 発光ダイオードの発光寿命に比べて1.5 倍であった。
【0021】
尚、上記実施例で用いたマグネシウムMgのドーピングガスは、上述のガスの他、メチルビスシクロペンタジエニルマグネシウムMg(C6H7)2 を用いても良い。
【0022】
上記低キャリア濃度n層4の電子濃度は1 ×1014〜 1×1016/cm3 で膜厚は 0.5〜 2μmが望ましい。電子濃度が 1×1016/cm3 以上となると発光強度が低下するので望ましくなく、 1×1014/cm3 以下となると発光素子の直列抵抗が高くなりすぎ電流を流すと発熱するので望ましくない。又、膜厚が 2μm以上となると発光素子の直列抵抗が高くなりすぎ電流を流すと発熱するので望ましくなく、膜厚が 0.5μm以下となると発光強度が低下するので望ましくない。
【0023】
更に、高キャリア濃度n+ 層3の電子濃度は 1×1016〜 1×1019/cm3 で膜厚は 2〜10μmが望ましい。電子濃度が 1×1019/cm3 以上となると結晶性が悪化するので望ましくなく、 1×1016/cm3 以下となると発光素子の直列抵抗が高くなりすぎ電流を流すと発熱するので望ましくない。又、膜厚が10μm以上となると基板が湾曲するので望ましくなく、膜厚が 2μm以下となると発光素子の直列抵抗が高くなりすぎ電流を流すと発熱するので望ましくない。
【0024】
又、上記低キャリア濃度p層51のホール濃度は1 ×1014〜 1×1016/cm3 で膜厚は0.2 〜1 μmが望ましい。ホール濃度が 1×1016/cm3 以上となると、低キャリア濃度n層4とのマッチングが悪くなり発光効率が低下するので望ましくなく、 1×1014/cm3 以下となると、直列抵抗が高くなり過ぎるので望ましくない。又、膜厚が 1μm以上となると、直列抵抗が高くなるので望ましくなく、膜厚が0.2 μm以下となると、発光輝度が低下するので望ましくない。
【0025】
更に、高キャリア濃度p+ 層52のホール濃度は 1×1016〜 2×1019/cm3 で、膜厚は0.2 〜0.5 μmが望ましい。ホール濃度が 2×1019/cm3 以上のp+ 層はできない。1 ×1016/cm3 以下となると、直列抵抗が高くなるので望ましくない。又、膜厚が0.5 μm以上となると、直列抵抗が高くなるので望ましくなく、膜厚が0.1 μm以下となると、ホールの注入効率が減少するので望ましくない。
【0026】
第2実施例
図8において、発光ダイオード10は、サファイア基板1を有しており、そのサファイア基板1に500 ÅのAlN のバッファ層2が形成されている。そのバッファ層2の上には、順に、膜厚約2.2 μm、電子濃度2 ×1018/cm3のシリコンドープGaN から成る高キャリア濃度n+ 層3、膜厚約 1.5μm、電子濃度1 ×1015/cm3のノンドープGaN から成る低キャリア濃度n層4が形成されている。更に、低キャリア濃度n層4の上には、順に、膜厚約0.2 μm、ホール濃度1 ×1015/cm3のMgドープGaN から成る低キャリア濃度p層51、膜厚約0.5 μm、ホール濃度1 ×1016/cm3の第1高キャリア濃度p+ 層52、膜厚約0.2 μm、ホール濃度1 ×1017/cm3の第2高キャリア濃度p+ 層53が形成されている。そして、第2高キャリア濃度p+ 層53に接続するニッケルで形成された電極7と高キャリア濃度n+ 層3に接続するニッケルで形成された電極8とが形成されている。電極8と電極7とは、溝9により電気的に絶縁分離されている。このように、本実施例の発光ダイオード10は、p層をホール濃度が3段階にステップ変化する3層で形成したことを特徴としている。その製造方法は第1実施例と同様である。
【0027】
このように、n層をpn接合面から遠ざかる方向に電子濃度がステップ増加する複層で形成し、p層をpn接合面から遠ざかる方向にホール濃度がステップ増加する複層で形成したので、ホール濃度の最も高いp型の層と電子濃度の最も高いn型の層との間に電圧を印加することで、電子及びホールが各層で効率良く加速され、pn接合面を通って反対の伝導型の層に効率良く注入される。この結果、発光輝度が向上した。
【0028】
第3実施例
図9において、発光ダイオード10は、サファイア基板1を有しており、そのサファイア基板1に500 ÅのAlN のバッファ層2が形成されている。そのバッファ層2の上には、順に、膜厚約2.2 μm、電子濃度 2×1018/cm3のシリコンドープGaN から成る高キャリア濃度n+ 層3、膜厚約 1.5μm、電子濃度 1×1016/cm3のノンドープGaN から成る低キャリア濃度n層4が形成されている。更に、低キャリア濃度n層4の上には、順に、膜厚約0.5 μm、Mg濃度 5×1019/cm3のMgドープGaN から成る低不純物濃度i層61、膜厚約0.2 μm、Mg濃度 2×1020/cm3の高不純物濃度i+ 層62が形成されている。
【0029】
そして、その低不純物濃度i層61及び高不純物濃度i+ 層62の所定領域には、それぞれ、電子線照射によりp伝導型化したホール濃度1 ×1016/cm3の低キャリア濃度p層501、ホール濃度 2×1017/cm3の高キャリア濃度p+ 層502が形成されている。
【0030】
又、高不純物濃度i+ 層62の上面からは、高不純物濃度i+ 層62、低不純物濃度i層61、低キャリア濃度n層4を貫通して高キャリア濃度n+ 層3に至る孔15が形成されている。その孔15を通って高キャリア濃度n+ 層3に接合されたニッケルで形成された電極81が高不純物濃度i+ 層62上に形成されている。又、高キャリア濃度p+ 層502の上面には、高キャリア濃度p+ 層502に対するニッケルで形成された電極71が形成されている。高キャリア濃度n+ 層3に対する電極81は、高キャリア濃度p+ 層502及び低キャリア濃度p層501に対して高不純物濃度i+ 層62及び低不純物濃度i層61により絶縁分離されている。
【0031】
次に、この構造の発光ダイオード10の製造方法について説明する。
製造工程を示す図10から図16は、ウエハにおける1素子のみに関する断面図であり、実際には図に示す素子が繰り返し形成されたウエハに関して次の製造処理が行われる。そして、最後に、ウエハが切断されて各発光素子が形成される。
【0032】
第1実施例と同様にして、図10に示すウエハを製造する。次に、図11に示すように、高不純物濃度i+ 層62の上に、スパッタリングによりSiO2層11を2000Åの厚さに形成した。次に、そのSiO2層11上にフォトレジスト12を塗布した。そして、フォトリソグラフにより、高不純物濃度i+ 層62において高キャリア濃度n+ 層3に至るように形成される孔15に対応する電極形成部位Aのフォトレジストを除去した。
【0033】
次に、図12に示すように、フォトレジスト12によって覆われていないSiO2層11をフッ化水素酸系エッチング液で除去した。次に、図13に示すように、フォトレジスト12及びSiO2層11によって覆われていない部位の高不純物濃度i+ 層62とその下の低不純物濃度i層61と低キャリア濃度n層4と高キャリア濃度n+ 層3の上面一部を、真空度0.04Torr、高周波電力0.44W/cm2 、BCl3ガスを10 ml/分の割合で供給しドライエッチングした後、Arでドライエッチングした。この工程で、高キャリア濃度n+ 層3に対する電極取出しのための孔15が形成された。次に、図14に示すように、高不純物濃度i+ 層62上に残っているSiO2層11をフッ化水素酸で除去した。
【0034】
次に、図15に示すように、高不純物濃度i+ 層62及び低不純物濃度i層61の所定領域にのみ、反射電子線回析装置を用いて電子線を照射して、それぞれp伝導型を示すホール濃度 2×1017/cm3の高キャリア濃度p+ 層502、ホール濃度1 ×1016/cm3の低キャリア濃度p層501が形成された。
【0035】
電子線の照射条件は、加速電圧10KV、試料電流 1μA 、ビームの移動速度0.2mm/sec 、ビーム径60μmφ、真空度2.1 ×10-5Torrである。この時、高キャリア濃度p+ 層502及び低キャリア濃度p層501以外の部分、即ち、電子線の照射されなかった部分は、絶縁体の高不純物濃度i+ 層62及び低不純物濃度i層61のままである。従って、高キャリア濃度p+ 層502及び低キャリア濃度p層501は、縦方向に対しては、低キャリア濃度n層4に導通するが、横方向には、周囲に対して、高不純物濃度i+ 層62及び低不純物濃度i層61により電気的に絶縁分離されている。
【0036】
次に、図16に示すように、高キャリア濃度p+ 層502と、高不純物濃度i+ 層62と、高不純物濃度i+ 層62の上面と孔15を通って高キャリア濃度n+ 層3とに、Ni層20が蒸着により形成された。そして、そのNi層20の上にフォトレジスト21を塗布して、フォトリソグラフにより、そのフォトレジスト21が高キャリア濃度n+ 層3及び高キャリア濃度p+ 層502に対する電極部が残るように、所定形状にパターン形成した。次に、そのフォトレジスト21をマスクとして下層のNi層20の露出部を硝酸系エッチング液でエッチングし、フォトレジスト21をアセトンで除去した。このようにして、図9に示すように、高キャリア濃度n+ 層3の電極81、高キャリア濃度p+ 層502の電極71を形成した。その後、上述のように形成されたウエハが各素子毎に切断された。
【0037】
このようにして製造された発光ダイオード10の発光強度を測定したところ、第1実施例と同様に、10mcd であり、発光寿命は104 時間であった。
【0038】
第4実施例
図17に示すように発光ダイオード10を構成することもできる。即ち、バッファ層2の上に、順に、膜厚約0.2 μm、ホール濃度 2×1017/cm3の第2高キャリア濃度p+ 層53、膜厚約0.5 μm、ホール濃度1 ×1016/cm3の第1高キャリア濃度p+ 層52、膜厚約0.2 μm、ホール濃度1 ×1015/cm3のMgドープGaN から成る低キャリア濃度p層51が形成されている。そして、低キャリア濃度p層51上に、順に、膜厚約 1.5μm、電子濃度1 ×1015/cm3のノンドープGaN から成る低キャリア濃度n層4、膜厚約2.2 μm、電子濃度2 ×1018/cm3のシリコンドープGaN から成る高キャリア濃度n+ 層3が形成されている。
【0039】
そして、第2高キャリア濃度p+ 層53に接続するニッケルで形成された電極72と高キャリア濃度n+ 層3に接続するニッケルで形成された電極82とが形成されている。電極82と電極72とは、高キャリア濃度n+ 層3、低キャリア濃度n層4、低キャリア濃度p層51及び第1高キャリア濃度p+ 層52に形成された溝91により電気的に絶縁分離されている。
【0040】
このように、本実施例は、第2実施例と異なり、p層とn層との基板1に対する堆積順序を逆にしたものである。製造は第2実施例と同様に行うことができる。
【0041】
第5実施例
図1に示す構造の第1実施例の発光ダイオード10において、高キャリア濃度n+ 層3、低キャリア濃度n層4、低キャリア濃度p層51、高キャリア濃度p+ 層52を、それぞれ、Al0.2Ga0.5In0.3Nとした。高キャリア濃度n+ 層3は、シリコンを添加して電子濃度2 ×1018/cm3に形成し、低キャリア濃度n層4は不純物無添加で電子濃度1 ×1016/cm3に形成した。低キャリア濃度p層51はマグネシウム(Mg)を添加して電子線を照射して正孔濃度1 ×1016/cm3に形成し、高キャリア濃度p+ 層52は同じくマグネシウム(Mg)を添加して電子線を照射して正孔濃度 2×1017/cm3に形成した。そして、高キャリア濃度p+ 層52に接続するニッケルで形成された電極7と高キャリア濃度n+ 層3に接続するニッケルで形成された電極8とを形成した。
【0042】
次に、この構造の発光ダイオード10も第1実施例の発光ダイオードと同様に製造することができる。トリメチルインジウム(In(CH3)3)がTMG 、TMA 、シラン、CP2Mg ガスに加えて使用された。生成温度、ガス流量は第1実施例と同じである。トリメチルインジウムを 1.7×10-4モル/分で供給することを除いて他のガスの流量は第1実施例と同一である。
【0043】
次に、第1実施例と同様に、反射電子線回析装置を用いて、上記の高キャリア濃度p+ 層52及び低キャリア濃度p層51に一様に電子線を照射してp伝導型半導体を得ることができた。
【0044】
次に、第1実施例と同様に、高キャリア濃度n+ 層3及び高キャリア濃度p+ 層52に対するニッケルで形成された電極7、8を形成した。
【0045】
このようにして製造された発光ダイオード10の発光強度を測定したところ10 mcdであり、この発光輝度は、従来のpn接合のGaN 発光ダイオードの発光輝度に比べて 2倍であった。又、発光寿命は、104 時間であり、従来のpn接合のGaN 発光ダイオードの発光寿命に比べて1.5 倍であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体的な第1実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図。
【図2】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図3】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図4】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図5】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図6】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図7】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図8】本発明の具体的な第2実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図。
【図9】本発明の具体的な第3実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図。
【図10】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図11】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図12】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図13】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図14】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図15】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図16】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図17】本発明の具体的な第4実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図。
【符号の説明】
10…発光ダイオード
1…サファイア基板
2…バッファ層
3…高キャリア濃度n+ 層
4…低キャリア濃度n層
51,501…低キャリア濃度p層
52…高キャリア濃度p+ 層(第1高キャリア濃度p+ 層)
502…高キャリア濃度p+ 層
53…第2高キャリア濃度p+ 層
61…低不純物濃度i層
62…高不純物濃度i+ 層
7,8,71,72,81,82…電極
9,91…溝
Claims (4)
- 窒素−3族元素化合物半導体から成る素子において、
p型の層に接する正電極と、
n型の層に接する負電極とを有し、
前記負電極は、前記正電極が接するp型の層とは絶縁分離されたp型の層の表面まで連続的に形成されており、
前記正電極と前記負電極の一部とが略同一平面上に形成されていることを特徴とする窒素−3族元素化合物半導体素子。 - 前記負電極が形成されたn型の窒素−3族元素化合物半導体から成る高キャリア濃度n + 層と、
前記正電極が形成された高キャリア濃度p + 層と、
前記高キャリア濃度n + 層よりも低い電子濃度を有する窒素−3族元素化合物半導体から成る低キャリア濃度n層と、
前記高キャリア濃度p + 層よりもホール濃度の低いp型の窒素−3族元素化合物半導体から成る低キャリア濃度p 層と
を有する請求項1に記載の窒素−3族元素化合物半導体素子。 - 前記高キャリア濃度n + 層はシリコン (Si) が添加され、
前記低キャリア濃度n層は前記高キャリア濃度n + 層よりもp型層側に形成され、不純物が添加されておらず電子濃度が1× 10 14 以上であり、
前記低キャリア濃度p層及び前記項キャリア濃度p + 層はマグネシウム (Mg) の添加されていることを特徴とする請求項2に記載の窒素−3族元素化合物半導体素子。 - 前記高キャリア濃度p + 層は、ホール濃度が1× 10 16 /cm 3 以上である第1高キャリア濃度p + 層と、当該第1高キャリア濃度p + 層よりもホール濃度の高い第2高キャリア濃度p + 層とから成ることを特徴とする請求項3に記載の窒素−3族元素化合物半導体素子。
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