JP3700044B2 - 転がり部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、転がり部品、さらに詳しくは、異物が混入した汚れ油中で使用される転がり軸受の軌道輪や、転動体等の転がり軸受部品として用いられるのに適した転がり部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述した転がり軸受部品として、本出願人は、先に、0.5〜1.2重量%のCと0.7〜3.0重量%のCrを含む鋼よりなり、浸炭処理が施されて表面のCが1.5〜3.0重量%となされるとともに、表面硬さがロックウェルC硬さで63以上となされ、浸炭層に微細球状炭化物が析出させられるとともに、球状炭化物の直径が10μm以下でかつその量が面積率で15〜80%となされており、さらに浸炭層マトリックスのCが0.6〜0.7重量%となされているものを提案した(特開平7−41934号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の転がり軸受部品には次のような問題があることが判明した。すなわち、このような転がり軸受部品は、これの材料となる鋼中のC含有量0.5〜1.2重量%と比較的多いので、心部の強度および硬さを確保することができるものの靭性が劣り、この軸受部品を用いて組立てられた転がり軸受を、振動や、衝撃を受け易い機械に使用した場合、破損するおそれがある。また、材料となる鋼中のC含有量が0.5〜1.2重量%と比較的多いので、浸炭処理を施したさいに浸炭雰囲気中のCが材料中に浸入しにくくなって得られた軸受部品の表面にCが集まり、表面部のC量が、上記公報の実施例に記載されているように、実際には2.1重量%よりも多くなる。したがって、表面部の粗大炭化物量および残留オーステナイト量が多くなり、強度低下の一因となる。しかも、軸受部品の表面にCが集まると、ここに生成する炭化物が粗大化するので、上記公報の実施例に記載されているように平均粒径が4μmであったとしても、実際には粒径が5μmを越えた球状炭化物が全体の30%程度となり、場合によっては最大粒径が10μmとなり、その結果粒径が5μmを越えた球状炭化物に応力が集中し、この部分から破壊が生じるおそれがある。
【0004】
この発明の目的は、上記問題を解決し、心部の靭性が向上するとともに、表面部に多くの粗大炭化物が存在しない転がり部品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段と発明の効果】
この発明による転がり部品は、異物が混入した汚れ油中で使用される転がり部品であって、C0.15〜0.45重量%、Cr1.2〜1.6重量%、Si0.35〜0.55重量%およびMn0.35〜0.65重量%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼よりなり、浸炭処理を含む熱処理が施されて転動面の表面部のCが0.9〜2.0重量%となされるとともに、表面硬さがロックウェルC硬さで63以上となされ、浸炭層に微細球状炭化物が析出させられ、球状炭化物の平均粒径が5μm以下でかつその量が面積率で40%以下となされているとともに、球状炭化物の70%以上の粒径が5μm以下となされており、さらに浸炭層の残留オーステナイト量が20〜40%となされていることを特徴とするものである。
【0006】
上記において、通常、転がり部品は、転動面に数十〜百数十μm程度の研磨仕上げ処理が施されて用いられる。したがって、上記において、Cが0.9〜2.0重量%となされている表面部とは、研磨仕上げ処理が施された後の最表面から50μmの深さの部分までを意味するものとする。なお、浸炭層の深さは、上記研磨量に比べてかなり深く、したがって上記研磨により浸炭層の性状が影響を受けることはない。
【0007】
上記転がり部品において、材料となる鋼における合金成分の限定理由は、次の通りである。
【0008】
C:0.15〜0.45重量%
Cは転がり部品に必要な心部硬さおよび強度を確保する性質を有するが、その含有量が0.15重量%未満であるとこのような効果は得られず、0.45重量%を越えると靭性が低下する。しかも、0.45重量%を越えると浸炭処理を施したさいに浸炭雰囲気中のCが素材中に浸入しにくくなって得られた転がり部品の表面にCが集まり、表面部のC量が2.1重量%よりも多くなる。転がり部品の表面にCが集まると、ここに生成する炭化物が粗大化するので、粒径が5μm以下の球状炭化物を全体の70%以上にすることができない。したがって、C含有量は0.15〜0.45重量%の範囲内で選ぶべきである。
【0009】
Cr:1.2〜1.6重量%
Crは浸炭処理により球状炭化物を析出させる性質を有するが、その含有量が1.2重量%未満であるとこのような効果は得られず、1.6重量%を越えると球状炭化物が粗大化する。したがって、Cr含有量は1.2〜1.6重量%の範囲内で選ぶべきである。
【0010】
Si:0.35〜0.55重量%
Siは浸炭処理により析出する球状炭化物を微細化する性質を有するが、その含有量が0.35重量%未満であるとこのような効果は得られず、0.55重量%を越えると必要な浸炭深さが得られない。したがって、Si含有量は0.35〜0.55重量%の範囲内で選ぶべきである。
【0011】
Mn:0.35〜0.65重量%
Mnは焼入性を向上させる性質を有するが、その含有量が0.35重量%未満であるとこのような効果を得られず、0.65重量%を越えると表面部の残留オーステナイト量が40%を越えてしまい、硬さが低下する。したがって、Mn含有量は0.35〜0.65重量%の範囲内で選ぶべきである。
【0012】
V:0.3重量%以下
上記鋼には、さらにVが0.3重量%以下積極的に含まれていることがある。Vは、Crと同様に、浸炭処理により球状炭化物を析出させる性質を有するが、その含有量が0.3重量%を越えると球状炭化物が粗大化する。したがって、V含有量は0.3重量%以下とすべきである。
【0013】
上記転がり部品において、表面部のCの量、表面硬さ、球状炭化物の平均粒径および球状炭化物中の粒径5μm以下のものの量、球状炭化物の面積率、ならびに残留オーステナイト量の限定理由は、次の通りである。
【0014】
転動面の表面部のC量
転動面の表面部のC量が0.9重量%未満であると炭化物を均一に分散させることができず、2.0重量%を越えると表面部の粗大炭化物量や残留オーステナイト量が多くなって強度が低下する。軸受部品の表面部にCが集まると、ここに生成する炭化物が粗大化するので、実際には粒径が5μmを越えた球状炭化物が全体の40%程度となり、場合によっては最大粒径が10μmとなり、その結果粒径が5μmを越えた球状炭化物に応力が集中し、この部分から破壊が生じるおそれがある。したがって、転動面の表面部のC量は0.9〜2.0重量%の範囲内、好ましくは0.9〜1.4重量%の範囲内で選ぶべきである。
【0015】
表面硬さ
表面硬さがロックウェルC硬さ(以下、HRCと称する)で63未満であると表面硬さが十分ではなく、この転がり部品、たとえば転がり軸受部品を用いた軸受を異物が混入した汚れ油中で使用した場合に、転がり軸受部品の表面に剥離起点となる異物による圧痕等の傷が付き易くなるとともに耐摩耗性が低下して軸受の寿命が短くなるからである。したがって、表面硬さはHRC63以上とすべきである。なお、表面硬さの上限は、靭性を考慮するとHRC68程度であることが好ましい。
【0016】
球状炭化物の平均粒径および球状炭化物中の粒径5μm以下のものの量
球状炭化物の平均粒径が5μmを越えると、粒径が5μmを越える球状炭化物が全体の80%程度となり、その結果粒径が5μmを越えた球状炭化物に応力が集中し、この部分から破壊が生じるおそれがある。したがって、球状炭化物の平均粒径は5μm以下、このましくは3μm以下とすべきである。また、球状炭化物中の粒径5μm以下のものの量が70%未満であると粒径が5μmを越えた球状炭化物が全体の30%以上となり、場合によっては最大粒径が10μmとなり、その結果粒径が5μmを越えた球状炭化物に応力が集中し、この部分から破壊が生じるおそれがある。したがって、球状炭化物中の粒径5μm以下のものの量は球状炭化物全体の70%以上とすべきである。
【0017】
球状炭化物の面積率
球状炭化物の面積率が40%を越えると浸炭層マトリックスの強度が低下するので、球状炭化物の面積率は40%以下、好ましくは25%以下とすべきである。なお、面積率の下限は、必要な表面硬さを確保するために、5%程度が好ましい。ここで、面積率とは、3000倍で観察した40×30μmの視野5箇所の面積率を各々画像解析によって観察し、上記5箇所の面積率の平均値をいうものとする。
【0018】
残留オーステナイト量
残留オーステナイト量が20%未満であると靭性が低下するとともに亀裂速度が早くなってこの部品を用いた軸受の寿命が低下し、40%を越えると必要な表面硬さが確保できない。したがって、残留オーステナイト量は20〜40%の範囲内で選ぶべきである。
【0019】
この発明の転がり部品において、材料となる鋼に施される浸炭処理を含む熱処理としては、たとえば浸炭処理または浸炭焼入れ処理を施す第1工程と、焼入れ処理を施して浸炭層に微細球状炭化物を析出させる第2工程と、表面部の炭素濃度が上記第1工程で得られた表面部の炭素濃度よりも高濃度になるように高濃度浸炭焼入れ処理を施す第3工程とよりなる方法がある。上記第3工程における加熱温度は、上記第2工程の加熱温度以下であることが好ましい。上記第3工程の加熱温度が上記第2工程の加熱温度よりも高くなると、第2工程において析出した炭化物の一部がマトリックス中に溶解するおそれがあるからである。このような方法をより具体的に説明すると、次の通りである。すなわち、C3 H8 を10〜17vol %含む浸炭雰囲気中において930〜950℃の温度で3〜5時間加熱した後、油冷する第1工程と、800〜840℃の温度で0.5〜0.8時間加熱した後、油冷する第2工程と、C3 H8 を10〜17vol %含む浸炭雰囲気中において790〜840℃の温度でかつ第2工程の加熱温度以下の温度で3〜5時間加熱した後、油冷する第3工程とよりなる方法である。上記第3工程において、C3 H8 を10〜17vol %含む浸炭雰囲気中において790〜820℃の温度でかつ第2工程の加熱温度以下の温度で3〜5時間加熱した後、温度を上げて830〜840℃の温度で0.5〜0.8時間加熱し、その後油冷することが好ましい。この場合、炭化物の粗大化を伴わずに、炭化物量を増加させることが可能になる。
【0020】
この発明の転がり部品によれば、C0.15〜0.45重量%、Cr1.2〜1.6重量%、Si0.35〜0.55重量%およびMn0.35〜0.65重量%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼よりなるので、心部の強度および硬さが確保されるとともに、靭性の低下が防止される。特に、材料である鋼中のC含有量が0.15〜0.45重量%であるから、転動面の表面部のC量が2.0重量%以下になるとともに、転がり部品の表面部に生成する炭化物の粗大化を防止できる。したがって、粗大化した球状炭化物に応力が集中することによる破壊を防止することができる。また、上記鋼に、浸炭処理を含む熱処理が施されて転動面の表面部のCが0.9〜2.0重量%となされるとともに、表面硬さがロックウェルC硬さで63以上となされ、浸炭層に微細球状炭化物が析出させられ、球状炭化物の平均粒径が5μm以下でかつその量が面積率で40%以下となされているとともに、球状炭化物の70%以上の粒径が5μm以下となされており、さらに残留オーステナイト量が20〜40%となされているので、この部品を用いた転がり軸受の汚れ油中の寿命が向上する。
この発明による転がり軸受は、上述した転がり部品が用いられており、異物が混入した汚れ油中で使用されるものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の具体的実施例を比較例とともに説明する。
【0022】
実施例1〜8
C0.2重量%、Cr1.4重量%、Si0.45重量%およびMn0.50重量%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用いてスラスト玉軸受用軌道輪の素材および玉の素材を8組分つくり、これらの素材のうちの4組分に図1に示す条件(熱処理条件1)で熱処理を施すとともに、残りの4組分に図2に示す条件(熱処理条件2)で熱処理を施した。ついで、各素材に160℃で2時間加熱して焼戻し処理を施した後、各素材の表面を研磨し、その研磨量を変えることにより、表面部の性状の異なる8組のスラスト玉軸受用軌道輪および玉を製造し、これらを使って8つのスラスト玉軸受を組立てた。なお、上記焼戻しは、焼入れ処理の後、素材の靭性を向上させるために一般的に行われている工程であるので、図示は省略している。
【0023】
上記熱処理条件1は、流動層炉を用いて行ったものであり、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が4.5×10-4m3 /sとなるように供給するとともにC3 H8 ガスを流量が0.5×10-4m3 /sとなるように供給しつつ(雰囲気中のC3 H8 濃度は10vol %である)、930℃で3時間加熱した後、80℃に油冷して浸炭焼入れ処理を施す第1工程と、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が5.0×10-4m3 /sとなるように供給しつつ、840℃で0.5時間加熱した後、80℃に油冷して焼入れ処理を施す第2工程と、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が4.2×10-4m3 /sとなるように供給するとともにC3 H8 ガスを流量が0.8×10-4m3 /sとなるように供給しつつ(雰囲気中のC3 H8 濃度は16vol %である)、830℃で5時間加熱した後、80℃に油冷して高濃度浸炭焼入れ処理を施す第3工程とよりなる。
【0024】
上記熱処理条件2は、流動層炉を用いて行ったものであり、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が4.5×10-4m3 /sとなるように供給するとともにC3 H8 ガスを流量が0.5×10-4m3 /sとなるように供給しつつ(雰囲気中のC3 H8 濃度は10vol %である)、930℃で3時間加熱した後、80℃に油冷して浸炭焼入れ処理を施す第1工程と、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が5.0×10-4m3 /sとなるように供給しつつ、840℃で0.5時間加熱した後、80℃に油冷して焼入れ処理を施す第2工程と、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が4.5×10-4m3 /sとなるように供給するとともにC3 H8 ガスを流量が0.5×10-4m3 /sとなるように供給しつつ(雰囲気中のC3 H8 濃度は10vol %である)、830℃で5時間加熱した後、80℃に油冷して高濃度浸炭焼入れ処理を施す第3工程とよりなる。
【0025】
実施例9〜16
C0.2重量%、Cr1.4重量%、Si0.4重量%およびMn0.50重量%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用いてスラスト玉軸受用軌道輪の素材および玉の素材を8組分つくり、これらの素材のうちの4組分に熱処理条件1で熱処理を施すとともに、残りの4組分に熱処理条件2で熱処理を施した。ついで、各素材に160℃で2時間加熱して焼戻し処理を施した後、各素材の表面を研磨し、その研磨量を変えることにより、表面部の性状の異なる8組のスラスト玉軸受用軌道輪および玉を製造し、これらを使って8つのスラスト玉軸受を組立てた。なお、上記焼戻しは、焼入れ処理の後、素材の靭性を向上させるために一般的に行われている工程であるので、図示は省略している。
【0026】
比較例1〜4
JIS SUJ2材を用いてスラスト玉軸受用軌道輪の素材および玉の素材を4組分つくり、これらの素材に図3に示す条件(熱処理条件3)で熱処理を施した。ついで、各素材の表面を研磨し、その研磨量を変えることにより、表面部の性状の異なる4組のスラスト玉軸受用軌道輪および玉を製造し、これらを使って4つのスラスト玉軸受を組立てた。
【0027】
上記熱処理条件3は、830℃で0.5時間加熱した後油冷して焼入れ処理を施す第1工程と、180℃で2時間加熱して焼戻し処理を施す第2工程とよりなる。
【0028】
比較例5〜8
C0.2重量%、Cr1.4重量%、Si0.45重量%およびMn0.50重量%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用いてスラスト玉軸受用軌道輪の素材および玉の素材を4組分つくり、これらの素材に図4に示す条件(熱処理条件4)で熱処理を施した。ついで、各素材に160℃で2時間加熱して焼戻し処理を施した後、各素材の表面を研磨し、その研磨量を変えることにより、表面部の性状の異なる4組のスラスト玉軸受用軌道輪および玉を製造し、これらを使って4つのスラスト玉軸受を組立てた。なお、上記焼戻しは、焼入れ処理の後、素材の靭性を向上させるために一般的に行われている工程であるので、図示は省略している。
【0029】
上記熱処理条件4は、流動層炉を用いて行ったものであり、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が3.5×10-4m3 /sとなるように供給するとともにC3 H8 ガスを流量が1.5×10-4m3 /sとなるように供給しつつ(雰囲気中のC3 H8 濃度は30vol %である)、930℃で3時間加熱した後、80℃に油冷して浸炭焼入れ処理を施す第1工程と、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が5.0×10-4m3 /sとなるように供給しつつ、830℃で0.5時間加熱した後、80℃に油冷して焼入れ処理を施す第2工程と、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が5.0×10-4m3 /sとなるように供給しつつ、830℃で0.5時間加熱した後、80℃に油冷して焼入れ処理を施す第3工程と、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が4.2×10-4m3 /sとなるように供給するとともにC3 H8 ガスを流量が0.8×10-4m3 /sとなるように供給しつつ(雰囲気中のC3 H8 濃度は16vol %である)、930℃で5時間加熱した後、80℃に油冷して高濃度浸炭焼入れ処理を施す第4工程と、流動化ガスとしてN2 ガスを流量が5.0×10-4m3 /sとなるように供給しつつ、830℃で0.5時間加熱した後、80℃に油冷して焼入れ処理を施す第5工程とよりなる。
【0030】
上記実施例1〜16および比較例1〜8のスラスト玉軸受用軌道輪および玉の表面部の表面硬さ、表面部のC量、浸炭層の炭化物面積率、同じく炭化物の平均粒径、同じく平均粒径5μm以下の球状炭化物量、および同じく残留オーステナイト量を表1および表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
評価試験
上記実施例1〜16および比較例1〜8の玉軸受を用いて異物を含む汚れ油中において寿命試験を行った。寿命試験は、平均粒径27μm、最大粒径50μmでかつ表面硬さHRC65の高速度工具鋼粉を0.12重量%混入した#60スピンドル油中に玉軸受を浸漬し、スラスト荷重3.92kN(最大接触応力Pmax =5.24GPa)、回転数1200rpm(応力繰返し数30Hz)でスラスト型試験機を用いて実施した。試験機には振動計を接続しておき、試験中剥離等の異常が発生した場合には、振動値が増加して初期振動値の2倍に達したとき試験機が自動的に停止するようにしておいた。なお、試験中は油の濾過および補給は行わず、試験毎に所定量を新しい油と交換した。実施例1〜16および比較例1〜8の玉軸受の寿命も表1および表2に示す。
【0034】
そして、まず実施例1〜16および比較例5〜8における軌道輪および玉の表面硬さと異物の表面硬さとの比(硬さ比R)と、転がり寿命Lとの関係を求めた。その結果を図5に示す。図5から明らかなように、実施例1〜16の場合は、硬さ比Rが1よりも大きい場合、すなわち軌道輪および玉の表面硬さが異物の表面硬さよりも大きい場合はもちろんのこと、硬さ比Rが1以下の場合にも寿命Lが比較例5〜8に比べて延びていることが分かる。これに対して、比較例5〜8では、硬さ比Rが1以上になる場合があるものの、寿命は実施例1〜16の半分以下である。
【0035】
なお、比較例1〜4については、表2から明らかなように、硬さ比Rは全て0.96以下であり、寿命も0.85×106 サイクル以下となっている。
【0036】
次に、上記寿命試験における炭化物面積率と転がり寿命Lとの関係を求めた。その結果を図6に示す。図6から明らかなように、実施例1〜16の場合は、炭化物面積率が低いほど転がり寿命Lが延びる傾向にある。これに対し、比較例1〜4の場合は、炭化物面積率が低いにもかかわらず、表面部炭素量が少なくて表面硬さがHRC63未満となっているため転がり寿命Lは実施例1〜16の半分以下となっている。また、比較例5〜8の場合は、実施例1〜8と同じ鋼を用いているにもかかわらず、炭化物面積率が高いため、転がり寿命Lが短くなっている。
【0037】
さらに、上記寿命試験における炭化物平均粒径と転がり寿命との関係を求めた。その結果を図7に示す。図7から明らかなように、実施例1〜16の場合は、炭化物平均粒径が小さいほど転がり寿命が延びる傾向にあり、特に硬さ比Rが1以上の場合にその傾向が顕著である。これに対し、比較例1〜4の場合は、炭化物平均粒径が小さいにもかかわらず、表面部炭素量が少なくて表面硬さがHRC63未満となっているため転がり寿命Lは実施例1〜16の半分以下となっている。また、比較例5〜8の場合は、実施例1〜8と同じ鋼を用いているにもかかわらず、炭化物平均粒径が大きいため、転がり寿命Lが短くなっている。
【0038】
なお、図5〜図7において、実1〜16および比1〜8は、実施例1〜16および比較例1〜8を示すものである。
【0039】
以上の結果から、表面部炭素量が多いにもかかわらず、炭化物面積率および炭化物平均粒径がともに低い値となっているもの、換言すれば、微小な球状炭化物が浸炭層マトリクス中にまんべんなく分散した状態にあるものが、転がり寿命Lが長くなることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の熱処理条件1を示す線図である。
【図2】実施例の熱処理条件2を示す線図である。
【図3】比較例1〜4の熱処理条件3を示す線図である。
【図4】比較例5〜8の熱処理条件4を示す線図である。
【図5】実施例1〜16および比較例5〜8における硬さ比と転がり寿命との関係を示すグラフである。
【図6】実施例1〜16および比較例1〜8における炭化物面積率と転がり寿命との関係を示すグラフである。
【図7】実施例1〜16および比較例1〜8における炭化物平均粒径と転がり寿命との関係を示すグラフである。
Claims (6)
- 異物が混入した汚れ油中で使用される転がり部品であって、C0.15〜0.45重量%、Cr1.2〜1.6重量%、Si0.35〜0.55重量%およびMn0.35〜0.65重量%を含み、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼よりなり、浸炭処理を含む熱処理が施されて転動面の表面部のCが0.9〜2.0重量%となされるとともに、表面硬さがロックウェルC硬さで63以上となされ、浸炭層に微細球状炭化物が析出させられ、球状炭化物の平均粒径が5μm以下でかつその量が面積率で40%以下となされているとともに、球状炭化物の70%以上の粒径が5μm以下となされており、さらに浸炭層の残留オーステナイト量が20〜40%となされている転がり部品。
- 鋼が、さらに0.3%以下のVを含む請求項1記載の転がり部品。
- 転動面の表面部のCが0.9〜1.4重量%である請求項1または2記載の転がり部品。
- 球状炭化物の平均粒径が3μm以下である請求項1、2または3記載の転がり部品。
- 球状炭化物の量が面積率で25%以下である請求項1、2、3または4記載の転がり部品。
- 請求項1〜5のうちのいずれかに記載の転がり部品が用いられており、異物が混入した汚れ油中で使用される転がり軸受。
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1998
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