JP3699994B2 - 光による水濡れ性制御型フイルム、及びその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光により非接触で膜の水に対する濡れ性及び膨潤性が、可逆的に変化する吸水性材料、特に、生体適合材料、機能性分離膜、イオン透過膜、人工筋肉、人工眼、ドラックデリバリーシステム、メカノケミカル材料、センサー、スイッチ、記憶素子、イオン交換樹脂、マイクロマシーン、印刷板、レジストなどに利用可能な光応答性高分子膜及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ある種のN-置換アルキルアミドは相転移温度を境にそれ以下では水溶性を示し、それ以上では急激に不溶化して沈殿を生起する。とくにポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)は32℃で転移が起こり、転移が急激で濃度や分子量に依存しないといった特徴が知られている。このような性質持つ高分子量体を固体表面に導入して、温度変化のみで親水性・疎水性を変化させ、細胞培養後の細胞の回収や、クロマトグラフィーへの展開が行われている{1)T.Okano, N.Yamada, H.Sakai, Y.Sakurai, Journal of Biomedical MaterialsResearch,27巻,1243−1251ページ(1993年);2)T.Okano, N.Yamada, M.Okuhara, H.Sakai, Y.Sakurai, Biomaterials, 16巻,297−303ページ(1995年);3)H.Kanazawa, K.Yamamoto, Y.Matsushima, N.Takai, A.Kikuchi, Y.Sakurai,T.Okano, Analytical Chemistry,68巻,100−105ページ(1996年);4)H.Kanazawa, Y.Kashiwase, K.Yamamoto, Y.Matsushima, A.Kikuchi, Y.Sakurai, T.Okano, Analytical Chemistry,69巻,823−830ページ(1997年)}。また、その特性を生かして使用後予備加熱することにより水分を除去することができる紙おむつ及びその処理方法(特開2000−142816)、親水性の活性エネルギー線硬化重合体を用いたインク吸収性インクジェットプリンター用記録シート(特開2001−206912)、湿度の大きな変化を押さえ物品等の保存に適する環境を提供する物品保存用シート(特開2000−142816)、高温下において浸透水量が低下する陰イオン交換膜(特開平11−172024)などが提案されている。また、光反応性部位との組み合わせでは、アジド化合物を有するレジスト(特開平7−311460)、及びアジド及びジアゾニュウム基をもつレジスト膜(特開平7−159988)が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の高分子膜はその優れた相転移の熱刺激に対する応答性を利用した応用例がほとんどであり、ホトレジスト膜も不可逆な反応を利用したものである。相転移を発現させるためには系全体の温度変化を必要とし、また光反応性膜においては、繰り返し特性・再利用性がないといった欠点がある。
【0004】
本発明の目的は、波長の異なる光刺激により非接触で膜の水に対する濡れ性(以下、単に「濡れ性」ということがある)が可逆的に変化し、さらに再利用が可能な光応答性高分膜、及びその製造法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、光異性化反応を示すアゾベンゼン誘導体を含むアクリル及びアクリルアミドモノマーと、熱相転移を示す水溶性アルキルアクリルアミドとを共重合することによって得られる高分子量体からなる、光による水濡れ性制御型フイルムが提供される。
すなわち、本発明はつぎのような構成を有するものである。
1.下記一般式1で表される繰り返し単位を有する共重合体からなり、波長の異なる光の照射により膜の水に対する濡れ性が可逆的に変化することを特徴とする光による水濡れ性制御型フイルム。
【0006】
【化3】
Figure 0003699994
【0007】
式中R、R、Rはそれぞれ独立して水素、メチル、エチル、イソプロピル基を表し、lは2又は3である。
そして、n及びmは1以上の整数を表し、n対mの比率は1対200から1対5である。
2.フイルムが紫外線(特に波長365nmを中心とする光)を照射したときに水に対する濡れ性が向上し、該濡れ性が向上したフイルムに可視光を照射すると再度水に対する濡れ性を喪失するものであることを特徴とする1に記載の光による水濡れ性制御型フイルム。
3.フイルムが成膜後、熱処理されたものであることを特徴とする1又は2に記載の光による水濡れ性制御型フイルム。
4.式1において、n対mが1対100〜1対10であることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の光による水濡れ性制御型フイルム。
5.下記一般式1で表される繰り返し単位を有する共重合体を有機溶媒又は水性有機溶媒に溶解した溶液から、キャスト法又はスピンコート法によりフイルムを作製することを特徴とする、波長の異なる光の照射により水に対する膜の濡れ性が可逆的に変化する光による水濡れ性制御型フイルムの製造方法。
【0008】
【化4】
Figure 0003699994
【0009】
式中R、R、Rはそれぞれ独立して水素、メチル、エチル、イソプロピル基を表し、lは2又は3である。
そして、n及びmは1以上の整数を表し、n対mの比率は1対200から1対5である。
6.成膜後、熱処理することを特徴とする5に記載の光による水濡れ性制御型フイルムの製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について、更に詳細に説明する。
本発明の光による水濡れ性制御型フイルムは、光反応性分子を含むアクリル及びアクリルアミドモノマーと、水溶性アルキルアクリルアミドとを共重合することによって得られる高分子を成膜し作られる。
【0011】
光反応性部位としては、膜の濡れ性の光変化を繰り返し起こすために、繰り返し異性化が可能なアゾベンゼン、アゾピリジン、これらの置換体もしくは誘導体などが挙げられる。光反応性部位の置換基としてはメチル、エチル、イソプロピルなどが挙げられる。
【0012】
水溶性アルキルアクリルアミド部位としては、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0013】
本発明における成膜法としては、前述のモノマーの混合物をラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合法などを用いて高分子量体にし、これを適当な溶媒に溶解してガラス、プラスチックや金属製の板にスピンコートもしくはキャストする方法が挙げられる。フイルムの膜厚は用途によって変わるが、0.01−500μmが好ましく、より好ましくは0.05−1μmである。0.01μm未満では膜に欠陥が生じるし、500μmより厚いと色素の吸収効率が極端に低下し、また膜表面を平たんに成形することが難しくなる。
【0014】
光反応性分子を含むアクリル及びアクリルアミドモノマーと水溶性アルキルアクリルアミドの高分子量体中での光反応性ユニットの含有率はモル比で0.1−20%、好ましくは0.5−5%である。0.1%より少ないと膜の濡れ性が光照射に対して応答しなくなり、20%より多いと水に対して疎水的になりすぎるため親水―疎水の変化が現れなくなる。
【0015】
共重合体の平均分子量(重量平均)は、成膜性があれば特に限定されるものではないが、好ましくは5,000−10,000,000、特に好ましくは10,000−100,000である。5,000未満では、成膜性が劣る場合があり、一方1,000,000を超えると、合成が困難となる場合がある。
【0016】
成膜に使用する溶媒としては、ポリマーが溶解し、スピンコートおよびキャスト法により成膜化が可能なものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、エーテル、トルエン、キシレン、アセトニトリル、水及びこれらの混合液などが挙げられる。溶液の濃度は、スピンコート又はキャスト法によりフイルム形成ができれば特に限定されるものではないが、好ましくは0.1−20重量%、更に好ましくは0.3−5重量%である。0.1重量%未満では、膜に欠陥が生じる。また、20重量%を超えると、ポリマーが溶解されない場合があるし、溶解しても溶液の粘度が高くなりすぎる。次に、この溶液からガラス、プラスチック、金属等の基板上にスピンコート又はキャスト法にて成膜する。
【0017】
成膜後及び成膜中の膜の熱処理は、室温〜200℃、より好ましくは40〜100℃である。室温未満の温度では、高分子鎖の運動性が抑制されるため効果が期待できない。また、200℃を超えると、ポリマーが分解、酸化等の変性を起こすので好ましくない。
また、成膜過程において光及び熱架橋剤を添加して膜を架橋したり、成膜後電子線等で架橋処理をしてもよい。
【0018】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
亜硝酸ナトリウム1.35gの3.85g水溶液を、3−イソプロピルアニリン2.5gの6N-塩酸15ml溶液に0℃でゆっくりと加え、20分攪拌した後これを、フェノール1.9gの飽和炭酸カリウム水溶液にゆっくりと加える。これに飽和炭酸カリウム水溶液を適宜加えてpHを7−9に保ち、2時間攪拌した。全ての操作は、氷浴を用い0℃で行った。
室温に戻し3時間攪拌を続けた後、エーテル抽出、水洗いを行い油相の脱水乾燥後溶媒留去したのち、酢酸エチル:ヘキサン=1:9の展開溶媒でクロマトグラフィーにより精製して3−イソプロピル−4’−ヒドロキシアゾベンゼン2.5gを得た。このアゾベンゼン1.78gをジメチルアセトアミド5mlに溶解し、これにジブロモエタン4.2gと炭酸カリウム1.024gを加え65℃で一日攪拌し、エーテル抽出後水洗いし、脱水乾燥後溶媒を留去して酢酸エチル:ヘキサン=1:9の溶媒でクロマトグラフィーにより精製して、3−イソプロピル−4’−(2−ブロモエトキシ)アゾベンゼン1.15gを得た。
これをテトラヒドロフラン10mlと7N−アンモニアメタノール溶液10mlの混合液に溶解し、アンプルに入れ封管し、80℃で1日反応させた。反応後、酢酸エチルとエタノールの混合用溶媒を加えて水洗し、脱水乾燥後溶媒を留去して3−イソプロピル−4’−(2−アミノエトキシ)アゾベンゼン0.9gを得た。これとトリエチルアミン0.35gとアクリル酸クロライド0.3gとを脱水ジクロロメタンに溶解し、室温で2時間攪拌した。その後エーテルと酢酸エチルを加えこれを水洗し、脱水乾燥後溶媒を留去して酢酸エチル:ヘキサン=2:1の溶媒でクロマトグラフィーにより精製して、2−[4−(3−イソプロピルフェニルアゾ)フェノキシ]エチルアクリルアミド0.5gを得た。
【0019】
4つのアンプルにイソプロピルアクリルアミド0.5gと得られたアゾベンゼンモノマー5mg(1重量%)、15mg(3重量%)、35mg(7重量%)、75mg(15重量%)をそれぞれベンゼン2mlのベンゼンに溶解し、AIBN〔2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)〕5.5mgを加え脱気封管後60℃で14時間振とうし、その後エチルエーテルで再沈殿精製して重合体を得た。
【0020】
仕込み比1重量%で得られたポリマーは、重合中にベンゼンからの析出が起こりゲル化してしまった。また15重量%のポリマーは、水にまったく親和せず溶けなかった。
得られたポリマーの分子量は、ポリスチレン標準のGPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフ法)による重量平均分子量で見積もられ、その値は仕込み比3重量%のポリマーで18,100、7重量%のポリマーで24,500であった。
【0021】
このポリマーを冷水に溶解し、光照射前後でのポリマーの析出温度の変化を調べた。700nmの光をモニター光とし、紫外線としては365nmの水銀ランプの輝線を使用し、可視光としては436nmの輝線を用いた。結果を図1、図2に示す。水溶液では仕込み比3重量%,7重量%いずれのポリマーも、紫外線照射前後でポリマーの析出温度が異なることが分かった。
【0022】
仕込み比3重量%のポリマーをブタノールと水の混合溶性に溶解し、1重量%水溶性ビスアジド光架橋剤(東洋合成工業)を添加し、これを2000rpmで30秒という条件でスライドガラス上にスピンコートし、紫外線をあて光架橋させ、さらに水に浸けて未架橋部を取り除いた。このフイルムに、紫外線照射と可視線照射をおこない基板を26℃に保ち、それぞれの表面に水滴を垂らしたところ接触角が約38°と約55°と異なっていた。
【0023】
(実施例2)
上述の仕込み比7重量%のポリマー0.13gをTHF4mlに溶解し、1500rpmで20秒でスライドガラス上にスピンコートした。この膜を60℃で30分アニールした後、基板を6℃に保ち水滴を垂らしたところ、接触角は約90°であった。さらに、この基板に紫外線を照射して水滴を垂らすと、滴下直後その接触角は約41°であった。その後ほぼ完全にこの液滴はポリマー膜上に広がった。さらに再びこの膜に可視光線を当てて水滴による接触角の測定を行ったところ、再び90°以上の高い値を示した。
以上の結果から、この膜は、水に対する濡れ性及び吸湿性を光で可逆的に制御することのできるものであることが判明した。
【0024】
【発明の効果】
本発明により得られる光による水濡れ性制御型フイルムは、光により非接触で膜の濡れ及び膨潤性が変化するので光刺激応答型の吸水性材料、特に、生体適合材料、機能性分離膜、イオン透過膜、人工筋肉、人工眼、ドラックデリバリーシステム、メカノケミカル材料、センサー、スイッチ、記憶素子、イオン交換樹脂、マイクロマシーン、印刷板、レジストなどに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で、アゾベンゼンモノマーの仕込み比を3重量%として得られたポリマーの、光照射時の析出温度の変化を示す図である。図中、non−iraadiationは未照射時の挙動、UV−irradiationは紫外線照射時の挙動、そしてVis−irradiationは可視光照射時の挙動を示す。
【図2】 実施例1で、アゾベンゼンモノマーの仕込み比を7重量%として得られたポリマーの、光照射時の析出温度の変化を示す図である。図中、non−iraadiationは未照射時の挙動、UV−irradiationは紫外線照射時の挙動、そしてVis−irradiationは可視光照射時の挙動を示す。

Claims (6)

  1. 下記一般式1で表される繰り返し単位を有する共重合体からなり、波長の異なる光の照射により膜の水に対する濡れ性が可逆的に変化することを特徴とする光による水濡れ性制御型フイルム。
    Figure 0003699994
    式中R、R、Rはそれぞれ独立して水素、メチル、エチル、イソプロピル基を表し、lは2又は3である。
    そして、n及びmは1以上の整数を表し、n対mの比率は1対200から1対5である。
  2. フイルムが紫外線を照射したときに水に対する濡れ性が向上し、該濡れ性が向上したフイルムに可視光を照射すると再度水に対する濡れ性を喪失するものであることを特徴とする請求項1に記載の光による水濡れ性制御型フイルム。
  3. フイルムが成膜後、熱処理されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光による水濡れ性制御型フイルム。
  4. 式1において、n対mが1対100〜1対10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光による水濡れ性制御型フイルム。
  5. 下記一般式1で表される繰り返し単位を有する共重合体を有機溶媒又は水性有機溶媒に溶解した溶液から、キャスト法又はスピンコート法によりフイルムを作製することを特徴とする、波長の異なる光の照射により水に対する膜の濡れ性が可逆的に変化する光による水濡れ性制御型フイルムの製造方法。
    Figure 0003699994
    式中R、R、Rはそれぞれ独立して水素、メチル、エチル、イソプロピル基を表し、lは2又は3である。
    そして、n及びmは1以上の整数を表し、n対mの比率は1対200から1対5である。
  6. 成膜後、熱処理することを特徴とする請求項5に記載の光による水濡れ性制御型フイルムの製造方法。
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