JP3699936B2 - 道路橋継目部の構造、道路橋継目部への伸縮継手の施工方法、並びに道路橋継目部の補修方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路橋継目部の構造、道路橋継目部への伸縮継手の施工方法、並びに道路橋継目部の補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
道路橋継目部では、遊間の両側に道路橋本体の上面よりも低くなった段部を形成し、遊間に伸縮継手を配置しその両側の段部に伸縮継手定着用の後打ちコンクリートを打設した構造が一般に採用されている。従って、道路橋継目部の補修(伸縮継手の交換)にあたっては、既設伸縮継手を撤去するために上記後打ちコンクリートをコンクリートブレーカによって砕いて除去しなければならない。このとき、後打ちコンクリートだけでなく、道路橋本体の上記段部を形成している端部コンクリートも斫られてしまったり、あるいはこの端部コンクリートにクラックが入ったりすることがある。
【0003】
その場合、上記端部コンクリートは、樹脂コンクリート等による修復が施されるが、厚みの減少やクラックによる弱体化は避けられず、そのため伸縮継手の支持強度が低くなる。そうなると、伸縮継手の安定性が悪くなって車両通過時の衝撃で傷みやすくなり、その耐用年数が短くなって補修回数が増え、そのために端部コンクリートがさらに弱体化する、という悪循環になってしまう。
【0004】
これに対して、実公昭59−7365号公報には、道路橋本体端部の段部にこれを覆う面部材を固定することが記載されている。このようにすれば、道路橋本体端部の強度が高くなるとともに、コンクリートブレーカによる後打ちコンクリートの斫り作業の際に道路橋本体の端部コンクリートを余計に斫ってしまうことが避けられる。
【0005】
また、特許第3065931号公報には、鋼道路橋の主桁間に補強部材を設けて道路橋本体の端部コンクリートを下側から補強することが記載されている。このようにすれば、道路橋継目部の補修に伴う端部コンクリートの弱体化を防止する上で有利になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の補強構造では、道路橋継目部の補修の際には、相変わらず後打ちコンクリートの大掛かりな破砕工事を行なう必要がある。従って、その際に発生する振動・騒音・粉塵等の工事公害により、周辺住民に多大な迷惑をかけるという問題がある。また、工事時間も比較的長くなって費用が嵩むとともに、工事のために交通規制をする期間も長くなり、交通渋滞を招くなど交通の安全に支障を来す。
【0007】
また、上記従来の補強構造では、補強はされていても、コンクリートブレーカによる打撃振動によって上記端部コンクリートにクラックを生じ、その弱体化を招くことは避けられない。このことは、道路橋本体だけでなく、橋台にも同様に言えることである。
【0008】
そこで、本発明は、道路橋本体や橋台の補強を図りながら、さらに道路橋継目部を補修する際の伸縮継手定着用コンクリートを簡単に除去できるようにして、当該工事に伴う振動・騒音・粉塵の低減、工事時間の短縮、道路橋本体や橋台の保護を図るものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
まず、請求項1に係る発明は、道路橋継目部の構造であって、
道路橋継目部の遊間を存して相対する道路橋本体端部又は橋台に、道路橋本体上面よりも低い段部が形成され、
上記段部にこれを覆う補強板が固定され、
上記補強板の上にコンクリート受け板が重ねられ、
上記コンクリート受け板の上に複数の支持鉄筋が間隔をおいて設けられているとともに、該コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートが打設されていて、
上記伸縮継手定着用コンクリートを上記複数の支持鉄筋及びコンクリート受け板と共に上記補強板から取り外すことができるように、上記複数の支持鉄筋は上記コンクリート受け板に立設されて上記補強板には固定されておらず、該コンクリート受け板は上記補強板に取外し可能に結合されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、道路橋継目部への伸縮継手の施工方法であって、
道路橋継目部の遊間を存して相対する道路橋本体端部又は橋台に、道路橋本体上面よりも低く且つ補強板で覆われた段部を形成し、
上記補強板の上に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設されたコンクリート受け板を重ねて該補強板に取外し可能に結合し、
上記遊間上に伸縮継手を配置し、
上記伸縮継手を上記支持鉄筋に結合し、
上記コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートを打設することを特徴とする。
【0011】
従って、上記請求項1,2の各発明においては、道路橋継目部の補修の際には伸縮継手定着用コンクリートに穴を穿ち、或いは当該コンクリートの部分的な取り壊しによって、コンクリート受け板と補強板との結合部を露出させてその結合を解除すればよい。或いは、予め伸縮継手定着用コンクリートに穴を形成してこれを蓋等で塞いでおき、補修の際に蓋等を除去して穴を開口させることにより、当該結合部を露出させてその結合を解除するようにすることができる。これにより、伸縮継手定着用のコンクリートをコンクリート受け板及び支持鉄筋と共に補強板から取り外すことができる。
【0012】
すなわち、道路橋継目部の補修工事において、伸縮継手定着用コンクリートの全体をコンクリートブレーカ等で破砕する必要がない。従って、この工事の際の振動・騒音・粉塵の発生を抑えることができるとともに、道路橋本体又は橋台の段部を傷めること、ひいてはその弱体化を招くことが避けられる。また、上記コンクリート全体を破砕する必要がないことから、伸縮継手の交換が容易になり、工事時間の短縮にも有利になる。
【0013】
上記伸縮継手定着用コンクリートの取外しにおいては、当該コンクリートは伸縮継手と一体にしたまま補強板から外すようにしても、当該コンクリートを伸縮継手から切り離して取り外すようにしてもよい。
【0014】
請求項3に係る発明は、道路橋継目部の補修方法であって、
道路橋継目部に設置された既設伸縮継手を撤去するとともに、該道路橋継目部の遊間を存して相対する道路橋本体端部又は橋台に、道路橋本体上面よりも低い段部を形成し、
上記段部にこれを覆う補強板を固定し、
上記補強板の上に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設されたコンクリート受け板を重ねて該補強板に取外し可能に結合し、
上記遊間上に新たな伸縮継手を配置し、
上記伸縮継手を上記支持鉄筋に結合し、
上記コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートを打設することを特徴とする。
【0015】
従って、道路橋本体端部又は橋台の段部を補強板によって補強することができるとともに、道路橋継目部に再度の補修が必要になったときは、請求項1,2に係る発明と同様に伸縮継手定着用のコンクリートをコンクリート受け板及び支持鉄筋と共に補強板から簡単に取り外すことができるため、当該補修工事に伴う振動・騒音・粉塵の発生を少なくすることができ、また、上記段部の弱体化を避けることができ、さらに、工事を短時間に終了させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載された構造の道路橋継目部の補修方法であって、
上記伸縮継手定着用コンクリートに上記コンクリート受け板と補強板との結合部が露出するように穴をあけて、該コンクリート受け板の補強板への結合を解除し、
上記伸縮継手定着用コンクリートを上記コンクリート受け板及び上記複数の支持鉄筋と共に撤去するとともに、上記伸縮継手を撤去し、
しかる後に上記補強板に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設された新たなコンクリート受け板を取外し可能に結合し、
上記遊間上に新たな伸縮継手を配置して上記支持鉄筋に結合し、上記コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートを新たに打設することを特徴とする。
【0017】
従って、当該補修において、既設の伸縮継手定着用コンクリートは、これに穴をあけるだけで、その全体を破砕することなく撤去することができ、当該補修工事による振動・騒音・粉塵の発生を抑えることができるとともに、道路橋本体又は橋台の段部を傷めること、ひいてはその弱体化を招くことが避けられ、さらに、工事時間の短縮にも有利になる。
【0018】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、道路橋本体端部又は橋台に形成された段部にこれを覆う補強板が固定され、該補強板の上に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設されたコンクリート受け板が重ねられて取外し可能に結合され、該コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートが打設されているから、道路橋継目部の補修の際、伸縮継手定着用コンクリートはその全体を破砕することなく簡単に撤去することができ、伸縮継手の交換が容易になるとともに、振動・騒音・粉塵の発生を抑えることができ、道路橋本体又は橋台の段部の弱体化が避けられ、しかも、当該工事を短時間に終了させることができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、道路橋継目部の遊間を存して相対する道路橋本体端部又は橋台に補強板で覆われた段部を形成し、該補強板の上に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設されたコンクリート受け板を重ねて取外し可能に結合し、上記遊間上に伸縮継手を配置して上記支持鉄筋に結合し、コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートを打設するようにしたから、請求項1に係る発明と同様に、道路橋継目部の補修の際、伸縮継手定着用コンクリートはその全体を破砕することなく簡単に撤去することができ、伸縮継手の交換が容易になるとともに、振動・騒音・粉塵の発生を抑えることができ、道路橋本体又は橋台の段部の弱体化が避けられ、しかも、当該工事を短時間に終了させることができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、道路橋継目部に設置された既設伸縮継手を撤去するとともに、該道路橋継目部の遊間を存して相対する道路橋本体端部又は橋台に段部を形成し、該段部にこれを覆う補強板を固定し、該補強板の上に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設されたコンクリート受け板を重ねて取外し可能に結合し、上記遊間上に新たな伸縮継手を配置して上記支持鉄筋に結合し、上記コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートを打設するようにしたから、道路橋本体端部又は橋台の段部を補強板によって補強することができるとともに、道路橋継目部に再度の補修が必要になったときは、請求項1,2に係る発明と同様に伸縮継手定着用のコンクリートをコンクリート受け板と共に補強板から簡単に取り外すことができるため、伸縮継手の交換が容易になるとともに、振動・騒音・粉塵の発生を抑えることができ、上記段部の弱体化を避けることができ、さらに、工事を短時間に終了させることができる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、請求項1に記載された構造の道路橋継目部の補修方法であって、上記伸縮継手定着用コンクリートに上記コンクリート受け板と補強板との結合部が露出するように穴をあけて、該コンクリート受け板の補強板への結合を解除し、上記伸縮継手定着用コンクリートを上記コンクリート受け板及び支持鉄筋と共に撤去するとともに、上記伸縮継手を撤去し、しかる後に上記補強板に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設された新たなコンクリート受け板を取外し可能に結合し、遊間上に新たな伸縮継手を配置して上記支持鉄筋に結合し、上記コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートを新たに打設するようにしたから、既設の伸縮継手定着用コンクリートはこれに穴をあけるだけでその全体を破砕することなく簡単に撤去することができ、伸縮継手の交換が容易になるとともに、振動・騒音・粉塵の発生を抑えることができ、道路橋本体又は橋台の段部の弱体化が避けられ、工事時間の短縮にも有利になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
−実施形態1−
<道路橋継目部構造>
図1に示す道路橋継目部構造において、1は道路橋本体(床版)、2は鋼桁、3は道路橋本体の伸縮を許容する遊間、4は遊間上に設置された伸縮継手、5は伸縮継手4の両側に打設された伸縮継手定着用の後打ちコンクリート、6は舗装である。
【0024】
遊間3の両側の道路橋本体1の端部には該道路橋本体上面よりも低くなった段部7が形成されている。この段部7は補強板8によって覆われている。補強板8は道路橋本体1に埋設されたアンカー11によって段部7に固定されている。補強板8の上にはコンクリート受け板12が設けられている。コンクリート受け板12は、補強板8に重ねられた横板部と、該横板部の一側より立ち上がった縦板部とからなる断面L字状のものであり、横板部が補強板8に取外し可能に結合されている。コンクリート受け板12の道路橋幅員方向の長さは例えば1m前後ないしは2m程度とすればよい。
【0025】
すなわち、補強板8の上面には複数のスタッドボルトが適宜の間隔をおいて設けられている。各スタッドボルトはコンクリート受け板12の横板部に形成されたボルト孔を貫通して該横板部の上に突出している。そうして、コンクリート受け板12は、スタッドボルトに袋ナット13を適用して締め付けることにより、補強板8に結合されている。この場合、「取外し可能」とは、袋ナット13を外せば、コンクリート受け板12を補強板8から取り外すことができることを意味する。コンクリート受け板12の横板部には複数の支持鉄筋14が適宜の間隔をおいて立設されている。
【0026】
補強板8及びコンクリート受け板12は、金属製とすることが好ましく、耐食性の観点からはステンレス製とすることがさらに好ましい。
【0027】
伸縮継手4は、一対の金属製波板15と底板16と波板間に設けられたシール部材17とによって構成されている。一対の波板15は、その板面を縦にし且つ互いの凹部と凸部とを対向させて設けられている。これにより、波板15,15間に橋軸方向に出入りのある波形遊隙が形成されている。底板16は各波板15の背部の凹部になった部分の下端に設けられている。
【0028】
波板15からは複数のアンカー18が背部に突出している。このアンカー18と上記支持鉄筋14とに交差するように通し筋19の配筋がなされ、支持鉄筋14、アンカー18及び通し筋19は互いの交点が溶接されている。
【0029】
そうして、上記波板15の背部の底板16の上及び上記コンクリート受け板12の上に後打ちコンクリート5が打設されている。後打ちコンクリート5の上面は路面高さになっている。
【0030】
<道路橋継目部への伸縮継手の施工方法>
図2に示すように、道路橋本体1の端部に、道路橋本体上面よりも低く且つ補強板8で覆われた段部7を形成する。すなわち、道路橋を新設するときに、道路橋本体1の段部形成位置に、スタッドボルト10及びアンカー11を備えた補強板8を配置し、さらに段部7の側面を形成する型枠、その他の必要な型枠を配置してコンクリートを打設する。これにより、補強板8で覆われた段部7を形成する。この場合、補強板8はコンクリート型枠として機能する。
【0031】
そうして、遊間両側の補強板8,8に遊間閉塞板を渡し、遊間3の上及び補強板8の上に砕石等を詰め、この詰め物の上を通るように連続舗装を施し、遊間3及び補強板8の上の舗装、詰め物及び遊間閉塞板を撤去する。これにより、図2に示す状態になる。
【0032】
次に図3に示すように、補強板8の上に支持鉄筋14を備えたコンクリート受け板12を重ね、スタッドボルト10に袋ナット13を適用してコンクリート受け板12を補強板8に取外し可能に結合する。次に、一対の波板15,15、底板16及びシール部材17を備え且つアンカー18が突設された伸縮継手4を遊間3の上に配置し、さらに通し筋19の配筋を行ない、支持鉄筋14、アンカー18及び通し筋19の各交点を溶接する。また、波板15の背部下端には遊間3へのコンクリート漏れを阻止する堰板20を配置する。
【0033】
そうして、波板15の背部の底板16の上及びコンクリート受け板12の上に後打ちコンクリート5を上面が路面高さになるように打設する。これにより、図1に示す道路橋継目部構造が得られる。
【0034】
<道路橋継目部の補修>
既設の伸縮継手4を新しいものに交換する必要を生じたときは、図4に示すように、伸縮継手4の両側、並びに後打ちコンクリート5と舗装6との境界部に遊間3の長手方向に沿って延びる切れ目21,22を入れる。伸縮継手4の両側の切れ目21は、できるだけコンクリート受け板12の横板部に達する深さとする。また、堰板20の背部を通るようにする。従って、切れ目21を入れたときにアンカー18は切断されることになる。後打ちコンクリート5と舗装6との境界の切れ目22は、コンクリート受け板12の縦板部の背面を通って、できるだけ補強板8に達する深さとする。この切れ目21,21はコンクリートカッターによって形成することができる。
【0035】
また、後打ちコンクリート5における補強板8とコンクリート受け板12との結合部、すなわち、袋ナット13の部位に穴23を穿ち、袋ナット13を露出させる。この穴23は例えば図5に示すコア抜き装置32を用いて穿つことができる。コア抜き装置32は、基板33にヒンジ34によって傾倒自在に支持されたポール35と、このポール35にハンドル36によって移動自在に支持されたドリル本体37とを備え、ドリル本体37にコアビット38が取付けられている。ドリル本体37にはコアビット38を回転駆動するモータ39が取付けられている。基板33とポール35の上部とはダンパー41で連結されている。ダンパー41にはそのロッド42の突出量を調節するクランプレバー43が設けられ、この突出量の調節により、ポール35を垂直状態にし又は所望角度に傾倒できるようになっている。
【0036】
穴23の形成にあたっては、クランプレバー43を操作してポール35を図5に示す垂直状態にし、モータ39を作動させハンドル36を操作してコアビット38を下降させていくことによって穴23を形成する。しかる後、コアビット38を後退させ、このコアビット38の内部に残るコア(後打ちコンクリート5から刳り貫かれた円柱状のもの)を抜く。
【0037】
そうして、道路橋継目部に道路橋幅員方向に所定間隔をおいて橋軸方向の切れ目を入れて伸縮継手4及び後打ちコンクリート5を分断し、分断された伸縮継手4の各部を底板16の上のコンクリートと共に上方へ抜いて撤去する(図6参照)。次に工具(ソケットレンチ)を用いて袋ナット13をスタッドボルト10から外し、分断された後打ちコンクリート5をコンクリート受け板12と共に補強板8から上方へ抜いて撤去する(図7参照)。上記橋軸方向の切れ目をコンクリート受け板12の道路橋幅員方向の継目部位に入れるようにすれば、後打ちコンクリート5をコンクリート受け板12と共に撤去する作業が容易になる。
【0038】
上記橋軸方向の切れ目は、必ずしもコンクリート受け板12の継目部位に入れることを要するものではない。すなわち、道路橋幅員方向の適宜の間隔で今日軸方向の切れ目を入れ、そのときにコンクリート受け板12をも分断するようにして、上記後打ちコンクリート5及びコンクリート受け板12の撤去を行なうようにしてもよい。
【0039】
これにより、道路橋継目部は図2に示すように補強板8が残った状態になる。従って、先に説明した施工方法と同様に、新たなコンクリート受け板12の補強板8への結合、伸縮継手4の配置、通し筋19の配筋、堰板20の設置、後打ちコンクリート5の打設を行なうことにより、図1に示す道路橋継目部構造を再構築することができる。
【0040】
<作用効果>
上述の如き道路橋継目部構造であれば、道路橋本体1の段部7に設けられた補強板8によって、道路橋本体端部の耐荷強度が高くなり、伸縮継手4の取付安定性が増すため、その耐久性が向上する。
【0041】
そうして、道路橋継目部の補修(伸縮継手の交換)においては、後打ちコンクリート5にコンクリートカッターで切れ目21,22を入れ、穴23を穿つことにより、伸縮継手4を撤去し、後打ちコンクリート5をコンクリート受け板12と共に撤去することができる。もちろん、コア抜きをせずにコンクリートブレーカによって後打ちコンクリート5に穴をあけて袋ナット13を露出させるようにしてもよいが、その場合でも、後打ちコンクリート5の部分的な破砕でよい。
【0042】
すなわち、後打ちコンクリート5の全体をコンクリートブレーカで破砕する必要はなく、工事に伴って発生する振動・騒音・粉塵は従来に比べると格段に少なくなる。また、このように後打ちコンクリート5を全面的に破砕する必要がないから、従来のようなコンクリートブレーカで道路橋本体1の段部7を不必要に斫ってしまう問題、或いは道路橋本体1にクラックを生ずるという問題もなくなる。さらに、工事を短時間で終了させる上でも有利になる。
【0043】
また、補強板8とコンクリート受け板12との結合に袋ナット13を用いたから、該ナット13とスタッドボルト10との螺合部にコンクリートが付着することがなく、工具によるナット13の取外しが容易になる。
【0044】
上記補強板8とコンクリート受け板12との間にはゴムシート、瀝青シート、繊維強化プラスチックシート等の防水性を有するシートを設けることがある。このようにすれば、補強板8を腐食から保護することができる。
【0045】
また、防水性はなくとも、シートを補強板8とコンクリート受け板12との間に設ければ、車両通過時にコンクリート受け板12が上下に振動しても、補強板8を直に叩かないから、騒音の発生防止に有利になる。
【0046】
また、シートに代えて補強板8の表面に樹脂材を塗布するようにしてもよい。
【0047】
また、上記補修工事においては、伸縮継手4を後打ちコンクリート5から分断して撤去するようにしたが、後打ちコンクリート5と舗装6との境界部のみに切れ目22を入れて、伸縮継手4を後打ちコンクリート5及びコンクリート受け板12と共に撤去するようにしてもよい。
【0048】
或いはシール部材17を切断して伸縮継手4を二分し、伸縮継手4の片側を後打ちコンクリート5及びコンクリート受け板12と一緒にして撤去し、伸縮継手4の反対側も後打ちコンクリート5及びコンクリート受け板12と一緒にして撤去するようにしてもよい。
【0049】
−実施形態2−
本実施形態については図8に示されている。実施形態1との相違点は2つである。その一つは、ナット13への後打ちコンクリート5の付着を防止する保護筒45を設けた点である。他の一つは、道路橋本体1の端部を補強するために、段部7を覆う第1補強板8に加えて、道路橋本体1の端部の下面に第2補強板46を設け、さらに、この第1補強板8と第2補強板46とを連結して道路橋本体1の端面を覆う第3補強板47を設けた点である。
【0050】
保護筒45は、ナット13を取外すための工具(ソケットレンチ)よりも大径に形成された円筒状のものであって、上端は閉塞され路面と面一になっている。施工においては、この保護筒45をナット13に被せた状態で後打ちコンクリート5を打設する。補強板8,46,47は、これらを鋼桁2に固定しておいてから道路橋本体1を打設することにより、該道路橋本体1と一体化する。
【0051】
道路橋継目部を補修する際は、保護筒45の上端に孔をあけ、この孔から工具を差し込んでナット13を取り外す。従って、実施形態1のようなコア抜きは不要になる。また、ナット13に後打ちコンクリート5が付着しないから、その取外しが容易になる。よって、袋ナットではなく、両端が開口した普通ナットを用いた場合でも、その取外しが困難になることがない。
【0052】
また、道路橋本体1の端部は第1〜第3の補強板8,46,47による補強によって耐荷強度が実施形態1よりもさらに高いものになる。特に、コンクリート受け板12を結合すべき第1補強板8の取付安定性が高くなり、耐補修性(度重なる補修に耐える性質)の向上に有利になる。
【0053】
なお、保護筒45としては、その上端が開口したものを用い、該上端開口を蓋で塞ぐようにしてもよい。このようにすれば、蓋を外すだけでナット13を露出させることができ、補修作業性が向上する。
【0054】
−実施形態3−
本実施形態については図9に示されている。すなわち、この実施形態は、道路橋本体1に補強板8及びコンクリート受け板12が設けられていないときの補修方法に関する。
【0055】
その補修(伸縮継手の交換)にあたっては、まず、既設の伸縮継手及び後打ちコンクリートを撤去する。この場合は、後打ちコンクリートをコンクリートブレーカによって全面的に破砕することによって撤去する。図9はその撤去が行なわれた後の状態を示す。
【0056】
そうして、同図に示すように、道路橋本体1の端部の段部7に複数の穴51を適宜の間隔をおいて穿つ。この穴51に超早強コンクリート、樹脂コンクリート、モルタル等のアンカー定着材を注入した後、補強板8のアンカー11を穴51に挿入して該補強板8を段部7に設置する。アンカー11の下端は大径になっており、これにより、定着材による補強板8の道路橋本体1への定着性を高めている。
【0057】
また、コンクリート受け板12は予め補強板8にナット13でねじ止めしておいて、該補強板8と共に段部7に設置するようにしている。もちろん、補強板8を段部7に固定した後にコンクリート受け板12を補強板8に結合するようにしてもよい。
【0058】
その後は、実施形態1と同様に、図3に示す如く、伸縮継手4の遊間3の上への配置、通し筋19の配筋、支持鉄筋14、アンカー18及び通し筋19の各交点の溶接、並びに堰板20の設置を行ない、さらに、後打ちコンクリート5を打設して図1に示す道路橋継目部構造を得る。
【0059】
道路橋を新設する場合においても、図9に示す施工方法を採用することができる。すなわち、実施形態1では、道路橋本体1を施工する際に補強板8を配置しておいて補強板8が一体になった道路橋本体1を形成するようにしたが、通常の型枠を用いた箱抜き工法によって段部7を有する道路橋本体1を形成するようにしてもよい。
【0060】
具体的には、段部形成位置に段部形成用の型枠を設けておいて道路橋本体1の施工を行ない、型枠を撤去して両段部7,7に遊間閉塞板を渡し、その後は実施形態1と同様に、(詰め物の充填)→(連続舗装)→(道路橋継目部の舗装、詰め物及び遊間閉塞板の撤去)を行なう。そうして、図9に示すように、穴51を穿設して、補強板8及びコンクリート受け板12の設置を行なう(又は補強板8を設置した後、コンクリート受け板12を設置する)ようにしてもよい。穴51は、道路橋本体1を新設するときに穴形成用の円筒型を配置してコンクリートを打設しその後に円筒型を抜き取る、という型抜きによって形成するようにしてもよい。
【0061】
なお、上記各実施形態では断面L字状のコンクリート受け板12を用いたが、補強板8と同様の平板をコンクリート受け板としてもよい。
【0062】
また、上記各実施形態の補強板8は平板であるが、図10に示すように、断面L字状の補強板8を採用してもよい。その場合、コンクリート受け板は断面L字状のものであっても、平板であってもよい。
【0063】
また、上記各実施形態の道路橋は鋼桁2の上に道路橋本体(床版)1を形成した鋼橋であるが、PC(プレストレストコンクリート)橋、RC(鉄筋コンクリート)橋であっても、同様に実施することができる。
【0064】
また、上記各実施形態は道路橋本体1,1の継目部に関するが、本発明が道路橋本体と橋台との継目部にも上記各実施形態と同様にして適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1に係る道路橋継目部構造を示す断面図。
【図2】 同実施形態の道路橋継目部に補強板を設置した状態を示す断面図。
【図3】 同実施形態の後打ちコンクリート打設前の状態を示す断面図。
【図4】 同実施形態の後打ちコンクリートに切れ目及び穴を形成した状態を示す断面図。
【図5】 上記穴を形成するための装置を示す斜視図。
【図6】 同実施形態の道路橋継目部から伸縮継手を撤去した状態を示す断面図。
【図7】 同実施形態の道路橋継目部からさらに後打ちコンクリート及びコンクリート受け板を撤去した状態を示す断面図。
【図8】 本発明の実施形態2に係る道路橋継目部構造を示す断面図。
【図9】 本発明の実施形態3に係る施工方法の一段階を示す断面図。
【図10】 本発明の他の実施形態に係る道路橋継目部の構造を示す断面図。
【符号の説明】
1 道路橋本体
2 鋼桁
3 遊間
4 伸縮継手
5 後打ちコンクリート
6 舗装
7 段部
8 補強板
12 コンクリート受け板
14 支持鉄筋
Claims (4)
- 道路橋継目部の遊間を存して相対する道路橋本体端部又は橋台に、道路橋本体上面よりも低い段部が形成され、
上記段部にこれを覆う補強板が固定され、
上記補強板の上にコンクリート受け板が重ねられ、
上記コンクリート受け板の上に複数の支持鉄筋が間隔をおいて設けられているとともに、該コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートが打設されていて、
上記伸縮継手定着用コンクリートを上記複数の支持鉄筋及びコンクリート受け板と共に上記補強板から取り外すことができるように、上記複数の支持鉄筋は上記コンクリート受け板に立設されて上記補強板には固定されておらず、上記コンクリート受け板は上記補強板に取外し可能に結合されていることを特徴とする道路橋継目部の構造。 - 道路橋継目部の遊間を存して相対する道路橋本体端部又は橋台に、道路橋本体上面よりも低く且つ補強板で覆われた段部を形成し、
上記補強板の上に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設されたコンクリート受け板を重ねて該補強板に取外し可能に結合し、
上記遊間上に伸縮継手を配置し、
上記伸縮継手を上記支持鉄筋に結合し、
上記コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートを打設することを特徴とする道路橋継目部への伸縮継手の施工方法。 - 道路橋継目部に設置された既設伸縮継手を撤去するとともに、該道路橋継目部の遊間を存して相対する道路橋本体端部又は橋台に、道路橋本体上面よりも低い段部を形成し、
上記段部にこれを覆う補強板を固定し、
上記補強板の上に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設されたコンクリート受け板を重ねて該補強板に取外し可能に結合し、
上記遊間上に新たな伸縮継手を配置し、
上記伸縮継手を上記支持鉄筋に結合し、
上記コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートを打設することを特徴とする道路橋継目部の補修方法。 - 請求項1に記載された構造の道路橋継目部の補修方法であって、
上記伸縮継手定着用コンクリートに上記コンクリート受け板と補強板との結合部が露出するように穴をあけて、該コンクリート受け板の補強板への結合を解除し、
上記伸縮継手定着用コンクリートを上記コンクリート受け板及び上記複数の支持鉄筋と共に撤去するとともに、上記伸縮継手を撤去し、
しかる後に上記補強板に、複数の支持鉄筋が間隔をおいて立設された新たなコンクリート受け板を取外し可能に結合し、
上記遊間上に新たな伸縮継手を配置して上記支持鉄筋に結合し、上記コンクリート受け板の上に伸縮継手定着用のコンクリートを新たに打設することを特徴とする道路橋継目部の補修方法。
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