JP3699153B2 - 機械式時計 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、機械式時計、特にツールビロン(tourbillon)が設けられた自動式時計に関する。
より詳細には本発明は、上述のタイプの時計であって、有利なことにツールビロンが中心に配置され、かつツールビロンが、文字盤(dial)の側から使用者に完全に見えるように配置された時計に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題および課題を解決するための手段】
本発明によれば、ツールビロンと噛合する香箱(barrel)を具備する機械式時計において、ツールビロンが機械式時計の内部において単一の枢軸上に回転可能に取り付けられ、この単一の枢軸がツールビロンをツールビロンの基部によって支持し、ツールビロンがツールビロンの下方部分によって上述の単一の枢軸上に懸架され、ツールビロンがツールビロンの上方部分において完全に自由であることを特徴とする、機械式時計が提供される。
【0003】
また本発明によれば、測時時刻(horometric time) を読み取るために使用者が見ることができる文字盤側部と称される側部と、ツールビロンと噛合する香箱とを具備する機械式時計において、ツールビロンが機械式時計の文字盤側部から見えるように形成され、かつツールビロンが機械式時計の中心に配置されることを特徴とする、機械式時計が提供される。
【0004】
本発明の別の特徴によれば、ツールビロンが1分間にちょうど1回転し、ツールビロンが秒針を備え、この秒針が、機械式時計の歩度調節を行う緩急針(rate adjustment index) を形成する。
また、この機械式時計は、測時時刻を示す表示ディスクを更に具備し、これらの表示ディスクがツールビロンに対して同軸的に取り付けられるということに注意されたい。
【0005】
また、この機械式時計は、表示用文字盤内に固定的に取り付けられた文字盤リングを更に具備し、この文字盤リングが、表示ディスクの回転の半径方向の案内を行う案内手段を形成する。
更に、表示ディスクが表示ディスクの周辺部において、機械式時計のケースによって形成されたフレーム上に取り付けられた駆動装置により駆動される。
【0006】
この機械式時計は、表示ディスクの周辺部に夫々嵌め込まれた歯付き駆動用王冠状部を更に具備する。
また、この機械式時計は、表示ディスクを支持するための支持手段を更に具備し、この支持手段が、表示ディスクの軸線方向の案内を行うブラケットによって形成される。
【0007】
また本発明によれば、ツールビロンと噛合する香箱を具備する機械式時計において、ツールビロンがツールビロンの基部において軸受によってのみ支持され、この軸受の外輪が歯を備え、この歯が、ツールビロンの脱進機(escapement)の衛星ピニオン(satellite pinion)を駆動するための固定輪として作用することを特徴とする、機械式時計が提供される。
【0008】
また本発明によれば、ツールビロンと噛合する香箱と、測時時刻を表示するための表示手段とを具備する機械式時計において、更に、駆動用歯車列を形成する第1の歯車列を具備し、第1歯車列は香箱とツールビロン間の機械的連結を確保し、更に、上述の表示手段を駆動する表示用歯車列を形成する第2の歯車列を具備し、表示用第2歯車列が時刻合わせ手段(time-setting means)と噛合し、駆動用第1歯車列と表示用第2歯車列の双方が香箱と直接的に噛合し、香箱が第1歯車列と第2歯車列間の機械的緩衝部を構成して、時刻が合わされるときに第1歯車列が乱されないようにしたことを特徴とする、機械式時計が提供される。
【0009】
【実施例】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
図1からわかるように、その全体を参照符号1によって表される本発明による時計はケース2を具備する。手首に嵌めるための時計バンド(wristlet)を取り付けるようになっている角状部(horn)4(それらの内の一つにのみ参照符号が付されている)が、ケース2から従来のように延びている。
【0010】
以下の説明から明らかになるように、このケース2はまた、時計1の可動測時構成要素(mobile horometrical component) および固定測時構成要素(fixed horometrical component)の両方を保持しかつ位置決めするという必要不可欠な機械的機能を有する。ケース2の内側縁部2aのごく近くに、より詳細にはケース2と一体的に延びる半径方向突出部分2c上に、ブラケット6(本実施例では3個)が固定的に取り付けられる。これらのブラケット6は、時および分を夫々示す二つの重畳された透明な表示ディスク8および10(図3参照)用の案内装置の一部分を形成する。
【0011】
斯くして、分表示ディスク8上には分針8aが金属付着法(metallic deposit)によって形成され、、一方時表示ディスク10上には時針10aが同様にして形成される。
図3の断面図により詳細に示されるように、分表示ディスク8および時表示ディスク10は、それらの周辺部において半径方向外歯8bおよび10bによって夫々駆動される。これら二つのディスク8および10はまた、参照符号を付されていない中央オリフィスを備える。この中央オリフィスを備えることにより、ディスク8および10は環状形状をなす。
【0012】
周辺歯8bおよび10bにより、分表示ディスク8および時表示ディスク10は、次のような本質的な特徴を有する時計1の機械的駆動装置によって駆動される。即ちこの時計1の特徴とは、この時計1が、時計1の中央に配置されたツールビロン(tourbillon)、特にアンクル脱進機ツールビロン(pallet escapement tourbillon)を具備するということである。
【0013】
この中央ツールビロンは、その全体を参照符号20によって表される。この中央ツールビロン20は従来の一群の可動構成要素、即ち図2に概略的に示されるてん輪(balance wheel) 22と、ひげぜんまい(balance-spring)24と、アンクル(pallet)26と、脱進機バー(escapement bar)30上に枢着されたがんぎ車(escapement wheel)28とを具備する。ツールビロン20上でのこれらの可動構成要素の配置及びこれらの可動構成要素の作動は従来と同様であるので、ここではこれらの可動構成要素の配置および作動については詳細に説明しない。更なる情報については、 Reinhard Meisによる『ツールビロン(Das Tourbillon)』という表題の著書(Peter Ineichen出版社,チューリヒ)を参照されたい。
【0014】
ツールビロン20は、その縦方向軸線X(図2参照)回りに回転移動可能であるように取り付けられる。このツールビロン20の縦方向軸線Xはまた、6時と12時とを結ぶ横方向軸線Y1と、3時と9時とを結ぶ横方向軸線Y2との交点に位置する時計1の中心縦方向軸線でもある。この特徴的な幾何学的軸線回りに、ディスク8および10によって支持された分支持部8aおよび時支持部10aが回転する。従来の時計では、時針および分針、及びもしあれば秒針が回転するのは、この中心軸線X回りである。
【0015】
図2からわかるように、ツールビロン20は基部32を具備する。この基部32もまた中心軸線X回りに回転移動可能となっており、かつ基部32は、ツールビロン20に備えられた大半の構成要素に対する支持部として作用する。この基部32から軸線方向アーム34(本実施例では3個)がガラスGの方向に立ち上がっており、これらの軸線方向アーム34は基部32に固定されると共に横方向アーム36によって互いに連結され、これらの横方向アーム36は中心軸線Xの近傍において互いに結合するということに注意されたい。機能的には、軸線方向アーム34と横方向アーム36とは、基部32と協働してツールビロン20の構成要素を『包囲する(enclose) 』ケージ38を構成する。ツールビロン20の構成要素はケージ38の内部に収容される。
【0016】
図1および図2からわかるように、このツールビロン20、特にケージ38は文字盤リング40の内側でかなり大きな半径方向遊びを有して自由に回転する。この文字盤リング40はチューブ又は中空パイプの形式を有し、文字盤リング40は文字盤C内に打ち込まれる。
文字盤(dial)Cは表示ディスク8および10の下方に配置される。この文字盤Cは、参照符号を付されていないねじによって、3個の支柱42(図1参照)を介して板P(図2参照)上に強固に保持される。3個の支柱42は板P内に打ち込まれる。この文字盤Cは、時計1によって与えられる時刻を読み取るために二つのディスク8および10を通して見ることができる時刻表示部を担持する。
【0017】
斯くして、文字盤リング40が時計1上の固定位置に保持され、かつ文字盤リング40がケース2に対して固定されるということがわかる。更に、図2および図3には、この文字盤リング40がまっすぐな外側壁40bを備えることが示される。この外側壁40bは、文字盤リング40が二つの表示ディスク8および10の回転の半径方向の案内作用を行うことを可能にする。斯くして、二つの表示ディスク8および10はこのまっすぐな外側壁40bに対して半径方向の遊びを有して取り付けられ、その結果これらの重畳されたディスク8および10は文字盤リング40の周りで、従ってツールビロン20の周りで自由に回転することができる。斯くして文字盤Cと文字盤リング40とは、ディスク8および10によって形成される分表示部および時表示部の回転案内(内部案内)を行う半径方向部分を形成することにより、時計1の主要な構成要素を構成する。従って文字盤C、特に文字盤Cの厚さは、この精密な位置決めを保証することができるように構成される。
【0018】
二つの透明な分表示ディスク8および時表示ディスク10は鉱物物質、例えばサファイアで形成されるということに注意されたい。上述したように、二つの分針8aおよび時針10aは、従来公知の方法による金属層の付着によってこれらのサファイア製ディスク8および10上に追加の厚み部分として配置される。これらの追加の厚み部分は、図面を理解しやすくするために図3において誇張されて示されている。当然のことながら、これらのディスク8および10に固着される構造は、上述のような分針8aおよび時針10aだけに限定されるわけではない。
【0019】
二つの表示ディスク8および10は更に、それらの周辺部においてブラケット6によって高さ方向の案内(軸線方向の案内)をなされる。図3を参照しながらブラケット6の一つについてより詳細に説明する。
各ブラケット6はU字形状をなす。このU字形状の一方のアーム、即ち下方アーム6aはケース2の外側に向かって横方向に延びており、その結果下方アーム6aは、ケース2の一つの半径方向突出部分2cの上方表面によって形成されたケース2の肩部44を覆う。
【0020】
機能的にはこのケース2は、分表示手段8および時表示手段10の軸線方向の案内作用を確保することによってフレームBを構成する。図示する実施例では、このフレームBはケース2の背部Fと一体的に形成される。図示しない揺動質量体(oscillating mass)が背部Fの背面上に枢着される。
【0021】
ブラケット6の最も長い横方向アーム6aは位置決めスリット6b(図1においてそれらの内の一つにのみ参照符号が付されている)を具備する。各位置決めスリット6bは、ケース2の部分Bを形成するフレーム内に打ち込まれた、より詳細には対応する突出部分2c内に打ち込まれたピン46を受容する。各ブラケット6はねじ47を介してケース2に剛固に固定され、このねじ47もまたケース2内に繋着される。
【0022】
ブラケット6用の基部として作用する最も長い横方向アーム6aから軸線方向アーム6cが時計ガラスGに向かって、より詳細には固定されたガラス縁(fixed bezel) Lに向かって上方に延びており、この軸線方向アーム6cは第2の横方向アーム6dによって延長されている。ブラケット6のこれら三つの枝部6a,6cおよび6dは上述のU字形状をなす開口部を構成し、このU字形状をなす開口部は表示ディスク8および10の方向に開口している。斯くして、3個のブラケット6によって形成された3個のU字形状をなす半径方向開口部がディスク8および10を受容する。
【0023】
二つの表示ディスク8および10はそれらの周辺部に、金属材料で形成された王冠状部8cおよび10cを具備する。これらの王冠状部8cおよび10cは、対応するディスクが受容されることを可能にする肩部を有する。駆動用王冠状部8cおよび10cは表示ディスク8および10に接着される。図1に示されるように、駆動用王冠状部8c,10cはそれらの周辺部に半径方向外歯8b,10bを有し、これらの半径方向外歯はこれらの王冠状部8c,10c内に直接的に機械加工される。
【0024】
後述する説明からわかるように、外歯8b,10bにより、これら二つの駆動用王冠状部8cおよび10cは、二つの表示ディスク8および10が測時要素(horometric elements) によって回転駆動されることを可能にする。測時要素については後述する。
二つの表示ディスク8および10は、王冠状部8cおよび10cに対面するように軸線方向に延びる二つのルビー(石)50および52によって形成されるサンドイッチ構造により高さ方向の案内(軸線方向の案内)をなされる。これら二つのルビー50および52はブラケット6の横方向アーム6aおよび6d内に夫々打ち込まれる。斯くして、これら二つのルビー50,52は、二つの透明なディスク8および10から形成される表示組体の両側に配置される。これら二つのルビー50,52は、二つの駆動用王冠状部8cおよび10cの側面の一方に対して側方に摩擦接触するように載る。
【0025】
更に、二つの表示ディスク8および10間にスペーサ又は横支持部(cross-brace) 54が挿入される。このスペーサ54は手の形式を有する。この手の基部54aはブラケット6の軸線方向アーム6c内に打ち込まれる。一方この手のヘッド部は本実施例では球形状をなし、このヘッド部は時計1の中心に向かう方向において下方に延びており、即ち二つの表示ディスク8および10間の空間内でツールビロン20の中心に向かって延びている。この配置の結果、これらのディスク8および10間に、十分な高さを有する永久的な作動上の遊びが確保されることができる。
【0026】
固定ガラス縁Lが、従来と同様にケース2のフレームB上に円錐体(cone)によって取り付けられ、この固定ガラス縁Lは従来と同様に時計ガラスGを支持し、かつ固定ガラス縁Lは環状の屋根部60を備え、この環状屋根部60は表示ディスク8および10の方向へ下方に角度をなして延びている。この屋根部60は、ディスク8および10の周辺端部およびブラケット6を覆い、これらのディスク8および10の周辺端部およびブラケット6が時計1の外側から見えないようにする。
【0027】
次に、図2を参照しながら、本発明による時計1の測時構成要素についてより詳細に説明する。
図2に示されるように、ツールビロン20は、軸受62によってツールビロン20の縦方向軸線X回りに回転可能に取り付けられる。軸受62の内輪62aはツールビロン20の基部32上に固定的に取り付けられる。
【0028】
斯くして軸受62の内輪62aは、ツールビロン20を時計1の中心軸線X回りに回転可能に案内するための案内手段を構成する。
特に、軸受62のこの内輪62aはツールビロン20の基部32内に打ち込まれ、かつ内輪62aはツールビロン20の内部に、図2では非常に概略的に示される台座(setting) 62bを具備する。この台座62b内には、参照符号を付していない宝石(石)が配置され、この宝石はてん輪22を回転可能に案内する。てん輪22は更に、てん輪22の上方部分において宝石(参照符号を付さない)によって案内され、この宝石は、ケージ38の横方向アーム36に取り付けられた支持部S内に配置される。
【0029】
軸受62は従来から公知のように、一組のボール(玉)62c(それらの内の一つにのみ参照符号が付されている)と、外輪62dとを具備する。有利なことに外輪62dは、ツールビロン20の固定輪64を構成する外歯62eを有する。軸受62の外輪62dはツールビロンバー66上に固定され、このツールビロンバー66は更に時計1の板Pに図示しない方法で固定される。板Pは、図示しない揺動質量体の上方に位置し、この揺動質量体はケース2によって形成される背部フレーム上に固定される。
【0030】
軸受62の外輪62dはピン68(本実施例では2個)によってツールビロンバー66上に正確に位置決めされ、これらのピン68は公知の方法でこれら二つの部材62d,66内に打ち込まれる。ツールビロンバー66上へのこの外輪62dの軸線方向の取り付け、従ってツールビロンバー66上へのツールビロン20全体の軸線方向の取り付けは、ねじ70(本実施例では3個)によってなされる。図2には、これらのねじ70の内の一つのみが示されている。
【0031】
斯くして上述の事柄から、ツールビロン20は、玉軸受62によって形成される単一の枢軸(単一の旋回平面内で回転可能に案内する)により、時計1の中心に回転可能に取り付けられるということがわかる。斯くして懸架された組体の片持ち梁構造が、上方バーなしで達成される。従ってツールビロン20には、ガラスGの側からの機械的結合がない。なぜならば、ツールビロン20は、如何なる追加の案内要素にも連結されないからである。この配置は極めて有利である。なぜならば、この配置により、ツールビロン20がガラスGに対して小さな端部遊びしか有さずに配置されることが可能ならしめられると共にツールビロン20の上方部分が完全に自由にされるからである。更に、時計1の中心に取り付けられたツールビロン20は、偏心組体よりも大きな直径寸法を有することができる。極端な場合にはツールビロン20は時計1の利用可能な表面のほとんどすべてを占めることができるということに注意されたい。
【0032】
図2に示されるように、軸受62の外輪62dの周辺外歯はツールビロン20の固定輪64を構成し、この外輪62dの周辺外歯は、がんぎピニオン(escape-pinion) と称されるピニオン72と噛合する。
【0033】
がんぎピニオン72は横断軸74を介してツールビロン20の基部32上に回転可能に取り付けられ、この横断軸74は、基部32内に配置された参照符号を付さない宝石(石)内に収容される。横断軸74は基部32の両側に突出部分を形成し、かつ横断軸74はがんぎ車28に連結される。このがんぎ車28の平面図が図1に示される。その結果、玉軸受62によって与えられる単一の平面状の支持作用による中心軸線X回りのツールビロン20、特に基部32の回転により、がんぎ車28ががんぎピニオン72を介して回転駆動されることが可能ならしめられる。本実施例では、がんぎピニオン72は衛星ピニオン(satellite pinion)を形成する。このようにがんぎ車28が駆動されることにより、アンクル(つめ)26が打たれることが確保され、このようにアンクル26が打たれることにより、公知のようにてん輪22の交番する揺動運動が維持されることが可能ならしめられる。
【0034】
ツールビロン20は更に、図示しないねじによって基部32の下面上に固定されたケージ輪78を具備するということに注意されたい。このケージ輪78は、図4に示される第1の歯車列R1の一部を形成する中間の歯車(wheel) およびピニオンの組80と噛合する。第1歯車列R1は、後述する香箱(barrel)82と、ツールビロン20との間の直接的な機械的連結を確保する。
【0035】
香箱82は板Pとツールビロンバー66間に配置される。この香箱82の構造および作動は従来公知のものである。この香箱82の軸83は、参照符号を付していない公知の軸受によって、板P上およびツールビロンバー66内に回転可能に取り付けられる。香箱82はツールビロン20のすぐ下方に取り付けられ、かつ香箱82はツールビロン20と同軸的に、即ち時計1の中心縦方向軸線X上に取り付けられるということに注意されたい。斯くして、香箱82をこのように有利に中心に配置することによって、香箱82は偏心組体よりも大きな直径寸法を有することができ、極端な場合には香箱82は、ツールビロン20と同様に時計1の利用可能な表面のほとんどすべてを占めると共にムーブメントの外径を越えて延びることができる。
【0036】
香箱82は公知のようにラチェット84を駆動し、このラチェット84は、板Pの下方に収容された図示しない揺動質量体からエネルギを受け取る。ツールビロン20と他の中間の歯車およびピニオンの組80とが設けられたツールビロンバー66は、完全に分離したモジュールを板P上に構成するということに注意されたい。このモジュールは、揺動質量体の上方でケース2の背部フレーム上に取り付けられる。もしこのモジュールが駆動要素と機械的に噛合するならば、このモジュール自体は香箱82とは独立して機能することができる。
【0037】
図2に示されるように、ツールビロン20のケージ38を構成する横方向アーム36は、支持部S上に旋回可能に取り付けられた緩急針(index) 90を担持する。この緩急針90は、図1に示されるひげぜんまい24に作用することができる調節ピン(setting pin) 92(それらの内の一つにのみ参照符号が付されている)を具備する。ひげぜんまい24自体は、ひげぜんまいスタッドによってケージ38の横方向アーム36上に取り付けられる。ブルゲー(Breguet) 組体として知られるこの組体は公知のものであるので、これ以上詳細には説明しない。
【0038】
ツールビロン20のケージ38に対する緩急針90の角度方向移動によって、時計1の速度(rate)が設定されることができ、従って時計1の精度が調節されることができるということに注意されたい。
非常に有利には、緩急針90が時計1の秒針を形成し、ツールビロン20が1分間にちょうど1回転するように上述の測時構成要素が設けられる。
【0039】
その結果、中心に秒針を支持するツールビロン20が与えられ、秒針の回転は付加的な支持障害物によって乱されることがない。また、文字盤リング40の上方部分には秒を示す目盛が備えられることができ、その結果緩急針90によって形成された秒針を介して秒が読み取られることができる。また図1に示されるように、この秒針90は緩急針支持部92の上方に配置され、この緩急針支持部92上には、歩度(rate)を調節するのに使用される表示+(プラス)及び−(マイナス)がマークされることができる。
【0040】
次に図4を参照しながら、香箱82とツールビロン20間の直接的な機械的連結を行う第1歯車列R1について説明する。
上述したように、歯車およびピニオンの組80の歯車80aがツールビロン20のケージ輪78と噛合し、この歯車およびピニオンの組80は、板Pに取り付けられた二つのバー、即ち上方バー100と下方バー102との間に回転可能に取り付けられる。ここで、上方バー100は下方バー102上に取り付けられ、下方バー102は板P上に取り付けられるということに注意されたい。なお、これらの構造の詳細は図示されていない。これら二つのバー100および102と、第1歯車列R1を構成する歯車およびピニオンの組群とは、図5に特に良く示されており、かつ図2に部分的に示されている。図5は、図面をより良く理解できるように展開して示された図であることに注意されたい。従って図5では香箱82が正確に表されておらず、香箱82は実際にはツールビロン20に対面するように位置する。
【0041】
歯車およびピニオンの組80はまたピニオン80bを具備し、このピニオン80bは第1歯車列R1の第2の歯車およびピニオンの組104の歯車104aと噛合する。この第2の歯車およびピニオンの組104はピニオン104bを具備し、このピニオン104bは第3の歯車およびピニオンの組106の歯車106aと噛合する。第2の歯車およびピニオンの組104もまた上述の二つのバー100および102間に回転可能に取り付けられる。最後に、第3の歯車およびピニオンの組106にはピニオン106bが設けられ、このピニオン106bは香箱82の歯と噛合する。図5に示されるように、第3の歯車およびピニオンの組106は軸106cを具備し、この軸106cは板P内および下方バー102内に回転可能に取り付けられ、軸106cは下方バー102を貫通している。
【0042】
更に、図6に示されるように、香箱82は第2の歯車列R2を駆動し、この第2歯車列R2は表示ディスク8および10を駆動する。
この第2歯車列R2は第1の歯車およびピニオンの組110を具備する。第1の歯車およびピニオンの組110のピニオン110aは香箱82の歯と噛合する。また第1の歯車およびピニオンの組110の歯車110bは第2歯車列R2の第2の歯車およびピニオンの組112のピニオン112aと噛合する。第2の歯車およびピニオンの組112は、この第2の歯車およびピニオンの組112の軸112c上に摩擦係合的に取り付けられた歯車112bを具備して、表示ディスク8および10の時刻合わせ(time setting)を行うようにする。
【0043】
歯車112bは制御用の歯車およびピニオンの組114のピニオン114aと噛合する。制御用の歯車およびピニオンの組114は図7により詳細に示される。ピニオン114aはまた、使用者によって制御されることができる時刻合わせピニオンMHと噛合する。
図7から特に良くわかるように、この制御用の歯車およびピニオンの組114は軸114bを具備し、この軸114b上にもう一つのピニオン114cが配置される。このピニオン114cは日の裏装置(motion-work) 116の歯車116aと噛合する。この日の裏装置116は、12時間毎または24時間毎に1回転する速度で時表示ディスク10を回転駆動するための減速(reduction) を行う。
【0044】
日の裏装置116は、板Pに取り付けられたスタッド118上に取り付けられる。なお、図7には板Pは示されていない。
上述の日の裏装置116はピニオン116bを具備し、このピニオン116bは歯車およびピニオンの組120の歯車120aと噛合する。歯車およびピニオンの組120は、制御軸114b上に自由に取り付けられると共にピニオン120bを担持する。このピニオン120bは、二つのバー124および126間に旋回可能に取り付けられた中間の歯車およびピニオンの組122の歯車122aと噛合する。この中間の歯車およびピニオンの組122は時に係わる歯車およびピニオンの組130を駆動し、時に係わる歯車およびピニオンの組130はバー124と第3のバー132との間に回転可能に取り付けられる。なお、第3バー132は図1および図8の平面図に示されている。
【0045】
時に係わる歯車およびピニオンの組130は、層をなす歯車およびピニオンの組である。時に係わる歯車およびピニオンの組130の下方ピニオン130aは歯車122aと噛合し、一方上方ピニオン130bは、付加された王冠状部10cの周辺歯を介して時表示ディスク10と噛合する。
制御軸114bは更に、挿入されたピニオン136を具備し、このピニオン136は四角形結合(square coupling) によって制御軸114bにより駆動される。このピニオン136は、二つのバー124および126間に回転可能に取り付けられたもう一つの中間の歯車およびピニオンの組138の歯車138aと噛合する。この歯車138aはまた、分に係わる歯車およびピニオンの組140の下方ピニオン140aと噛合する。この分に係わる歯車およびピニオンの組140は、上述の時に係わる歯車およびピニオンの組130と同一の層をなす構造を有する。
【0046】
分に係わる歯車およびピニオンの組140は上方ピニオン140bを具備し、この上方ピニオン140bは、付加された王冠状部8cの周辺歯を介して分表示ディスク8を駆動する。二つのディスク8および10は同一の形状および大きさを有し、二つの王冠状部8cおよび10cも同一の形状および大きさを有するということに注意されたい。
【0047】
分に係わる歯車およびピニオンの組140もまた二つのバー132および124間に回転可能に取り付けられる。三つのバー124,126および132は図8において特に良く見ることができる。図8は、上述した表示ディスク駆動装置を示す平面図である。図8では、図面をより良く理解できるように文字盤Cが取り除かれて示されており、これにより表示用第2歯車列R2が特に良く見えるようになっている。
【0048】
このシステムの三つのバー124,126,132は、フレームBを形成するケース2の環状壁上に取り付けられるということに注意されたい。更に、時および分に係わる歯車およびピニオンの組130および140と、二つの中間の歯車およびピニオンの組122および138と共に、三つのバー124,126,132はケース2に付加された特別のモジュールを形成するということに注意されたい。
【0049】
また、第2歯車列R2は、香箱82をツールビロン20に連結する第1歯車列R1と直接的には噛合しないということを理解されたい。これら二つの歯車列R1,R2は両方とも香箱82から直接出発する。斯くして、時刻合わせピニオンMH(図6参照)を介してなされることができる時刻合わせ作用は、第2歯車列R2にほとんど影響を及ぼさない。その結果ツールビロン20はこの調節によって乱されない。斯くして、香箱82の介在によって互いに分離された二つの歯車列、即ち駆動用第1歯車列R1と表示用第2歯車列R2とが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による時計の平面図であって、図面をより良く理解できるように時計ガラス及び固定ガラス縁が取り除かれて示されている。
【図2】図1に示す時計の中心を通る断面図であって、ツールビロンバー上のツールビロンの組体を概略的に示しており、かつ香箱がツールビロンバー上で旋回されること、および香箱がツールビロンに対して同軸的に取り付けられることが示されている。
【図3】図1に示す時計の中心を通る非常に概略的な半断面図であって、特にこの時計の時表示ディスク及び分表示ディスクを案内するための装置を示している。
【図4】第1の駆動用歯車列および第2の表示用歯車列と共に用いられるツールビロン及び香箱を示す概略的な平面図であって、第2の表示用歯車列については、初めの二つの歯車およびピニオンの組のみが表されている。
【図5】図4の V−V 線に沿ってみた断面図であって、ツールビロンを香箱に連結する駆動用歯車列の歯車およびピニオンの組群をより詳細に示している。
【図6】本発明による時計の表示ディスク駆動装置に香箱を連結する表示用歯車列の断面図である。
【図7】図8の VII−VII 線に沿ってみた断面図であって、時計のケース上に取り付けられた表示ディスク駆動装置のバーと、歯車およびピニオンの組群とをより詳細に示しており、図示の都合上これらの構成要素は同一の平面内に持って来られている。
【図8】図1の矢印VIIIに沿ってみた平面図であって、上述の表示ディスク駆動装置を示しており、このシステムの歯車およびピニオンの組群を見えるようにするために文字盤が取り除かれて示されている。
【符号の説明】
1…時計
2…ケース
6…ブラケット
8…分表示ディスク
8c,10c…王冠状部
10…時表示ディスク
20…ツールビロン
32…基部
40…文字盤リング
62…軸受
66…ツールビロンバー
82…香箱
90…緩急針(秒針)
C…文字盤
G…ガラス
L…ガラス縁
R1…第1の歯車列
R2…第2の歯車列

Claims (4)

  1. 中心部と、
    該中心部周囲を回転する時針(10a)及び分針(8a)とによる時刻を文字盤(C)で読みとることができる上部と、
    ツールビロン(20)の軸線(X)回りに回転する基部(32)と該基部(32)上を前記軸線(X)回りに回転するてん輪(22)とを有するツールビロン(20)と噛合する香箱とを具備する機械式時計であって;
    該ツールビロン(20)が該機械式時計の該上部から見えるようになっている、機械式時計において:
    該ツールビロンの該軸線(X)が該機械式時計の該中心部に配置されていることと;
    該ツールビロン(20)が、該機械式時計内部で該軸線(X)周囲に回転可能に単一の枢軸(62)に取り付けられていて、該単一の枢軸(62)は、該ツールビロンがその上方部分においていずれの案内要素にも連結されないように、該基部を支持するために玉軸受により形成されかつ該ツールビロン(20)の該基部の下側に配置されていることと;
    該ツールビロンの該基部(32)が該玉軸受の内輪(62a)に固定的に取り付けられていることと;
    該てん輪(22)を回転可能に案内するための宝石を備えた台座(62b)が該玉軸受の該内輪(62a)内部に設置されていることと;を特徴とする、
    機械式時計。
  2. 該時針(10a)と該分針(8a)とがそれぞれの表示ディスク(10,8)により支持されていて、該表示ディスク(8,10)が前記ツールビロン(20)に対して同軸上に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の機械式時計。
  3. 文字盤(C)に固定的に取り付けられた文字盤リング(40)を更に具備し、該文字盤リング(40)が、該表示ディスク(8,10)の回転の半径方向の案内を行う案内手段を形成することを特徴とする、請求項2に記載の機械式時計。
  4. 駆動用歯車列を形成する第1歯車列(R1)を具備し、該第1歯車列(R1)は香箱(82)とツールビロン(20)との間の機械的連結を確保し、
    更に、前記表示手段(8,10)を駆動する表示用歯車列を形成する第2歯車列(R2)を具備し、該表示用第2歯車列(R2)が時刻合わせ手段(MH)と噛合し、該駆動用第1歯車列(R1)と該表示用第2歯車列(R2)との双方が該香箱(82)と直接的に噛合することを特徴とする、請求項に記載の機械式時計。
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