JP3698860B2 - 荷電粒子照射装置およびそのビーム制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、荷電粒子からなるビームを被照射体に照射する荷電粒子照射装置に関し、特に被照射体に照射される荷電粒子のエネルギを制御するフィルタ構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種、荷電粒子照射装置は、荷電粒子を患部全体に一度に照射したり、患部を複数の領域に分割し、荷電粒子を各々の患部に個別に照射したりして、がん治療等に適用されている。そして、この荷電粒子照射装置には、被照射体に照射される荷電粒子のエネルギを制御するための装置が必要であり、この種装置として、例えば「DEVELOPMENT OF 3-DIMENSIONAL IRRADIATION SYSTEM FOR HEAVY-ION RADIATION THERAPY (PROCEEDINGS OF THE 10TH SYMPOSIUM ON ACCELERATOR SDIENCE AND TECHNOLOGY, Octber 25-27, 1995, Hitachinaka, Japan, p.442-p.444)」や「重粒子線がん治療装置(三菱電機技法 Vol.69, No.2, 1995, p.40-p.44)」に記載されているようなウエッジフィルタ(あるいは高速レンジシフタ)やリッジフィルタが従来提案されている。
【0003】
図16は従来のウエッジフィルタの動作を説明する図である。
図において、1は加速器(図示せず)から取り出された荷電粒子のビーム、2は同じ勾配をもった一対の楔状フィルタ2a、2aから構成されたウエッジフィルタである。このウエッジフィルタ2は、ビーム1の被照射体3への照射経路中に、ビーム1を遮るように配設されている。そして、このウエッジフィルタ2はACサーボモータ等の駆動機構(図示せず)に取り付けられ、ビーム軸を中心として対称な位置を採るように、ビーム軸に対して直交する方向に直線往復運動できるようになっている。
このように構成されたウエッジフィルタ2は、一対のフィルタ2a、2aがビーム軸方向に重なり合っている。この重なり合っている部分におけるビーム軸方向の厚みは同じ厚みとなっている。そして、一対のフィルタ2a、2aをビーム軸に対して直交する方向に直線運動させることにより、この重なり合っている部分におけるビーム軸方向の厚みを任意に制御することができる。
そこで、ビーム1が有限な断面積をもっていても、このウエッジフィルタ2を通過する際に、すべての粒子が同じ厚みを通過することになる。そして、ウエッジフィルタ2を駆動することにより、粒子の通過する厚みは変化される。
【0004】
図17は水や人体等の被照射体に単一のエネルギをもった荷電粒子(特に陽子線や重粒子線)が照射された場合の被照射体の深さ方向における相対線量をプロットしたグラフであり、図において4aは荷電粒子線のエネルギが高い場合を示し、4bは荷電粒子線のエネルギが低い場合を示している。
このように、荷電粒子を被照射体3に照射した場合、荷電粒子が到達する最深部付近に相対線量のピーク(ブラッグピーク)が現れる特徴的なカーブ(ブラッグカーブ)を示すことがわかる。そして、荷電粒子線のエネルギが高い程、該ブラッグピークの位置が深くなる。
【0005】
図18は従来のリッジフィルタの動作を説明する図である。
図において、6はリッジフィルタであり、このリッジフィルタ6はビーム軸に対して直角に揺動あるいは回転されるように構成され、ビーム1の一部のエネルギを吸収することでエネルギに幅を持たせ、幅の狭いブラッグピークを患部の深さ方向の大きさに広げるものである。そして、このリッジフィルタ6を通過したビーム1は、ブラッグカーブ7に示されるように、ビーム1の進行方向、即ち被照射体3の深さ方向の線量分布が平坦となる。
【0006】
ここで、従来のウエッジフィルタ2やリッジフィルタ6を用いた荷電粒子照射装置の動作について説明する。
陽子線や重粒子線等のビーム1が被照射体3に照射されると、被照射体3内に付与される相対線量は図17に示されるようなピークをもつ。そこで、ビーム1のエネルギを調節することにより、特定の深さの腫瘍等の組織に重点的に線量を付与することが可能となる。従来、X線等の放射線を被照射体3に照射した場合には、正常組織にまで放射線の影響を与えてしまうが、この陽子線や重粒子線等の放射線を被照射体3に照射した場合には、正常組織にまで放射線の影響を与えるようなことが極端に低減され、効果的な放射線治療の一つとされている。
ビーム1のエネルギを低くすれば、図17に示されるように、ブラッグピークが浅い方向にシフトする。被照射体3の浅い部分に照射したい場合は、ビーム1のエネルギを加速器側で低くするか、被照射体3の厚みを疑似的に増加したのと同じ効果を生み出すように、その深さ相当の物質を挟むことで達成される。このことは、物質中を荷電粒子が通過するとエネルギを失うからであり、加速器側で調整するか、被照射体3近傍でエネルギを調整するかの違いである。
【0007】
この後者の方法を利用したものが、図16に示されるウエッジフィルタ2を用いた方法である。加速器から取り出されたビーム1は、被照射体3に向けられている。このビーム1のエネルギは一定であり、このまま被照射体3に照射すると、例えば20cm深さに最大線量を付与するものとする。ここで、がん等の病巣等ターゲットとなる部位の深さが15cmとすると、一対のフィルタ2a、2aをビーム中心軸方向に移動させることにより、ビーム1が通過するフィルタの厚みを増加させ、結果的にエネルギの減少を起こさせて、ブラッグピーク位置をターゲット位置にもって行くことができる。
また、ターゲットが被照射3の深さ方向に厚みがある場合には、一対のフィルタ2a、2aをビーム中心軸方向に連続的に移動させることにより、ビーム1のエネルギを連続的に増加あるいは減少させ、ターゲット全体に照射させることができる。
【0008】
また、同様な原理を利用したのが、図18に示したリッジフィルタ6による方法である。このリッジフィルタ6はそれぞれ概略三角形の断面をもつ金属製の三角柱の集合体であり、ビーム方向に対する厚みの連続的な変化により、被照射体3での線量ピークの深さ方向に厚みを持たせるものである。そして、被照射体3の位置に拘わらず、ピーク深さの厚みが一様となるようにリッジフィルタ全体がビーム軸に対して揺動あるいは回転する。
なお、リッジフィルタ6は主にブラッグピークによる一定の厚みを形成するものであり、ウエッジフィルタ2はその一定の厚みのピークを深さ方向にシフトさせるために用いられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の荷電粒子照射装置のレンジフィルタの役割をするウエッジフィルタ2は以上のように構成されているので、ビーム軸に対して直交する方向に直線往復運動することになり、駆動装置への負担が大きかった。
そこで、速い速度での変化には限界があった。また、ビーム軸と直交する方向に移動するため、ビーム軸の直交方向の空間が必要となり、特に、この荷電粒子照射装置を含む照射系全体が回転ガントリと呼ばれている回転駆動体に取り付けられた場合には、この回転駆動体の構造物等と干渉するという問題があった。
また、従来の荷電粒子照射装置のリッジフィルタ6は、ブラッグピークの厚み毎に作られていたので、ブラッグピークの厚みを変える場合は勿論のこと、ビーム1のエネルギによっても、取り替える必要があり、その種類の数だけリッジフィルタ6を容易する必要があり、取り替える手間や、自動的に取り替えるための装置が必要となるという課題があった。
さらに、従来の荷電粒子照射装置は、ウエッジフィルタ2やリッジフィルタ6を組み合わせてビーム軸方向に配置する必要があり、ビーム軸方向にも空間を必要としていた。このことは、この荷電粒子照射装置を含む照射系全体が回転ガントリに取り付けられた場合には、回転ガントリの動径方向への拡大の影響を及ぼし、回転ガントリを含む荷電粒子照射装置の巨大化を招いてしまうという課題があった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ビーム軸周りの必要空間の省スペース化を図り、各種フィルタの数を削減して、従来装置と同等の照射性能を有する荷電粒子照射装置およびそのビーム制御方法を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る荷電粒子照射装置は、荷電粒子を加速する加速器と、この加速器で加速されて取り出された荷電粒子のビームを輸送するビーム輸送系と、このビーム輸送系の終端に配置されてビームのエネルギを調節するエネルギ調節手段とを備えた荷電粒子照射装置において、上記エネルギ調節手段は、軸心方向の厚みが軸心周りに螺旋状に変わる螺旋状部を有する外形形状に成形された一対のフィルタと、この一対のフィルタをそれぞれの軸心を回転中心として独立して回転駆動する回転駆動装置とからなり、該一対のフィルタが、厚みの変わる螺旋状部の少なくとも一部が重なりあい、かつ、この螺旋状部の重なり部が上記ビームの通過領域に位置するように、それぞれの軸心方向をビームの中心軸方向と平行として該ビームの中心軸方向に前後して並設されているものである。
【0012】
また、一対のフィルタは、それぞれの軸心が同軸的に位置して、ビームの中心軸方向に前後して並設されているものである。
【0013】
また、一対のフィルタは、それぞれの軸心がビームの中心軸を挟んで両側に位置して、ビームの中心軸方向に前後して並設されているものである。
【0014】
また、フィルタは、螺旋の勾配の異なる複数の螺旋状部が径方向に階段状に連設された外形形状に成形され、かつ、軸心位置がビームの中心軸に対して接離できるように構成されているものである。
【0015】
また、フィルタは、螺旋状部が渦巻き状に形成された外形形状に成形され、かつ、軸心位置がビームの中心軸に対して接離できるように構成されているものである。
【0016】
また、フィルタは、最小厚から最大厚まで同一の勾配で螺旋状に変化する複数の螺旋状部が周方向に連接された外形形状に成形されているものである。
【0017】
また、フィルタは、最小厚から最大厚を経て最小厚まで同一の勾配で螺旋状に変化する複数の螺旋状部が周方向に連接された外形形状に成形されているものである。
【0018】
また、フィルタは、最小厚から最大厚まで異なる勾配で螺旋状に変化する複数の螺旋状部が周方向に連設された外形形状に成形されているものである。
【0019】
また、スリットを有し、十分なビームの遮蔽厚を持つ金属板が、その主面を該ビームの中心軸と直交するように一対のフィルタの一方に取り付けられているものである。
【0020】
また、開口部を有し、十分なビームの遮蔽厚を持つ少なくとも2枚の金属板が、それぞれの主面を該ビームの中心軸と直交するように重ね合わせて一対のフィルタの一方に軸心周りにそれぞれ回転可能に取り付けられているものである。
【0021】
また、この発明の荷電粒子照射装置のビーム制御方法は、フィルタを断続的に回転させて該フィルタの回転角度位置を、該ビームが通過する螺旋状部の重なり部の厚みを変化させるよう制御し、該回転角度位置の保持時間を、該ビームの線量分布を調節するよう制御するものである。
【0022】
また、この発明の荷電粒子照射装置のビーム制御方法は、フィルタの回転速度を時間的に一定速度から増減速制御し、該ビームが通過する螺旋状部の重なり部の厚みを急速変化させるようにしたものである。
【0023】
また、この発明の荷電粒子照射装置のビーム制御方法は、フィルタを一定の回転速度で回転させながら、該フィルタの重なり厚が所定の回転角度に相当する螺旋状部の重なり厚の時、該ビームの発生源をON制御して該ビームを出射し、所定のビーム出射後に該ビームの発生源をOFF制御するようにしたものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る荷電粒子照射装置を説明する図であり、図1の(a)はその配置図を、図1の(b)はフィルタの展開図を示している。図において、図16乃至図18に示した従来の荷電粒子照射装置と同一または相当部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
図において、8は金属あるいは合成樹脂で作製されたフィルタであり、このフィルタ8は一端側の端面が軸心に対して直交する平面に形成され、他端側の端面が軸心から軸心と直交して径方向外方に延びる直線を、一端側の端面から平行に離反させつつ、軸心周りに一方向に回転させることにより得られる平面に形成され、全体として軸心方向の厚みが螺旋状に一定の勾配で変化する螺旋状部8aを有する外形形状に成形されている。そして、2つのフィルタ8、8は軸心に対して直交する平面に形成された端面同士を相対して背中合わせにして、ビーム1の中心軸方向に同軸に並設されている。また、一対のフィルタ8、8は軸心がビーム1の中心軸からずれて位置し、ビーム1が螺旋状部8a、8aの重なり部分を通過するようになっている。さらに、一対のフィルタ8、8はそれぞれ回転駆動装置10により独立して回転軸9周りに回転駆動されるようになっている。ここで、一対のフィルタ8、8と回転駆動装置10とからエネルギ調節手段を構成している。
【0026】
つぎに、この実施の形態1の動作について説明する。
このように構成された一対のフィルタ8、8を円周方向に展開すれば、図1の(b)に示されるように、一対の楔形フィルタがビーム1の中心軸に対して対称な位置関係を有してビーム1の中心軸方向に重なり合う従来のウエッジフィルタ2と等価の構成となる。そして、一対のフィルタ8、8を回転軸9周りに互いに逆方向に回転させると、一対の楔形フィルタがビーム1の中心軸に対して直交する方向に直線往復移動するように動作する。
そこで、回転駆動装置10により一対のフィルタ8、8を回転軸9周りに回転駆動すれば、螺旋状部8a、8aの重なり厚みが変化し、それに応じてフィルタ8、8を通過するビーム1のエネルギが減少され、被照射体3内でのブラッグピークの位置が深さ方向にシフトされる。また、同一の勾配を組み合わせているので、有限の径をもったビーム断面全体にわたって同じ厚みを経験する。
【0027】
この実施の形態1によれば、軸心方向の厚みが螺旋状に一定の勾配で変化する螺旋状部8aを有する外形形状に成形された一対のフィルタ8、8を同軸に背中合わせに配置しているので、一対のフィルタ8、8を回転させることにより、ビーム1の深さ方向の照射位置を変えることができ、従来のウエッジフィルタと同等の照射性能を得ることができる。
また、一対のフィルタ8、8をビーム1の中心軸に対して直交する方向に移動する必要がなく、ビーム1の中心軸に対して直交する方向の省スペース化が図られる。従って、この照射系全体を回転ガントリに取り付けても、回転ガントリの構造物との干渉を回避することができる。
また、一対のフィルタ8、8を回転軸9周りに回転駆動するので、駆動も滑らかとなり、駆動装置への負担が少なく、高速な回転が可能となる。そこで、ブラッグピークの位置を被照射体3の深さ方向に急速に変化させることができる。
【0028】
なお、上記実施の形態1では、一対のフィルタ8、8を互いに逆方向に回転させるものとしているが、一対のフィルタ8、8は必ずしも逆方向に回転させる必要はなく、同一方向に回転させても、同様の効果が得られる。
【0029】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法を説明する図であり、図2の(a)はその配置図を、図2の(b)はフィルタの回転角度と重なり厚との関係を、図2の(c)はフィルタの回転角度と時間との関係を示している。図3はこの発明の実施の形態2に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法による被照射体に照射されるトータルの線量分布を示す図である。
【0030】
この実施の形態2では、上記実施の形態1による荷電粒子照射装置に回転駆動装置10を駆動制御する回転制御計算機12を付加し、この回転制御計算機12によりフィルタ8の回転角度位置を時間的に制御するようにしたものである。
つまり、この実施の形態2では、回転制御計算機12により、時間的にフィルタ8の回転角度を設定し、図2の(c)に示される関係に基づいて回転駆動装置10を回転駆動している。これによって、螺旋状部8a、8aの重なり厚を調整し、ビーム1のエネルギの吸収量を制御し、ブラッグカーブに現れるブラッグピークの位置とその強度を制御している。
【0031】
ここで、そのビーム制御方法について説明する。
まず、ビーム1を被照射体に照射した時のブラッグカーブのデータおよび被照射体のターゲットの深さ位置のデータに基づいて、ブラッグピークがターゲットの最深部および最浅部に到達するフィルタ8a、8bの重なり厚ta、tbが算出される。
そして、図2の(b)から、算出された重なり厚ta、tbに対応するフィルタの回転角度θa、θbが求められる。さらに、フィルタの回転角度θa、θb間を等間隔に分割した複数の回転角度が選択される。ついで、フィルタ8a、8bが選択した各回転角度位置を採るように断続的に回転させて、即ちビーム1が通過する螺旋状部8a、8aの重なり部の厚みをステップ状に変化させて、ビーム1を被照射体に照射させる。
そこで、ビーム1は螺旋状部8a、8aの重なり部の厚みに応じてエネルギを吸収され、ブラッグピークの被照射体への到達位置がターゲットの最深部から最浅部側にシフトされる。この時、ターゲットに照射される全相対線量15は、図3に示されるように、選択された各回転角度位置におけるフィルタを通過したビーム1による相対線量16が積算されたもので、この相対線量15が、ターゲットの深さ方向で一定となるように、選択した各回転角度位置の保持時間を制御することになる。
なお、選択した各回転角度位置の保持時間は予め演算処理されて、図2の(c)に示されるフィルタの回転駆動条件が求められており、該回転駆動条件に基づいて回転駆動装置10が回転制御計算機12により駆動制御される。
【0032】
このように、この実施の形態2によれば、一対のフィルタ8、8の回転角度位置を時間的に制御することにより、被放射体内の深さ方向の線量分布を調整でき、荷電粒子をターゲットの深さ方向に均一に照射することができるようになり、従来のリッジフィルタと同等の照射性能を得ることができる。これは、一対のフィルタ8、8を回転軸9周りに回転駆動しているので、フィルタの厚みを急速に変化させることができることから可能となる。
そして、従来の装置のように、ウェッジフィルタとリッジフィルタとを組み合わせることなく、同等の照射性能が得られるので、ビーム軸方向における省スペース化が図られ、この照射系全体を回転ガントリに取り付けても、回転ガントリを含む照射装置全体の巨大化を抑えることができる。
【0033】
なお、上記実施の形態2では、荷電粒子をターゲットの深さ方向に均一なトータルの線量分布を得るものとしているが、フィルタの回転角度位置とその回転角度位置における保持時間とを制御すれば、相対線量の大きさが深さ方向で異なる線量分布をも得ることができる。
【0034】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法を説明する図であり、図4の(a)はその配置図を、図4の(b)はフィルタの回転角度と重なり厚との関係を示している。
【0035】
この実施の形態3では、まず回転制御計算機12により回転駆動装置10を駆動制御し、下流側のフィルタ8を回転角度θ2となるように回転させた後、その回転角度θ2を保持させる(回転駆動を停止させる)。ついで、回転制御計算機12により回転駆動装置10を駆動制御し、上流側のフィルタ8の回転角度θ1を時間的に変化させて、螺旋状部8a、8aの重なり厚を変化させる。そこで、ビーム1は螺旋状部8a,8aの重なり部の厚みに応じてエネルギが吸収され、ブラッグピークの被照射体への到達位置がシフトされる。
【0036】
このように、この実施の形態3によれば、下流側のフィルタ8の回転を停止させ、上流側のフィルタ8の回転角度を制御しているので、一対のフィルタ8、8の螺旋状部8a、8aの重なり厚の変化に任意のオフセットを持たせることができる。その結果、被照射体内の深さ方向の線量分布を全体的にフィルタのオフセット分だけ浅くする調整が可能となり、従来のウェッジフィルタの役割を兼ねることができる。
【0037】
実施の形態4.
図5はこの発明の実施の形態4に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法を説明する図であり、図5の(a)はその配置図を、図5の(b)はフィルタの回転角度と重なり厚との関係を、図5の(c)はフィルタの回転角度と時間との関係を、図5の(d)は被照射体内の深さ方向に対する相対線量を表す図を示している。
【0038】
この実施の形態4では、上記実施の形態2と同様に、荷電粒子照射装置に回転駆動装置10を駆動制御する回転制御計算機12を付加している。
そして、図5の(c)に示される時間と回転角度との関係に基づいて、回転制御計算機12により回転駆動装置10を駆動し、一対のフィルタ8、8の回転速度を時間的に制御しながら、ビーム1を被照射体に照射させている。
この時、フィルタの重なり厚は、図5の(b)に示されるように、フィルタの回転角度に応じて変化し、ビーム1は螺旋状部8a、8aの重なり厚に応じてエネルギが吸収され、ブラッグピークの被照射体への到達位置が深さ方向にシフトされる。そして、このフィルタの回転速度を遅くすると、被照射体の到達位置における相対線量が増大し、フィルタの回転速度を速くすると、被照射体の到達位置における相対線量が減少する。
そこで、図5の(c)に示される時間と回転角度との関係に基づいて、一対のフィルタ8、8の回転速度を時間的に制御すれば、図5の(d)に示されるようなトータルの線量分布17が得られる。
【0039】
このように、この実施の形態4によれば、一対のフィルタ8、8の回転速度を時間的に制御することにより、被放射体内の深さ方向の線量分布を調整でき、従来のリッジフィルタと同等の照射性能を得ることができる。これは、一対のフィルタ8、8を回転軸9周りに回転駆動しているので、フィルタの厚みを急速に変化させることができることから可能となる。
そして、従来の装置のように、ウェッジフィルタとリッジフィルタとを組み合わせることなく、同等の照射性能が得られるので、ビーム軸方向における省スペース化が図られ、この照射系全体を回転ガントリに取り付けても、回転ガントリを含む照射装置全体の巨大化を抑えることができる。
【0040】
なお、上記実施の形態4によれば、一対のフィルタ8、8を同じ量で反対方向に回転するものとしているが、フィルタ8、8を独立に、あるいは同じ方向に回転させても同様の効果を奏する。
【0041】
実施の形態5.
図6はこの発明の実施の形態5に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法を説明する図であり、図6の(a)はその配置図を、図6の(b)はフィルタの回転角度と重なり厚との関係を、図6の(c)はフィルタの回転角度とビームのON/OFFとの関係を、図6の(d)は被照射体内の深さ方向に対する線量分布を表す図を示している。
図において、18はシンクロトロンやサイクロトロン等の加速器本体、19は照射系にあるフィルタ8、8までビーム1を輸送するビーム輸送系、20はフィルタ8、8の回転に同期して信号を発生するタイミングシステム、21は加速器本体18を制御する加速器制御装置である。
【0042】
この実施の形態5では、回転制御計算機12が回転駆動装置10を駆動制御し、一対のフィルタ8、8を互いに逆方向に一定の回転速度で回転させている。そして、タイミングシステム20がフィルタ8、8が所定の回転角度となると、ビーム1が出力されるように、加速器制御装置21にトリガ信号を発生する。加速器制御装置21はタイミングシステム20からのトリガ信号を入力すると、所定の時間イオン源あるいはビーム取り出し装置をONさせる。そこで、ビーム1は図6の(c)に示されるようにパルス状にフィルタ8、8側に出射される。この時、図6の(b)に示される関係から、フィルタ8、8の回転角度に相当する螺旋状部8a、8aの重なり厚となり、ビーム1はその重なり厚に応じてエネルギが吸収され、ブラッグピークの到達位置が深さ方向にシフトされる。その結果、図6の(d)に示されるようなトータルの線量分布22が得られる。
【0043】
このように、この実施の形態5によれば、一対のフィルタ8、8の回転に同期させて加速器本体18側のビームのON/OFFを制御しているので、被照射体内の深さ方向の線量分布を調整でき、従来のリッジフィルタと同等の照射性能を得ることができる。これは、一対のフィルタ8、8を回転軸9周りに回転駆動しているので、フィルタの厚みを急速に変化させることができることから可能となる。
そして、従来の装置のように、ウェッジフィルタとリッジフィルタとを組み合わせることなく、同等の照射性能が得られるので、ビーム軸方向における省スペース化が図られ、この照射系全体を回転ガントリに取り付けても、回転ガントリを含む照射装置全体の巨大化を抑えることができる。
【0044】
実施の形態6.
図7はこの発明の実施の形態6に係る荷電粒子照射装置のフィルタ周りを示す配置図である。
この実施の形態6では、一対のフィルタ8、8は、それぞれの軸心がビーム1の中心軸を挟んで両側に位置し、かつ、螺旋状部8a、8aの重なり部分をビーム1が通過するようになっている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0045】
この実施の形態6では、一対のフィルタ8、8の回転軸9、9が平行であるが、ビーム1の中心軸を挟んで両側に位置しているので、これらの回転軸9、9上の障害が緩和され、回転駆動系周りの配置の融通性が増し、設計自由度を増大させることができる。
なお、一対のフィルタ8、8の重なり部分を少なくし、両回転軸9、9上でのフィルタ8、8の重なりをなくすようにすれば、2つの回転駆動装置10をビーム1の軸方向の一側に配置することも可能となり、設計自由度をより増大させることができる。
【0046】
実施の形態7.
図8はこの発明の実施の形態7に係る荷電粒子照射装置のフィルタ周りを示す配置図、図9はこの発明の実施の形態7に係る荷電粒子照射装置に適用されるフィルタの構成を説明する図であり、図9の(a)はその斜視図を、図9の(b)は断面図を示している。
図において、エネルギ調節手段としてのフィルタ24は、軸心方向の厚みが螺旋状に一定の勾配で変化する螺旋状部24aと、この螺旋状部24aの内周側に軸心方向の厚みが螺旋状に螺旋状部24aの勾配より大きな一定の勾配で変化する螺旋状部24bと、この螺旋状部24bの内周側に軸心方向の厚みが螺旋状に螺旋状部24bの勾配より大きな一定の勾配で変化する螺旋状部24cとを有する外形形状に成形されている。そして、2つのフィルタ24、24が、背中合わせにして、ビーム1の中心軸方向に同軸に並設されている。また、フィルタ24、24はそれぞれ回転駆動装置10により独立して回転軸9周りに回転駆動されるようになっている。さらに、フィルタ24、24は移動装置23により軸心をビーム1の中心軸に対して接離する方向に移動可能になっており、ビーム1が両フィルタ24、24の同一勾配の螺旋状部の重なり部分を通過するようになっている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0047】
この実施の形態7では、移動装置23により一対のフィルタ24、24をビーム1の中心軸に対して接離させることにより、ビーム1の通過領域に螺旋状部24a、24a同士の重なり部分、螺旋状部24b、24b同士の重なり部分、あるいは螺旋状部24c、24c同士の重なり部分を選択して位置させることができる。
そこで、一対のフィルタ24、24の回転速度を一定としても、移動装置23により一対のフィルタ24、24をビーム1の中心軸に対して接離させることにより、ビーム1の深さ方向の掃引の速度を任意に変化させることができる。
【0048】
実施の形態8.
図10はこの発明の実施の形態8に係る荷電粒子照射装置に適用されるフィルタを示す斜視図である。
図において、エネルギ調節手段としてのフィルタ25は、軸心方向の厚みが螺旋状に一定の勾配で変化する螺旋状部25aが軸心周りに渦巻き状に形成された外形形状に成形されている。他の構成は上記実施の形態7と同様に構成されている。即ち、2つのフィルタ25、25が、背中合わせにして、ビーム1の中心軸方向に同軸に並設されている。また、フィルタ25、25はそれぞれ回転駆動装置10により独立して回転軸9周りに回転駆動されるようになっている。さらに、フィルタ25、25は移動装置23により軸心をビーム1の中心軸に対して接離する方向に移動可能になっており、ビーム1が両フィルタ25、25の螺旋状部25a、25aの重なり部分を通過するようになっている。
【0049】
この実施の形態8では、一対のフィルタ25、25を回転させながら、ビーム1の通過領域に渦巻き状の螺旋状部25a、25aの重なり部分がビーム1の通過領域に位置するように、移動装置23により一対のフィルタ25、25をビーム1の中心軸に対して接離させている。
そこで、フィルタ25の螺旋状部25aの勾配がゆるやかなものとなり、ブラッグピークの被照射体内の到達位置を高精度に制御することができる。
【0050】
実施の形態9.
図11はこの発明の実施の形態9に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図であり、図11の(a)はフィルタの配置を示す平面図を、図11の(b)はフィルタの配置を示す側面図を、図11の(c)はフィルタを周方向に展開した展開図を示している。
図において、エネルギ調節手段としてのフィルタ26は、軸心方向の厚みが最小厚から最大厚まで一定の勾配で螺旋状に変化する4つの螺旋状部26aが周方向に連設された外形形状に成形されている。そして、2つのフィルタ26、26が、背中合わせにして、ビーム1の中心軸方向に同軸に並設されている。また、フィルタ26、26はそれぞれ回転駆動装置10により独立して回転軸9周りに回転駆動されるようになっている。さらに、ビーム1が両フィルタ26、26の螺旋状部26a、26aの重なり部分を通過するようになっている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0051】
この実施の形態9では、フィルタ26、26を1回転させる間に、フィルタの重なり部の厚み変化が4回繰り返される。
そこで、一対のフィルタ26、26の回転速度が遅い場合であっても、ビーム1が速い勾配変化を受けるようにすることができ、速い繰り返しで一定の範囲の被照射体内の深さを掃引することができる。
【0052】
実施の形態10.
図12はこの発明の実施の形態10に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図であり、図12の(a)はフィルタの配置を示す平面図を、図12の(b)はフィルタの配置を示す側面図を、図12の(c)はフィルタを周方向に展開した展開図を示している。
図において、エネルギ調節手段としてのフィルタ27は、軸心方向の厚みが最小厚から最大厚を経て最小厚まで一定の勾配で螺旋状に変化する2つの螺旋状部27aが周方向に連設された外形形状に成形されている。そして、2つのフィルタ27、27が、背中合わせにして、ビーム1の中心軸方向に同軸に並設されている。また、フィルタ27、27はそれぞれ回転駆動装置10により独立して回転軸9周りに回転駆動されるようになっている。さらに、ビーム1が両フィルタ27、27の螺旋状部27a、27aの重なり部分を通過するようになっている。
なお、他の構成は上記実施の形態9と同様に構成されている。
【0053】
この実施の形態10では、フィルタ27、27を1回転させる間に、フィルタの重なり部の厚み変化が4回繰り返される。
そこで、一対のフィルタ27、27の回転速度が遅い場合であっても、ビーム1が速い勾配変化を受けるようにすることができ、速い繰り返しで一定の範囲の被照射体内の深さを掃引することができる。さらに、被照射体内の深さを往復掃引することができる。
【0054】
実施の形態11.
図13はこの発明の実施の形態11に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図であり、図13の(a)はフィルタの配置を示す平面図を、図13の(b)はフィルタの配置を示す側面図を、図13の(c)はフィルタを周方向に展開した展開図を示している。
図において、エネルギ調節手段としてのフィルタ28は、軸心方向の厚みが最小厚から最大厚までそれぞれ異なる勾配で螺旋状に変化する2つの螺旋状部28a、28bが周方向に連設された外形形状に成形されている。そして、2つのフィルタ28、28が、背中合わせにして、ビーム1の中心軸方向に同軸に並設されている。また、フィルタ28、28はそれぞれ回転駆動装置10により独立して回転軸9周りに回転駆動されるようになっている。さらに、ビーム1が両フィルタ28、28の同一の勾配の螺旋状部28a、28a同士、あるいは螺旋状部28b、28b同士の重なり部分を通過するようになっている。
なお、他の構成は上記実施の形態9と同様に構成されている。
【0055】
この実施の形態11では、フィルタ28、28を1回転させる間に、フィルタの厚みの勾配を変化させることができる。
そこで、一対のフィルタ28、28の回転角度範囲を制御することにより、ビーム1が同一のフィルタ構成で異なる勾配を受けるようにすることができ、被照射体内の深さで異なる速さでの掃引を行うことができる。
【0056】
実施の形態12.
図14はこの発明の実施の形態12に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図であり、図14の(a)はその配置図を、図14の(b)はコリメータの斜視図を、図14の(c)はフィルタの回転角度と重なり厚との関係を、図14の(d)はフィルタの回転角度とビーム通過のON/OFFとの関係を、図14の(e)は被照射体内の深さ方向に対する線量分布を表す図を示している。
この実施の形態12では、スリット29a、29bが設けられた十分なビームの遮蔽厚を有する鉛からなる円盤状の金属板を、その主面をビーム1の中心軸と直交するように、上流側のフィルタ8に一体に取り付けられて、円盤状のコリメータを構成している。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0057】
この実施の形態12では、一対のフィルタ8、8が回転されると、金属板29も一緒に回転する。そして、金属板29のスリット29a、29bがビーム1の通過領域に到達した時に、ビーム1が被照射体に照射される。即ち、ビーム1の被照射体への照射が、図14の(d)に示されるように、ON/OFFされる。そして、ビーム1は、ビーム1の被照射体への照射がONの時のフィルタの回転角度に対応するフィルタの重なり厚に応じてエネルギを吸収されて被照射体に照射される。このフィルタの重なり厚は、図14の(c)に示されるように、フィルタの回転角度に比例して厚くなるので、照射されるビーム1のエネルギが変化され、図14の(e)に示されるトータルな線量分布が得られる。
従って、この実施の形態12によれば、金属板29のスリット29a、29bの開口を調整することにより、ビーム1の被照射体内での深さと強度の制御が可能となり、深さ方向の線量分布を制御することができる。
【0058】
実施の形態13.
図15はこの発明の実施の形態13に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図であり、図15の(a)はその配置図を、図15の(b)はそのコリメータの構成図を示している。
この実施の形態13では、それぞれの一部に半月状の開口部30a、31aが設けられた十分なビームの遮蔽厚を有する鉛からなる2枚の金属板30、31を、それぞれの主面をビーム1の中心軸と直交するように重ね合わせ、上流側のフィルタ8に軸心周りに回転可能に取り付けられて、円盤状のコリメータを構成している。
なお、他の構成は上記実施の形態12と同様に構成されている。
【0059】
この実施の形態13では、一対のフィルタ8、8が回転されると、一対の金属板30、31も一緒に回転する。そして、一対の金属板30、31の開口部30a、31aの重なりにより構成される開口がビーム1の通過領域に到達した時に、ビーム1が被照射体に照射される。即ち、ビーム1の被照射体への照射が、ON/OFFされる。そして、ビーム1は、ビーム1の被照射体への照射がONの時のフィルタの回転角度に対応するフィルタの重なり厚に応じてエネルギを吸収されて被照射体に照射される。
従って、この実施の形態13によれば、一対の金属板30、31をそれぞれ任意の角度回転させることにより、開口部の範囲を任意に調整でき、ビーム1の被照射体内での深さと強度の制御が可能となり、深さ方向の線量分布を制御することができる。
なお、この実施の形態13では、半月状の開口部30a、31aを有する2枚の金属板30、31を重ね合わせてコリメータを構成するものとしているが、開口部の形状は半月状に限定されるものではなく、任意の形状でよい。また、金属板の枚数の2枚に限定されるものではなく、3枚以上の金属板を組み合わせてコリメータを構成してもよい。
【0060】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0061】
この発明によれば、荷電粒子を加速する加速器と、この加速器で加速されて取り出された荷電粒子のビームを輸送するビーム輸送系と、このビーム輸送系の終端に配置されてビームのエネルギを調節するエネルギ調節手段とを備えた荷電粒子照射装置において、上記エネルギ調節手段は、軸心方向の厚みが軸心周りに螺旋状に変わる螺旋状部を有する外形形状に成形された一対のフィルタと、この一対のフィルタをそれぞれの軸心を回転中心として独立して回転駆動する回転駆動装置とからなり、該一対のフィルタが、厚みの変わる螺旋状部の少なくとも一部が重なりあい、かつ、この螺旋状部の重なり部が上記ビームの通過領域に位置するように、それぞれの軸心方向をビームの中心軸方向と平行として該ビームの中心軸方向に前後して並設されているので、従来のウェッジフィルタおよびリッジフィルタと同等の照射性能が得られるとともに、ビームの中心軸に直交する方向の省スペース化が図られ、回転ガントリを含む装置全体の巨大化を抑えることができる荷電粒子照射装置が得られる。
【0062】
また、一対のフィルタは、それぞれの軸心が同軸的に位置して、ビームの中心軸方向に前後して並設されているので、ビームの中心軸に直交する方向の省スペース化が図られる。
【0063】
また、一対のフィルタは、それぞれの軸心がビームの中心軸を挟んで両側に位置して、ビームの中心軸方向に前後して並設されているので、回転駆動系周りの配置の融通性を増大させることができる。
【0064】
また、フィルタは、螺旋の勾配の異なる複数の螺旋状部が径方向に階段状に連設された外形形状に成形され、かつ、軸心位置がビームの中心軸に対して接離できるように構成されているので、深さ方向の掃引速度を任意に変化させることができる。
【0065】
また、フィルタは、螺旋状部が渦巻き状に形成された外形形状に成形され、かつ、軸心位置がビームの中心軸に対して接離できるように構成されているので、ブラッグピークの深さ方向の到達位置を高精度に制御することができる。
【0066】
また、フィルタは、最小厚から最大厚まで同一の勾配で螺旋状に変化する複数の螺旋状部が周方向に連接された外形形状に成形されているので、速い繰り返しで一定の範囲の被照射体内の深さを掃引することができる。
【0067】
また、フィルタは、最小厚から最大厚を経て最小厚まで同一の勾配で螺旋状に変化する複数の螺旋状部が周方向に連接された外形形状に成形されているので、速い繰り返しで一定の範囲の被照射体内の深さを掃引することができるとともに、被照射体内の深さを往復掃引することができる。
【0068】
また、フィルタは、最小厚から最大厚まで異なる勾配で螺旋状に変化する複数の螺旋状部が周方向に連設された外形形状に成形されているので、被照射体内の深さによって異なる速さで掃引することができる。
【0069】
また、スリットを有し、十分なビームの遮蔽厚を持つ金属板が、その主面を該ビームの中心軸と直交するように一対のフィルタの一方に取り付けられているので、ビームの被照射体内での深さと強度を制御でき、深さ方向の線量分布を制御することができる。
【0070】
また、開口部を有し、十分なビームの遮蔽厚を持つ少なくとも2枚の金属板が、それぞれの主面を該ビームの中心軸と直交するように重ね合わせて一対のフィルタの一方に軸心周りにそれぞれ回転可能に取り付けられているので、ビームの被照射体内での深さと強度を制御でき、深さ方向の線量分布を制御することができる。
【0071】
また、この発明によれば、フィルタを断続的に回転させて該フィルタの回転角度位置を、該ビームが通過する螺旋状部の重なり部の厚みを変化させるよう制御し、該回転角度位置の保持時間を、該ビームの線量分布を調節するよう制御するようにしたので、装置の巨大化を抑えて、被照射体内の深さ方向の線量分布を簡易に調整できる荷電粒子照射装置のビーム照射方法が得られる。
【0072】
また、この発明によれば、フィルタの回転速度を時間的に一定速度から増減速制御し、該ビームが通過する螺旋状部の重なり部の厚みを急速変化させるようにしたので、装置の巨大化を抑えて、被照射体内の深さ方向の線量分布を簡易に調整できる荷電粒子照射装置のビーム照射方法が得られる。
【0073】
また、この発明によれば、フィルタを一定の回転速度で回転させながら、該フィルタの重なり厚が所定の回転角度に相当する螺旋状部の重なり厚の時、該ビームの発生源をON制御して該ビームを出射し、所定のビーム出射後に該ビームの発生源をOFF制御するようにしたので、装置の巨大化を抑えて、被照射体内の深さ方向の線量分布を簡易に調整できる荷電粒子照射装置のビーム照射方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る荷電粒子照射装置を説明する図である。
【図2】 この発明の実施の形態2に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法を説明する図である。
【図3】 この発明の実施の形態2に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法による被照射体に照射されるトータルの線量分布を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態3に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法を説明する図である。
【図5】 この発明の実施の形態4に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法を説明する図である。
【図6】 この発明の実施の形態5に係る荷電粒子照射装置のビーム制御方法を説明する図である。
【図7】 この発明の実施の形態6に係る荷電粒子照射装置のフィルタ周りを示す配置図である。
【図8】 この発明の実施の形態7に係る荷電粒子照射装置のフィルタ周りを示す配置図である。
【図9】 この発明の実施の形態7に係る荷電粒子照射装置に適用されるフィルタの構成を説明する図である。
【図10】 この発明の実施の形態8に係る荷電粒子照射装置に適用されるフィルタを示す斜視図である。
【図11】 この発明の実施の形態9に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図である。
【図12】 この発明の実施の形態10に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図である。
【図13】 この発明の実施の形態11に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図である。
【図14】 この発明の実施の形態12に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図である。
【図15】 この発明の実施の形態13に係る荷電粒子照射装置の構成を説明する図である。
【図16】 従来のウェッジフィルタの動作を説明する図である。
【図17】 被照射体に単一エネルギをもった荷電粒子が照射された場合の被照射体の深さ方向における相対線量を示すグラフである。
【図18】 従来のリッジフィルタの動作を説明する図である。
【符号の説明】
1 ビーム、8、24、25、26、27、28 フィルタ(エネルギ調節手段)、8a、24a、24b、24c、25a、26a、27a、28a、28b 螺旋状部、9 回転軸(軸心)、10 回転駆動装置(エネルギ調節手段)、18 加速器本体(加速器)、19 ビーム輸送系、29、30、31 金属板、29a、29b スリット、30a、31a 開口部。
Claims (13)
- 荷電粒子を加速する加速器と、この加速器で加速されて取り出された荷電粒子のビームを輸送するビーム輸送系と、このビーム輸送系の終端に配置されてビームのエネルギを調節するエネルギ調節手段とを備えた荷電粒子照射装置において、
上記エネルギ調節手段は、軸心方向の厚みが軸心周りに螺旋状に変わる螺旋状部を有する外形形状に成形された一対のフィルタと、この一対のフィルタをそれぞれの軸心を回転中心として独立して回転駆動する回転駆動装置とからなり、該一対のフィルタが、厚みの変わる螺旋状部の少なくとも一部が重なりあい、かつ、この螺旋状部の重なり部が上記ビームの通過領域に位置するように、それぞれの軸心方向をビームの中心軸方向と平行として該ビームの中心軸方向に前後して並設されていることを特徴とする荷電粒子照射装置。 - 一対のフィルタは、それぞれの軸心が同軸的に位置して、ビームの中心軸方向に前後して並設されていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子照射装置。
- 一対のフィルタは、それぞれの軸心がビームの中心軸を挟んで両側に位置して、ビームの中心軸方向に前後して並設されていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子照射装置。
- フィルタは、螺旋の勾配の異なる複数の螺旋状部が径方向に階段状に連設された外形形状に成形され、かつ、軸心位置がビームの中心軸に対して接離できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の荷電粒子照射装置。
- フィルタは、螺旋状部が渦巻き状に形成された外形形状に成形され、かつ、軸心位置がビームの中心軸に対して接離できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の荷電粒子照射装置。
- フィルタは、最小厚から最大厚まで同一の勾配で螺旋状に変化する複数の螺旋状部が周方向に連接された外形形状に成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の荷電粒子照射装置。
- フィルタは、最小厚から最大厚を経て最小厚まで同一の勾配で螺旋状に変化する複数の螺旋状部が周方向に連接された外形形状に成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の荷電粒子照射装置。
- フィルタは、最小厚から最大厚まで異なる勾配で螺旋状に変化する複数の螺旋状部が周方向に連設された外形形状に成形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の荷電粒子照射装置。
- スリットを有し、十分なビームの遮蔽厚を持つ金属板が、その主面を該ビームの中心軸と直交するように一対のフィルタの一方に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の荷電粒子照射装置。
- 開口部を有し、十分なビームの遮蔽厚を持つ少なくとも2枚の金属板が、それぞれの主面を該ビームの中心軸と直交するように重ね合わせて一対のフィルタの一方に軸心周りにそれぞれ回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の荷電粒子照射装置。
- 請求項1の荷電粒子照射装置のビーム制御方法であって、フィルタを断続的に回転させて該フィルタの回転角度位置を、該ビームが通過する螺旋状部の重なり部の厚みを変化させるよう制御し、該回転角度位置の保持時間を、該ビームの線量分布を調節するよう制御することを特徴とする荷電粒子照射装置のビーム制御方法。
- 請求項1の荷電粒子照射装置のビーム制御方法であって、フィルタの回転速度を時間的に一定速度から増減速制御し、該ビームが通過する螺旋状部の重なり部の厚みを急速変化させるようにしたことを特徴とする荷電粒子照射装置のビーム制御方法。
- 請求項1の荷電粒子照射装置のビーム制御方法であって、フィルタを一定の回転速度で回転させながら、該フィルタの重なり厚が所定の回転角度に相当する螺旋状部の重なり厚の時、該ビームの発生源をON制御して該ビームを出射し、所定のビーム出射後に該ビームの発生源をOFF制御するようにしたことを特徴とする荷電粒子照射装置のビーム制御方法。
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