JP3698858B2 - ガス遮断弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス供給路の途中に介設され、振動が作用した際や所定角度以上傾斜した際にガス供給路を閉鎖するガス遮断弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
特願平8−243327号として、バーナへガスを供給するガス供給路に介設された本体内に、ばねにより上方に付勢され、上昇端で弁座に押接されてガスの流れを遮断する上下動自在の弁体を配設すると共に、該本体の上部に、底面が内側に向かって下り傾斜したすり鉢状の傾斜部を備え、球状の可動子を内部に格納する可動子室を形成し、弁体の上面に上記傾斜部の底部分に突出する棒状突起を形成して可動子が傾斜部の底部分に位置する状態で可動子が棒状突起を介して弁体を押し下げ、弁体を弁座から離間させ開弁状態になるようにしたガス遮断弁を先に提案した。
【0003】
ガス器具のバーナにガスを供給するガス供給路には、バーナの上流に火力調節弁と、その上流にバーナの着火状態で開弁保持され、消火状態で閉弁する失火時用の安全弁とが介設されており、該ガス遮断弁は安全弁の更に上流位置に介設される。地震等によりガス遮断弁に一定以上の強さの振動が作用すると、可動子が傾斜部の底部分から外れる。すると上から押さえていた可動子が外れたため弁体はばねの付勢力により上昇し、上昇端で弁座に押接されてガスの流れを遮断する。弁体がガスの流れを遮断すると弁体の上流側にはガスの供給圧が作用し、弁体はばねの付勢力と共に供給圧により弁座に押接されて閉弁する。ガスの流れが遮断されるとバーナは消火し、該消火により安全弁が閉鎖する。ところで、弁体には弁座に押接されガスの流れを遮断した状態で弁体の上流側と下流側とを連通するバイパス路が形成されており、安全弁が閉弁するとバイパス路を通ってガスが弁体の上流側から下流側へと漏れ、徐々に弁体の下流側の圧力が上流側の圧力に近づき上流側と下流側との圧力差が小さくなるので、弁体を弁座に押接する力が減少する。振動が収まると可動子が傾斜部の底部分に戻ってきて可動子が棒状突起を介して再び弁体を押し下げ、弁体を弁座から離間させる。尚、バーナは消火しているので安全弁は閉弁されており、ガス遮断弁が開弁してもバーナからガスが漏れ出ることはない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のものでは、振動が作用し傾斜部の底部分から外れた可動子が可動子室の内周壁にぶつかり、そのまま再び底部分に返ってくる場合がある。振動が作用した際に火力調節弁が強火状態であると、弁体が弁座に押接されて閉弁すると弁体の下流側の圧力は瞬時に大気圧まで下がり、弁体の上流側と下流側との差圧が大きくなる。従って、弁体はばねの付勢力と、弁体の上流側と下流側との間に生じる大きな差圧とにより弁座に押接されて閉弁し、可動子が底部分に戻ってきても可動子の自重では弁体を押し下げられず問題はない。ところが、振動が作用した際に火力調節弁が弱火状態であると、弁体が弁座に押接されて閉弁すると弁体の下流側の圧力の低下速度が遅く弁体の上流側と下流側との差圧が小さいため、差圧により弁体を弁座に押し付ける力が小さい。従って、弁体の下流側の圧力が下がり差圧が大きくなるまでに可動子が傾斜部の底部分に戻ってくると、可動子の自重により弁体が押し下げられガス遮断弁が開弁するおそれが生じる。弁体が弁座に押接されて閉弁している時間が短ければバーナは完全に消火していない場合があり、その場合には弁体が押し下げられるとバーナにガスが供給され消火しないという不具合が生じる。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、振動が作用した場合に確実にバーナが消火するまで開弁しないガス遮断弁を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、バーナへガスを供給するガス供給路に介設された本体内に、ばねにより上方に付勢され、上昇端で弁座に押接されてガスの流れを遮断する上下動自在の弁体を配設すると共に、本体の上部に、少なくとも底面の一部が内側に向かって下り傾斜したすり鉢状の傾斜部を備え、球状の可動子を内部に格納する可動子室を形成し、弁体の上面に傾斜部の底に設けた連通孔から突出する棒状突起を形成して可動子が連通孔に位置する状態で可動子が棒状突起を介して弁体を押し下げ、弁体を弁座から離間させ開弁状態になるようにしたガス遮断弁において、連通孔から外れた可動子が可動子室の内周壁で跳ね返り、初めて復動する際に、可動子の軌道が連通孔から外れるように軌道を変える軌道変更手段を設けており、可動子室の内周壁を、内周壁の法線が連通孔を通らないように形成して、軌道変更手段としたことを特徴とする。
【0007】
連通孔から外れた可動子は可動子室の内周壁で跳ね返り、可動子室の底部分へ復動するが、可動子の軌道が連通孔へ向かう方向から一旦外れると、可動子は連通孔へ戻りにくくなる。従って、振動の強さが一定以上になり、可動子が連通孔から外れてから可動子室の内周壁で跳ね返った後初めて復動する際に、軌道変更手段により可動子の軌道を変更し連通孔から外すと、連通孔から外れて再び連通孔に戻るまでに時間がかかり、その間にバーナは確実に消火する。
【0008】
可動子が連通孔から外れると、可動子は連通孔から放射方向に真っ直ぐ移動する場合が多い。そのまま移動すると可動子は可動子室の内周壁に衝突するが、衝突した軌道と相違する軌道で跳ね返るように軌道を変更すればその軌道は連通孔から外れる。このように、衝突時の軌道に対して跳ね返る軌道を相違させるためには、内周壁の衝突点での法線が連通孔を通らないように形成すればよい。
【0009】
また、可動子の軌道途中に段部を形成すると、可動子が段部を通過する時に跳ねて可動子の軌道が変更される。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1を参照して、Bはガステーブルやガスストーブ等のガス器具に内蔵されているバーナであり、バーナBへガスを供給するガス供給路には、上流側から順に安全弁SVと火力調節用の火力調節弁Vとが直列に接続されている。一方、バーナBの近傍には点火プラグSPと熱電対TCとが配設されいる。点火プラグSP及び熱電対TCは共にコントローラCに接続され、点火プラグSPはコントローラCから高電圧が印加されバーナBとの間に火花放電を生じさせることによりバーナBへ点火を行うものである。また、バーナBが点火されると熱電対TCが炎によって加熱され熱起電力をコントローラCに出力する。コントローラCは熱電対TCにより点火状態を検知している間は安全弁SVを開弁状態に保持するが、バーナBが消火すると安全弁SVを閉弁させる。そして、本実施の形態では安全弁SVの更に上流に本発明にかかるガス遮断弁1を接続した。
【0011】
図2に示す如く、弁筐10の略上半部に可動子室2を形成した。そして、可動子室2の内部に鋼球から成る可動子3を格納し、可動子室2を外部に対して気密に封止した。該可動子室2は有底円筒状に形成されており、底面には内側に向かって下るように傾斜するすり鉢状の傾斜部22が形成されている。該傾斜部22の中央に形成した底部分には後述する棒状突起50の先端53が臨む連通孔23が開口している。従って、振動が生じていない状態では可動子3は連通孔23に嵌って安定して保持される。
【0012】
弁筐10の下半部には弁室4が形成されている。該弁室4を介してガスが流入する流入部41とガスが流出する流出部42とが連通されている。弁室4の内部には弁座43が形成されている。弁室4内にはばね51により上方に付勢された弁体5が上下動自在に配設されている。該弁体5の上面には環状のシール部材52が取り付けられており、弁体5がばね51により上方に押し上げられるとシール部材52が弁座43に押接される。すると、流入部41から流出部42への連通が断たれ、ガスは流出部42から下流へと流出しなくなる。振動が作用しない状態では、弁体5の中央部から上方に延設された棒状突起50の先端53が可動子3により押され弁体5全体が下げられた状態になっている。この状態では、弁体5はシール部材52が弁座43から離間した開弁状態になっている。可動子3の重量はばね51の付勢力に打ち勝って弁体5を下方に押し下げられるように設定する必要がある。ただし、シール部材52が弁座43に押接され閉弁状態になると流入部41を介してガスの供給圧力が弁体5の上流側の面(下面)に作用し、ばね51の付勢力と共に弁体5を上方へ押し上げるので、可動子3の重量では弁体5を押し下げられなくなり、閉弁状態のままになる。そこで、弁体5にバイパス穴54を形成し、弁体5が閉弁してバーナBが消火してガス遮断弁1の下流に設けた安全弁SVが閉弁するとバイパス穴54を介してガスがガス遮断弁1と安全弁SVとの間に徐々に流れ込み、弁体5の下流側の圧力をガスの供給圧力に近付け、振動が収まり可動子3が連通孔23に戻ると可動子3の重量のみで弁体5が押し下げられ、自動で開弁復帰するように設定されている。
【0013】
ところで、本実施の形態では、図3及び図4に示すように、円筒状の内周面21の中心に対して傾斜部22の中心である連通孔23を偏移させて形成した。このように傾斜部22を偏移させることにより、内周壁21の法線Hは傾斜部22の中心部分である連通孔23の中心から外れる。可動子3は連通孔23に嵌って保持されているから、矢印S方向へ振動が作用して可動子3が連通孔23から外れると、可動子3は連通孔23の位置を起点としてS’で示す軌道に沿って移動する。そのまま内周面21に衝突すると、軌道S’と衝突点での法線Hとが平行でないため可動子3は連通孔23から外れた軌道Rに沿って跳ね返る。可動子3の軌道が連通孔23の中心から一旦外れると、その後すぐに可動子3が連通孔23の中心を通過することはほとんどなく、その間に火力調節弁Vが強火状態であると弱火状態であるとにかかわらず、バーナBは確実に消火し安全弁SVが閉弁する。安全弁SVが閉弁すると、その後にガス遮断弁1が開弁してもバーナBにガスが供給されることはない。
【0014】
他の実施の形態として、例えば図5に示すように、可動子3の軌道の途中に位置する傾斜部22の周縁に段部22aを形成した。このように段部22aを形成すると可動子3が該段部22aを通過する時に可動子3が跳ねて可動子3の軌道が変更される。ところで、図5に示す実施の形態では段部22aを設けるだけでなく図2に示す実施の形態と同様に、傾斜部22の中心である連通孔23を内周面21の中心に対して偏移して形成した。また、図6を参照して、単に偏移させただけでは連通孔23の中心と内周面21の中心とを結ぶ線CL上の点での法線は連通孔23の中心から外れない。そこで、内周面21とCLとの交点部分である2カ所に上下に長手の突条21aを形成し、法線Hが連通孔23の中心から外れるようにした。
【0015】
また、図7に示すように、傾斜部22の周囲に傾斜した段部61を形成しても良い。このように段部61を傾斜させると可動子3が段部61に乗り上がる際や段部61から下りる際に可動子3の軌跡が段部61の下り傾斜側に変更される。該段部61の代わりに、図8に示すように傾斜角が連続して変化する斜面62を設けても良い。あるいは、図9に示すように、可動子3の軌道途中に、可動子3が真っ直ぐに連通孔23へ移動しようとする軌道を斜めに曲げる可動子室2の半径方向に直角とならない方向に延設した突条63を形成しても良い。
【0016】
ところで上記各実施の形態の他に、例えば内周面に突起を形成したり外周面に対して内周面が偏移している金属製や樹脂製の円筒状のスリーブを可動子室内に挿入し、可動子が該スリーブに衝突した際の反射軌道を変更するようにしても良い。また、上記連通孔23は傾斜部22の中心に位置させなくてもよい。
【0017】
尚、上記実施の形態では、安全弁SVの上流側にガス遮断弁1を配設したが、安全弁SVの下流側にガス遮断弁1を配設してもよい。この場合、バーナBは弁体5の閉弁により消火し、安全弁SVが閉弁するとガス圧がガス遮断弁1と安全弁SVとの間に封止されて弁体5は開弁保持されるが、バイパス穴54を介して弁室4からガス流出部42側へガスが徐々に抜けて弁室4が大気圧になり、弁室4の圧力とガス流出部42の圧力とが共に大気圧になり、相互に等しくなって自動的に開弁する。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のガス遮断弁によれば、振動が作用した直後に可動子が傾斜部の底に設けた連通孔に戻ることを防止することにより、弱火状態であっても振動が作用した際に確実にバーナへのガスの供給を停止させ消火させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガス遮断弁の適用状態を示す図
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す断面図
【図3】傾斜部の位置を示す部分斜視図
【図4】可動子の軌道を説明する平面図
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す断面図
【図6】可動子室の形状を示す平面図
【図7】第3の実施の形態での部分斜視図
【図8】第4の実施の形態での部分斜視図
【図9】第5の実施の形態を示す断面図
【符号の説明】
1 ガス遮断弁
2 可動子室
3 可動子
4 弁室
5 弁体

Claims (2)

  1. バーナへガスを供給するガス供給路に介設された本体内に、ばねにより上方に付勢され、上昇端で弁座に押接されてガスの流れを遮断する上下動自在の弁体を配設すると共に、該本体の上部に、少なくとも底面の一部が内側に向かって下り傾斜したすり鉢状の傾斜部を備え、球状の可動子を内部に格納する可動子室を形成し、弁体の上面に上記傾斜部の底に設けた連通孔から突出する棒状突起を形成して可動子が該連通孔に位置する状態で可動子が棒状突起を介して弁体を押し下げ、弁体を弁座から離間させ開弁状態になるようにしたガス遮断弁において、
    上記連通孔から外れた可動子が上記可動子室の内周壁で跳ね返り、初めて復動する際に、可動子の軌道が上記連通孔から外れるように軌道を変える軌道変更手段を設けており、
    上記可動子室の内周壁を、該内周壁の法線が上記連通孔を通らないように形成して、上記軌道変更手段としたことを特徴とするガス遮断弁。
  2. 上記可動子の軌道途中に段部を設け、上記軌道変更手段としたことを特徴とする請求項1記載のガス遮断弁。
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