JP3696525B2 - 銅微粉製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末冶金製品や電子部品の原料となる銅微粉の製造方法に関するものである。本発明は、より詳しくは、電解槽を使用した酸化還元法によって、一定の平均粒径を有する銅微粉を効率的且つ連続的に製造するための製造方法および製造システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明の目的とする粒状の銅微粉の製造方法としては、従前から種々の化学還元法が提案されてきた。このような化学還元法としては、例えば、特開昭59−173206や特開昭63−125605が挙げられる。
一方、特許公報第2622019号には、より低コスト化あるいは環境負荷の低減、並びに品質の安定化を達成できる銅微粉の製造方法が記載されている。この特許公報第2622019号に記載の発明は、陽極を備えた陽極室と、陽極室と隔膜を介して隣接する陰極を備えた陰極室とを有する電解槽を使用して銅微粉を製造するものであるが、陽極は銅微粉の原料である銅から構成されており、しかも硫酸溶液から成る電解液にはTi3+イオンが含まれていて、電解によって陽極から溶出した銅イオンが直ちにTi3+イオンによって還元されて銅微粉が生成するようになっている。かかる特許公報第2622019号に記載の発明は、低コストで品質の安定した銅微粉を製造できる点で有用であるが、より効率的な製造を行うためには、次のような課題が存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
まず、特許公報第2622019号に記載の発明では、電解によって銅から成る陽極からCu2+イオンが溶出するようになっているが、電解液中に共存する他のイオンに比べてCu2+イオンの比重は大きいので、溶出したCu2+イオンは陽極室の底部に沈積しやすい。従って、特許公報第2622019号に記載の発明は、電解を継続するにつれて電解液の下部のTi3+イオンが枯渇して、粒径のばらつきが生じたり、板状や針状等の異形粉が析出したり、あるいは電解槽や配管内面へ皮膜状に析出したりする。
そこで、陽極室の中のTi3+イオンの分布を均一化して上記現象の発生を抑制することが求められている。
【0004】
また、特許公報第2622019号に記載の発明は、例えば1μm以下の極めて微細な粉末を製造できる点で有用であるが、このような微細な粉末の回収は非常に困難である。水溶液中で銅粉を析出させる従来の湿式法においては、一般的には、析出した銅粉を予め沈降させてから間欠的に回収する方法が採られているが、上記特許発明の方法で生成する銅微粉は電解液中で懸濁しているので沈降するまでには長時間を要する。また電解液をフィルターでろ過して銅粉を回収する方法もあるが、上記特許発明で生成する銅微粉は、微細であり、しかも1g/L以下の低濃度で電解液中に浮遊しているため、ろ過の効率は低く、またフィルターも目詰まりし易いので実用的ではない。
一方、析出した銅微粉を回収することなく電解を継続すると、既に析出した銅微粉を核として粗大な異形粉に成長してしまうことがあるので、析出した銅微粉は逐次回収されることが好ましい。
そこで、電解液中に懸濁する銅微粉を効率的且つ連続的に回収して、銅微粉の製造を効率化するとともに銅微粉の粒度を一定にすることが求められている。
【0005】
さらに、特許公報第2622019号に記載の方法によると、銅を陽極として電解して銅微粉を析出させる工程、並びにこの工程によって電解液中に生成したTiO2+イオンを還元する工程のいずれにおいても、陰極において水素が発生すること加えて、電解液中にTi3+が存在することにより、比較的容易に陰極の腐食が進行してしまうことが明らかになった。即ち、硫酸溶液から成る電解液に対して一般的には十分な耐食性を発揮する耐食ステンレス鋼やチタンも、特許公報第2622019号に記載の発明の陰極に用いた場合には、電解液中にTi3+イオンが存在することによって、陰極の表面の不動態皮膜が破壊されて腐食してしまう。一方、鉛や黒鉛から成る陰極は、比較的良好な耐食性を示すが、それでも微量ではあるが陰極表面の脱落や剥離によって製品中に不純物が混入する。工業材料の中では、唯一、ジルコニウムから成る陰極が優れた耐食性を示すが、コスト面で問題がある。
従って、Ti3+イオンを含む電解液を使用して電解を行う特許公報第2622019号に記載の方法を使用する場合において、低コストでしかも耐腐食性を有する新規な陰極材が求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、銅から成る陽極を備えた陽極室と、前記陽極室と隔膜を介して隣接する陰極を備えた陰極室とを有する電解槽を使用して銅微粉を製造するための銅微粉製造方法であって、
Ti3+を含む硫酸溶液から成る電解液を前記陽極室に供給し、
前記陽極および前記陰極の間に電圧を印加して前記陽極から銅を銅イオンとして溶出させ、
前記陽極室の内部において、前記銅イオンを前記Ti3+によって還元析出させて前記銅微粉を生成し、
前記陽極室の内部において生成した前記銅微粉を、前記電解液中に懸濁させながら、一定方向に流し、
前記陽極室内の前記電解液を連続的に取り出して、そこに含まれる前記銅微粉を回収することを特徴とする銅微粉製造方法とすることによって、陽極室内のTi3+イオンの分布を均一化するとともに、電解液中に懸濁する銅微粉を効率的且つ連続的に回収して銅微粉の粒径を一定化できることを見出した。
また、銅から成る陽極とTi3+イオンを含む硫酸溶液とを使用して銅微粉を製造する場合において、銅から成る陰極が低コストで耐腐食性を有する陰極材であることを見出した。
以下に、本発明の一実施例としての製造システムに基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の銅微粉の製造方法において使用される製造システムを概念的に示す図である。この製造システムは、銅微粉を生成するための第一の電解槽1と、第一の電解槽で生成した銅微粉を回収するための遠心分離機14と、第一の電解液で消費されたTi3+を再生するための第二の電解槽8とから成る。本発明によると、製造システムを作動すると、電解液が第一の電解槽1、遠心分離機14および第二の電解槽8を循環するようになっている。
以下に本発明の製造システムを更に詳細に説明する。
【0008】
第一の電解槽1
図1に示すように、本発明の製造システムにおいて使用される第一の電解槽は、陽極室2と陰極室3とを備えている。陽極室2には銅から成る陽極6が設けられており、また陰極室3には陰極7が設けられている。
【0009】
この第一の電解槽の陰極室3に設けられた陰極7は、銅から成る。陰極の形態は特に限定されないが、例えば複数枚の銅製の網を組み合わせて構成される。一般的には本発明で使用される電解液と同程度の濃度の硫酸中では銅は比較的溶解し易いが、本発明の如くTi3+イオンを含む電解液を使用する場合には、陰極7が銅から構成されていても腐食を受けないことに加え、銅から成る陰極を使用することによって低コストでしかも効率的に電解を行うことができる。
【0010】
なお、銅が空気等で酸化すると溶解・再析出現象が発生して、極めて短時間に腐食が進行してしまう。したがって、銅から成る陰極7は電解液中に完全に沈めておくことが望ましい。また、陰極と電力供給用バス・バーとの接続には、チタン、あるいはジルコニウム板が用いられている。因に、チタン板を用いた場合には、比較的腐食が進行し易いため、定期的に交換する必要がある。
【0011】
本発明によると、陽極室2および陰極室3の間には隔膜4が設けられている。この隔膜4は、銅から成る陽極6から溶出したCu2+イオンが陰極室にまで拡散して陰極7において樹枝状の粗大な粒子が析出するのを有効に防止している。隔膜を構成する材料は、陽極室2と陰極室3とを間仕切ることができ、且つ、電解液の電気伝導を確保する材料であれば特に限定されない。隔膜4を構成する材料としては、例えば陰イオン交換膜や素焼きの陶器等が挙げられる。
【0012】
本発明によると、陽極室2に供給された電解液は、陽極室の内部において一定方向15に流れるようになっており、これによって陽極室中のTi3+イオンの分布を均一化して銅微粉の析出効率を一定化するようになっている。
本発明において、陽極室内の電解液を上記の如く一定方向15に流すための具体的な手段は、特に限定されない。例えば陽極室内の電解液を一定方向15に流すための手段として、陰極室3の下部と陽極室の下部との間に流路を設けて陽極室内の電解液が下部から上部の方向へ流れるようにする手段が挙げられる。流路を設けて陽極室内の電解液を下部から上部に向かって流すと、陽極室の底部におけるTi3+イオン濃度の顕著な低下を防止できる。また、この場合、Ti3+イオンの還元作用によって析出した銅微粉は、陽極室の上部に向かって流れるので、後述するように陽極室の上部の電解液を連続的に取り出して遠心分離機において銅微粉を効率的に回収することができる。
【0013】
本発明における流路としては、例えば隔膜4の下部に設けられ陰極室3と陽極室2とを連通する貫通孔5が挙げられる。またこの貫通孔5の代替として、点線で示されるような、陰極室の下部と陽極室の下部との間に設けられた輸送パイプ5’が挙げられる。
ここで、流路は、電解液の流量1L/min当り0.3dm2 以下の断面積となるように設計されていて陽極室内における電解液に十分な流速が与えられるように設計されていることが好ましい。
また、流路の近傍での電解液のスムースな流れを確保するために、陰極室側にある流路の入口および陽極室側にある流路の出口は、陰極7および陽極6の下端よりも低く位置するように設けられていることが好ましい。
また、析出した銅微粉を陽極室中に滞留させることなく、スムースに回収するために、陽極室の水平断面積1dm2 当り0.5L/min以上の電解液流量を確保することが望ましい。
【0014】
電解液
本発明において使用される電解液としては、硫酸溶液からなり、しかもチタンイオン(Ti3+)を含むものが使用される。本発明のように、Ti3+イオンを含む硫酸溶液を用いて銅を陽極として電解を行うと、陽極から溶出した銅イオン(Cu2+)がTi3+イオンによって還元されて銅微粉を生成する。
【0015】
本発明において、電解液中の硫酸濃度は特に限定されないが、好ましくは、50〜300g/Lの範囲になっている。電解液中の硫酸濃度が上記の範囲にある場合に、電解電流密度を高く維持できるとともに、TiO2+イオンの還元を効率的に行うことができる。
【0016】
また本発明において、電解液中のTi3+イオンの濃度も特に限定されないが、好ましくは0.1〜50g/Lの範囲になっている。電解液中のTi3+イオンの濃度が、上記の範囲にある場合に、析出する銅微粉の粗大化を防止しつつ、効率的な銅微粉の生成が可能になる。なお、Ti3+イオン濃度が極端に低下すると、銅の溶解が始まるため、電解液中のTi3+イオン濃度は最低でも0.1g/L以上に保つことが好ましい。
【0017】
そして、第一の電解槽8に電源20を接続して、上記の第一の電解槽1を作動させて陽極6および陰極7の間に電圧を印加すると、陽極6から銅がCu2+イオンとして溶出して、その後に還元されて銅微粉が生成する。特定の考察に本発明は束縛されないが、第一の電解槽内では下記式(1)のイオン反応によって銅微粉が析出すると考えられる。
2Ti3++Cu2++2H2 O→2TiO2++Cu+4H+ ・・・・・・(1)
【0018】
本発明において、第一の電解槽1の陽極6に流される電流の電流密度は、20A/dm2 以下であることが好ましい。陽極の電流密度を上記の範囲に設定することによって、析出する銅微粉の粗大化を防止しつつ銅微粉を効率的に析出させることができる。
【0019】
遠心分離機14
本発明の製造システムは、第一の電解槽1の陽極室2から銅微粉を含む電解液を連続的に取り出して、これを遠心分離機14に供給するようになっている。遠心分離機14において、銅微粉を含む電解液は遠心分離されて銅微粉と電解液とに分離される。分離された銅微粉17は沈降バスケット18に集められるようになっている。一方、分離された電解液は、沈降バスケット18からオーバーフローして遠心分離機14の底部から排出されて、後述の第二の電解槽8に供給されるようになっている。
【0020】
本発明によると、遠心分離機14が第一の電解槽の陽極室2内の電解液中に懸濁する銅微粉を連続的に回収するように設計されているので、既に析出した銅微粉を核として粗大な粒子が成長するのを防止でき、得られる銅微粉の粒径を一定化することができる。
【0021】
本発明においては、遠心分離機14による遠心分離の条件は、特に限定されるものではないが、電解液に1500G以上の遠心力を30sec以上の間、負荷することが好ましい。遠心分離の条件を上記の範囲に設定することによって、未回収の銅微粉が本発明のシステムを循環して第一の電解槽に再度供給されて、この未回収の銅微粉を核として粗大な異形状の粉末が生成するのを有効に防止できる。
【0022】
第二の電解槽8
本発明によると、上記のようにして遠心分離機14によって銅微粉が回収された後の電解液は、第二の電解槽8の陰極室9に連続的に供給されるようになっている。この第二の電解槽8は、第一の電解槽1における酸化還元反応によって生成したTiO2+イオンを還元する役割を果たす。
【0023】
第二の電解槽8は陽極室10と陰極室9とを備えている。そして、陽極室10には、陽極12が設けられており、また陰極室9には陰極13が設けられている。そして、この陽極12および陰極13の間には、電圧が印加されるようになっている。
【0024】
この第二の電解槽の陰極13も、第一の電解槽の陰極と同様に、銅から成る。陰極の形態は、特に限定されないが、例えば陰極は複数枚の銅製の網を組み合わせて構成される。本発明において使用される電解液と同程度の濃度の硫酸中では銅は比較的容易に溶解するが、Ti3+イオンを含む電解液を使用する本発明では、陰極が銅から構成されていても腐食を受けず、しかも銅から成る陰極を使用することによって低コストで効率的にTiO2+の還元を行うことができる。
【0025】
特定の考察に本発明は束縛されないが、本発明において、第二の電解槽の陰極室9では、主に次の式2のイオン反応が生じているものと考えられる。これによってTi3+イオンが再生される。
TiO2++2H+ +e- →Ti3++H2 O・・・・・(式2)
【0026】
尚、TiO2+の電解還元における電流効率はTi3+/TiO2+の比率に大きく影響され、Ti3+/TiO2+比が1を超えると電流効率が急激に低下するため、陰極の電流密度はできるだけ低く保つことが望ましい。なお、陰極が銅製の金網を折り曲げて構成されている場合には、陰極の表面積の増加に加えて、陰極近傍での電解液滞留が抑制されるため、電流効率の改善が達成される。
【0027】
第二の電解槽8の陽極室10および陰極室9の間には隔膜11が設けられている。隔膜を構成する材料は、陽極室と陰極室とを間仕切ることができ、且つ、電解液の電気伝導が確保できるような構造を有する材料であれば特に限定されない。このような隔膜11を構成する材料としては、陰イオン交換膜や素焼きの陶器等が挙げられる。
また、第一の電解槽の場合と異なり、図1に示す第二の電解槽の隔膜11には流路は形成されなくてもよい。
【0028】
第二の電解槽8を電源20に接続して、第二の電解槽8の陽極12および陰極13の間に電圧を負荷すると、第二の電解槽の陰極室9に供給された電解液に含まれるTiO2+が連続的に還元されてTi3+が再生される。そして本発明によると、第二の電解槽において再生されたTi3+イオンを含む電解液は再び第一の電解槽1に供給されるようになっている。
【0029】
本発明において、第二の電解槽の陽極12および陰極13の間に流される電解電流密度は、前記TiO2+の電解還元における電流効率をも鑑み、第1の電解槽におけるTi3+の消費速度を下回らないように設定されなければならない。
【0030】
なお、図1に示すように、第1の電解槽において流路が第1の電解槽の陰極室の下部と陽極室の下部との間に設けられている場合には、第二の電解槽で還元された電解液は、第一の電解槽1の陰極室3の上部から注入するように設計されていることが好ましい。これによって、電解液が、さらに第一の電解槽の陰極7にも接触して、Ti3+の還元が促進される。
【0031】
次に本発明の製造システムを使用して種々の条件で銅微粉の製造を行った。
【0032】
(実施例1)
用意した製造システムの詳細な寸法を以下に示す。
銅微粉製造用の第一の電解槽
1 第1の電解槽:有効容積は60L(5×3dm×深さ4dm)
2 陽極室:有効容積20L(水平断面積5dm2
3 陰極室:有効容積40L
4 隔膜:陰イオン交換膜製、有効面積9dm2
5 流路:隔膜の下部に設けられた断面積0.5dm2 (0.1×5dm)の貫通孔
6 陽極:タフピッチ銅製(1.5×3dm)
7 陰極:16mesh銅製金網(3×3dm×6枚)
【0033】
TiO2+還元用の第二の電解槽
8 電解槽:有効容積40L
9 陽極室:有効容積10L
10 陰極室:有効容積30L
11 隔膜:陰イオン交換膜製、有効面積9dm2
12 陽極:DSE製、3×3dm2
13 陰極:16mesh銅製金網(3×3dm×6枚)
【0034】
表1に示す組成の電解液を用意した。
この電解液を5L/minの流量で本発明のシステム内で循環させながら、銅微粉製造用の第一の電解槽の電解電流を80Aに設定し、またTiO2+還元用の第二の電解槽の電解電流を120Aに設定して、連続10h運転した。遠心分離機の沈降バスケット容量が3Lであり、遠心力を1800Gに設定した。
【0035】
[表1]
硫酸濃度 90g/L
全Ti濃度 7.5g/L
Ti3+イオン濃度 6.0g/L
ゼラチン 0.02g/L
【0036】
電解液中のTi3+イオン濃度並びに得られた銅微粉の平均粒径を表2に示す。表2より明らかなように、本発明の製造システムの操業中において、Ti3+イオン濃度および得られた銅微粉の平均粒径に関する経時的な変化は認められなかった。なお、銅微粉の平均粒径は、レーザー回折法を用いて測定した。
実施例1において回収した銅微粉の総量は約900gであり、回収効率(回収銅微粉量/理論的銅陽極溶解総量)は約95%と算出される。この約95%という回収率は、従来の銅微粉の電解法による製造方法と比較しても高い価であり、本発明の製造システムの有効性が確認された。
【0037】
[表2]
運転時間 Ti3+イオン濃度 平均粒径 異形粉混入の有無
1h 6.2g/L 1.5μm 無
5h 6.1g/L 1.7μm 無
10h 6.3g/L 1.4μm 無
【0038】
(実施例2)
延べ100時間運転した点を除いて実施例1と同じ条件で本発明の製造システムを作動させて銅微粉を製造した。そして、この運転の前後における陰極の重量変化を測定した。
その結果、延べ100時間の運転の前後における陰極の重量変化は、±0.0%であり、陰極は、本発明において、全く腐食溶解していないことが確認された。
【0039】
(比較例1)
銅製金網から成る陰極の代わりに同じメッシュサイズのステンレス(sus316L)製金網およびチタン製金網から成る陰極に用いた点を除いては実施例2と同様にして、延べ100時間の電解を行った。そして、実施例2と同様にして100時間の運転の前後における陰極の重量変化を測定した。
その結果、ステンレス(sus316L)製金網から成る陰極を用いた場合には9.5%の重量損失が認められ、一方チタン製金網から成る陰極の場合には3.2%の重量損失が認められた。このような重量損質の価は、実施例2の如く銅製金網から成る陰極を用いた場合と対照的であり、著しく高い値である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の銅微粉の製造システムを示す図である。
【符号の説明】
1 銅微粉製造用の第一の電解槽
2 陽極室
3 陰極室
4 隔膜
5、5’ 流路
6 陽極
7 陰極
8 TiO2+還元用の電解槽
9 陰極室
10 陽極室
11 隔膜
12 陽極
13 陰極
14 遠心分離機
15 電解液の流れ

Claims (7)

  1. 銅から成る陽極を備えた陽極室と、前記陽極室と隔膜を介して隣接する陰極を備えた陰極室とを有する電解槽を使用して銅微粉を製造する方法であって、
    Ti3+を含む硫酸溶液から成る電解液を前記陽極室に供給し、
    前記陽極および前記陰極の間に電圧を印加して前記陽極から銅を銅イオンとして溶出させ、前記陽極室の内部において、前記銅イオンを前記Ti3+によって還元析出させて前記銅微粉を生成させるに際し、
    前記陰極室の下部と前記陽極室の下部との間に電解液の流路を設け、前記電解液を、前記流路を通して、前記陰極室の下部から前記陽極室の下部に送り、前記陽極室の上部から取り出すようになっていることを特徴とする銅粉末製造方法。
  2. 前記流路が、前記隔膜の下部に、前記陰極室と前記陽極室を連通する貫通孔として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の銅微粉末製造方法。
  3. 前記銅微粉は前記電解液から遠心分離によって連続的に回収されることを特徴とする請求項1に記載の銅微粉製造方法。
  4. 前記陰極は銅からなることを特徴とする請求項1または2に記載の銅微粉製造方法。
  5. 前記銅イオンの還元によって生成したTiO2+を還元して前記Ti3+を再生するための第二の電解槽に設けられた陰極が銅から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅微粉末製造方法。
  6. 前記第二の電解槽が、陽極を備えた陽極室と、前記陽極室と隔膜を介して隣接する陰極を備えた陰極室とを有するものであって、TiO 2+ を含む硫酸溶液から成る電解液を、前記第二の電解槽の陰極室に供給し、前記第二の電解槽の前記陽極および前記陰極の間に電圧を印加して前記TiO 2+ を還元することを特徴とする請求項5に記載の銅微粉末製造方法。
  7. 銅から成る陽極を備えた陽極室と、前記陽極室と隔膜を介して隣接する陰極を備えた陰極室とを有する銅微粉製造用の電解槽であって、隔膜下部にはTi3+を含む硫酸溶液よりなる前記電解液を前記陰極室から前記陽極室に供給するための流路を備えていることを特徴とする電解槽。
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