JP3695841B2 - 機械の巻取りカバー装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械、産業機械等において、往復移動する主軸頭、テーブル、スライダ等の移動体の案内部を保護する機械の巻取りカバー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば工作機械には、ベッド上に設けた案内に沿って往復移動するテーブルや、コラムに設けた案内に沿って往復移動する主軸頭がある。主軸頭に回転可能に支持された主軸の先端に装着した工具と、テーブルに載置固定されたワークとの間で相対的な移動動作を行わせ、ワークに所望の加工を施す際、切屑や加工液が飛散する。その飛散した切屑や加工液がベッドやコラムの案内部に付着したり、往復移動の駆動手段に侵入するのを防ぐため、テーブルや主軸頭の移動方向両側にはカバーを設けることが行われる。
【0003】
このカバーとして、鋼板を伸縮可能に重ね合わせたテレスコピックカバーや、テーブルや主軸頭とその移動ストロークの両端部に設けられた巻取りばね内蔵式の一対のローラとの間に張設したシート状カバーを移動に追従して巻き取ったり巻き戻したりするスプリングバック式巻取りカバーが通常用いられている。
テレスコピックカバーは、多段構造をしており、構成が複雑で、省スペース化ができないという問題点がある。またスプリングバック式巻取りカバーは、省スペース化は図れるが、少々のたるみやひっかかりによって巻取りが不安定となり、高速送りに追従できないという問題点がある。
【0004】
この省スペース化が図れるという利点を生かしつつ改良した巻取りカバーを提供したのが、次の実開昭60−149737及び実開平6−640号公報に開示の技術である。
まず実開昭60−149737号公報の技術は、スライダの両ストローク端に駆動輪を回転可能に設け、それにチェーン等の索条をスライダをはさむようにして無端状に巻き付け、駆動輪と巻取りローラとを同軸的に設けてその巻取りローラにシート状のカバーを巻き取らせるようにした防塵装置に関するものである。こうしてスライダの直線運動を索条および駆動輪を介して巻取りローラの回転に変換してカバーの巻取り、巻戻しが安定して確実に行えるようにしている。そして、索条とスライダとの間に引張りばねを介在させ、スライダの位置によって変化するスライダの移動量とカバーの巻取り量との微差を吸収させるようにしている。
【0005】
実開平6−640号公報の技術は、工作機械の移動体の移動方向両側に、一対の巻取りローラを回転可能に設け、移動体との間にシート状のカバーを装着し、移動体および一対の巻取りローラにまたがってチェーン等の索条を無端状に張設し、移動体の移動に連動させて一対の巻取りローラを同一方向へ同期回転させるようにしたものである。索条の中間部に引張りばねを介在させて、一対の巻取りローラの巻取り側と巻戻し側とで径が異なっても、チェーンが伸縮してその差を吸収することができるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の実開昭60−149737および実開平6−640号公報の技術は、ともに移動体と一対のローラとにまたがって索条を無端状に巻設させていることである。そして無端状の索条の中間に引張りばねを介在させて索条に張力を発生させるとともに伸縮できるようにしてある。しかし索条に張力が発生して常にピンと張っている状態が実現されても、シート状カバーと索条とは直接的に連結されていないので索条の張力はカバーには作用していない。
近年の機械の移動速度の高速化、特に立上がり、立下がりの加速度の増大は目をみはるものがある。この高速化に対応してカバーが常にたるみなく安定して巻き取られるためには、シート状カバーにも適度な張力が作用していないとならない。したがって、この2つの従来技術をもってしても巻取り時のたるみを完全になくし、安定した巻取り、巻戻しを行うことはできない。
また、工作機械の場合、巻取りカバーには高温の切屑が高速で当たったり、各種化学成分を含んだ加工液が付着したりするので、カバーの強度、耐食性に問題があった。更に移動体が高速で動作するので、カバーの振動や騒音の点で問題があった。
【0007】
よって本発明の目的はこれらの問題点を解決することであり、移動体が高速、高加速度で移動してもたるみが発生することがなく、安定して確実に巻取り、巻戻しが行える機械の巻取りカバー装置を提供することである。また強度、耐食性を備え、かつ高速動作時でも振動、騒音の少ない機械の巻取りカバー装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、移動体の移動方向両側に設けたカバーを巻取る一対のローラの端部に、ベルト、ワイヤ等の索条を有端状に順方向に巻き付けて張設し、移動体、一対のカバーおよび索条で前記一対のローラまわりに閉ループを形成するようにし、かつその索条の中間にばね等の引張り弾性手段を介在させる構成としたものである。すなわち、往復移動する移動体の案内部を保護する機械の巻取りカバー装置において、一端が前記移動体に固定され、前記移動体の移動方向両側にそれぞれ張設された一対のシート状のカバーと、前記移動体の案内部の両端部に回転可能に設けられ、前記各カバーの他端を固定して前記各カバーを巻取る一対のローラと、前記各ローラの端部にそれぞれ両端を順方向に巻き付けて張設され、前記移動体およびカバーとで前記一対のローラまわりに閉ループを形成するベルト、ワイヤ等の索条と、前記索条の中間部に介在され、前記ローラに巻付けられた前記カバーに張力を発生させる引張り弾性手段と、を具備した機械の巻取りカバー装置が提供される。
また上記カバーは薄いステンレス鋼板の裏面に薄いゴムを接着してシート状に構成するのが好ましい。
【0009】
【作用】
上記の構成によって、移動体と、一対のカバーと、索条と、引張り弾性手段とはローラを介して1つの閉ループを形成することになる。したがって移動体が移動すると、一方のローラは移動量相当のカバーを巻戻し、他方のローラは同量のカバーを巻取れるのである。そして引張り弾性手段は索条のみならずカバーにも常時張力を作用することになるので、移動体の位置によって2つのローラの巻取り径が異なってもその差を吸収するとともに、カバーのたるみを常に生じさせない働きをする。
また、カバーとして裏面に薄いゴムを接着した薄いステンレス鋼板を用いると、強度、耐食性がすぐれ、かつ高速移動時でも防振、防音作用がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、工作機械の主軸頭が左右に往復移動する部位を例とした本発明の機械の巻取りカバー装置の構成を表した斜視図である。ベース1上に設けられた案内レール3に沿って移動体である主軸頭5が図示しない駆動手段によって往復移動する工作機械において、ベース1の左右にはコの字形のブラケット7、9がそれぞれ固定されている。ブラケット7には回転可能にローラ11が取付けられ、ブラケット9には同様にローラ13が取付けられている。主軸頭5の移動方向両端とローラ11、13との間にはそれぞれシート状のカバー15、17が張設され、カバー15、17はローラ11、13に巻取り、巻戻し可能になっている。ローラ11、13の上部には同軸でかつローラ11、13と一体的に回転するプーリ19、21がそれぞれ設けられている。プーリ19には時計回りにベルト23の一端が固定されて巻き付けられており、プーリ21には反時計回りに他のベルト25の一端が固定されて巻き付けられている。各ベルト23、25の他端同志は引張りばね27を介して連結されている。つまりベルト23、25および引張りばねは、一本の索条としてプーリ19、21間に有端状に順方向に巻き付けて張設されている。このように構成することによって主軸頭5、一対のカバー15、17、ベルト23、25および引張りばね27はローラ11、13およびプーリ19、21を介して閉ループを形成することになる。
【0011】
ここで、主軸頭5は立軸の回転主軸29を有しており、モータ31によって駆動される。主軸29の下端には工具が装着され、図示しないワークとの間で加工が行われる。またベース1の前面は、一点鎖線で示すように、主軸頭5およびカバー15、17の部分だけに長方形の穴33aをあけた直方体形状の保護カバー33で覆われている。この保護カバー33と主軸頭5やカバー15、17とのスライド部には図示しないワイパ等のシール手段が設けられており、内部に切屑や加工液が侵入しない構成になっている。
【0012】
次に図1の本発明の機械の巻取りカバー装置の作用を説明する。いま主軸頭5が矢印Aのように移動すると、カバー15が主軸頭5によって引張られローラ11から巻戻される。ローラ11と一体的に回転させられるプーリはベルト23を巻取ることになり、結局引張りばね27およびベルト25を矢印B方向に移動させる。すなわちベルト25はプーリ21およびローラ13を時計方向に回転させることになり、カバー17がローラ13に巻取られるのである。
このとき主軸頭5が高い加速度で急激に矢印Aの方向に移動されたとすると、カバー17は追従しきれずたるみを生じようとするが、引張りばね27によってカバー15、17には常時張力が作用しており、たるみは生じないのである。引張りばね27のばね力はもちろんたるみを生じない最小の大きさに設定しておかなければならないことは言うまでもない。
【0013】
引張りばね27のもう1つの作用は、主軸頭5がストロークエンドに近づくほどローラ11、13の巻取り径が異なり、両プーリ19、21間の回転速度に差を生じることになるので、その差を吸収することである。
主軸頭5が矢印Aと反対方向に移動する場合も全く同様の作用でカバー15、17の巻取り、巻戻しが行われる。
【0014】
本実施形態では索条としてベルト23、25を用いたがベルトに代えてワイヤやチェーンを用いても良い。またプーリ19、21をローラ11、13と同軸でかつ一体回転するように設けたが、プーリをなくして、ローラ11、13の上端部にベルトが係合できる溝を形成しただけの構成にしても良い。
また、本実施形態のように移動体が工作機械の主軸頭やテーブルの場合、カバーには高温の切屑や各種の化学成分を含んだ加工液が飛散する。この条件に耐え得る強度と耐食性を有し、しかも柔軟性を有したシート状のカバーとして、薄いステンレス鋼板を用いることが好ましい。更に高速で巻取り、巻戻しが行われると、カバーが振動したり、騒音を発したりするので、薄いステンレス鋼板の裏面に薄いゴムを接着したカバーを用いると防振、防音上好ましい。
【0015】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明は、索条を一対のローラに有端状に順方向に張設するとともに、索条の中間部に引張り弾性手段を介在させ、移動体、一対のカバー、索条、引張り弾性手段を一対のローラを介して閉ループに形成する構成としたので、移動体が高速、高加速度で移動してもたるみが発生せず、安定して確実に巻取り、巻戻しが行える機械の巻取りカバー装置が実現した。またカバーを裏面に薄いゴムを接着した薄いステンレス鋼板で構成することによって所望の強度、耐食性を備え、高速動作時でも振動、騒音の少ない機械の巻取りカバー装置が得られたのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の機械の巻取りカバー装置の構成を示した斜視図である。
【符号の説明】
1…ベース
3…案内レール
5…主軸頭
11、13…ローラ
15、17…カバー
19、21…プーリ
23、25…ベルト
27…引張りばね
Claims (2)
- 往復移動する移動体の案内部を保護する機械の巻取りカバー装置において、
一端が前記移動体に固定され、前記移動体の移動方向両側にそれぞれ張設された一対のシート状のカバーと、
前記移動体の案内部の両端部に回転可能に設けられ、前記各カバーの他端を固定して前記各カバーを巻取る一対のローラと、
前記各ローラの端部にそれぞれ両端を順方向に巻き付けて張設され、前記移動体およびカバーとで前記一対のローラまわりに閉ループを形成するベルト、ワイヤ等の索条と、
前記索条の中間部に介在され、前記ローラに巻付けられた前記カバーに張力を発生させる引張り弾性手段と、
を具備したことを特徴とする機械の巻取りカバー装置。 - 前記カバーは、薄いステンレス鋼板の裏面に薄いゴムを接着してシート状に構成した請求項1に記載の機械の巻取りカバー装置。
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JP12104296A JP3695841B2 (ja) | 1996-04-18 | 1996-04-18 | 機械の巻取りカバー装置 |
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JP12104296A JP3695841B2 (ja) | 1996-04-18 | 1996-04-18 | 機械の巻取りカバー装置 |
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JPH09285940A JPH09285940A (ja) | 1997-11-04 |
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ID=14801386
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JP12104296A Expired - Lifetime JP3695841B2 (ja) | 1996-04-18 | 1996-04-18 | 機械の巻取りカバー装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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1996
- 1996-04-18 JP JP12104296A patent/JP3695841B2/ja not_active Expired - Lifetime
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