JP3695682B2 - スポット溶接装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ね合わせた金属板材同士を溶接するスポット溶接装置、およびこの装置を使用して行うスポット溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スポット溶接とは、重ね合わせた金属板材を、上下一対の電極の先端で挟み付けて加圧し、この各先端が接触する金属板材の比較的狭い範囲に、集中的に電流を流し、局所的に加熱しながら金属板材を溶融して接合する抵抗溶接である。
【0003】
以下、図3に基づき、前記スポット溶接に使用する従来のスポット溶接装置(以下、従来型溶接装置という)について説明する。ちなみに、図3は単相交流式かつ定置式の一般的なスポット溶接装置の側面図である。
従来型溶接装置100は、図3に示すように上下の各電極101,102が、溶接対象材料(内板W2と外板W1)を挟んでおり、この上下の各電極101,102を、上下の各電極ホルダ103,104が保持している。また、上側の電極ホルダ103は、上部アーム105に取り付けられてシリンダ107の作用によって昇降し、下側の電極ホルダ104は、装置本体109に固設された下部アーム106に取り付けられ、固定されている。
【0004】
上下の各電極101,102は、内板W2と外板W1との重なりを挟む上下の位置に配置されており、上側の電極101の先端が下降して内板W2に当接加圧し、つまり、打点して下側の電極102との間で前記重なりを挟み付けた状態となる。
この状態にて、上下の各電極101,102に電流が供給されてスポット溶接が行われる。この上下の各電極101,102が挟み付ける初期打点位置でのスポット溶接が完了すると、上側の電極101が上昇して挟み付けが解かれる。すると、図示しない移動手段により、前記溶接対象材料が移動され、また別の一点が、上下の各電極101,102で挟まれる位置に設置される。以上、溶接対象材料の設置、電極による打点、通電、溶接対象材料の移動という工程が繰り返され、溶接対象材料である外板W1と内板W2とのスポット溶接は完了する。
【0005】
ところで、家具、物置、OA機器等のスチール製品や、自動車のボンネット、トランク等に使用される金属板材など、主に、厚さ1.0mm以下程度の薄板を、このスポット溶接にて接合する場合がある。これらの製品では、外板面側の外観品質が重要視されるため、スポット溶接における電極の圧痕や溶接散りが問題となる。最近では、特に、溶接対象材料となる金属部材に防錆用亜鉛めっき鋼板を適用するケースが増えており、電極の圧痕がより大きくなる、溶接散りが増大する、電極の寿命が短くなる等の理由から、前記問題を解決するための溶接条件を整えることが困難になってきている。
【0006】
ここで、前記問題を解決するために、従来採られていた手段について、図4に基づいて具体的に説明する。
図4は、溶接対象材料である内板W2と外板W1とを、上下の各電極101,102で打点している状態を示す概略断面図である。ここでは、外板W1側に当接する電極(下側の電極)にフラット電極を使用し、対向する相手側の電極、つまり内板W2側に当接する電極(上側の電極)に、先端の一部を平面状に切り欠いた略ドーム状凸形電極を使用している。ちなみに、この図4で示す電極の形状以外に、前記下側の電極にバックバー電極を使用したり、前記上側の電極に円すい台形電極を使用したりするのが一般的である。
【0007】
上下の各電極101,102は、溶接対象材料である内板W2と外板W1の重なったところを打点する。この状態で、上下の各電極101,102には、トランス108の作用によって適当な電流が供給されて通電し、内板W2と外板W1との接合面が抵抗となって局所的に、かつ、瞬間的に加熱される。その結果、この接合面が溶けて溶融凝固部W3(ナゲット)が形成され、この打点位置でのスポット溶接が完了する。
この際、下側の電極102は、平面が外板W1に当接するので食い込みが少ない。そのため、圧痕が効果的に防止され、外観品質を良好に保つことができると期待されていた。
【0008】
また、以上の手段のほか、例えば、溶接部に対する熱影響(例えば、過大な圧痕の発生等)を小さくするため、短時間に大電流を流したり、コンデンサスポット式、インバータ式等の高級溶接装置を使用して前記問題の解決をはかろうとしていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際のところ、従来採用されていた手段では、圧痕や溶接散り等の問題を完全に、かつ効果的に解決することはできなかった。
具体的に説明すると、外板W1側の電極102をフラット電極とすることにより、圧痕の発生をある程度軽減できるが、一方で電流が拡散され(図4の矢印参照)、ナゲットの形成に支障を来すため、溶接条件をアップしなければならず、圧痕や溶接散りを軽減できないという問題を生じた。また、前記高級溶接装置を使用しても完全に圧痕や溶接散り等を解消することは困難であり、結局は、スポット溶接後にバフ仕上げやパテ修正等の補修工程を設ける必要があり、作業効率低下、コストアップの要因となっていた。
【0010】
また、図4の如く、内板W2側に略ドーム形状の電極101を加圧当接させ、この状態で通電すると、インデンテーションδ(電極の食い込みによる板のへこみ)が発生する。このインデンテーションδに、さらに、加圧力や熱ひけ等の因子が要因として付加されると、外板W1側に圧痕のプリント現象を引き起こす。このプリント現象とは、インデンテーションδが外板W1側へプリントされ、外板W1側に窪み(プリント圧痕)を生じる現象を意味する。なお、図4の符号W4はプリント圧痕を示している。このプリント圧痕W4の発生は、外板W1側の外観品質を損うため、外観品質が要求される製品の溶接には不適当であった。
【0011】
一方、前記インデンテーションδの発生を抑える手段として、内板W2側に当接する電極101を、先端球面半径の大きなラジアス電極とする場合がある。このラジアス電極の使用により、インデンテーションδを小さくでき、外板W1側のプリント作用を抑えることができる。
しかし、このラジアス電極に対向する相手側の電極、即ちフラット電極が特に新品である場合などには、初期打点位置において、電極と溶接対象材料との接触面積が大きくなり、その結果、電流が拡散してしまって電流密度が低くなるという傾向がある。電流の拡散は、既に説明したように、適切なナゲットW3の形成に支障を来し、溶接不良の原因となった。
【0012】
また、前記外観品質が重視される製品(前記スチール製品等)では、要求される溶接強度はさほど高くなく、破断試験における破断形態が衝撃や疲労に強いプラグ(ボタン)破断になっていれば良い場合がほとんどである。ちなみに、図5は引張せん断試験、またはピール試験を実施した時の、溶接部の破断形態を示した側面図であり、(a)のシャー(せん断)破断は、溶接不良と見なされ、(b)のプラグ(ボタン)破断は、良好な溶接と見なされる。
この外観品質が重視される製品の多くは、既に説明したように、板厚1.0mm以下の薄板であり、比較的小さなナゲットW3でも容易にプラグ破断形態となり易いという傾向がある。そのため、できるだけ小さなナゲットとした方が、コスト面および外観品質の面からも都合が良い。
【0013】
そこで、従来型溶接装置100における電極101,102にて、小さなナゲットW3を作ろうとすると、通常、電極101,102の両方、または一方の先端径を小さくして対応する必要がある。
しかし、実際には、この先端径を小さくすると、前記インデンテーションδが大きくなったり、電極損耗が早くなる等の問題から、先端径を小さくするという手段には一定の限界があり、コスト面、外観品質等の改善をはかることができなかった。
本発明は、以上の各問題点を効果的に解決することを課題としており、特に、薄板を溶接対象材料とする場合や、外観品質を重要視する製品等のスポット溶接に好適なスポット溶接装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、本発明は、
製品の外観を形成するスチール製の薄板からなる外板と、この外板と重なり合うスチール製の薄板からなる内板と、を溶接するスポット溶接装置であって、前記内板側に配置する電極を、先端の球面半径が60mm〜100mmの球面状のラジアス電極とし、前記外板側に配置する電極を、先端の傾斜角が0.3°〜2.0°の円すい形状の緩円すい電極としたことを特徴とするスポット溶接装置とした。
このスポット溶接装置により、圧痕や溶接散り等の防止、インデンテーションの抑止、適当なナゲットの形成が可能となり、スポット溶接精度を向上させることができる。
また、前記のように、電極先端の形状を限定することにより、特に薄板等に適したスポット溶接を可能にする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の要部となる電極先端の形状について、以下に示す実施の形態に沿って詳細に説明する。なお、ここで参照する図1は、外板側の電極、および内板側の電極の先端を示す概略拡大側面図、図2は、溶接対象材料となる外板と内板とが重なり合っており、係る重なり合う領域(以下、溶接領域という)の上下から電極が打点し、かつ、通電してスポット溶接が行われている状態を示す断面図である。なお、スポット溶接の概要は、従来の技術にて既に説明したため、ここでの説明は省略する。
【0016】
スチール製品等に使用される製品の外板W1は、板厚1.0mm以下程度の薄板であり、内板W2も同様に0.5mm〜1.2mm程度の薄板である。本実施の形態では、この薄板を溶接する場合を例に説明する。なお、外板W1が、製品の外観を形成する外側の板であり、内板W2は、外板W1と重なり合う内側の板である。
【0017】
本実施の形態では、内板W2側の電極は、先端の球面半径Rが75mmのラジアス電極2である。この球面半径Rは、前記75mmに限定されないが、60mm〜100mmの範囲内にあることが望ましい。60mm未満ならば、ラジアス電極としての作用、つまりインデンテーションδ(図4参照)を小さくするという作用を奏し難くなり、100mmより大きければ電流の拡散という問題を生じ易くなるからである。
【0018】
一方、外板W1側の電極は、先端が円すい状の緩円すい電極3である。本実施の形態では、緩円すい電極3の傾斜角θは0.5°となっている。この傾斜角θは、前記0.5°に限定されないが、0.3°〜2.0°の範囲内にあることが望ましい。その理由について説明する。
【0019】
溶接対象材料となる板材は、シートセパレーション(加圧や熱膨張による板の浮きあがり)の影響を受けて変形し易く、特に、板厚が厚くなるほど、その影響は大きくなる。そのため、傾斜角θを0.3°以上にしなければ、シートセパレーションの影響を受けて変形した板材と緩円すい電極3との接触面積が増加してしまい、その結果、電流密度が低下し、溶接不良を生じてしまう。ちなみに、溶接対象材料となる板材それぞれの板厚が、0.4mm〜0.6mmの範囲内であれば、傾斜角θを0.5°とするのが適当であり、板厚が0.7mm〜1.2mmの範囲内であれば、傾斜角θを1.0°とするのが適当であった。
【0020】
一方、傾斜角θを2.0°より大きくすると、加圧力による電極の食い込み、圧痕の発生という不具合を生じることとなる。したがって、傾斜角θの許容範囲は、0.3°〜2.0°の範囲となる。
なお、ここでいう傾斜角θとは、電極3の軸線に垂直な平面であり、電極3の先端円すいの頂点が含まれる基準平面に対しての傾斜角度をいう。
【0021】
以上説明した各電極2,3により、前記溶接対象材料を打点および通電している状態の説明、および前記各電極2,3によって得られる作用について図2に基づいて説明する。
前記ラジアス電極2は内板W2側に当接し加圧する。しかし、このラジアス電極2の先端と内板W2との接点は非常に狭い範囲となるため、前記加圧力を低く抑えることによって、ナゲットW3を形成するための十分な電流密度を確保することができる(図2矢印参照)。そのため、低加圧力、小電流の溶接条件設定が可能になり、インデンテーションδの発生を効果的に防止でき、さらに、外板W1側への圧痕のプリント現象を防止できて、製品の外観品質を良好に保つことができる。さらに、このラジアス電極2の使用により、小径のナゲットW3を形成することが可能となり、特に、薄板を対象としたスポット溶接を行う場合、コスト低下、外観品質等の面から好適である。
一方、前記緩円すい電極3は外板W1側に当接する。この緩円すい電極3では、従来のフラット電極102(図4参照)では解消し得なかった電流の拡散等の不具合を解消でき、外板W1側の圧痕の発生を抑えることができる。
【0022】
また、従来のラジアス電極とフラット電極との組み合わせでは解消し得なかった問題点、具体的には、特に電極が新品である場合に生じていた初期打点位置での溶接不良等が、前記ラジアス電極2と緩円すい電極3との組み合わせで効果的に解消できる。つまり、この緩円すい電極3により、初期打点位置での電流拡散(電流密度の低下)を防止し、比較的短時間、かつ、小電流である初期打点位置でのナゲット径不足が解消され、結果的に電極の損耗を減少でき、連続打点性も向上する。ちなみに、数打点経過後は、両電極の先端に不定形な合金層が形成され、電流通路が制限されるので、電流密度が高まり、ナゲット径不足は必然的に解消される。
【0023】
以上の比較作用を具体的に示す試験結果を、表1にて示す。この表1では、ラジアス電極とフラット電極を組み合わせた従来のスポット溶接装置(以下、従来装置)と本実施形態に係るスポット溶接装置1(以下、本発明装置という)との比較試験の例である。また、この試験における従来装置は、球面半径が75mmのラジアス電極とフラット電極の組み合わせであり、本発明装置1は図1で示す球面半径が75mmのラジアス電極2と傾斜角0.5°の緩円すい電極3である。
さらに、この試験における溶接対象材料は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(目付量45g/m2両面めっき)からなるそれぞれ0.4mmの内板と外板であり、従来装置および本発明装置1の各試験ともに、電極の加圧力は80Kgf、溶接電流は5,800Aの条件の基で300打点行った試験結果を示している。
【0024】
【表1】
Figure 0003695682
【0025】
表1で示す×は、不良状態になる率が非常に高い場合を示しており、△は、一定以上の割合で不良状態になる場合を示しており、○は不良状態が極めて少ない場合を示している。
この表1からも解るとおり、従来装置では、特に、1打点目から20打点までの間で、ナゲットが形成されない。打点の進行とともに、既に説明した不定形な合金層が電極の先端に形成されるため、ナゲットが形成されるようになるが、そのナゲット形成も非常に不安定である。一方、本発明装置1では、第1打点(初期打点)からナゲットが形成され、良好状態でのスポット溶接が可能である。
【0026】
続いて、本実施の形態に係るスポット溶接装置1を使用したスポット溶接方法について図2に基づいて説明する。
まず、第1工程では、同一軸線に沿って相対移動可能、つまり、昇降する前記ラジアス電極2(上側の電極)と前記緩円すい電極3(下側の電極)との間に、外板W1と内板W2とを重ね合わせた溶接領域の一部を設置する。
第2工程では、前記ラジアス電極2を下降させ、つまり、前記円すい電極3と接近する方向(近接方向)に相対移動させ、かつ、前記溶接領域の一部を、前記各電極2,3によって加圧しながら挟み付かせる。ちなみに、図2の二点鎖線は、ラジアス電極2が下降する前の状態を示す。
第3工程では、前記溶接領域の一部を挟み付けている前記各電極2,3を、トランス4によって通電し、外板W1と内板W2との接合面を溶融してナゲットW3を作る。
第4工程では、外板W1と内板W2とを重ね合わせ状態で保持した後、ラジアス電極2を上昇、つまり、緩円すい電極3から離れる方向(離間方向)に相対移動させて前記溶接領域の一部を開放する。
第5工程では、重ね合わせ状態にある外板W1と内板W2と、所定の方向に所定の距離だけ、つまり、次に打点してスポット溶接する位置まで移動手段によって移動させ、前記溶接領域の他の一部である次の打点位置をラジアス電極2と緩円すい電極3の間に設置する。
さらに、前記第2工程から第5工程までを繰り返すことによって外板W1と内板W2とをスポット溶接していく。
なお、以上の各工程は、図示しない制御手段によって行われる。
【0027】
以上、本実施の形態に係るスポット溶接装置1および、このスポット溶接装置1を使用したスポット溶接方法について説明した。
しかし、このスポット溶接装置1は、従来型装置100(図4)で説明した構造の改良に限定されず、定置式スポット溶接装置、ポータブル溶接装置、エキスパンダスポット溶接装置、マルチスポット溶接装置等に、本発明の要部となる電極を利用した構造とすることもできる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、外板の圧痕と溶接散り等を効果的に解消でき、バフ仕上げやパテ修正等の工程が不要となる。特に、単相交流式の一般的なスポット溶接装置に応用できるため、コスト面からも好都合である。
プラグ破断形態をとる最小径のナゲットを簡単に作ることができ、良好な溶接状態を得るために必要とされる条件が緩和される。また、この条件緩和により、連続打点性が向上する。 電極の損耗が少ない。 省電力に役立つ等のメリットが生じる。
また、多少の板厚変動に対しても、同じ電極にて良好なスポット溶接が可能になり、段取り替えの必要性が減る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係り、外板側の電極、および内板側の電極の先端を示す概略拡大側面図である。
【図2】本発明に係り、溶接領域の上下から電極が打点し、かつ、通電してスポット溶接が行われている状態を示す断面図である。
【図3】単相交流式かつ定置式の一般的なスポット溶接装置の側面図である。
【図4】溶接対象材料を、上下の各電極で打点している状態を示す概略断面図である。
【図5】図5は引張せん断(またはピール)試験後の代表的な2種類の破断形態を示す側面図であり、(a)はシャー(せん断)破断形態、(b)のプラグ(ボタン)破断形態を示す。
【符号の説明】
1:スポット溶接装置
2:ラジアス電極
3:緩円すい電極
4:トランス
100:従来のスポット溶接装置(従来型溶接装置)
101,102:電極
103,104:電極ホルダ
105:上部アーム
106:下部アーム
107:シリンダ
108:トランス
109:装置本体
R:球面半径
W1:外板
W2:内板
W3:ナゲット
W4:プリントされた圧痕

Claims (1)

  1. 製品の外観を形成するスチール製の薄板からなる外板と、この外板と重なり合うスチール製の薄板からなる内板と、を溶接するスポット溶接装置であって、
    前記内板側に配置する電極を、先端の球面半径が60mm〜100mmの球面状のラジアス電極とし、
    前記外板側に配置する電極を、先端の傾斜角が0.3°〜2.0°の円すい形状の緩円すい電極としたこと
    を特徴とするスポット溶接装置。
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