JP2023114166A - スポット溶接継手の製造方法 - Google Patents

スポット溶接継手の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023114166A
JP2023114166A JP2022016361A JP2022016361A JP2023114166A JP 2023114166 A JP2023114166 A JP 2023114166A JP 2022016361 A JP2022016361 A JP 2022016361A JP 2022016361 A JP2022016361 A JP 2022016361A JP 2023114166 A JP2023114166 A JP 2023114166A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nugget
spot
cooling
welded joint
time
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022016361A
Other languages
English (en)
Inventor
裕史 堀川
Yasushi Horikawa
誠司 古迫
Seiji Furusako
真二 児玉
Shinji Kodama
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2022016361A priority Critical patent/JP2023114166A/ja
Publication of JP2023114166A publication Critical patent/JP2023114166A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Resistance Welding (AREA)

Abstract

【課題】LME割れ及び水素脆化割れをより確実に抑制することが可能な、新規かつ改良されたスポット溶接継手の製造方法を提供する。【解決手段】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、重ね合わされた複数の鋼板からなる板組をスポット溶接するスポット溶接継手の製造方法であって、複数の鋼板のうち1枚以上が、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板であり、高強度鋼板及び高強度鋼板と隣接する鋼板のうち少なくとも一方が亜鉛系めっきを有し、スポット溶接継手の製造方法は、ナゲットを形成する本通電工程と、第一冷却工程および第一冷却工程よりも冷却速度が速い第二冷却工程と、を有し、通電が終了してから電極が加圧を開放するまでの時間である保持時間が0.5(sec)以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、スポット溶接継手の製造方法に関する。
例えば自動車の構造用部材の組み立て時の鋼板同士の接合には、主としてスポット溶接が採用されている。このスポット溶接では、複数の鋼板からなる板組を一対の電極で挟んで加圧しつつ通電することで、鋼板同士の接合界面を溶融及び凝固させる。これにより、鋼板同士の接合界面にナゲットを形成して鋼板同士を接合する。
特開2003-103377号公報 特許第6108018号公報 特許第6777173号公報 特許第5987982号公報 特許第5151615号公報 特許第5429327号公報 特開2020-157358号公報
ところで、複数の鋼板に高強度鋼板が含まれ、かつ、高強度鋼板及び高強度鋼板に隣接する鋼板のうち少なくとも一方が亜鉛系めっきを有する場合、スポット溶接によってLME(LME:Liquid Metal Embrittlement)割れや水素脆化割れが起こることが知られている。
LME割れが発生するメカニズムは概ね以下の通りである。すなわち、鋼板表面の亜鉛系めっき層が、溶接時のジュール熱によって溶融して溶融亜鉛となる。一方で、通電及び加圧終了後に鋼板の熱収縮が生じ、この熱収縮による引張応力がナゲット周辺に加わる。この結果、溶融亜鉛が結晶粒界に侵入して粒界強度を低下させる。これにより、LME割れが発生する。一方、水素脆化割れは、鋼板中の水素が鋼板を脆化させることによる割れである。水素脆化割れの原因となる水素は、鋼板中に予め含まれている場合もあるが、例えば鋼板の表面に塗布された加工油等から鋼板内に侵入する場合もある。
特許文献1~7には、LME割れまたは水素脆化割れを抑制する技術が開示されており、これらの技術によって一定の効果が得られる。しかし、自動車の構造用部材に求められる特性は年々厳しくなってきており、LME割れ及び水素脆化割れの抑制に関しては、さらなる改善が求められていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、LME割れ及び水素脆化割れをより確実に抑制することが可能な、新規かつ改良されたスポット溶接継手の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、重ね合わされた複数の鋼板からなる板組をスポット溶接するスポット溶接継手の製造方法であって、前記複数の鋼板のうち1枚以上が、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板であり、前記高強度鋼板及び前記高強度鋼板と隣接する鋼板のうち少なくとも一方が亜鉛系めっきを有し、前記スポット溶接継手の製造方法は、ナゲットを形成する本通電工程と、第一冷却工程および前記第一冷却工程よりも冷却速度が速い第二冷却工程と、を有し、通電が終了してから電極が前記鋼板への加圧を開放するまでの時間である保持時間が0.5(sec)以上であり、かつ、前記第二冷却工程後のスポット溶接継手が、前記ナゲットの中心を通りかつ前記板組表面に垂直な断面視において前記ナゲットが内側組織と外側組織とを有する二層構造を有し、前記板組表面に平行な方向でのナゲットの径に対する内側組織の径の比率が40~100%であり、前記板組表面に垂直な方向でのナゲットの径に対する内側組織の径の比率が0~80%であり、前記内側組織の径の縦横比率が25%以下であることを特徴とする、スポット溶接継手の製造方法が提供される。
ここで、第一冷却工程では、0<t1≦2(sec)、0.6×I0<I1≦I0(kA)であり、冷却速度が500℃/sec以下であり、第二冷却工程では、0.5(sec)<t2、0≦I2<I1(kA)であり、冷却速度が2000℃/sec以上であり、I0は本通電工程時の電流値であり、t1及びI1は第一冷却工程の時間及び電流値であり、t2及びI2は第二冷却工程の時間及び電流値であってもよい。
また、本通電工程では、ナゲット径を3√t~6√tにし、tは複数の鋼板の板厚のうち最小板厚であってもよい。
また、本通電工程前に、0<tp<0.1(sec)、I0<Ip<20(kA)の予備通電工程を行い、tpは予備通電工程の時間であり、I0は本通電工程時の電流値であり、Ipは予備通電工程時の電流値であってもよい。
また、本通電開始直前において、打角が1°以上であるという条件、板隙の合計が0.5mm以上であるという条件、及びクリアランスが0.1mm以上であるという条件のうち1つ以上が満たされてもよい。
本発明の上記観点によれば、LME割れ及び水素脆化割れをより確実に抑制することができる。
実施例における各通電パターンの概要を示すグラフである。 各通電パターンによって得られたナゲットの断面写真である。
以下、図面を参照しながら本実施形態について説明する。なお、「~」で示される数値範囲は、その上限及び下限を含む。「超」または「未満」で示される数値範囲には、その下限または上限が含まれない。
<1.本実施形態の概要>
上述したように、板組に高強度鋼板が含まれ、かつ、高強度鋼板及び高強度鋼板に隣接する鋼板のうち少なくとも一方が亜鉛系めっきを有する場合、スポット溶接によってLME割れまたは水素脆化割れが起こることが懸念される。
LME割れの発生を抑制する技術として、保持時間を長くする方法が考えられる。ここで、保持時間とは、通電が終了してから電極が鋼板への加圧を開放するまでの時間である。しかし、この方法では、電極(水冷によって通電終了後は冷たくなる)による急冷却によりナゲット(溶接部)の硬度が上昇し、靭性の低下したナゲット端部で水素脆化割れの懸念が生じる。
そこで、本実施形態では、本通電工程後の冷却工程を二段階として、冷却速度の緩やかな第一冷却工程では、電極による急冷を回避し、ナゲットの硬度の上昇を抑制する。つまり、第一冷却工程では、電極に電流を流し、(入熱しながら)溶融部分を緩やかに冷却する。この第一冷却工程でナゲットの外側組織を形成する。その後、冷却速度が第一冷却工程よりも急な第二冷却工程を行うことでナゲットの内側組織を形成し、2重ナゲット構造を得る。第二冷却工程では電極に電流を流してもよいし、流さなくてもよい。外側組織は内側組織よりも柔らかい組織であるので、ナゲット端部の靭性の低下が抑制される。したがって、水素脆化割れが抑制される。さらに、保持時間を延長することにより、電極直下や肩部、ナゲット直外に発生するLME割れも同時に抑制することができる。
したがって本実施形態によれば、2重ナゲット構造により、LME割れの防止および水素脆化割れの防止を両立することが可能になる。また、併せて予備通電を行う場合には、チリ抑制効果によりLME割れ抑制効果が向上する。
なお、仮にナゲット構造が外側組織のみの単一層構造を有する場合、上述した第一冷却工程を長時間行う必要がある。したがって、タクトタイムが長くなる。一方、ナゲット構造が内側組織のみの単一層構造を有する場合(すなわち従来のスポット溶接によってナゲットを形成した場合)、ナゲット端部で靭性が低下し、水素脆化割れが発生しやすくなる。
<2.本実施形態のメカニズム>
本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法は、上述したように、亜鉛系めっきに接する高強度鋼板(例えば亜鉛めっき高強度鋼板)に対して、長時間の保持を行うのみならず、本通電工程後に電極に電流を流しながら(入熱しながら)溶融部分を緩やかに冷却する(第一冷却工程)。この第一冷却工程でナゲットの外側組織を形成する。その後、冷却速度が第一冷却工程よりも急な第二冷却工程を行うことでナゲットの内側組織を形成し、2重ナゲット構造を得る。これにより、冷却工程(冷却過程)の異なる内側組織と外側組織を持つ2重のナゲットを形成することができ、ひいては、LME割れと水素脆化割れを同時に解決することができる。
一般的に、水素脆化割れは、鋼板成分中の水素の存在または加工油または大気中からの水素の侵入に加え、引張の応力が発生することにより引き起こされる。そのため、鋼板成分を規定し鋼中水素を抑制する方法が提案されている。しかし、この技術では、加工油や大気中からの水素侵入に対しては効果が薄い。そのため、本通電工程後に電極からの抜熱により冷却速度が速くなるとナゲット端部の靭性が低下し、発生した引張応力と前工程(プレス加工など)で付着した加工油から取り込んだ水素に起因する水素脆化割れが引き起こされる。
それを解消するために、本発明者は、冷却過程の異なる内側組織と外側組織を持つ2重のナゲットを形成する方法に着目した。具体的には、上述したように、本通電工程後に電極に電流を流しながら(入熱しながら)保持を続けることで、応力を発生させずに冷却速度を遅くする。それにより、ナゲット端部の靭性が改善され、水素脆化割れを改善するとともにCTS(剥離強度)を向上させることが可能になる。すなわち、溶接継手を剥離しようとした場合、ナゲットの外側に応力が集中するところ、ナゲットの外側組織の靭性が改善されているので、剥離強度が向上する。
また、LME割れは、ナゲット周囲の温度がめっき融点以上の温度であること、引張の応力が発生することにより引き起こされる。そのため、めっき融点以下の温度になるまで電極による加圧を続けることで、応力を発生させずに溶融部分の温度を下げる方法が提案されている。つまり、保持時間を延長することで、溶融部分の温度を下げている。しかしながら、単に保持時間を延長しただけでは、電極による急冷で水素脆化割れの懸念が増す。そこで、本実施形態では、第一冷却工程において、電極に電流を流しながら電極による加圧(保持)を続ける。その後、通電を停止し、長時間の加圧(保持)を行う。これにより、水素脆化割れとLME割れを同時に抑制することが可能となる。
<3.本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法>
次に、本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法について説明する。本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法は、重ね合わされた複数の鋼板からなる板組をスポット溶接するスポット溶接継手の製造方法である。ここで、複数の鋼板のうち1枚以上が、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板であり、高強度鋼板及び高強度鋼板と隣接する鋼板のうち少なくとも一方が亜鉛系めっきを有する。
亜鉛系めっきの種類は特に制限されず、例えば溶融亜鉛めっき(GI)、合金化溶融亜鉛めっき(GA)、電気亜鉛めっき(EG)のいずれであってもよい。また、亜鉛系めっきの組成についても特に制限されず、例えばZn-Mg-Al系めっき等、各種の亜鉛系めっきが使用できる。また、鋼板の枚数も特に制限されず、2~3枚程度であってもよいし、4枚以上であってもよい。
本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法は、本通電工程と、第一冷却工程と、第二冷却工程とを含み、0.5(sec)以上の保持時間を設定する。
本通電工程は、ナゲットを形成する工程である。より詳細には、複数の鋼板からなる板組を一対の電極で挟んで加圧しつつ通電することで、鋼板同士の接合界面を溶融及び凝固させる。これにより、鋼板同士の接合界面にナゲットを形成し、ナゲットを拡大させる。
第一冷却工程とは、ナゲット拡大が終了した(すなわち本通電工程が終了した)直後の通電発熱による冷却工程であり、鋼板同士の接合界面を通電発熱させているがナゲットは成長させない工程である。第一冷却工程は、本通電工程の電流値を維持したままであってもよく、図1に例示する通電パターンにおいて、本通電工程と明確に区別できなくともよい。
第二冷却工程とは、第一冷却工程直後の冷却工程であり、第一冷却工程よりも冷却速度が速い。第二冷却工程では、鋼板同士の接合界面を通電発熱させていなくても通電発熱させていてもよい。第二冷却工程は、好ましくは、鋼板同士の接合界面を通電発熱させず電極からの抜熱で鋼板を冷却する工程である。
保持時間とは、通電が終了してから電極が加圧を開放するまでの時間であり、本実施形態では保持時間を0.5(sec)以上とする。これにより、LME割れを防止することが可能となる。保持時間が0.5(sec)未満であると、LME割れが発生する恐れが生じる。第二冷却工程において通電発熱を行わない場合、第二冷却工程の時間t2と保持時間とが等しくなる。
このように、本実施形態では、二段階の冷却工程を行いつつ、保持時間を0.5(sec)以上にする。これにより、2重構造のナゲットが形成される。また、ナゲットの外側組織は内側組織よりも柔らかい組織であるので、ナゲット端部の靭性の低下が抑制される。ここで、例えば外側組織の硬さ(Ho)は母材硬さ(Hb)に対して、Hb<Ho<1.15Hbになり、内側組織の硬さ(Hi)がHo<Hiになる。硬さは例えばビッカース硬度計により測定することができる。2重構造のナゲットにより、水素脆化割れが抑制される。さらに、保持時間を0.5(sec)以上に延長することにより、電極直下や肩部、ナゲット直外に発生するLME割れも同時に抑制することができる。
ここで、ナゲットの2重構造について詳細に説明する。ナゲットの中心を通りかつ板組表面に垂直な断面視(厚さ方向の断面視)においてナゲットが内側組織と外側組織とを有する二層構造を有する。さらに、板組表面に平行な方向でのナゲット(外側組織)の径に対する内側組織の径の比率が40~100%であり、板組表面に垂直な方向でのナゲット(外側組織)の径に対する内側組織の径の比率が0~80%である。さらに、内側組織の径の縦横比率が25%以下である。ナゲット構造が以上の要件を満たす場合に、水素脆化割れ及びLME割れが抑制される。
板組表面に平行な方向でのナゲット(外側組織)の径に対する内側組織の径の比率は、好ましくは60~90%である。さらに、板組表面に垂直な方向でのナゲット(外側組織)の径に対する内側組織の径の比率は、好ましくは50~65%である。
ナゲットの内側組織と外側組織は、ピクラール液を用いた腐食によって断面観察することにより判別することができる。外側組織及び内側組織の径は、ナゲット中央を切断した断面における外側組織及び内側組織の最大径とする。
板組表面に平行な方向でのナゲット(外側組織)の径に対する内側組織の径の比率が40~100%(40%以上)であると、ナゲット端部の偏析を緩和させる効果が得られる。当該比率が40%未満であると、ナゲット端部の偏析が緩和されないため継手の剥離方向への強度が低下し水素脆化割れが発生する恐れがある。
板組表面に垂直な方向でのナゲット(外側組織)の径に対する内側組織の径の比率が0~80%であると、ナゲット端部の硬度上昇を抑制する効果が得られる。当該比率が80%超であると、緩冷却効果が十分ではなくナゲット端部の硬度が上昇するため水素脆化割れが発生する恐れがある。なお板組表面に垂直な方向でのナゲット(外側組織)の径に対する内側組織の径の比率を20%未満にするには、例えばダウンスロープ通電を行うなどする必要がありタクトタイムが大幅に増加する。よって板組表面に垂直な方向でのナゲット(外側組織)の径に対する内側組織の径の比率は好ましくは20~80%である。
内側組織のナゲット径の縦横比率とは、{(板厚方向の内側組織の厚さ)/(板幅方向の内側組織の径)}×100(%)である。この縦横比率は、ナゲット端部を十分に緩冷却(第一冷却工程)するため25%以下である必要がある。当該比率が25%超であると緩冷却効果が十分ではなく、ナゲット端部の靭性が低くなり水素脆化割れが発生する恐れがある。
上述した2重構造を得るためには、例えば第一冷却工程及び第二冷却工程を以下の様に設定すればよい。すなわち、第一冷却工程では、0<t1≦2(sec)、0.6×I0<I1≦I0(kA)であり、冷却速度が500℃/sec以下である。第二冷却工程では、0.5(sec)<t2、0≦I2<I1(kA)であり、冷却速度が2000℃/sec以上である。ここで、I0は本通電工程時の電流値であり、t1及びI1は第一冷却工程の時間及び電流値であり、t2及びI2は第二冷却工程の時間及び電流値である。
上述したように、I1=I0となってもよい。この場合、同じ大きさの電流が長時間通電されることになる。なお、このような場合であっても本通電工程と第一冷却工程とを区別することができる。すなわち、通電の前半では鋼板同士の接合界面の抵抗値が大きく、通電に対する発熱量が大きくなる。この時の通電が本通電工程となる。通電の後半では、すなわちナゲットが成長しきった後は通電経路が広がり、発熱もしなくなるため、発熱量が小さくなる。すなわち、鋼板同士の接合界面が冷却される。この時の通電が第一冷却工程となる。
第一冷却工程と本通電工程との間にクール時間(電流値をゼロとする時間)は設けないことが好ましい。この場合、上述の縦横比率を満たすナゲットを容易に2重構造にすることができる。
上述したように、I2=0であってもよい。この場合、第二冷却工程の時間が保持時間となる。
第一冷却工程の電流値I1及び第二冷却工程の電流値I2は一定であってもよいし、一定でなくてもよい。後者の例としてはダウンスロープが挙げられる。各電流値をダウンスロープとする場合、両者の間に冷却速度差を設ける必要がある。第一冷却工程の電流値I1及び第二冷却工程の電流値I2は一定であることが好ましい。第一冷却工程の電流値I1及び第二冷却工程の電流値をダウンスロープとするためには電流値を詳細に制御する必要がある上、施工時間が長くなるからである。第一冷却工程の電流値I1及び第二冷却工程の電流値I2が一定とならない場合、各電流値は時間平均値とする。
冷却速度は、ナゲット端部での冷却速度であり、抵抗溶接シミュレーションソフトにより求めることができる。ナゲット端部とは、ナゲット中央を切断した断面(板面に垂直な断面)において、ナゲット内で、外側組織の最大径に当たる位置に最も近い位置に設定される100μm四方の領域であり、ナゲット端部の温度は、当該100μm四方の領域の平均温度である。そして、第一冷却工程の冷却速度は、第一冷却工程開始時のナゲット端部の温度と第一冷却工程終了時のナゲット端部の温度との差を、第一冷却工程の時間で割った値である。第二冷却工程の冷却速度は、第二冷却工程開始時のナゲット端部の温度と第二冷却工程終了時のナゲット端部の温度との差を、第二冷却工程の時間で割った値である。
第一冷却工程及び第二冷却工程時における加圧力は特に限定無く、例えば本通電時の加圧力P0の0.5~1.5倍程度であればよい。
第一冷却工程及び第二冷却工程を以上のように設定することで、上述した2重構造のナゲットを形成することができる。
本通電工程では、ナゲット径を3√t~6√tとしてもよい。tは複数の鋼板の板厚のうち最小板厚である。ここでのナゲット径は、実質的には板組表面に垂直な方向でのナゲット(外側組織)の径(最大径)である。
なお、本通電工程前に、0<tp<0.1(sec)、I0<Ip<20(kA)の予備通電工程を行ってもよい。ここで、tpは予備通電工程の時間であり、I0は本通電工程時の電流値であり、Ipは予備通電工程時の電流値である。本通電工程前に予備通電工程を行うことで、チリの発生を抑制し、チリ発生に起因する電極肩部のLME割れを抑制することができる。
また、打角が1°以上であるという条件、板隙の合計が0.5mm以上であるという条件、及びクリアランスが0.1mm以上であるという条件のうち1つ以上が満たされてもよい。打角とは、一対の電極を結んだ直線に対して垂直な面を0°としたときの、鋼板の合わせ面の傾きを指す。また、板隙とは、被溶接部における鋼板間の隙間の大きさを指す。鋼板が3枚以上あり、隙間が2以上ある場合、板隙は、複数の隙間の大きさの合計値を意味する。クリアランスとは、電極を使ってワーク(鋼板)を挟み込むときの誤差を指す。具体的には、両方の電極が鋼板から離れている状態からスタートして、電極を近づけていくスポット溶接において、一方の電極が鋼板に接触し加圧力が印加されたときの、他方の電極とワーク(鋼板)との隙間を、クリアランスとする。また、打角、板隙、クリアランスなどは、纏めて溶接外乱と呼ばれる。本実施形態では、これらの溶接外乱が満たされる場合であっても、水素脆化割れ及びLME割れが抑制されたスポット溶接継手を製造することができる。
以上説明した通り、本実施形態によれば、水素脆化割れ及びLME割れが同時に抑制されたスポット溶接継手を製造することができる。
次に、本実施形態の実施例について説明する。本実施例では、母材となる鋼板として、強度1180MPa、厚さ1.6mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を二枚用意し、これらを重ねてスポット溶接した。具体的には、打角:3°、板隙:2mm、クリアランス:0.3mmの条件で鋼板の合わせ面にプレトン油を塗油してスポット溶接を行った。溶接後の結果物を2日以上保管して樹脂に埋め込み、断面観察を行った。スポット溶接の全体条件は以下の表1に示す通りである。
Figure 2023114166000001
表1において、加圧力は電極が鋼板の板組を加圧する力であり、本実施例では、本通電工程~第二冷却工程までこの加圧力で加圧を行った。本通電時間及び本通電電流値は本通電工程の条件である。冷却時間は、本通電工程と第一冷却工程との間に冷却を行った場合の冷却時間である。この冷却を行う場合、電極への通電は行わなかった。後通電時間、後通電電流値は第一冷却工程の条件である。保持時間は第二冷却工程の時間である。つまり、本実施例では第二冷却工程で通電は行わなかった。したがって、第二冷却工程の時間は保持時間に一致する。なお、後通電を行わなかった場合、保持時間は第一冷却工程の時間とした。試験No.5では、本通電と第一冷却工程との合計時間を960(msec)とした。結果を表2及び図2に示す。
Figure 2023114166000002
表2の区分は、表1の試験No.と保持時間とを組み合わせたものである。Ip、Pp、tpはそれぞれ予備通電工程の電流値、加圧力、時間を示す。I0、P0、t0はそれぞれ本通電工程の電流値、加圧力、時間を示す。I1、P1、t1はそれぞれ第一冷却工程の電流値、加圧力、時間を示す。I2、P2、t2はそれぞれ第二冷却工程の電流値、加圧力、時間を示す。
表2の厚さ方向内/外比は、板組表面に垂直な方向でのナゲットの径に対する内側組織の径の比率を意味する。幅方向内/外比は、板組表面に平行な方向でのナゲットの径に対する内側組織の径の比率を意味する。内側組織縦/横比は、内側組織のナゲット径の縦横比率を意味する。各数値の単位は「%」である。ナゲットが2重構造を形成した場合、2重構造の項目を〇とし、ナゲットが2重構造を形成しなかった場合、2重構造の項目を×とした。水素脆化割れ及びLME割れの評価は、それぞれの割れが発見された場合には×、発見されなかった場合には〇とした。図2の列の項目は保持時間を示し、行の項目は試験No.を示す。図2中符号100で示される部分が外側組織であり、符号200で示される部分が内側組織である。
区分1-20~1-2000は、従来のスポット溶接方法を再現したものである。図2に示すように、ナゲットは二重構造にはならず、LME割れ及び水素脆化割れの何れかが観察された。なお、LME割れ及び水素脆化割れの区別は板組表面に垂直な断面視における各割れの成分分析によって行うことができる。割れ部分にZnが検出されればLME割れと判断でき、割れ部分にZnが検出されなければ水素脆化割れと判断できる。
区分2-20~2-2000は、本通電工程と第一冷却工程との間にクール時間を設けたものである。いずれの例においても内側組織縦/横比が本実施形態の範囲外であった。このため、区分2-20ではLME割れが発見された(図2参照)。区分2-20~2000は一般的な後通電と言われる条件であるが、後通電は安定的にその効果を発揮するこのが難しいことが知られている。本実施例においてはLME割れは発見されなかったものの、実施工に適用するには未だ改善の余地がある。
区分3-20~3-2000は一部が本実施形態に対応する例である。ただし、区分3-20では保持時間が20msecであり、本実施形態の保持時間(0.5(sec))よりも短かった。このため、ナゲットは2重構造となり、かつ各比率も本実施形態の範囲内となったが、LME割れが発見された(図2参照)。区分3-600、3-2000は本実施形態の要件がすべて満たされるため、ナゲットは2重構造となり、かつ各比率も本実施形態の範囲内となった。さらに、水素脆化割れ及びLME割れのいずれも発見されなかった。
区分4-20~4-2000は、第一冷却工程をダウンスロープで行った例である。いずれの例でもナゲットが2重構造にならなかったが、水素脆化割れ及びLME割れのいずれも発見されなかった。ただし、第一冷却工程をダウンスロープとするために電流値を詳細に制御する必要があり、施工に手間が掛かった。さらに、区分4-20~4-2000では、CTSの向上効果が低くなる懸念がある。
区分5-20~5-2000は一部が本実施形態に対応する例である。ただし、区分5-20では保持時間が20msecであり、本実施形態の保持時間(0.5(sec))よりも短かった。このため、ナゲットは2重構造となり、かつ各比率も本実施形態の範囲内となったが、LME割れが発見された(図2参照)。区分5-600、5-2000は本実施形態の要件がすべて満たされるため、ナゲットは2重構造となり、かつ各比率も本実施形態の範囲内となった。さらに、水素脆化割れ及びLME割れのいずれも発見されなかった。
次に、区分3-600をベースとして試験条件を種々変更し、ナゲットの2重構造を変動させた。その結果を表3に示す。
Figure 2023114166000003
表3に示す通り、厚さ方向内/外比、幅方向内/外比、及び内側組織縦/横比のいずれか1つ以上が本実施形態の要件を満たさない場合、水素脆化割れ及びLME割れのいずれかが発見された。なお区分3-600-5では水素脆化割れ及びLME割れのいずれも発見されなかったが、他の発明例に比べてタクトタイムが長くなっている。
以上説明した通り、本実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法によって製造された溶接継手は、所定の2重構造のナゲットを有し、かつ、水素脆化割れ及びLME割れのいずれも有さないことが明らかとなった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (5)

  1. 重ね合わされた複数の鋼板からなる板組をスポット溶接するスポット溶接継手の製造方法であって、
    前記複数の鋼板のうち1枚以上が、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板であり、
    前記高強度鋼板及び前記高強度鋼板と隣接する鋼板のうち少なくとも一方が亜鉛系めっきを有し、
    前記スポット溶接継手の製造方法は、ナゲットを形成する本通電工程と、
    第一冷却工程および前記第一冷却工程よりも冷却速度が速い第二冷却工程と、を有し、
    通電が終了してから電極が前記鋼板への加圧を開放するまでの時間である保持時間が0.5(sec)以上であり、かつ、
    前記第二冷却工程後のスポット溶接継手が、
    前記ナゲットの中心を通りかつ前記板組表面に垂直な断面視において前記ナゲットが内側組織と外側組織とを有する二層構造を有し、
    前記板組表面に平行な方向でのナゲットの径に対する内側組織の径の比率が40~100%であり、
    前記板組表面に垂直な方向でのナゲットの径に対する内側組織の径の比率が0~80%であり、
    前記内側組織の径の縦横比率が25%以下であることを特徴とする、スポット溶接継手の製造方法。
  2. 前記第一冷却工程では、0<t1≦2(sec)、0.6×I0<I1≦I0(kA)であり、冷却速度が500℃/sec以下であり、
    前記第二冷却工程では、0.5(sec)<t2、0≦I2<I1(kA)であり、冷却速度が2000℃/sec以上であり、
    I0は前記本通電工程時の電流値であり、
    t1及びI1は前記第一冷却工程の時間及び電流値であり、
    t2及びI2は前記第二冷却工程の時間及び電流値であることを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接継手の製造方法。
  3. 前記本通電工程では、ナゲット径を3√t~6√tにし、
    tは前記複数の鋼板の板厚のうち最小板厚であることを特徴とする、請求項1または2に記載のスポット溶接継手の製造方法。
  4. 前記本通電工程前に、0<tp<0.1(sec)、I0<Ip<20(kA)の予備通電工程を行い、
    tpは前記予備通電工程の時間であり、
    I0は前記本通電工程時の電流値であり、
    Ipは前記予備通電工程時の電流値であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載のスポット溶接継手の製造方法。
  5. 前記本通電開始直前において、打角が1°以上であるという条件、板隙の合計が0.5mm以上であるという条件、及びクリアランスが0.1mm以上であるという条件のうち1つ以上が満たされることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載のスポット溶接継手の製造方法。
JP2022016361A 2022-02-04 2022-02-04 スポット溶接継手の製造方法 Pending JP2023114166A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022016361A JP2023114166A (ja) 2022-02-04 2022-02-04 スポット溶接継手の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022016361A JP2023114166A (ja) 2022-02-04 2022-02-04 スポット溶接継手の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023114166A true JP2023114166A (ja) 2023-08-17

Family

ID=87569123

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022016361A Pending JP2023114166A (ja) 2022-02-04 2022-02-04 スポット溶接継手の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023114166A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6558443B2 (ja) 抵抗スポット溶接方法
KR101744427B1 (ko) 조인트 강도가 우수한 고강도 강판의 스폿 용접 방법
JP6278154B2 (ja) 抵抗スポット溶接方法および溶接部材の製造方法
JP6572986B2 (ja) 抵抗スポット溶接方法および抵抗スポット溶接の溶接条件判定方法
JP6108018B2 (ja) スポット溶接方法
JP6108017B2 (ja) スポット溶接方法
EP3342524B1 (en) Resistance spot welding method and method for manufacturing welded member
TW201718144A (zh) 點熔接方法
KR20210020661A (ko) 고망간강의 용접방법
RU178157U1 (ru) Многослойная заготовка для горячей прокатки
WO2018159764A1 (ja) 抵抗スポット溶接方法
JP2023114166A (ja) スポット溶接継手の製造方法
KR102010069B1 (ko) 다층 강판의 저항 점 용접방법
WO2022215103A1 (ja) 抵抗スポット溶接継手および抵抗スポット溶接継手の製造方法
JP5146268B2 (ja) 酸化防止剤を塗布した鋼板のアーク溶接方法
JP2021112773A (ja) 抵抗スポット溶接方法、溶接部材の製造方法および溶接装置
JP6913062B2 (ja) 抵抗スポット溶接方法および溶接部材の製造方法
JP7296985B2 (ja) 抵抗スポット溶接方法、および抵抗スポット溶接継手の製造方法
KR20160062820A (ko) 아연계 도금강판의 저항점용접방법
JP6828831B1 (ja) 抵抗スポット溶接方法、抵抗スポット溶接継手の製造方法
JP7508031B1 (ja) 抵抗スポット溶接方法
JP7305396B2 (ja) 亜鉛系めっき鋼板のスポット溶接方法
US11772186B2 (en) Spot welding method
JP6856181B1 (ja) 抵抗スポット溶接方法および溶接部材の製造方法
WO2024122355A1 (ja) 抵抗スポット溶接方法