JP2021159973A - 抵抗スポット溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本簡便な装置及び工程により良好なナゲットを安定的に形成させることができ、打角の傾斜に対して寛容であり、超ハイテン材を含む積層板材(板組みワーク)にも適用可能な抵抗スポット溶接方法を提供する。【解決手段】板厚の異なる複数の金属板が積層されてなる板組みワークを一対の電極によって板組みワークの表面に対して垂直な方向から挟み所定の加圧力を与えつつ一対の電極の間に所定の電流値にて溶接電流を流して複数の板材を接合する抵抗スポット溶接方法において、一対の電極の板組みワークに当接する側の端部である先端部の表面の形状を球面とし、球面の半径を板組みワークの総厚の3倍以上且つ7倍以下とし、溶接電流の電流値を6kA以上且つ7kA以下とする。加圧力は4.5kN未満であることが好ましい。【選択図】図4
Description
本発明は、抵抗スポット溶接方法に関する。より具体的には、本発明は、簡便な装置及び工程により良好なナゲットを安定的に形成させることができ、打角の傾斜に対して寛容であり、超ハイテン材を含む積層板材(板組みワーク)にも適用可能な抵抗スポット溶接方法に関する。
例えば自動車の車体を構成する部材等において複数の金属板を積層して抵抗スポット溶接によって互いに固定することが広く行われている。昨今では、積層数の増大(例えば3枚乃至5枚)及び積層される複数の金属板の間における引張強度の差異の増大(例えば軟鋼とハイテン材(「高張力鋼」とも称呼される。)との積層)に起因して抵抗スポット溶接の難度が高まっている。更に、超ハイテン材(「超強力鋼」とも称呼される。)の普及に伴ってスポット溶接の難度が益々高まっている。
上記のように抵抗スポット溶接の難度が高まる原因は以下のように考えられている。先ず、ハイテン材及び超ハイテン材は、軟鋼に比べて電気抵抗が大きいため、抵抗スポット溶接における通電によって生ずる熱量が軟鋼よりも大きくなる。従って、通電に伴って金属が熔融して形成されるナゲットは、軟鋼側よりもハイテン材及び超ハイテン材側に偏って形成される。ナゲットの形成の偏りが大きく軟鋼に及ばない場合、当該軟鋼と隣接するハイテン材又は超ハイテン材とを溶着することができない。
上記問題の対策としては、より大きいナゲットを形成させることが考えられる。抵抗スポット溶接においては、通電電流(以降、「溶接電流」と称呼される場合がある。)を増大させることによってナゲットの大きさを増大させることができる。しかしながら、溶接電流が過剰に大きくなると、溶融金属が鋼板の間等に飛散する所謂「散り」又は「スパッタ」と呼ばれる現象が起こる。散りの発生は危険であると共に、溶接部の周辺に散りが付着して外観が悪化したり、ナゲットの大きさ及び溶接部の引張強度のバラツキが増大したりして、溶接部の品質が不良及び/又は不安定になる虞がある。
また、溶接電流が大きくなるほど発生する熱量も大きくなり通電の前後における温度変化が大きくなるため、図1に例示するように、電極の間に流れる溶接電流が過剰に大きくなると、ナゲットの周辺(例えば、図1において斜め格子状のハッチングが施された領域)において金属板に亀裂が生ずる「割れ」と呼ばれる現象が起こる虞が高まる。
そこで、特許文献1(特許第5261984号公報)においては、重ね合わせた2枚の厚板の上に薄板を重ね合わせた板組みワークを一対の電極によって挟み加圧力を与えつつ抵抗スポット溶接を行うに当たり、板組みワークを固定し、薄板と接する側の電極を溶接ガンの固定電極とし、厚板と接する側の電極を可動電極とすると共に電極の先端を薄板と接する側の電極の先端よりも大きな曲率半径をもつ曲面とし、溶接工程を2段階に分け、第1の工程において低加圧・高電流で溶接を行い、第2の工程において第1の工程における加圧力よりも大きな加圧力にて溶接する技術が提案されている。当該技術によれば、重ね合わせた2枚以上の厚板の一方に薄板を重ね合わせた板厚比の大きな板組みを抵抗スポット溶接する場合においても、板組みワークの何れかの鋼板と鋼板との間の隙間(ギャップ)の存在の有無に拘わらず、薄板−厚板間、厚板−厚板間のそれぞれの溶接継手強度を高めることができるとされている。
しかしながら、上記のように板組みワークの薄板側には先端の曲率半径が相対的に小さい固定電極を配し厚板側には先端の曲率半径が相対的に大きい可動電極を配することは、溶接装置の構成上の制約(設計自由度の低下)、溶接工程の複雑化及び溶接作業の煩雑化等の問題に繋がる虞がある。また、上記のように溶接工程を2段階に分けて第1の工程における加圧力よりも第2の工程における加圧力を大きくすることもまた、溶接装置の構成上の制約(設計自由度の低下)、溶接工程の複雑化及び溶接作業の煩雑化等の問題に繋がる虞がある。更に、上記のような高電流(大電流)による溶接においては、金属が熔融する領域が大きくなり分流も発生し易くなるため本来的にナゲットの形成を制御することが難しい。加えて、上述したように、高電流(大電流)による溶接においては散り又はスパッタが起こり易くなる。
そこで、特許文献2(特許第6104013号公報)においては、2枚以上の金属板を重ね合わせると共に少なくとも最表面が厚板と薄板とからなるワークをスポット溶接するに当たり、最表面の厚板に対向する第1の電極と最表面の薄板に対向し第1の電極の接触面積よりも小さい接触面積を備える第2の電極とによってワークを加圧挟持した状態において第1の電極と第2の電極との間に通電し、スパッタが発生し始める大きさをナゲットの大きさが超える前に第2の電極の外周に設けられた押圧部材によりナゲットの外周側においてワークを押圧する技術が提案されている。当該技術によれば、スパッタの発生を抑制することができるとされている。しかしながら、当該技術においても、板組みワークの薄板側と厚板側とで異なる接触面積を有する電極を配設したり押圧部材を設けて所定のタイミングにて押圧部材によってワークを押圧したりすることは、溶接装置の構成上の制約(設計自由度の低下)、溶接工程の複雑化及び溶接作業の煩雑化等の問題に繋がる虞がある。
上記に加えて、実際の溶接工程においては、例えば図2に示すように、板組みワークと両電極とが相対的に傾斜して、板組みワークの表面に対する電極の打角が直角にならない「打角ずれ」と呼ばれる状況が生ずる場合がある。図2に示す例においては、板組みワーク10の表面に対する電極の打角が0°である「面直」と呼ばれる状況ではなく、板組みワーク10と2つの電極21及び22とが相対的に傾斜して打角が所定の角度(α)となり、打角ずれが生じている。このような状況においては、例えば電極21及び22の先端以外の部分が板組みワーク10に接触する等して意図せぬ通電状態となったり、板組みワーク10の内部における通電路が変化したりして、良好なナゲットを安定的に形成させることが困難となる虞がある(図2に示す白抜きの矢印を参照)。また、打角ずれに起因して電極21及び22から板組みワーク10の両面に作用する応力が正確に対向しなくなり(図2に示す黒抜きの矢印を参照)、剪断応力が作用して上述した割れが生じ易くなる虞もある。更に、特許文献2に記載された押圧部材をワークに適切に押圧することが困難となる虞もある。
上述したように、当該技術分野においては、簡便な装置及び工程により良好なナゲットを安定的に形成させることができ、打角の傾斜に対して寛容であり、超ハイテン材を含む積層金属板(板組みワーク)にも適用可能な抵抗スポット溶接方法が求められている。
上記課題に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果、板厚の異なる複数の金属板が積層されてなる板組みワークを接合する抵抗スポット溶接において、板組みワークを挟む一対の電極の先端部をワークの総厚に対して十分に大きい所定の範囲の半径を有する球面形状とし、従来に比べて小さい溶接電流を流すことにより、上記要求に応えることができることを見出した。
具体的には、本発明に係る抵抗スポット溶接方法(以降、「本発明方法」と称呼される場合がある。)は、板厚の異なる複数の金属板が積層されてなる板組みワークを一対の電極によって板組みワークの表面に対して垂直な方向から挟み所定の加圧力を与えつつ一対の電極の間に所定の電流値にて溶接電流を流して複数の金属板を接合する抵抗スポット溶接方法である。本発明方法において、一対の電極の板組みワークに当接する側の端部である先端部の表面の形状は球面である。また、当該球面の半径は板組みワークの総厚の3倍以上且つ7倍以下である。更に、溶接電流の電流値は6kA以上且つ7kA以下である。好ましくは、加圧力は4.5kN未満である。
本発明によれば、簡便な装置及び工程により良好なナゲットを安定的に形成させることができ、打角の傾斜に対して寛容であり、超ハイテン材を含む積層金属板(板組みワーク)にも適用可能な抵抗スポット溶接方法が達成される。
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に抵抗スポット溶接方法(以降、「第1方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
以下、本発明の第1実施形態に抵抗スポット溶接方法(以降、「第1方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第1方法は、板厚の異なる複数の金属板が積層されてなる板組みワークを一対の電極によって板組みワークの表面に対して垂直な方向から挟み所定の加圧力を与えつつ一対の電極の間に所定の電流値にて溶接電流を流して複数の板材を接合する抵抗スポット溶接方法である。このような抵抗スポット溶接方法を実行するための抵抗スポット溶接装置については当業者に周知であるが、その概略につき以下に説明する。
第1方法は、板厚の異なる複数の金属板が積層されてなる板組みワークを一対の電極によって板組みワークの表面に対して垂直な方向から挟み所定の加圧力を与えつつ一対の電極の間に所定の電流値にて溶接電流を流して複数の板材を接合する抵抗スポット溶接方法である。このような抵抗スポット溶接方法を実行するための抵抗スポット溶接装置については当業者に周知であるが、その概略につき以下に説明する。
図3は、抵抗スポット溶接方法を実行することが可能な一般的な抵抗スポット溶接装置の構成の一例を示す模式図である。図3においては、クランプ110によって固定された厚板121、厚板122及び薄板123の3枚の金属板からなる板組みワーク120が抵抗スポット溶接装置100によって溶接される様子が描かれている。抵抗スポット溶接装置100は、ロボット131の手首部131aに取り付けられたスポット溶接ガン130、溶接電流を供給するトランス132、図示しないサーボモータを駆動源とする加圧機構133、スポット溶接ガン130の本体に取り付けられたC型アーム134、C型アーム134に固定された固定電極135f、加圧機構133によって移動し板組みワーク120を加圧する可動電極135m、並びにトランス136等によって構成されている。
抵抗スポット溶接方法の実行に当たっては、先ずクランプ110によって板組みワーク120を固定する。そして、ロボット131によって固定電極135fの位置を制御して固定電極135fを厚板121に当接させる。その後、加圧機構133によって可動電極135mを動かし、電極135f及び135mによって板組みワーク120を挟む。次に、トランス136によって電極135fと電極135mとの間に溶接電流を流すことによりナゲットが形成され、薄板121、厚板122及び厚板123が接合される。
尚、図3に示した例においては、厚板121と厚板122との間及び厚板122と薄板123との間にギャップ124a及び124bがそれぞれ存在するが、このようなギャップの存在は本発明の必須の構成要件ではない。即ち、板組みワークを構成する複数の金属板の何れかの間におけるギャップの有無は、例えば板組みワークを構成する複数の金属板の組み合わせ、板組みワークの構造及びクランプによる板組みワークの把持状態等、様々な要因によって影響される。また、図3に示した例においては、上述したようにクランプ110によって板組みワーク120が固定され、板組みワーク120の溶接されるべき箇所に固定電極135fが当接するようにスポット溶接ガン130がロボット131によって動かされる。しかしながら、これとは逆に、スポット溶接ガンが固定され、板組みワークの溶接されるべき箇所に電極が当接するように板組みワークがロボットによって動かされるように、抵抗スポット溶接装置が構成されていてもよい。
上記において、薄板121、厚板122及び厚板123を確実に接合するためには、薄板121、厚板122及び厚板123に亘る程度に十分に大きいナゲットを形成する必要がある。前述したように、抵抗スポット溶接においては、溶接電流を増大させることによってナゲットの大きさを増大させることができる。しかしながら、溶接電流が過剰上に大きくなると上述したように散り及び/又は割れが発生し、溶接部の品質が不良及び/又は不安定になる虞がある。
そこで、特許文献1(特許第5261984号公報)及び特許文献2(特許第6104013号公報)においては、前述したように、板組みワークの薄板側と厚板側とで異なる仕様を有する電極を配設したり押圧部材を設けてワークを押圧したりしている。しかしながら、このような対策は、溶接装置の構成上の制約(設計自由度の低下)、溶接工程の複雑化及び溶接作業の煩雑化等の問題に繋がる虞がある。また、上述した打角ずれが生ずると、例えば電極の先端以外の部分がワークに接触する等して意図せぬ通電状態となったり、板組みワーク10の内部における通電路が変化したりして、良好なナゲットを安定的に形成させることが困難となる虞がある。
そこで、第1方法においては、前述したように、板組みワークを挟む一対の電極の先端部をワークの総厚に対して十分に大きい所定の範囲の半径を有する球面形状とし、従来に比べて小さい溶接電流を流すことにより、上記問題を低減することに成功した。図4は、第1方法において使用される一対の電極の先端部と曲率半径と板組みワークの総厚との関係を示す模式図である。
図4に例示するように、第1方法においては、一対の電極21及び22の板組みワーク10に当接する側の端部である先端部の表面の形状は球面である。従って、打角ずれが生じても、一対の電極21及び22の先端部と板組みワーク10の表面との接触状態の変化は小さいため、良好なナゲットを安定的に形成させることができ、板組みワーク10を構成する複数(図4に示す例においては3枚)の金属板11乃至13を良好且つ安定的に接合することができる。
また、第1方法においては、一対の電極21及び22の先端部の表面を構成する上記球面の半径(SR)は板組みワーク10の総厚(T)の3倍以上且つ7倍以下である。従って、一対の電極21及び22の先端部と板組みワーク10の表面との接触面積が大きく、単位面積当たりの押圧力(圧力)が小さいため、たとえ板組みワーク10を構成する金属板11乃至13の何れかの間にギャップが存在する場合においても、押圧された金属板の撓みが発生する虞が低減される。その結果、押圧された金属板の撓みに起因する電極21及び22の先端部と板組みワーク10の表面との接触面積の変化が低減され、溶接電流の電流密度の変動が低減され、溶接工程におけるナゲットの形成を容易に制御することができる。即ち、板組みワーク10を構成する金属板11乃至13を良好且つ安定的に接合することができる。好ましくは、一対の電極の先端部の表面を構成する球面の半径(SR)は板組みワークの総厚(T)の4倍以上且つ6倍以下である。
更に、第1方法においては、溶接電流の電流値は6kA以上且つ7kA以下である。このように溶接電流の電流値が小さいため、上述した散り及び/又は割れの発生を低減することができる。しかも、上記のように一対の電極21及び22の先端部と板組みワーク10の表面との接触面積が大きいので、一対の電極21及び22の間に流れる溶接電流の電流密度が更に小さくなり、上述した散り及び/又は割れの発生を更に低減することができる。その結果、溶接工程の安全性を更に高め、溶接部の外観の悪化を更に低減し、ナゲットの大きさ及び溶接部の引張強度のバラツキを更に低減することができるので、溶接部の良好な品質を更に安定的に達成することができる。
溶接電流の電流値を6kA以上とすることにより、板組みワーク10を構成する金属板11乃至13に亘る程度に十分に大きいナゲットを形成することができ、金属板11乃至13を良好且つ安定的に接合することができる。一方、溶接電流の電流値を7kA以下とすることにより、散り及び/又は割れの発生を十分に低減することができる。
〈効果〉
以上のように、第1方法においては、前述した従来技術のような溶接装置の構成上の制約(設計自由度の低下)、溶接工程の複雑化及び溶接作業の煩雑化等の問題を招く特別な構成を有する装置及び工程は必要とすること無く、板組みワークを構成する複数の金属板を良好且つ安定的に接合することができる。即ち、第1方法によれば、簡便な装置及び工程により良好なナゲットを安定的に形成させることができ、打角の傾斜に対して寛容であり、超ハイテン材を含む積層金属板(板組みワーク)にも適用可能な抵抗スポット溶接方法が達成される。
以上のように、第1方法においては、前述した従来技術のような溶接装置の構成上の制約(設計自由度の低下)、溶接工程の複雑化及び溶接作業の煩雑化等の問題を招く特別な構成を有する装置及び工程は必要とすること無く、板組みワークを構成する複数の金属板を良好且つ安定的に接合することができる。即ち、第1方法によれば、簡便な装置及び工程により良好なナゲットを安定的に形成させることができ、打角の傾斜に対して寛容であり、超ハイテン材を含む積層金属板(板組みワーク)にも適用可能な抵抗スポット溶接方法が達成される。
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に抵抗スポット溶接方法(以降、「第2方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
以下、本発明の第2実施形態に抵抗スポット溶接方法(以降、「第2方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
上述したように、第1方法においては、一対の電極の先端部の表面を構成する球面の半径は板組みワークの総厚の3倍以上且つ7倍以下である。これにより、一対の電極の先端部と板組みワークの表面との接触面積が大きく、単位面積当たりの押圧力(圧力)が小さいため、たとえ板組みワークを構成する複数の金属板の何れかの間にギャップが存在する場合においても、押圧された金属板の撓みが発生する虞が低減される。その結果、押圧された金属板の撓みに起因する電極の先端部と板組みワークの表面との接触面積の変化が低減され、溶接電流の電流密度の変動が低減され、溶接工程におけるナゲットの形成を容易に制御することができる。
しかしながら、例えば図3に示した例のように板組みワークを構成する複数の金属板の間にギャップが存在し且つ薄い金属板(123)に可動電極(135m)が当接する場合等、押圧された金属板の撓みが発生する虞が高い場合においては、加圧力そのものを小さくすることが望ましい。
〈構成〉
そこで、第2方法は、上述した第1方法であって、加圧力は4.5kN未満である、抵抗スポット溶接方法である。
そこで、第2方法は、上述した第1方法であって、加圧力は4.5kN未満である、抵抗スポット溶接方法である。
〈効果〉
第2方法においては、上述した第1方法と同様に一対の電極の先端部の表面を構成する球面の半径が板組みワークの総厚の3倍以上且つ7倍以下と大きいことにより、一対の電極の先端部と板組みワークの表面との接触面積が大きく、単位面積当たりの押圧力(圧力)が小さい。これに加えて、第2方法においては、上記のように加圧力が4.5kN未満である。これら2つの特徴により、第2方法によれば、たとえ押圧された金属板の撓みが発生する虞が高い場合においても、金属板の撓みをより確実に低減することができる。その結果、押圧された金属板の撓みに起因する電極の先端部と板組みワークの表面との接触面積の変化が低減され、溶接電流の電流密度の変動が低減され、溶接工程におけるナゲットの形成を容易に制御することができる。即ち、第2方法によれば、板組みワークを構成する複数の金属板を更に良好且つ安定的に接合することができる。
第2方法においては、上述した第1方法と同様に一対の電極の先端部の表面を構成する球面の半径が板組みワークの総厚の3倍以上且つ7倍以下と大きいことにより、一対の電極の先端部と板組みワークの表面との接触面積が大きく、単位面積当たりの押圧力(圧力)が小さい。これに加えて、第2方法においては、上記のように加圧力が4.5kN未満である。これら2つの特徴により、第2方法によれば、たとえ押圧された金属板の撓みが発生する虞が高い場合においても、金属板の撓みをより確実に低減することができる。その結果、押圧された金属板の撓みに起因する電極の先端部と板組みワークの表面との接触面積の変化が低減され、溶接電流の電流密度の変動が低減され、溶接工程におけるナゲットの形成を容易に制御することができる。即ち、第2方法によれば、板組みワークを構成する複数の金属板を更に良好且つ安定的に接合することができる。
以下、本発明の実施例に係る抵抗スポット溶接方法(以降、「実施例方法」と称呼される場合がある。)について説明する。本実施例においては、球状の先端部が様々な半径を有する電極を用いて抵抗スポット溶接を行い、上述した割れの発生頻度に基づいて評価を行った。
〈試料〉
1mmの厚さを有する2枚の金属板の間に2mmの厚さを有する1枚の金属板が挟まれている4mmの総厚を有する板組みワークを調製した。金属板としては、1470MPaの引張強度を有する溶融亜鉛メッキ鋼板(SCGA)である超ハイテン材を採用した。また、各々の金属板の間にギャップが存在しない群と1.0mmのギャップが存在する群とを用意した。
1mmの厚さを有する2枚の金属板の間に2mmの厚さを有する1枚の金属板が挟まれている4mmの総厚を有する板組みワークを調製した。金属板としては、1470MPaの引張強度を有する溶融亜鉛メッキ鋼板(SCGA)である超ハイテン材を採用した。また、各々の金属板の間にギャップが存在しない群と1.0mmのギャップが存在する群とを用意した。
〈溶接〉
図3に例示した抵抗スポット溶接装置100と同様の装置に球状の先端部が様々な半径を有する電極を装着し、6.5kAの溶接電流及び4.4kNの加圧力にて、上記板組みワークの抵抗スポット溶接を行った。
図3に例示した抵抗スポット溶接装置100と同様の装置に球状の先端部が様々な半径を有する電極を装着し、6.5kAの溶接電流及び4.4kNの加圧力にて、上記板組みワークの抵抗スポット溶接を行った。
〈評価〉
上記条件下における抵抗スポット溶接によって形成されるナゲットの直径が板組みワークの総厚Tの平方根の4倍(4√T)以下であり且つ上述した割れが発生していないことを合格基準として、上述した試料の溶接部の品質を評価した。当該評価の結果を以下の表1に列挙する。
上記条件下における抵抗スポット溶接によって形成されるナゲットの直径が板組みワークの総厚Tの平方根の4倍(4√T)以下であり且つ上述した割れが発生していないことを合格基準として、上述した試料の溶接部の品質を評価した。当該評価の結果を以下の表1に列挙する。
表1から明らかであるように、電極先端部の半径SRの板組みワークの総厚Tが本発明において規定される範囲内にある電極D、E及びFを用いる抵抗スポット溶接においては、板組みワークを構成する金属板の間におけるギャップの有無に拘わらず、溶接部の品質が良又は可であった。一方、電極先端部の半径SRの板組みワークの総厚Tが本発明において規定される範囲内にはない電極A乃至C及びGを用いる抵抗スポット溶接においては、板組みワークを構成する金属板の間におけるギャップの有無の何れかの場合において、溶接部の品質が不可であった。
〈まとめ〉
以上のように、実施例方法において用いられる電極の先端部の形状は球面であり、当該球面の半径は板組みワークの総厚の3倍以上且つ7倍以下であり、且つ溶接電流の電流値は6kA以上且つ7kA以下である実施例方法によれば、割れの発生を低減しつつ良好なナゲットを安定的に形成させることができる。その結果、実施例方法によれば、板組みワークを構成する複数の金属板を良好且つ安定的に接合することができた。即ち、実施例方法によれば、簡便な装置及び工程により良好なナゲットを安定的に形成させることができ、超ハイテン材を含む板組みワークにも適用可能な抵抗スポット溶接方法を提供することができる。
以上のように、実施例方法において用いられる電極の先端部の形状は球面であり、当該球面の半径は板組みワークの総厚の3倍以上且つ7倍以下であり、且つ溶接電流の電流値は6kA以上且つ7kA以下である実施例方法によれば、割れの発生を低減しつつ良好なナゲットを安定的に形成させることができる。その結果、実施例方法によれば、板組みワークを構成する複数の金属板を良好且つ安定的に接合することができた。即ち、実施例方法によれば、簡便な装置及び工程により良好なナゲットを安定的に形成させることができ、超ハイテン材を含む板組みワークにも適用可能な抵抗スポット溶接方法を提供することができる。
また、実施例方法において用いられる電極の先端部の形状は球状であるので、板組みワークの表面に対する電極の角度が0°(面直)からずれる打角ずれが生じても、一対の電極の先端部と板組みワークの表面との接触状態の変化は小さく、良好なナゲットを安定的に形成させることができる。従って、実施例方法によれば、板組みワークを構成する複数の金属板を良好且つ安定的に接合することができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
10…板組みワーク、11、12及び13…金属板、21及び22…電極、30…ナゲット、100…抵抗スポット溶接装置、110…クランプ、120…板組みワーク、121及び122…厚板、123…薄板、124a及び124b…ギャップ、130…スポット溶接ガン、131…ロボット、131a…手首部、132…トランス、133…加圧機構、134…C型アーム、135f…固定電極、135m…可動電極、並びに136…トランス。
Claims (2)
- 板厚の異なる複数の金属板が積層されてなる板組みワークを一対の電極によって前記板組みワークの表面に対して垂直な方向から挟み所定の加圧力を与えつつ一対の前記電極の間に所定の電流値にて溶接電流を流して複数の前記板材を接合する抵抗スポット溶接方法において、
一対の前記電極の前記板組みワークに当接する側の端部である先端部の表面の形状は球面であり、
前記球面の半径は前記板組みワークの総厚の3倍以上且つ7倍以下であり、
前記溶接電流の電流値は6kA以上且つ7kA以下である、
ことを特徴とする、抵抗スポット溶接方法。 - 請求項1に記載された抵抗スポット溶接方法であって、
前記加圧力は4.5kN未満である、
ことを特徴とする、抵抗スポット溶接方法。
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JP2020066393A Pending JP2021159973A (ja) | 2020-04-02 | 2020-04-02 | 抵抗スポット溶接方法 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2021159973A (ja) |
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2020
- 2020-04-02 JP JP2020066393A patent/JP2021159973A/ja active Pending
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