JP2008036672A - 亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法 - Google Patents

亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特殊な電極を使用せず、簡便な溶接方法又は溶接条件の変更によって、溶接電極の寿命を向上することができる亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法を提供する。
【解決手段】片面あたりの付着量が10〜200g/mで、板厚tが0.7〜2.3mmの亜鉛系合金めっき鋼板を重ね合わせて、最適ナゲット径の下限値dn(=4×√t)(mm)が得られる溶接電流最小値I(kA)、電極先端部に溶着が発生する溶接電流最小値I(kA)、及びk(=0.6〜0.9)値に基づいて設定した溶接電流値I(=I+k×(I−I))(kA)でスポット溶接する。
【選択図】図1

Description

本発明は、少なくとも一方の面に亜鉛系合金めっきが施された亜鉛系合金めっき鋼板をスポット溶接する方法に関し、特に、片面あたりのめっき付着量が10〜200g/mで、板厚が0.7〜2.3mmである亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法に関する。
スポット溶接は、主に自動車及び家電等の製造工程において、薄鋼板を溶接する際に用いられる抵抗溶接法の1種である。図4はスポット溶接方法を模式的に示す断面図である。図4に示すように、スポット溶接は、例えば2枚の鋼板3a,3bを重ね合わせ、その上下に1対の電極1a,1bを配置し、この電極1a,1bにより鋼板3a,3bを所定の圧力で加圧すると共に所定時間通電し、鋼板3a,3bの重ね合わせ面における抵抗発熱を利用して、これらを溶融接合する溶接方法である。そして、スポット溶接により得られる継手の接合部は、溶融部からなるナゲット2と、その周囲に存在する抵抗発熱により熱影響を受けた熱影響部(HAZ:Heat affect zone)4とで構成される。
一方、溶接継手の接合強度は、ナゲット2の大きさを表すナゲット径dnにほぼ支配され、引張試験による接合部の破断は、特にナゲット2と熱影響部4との界面又は熱影響部4において、き裂が進展することにより発生する。また、スポット溶接によって目的とするナゲット径dnを得るためには、溶接時の電極による加圧力及び溶接電流を適正に制御することが必要である。
図5は横軸に時間をとり、縦軸に加圧力及び電流値をとって、スポット溶接における加圧力と溶接電流との関係を示すグラフ図である。図5に示すように、スポット溶接においては、溶接開始後、無通電の状態で電極により鋼板を一定圧力で加圧する時間があり、この時間をスクイズ時間aという。スクイズ時間aは、鋼板に通電する前に鋼板間及び鋼板と電極との間をなじませるために必要な時間であり、この時間が十分でない場合には溶接時に接触不良によるちり(以下、スパッタともいう)が発生しやすくなる。その後、一定圧力で加圧した状態で鋼板に所定の溶接電流で通電を行う時間を通電時間bという。この通電時間b中に鋼板の重ね合わせ面にナゲットが形成されて溶接されるが、目的とするナゲット径を得るためには、溶接電流及び通電時間bを適正な範囲に調整する必要がある。通常、通電時間bは、溶接電流及び鋼板の板厚等に応じて設定されるが、板厚tが1.0mmの鋼板同士をスポット溶接する場合は、約0.2〜0.3秒間である。更に、通電が終了した後、無通電の状態で鋼板を一定加圧力で加圧するが、その時間をホールド時間cという。ホールド時間cの中は、無通電の状態で溶接時と同様に電極の水冷を継続しており、溶接で形成されたナゲットが冷却されるため、溶接部の硬さを高める作用がある。
通常のスポット溶接では、溶接回数の増加に伴い、溶接電極の先端が溶解したり、又は衝撃によって電極先端部が変形若しくは劣化して、電極と鋼板表面との接触面積が増加することがあり、その結果、一定の溶接電流で溶接をする場合であっても、電流密度が低下して目的とする適正ナゲット径が得られなくなるという問題がある。このため、従来のスポット溶接方法では、溶接開始から上述した適正ナゲット径が得られなくなるまでの時間を溶接電極の寿命とし、溶接電極を新品のものに交換するか、又はドレッシングと呼ばれる溶接電極の先端形状の研削処理を行っている。
このスポット溶接時の電極寿命の長さは、鋼板の種類にも影響され、特に鋼板表面に亜鉛合金系めっき処理が施された亜鉛合金系めっき鋼板では、スポット溶接時に電極先端部が接触する部分において亜鉛合金系めっき中のめっき成分が溶出し、銅製の電極素材との合金化反応が進行するため、めっきが施されていない裸鋼板に比べてスポット溶接時における電極先端部の損耗及び変形が顕著となる。
このため、従来の亜鉛合金系めっき鋼板のスポット溶接方法では、溶接電極の寿命延長が技術課題となっていた。亜鉛合金系めっき鋼板に限らず、通常のスポット溶接では、一般に、目的とするナゲット径の下限値dnは、鋼板の板厚t(mm)に応じて設定される。具体的には、ナゲット径の下限値dnは4√t(mm)に設定され、この値以上のナゲット径が得られるように溶接電流を設定して、スポット溶接を開始する。このときの溶接電流は、予め溶接電流値とナゲット径及びスパッタの発生有無との関係を調べておき、これらの結果を基に設定される。その方法としては、予め溶接電流を変えてスポット溶接した継手の溶接部を切断し、その水平断面を顕微鏡観察して溶接電流値とナゲット径及びスパッタの発生状況との関係を求めておき、その結果に基づき、実際の溶接電流Iが溶接時にスパッタが発生する溶接電流Ieよりも低くなるように、例えば0.95×Ieに設定する方法等がある。
従来、実際の溶接電流Iを、スパッタが発生する溶接電流Ieよりも低く設定する理由は、概ね以下の通りであると考えられる。即ち、スポット溶接時のちり(スパッタ)は、鋼板の重ね合わせ面における接触抵抗の変動によって電流密度が局所的に変動したり、過剰な電流が通電された場合に鋼板の重ね合わせ面に形成された溶融金属が抑えられず周囲の空隙に飛散したりすることによって発生する。溶接部でスパッタが発生すると、ナゲット形状のばらつきが生じ、ナゲット径が減少する場合があると共に、鋼板の間隙端部から飛散したスパッタの付着により、継手の外観性が損われるため好ましくない。このような理由から、従来の亜鉛合金系めっき鋼板のスポット溶接方法においては、溶接電流はスパッタが発生する溶接電流Ieよりも低く設定することが常識とされていた。
また、従来、亜鉛合金系めっき鋼板のスポット溶接時の電極寿命向上方法として、電極先端部にチップを埋め込み、先端全面をNiコーティングすることで、溶接時の電極先端部と亜鉛合金系めっき成分との合金化反応を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。更に、従来、亜鉛合金系めっき鋼板のスポット溶接における電極寿命を評価するための試験方法として、通電時の溶接電流及び電圧波形データから求めた電気抵抗値に基づいて、スポット溶接性を評価する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載の評価方法は、従来の連続打点試験に比べて短時間で電極寿命を予測することができる。
特開平5−305456号 特開2005−334935号
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、溶接電極の先端部を特殊な加工を施す必要があるため、溶接電極のコストが増加すると共に、ドレッシング加工等の切削加工によって再利用することも困難であり、工業的に好ましくないという問題点がある。また、特許文献2に記載の方法は、電極寿命を予測することはできても、亜鉛合金系めっき鋼板のスポット溶接時に適切な溶接電流を決定し、電極寿命を向上させることはできないという問題点がある。
上述の如く、亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法においては、溶接効率及び溶接作業性の改善、並びに継手製造コストの低減の観点から、溶接電極の寿命を向上し、溶接電極の交換又はドレッシング加工の回数を低減することが望まれているが、現在、特殊な電極を使用せず、簡便な溶接方法又は溶接条件の変更によって、溶接電極の寿命を向上することができる方法は、提案されていない。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであって、特殊な電極を使用せず、簡便な溶接方法又は溶接条件の変更によって、溶接電極の寿命を向上することができる亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法を提供することを目的とする。
本発明に係る亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法は、片面あたりの付着量が10〜200g/mの亜鉛系合金めっきが施され、板厚が0.7〜2.3mmの亜鉛系合金めっき鋼板を重ね合わせてスポット溶接する方法であって、前記亜鉛系合金めっき鋼板の板厚をt(mm)としたとき下記数式1により求められる最適ナゲット径の下限値dn(mm)が得られる溶接電流最小値I(kA)、電極先端部に溶着が発生する溶接電流最小値I(kA)、及び下記数式2を満足するk値に基づき、下記数式3により溶接電流値I(kA)を設定して溶接を行うことを特徴とする。
本発明によれば、亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法において、最適ナゲット径の下限値dn(mm)が得られる溶接電流最小値I(kA)、電極先端部に溶着が発生する溶接電流最小値I(kA)及びk値に基づいて溶接電流値I(kA)を設定しているため、特殊な電極を使用せずに、簡便な溶接方法又は溶接条件の変更によって、従来の方法よりも溶接電極の寿命を向上することができる。これにより、亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接時における電極寿命を向上し、溶接電極の交換又はドレッシング加工の回数を低減できため、溶接効率及び溶接作業性を改善し、継手製造コストを低減することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明の亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法(以下、単に溶接方法ともいう)は、少なくとも2枚の亜鉛系合金めっき鋼板を重ね合わせた後、その上下を1対の電極チップで挟み込み、この重ねあわされた亜鉛系合金めっき鋼板を電極により加圧しつつ通電することにより、その重ね合わせ面に適正な大きさのナゲットを形成するスポット溶接を、所定の間隔をあけて溶接方向に連続的に行う亜鉛系めっきのスポット溶接を前提とする。また、本発明の溶接方法は、このような亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接の連続溶接において、予め求めた最適ナゲット径の下限値dnが得られる溶接電流最小値I、及び電極先端部の溶着が発生する溶接電流最小値Iに基づいて、実際の溶接電流Iを設定し、この溶接電流Iの適正化により溶接開始から所定電流では適正なナゲット径が得られなくなるまでの電極寿命を従来よりも向上することを技術思想とする。
先ず、本発明の溶接方法における溶接電流Iの設定方法について説明する。本発明の溶接方法においては、溶接電流Iを設定する前に、予め被溶接材と同じ亜鉛系合金めっき鋼板を、溶接電流を変化させてスポット溶接し、得られた各溶接継手の溶接部を切断してその断面を顕微鏡観察し、溶接電流値とナゲット径及びスパッタ発生状況との関係を求める。
図1は横軸に溶接電流値Iをとり、縦軸にナゲット径dnをとって、亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接時における溶接電流値Iとナゲット径dn及びスパッタ発生状況との関係を示すグラフ図である。なお、図1に示す値は、被溶接材として、板厚が1mmで、引張り強さが270MPaの鋼基材の表面に、片面あたりの付着量を40g/mとして亜鉛めっきを施した溶融亜鉛めっき鋼板を使用し、溶接電極には、先端部の直径が6mmで、クロム銅製のドームラジアス(DR)型形状の電極チップを使用し、電極の加圧力を2.45kN、通電時間を12cycles、スクイズ時間を25cycles、ホールド時間を7cyclesとして、スポット溶接したときの値である。なお、通電時間における50cyclesは1秒間である。
一般に、最適ナゲット径の下限値dnは、亜鉛合金系めっき鋼板に限らず、スポット溶接全般において、被溶接材の板厚t(mm)との関係から、下記数式4により求められる。本発明の溶接方法においても同様に、被溶接材である亜鉛系合金めっき鋼板の板厚をtmmとして、下記数式4により最適ナゲット径の下限値dnを求める。
また、図1に示すように、スポット溶接時の溶接電流値Iが増加すると、溶接時に形成されるナゲット径も大きくなり、溶接電流値がIとなったときに、上記数式4により求められる最適ナゲット径の下限値dnに達する。更に、溶接電流値Iを増加させ、溶接電流値がIに達すると、溶接部にスパッタが発生し始め、それ以上に溶接電流値Iを増加させても溶接時に形成されるナゲット径はほとんど増大せず、銅製電極の先端部と鋼板表面のめっき成分との合金化反応が進行する。そして、溶接電流値がIに達すると、電極先端部が合金化反応により鋼板表面に溶着してしまい、溶接不能となる。
そこで、本発明の溶接方法においては、図1に示すスポット溶接における溶接電流Iとナゲット径dn及びスパッタ発生状況との関係から、上記数式4により求められる最適ナゲット径下限値dnが得られる溶接電流最小値I(kA)、及び電極先端部の溶着が発生する溶接電流最小値I(kA)を求めた後、これらの電流値I,Iと下記数式5を満足するk値に基づき、下記数式6により、実際のスポット溶接における溶接電流値Iを設定して溶接を行う。これにより、電極寿命を向上することができる。
図2は横軸にk(=(I−I)/(I−I))値をとり、溶接電流値をIとしてスポット溶接した場合の連続打点試験における電極寿命N値をとって、k値と電極寿命N値との関係を示すグラフ図である。また、図3は横軸に打点数をとり、縦軸にナゲット径dnをとって、連続打点試験時のナゲット径dnの挙動を示すグラフ図である。なお、図2に示すN値は、板厚が0.8mmで、片面あたりのめっき付着量が異なる3種類の亜鉛合金系めっき鋼板で、前述の図1と同じ溶接条件で連続打点試験を行い、図3に示す連続打点試験時のナゲット径dnを測定し、その結果から求めた最適ナゲット径下限値dnが得られる限界打点数N(スポット溶接回数)である。
最適ナゲット径下限値dnが得られる溶接電流最小値I(kA)、及び電極先端部に溶着が発生する溶接電流最小値I(kA)は、被溶接材である亜鉛合金系めっき鋼板の片面あたりのめっき付着量及び板厚によって異なるが、本発明の溶接方法においては、電流値I,Iが同じである亜鉛合金系めっき鋼板をスポット溶接する場合には、上記数式6におけるk(=(I−I)/(I−I))の値が0.6〜0.9の範囲になるように、溶接電流値Iを設定する。これにより、スポット溶接の連続打点試験における電極寿命N値を十分に向上することができる。
k値が0.6未満又は0.9よりも大きい場合、適正電流範囲が拡大して電極寿命の向上による効果よりも、スポット溶接部での熱負荷増大による電極先端部の損耗促進効果の方が大きくなり、結果として電極寿命の向上は期待できなくなる。特に、k値が0.6未満の場合は、溶接電流の設定値Iと最適ナゲット径下限値dnが得られる溶接電流の最小値Iとの差が小さくなるため、スポット溶接回数(打点数)が増加するに従い電極先端部の損耗に起因する接触断面積が増加すると共にこれに起因する電流密度低下が生じ、溶接開始から最適ナゲット径の下限値dnに到達するまでの電極寿命が小さくなる。このようなスポット溶接回数(打点数)の増加に伴う電極先端部の損耗に起因する接触断面積の増加及びこれに起因する電流密度低下が一定速度で進行する場合、上記数式6におけるk値を大きくすること、即ち、溶接電流の設定値Iを高く設定することにより、溶接開始から最適ナゲット径の下限値dnに到達するまでの電極寿命は高くなることが予想される。
しかしながら、本発明者が検討した結果、図2に示すように、溶接電流値Iがスパッタが発生し始める溶接電流値Iよりも高く、k値が0.9を超える領域では、溶接電流の設定値Iがスパッタが発生し始める溶接電流Iよりも高くなるため、急減なスパッタ発生により鋼板端部の間隙から飛散するスパッタ量が多くなり、電極先端表面とめっき鋼板表面との合金化反応による電極先端部の損耗が早まることが確認された。その結果、図2に示すように、k値が0.9よりも大きい場合には、スポット溶接回数(打点数)の増加に伴う電極先端部の損耗に起因する接触断面積の増加及びこれに起因する電流密度低下が急激な速度で進行し、溶接開始から最適ナゲット径の下限値dnに到達するまでの電極寿命は小さくなる。従って、電極寿命を十分に向上させるためには、上記数式6におけるk(=(I−I)/(I−I))値が、上記数式5を満足するように、即ち、k値が0.6〜0.9の範囲内になるように、スポット溶接における溶接電流値Iを設定し、溶接を行う必要がある。
なお、従来の亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法においては、溶接電流値Iは、図2に示す溶接時にスパッタが発生し始める溶接電流値Iよりも低い値、具体的には0.95×I(kA)に設定されていた。本発明者の実験結果によれば、この方法で溶接電流値を設定した場合、上記数式6におけるk(=(I−I)/(I−I))値が0.45〜0.55のときの溶接電流値Iに相当する。このように、従来の溶接電流の設定条件では、k値が上記数式5で示す範囲よりも低くなり、その結果、図3に示すように、連続打点試験による電極寿命N値が目標レベルに達成できないことは明らかである。
また、図2には、片面あたりのめっき付着量が250g/mと後述する適正範囲から外れた亜鉛系合金めっき鋼板(板厚0.8mm)をスポット溶接した場合の例も併せて示しているが、亜鉛系合金めっき鋼板における片面あたりのめっき付着量又は板厚が後述する適正範囲から外れている場合は、k値が0.6〜0.9の範囲を満足していても、上述したスポット溶接の連続打点試験における電極寿命を十分に向上することはできない。そこで、本発明の溶接方法においては、亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接時の電極寿命を向上するため、上述した方法で溶接電流値を設定すると共に、被溶接材である亜鉛系合金めっき鋼板における片面あたりのめっき付着量及び板厚を以下の範囲に限定する。
片面あたりのめっき付着量:10〜200g/m
亜鉛系合金めっき鋼板の鋼板表面に施されている亜鉛系合金めっきの片面あたりの付着量が200g/mよりも多くなると、スポット溶接時に電極先端部とめっきとの合金化反応の発生が顕著になり、極先端部の損耗速度が大きくなるため、電極寿命の短縮化が顕著となる。一方、亜鉛系合金めっき鋼板における片面あたりのめっき付着量の下限は、特に限定する必要はないが、片面あたりのめっき付着量が10g/mよりも少ない亜鉛系合金めっき鋼板では、スポット溶接時に電極先端部とめっきとの合金化反応が殆ど起こらなくなるため、従来の溶接方法で対応可能である。即ち、上述した上述した方法で溶接電流値Iを設定することによる電極寿命の向上効果は、片面あたりのめっき付着量が10g/m以上の亜鉛系合金めっき鋼板をスポット溶接する場合に顕著に発揮される。以上の理由から、本発明の溶接方法においては、片面あたりのめっき付着量が10〜200g/mの亜鉛系合金めっき鋼板を被溶接材とする。
板厚:0.7〜2.3mm
亜鉛系合金めっき鋼板の板厚が0.7mmよりも薄い場合は、スポット溶接時の発熱中心(鋼板の重ね合わせ面近傍)と電極との距離が短くなり、電極先端部において熱負荷による損耗が急激に進行し、電極寿命の延長効果が充分に得られなくなる。一方、亜鉛系合金めっき鋼板の板厚が2.3mmよりも厚い場合は、鋼板の剛性が高くなるため、スポット溶接する際に必要な加圧力が大きくなり、スポット溶接時において電極と鋼板との衝撃が高まるため、電極先端部の損耗が急激に進行し、上述した効果が十分に得られなくなる。以上の理由から、本発明の溶接方法においては、被溶接材である亜鉛系合金めっき鋼板の板厚を0.7〜2.3mmとする。
上述の如く、本発明の溶接方法においては、被溶接材である亜鉛系合金めっき鋼板における片面あたりのめっき付着量を10〜200g/m、板厚を0.7〜2.3mmとし、予め、この亜鉛系合金めっき鋼板と同じ鋼板をスポット溶接して、図1に示すようなスポット溶接における溶接電流値Iとナゲット径dn及びスパッタ発生状況との関係を調べて、上記数式4により求められる最適ナゲット径下限値dnが得られる溶接電流最小値I(kA)及び電極先端部の溶着が発生する溶接電流最小値I(kA)を求め、更に、上記数式5を満足するようにk値を設定し、これらの値に基き、上記数式6により一義的に決定される溶接電流値Iを実際の溶接電流としているため、亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接時の電極寿命を、従来の溶接方法よりも大幅に向上することができる。
なお、従来、亜鉛合金系めっき鋼板のスポット溶接方法において、電極寿命を向上させる目的から、溶接電流の設定についての検討は試みられておらず、少なくともスパッタが発生し始める溶接電流I以上の溶接電流の領域において、電極寿命が向上することについてはの報告は一切なされていない。
また、本発明の溶接方法においては、上述した条件以外の条件については特に限定する必要がなく、通常行なわれているスポット溶接の条件で、本発明の目的とする電極寿命向上効果が発揮される。更に、本発明の溶接方法で用いられる溶接装置は、上下1対の電極チップを有し、この1対の電極チップで溶接する部分を挟み、加圧及び通電することができ、加圧力及び溶接電流値を夫々任意に設定可能な加圧力制御装置及び溶接電流タイマーが備わっているものを使用することができる。その際、エアシリンダー及びサーボモータ等の加圧機構、電流制御機構、並びに定置式及びロボットガン等の型式等は特に限定されない。
溶接電極も特に限定する必要はなく、通常のスポット溶接で使用されるJIS C 9304(1999)で規定された軸対称で電極先端にR部を有するドームラジアスDR型、CR型及びR型等の電極であればよい。また、これらの電極以外にも、CF型電極のように先端部が平面であって、損耗すると先端面積が拡大する形状のものであれば使用することができる。更に、被溶接材である鋼板は、表面に亜鉛系合金めっきが施されているものであれば、鋼基材の強度は特に限定されない。ただし、溶接時の加圧力を母材強度で補正する場合もあるので、あまり母材強度が大きくなると、それに伴って加圧力が大きくなるため、電極と鋼板との衝撃力による電極損耗が、本発明の効果を打ち消してしまうことがある。このため、鋼基材の引張強さ(TS)は980MPa程度以下であることが望ましく、そうすることにより、本発明を適用することによる顕著な効果が得られる。
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明の作用及び効果について更に詳細に説明する。本実施例においては、被溶接材として、板厚が0.6mmで片面あたりのめっき付着量が45g/m、板厚が0.8mmで片面あたりのめっき付着量が45g/m,100g/m,250g/m,板厚が0.1.6mmで片面あたりのめっき付着量が45g/mの5種類の亜鉛合金系めっき鋼板を準備し、これらを2枚ずつ重ね合わせて、下記表1に示す条件でスポット溶接する連続打点試験を実施し、スポット溶接時の電極寿命を評価した。その際、連続打点試験に先立ち、予め下記表2に示す溶接条件で実施例及び比較例と同じ亜鉛合金系めっき鋼板をスポット溶接し、そのナゲット断面観察により測定して求めた最適ナゲット径下限値dnが得られる溶接電流最小値I、電極先端部の溶着が発生する溶接電流最小値I、及びk値に基いて溶接電流Iを設定した。また、連続打点試験実施時の溶接条件は下記表2に記載されているもの以外の項目については、下記表1と同じにした。更に、スポット溶接機には、定置式直上加圧型の単相交流溶接機を用いた。その結果を下記表3に示す。なお、下記表3には、各鋼板の片面あたりのめっき付着量及び板厚、並びに電流値I、I、I及びk値も併せて示す。また、下記表3に示すN値は、連続打点試験によって、溶接開始からナゲット径が最適ナゲット径下限値dn(=4√t)が得られるまでの限界打点数(スポット溶接回数)の測定値である。
上記表3に示すように、亜鉛合金系めっき鋼板における片面あたりのめっき付着量、板厚及びk値が本発明の範囲内である実施例1〜6の溶接方法では、鋼板の片面あたりのめっき付着量及び板厚によって電極寿命の長さは異なるが、電流値I,Iが同じ条件である亜鉛合金系めっき鋼板をスポット溶接する場合で比較した場合、電極寿命Nを十分に向上できた。
一方、比較例1〜6の溶接方法では、k値が本発明の規定範囲から低く外れているため、電流値I,Iが同じ条件である亜鉛合金系めっき鋼板をスポット溶接する場合、前述した発明例1〜6の溶接方法における電極寿命N値に比べて低い結果となった。また、比較例7〜12の溶接方法は亜鉛合金系めっき鋼板の片面あたりのめっき付着量又は板厚の何れかが本発明の規定範囲から外れているため、k値が本発明範囲内である比較例8,11の溶接方法、及びこれを外れた比較例7,9,10,12の溶接方法の何れも電極寿命N値が、前述した各実施例の溶接方法に比べて低い結果であった。
横軸に溶接電流値Iをとり、縦軸にナゲット径dnをとって、亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接時における溶接電流値Iとナゲット径dn及びスパッタ発生状況との関係を示すグラフ図である。 横軸にk(=(I−I)/(I−I))値をとり、溶接電流値をIとしてスポット溶接した場合の連続打点試験における電極寿命N値をとって、k値と電極寿命との関係を示すグラフ図である。 横軸に打点数をとり、縦軸にナゲット径dnをとって、連続打点試験時のナゲット径dnの挙動を示すグラフ図である。 スポット溶接方法を模式的に示す断面図である。 横軸に時間をとり、縦軸に加圧力及び電流値をとって、スポット溶接における加圧力と溶接電流との関係を示すグラフ図である。
符号の説明
1a,1b 電極
2 ナゲット
3a,3b 鋼板
4 熱影響部
a スクイズ時間
b 通電時間
c ホールド時間
dn ナゲット径

Claims (1)

  1. 片面あたりの付着量が10〜200g/mの亜鉛系合金めっきが施され、板厚が0.7〜2.3mmの亜鉛系合金めっき鋼板を重ね合わせてスポット溶接する方法であって、
    前記亜鉛系合金めっき鋼板の板厚をt(mm)としたとき下記数式(A)により求められる最適ナゲット径の下限値dn(mm)が得られる溶接電流最小値I(kA)、電極先端部に溶着が発生する溶接電流最小値I(kA)、及び下記数式(B)を満足するk値に基づき、下記数式(C)により溶接電流値I(kA)を設定して溶接を行うことを特徴とする亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法。
JP2006213723A 2006-08-04 2006-08-04 亜鉛系合金めっき鋼板のスポット溶接方法 Withdrawn JP2008036672A (ja)

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