JP3694845B2 - 紙ロール及び紙ロールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コアに紙匹を巻き取って製造される紙ロール製品において、コアに巻き取られることによって生じる巻癖カールを改善した紙ロールと該紙ロールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙のカールは、紙をシート状に裁断した状態での形状が平板状とならずに、ある曲率で湾曲している状態をいう。カールの大きな紙は、印刷機や複写機、プリンタなどでの走行性や集積性にトラブルを起こす。そのため、シート状に断裁した状態で平板状となるように、あるいはこのシートを使用する装置に見合った範囲のカールに調整する工夫がなされている。
【0003】
カールは、本発明で解決しようとしている巻癖カールのほかに、平面方向の寸法変化が紙匹の表裏で相違することによって生じるカールがある。すなわち、繊維配向の表裏差、微細繊維や填料の分布の表裏差などが存すると、水分に対する伸縮率が表と裏で異なるため、吸脱湿によりカールが発生する。あるいは、印刷時の湿し水や電子写真方式の複写機のトナー定着用ヒートロールは表裏の水分差を発生させるために、紙の表裏での寸法変化に差が生じてカールを発生させる原因となる。なお、抄紙機で抄き上げた状態においても、抄造条件によってはカールが発生する。
【0004】
この種の紙匹の表裏差によって生じるカール現象は、これまでにも多くの検討がなされており、ある程度満足な制御が行えるようになっているのに対し、本願発明で解決しようとしている巻癖カールに関しては、未だ十分な解決策が存せず、唯一デカーラー装置により巻癖カールの除去を行う手段が講じられているにすぎない。
【0005】
巻癖カールは、紙匹を紙管などのコアにロール状に巻き付けた状態で保存しておくことにより、その巻き付け状態の歪みが紙匹に残留することにより発生する。したがって、保管期間が長期となるほど、また紙の厚さが大きい、すなわち坪量が大きいほど巻癖カールが大きくなることが容易に理解される。また、紙ロールの外側部分よりも巻芯付近に位置した部分ほど歪みが大きく巻癖が生じやすくなる。
【0006】
一般に機械抄き紙は、抄造時に抄紙機のリールで巻き取られたのち1次ワインダにより所望の幅員にスリッタナイフによって切断されながら巻き取られ、紙ロールとして保管される。この保管期間中に巻癖カールが形成されることになる。たとえば、24時間保管した紙ロールでは、図5に示すように巻芯に近づくほど著しい巻癖が形成される。紙ロール製品としては、この1次ワインダによって巻き取られた状態で出荷されるものもあるが、さらに2次ワインダで必要に応じて所望の幅員に切断処理しながら巻き替えられて出荷されるものもある。2次ワインダで処理した後に出荷された紙ロール製品では、巻芯部付近で新たに巻癖が形成されるとともにこの紙ロール製品の外側部分には1次ワインダ処理後の保管期間中で形成された巻癖が十分に除去されずに残留する。たとえば、2次ワインダ処理後10日間経過した後の紙ロールの巻癖は図6に示す状態となっている。すなわち、この紙ロール製品は、巻芯側部分と外側部分との両方に巻癖が形成されている。
【0007】
上述した従来の紙ロール製品を連続的に印刷を施した後にシート状に断裁して使用する場合には、紙ロールに顕著な巻癖カールが存在するため、裁断されたシートには巻癖カールによる端部の跳ね上がりが形成され、走行不良を引き起こしたり、集積時に大きなズレを生じるなどして作業の安定性の阻害となる。特に、坪量の高い紙匹ほど巻癖の程度が悪いため、巻癖のない紙ロール製品が要望されている。
【0008】
このような走行不良や集積不良を起こさないためには、カール曲率の絶対値が3m-1以下であることが必要である。なお、ここでカール曲率とは、図3のようにカールが形成されたシート状の紙のカール状態が水平面上に投影されるように起立させ、そのカール半径を測定し、数1により求められた値である。
【数1】
(カール曲率)=1/(カール半径)
ただし、紙ロールの内向きのカールを正(+)、外向きのカールを負(−)の符号を付して表すものとする。
【0009】
従来では、前述したようにカールの除去処理として、例えば実開平5−51655号公報に記載されたカール除去機構によってデカーラー処理が施されるようにしてある。この実開平5−51655号公報に記載された考案では、ロール紙に逆カールを付与するための断面ほぼV字型のペーパーガイドが設けられ、ロール紙を供給する際にこのペーパーガイドを通過させることにより、ロール紙に形成されている巻癖カールの方向とは逆の方向に紙匹を折曲して巻癖カールを除去するものである。しかしながら、この種の従来のデカーラー装置では、例えばカール曲率で5m-1以上の著しい巻癖が形成された紙では、紙を大きく折曲させるなどの厳しい条件下でカール除去を行う必要があるため、紙粉が発生したり紙面の荒れを生じさせたりして印刷品質に悪影響を及ぼすおそれがある。さらに、一本の紙ロール内の紙匹の巻癖カールは、図5や図6に示したように、ロールの外側から巻芯側にかけて大きく変化しているため、紙ロールから紙匹を繰り出していくに従って、カール形状を測定しながらデカーラー条件を変更する必要が生じる。
【0010】
また、紙粉の発生や紙面の荒れを抑制するために、ペーパーガイドの代りに小径のロールを用いて逆カールを付与することによりカールを除去する機構があるが、カールの除去効果が小さく、巻癖を十分に取り除くことができず、一般には利用されていない。
【0011】
すなわち、上述した従来のデカーラー装置などでは、紙粉や紙面の荒れの発生なしにロール全般にわたってカール曲率が3m-1以下の紙ロールを提供することは極めて困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、紙面を損傷したり紙粉を発生させたりすることなく、紙ロール全般にわたって巻癖カールが改善された紙ロール及び紙ロールの製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る紙ロールの製造方法は、製造された紙匹を逆巻き替え処理を行い、次いで2回目で順巻き替え処理を行うことにより、巻き替え処理後の巻き面が処理前の巻き面と反対面となる巻き付けを行い、かつ該順巻き替え処理後のコアの外径が当該紙匹の厚さの300〜1200倍であることを特徴としている。
【0014】
ここで、製造された紙匹とは、抄紙機で抄きあげられたり塗工機で塗工されて製造された紙あるいは塗工紙を紙管などのコアに巻き取った状態をいう。例えば、抄紙機のリールパートでポープリールに巻き取り、直ちに1次ワインダで紙管に巻き替える場合には、1次ワインダで巻き取った状態であり、塗工機で塗工後、リールパートで直接紙管に巻き取る場合には、そこで巻き取った状態の紙ロールのことである。
【0015】
発明者は、巻癖の付いた巻き取りの巻芯側部分が、再び巻芯側部分でかつ巻面が逆になるように巻き付けられることによって、巻癖カールがほぼ確実に解消されると共に、この巻き替え処理は紙の抄造後24時間以上好ましくは72時間以上経過後に実施することにより、巻癖カールの改善が効果的に行われることを見出した。さらに、しかる処理を行った紙ロールに限り、数ケ月の長期間保管後であっても巻芯部分以外の部分には問題となるほどの巻癖カールが形成されないことを見出した。
【0016】
巻き替え処理の回数を2回とした場合、送り側の紙ロールの外側面が受け側の紙ロールの外側面となるように巻き替える順巻き替えと、送り側紙ロールの外側面が受け側紙ロールの内側面となる逆巻き替えとが1度ずつ行われるようにすれば、処理前の巻面と処理後の巻面とが反転することになる。
【0017】
また、この発明に係る紙ロールは、前記紙ロールの製造方法により製造されるもので、コアに紙匹を巻き取ることによってなる紙ロールであって、紙ロール中の式(I)で表される領域における紙匹を断裁して得られるシートのカール曲率の最大値と最小値の差が、3m -1 以下であることを特徴としている。
2×r≦R≦R max (I)
r:コアの半径
R:紙ロールの中心から注目する紙匹までの距離(半径)
R max :紙ロールの半径(最外層)
【0018】
ここで、カール曲率とは前記数1によって求められる値である。
【0019】
また、本発明でいう巻き付けるコアの外径が紙匹の厚さの300〜1200倍とは、巻癖の改善が必要となる条件を示しており、本発明者が検討を重ねた結果、巻き付けるコアの外径が紙匹の厚さの1200倍以上の場合には、生じる巻癖カールは小さく、巻癖カールの改善処理の必要性も少ない。一方、巻き付けるコアの外径が紙匹の厚さの300倍以下の場合には、該コアに巻き付けた時に紙層内に形成する歪みが非常に大きく、紙匹に折れや座屈が発生し本発明による方法でもカール曲率を3m -1 以下に維持することが困難である。
【0020】
一方、印刷機やプリンター等で走行性を良くするためには、必ずしも用紙のカール曲率が0m -1 である必要はなく、むしろそれぞれの装置で良好な走行性・集積性を得るための最適なカール曲率が存在する。そして一般には、走行性や集積性にトラブルを起こさないためには、その最適カール曲率の±1 . 5m -1 以内、好ましくは±1 . 0m -1 以内のカール曲率を有するシート紙であることが必要とされる。また、一般に、走行性や集積性に問題のないカール曲率の絶対値は、概して3m -1 以下である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る紙ロール及び紙ロールの製造方法を具体的に説明する。
【0022】
図1はこの紙ロールの製造方法であって巻き替え処理回数を2回とした場合を説明するもので、図1(a)に示すように、抄紙機によって抄造されてリールに巻き取られた紙ロール10を、抄造後約1時間後に、図1(b)に示すように1次ワインダで処理して紙ロール11を形成する。なお、この1次ワインダで使用するコア11a には、外径が紙ロール11の紙匹の厚さの300〜1200倍のものを使用してある。1次ワインダで処理されたこの紙ロール11を約24時間保管した後、図1(c)に示すように、紙ロール11の外側面が内側面となるように逆巻き替えによる巻き替え処理を行って紙ロール12を形成する。
【0023】
ついで、上記紙ロール12に対して、図1(d)に示すように、速やかに該紙ロール12の外側面が外側面となるように順巻き替えの巻き替え処理を行って紙ロール13を形成する。このとき、紙ロール13を巻き付けるコア13a には、外径が紙ロール13を形成する紙匹の厚さの300〜1200倍のものを使用してある。
【0024】
1次ワインダで処理後約24時間保管された紙ロール11では、例えば図5に示されているように、巻芯に近づくほど著しい巻癖カールが形成されている。
【0025】
この図1に示す方法によって製造される場合には、逆巻き替えによる1回目の巻き替え処理を行った状態では、紙ロール11の巻癖の大きな巻芯側部分が一旦紙ロール12の外側部分にカールの内側面が外側を指向するように巻き付けられることになり、元の巻癖カールを減少させる方向ではあるが、その変形量は小さく、短時間では巻癖カールの減少量はさほど大きくない。他方、紙ロール11の外側部分は紙ロール12の巻芯側部分に巻き付けられ、紙ロール11の外側面が紙ロール12において内側面となる巻癖の形成が生じ、この新たに形成される巻癖は紙ロール12の状態での放置時間が長くなると悪化するため、速やかに2回目の巻き替え処理を行うことが好ましい(例えば、10時間以内)。
【0026】
そして、2回目の巻き替え処理が終了した状態では、前記紙ロール11に対して、その巻芯側部分が、紙の外側面と内側面とが反転して再び巻芯側部分に巻き付けられることになって紙ロール13が形成されることになる。このため、紙ロール11において形成された巻癖と、紙ロール13に巻き替えられたことによって形成された巻癖とが相殺され、巻癖の改善された紙ロールを得ることができる。さらに、この紙ロールの巻癖カールは、長時間の保存でも悪化しない。
【0027】
次に図2に示す紙ロール製造方法について説明する。図2も巻き替え処理回数を2回とした場合を説明するものである。抄造後約1時間経過した後1次ワインダで処理された紙ロール11をほぼ24時間保管した後、図2(c)に示すように、紙ロール11の外側面が外側面となるように順巻き替えによる巻き替え処理を行って紙ロール14を形成する。
【0028】
次いで、上記紙ロール14に対して、図2(d)に示すように、速やかに該紙ロール14の外側面が内側面となるように逆巻き替えの巻き替え処理を行って紙ロール15を形成する。このとき、紙ロール15を巻き付けるコア15a には、外径が紙ロール15を形成する紙匹の厚さの300〜1200倍のものを使用してある。すなわち、1次ワインダで処理されて形成された前記紙ロール11を、その巻芯側部分が、紙の外側面と内側面とが反転して再び巻芯側部分に巻き付けられることになって紙ロール15が形成される。
【0029】
この図2に示す方法によって製造された場合には、逆巻き替えによる1回目の巻き替え処理を行った状態では、紙ロール11の巻癖の大きな巻芯側部分が一旦紙ロール14の外側部分にカールの内側面が内側を指向するように巻き付けられることになり、その変形量は図1に示す方法による場合よりもさらに小さく、この時点における巻癖カールの減少量は僅かである。他方、紙ロール11の外側部分は紙ロール14の巻芯側部分に巻き付けられ、この紙ロール14の巻芯部分では紙ロール11の内側面が該紙ロール14の内側面となって新たに巻癖の形成が生じることになる。この新たに形成される巻癖は紙ロール14の状態での放置時間が長くなると悪化するため、速やかに2回目の巻き替え処理を行って巻癖の改善を図ることが好ましい。
【0030】
そして、2回目の巻き替え処理が終了した状態では、前記紙ロール11を、その巻芯側部分が、紙の外側面と内側面とが反転して再び巻芯側部分に巻き付けられることになって紙ロール15が形成されることになる。このため、紙ロール11において形成された巻癖と、紙ロール15に巻き替えられたことによって形成された巻癖とが相殺され、巻癖の改善されたほぼ平板状となった紙を得ることができる。
【0031】
【実施例】
以下、好ましい実施例に基づいて、この発明に係る紙ロール及び紙ロールの製造方法をより具体的に説明する。なお、本願発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
LBKP(c.s.f.440ml)95重量%とNBKP(c.s.f.520ml)5重量%とからなる木材パルプに対して、タルク/カオリンの比率が90/10の顔料7重量%、市販カチオン化澱粉 0.8重量%、硫酸バンド3重量%を添加調整後、長網抄紙機および多筒式ドライヤーを用いて坪量127.9g/m2の紙を抄造し、一旦ポープリールに巻き取って、ほぼ1時間経過後に1次ワインダにて外径106mmの紙管に紙幅1520mmの紙ロールを形成処理し、ほぼ72時間保管した紙ロールを、図1(c)に示すように、外径106mmの紙管に、外側面が内側面となるように逆巻き替えにより1回目の巻き替え処理を行う。ほぼ5時間経過後に、図1(d)に示すように、この紙ロールを外径106mmの紙管に外側面が外側面となるように順巻き替えにより2回目の巻き替え処理を行う。このときの巻き付け量は3950mで、紙ロールの半径は441mmであった。2回目の巻き替え処理後、10日間保管した後に、紙ロールの所定の半径位置においてA4版の大きさに裁断したシートを試料としてカール半径を測定しカール曲率を求めた。測定結果を表1に示してある。
【0033】
実施例2
実施例1と同様に抄造し、2回の巻き替え処理を行って、ほぼ30日間保管した後の紙ロールから採取した試料についてカール曲率を求めた。測定結果を表1に示してある。
【0034】
比較例1
実施例1と同様に抄造し、1次ワインダで処理を行った後ほぼ3日間保管した紙ロールを、その外側面が新たな紙ロールの外側面となるよう外径106mmの紙管に巻き替えを行い、ほぼ10日間保管した紙ロールから採取したシートを試料としてカール曲率を求めた。測定結果を表1に示してある。
【0035】
実施例3
実施例1と同様にして調整したパルプ懸濁液より長網抄紙機および多筒式ドライヤを用いて坪量157.0g/m2の紙を抄造し、実施例1と同様に、1次ワインダ処理後ほぼ3日間保管し2回の巻き替え処理を行なって、ほぼ10日間保管後の紙ロールから採取したシートを試料としてカール曲率を求めた。2回目の巻き替え処理後における巻き付け量は3975mで、紙ロールの半径は487mmであった。測定結果を表2に示してある。
【0036】
実施例4
実施例3と同様に抄造し、2回の巻き替え処理を行って、ほぼ30日間経過後の紙ロールから採取したシートを試料としてカール曲率を求めた。測定結果を表2に示してある。
【0037】
比較例2
実施例3と同様に抄造および1次ワインダ処理を行った後ほぼ3日間保管した紙ロールを、その外側面が新たな紙ロールの外側面となるよう外径106mmの紙管に巻き替えを行い、ほぼ10日間保管した紙ロールから採取したシートを試料としてカール曲率を求めた。測定結果を表2に示してある。
【0038】
カール曲率は、採取された試料を図3に示すように平面上に円筒状に起立させて、そのカール半径を測定し前記数1より求めた。
【0039】
次に、実施例1〜実施例4と比較例1、比較例2で得られたシート紙に関し、走行性や集積性、紙粉の発生など印刷適性の評価を行い、その結果を表3に示してある。それぞれの適性の評価は、以下の基準によって行った。
〈走行性の評価〉
得られた紙ロールについて事前印刷を施してシート状に裁断した後、集積されるまでの間での紙のカールによる走行不良の発生状況を観察し、下記に示す3段階で評価した。
○:走行不良は発生しない。
△:若干数の走行不良が見られるが実用上問題はない。
×:多数の走行不良が見られ実用上問題となる。
〈集積性の評価〉
得られた紙ロールについて事前印刷し、シート状に断裁した後の集積時での積み重なりの不良発生状況を観察し、次に示す3段階で評価した。
○:集積不良は発生しない。
△:若干数の集積不良が見られるが実用上問題はない。
×:多数の集積不良が見られ実用上問題となる。
〈デカーラー処理条件〉
得られた紙ロールに事前印刷を施しシート状に裁断した際に、著しい走行不良や集積不良を発生させないために必要なデカーラー処理(機械的なカール除去処理)の条件を示した。
〈紙粉の発生状況〉
得られた紙ロールに事前印刷を施した後に、デカーラー処理部および紙面上に付着した紙粉の状況を目視によって観察し、次に示す3段階で評価した。
○:紙粉の発生は見られない。
△:紙粉の発生が若干認められるが実用上問題はない。
×:紙粉の発生が著しく実用上問題となる。
〈印刷仕上り〉
事前印刷の仕上り具合を目視によって観察し、次の3段階で評価した。
○:良好である。
△:若干の面荒れ部分が見られるが実用上問題はない。
×:面荒れ部分が多発し実用上問題となる。
【0040】
表1〜表3に示した測定結果について考察する。表1より、比較例1に示した従来の方法によって製造された紙ロール製品では、紙ロールの外側部分および巻芯側部分で巻癖による著しいカールが形成されているが、実施例1と実施例2に示すように偶数回の巻き替え処理を行うことによってコア外径の2倍の径(紙ロールの半径で106mmの径)位置以内を除き、紙ロールの全般に亘って巻癖によるカールの曲率の変化が3m-1以下であると共にその絶対値が3m-1以下に改善されていることが判る。また表2より、高坪量品に関しても、従来品である比較例2に比べて、実施例3または実施例4による紙について巻癖が確実に改善されていることが判る。
【0041】
しかも、実施例1と実施例2又は実施例3と実施例4を比較して、偶数回の巻き替え処理後では長期間保管された状態であってもカール曲率の変化が小さく、長期間の巻き付け保管による巻癖の悪化が抑制されていることが判る。
【0042】
さらに、事前印刷機により事前印刷を施したときの印刷適性を評価する表3より、実施例1〜実施例4の何れもシート状に裁断した後の走行性や集積性が、比較例1および比較例2と比較して良好であり、カール除去のためのデカーラー処理が不要となりあるいは非常に弱い条件で行うことができ、紙粉の発生が少なく、印刷仕上りも良好であることが判る。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る紙ロール及び紙ロールの製造方法によれば、紙ロール製品をシート状に裁断する際に、裁断後の巻癖カールによる走行不良や集積不良などを防止するために従来施されていた裁断前のデカーラー装置等によるカール除去処理を省くことができる。また、カール除去処理を省くことによって、紙表面を荒らしたり、紙粉の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る紙ロールの製造方法による処理工程の一つの実施形態を説明するための概略図である。
【図2】この発明に係る紙ロールの製造方法による処理工程の他の実施形態を説明するための概略図である。
【図3】紙のカールを評価する方法を説明するための概略の斜視図である。
【図4】紙のカールを評価する従来の方法を説明するための概略の正面図である。
【図5】1次ワインダでの処理後ほぼ24時間経過したときの紙ロールにおいて、紙が巻き付いている位置と巻癖のカール曲率との関係を示す図である。
【図6】2次ワインダでの処理後ほぼ10日間経過したときの紙ロールにおいて、紙が巻き付いている位置と巻癖のカール曲率との関係を示す図である。
【符号の説明】
10 ポープリールに巻き取られた状態の紙ロール
11 1次ワインダ処理によって形成された紙ロール
12、14 第1回目の巻き替え処理によって形成された紙ロール
13、15 第2回目の巻き替え処理によって形成された紙ロール
11a、12a、13a、14a、15a コア
【表1】 【表2】 【表3】
Claims (5)
- 製造された紙匹を逆巻き替え処理を行い、次いで2回目で順巻き替え処理を行うことにより、巻き替え処理後の巻き面が処理前の巻き面と反対面となる巻き付けを行い、かつ該順巻き替え処理後のコアの外径が当該紙匹の厚さの300〜1200倍であることを特徴とする紙ロールの製造方法。
- コアに紙匹を巻き取ることによってなる紙ロールであって、請求項1に記載の紙ロールの製造方法により製造され、紙ロール中の式(I)で表される領域における紙匹を断裁して得られるシートのカール曲率の最大値と最小値の差が、3m -1 以下であることを特徴とする紙ロール。
2×r≦R≦R max (I)
r:コアの半径
R:紙ロールの中心から注目する紙匹までの距離(半径)
R max :紙ロールの半径(最外層)
ただし、コアの方向を内側としたカールの曲率を(+)とする。 - 式(I)で表される領域における紙匹を断裁して得られるシートのカール曲率の最大値と最小値の差が2m-1以下であることを特徴とする請求項2に記載の紙ロール。
- 式(I)で表される領域における紙匹を断裁して得られるシートのカール曲率の絶対値が3m-1以下であることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の紙ロール。
- 坪量が80g/m2以上である紙匹からなる請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の紙ロール。
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