JP3694570B2 - プロジェクタ用反射型スクリーン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、OHP、スライド、映写機等のプロジェクタから投影された画像を反射光として写し出すプロジェクタ用反射型スクリーンに関し、特にパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)画像等の静止画像の映写に好適なプロジェクタ用反射型スクリーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より反射型のスクリーンとして、プロジェクタからの光を反射する反射層と反射された光を拡散するための光拡散層とを備えた二層の反射型スクリーンが知られている。このような二層の反射型スクリーンでは、反射層はアルミ蒸着層或いはアルミペースト塗布層からなり、この反射層で反射された光をさらに光拡散層で拡散することにより、比較的広い視野角でぎらつきのない画像を見ることができる。しかし光拡散層によって反射光が拡散されるために、一般にSG(スクリーンゲイン)値が低く、特に明室での観賞に用いた場合は外光の影響でコントラストが低下するという問題があった。
【0003】
これに対し、反射輝度を改善するためにノンリーフィングタイプのアルミニウム鱗片とパール顔料鱗片とを混合したペーストを反射層に用いた技術も提案されている(特開平3−119334号)。しかし、このような反射型スクリーンでは反射層の上に光拡散層を設けない場合には、スクリーン表面の光沢が大きくなりぎらつきの問題が残る。
【0004】
一方、近年の液晶プロジェクタ側の開発により、非常に光源が明るく、外光との差が大きなプロジェクタが製造されるようになり、このようなプロジェクタを用いた場合には反射型フィルムとして、SG値よりも輝度むらのないこと、即ち水平光量や周辺光量が優れていることが要求されるようになっている。特にスクリーンの大型化に伴い、広い角度で明るい映像を見ることができるスクリーンが必要とされている。このため、支持体上に、低屈折率の光拡散剤を分散させた反射層を形成してなる反射型スクリーン(特開平6-14846号)や、光輝性顔料を含む反射層に、マイカ粉や酸化ケイ素粉等の拡散剤と光輝性顔料の沈降を防止するチクソトロピック剤とを添加した映写スクリーン(特開平8-231904号)が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のスクリーンは光の照射された部分(明部)が背景である暗部に対し高コントラストとなるように設計されており、テレビやビデオ等の動画像に適しているが、パソコン画像のように文字が暗部として表示され、白地(明部)の多い静止画像では、暗部がスクリーン全体にわたって明瞭に写し出されることが必要となる。また近年の反射型スクリーンの大型化に伴い、特に水平光量や周辺光量の優れたスクリーンが要求されているが、従来のスクリーンでは60インチや80インチ等の大型スクリーンにおいて十分な水平光量及び周辺光量が実現されていない。
【0006】
従って本発明は、水平光量比や周辺光量比の向上を図ると共に、特にパソコン画像等の静止画像を明瞭に写し出すことができる反射型スクリーンを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは反射層を構成する材料について鋭意研究した結果、光反射剤を含む反射層に光拡散剤を含有せしめるとともに、この光拡散剤の含有量を光反射剤に対して50重量%以上とすることにより、一層でも反射層と光拡散層との二層を形成した場合に近い反射特性を示し、且つ水平光量比及び周辺光量比が高く、特に静止画像の映写に適したスクリーンが得られることを見出した。
【0008】
即ち、本発明のプロジェクタ用反射型スクリーンは、基材上に、バインダー樹脂、光反射剤及び光拡散剤を含む光拡散性反射層を設けてなるプロジェクタ用反射型スクリーンにおいて、光拡散剤を光反射剤100重量部に対し50重量部以上含有せしめたものである。光拡散剤としては、好適には粒径2〜25μmの透明樹脂粒子を用いる。また光反射剤としては、ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミペーストを用い、含有量はバインダー樹脂100重量部に対し10〜80重量部とすることが好ましい。
【0009】
この反射型スクリーンは、光拡散層を別途設けたものに比べ明るい映像を映し出すことができ、また光拡散層を別途設けなくても良好な光拡散性を得ることができ、輝度むらのない映像を見ることができる。また実用的な輝度を維持しつつ、大幅に水平光量比及び周辺光量比を向上させることができるので、スクリーンの大型化を図ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプロジェクタ用反射型スクリーンの詳細を説明する。
【0011】
本発明のプロジェクタ用反射型スクリーンは、基本的な構造として図1に示すように基材1と、基材1上に形成された光拡散性反射層2とを備えている。
【0012】
基材1は、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステルの単独若しくは共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の樹脂シートを使用することができる。このような基材1は、透明であってもよいが、光拡散性反射層2の反射特性を高めるために白色顔料を練り込んだものを使用することが好ましい。更に外光を遮断することを目的として、図2に示すように光拡散性反射層2と反対側に光遮断層3を設けることが好ましい。光遮断層3は、樹脂中にカーボンブラック等の黒色顔料を適宜含有せしめた黒色フィルムや黒に着色された紙等が採用でき、基材1の光拡散性反射層2と反対の面にコーティング或いはラミネートすることによって形成できる。
【0013】
光拡散性反射層2は、バインダー樹脂と、光反射剤2bと、光拡散剤2aを含む。バインダー樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、変性酢酸ビニル樹脂、変性酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル共重合樹脂、アクリルシリコン系樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリビニルアルコール系樹脂、アクリロニトリルゴム等から選ばれる1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0014】
光反射剤としては、ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミペーストを用いる。ノンリーフィングタイプのアルミペーストは、アルミフレークをオレイン酸でコーティングしたもので、バインダー樹脂中に分散させたときにアルミフレークが表面に浮くことなく適当に分散されるので、光拡散剤と共に樹脂中に含有せしめたときに光拡散剤の機能を阻害することなく、良好な光反射性を付与することができる。尚、アルミペーストとしては、オレイン酸でコーティングされたアルミフレークと有機溶剤とから成るもののみならず、更に樹脂が含まれているものも使用できる。
【0015】
鱗片状アルミペーストとしては、鱗片状アルミの平均粒径が4〜60μm、好適には10〜40μmの範囲のものを使用する。鱗片状アルミの粒径が小さすぎる場合には、十分な反射性を得ることができず、輝度が低くなり、また粒径が大きすぎる場合には、ぎらつきが目立つようになる。
【0016】
光反射剤の含有量は、バインダー樹脂100重量部に対し10〜80重量部の範囲が好ましく、より好適には30〜60重量部の範囲とする。光反射剤の量をこのような範囲とすることにより、ぎらつきを生じることなく、しかも十分な輝度を得ることができる。尚、ここで光反射剤の含有量とは、アルミペースト中に樹脂が含まれているアルミペーストを用いる場合には、このような樹脂を除くアルミ固形分の含量を言う。
【0017】
光拡散剤としては、透明な樹脂ビーズが好適であり、特に球状形状のものが好適である。マイカ、パール顔料等の無機粒子も適量を樹脂ビーズと混合して用いることができる。透明な樹脂ビーズを用いることにより、光反射剤の反射特性を阻害することなく、適当な光拡散性を付与することができる。このような樹脂ビーズとしては、アクリルビーズ、スチレンビーズ、ウレタンビーズ等の樹脂ビーズを用いることができ、特にスチレンビーズが好ましい。樹脂ビーズは粒径2〜25μmのものが好ましい。粒径がこのような範囲の透明樹脂ビーズを用いることにより、広い視野角及び高いSG値が得られる。
【0018】
光拡散剤の含有量は、光反射剤100重量部に対し、70重量部以上とする。光拡散剤の含有量の上限は特に限定されないが、支持体との接着性、層の物理的強度の観点から500重量部未満とすることが好ましい。
【0019】
本発明の光拡散性反射層は、上記の光反射剤及び光拡散剤の他に、光の照射された部分(明部)と暗部とのコントラストを高めるためにカーボンブラック等の黒色系の着色剤を若干含有せしめることができるが、静止画像を明瞭に写し出すという本発明の目的から、着色剤の含有量は、例えばカーボンブラックの場合、バインダー樹脂100重量部に対し、4重量部以下とすることが好ましく、より好適には0.5〜4.0重量部とする。
【0020】
更に本発明の光拡散性反射層は、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を含有せしめることができる。
【0021】
本発明の反射型スクリーンは、上述したバインダー樹脂、光反射剤、光拡散剤及び必要に応じて黒色着色剤及び添加剤を適当な溶剤とともに基材上に塗布・乾燥することにより形成できる。光拡散性反射層の厚さは特に限定されないが、通常6〜20μm程度とする。また基材に光遮断層を設ける場合には、光遮断層を形成するバインダー樹脂及び黒色着色剤を適当な溶剤とともに基材上に塗布・乾燥することにより形成するか、黒色のフィルム或いは紙を光拡散性反射層と反対側にラミネートする。
【0022】
このように構成される本発明の反射型スクリーンは、水平光量比と周辺光量比に優れ、広い視野角を示し、特に白地の多い静止画像を広い範囲で明瞭に写し出すことができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示す。
実施例1
厚さ100μmのポリエステルフィルム(ルミラーE20:東レ社)に、下記処方の光拡散性反射層用塗布液をバーコーターにより塗布・乾燥して反射層を形成し、反射型スクリーンを得た。
【0024】
アクリル樹脂(樹脂固形分50%) 30重量部
(アクリディックA-807:大日本インキ化学工業社)
硬化剤(固形分60%) 6重量部
(タケネートD110N:武田薬品工業社)
ノンリーフィングタイプ鱗片状アルミペースト
(アルミ固形分50%) 16重量部
(5501EA:昭和アルミパウダー社)
スチレンビーズ(6μm) 8重量部
(SBX-6:積水化学工業社)
カーボンブラック 0.4重量部
酢酸エチル 40重量部
酢酸ブチル 40重量部
【0025】
この反射型スクリーンについてSG値、コントラスト比、視野角、水平光量比及び周辺光量比を測定した。SG値は、スクリーン面の輝度及び光源の照度から、式SG=(B/E)×π(式中、Bはスクリーン面の輝度(cd/m2=nit)、Eは照度(lm/m2=lux)である)により求めた。コントラスト比は、コントラスト比=(外光反射輝度+白信号輝度)/(外光反射輝度+黒信号輝度)により求めた。視野角は、輝度計を固定し、スクリーン面を0゜〜50゜まで10゜毎に角度を変えて輝度を測定し、正面(0゜)輝度を100としたときの角度における輝度を求めた。
【0026】
水平光量比及び周辺光量比については、図3に示すように60インチのスクリーンの縁部から10%内側の6点の輝度(B1、B2、B3、B5、B6、B7)及びスクリーン中央部の1点の輝度(B4)を測定し、下式
水平光量比=[{(B2+B6)/2}/B4]×100
周辺光量比=[{(B1+B3+B5+B7)/4}/B4]×100
により求めた。SG値、コントラスト比、水平光量比及び周辺光量比の結果は、表1に示した。また視野角の結果は表2に示した。
【0027】
実施例2〜5、比較例1
光拡散剤であるスチレンビーズの含有量を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、反射型スクリーンを製造した。これらの反射型スクリーンについても、実施例1と同様にSG値、コントラスト比、視野角、水平光量比及び周辺光量比を測定した。結果を併せて、表1及び表2に示す。
【0028】
比較例2、3
光拡散剤としてスチレンビーズの代りにパール顔料(イリオジン111:メルクジャパン社、比較例2)及び二酸化ケイ素(サイリシア770:富士シリシア化学社、比較例3)を用い、その他は実施例1と同様にして、反射型スクリーンを製造した。これらの反射型スクリーンについても、実施例1と同様にSG値、コントラスト比、視野角、水平光量比及び周辺光量比を測定した。結果を併せて、表1及び表2に示す。
【0029】
比較例4
光反射剤としてアルミペーストの代りにパール顔料(イリオジン111:メルクジャパン社)を用い、その他は実施例1と同様にして、反射型スクリーンを製造した。これらの反射型スクリーンについても、実施例1と同様にSG値、コントラスト比、視野角、水平光量比及び周辺光量比を測定した。結果を併せて、表1及び表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
表1及び表2の結果から分るように、光反射剤に対する光拡散剤の含有量が60重量%以上の実施例の反射型スクリーンでは、光拡散剤の含有量の少ない比較例1の反射型スクリーンに比べ、大幅に視野角、水平光量比及び周辺光量比に向上した。この傾向は、表には示していないが、光反射剤に対する光拡散剤の含有量が500重量%の場合にも変らなかった。またスクリーン面の輝度及び光源の照度から計算して求めたSG値自体は、光反射剤に対する光拡散剤の含有量が増えるにつれて低下する傾向にあったが、実際にパソコン画像を写し出して観察した結果では、輝度の低下により映像が見にくくなることはなく、むしろ水平光量比及び周辺光量比が優れているためスクリーンの周辺部でも明瞭な映像を見ることができた。
【0033】
また光拡散剤としてパール顔料を用いた比較例2の反射型スクリーンでは、SG値及びコントラスト比は良好であったが、視野角が著しく狭く、また水平光量比、周辺光量比共に低かった。
【0034】
光拡散剤として二酸化ケイ素を用いた比較例3の反射型スクリーンでは、正面輝度が低いため視野角が良い値を示したが、SG値及びコントラスト比が低かった。また光反射剤としてパール顔料を用いた比較例4の反射型スクリーンでは、SG値、コントラスト比共に低く、実際に映像を写し出して見たところ、かなり暗かった。
【0035】
以上の結果から本実施例の反射スクリーンは、実用的なSG値及びコントラスト比を示し、しかも優れた視野角、水平光量比及び周辺光量比を有していることがわかる。
【0036】
【発明の効果】
以上の実施例からも明らかなように、本発明の反射型スクリーンは反射層に比較的多量の光拡散剤を含有せしめることにより、実用的なSG値と広い視野角を得ることができ、特にパソコン画像のように白地の多い静止画像を明瞭に写し出すことができる。また本発明の反射型スクリーンは水平光量比と周辺光量比が非常に優れているので、80インチ以上の大型のスクリーンでも輝度むらのない映像を見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射型スクリーンの一実施例を示す断面図。
【図2】本発明の反射型スクリーンの他の実施例を示す断面図。
【図3】反射型スクリーンにおける水平及び周辺光量比の測定方法を説明する図。
【符号の説明】
1・・・・・・基材
2・・・・・・光拡散性反射層
Claims (6)
- 基材上に、バインダー樹脂、光反射剤及び光拡散剤を含む光拡散性反射層を設けてなるプロジェクタ用反射型スクリーンにおいて、前記光反射剤が、ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミペーストから成り、前記光拡散性反射層は、光拡散剤を光反射剤100重量部に対し70重量部以上含有することを特徴とするプロジェクタ用反射型スクリーン。
- 前記光拡散剤が、透明樹脂粒子から成ることを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ用反射型スクリーン。
- 前記光拡散剤の平均粒径が2〜25μmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ用反射型スクリーン。
- 光拡散剤を、光反射剤100重量部に対し100〜500重量部含有することを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ用反射型スクリーン。
- 前記光反射剤を、バインダー樹脂100重量部に対し10〜80重量部含有することを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ用反射型スクリーン。
- 前記基材の、前記光拡散性反射層が設けられた面と反対側の面に光遮断層を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載のプロジェクタ用反射型スクリーン。
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