JP3694368B2 - 変位測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、静電容量式変位検出器に代表される、エッジに変位量に対応する位相情報を持つデューティ比50%の方形波の位相変調信号を出力する変位検出手段を用いた変位測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より静電容量式の変位測定装置として、相対移動するスケールに形成した送信電極と受信電極間の相対移動に伴う容量変化を検出する方式のものが知られている。この種の変位検出器では、複数の送信電極に位相の異なる交流信号を印加し、受信電極に位相変調信号を得て、この位相変調信号の位相検出を行って変位を測定する(例えば、特公平4−35688号公報参照)。
【0003】
図8は、その様な静電容量式変位測定装置の概略構成である。静電容量式変位検出器1は前述のように相対向するスケールに送信電極と受信電極を配列形成したもので、駆動回路2からの正弦波駆動信号により駆動される。変位検出器1からは図9に示すような検出器出力が得られ、これが復調回路3により復調されて、そのゼロ点位相が測定すべき変位に対応する正弦波信号が得られる。この正弦波信号は波形成形回路4により方形波信号に変換され、この方形波信号のエッジ位相が位相検出回路5により検出される。検出された位相情報は演算回路6で処理されて変位量に変換され、これが表示装置7に表示される。
【0004】
上述の位相変調信号である方形波信号は、検出器1が静止状態では周期が一定でかつデューティ比は50%となる。しかし実際には、復調回路3や波形成形回路4におけるアナログ処理回路(演算増幅器や比較器等)のオフセットや、また検出器1のスケール間のギャップ変動等に起因して、位相変調信号のデューティ比は理想状態からずれる。図9には、復調回路3でのオフセットVaにより、理想状態からずれた位相変調信号が得られる例を一点鎖線で示している。
【0005】
この様なデューティ比のずれた位相変調信号の片側エッジで位相検出を行うと、そのエッジのズレがそのまま位相ズレ、即ち測長誤差となる。そこで従来は、位相変調信号の立上りと立下がりの両エッジでの位相平均を算出することにより、誤差を相殺するという方法が用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した様な位相変調信号の両エッジの位相を算出する方法では、平均値算出のために、データを格納するレジスタや演算処理が必要になり、位相検出の回路規模が大きくなるという問題があった。
【0007】
この発明は、上記事情を考慮してなされたもので、小さい回路規模でデューティ比劣化による誤差発生を抑制することを可能とした位相補正手段を内蔵した変位測定装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る変位測定装置は、エッジに変位量に対応する位相情報を持つ方形波の位相変調信号を出力する変位検出手段と、この変位検出手段が出力する前記位相変調信号のデューティ比のズレを補正する位相補正手段と、この位相補正手段で補正された位相変調信号から位相情報を検出する位相検出手段と、この位相検出手段の検出出力を演算して変位量を算出する演算手段とを有し、前記位相補正手段は、クロックを分周して補正された位相変調信号を得るための速度切換え機能付きの分周手段と、前記変位検出手段が出力する前記位相変調信号の両エッジの位相と前記分周手段の出力のエッジ位相を比較して位相差がなくなるように前記分周手段の速度切換え機能を制御する位相比較手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
この発明において例えば前記分周手段は、前記位相比較手段による位相遅れ,位相進み及び正常位相の検出結果に応じてそれぞれ、2倍速,分周停止及び通常速度の切換えが行われる第1の分周器と、この分周器出力を更に分周して補正された位相変調信号を得るための第2の分周器とから構成される。
また、前記位相比較手段は、前記変位検出手段から出力された位相変調信号の両エッジに対応するパルスを発生する第1の微分回路、及び前記分周手段の出力信号の両エッジに対応するパルスを発生する第2の微分回路を有するエッジ微分手段と、前記第1,第2の微分回路の出力パルスの一致/不一致を検出するゲート手段、及び不一致が検出されたときに前記第1,第2の微分回路出力パルスに同期して前記分周手段に送る追従指令信号を生成するフリップフロップを有するパルス位相比較手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明においては、デューティ比のズレを補正する位相補正手段を、速度切換え機能付きの分周回路と、変位検出器が出力する位相変調信号の両エッジの位相と前記分周回路の出力のエッジ位相を比較して位相差がなくなるように分周回路の速度切換え機能を制御する位相比較回路とにより構成している。このPLL類似の位相補正手段により、デューティ比のずれた位相変調信号をクロック量子化誤差範囲内で位相補正する事ができ、従来のように位相データを一旦格納するレジスタや平均化を行う演算回路を用いる方式に比べて回路規模を小さくすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施例を説明する。
図1は、この発明を静電容量式変位測定装置に適用した実施例の回路ブロック構成である。図8の従来例と対応する部分には図8と同一符号を付してある。この実施例では、位相変調信号である方形波信号が得られる波形成形回路4と、位相検出回路5の間に、デューティ比のずれた方形波信号の位相補正を行う位相補正回路8が挿入されている。
【0012】
図2は、位相補正回路8の構成を示すブロック図である。位相補正回路8は、クロックを分周して補正された位相変調信号を得るための分周器14と、波形成形回路4が出力する位相変調信号CMPINの両エッジでパルスを発生するエッジ微分回路11と、このエッジ微分回路11が発生するパルスと分周器14の出力パルスのエッジ位相を比較するパルス位相比較回路12と、このパルス位相比較回路12の出力により分周器14の速度切換えを行う速度切換え回路13を備えて、比較される位相差がゼロになるように分周器14が制御されるようになっている。
【0013】
速度切換え回路13は、後に詳細を説明するが、システムクロックCK0を分周する機能を持ち、パルス位相比較回路12からの追従指令信号によりその分周出力を通常の2倍かまたは分周停止に切換えることができる。この速度切換え回路13と分周器14とは合わせて一つの速度切換え機能付き分周器を構成しており、通常状態では位相変調信号CMPINの基本周期と同一周期の方形波信号を出力する。パルス位相比較回路12は、エッジ微分回路11と合わせて、位相変調信号CMPINの両エッジ位相と分周器14の出力のエッジ位相の比較を行う位相比較回路を構成している。即ち、パルス位相比較回路12は、分周器14の出力とエッジ微分回路11により発生される位相変調信号CMPINのエッジパルスの位相を比較して、分周器14の出力が遅れている場合には、スピードアップ(2倍速)指令、進んでいるときはスピードダウン(分周停止)指令を出し、位相差がない正常動作の場合には通常動作指令を出す。
【0014】
以上により、分周器14は、位相変調信号CMPINの両エッジ位相に追従しようとする動作を行うが、両エッジ位相は前述のように理想信号に対して逆方向に位相ズレを生じているため、完全に位相変調信号の位相に一致することはできず、両エッジの位相誤差の中間、即ち理想信号の位相に収束することになる。具体的に分周器出力は、システムクロックCK0の分解能の範囲で理想信号と一致する。図3は、デューティ比のずれた位相変調信号CMPINから、エッジパルスが得られ、このエッジパルスに基づいて分周器の速度切換えにより位相補正された位相変調信号CMPOUTが得られる様子を示している。
【0015】
図4は、図3の位相補正回路8の具体回路構成例を示している。エッジ微分回路11は、システムクロックCK0の反転クロックCKにより制御されて位相変調信号CMPINが入るDタイプフリップフロップFF11と、このFF11の出力が入るDタイプフリップフロップFF12、及びこれらのフリップフロップFF11,FF12の出力の位相ズレを検出してエッジ微分パルスaを出力するEXNORゲートG11とからなる第1の微分回路11aを基本とする。
分周器14は、4個のDタイプフリップフロップFF41〜FF44を用いた1/16分周器である。エッジ微分回路11には、この分周器14の3段目出力のエッジ微分を行ってパルスbを出力するためのDタイプフリップフロップFF13,インバータG12及びNORゲートG13からなる第2の微分回路11bを有する。
【0016】
パルス位相比較回路12は、エッジ微分回路11の二つのエッジ微分パルスa,bの一致/不一致を検出するEXNORゲートG21,不一致の場合のこのゲートG21の出力パルスcからクロックCK幅のパルスdを得るためのNORゲートG22,このNORゲートG22の出力をクロックとして1/2分周出力である一つの追従指令信号eを得るためのDタイプフリップフロップFF21,及びこの追従指令信号eをクロックとしてエッジ微分パルスaの一方で“H”となる追従指令信号fを出すDタイプフリップフロップFF22により構成されている。
【0017】
速度切換え回路13は、分周器14(第2の分周器)のクロックとなる可変速の第1の分周器を構成するもので、2個のDタイプフリップフロップFF31,FF32と、パルス位相比較回路12からの2つ追従信号e,fの組み合わせを選択するデコーダ機能と共に、FF31のみを用いて1/2分周器とするかFF32を縦続接続して1/4分周器とするかを切換える機能を持つゲート回路G31〜G34とを有する。
ゲート回路G31〜G34の詳細説明は省くが、この速度切換え回路13では次の表1の論理で、速度切換えが行われる。
【0018】
【表1】
Figure 0003694368
【0019】
図4の位相補正回路の動作タイミングを図5〜図7に示す。図5は、位相変調信号CMPINが劣化している場合(即ち周期は64×tckであるが、デューティ比が50%でない場合)であり、この場合にもデューティ比50%の補正された位相変調信号CMPOUTが得られることを示している。この場合、位相変調信号CMPINが分周器14の出力より位相が進んでいる立下がりエッジでは、速度切換え回路13の分周器出力が通常の2倍速(1/2分周器)となり、これにより位相変調信号CMPINと出力CMPOUTの位相差の1/2分だけ差が縮められる。位相変調信号CMPINの位相が分周器14の出力より遅れている立下がりエッジでは、速度切換え回路13の分周器出力は停止し、位相が同じになるまで待つという動作が行われる。
【0020】
具体的に、図5のタイミングt1からの動作を追うと、ここで速度切換え回路13の分周器出力は停止して、位相変調信号CMPINが立ち上がるまで待ち、位相変調信号CMPINが立ち上がるタイミングt2で1倍速(二つのFF31,FF32による1/4分周動作)による分周が再開する。その後タイミングt3で位相変調信号CMPINが先に立ち下がると、速度切換え回路13の分周器出力は2倍速(FF31のみによる1/2分周動作)となり、位相の差を詰める。この位相補正回路の追従速度は有限(2倍または停止)であるから、立上りエッジと立下がりエッジが正常時に対して位相遅れ/位相進みを交互に繰り返す劣化した位相変調信号に対して、同様の動作の繰り返しによってデューティ比50%に補正された位相変調信号CMPOUTを得ることができる。
【0021】
図6は、位相変調信号CMPINのデューティ比のズレが図5とは逆の場合であり、この場合も図5と同様の動作により、理想化された位相変調信号CMPOUTを得ることができる。
また図7は、位相変調信号CMPINがデューティ比50%の正常動作の場合である。この場合、追従指令信号e,fは、共に“L”であり、速度切換えはなく、CMPINと一致する出力CMPOUTが得られる。
【0022】
この発明は上記実施例に限られない。実施例では、静電容量式変位測定装置を説明したが、例えば光電式で方形波の位相変調信号を出力してその位相検出により変位測定を行う測定装置にも同様にこの発明を適用することが可能である。また実施例では、位相変調信号周期をtck×64として説明したが、対応周期は任意に設定することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明によれば、速度切換え機能付き分周回路を用いて、デューティ比のずれた位相変調信号の位相補正をクロック量子化誤差範囲内で補正して、小さい回路規模で測定誤差発生を抑制することを可能とした位相補正手段を内蔵した変位測定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例による静電容量式変位測定装置の概略構成を示す。
【図2】 同実施例の位相補正回路の概略構成を示す。
【図3】 同位相補正回路による位相補正の動作タイミング図である。
【図4】 同位相補正回路の具体回路構成例を示す。
【図5】 同位相補正回路の動作タイミング図である。
【図6】 同位相補正回路の動作タイミング図である。
【図7】 同位相補正回路の動作タイミング図である。
【図8】 従来の静電容量式変位測定装置の構成を示す。
【図9】 同測定装置の動作タイミング図である。
【符号の説明】
1…静電容量式変位検出器、2…駆動回路、3…復調回路、4…波形成形回路、5…位相検出回路、6…演算回路、7…表示装置、8…位相補正回路、11…エッジ微分回路、12…パルス位相比較回路、13…速度切換え回路、14…分周器。

Claims (3)

  1. エッジに変位量に対応する位相情報を持つ方形波の位相変調信号を出力する変位検出手段と、この変位検出手段が出力する前記位相変調信号のデューティ比のズレを補正する位相補正手段と、この位相補正手段で補正された位相変調信号から位相情報を検出する位相検出手段と、この位相検出手段の検出出力を演算して変位量を算出する演算手段とを有し、
    前記位相補正手段は、
    クロックを分周して補正された位相変調信号を得るための速度切換え機能付きの分周手段と、
    前記変位検出手段が出力する前記位相変調信号の両エッジの位相と前記分周手段の出力のエッジ位相を比較して位相差がなくなるように前記分周手段の速度切換え機能を制御する位相比較手段とを備えた
    ことを特徴とする変位測定装置。
  2. 前記分周手段は、前記位相比較手段による位相遅れ,位相進み及び正常位相の検出結果に応じてそれぞれ、2倍速,分周停止及び通常速度の切換えが行われる第1の分周器と、この分周器出力を更に分周して補正された位相変調信号を得るための第2の分周器とから構成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の変位測定装置。
  3. 前記位相比較手段は、
    前記変位検出手段から出力された位相変調信号の両エッジに対応するパルスを発生する第1の微分回路、及び前記分周手段の出力信号の両エッジに対応するパルスを発生する第2の微分回路を有するエッジ微分手段と、
    前記第1,第2の微分回路の出力パルスの一致/不一致を検出するゲート手段、及び不一致が検出されたときに前記第1,第2の微分回路出力パルスに同期して前記分周手段に送る追従指令信号を生成するフリップフロップを有するパルス位相比較手段とを備えた
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の変位測定装置。
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