JP3693629B2 - アンカー体の定着部 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は既存の構造物の柱、梁、壁面、基礎等のコンクリート等の部分に耐震要素等の構造部材や壁パネル等の非構造部材、あるいは設備用の部材その他の部材を付加する場合に、その付加部材の後付けのために形成されるアンカー体の定着部に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
例えば既存建物の柱や梁を含む外壁面や既存橋脚のフーチング(基礎)等の既存構造物のコンクリート躯体の表面側に耐震補強用のブレース等の耐震要素を新たに架設する場合、耐震要素の端部は既存コンクリートを傷めることなく、耐震要素が負担する引張力と圧縮力を既存コンクリートに伝達できるように連結される必要がある。
【0003】
一般的にはコアチューブを用い、既存コンクリートの一部を表面側から奥側へ円柱状に除去し、その除去部分内にアンカーボルト等のアンカー体を挿入すると共に、モルタルやコンクリート、または接着剤等の充填材を充填することによりアンカー体を既存コンクリートに定着させ、アンカー体に耐震要素の端部を連結することが行われる。
【0004】
この場合、耐震要素からの圧縮力は定着部の底面から支圧力として既存コンクリートに伝達されるが、耐震要素からの引張力に対する抵抗力としては除去部分内に充填された充填材と、除去部分の内周面との間の付着力しか期待できないため、十分ではない。
【0005】
引張力に対する抵抗力を高めるには除去部分の深さや径を大きくするか、除去部分の数を多くする必要があるが、いずれの方法も除去部分の範囲を拡げることになり、コンクリート中の鉄筋との衝突により鉄筋を損傷させる可能性が増すため、アンカー体を定着させた後の既存コンクリートの信頼性が低下し、コンクリートの増し打ちを要することもある。
【0006】
この発明は上記背景より、新たに付加される耐震要素その他の部材に作用する引張力等に対する抵抗力の大きいアンカー体の定着部を提案するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では既存コンクリートを初めとする被定着材の表層側の一部を除去し、その除去部分内にアンカー体を挿入すると共に、充填材を充填してアンカー体の定着部を構成する上で、既存コンクリートその他の被定着材の除去部分の全体の内の、深さ方向の少なくとも一部の区間に、表面側の断面積より奥側の断面積が大きい部分を形成することにより、除去部分の範囲を拡げることなく、アンカー体に作用する引き抜き力に対する抵抗力を増大させる。
【0008】
上記の被定着材の除去部分の断面積とはアンカー体の軸に直交する断面の面積を言い、除去部分は深さ方向の少なくとも一部の区間に、断面積が例えば表面側から奥側へかけて階段状に、または連続的に次第に拡大する部分を有し、除去部分の全体では断面積が奥側へかけて段階的に、もしくは徐々に拡大する形状の他、断面積の小さい区間と断面積の大きい区間が交互に繰り返される形状の場合がある。
【0009】
除去部分の形成上は請求項3に記載のように除去部分が深さ方向に表面側と奥側の二区間に区分され、表面側の区間が円柱状をし、奥側の区間が表面側の区間より大きい径の円柱状をした場合が最も単純な形となり、形成が容易になる。
【0010】
いずれの形状の場合も、コンクリート等の被定着材の除去部分が、表面側の断面積より奥側の断面積が大きい部分を有することで、除去部分に充填される充填材は既存コンクリート等の被定着材の表面側へ引き抜き力を受けたときに除去部分内で被定着材にその表面側へ係止、あるいは係合し得る係止部を有する形状をする。請求項3の場合は奥側の区間の表面側の面が係止部となる。
【0011】
この係止部を有する充填材の形状により、充填材内に定着されたアンカー体に作用する引き抜き力に対しては充填材の、除去部分の内周面との間の付着力に加え、係止部における被定着材との間の支圧力によって抵抗するため、付着力のみの場合より抵抗力が増大する。
【0012】
充填材の抵抗力の増大により、付着力のみに依存する場合との対比では除去部分の深さや径を大きくするか、その数を多くする等、除去部分の範囲を拡げる必要がなくなるため、例えばコンクリート中の鉄筋との衝突により鉄筋を損傷させる危険性、すなわち既存コンクリート等の耐力への影響がなくなり、アンカー体を定着させた後の既存コンクリート等の信頼性が向上する。このため、既存コンクリート等の耐力を確保するための格別なコンクリートの増し打ち等を必要としない。
【0013】
特に請求項4に記載のように除去部分の全体の内の、深さ方向の少なくとも一部の区間が前記のように表面側から奥側へかけ、断面積が次第に拡大する形状をした場合には、係止部がアンカー体の軸に直交する断面に対して傾斜することで、既存コンクリート等の被定着材は充填材から受ける引き抜き力に対し、充填材の係止部の外縁から被定着材の表面側へかけて次第に拡大する領域において抵抗するため、既存コンクリート等の被定着材の破壊に対する安全性が高い。
【0014】
被定着材が引き抜き力に対し、充填材の係止部の外縁から被定着材の表面側へかけて次第に拡大する領域において抵抗する効果は請求項6に記載のようにアンカー体の先端部が頭部側から先端部側へかけて断面積が拡大する形状をすることにより一層向上する。
【0015】
この場合、除去部分の、表面側から奥側へかけ、断面積が次第に拡大する形状をした区間は少なくともアンカー体の先端部に形成される。アンカー体の先端部に作用する引き抜き力はアンカー体先端部のコーン状の形状により充填材に、図9に破線で示すようにアンカー体の先端部から頭部側へかけて次第に拡大する領域に伝達され、被定着材には充填材の係止部の外縁より広範囲に亘って伝達され得るため、充填材に係止部が形成されただけの場合より被定着材が引き抜き力に抵抗する領域が拡大し、被定着材の抵抗の効果が向上することになる。
【0016】
請求項4の具体的な形状例としては請求項5に記載のように除去部分が表面側の区間と、奥側の区間と、その中間の区間の三区間に区分され、表面側の区間が円柱状をし、中間の区間が円錐台状をし、奥側の区間が表面側の区間より大きい径の円柱状に形成される。
この場合、係止部は円錐台状の中間区間の表面側の面に形成され、表面側から奥側へかけて径が次第に拡大する形状をする。
【0017】
被定着材の除去部分の形成は例えば除去部分の断面上の中心部分を、先端に切削刃を有するコアチューブを回転させて除去した後、中心部分の周辺の部分を、先端、もしくは周面に切削刃を有するビットを回転させて除去することにより行われる。
【0018】
この場合、コアチューブが既存コンクリート等の被定着材の表面側の区間から奥側の区間までを連続的に円柱状に除去することで、ビットを奥側の区間まで挿入し、奥側の区間においてその周辺の部分を除去することができるため、初めからビットを用いる場合より被定着材の除去が容易で、効率的に行われ、また奥側の区間の周辺部分を任意の深さから自由な形に形成することが可能になる。
【0019】
請求項1に記載のように被定着材の表面にベースプレートを配置し、このベースプレートの裏面と被定着材の表面との間の隙間に除去部分内に充填された充填材が回り込み、隙間を埋めている定着状態で、アンカー体にその軸方向に緊張力を与えた場合には緊張力の反力がベースプレートの裏面から被定着材へ圧縮力として伝達され、被定着材においてその表面側から奥側へかけて次第に拡大する領域において負担される結果、圧縮力がアンカー体の被定着材への定着部分とそれを包囲する被定着材に対し、引き抜き、あるいは抜け出しに対する抵抗力として作用するため、アンカー体の被定着材への定着部分の安定性が格段に向上する。
【0020】
この場合、アンカー体の先端部に作用する緊張力は除去部分内の充填材に伝達され、被定着材は奥側においては充填材の係止部の外縁から被定着材の表面側へかけて次第に拡大する領域において抵抗し、表面側においては図10に破線で示すようにベースプレートの存在により表面側から奥側へかけて次第に拡大する領域において圧縮力を負担するため、その領域において被定着材が破壊しない限り、アンカー体は被定着材から抜け出さないことになる。
【0021】
請求項1ではアンカー体の被定着材への定着部分が抜け出しに対して安定することで、請求項2に記載のようにベースプレートの表面から突出したアンカー体の頭部にプレートを接合し、プレートに構造部材や非構造部材等を接合した場合に、構造部材や非構造部材等からアンカー体に繰り返して作用する軸方向力に対しては主にアンカー体のベースプレートから突出した部分の伸縮によって負担でき、アンカー体の被定着材への定着部分への影響が低減されるため、繰り返し荷重に対してもアンカー体の定着部分の安定性が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
この発明は既存コンクリート1その他の被定着材の表層側の一部を除去し、その除去部分2内にアンカー体3を挿入すると共に、充填材4を充填して構成されるアンカー体3の定着部5である。
【0023】
定着部5は主として既存の建物の柱、梁、壁面、基礎等のコンクリートの部分の他、既存の橋梁の橋桁や橋脚、基礎(フーチング)等のコンクリートの部分に耐震要素等の構造部材や壁パネル等の非構造部材、あるいは設備用の部材その他の部材を付加する場合に、既存コンクリート1等の被定着材に部分的に形成される。
【0024】
被定着材はアンカー体3が被定着材に定着させる役割に応じ、構造部材と非構造部材の両者を含み、コンクリートの他、石材、レンガ、コンクリートブロック等のように穿孔することが可能な材料全般を含む。以下では既存コンクリート1に被定着材を代表させる。
【0025】
既存コンクリート1の部分を有すれば定着部5を形成することができるため、既存の構造物は建築構造物であるか土木構造物であるかを問わず、また構造物本体の構造が鉄筋コンクリート造(鉄骨鉄筋コンクリート造)であるか鉄骨造であるかも問わない。
【0026】
図1〜図4は既存の橋脚その他の柱脚6の周囲に耐震要素としてのブレース7を架設する場合に、既存コンクリート1としての基礎8にブレース7の端部を連結するガセットプレート9を固定するための定着部5を形成した場合を示す。
【0027】
図面では除去部分2が全体で表面側から奥側へかけ、断面積が次第に拡大する形状をした請求項4の場合、特に除去部分2を表面側の区間と奥側の区間、及びその中間の区間に区分した請求項5の場合を示している。
【0028】
請求項5の場合、中間の区間が表面側から奥側へかけ、断面積が次第に拡大する形状の円錐台状に形成されるが、除去部分2は深さ方向の少なくとも一部の区間に、表面側の断面積より奥側の断面積が大きい部分を有すればよいため、請求項5の中間の区間がない形状、すなわち表面側の区間が円柱状をし、奥側の区間が表面側の区間より大きい径の円柱状に形成される場合もある(請求項3)。
【0029】
この他、除去部分2は請求項5の表面側の区間がない、円錐台と円柱が結合した形状や、中間の区間のみの、円錐台のみの形状の場合もある。
【0030】
また除去部分2は一部の区間において表面側の断面積より奥側の断面積が大きい部分を持てばよく、全体では必ずしも断面積が奥側へかけて段階的に、もしくは徐々に拡大する形状をする必要はないため、図示する形状、または上記した図示する形状の内の一部の区間がない形状の除去部分2が深さ方向に交互に繰り返される形状に除去部分2を形成する場合もある。
【0031】
既存コンクリート1の除去部分2は図1及びその一部拡大図である図3に示すように表面側の断面積より奥側の断面積が大きい部分を有することで、除去部分2に充填されるモルタルやコンクリート、または接着剤等の充填材4はアンカー体3に作用する既存コンクリート1の表面側への引き抜き力を受けることによって除去部分2内で既存コンクリート1にその表面側へ係止、あるいは係合し得る係止部4aを有する形状をする。
【0032】
図示するように除去部分2が深さ方向に二以上の区間に区分される場合、係止部4aは除去部分2の内、奥側の部分の表面側寄りの部分に形成される。円錐台状のみの場合やそれを含む場合は、アンカー体3の軸に直交する断面に対して傾斜した形で表面側寄りの部分に係止部4aが形成される。
【0033】
除去部分2は例えば図6に示すようにその断面上の中心部分を、先端に切削刃10aを有するコアチューブ10を回転させて円柱状に除去した後、図7に示すように中心部分の周辺部分を、先端、もしくは周面に切削刃11aを有する円筒状や羽根状等のビット11を回転させて円錐台状、あるいは円柱状に除去することにより形成される。
【0034】
図示しないが、駆動装置12から回転力を与えられる駆動軸12aやロッドの軸に対して切削刃が偏心した形のビット、または駆動軸12aやロッドの軸に対して軸が屈曲した形のビットを用いることで、コアチューブ10により円柱状に除去した後に、もしくはコアチューブ10を用いることなく初めから円柱状、もしくは円錐台状、あるいは円柱と円錐台が組み合わせられた形に除去部分2を形成することもできる。この他、水を超高圧で噴射することによっても除去部分2を任意の形状に形成することができる。
【0035】
図6,図7の場合、既存コンクリート1の表面に仮固定された支持部材13に昇降自在に支持された駆動装置12の駆動軸12aにコアチューブ10が接続される。コアチューブ10は駆動軸12aの軸の回りに回転することにより先端の切削刃10aによってハッチングで示すコンクリートを円柱状に周辺から分離させる。円柱状のコンクリートはコア抜きの要領でその形のまま引き抜かれる。図5に示すように除去部分2を既存コンクリート1の側面に形成する場合は支持部材13は横向きに固定される。
【0036】
その後、図7,図8に示すようにコアチューブ10に代え、例えば円筒状のビット11が接続したロッド11bの軸が駆動軸12aに対して偏心して連結されたアタッチメント14を駆動軸12aの先端に連結し、駆動軸12aを回転させ、ビット11を駆動軸12aの回りに回転させると共に、駆動軸12aの回転をビット11のロッド11bに伝達させ、ビット11を自転させることにより円柱状の除去部分の周囲の、ハッチングで示すコンクリートを円錐台状、あるいは円柱状に粉砕することが行われる。粉砕されたコンクリートの粉末は空気を噴射することにより、または吸引することにより排除され、除去部分2が形成される。
【0037】
除去部分2の形成後、その内部に充填材4を充填すると共に、アンカーボルトや鉄筋、鋼管等、既存コンクリート1に付加される部材の種類に適合したアンカー体3を挿入することにより定着部5が形成される。アンカー体3には充填材4との間で付着力や支圧力を得るための突起やスタッドボルト、定着板等の定着材3bが突設される。
【0038】
図1〜図4の場合、アンカー体3の頭部を基礎8の天端に定着させるために、基礎8上に柱脚6を包囲する方形状のベースプレート15が配置される。アンカー体3の頭部はベースプレート15を貫通し、ベースプレート15上からナット3aが緊結される等により基礎8に定着される。
【0039】
柱脚6の周囲にはブレース7からの引張力と圧縮力を柱脚6に分散させて伝達するためのバンドプレート16が配置され、ベースプレート15に一体化する。バンドプレート16の内周と柱脚6の周囲との間の空隙には柱脚6の表面を保護するためのモルタル等の充填材17が充填される。
【0040】
ガセットプレート9はベースプレート15とバンドプレート16に跨って接合され、ガセットプレート9にブレース7の端部に接続しているブラケット7aがピン7b等により回転自在に連結される。図2中、ベースプレート15の、ガセットプレート9,9が接合されている部分の下にもアンカー体3と充填材4からなる定着部5が形成されている。
【0041】
図3は除去部分2の表面側の区間の径が100mm 程度で、奥側の区間の径が200mm 程度の場合のアンカー体3の納まり例を示すが、図4は図3の場合より大きい引き抜き抵抗力を確保する場合に対応し、除去部分2の全体の径を拡大し、一定着部5に付き、多数本(3本以上)のアンカー体3を群として配置した場合の定着部5を示す。図4中、9aはピン7bが挿通する挿通孔を示す。
【0042】
例えば定着部(充填材)の形状が円柱状である場合に、多数本のアンカーボルトを群として配置した場合、アンカーボルト群全体に作用する引き抜き力が1本当たりのアンカーボルトが負担する引き抜き抵抗力の合計より小さいときでも、アンカーボルト群が一体となることで、アンカーボルト群全体に作用する引き抜き力が充填材の全体に作用するため、全アンカーボルトが充填材と共に引き抜かれる事態が想定される。
【0043】
これに対し、図4に示す本発明の場合にはアンカー体3の群全体に作用する引き抜き力が充填材4の全体に作用しても、充填材4が係止部4aにおける支圧力によって抵抗するため、アンカー体3の群が充填材4と共に引き抜かれる事態は回避される。
【0044】
図5は既存コンクリート1が建物の梁18である場合に、梁18の側面に定着部5を形成し、定着部5のアンカー体3にブレース7を接続した場合を示す。図5ではアンカー体3にアンカーボルトやPC鋼棒を使用しているため、アンカー体3の頭部をベースプレート15とナット3aによって梁18の側面に定着させた上で、アンカー体3の頭部にガセットプレート9を用いずに、ブレース7のブラケット7aを直接、ナット3aによって連結している。
【0045】
既存コンクリート1の梁18にブレース7を接続する場合、梁18にはブレース7からの引張力と圧縮力によってせん断力が伝達されるが、せん断力の伝達上はアンカー体3がせん断力の作用方向への投影面積の大きい形状を有する程、有利であるため、アンカー体3からのせん断力を確実に梁18に伝達する上ではアンカー体3にアンカーボルト等より径の大きい鋼管を使用することが有効である。
【0046】
図5の場合にはまた、アンカー体3にブレース7からの引張力と圧縮力によって曲げモーメントが作用するが、アンカーボルトに鋼管が一体化した場合にはアンカー体3としての断面性能が高まるため、図5に示すアンカーボルト等のみの場合よりアンカー体3としての曲げモーメントに対する抵抗力が増大する。このため、特に梁18から突出するアンカーボルトの頭部の周辺をコンクリート等で拘束しなくても、アンカー体3としては図5の場合より曲げモーメントに対する十分な抵抗力が発揮される。
【0047】
またアンカー体3を構成する鋼管の奥側が除去部分2の、断面積の大きい奥側の区間に定着材3bによって定着された場合には、曲げモーメントに対してはアンカー体3と充填材4が一体化した定着部5全体が抵抗することになる。その上、曲げモーメントが最大になる定着部5の奥側の断面積が拡大しているため、除去部分2と充填材4が円柱状に形成される従来の場合よりアンカー体3としての先端部における曲げモーメントに対する耐力が増大する。
【0048】
併せてブレース7からのせん断力は除去部分2の表面側の区間に内接する鋼管、及び断面積の大きい奥側の区間の充填材4を通じて梁18に伝達され、梁18によって負担される。
【0049】
以上によりアンカー体3とそれを含む定着部5は図1〜図4の場合のように軸方向の引張力に対してのみでなく、曲げモーメント及びせん断力に対しても高い抵抗力を有することになる。
【0050】
図9はアンカー体3の先端部3cを頭部側から先端部側へかけて断面積が拡大する形状に形成した請求項6に記載の定着部5の形成例を示す。ここでは先端部3cを円錐台形状に形成しているが、先端部3cの形状は問われず、また必ずしも中実断面である必要はない。図9は図1と同様に既存コンクリート1が基礎8である場合の定着部5と、アンカー体3への、ガセットプレート9付きのベースプレート15の定着状態を示す。
【0051】
アンカー体3が受ける引き抜き力に対する反力はアンカー体3の先端部3cから充填材4に、先端部3cから頭部側へかけて拡大する領域に伝達され、充填材4から既存コンクリート1に伝達されるため、充填材4の係止部4aの形成位置によってはその外縁より広範囲に亘って伝達される。
【0052】
引き抜き力に対する反力は充填材4と既存コンクリート1に対し、図9において破線で示すようにアンカー体3の先端部3cの外周面に垂直な線で包囲された範囲に伝達されると考えられるが、図9に示すように係止部4aの外縁がその範囲の内側にある場合に、反力が係止部4aの外縁より広範囲に伝達される。
【0053】
図10は既存コンクリート1の表面に配置されたベースプレート15からアンカー体3の頭部を大きく突出させ、アンカー体3に、その定着状態で軸方向に緊張力を与え、その反力をベースプレート15を介して既存コンクリート1に負担させた請求項1に記載の定着部5の形成例を示す。緊張力は除去部分2内に充填材4を充填すると共に、アンカー体3を除去部分2内に挿入し、充填材4を硬化させた後に与えられる。
【0054】
この場合、緊張力の反力がベースプレート15の裏面から既存コンクリート1へ圧縮力として伝達され、既存コンクリート1において破線で示すようにその表面側から奥側へかけて次第に拡大する領域において負担されるため、反力がベースプレート15から既存コンクリート1に確実に伝達されるよう、図10ではベースプレート15の裏面と既存コンクリート1の表面との密着状態を確保するために除去部分2内に充填される充填材4がベースプレート15の裏面に回り込み、既存コンクリート1の表面との間の隙間を埋めるようにしている。
【0055】
図10の場合、ベースプレート15の表面から突出したアンカー体3の頭部にプレート19が接合され、プレート19に構造部材や非構造部材等の各種部材を接続するためのガセットプレート9等が接合される。
【0056】
図10ではまた、プレート19のガセットプレート9等に構造部材や非構造部材等を接合した場合に、構造部材や非構造部材等からアンカー体3に繰り返して作用する軸方向力をアンカー体3のベースプレート15から突出した部分に負担させるよう、アンカー体3の充填材4中への定着部分と突出部分を区分するために、ベースプレート15をナット3aによって定着させた上で、プレート19を両面側からナット20,20でアンカー体3の突出部分に接合している。
【0057】
図9,図10のいずれの場合も、アンカー体3の充填材4への定着部分における充填材4との付着(密着)による一体性を高める上では、アンカー体3の全長に亘って、または先端部3cを除く全長に図示するようにねじを切るか、節を形成する等により付着面積を大きくしておくことが好ましい。
【0058】
【発明の効果】
既存コンクリートの表層側の一部を、表面側の断面積より奥側の断面積が大きい部分を有する形状に除去し、この除去部分にアンカー体の挿入と充填材の充填により定着部を構成することで、充填材に除去部分内で既存コンクリートにその表面側へ係止、あるいは係合し得る係止部を形成するため、アンカー体に作用する引き抜き力に対し、充填材の付着力に加え、係止部における既存コンクリートとの間の支圧力によって抵抗することができ、付着力のみの場合より抵抗力を増大させることができる。
【0059】
この結果、付着力のみの場合より定着部の数を削減できる等、除去部分の範囲を拡げる必要がないため、コンクリート中の鉄筋の損傷等による既存コンクリートの耐力への影響がなくなり、アンカー体定着後の既存コンクリートの信頼性が向上し、コンクリートの増し打ちを要しない。
【0060】
請求項3では除去部分を深さ方向に表面側と奥側の二区間に区分し、表面側の区間を円柱状に、奥側の区間を表面側の区間より大きい径の円柱状に形成するため、除去部分の形成が容易である。
【0061】
請求項4,5では除去部分の全体の内の、深さ方向の少なくとも一部の区間を表面側から奥側へかけ、断面積が次第に拡大する形状に形成することで、アンカー体の軸に直交する断面に対して傾斜した係止部を形成するため、既存コンクリートが充填材から受ける引き抜き力に対し、充填材の係止部の外縁から既存コンクリートの表面側へかけて次第に拡大する領域において抵抗することになり、既存コンクリートの破壊に対する安全性が高まる。
【0062】
請求項6ではアンカー体の先端部を頭部側から先端部側へかけて断面積が拡大する形状にすることで、アンカー体の先端部に作用する引き抜き力はアンカー体先端部のコーン状の形状により充填材に、アンカー体の先端部から頭部側へかけて次第に拡大する領域に伝達され、被定着材には充填材の係止部の外縁より広範囲に亘って伝達され得るため、充填材に係止部が形成されただけの場合より被定着材が引き抜き力に抵抗する領域が拡大し、被定着材の抵抗の効果が向上する。
【0063】
請求項1では被定着材の表面にベースプレートを配置し、アンカー体に、その定着状態で軸方向に緊張力を与えることで、緊張力の反力をベースプレートの裏面から被定着材へ圧縮力として伝達させ、被定着材においてその表面側から奥側へかけて次第に拡大する領域において負担させるため、圧縮力をアンカー体の被定着材への定着部分とそれを包囲する被定着材に対し、引き抜き、あるいは抜け出しに対する抵抗力として作用させることができ、アンカー体の被定着材への定着部分の安定性が格段に向上する。
【0064】
請求項2では請求項1において、ベースプレートの表面から突出したアンカー体の頭部にプレートを接合することで、プレートに接合された構造部材や非構造部材等からアンカー体に繰り返して作用する軸方向力に対し、主にアンカー体のベースプレートから突出した部分に負担させることができるため、アンカー体の被定着材への定着部分への影響が低減され、繰り返し荷重に対してもアンカー体の定着部分の安定性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 既存コンクリートとしての基礎に定着部を形成した様子を示した縦断面図である。
【図2】 図1の横断面図である。
【図3】 図1の定着部の拡大図である。
【図4】 (a) はアンカー体を群として配置した場合の定着部を示した縦断面図、(b) は(a) の横断面図である。
【図5】 既存コンクリートとしての梁に定着部を形成した様子を示した縦断面図である。
【図6】 除去部分の中心部分を除去する様子を示した立面図である。
【図7】 除去部分の周辺部分を除去する様子を示した立面図である。
【図8】 図8に示すビットと駆動軸との関係を示した斜視図である。
【図9】 請求項6に記載の定着部の形成例を示した縦断面図である。
【図10】 請求項1及び請求項2に記載の定着部の形成例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
1……既存コンクリート、1a……注入孔、1b……吐出孔、2……除去部分、3……アンカー体、3a……ナット、3b……定着材、3c……先端部、4……充填材、4a……係止部、5……定着部、6……柱脚、7……ブレース、7a……ブラケット、7b……ピン、8……基礎、9……ガセットプレート、9a……挿通孔、10……コアチューブ、10a……切削刃、11……ビット、11a……切削刃、11b……ロッド、12……駆動装置、12a……駆動軸、13……支持部材、14……アタッチメント、15……ベースプレート、16……バンドプレート、17……充填材、18……梁、19……プレート、20……ナット。
Claims (6)
- アンカー体が定着される被定着材の表層側の一部を除去し、その除去部分内にアンカー体を挿入すると共に、充填材を充填して構成され、前記除去部分の全体の内の、深さ方向の少なくとも一部の区間に、表面側の断面積より奥側の断面積が大きい部分を有し、充填材が前記除去部分の深さ方向の全長に亘って充填され、この除去部分の深さ方向の全長に亘ってアンカー体と充填材が一体となり、アンカー体に作用する引張力と曲げモーメント及びせん断力に対し、除去部分の深さ方向の全長に亘ってアンカー体と充填材が一体となって抵抗するアンカー体の定着部であり、前記被定着材の表面にベースプレートが配置され、このベースプレートの裏面と被定着材の表面との間の隙間には前記除去部分内に充填された充填材が回り込んで前記隙間を埋めており、この定着状態でアンカー体に軸方向に緊張力が与えられ、その反力をベースプレートを介して被定着材が負担しているアンカー体の定着部。
- ベースプレートの表面から突出したアンカー体の頭部にプレートが接合されている請求項1記載のアンカー体の定着部。
- 除去部分は表面側の区間と、奥側の区間に区分され、表面側の区間は円柱状をし、奥側の区間は表面側の区間より大きい径の円柱状をしている請求項1、もしくは請求項2記載のアンカー体の定着部。
- 除去部分の全体の内の、深さ方向の少なくとも一部の区間は表面側から奥側へかけ、断面積が次第に拡大する形状をしている請求項1、もしくは請求項2記載のアンカー体の定着部。
- 除去部分は表面側の区間と、奥側の区間と、その中間の区間に区分され、表面側の区間は円柱状をし、中間の区間は円錐台状をし、奥側の区間は表面側の区間より大きい径の円柱状をしている請求項4記載のアンカー体の定着部。
- アンカー体の先端部は頭部側から先端部側へかけて断面積が拡大する形状をしている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のアンカー体の定着部。
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