JP3693564B2 - ロッカーアーム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば車両の内燃機関における動弁機構において、シリンダヘッドに設けられたバルブをカムの回転に伴って開閉させるためのロッカーアーム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図14は車両の内燃機関における動弁機構を示す断面図である。同図に示すように、この動弁機構には、クランク軸(2)に連動して回転するカム(3)の回転運動を、吸気弁や排気弁等のバルブ(4)におけるバルブステム(5)の往復直線運動に変換するためのロッカーアーム(1)が設けられている。
【0003】
このロッカーアーム(1)は、図14及び図15に示すように、平行に配置される一対の両側壁(11)と、両側壁(11)の長さ方向の一端部間及び他端部間を連結するバルブステム当接壁(12)及びピボット当接壁(13)とを備えている。そして両側壁(11)の長さ方向中間領域に設けられた軸固定孔に、ローラ(7)の支持軸(8)が固定されて、そのローラ(7)と、上記カム(3)とが転がり接触し得るように構成されている。更にロッカーアーム(1)におけるピボット当接壁(13)の下面側には、ピボット係合凹部(13a)が形成されており、この凹部(13a)に、シリンダヘッドに固定されたピボット部(6)が係合状態に配置されるとともに、バルブステム当接壁(12)の下面には、バルブステム(5)の先端が当接状態に配置されている。なお、バルブステム当接壁(12)の下面側には、バルブステム案内溝(12a)が形成されており、バルブステム(5)の先端を案内溝(12a)内に収容して、バルブステム先端を溝壁(両側壁11の下縁部)に係止させることにより、ロッカーアーム(1)が、ピボット部(6)側を支点として、ローラ支持軸(8)の軸方向に位置ずれするのを防止するようにしている。
【0004】
このようなロッカーアーム(1)は、バルブステム当接壁(12)の下面側に、バルブステム案内溝(12a)を形成したり、その案内溝(12a)の内面を、バルブステム(5)との摺接を円滑に行うために所定の仕上げ面に形成する必要があり、高い寸法精度が要求される上、ロッカーアーム自体の形状も複雑であるため、従来より、合金鋼や炭素鋼等の材料を用いた鍛造やロストワックス法等の精密鋳造により製造するのが通例であった。ところが、鍛造や精密鋳造においては、確かに、高精度化や形状の複雑化に対処することは可能であるが、生産効率が低く、更には所定の剛性等を確保するために、高重量化を来す恐れがある。
【0005】
これに対し、近年の動弁機構の技術分野においては、内燃機関の高速化、高出力化に伴って、慣性重量の低減を図るために、ロッカーアーム自体の軽量化が切望されているのが現状である。このため、近年になって、ロッカーアームの軽量化に対処し得るように、鋼板等のプレス加工によるロッカーアームの製造技術が多数提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ロッカーアーム(1)は、既述したように、バルブステム案内溝(12a)や、溝仕上げ処理等に高い精度が要求されるため、プレス成形によりロッカーアームを製造する場合、高精度の溝付け加工等において、多くの工数が必要となり、製造が困難になるという問題を抱えている。
【0007】
一方、本件出願人は、先に特願平10−76930号において、プレス加工によるロッカーアームの製造技術を提案している。この提案技術は、バルブステム当接壁の下面側に、押圧パンチによる押圧加工によって、所定のバルブステム案内溝を形成するというものであり、高い精度の案内溝を形成することが可能である。
【0008】
しかしながら、押圧パンチをバルブステム当接壁に打ち込む際には、せん断現象によりバルブステム当接壁にクラックが発生する恐れがあるので、案内溝の深さを深く形成するのが困難であり、場合によっては、案内溝内にバルブステム先端を安定状態に収容できない恐れがある等、改良の余地が残されている。
【0009】
なお、上記提案技術において、肉厚の厚い材料を用いれば、バルブステム案内溝を深く形成できるが、そうすると、ロッカーアーム全体の肉厚が増大するので、高重量化を来すという問題が発生する。
【0010】
この発明は、軽量化を図ることができるとともに、十分な深さのバルブステム案内溝を、高精度かつ簡単に形成できる上更に、効率良く製造することができるロッカーアーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本第1発明のロッカーアームの製造方法は、一対の両側壁と、その両側壁における長手方向の一端部間を連結するバルブステム当接壁とを具備する中間製品を得る第1工程と、前記中間製品の前記バルブステム当接壁を、押圧加工により両側から幅寄せ方向に圧縮成形して増肉処理を行って、そのバルブステム当接壁の肉厚を増大させる第2工程と、増肉された前記バルブステム当接壁の下面側に、溝部を形成する第3工程とを含み、前記溝部を、バルブステム案内溝として構成するものを要旨としている。
【0012】
本第1発明のロッカーアームの製造方法においては、バルブステム当接壁を、幅寄せ方向に圧縮成形して厚肉にかつ高強度に成形した後、その当接壁に溝部を形成してバルブステム案内溝として構成するものであるため、案内溝を押圧加工等によって所定の深さに形成しようとも、せん断現象によるクラックの発生を有効に防止することができる。
【0013】
更に押圧パンチの打ち込み等による押圧加工により、バルブステム案内溝を支障なく形成できるため、案内溝を押圧パンチの形状に対応させて正確に形成することができ、高い精度の案内溝を形成することができる。
【0014】
また合金鋼や炭素鋼等を用いる鍛造や精密鋳造等とは異なり、鋼板を材料とするプレス加工のみでロッカーアームを製造できるので、ロッカーアーム自体の軽量化を図ることができるとともに、生産効率の向上を図ることができる。
【0015】
上記第1発明においては、前記第2工程が、前記一対の両側壁における前記バルブステム当接壁の下側に対応する部分を圧縮成形して、段付き側面部を形成する工程を含む構成を採用するのが好ましい。
【0016】
すなわち、この構成を採用する場合には、バルブステム当接壁の下側部分を中心として増肉されるため、当接壁下面に溝付け加工を行った際に、バルブステム当接壁中央部全体が上方へ押し上げられるような不格好な位置変形を防止することができる。
【0017】
また第1発明においては、前記第2工程及び前記第3工程を繰り返し行うものとする構成を採用するのが良い。
【0018】
すなわち、この構成を採用する場合、増肉及び溝付けを徐々に無理なく行うことができ、例えば押圧加工によって一度に増肉及び溝付けを行う場合と比較して、押圧加工による多大な荷重が局部的に集中するのを回避することができる。
【0019】
上記第1発明においては、既述したように、溝付け用押圧パンチの打ち込み等の押圧加工により、バルブステム案内溝を精度良く形成することができる。従って、本第1発明においては、前記第3工程が、前記バルブステム当接壁の下面側に、溝付け用押圧パンチを打ち込んで、前記バルブステム案内溝を形成する工程を含む構成を採用するのが望ましい。
【0020】
また上記第1発明においては、前記溝付け用押圧パンチの打ち込みと同時に、前記バルブステム案内溝の底面を、所定の湾曲面に形成するのが良い。すなわち、ロッカーアームを動弁機構に組み付けた際に、案内溝の底面に、バルブステム先端を円滑に摺接させることができ、弁の開閉動作等をスムーズに行うことができる。更に別工程で案内溝底面を湾曲面に仕上げる必要がないので、その分、湾曲面の形成を効率良く行うことができる。
【0021】
一方、本第2発明は、上記第1発明の実施により得られるロッカーアームを特定するものである。すなわち、本第2発明のロッカーアームは、請求項1ないし5のいずれかに記載のロッカーアームの製造方法によって製造されてなるものを要旨とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
次に、本発明の第1実施形態であるロッカーアームの製造方法を、図面を参照しつつ、製造手順に従って詳細に説明する。なお、以下の図面において、ロッカーアーム(中間製品を含む)は製造過程の状態で示しており、つまり実使用状態に対して上下を反転させた状態で示しているが、以下の説明においては、実使用状態に準じて図面の「上方側」を「下方側」として説明する。
【0023】
まず図1に示すように、鋼板の所定領域を打ち抜いて、両側縁に円弧状凸部(22a)が一体に形成された第1中間製品(20A)を得る。
【0024】
次に図2に示すように、上記第1中間製品(20A)の他端部中間領域を、張出成形により凹没させて、半球面状のピボット係合凹部(24)を形成した後、中央領域を打ち抜いて、鼓形状の孔(26)を形成して、第2中間製品(20B)を得る。
【0025】
続いて図3に示すように、上記第2中間製品(20B)に対し、折曲加工を施すことにより、本発明の中間製品に相当する第3中間製品(30B)を得る。
【0026】
この第3中間製品(20C)は、端面視略U字状に形成されており、両側に対向配置された一対の両側壁(22)と、その両側壁(22)の一端部下端間を連結するバルブステム当接壁(30)と、他端部下端間を連結するピボット当接壁(23)とを有している。
【0027】
なお、第3中間製品(20C)において、ピボット係合凹部(24)は、ピボット当接壁(23)の下面側中央に配置されるとともに、鼓形状の孔(26)は、一対の両側壁(22)間におけるバルブステム当接壁(30)及びピボット当接壁(23)との間に配置される開口部として構成される。
【0028】
こうして得られた第3中間製品(20C)のバルブステム当接壁(30)を、図4に示すように、押圧加工により増肉して、第4中間製品(20D)を得る。
【0029】
すなわち図7(a)の状態から同図(b)の状態に示すように、第3中間製品(20C)の両側壁(22)における長さ方向中間部(円弧状凸部22aに相当する部分)を拘束するように所定の金型にセットして、両側壁(22)の一端部分(バルブステム当接壁(30)に相当する部分)を両側から内方向(幅寄せ方向)に向けて押圧することにより、バルブステム当接壁(30)を幅寄せ方向に圧縮成形して、バルブステム当接壁(30)の肉厚を増大させる。
【0030】
次に、必要に応じて、増肉処理された第4中間製品(20D)に対し、軟化焼鈍処理を施して、バルブステム当接壁(30)の内部応力を除去する。
【0031】
続いて図5に示すように、押圧加工(圧印加工)により、上記第4中間製品(20D)におけるバルブステム当接壁(30)の下面側にバルブステム案内溝(40)を形成して、第5中間製品(20E)を得る。
【0032】
すなわち、一端部(バルブステム当接側端部)における両側壁(22)の内面側、外面側及び前端面を拘束するように所定の金型にセットして、溝付け用の押圧パンチを、バルブステム当接壁(30)の下面側の所定領域に押圧して、バルブステム当接壁(30)の下面側を押圧パンチ面に対応する形状に塑性変形させる。これにより、バルブステム当接壁(30)の下面側中間領域を上方に凹没変形するとともに、その凹没部の両側を下方へ膨出させるように変形し、両側に案内壁(41)を有する案内溝(40)を形成する。
【0033】
更にこの溝付け用の押圧加工と同時に、案内溝(40)の底面を、上記溝付け用押圧パンチの打ち込み面に対応させて、バルブステム先端と円滑に摺接し得るような所定の曲率を有する湾曲面(42)に形成する。
【0034】
そして最後に、図6に示すように、上記第5中間製品(20E)の両側壁(22)における長手方向中間部(円弧状凸部22a)に、両側から孔開けパンチを打ち込んで、両側壁(22)の所定位置に、互いに軸心が一致する軸固定孔(21)を形成する。
【0035】
こうして本実施形態によるロッカーアーム(20)を製造する。
【0036】
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、外径抜き加工、折曲加工、押圧加工、及び打ち抜き加工等のプレス加工のみでロッカーアーム(20)を製造するものであるため、合金鋼や炭素鋼等等を用いて鍛造や精密鋳造等により製造する場合と違って、ロッカーアーム(20)自体の軽量化を図ることができるとともに、生産効率の向上及びコストの削減を図ることができる。
【0037】
更に押圧加工により、バルブステム案内溝(40)を形成しているため、案内溝(40)を溝付け用押圧パンチの形状に対応させて正確に形成でき、寸法精度にばらつきのない、高い精度の案内溝(40)を形成することができる。
【0038】
しかも、バルブステム当接壁(30)を、増肉処理によって、十分な肉厚にかつ高強度に成形した後、押圧加工により、そのバルブステム当接壁(30)に案内溝(40)を形成するものであるため、十分な深さの案内溝(40)を形成しようとも、せん断現象によるクラックの発生を有効に防止することができる。このように十分な深さの案内溝(40)を高精度で支障なく形成できるので、例えばこのロッカーアーム(20)を動弁機構に組み付けた際に、案内溝(40)内にバルブステム先端を安定状態に収容することができ、動作信頼性を確実に向上させることができる。
【0039】
また、案内溝(40)の底面を、所定の曲率半径を有する湾曲面(42)に形成しているため、動弁機構に組み付けた際に、案内溝(40)の底面に、バルブステム先端を円滑に摺接させることができ、弁の開閉動作をスムーズに行うことができる。
【0040】
特に本実施形態においては、溝付け押圧加工時における押圧パンチの打ち込みによって、案内溝(40)の形成と、湾曲面(42)の形成とを同時に行っているため、これらを別々の工程で行う場合と比べて、より一層効率良く製造することができる上更に、切削加工等の低能率の機械加工を用いないので、一段と効率良く製造することができる。
【0041】
<第2実施形態>
次にこの発明の第2実施形態であるロッカーアームの製造方法について説明する。この第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様、鋼板を打ち抜いて第1中間製品(20A)、第2中間製品(20B)を得た後(図1、2参照)、折曲加工により第3中間製品(20C)を得る(図3参照)。
【0042】
次に図8及び図11に示すように、第3中間製品(20C)の両側壁(22)における長さ方向中間部を拘束するように所定の金型にセットして、両側壁(22)の一端部(バルブステム当接側端部)におけるバルブステム当接壁(30)の下側に対応する部分を、両側から内方向(幅寄せ方向)に向けて押圧することにより、バルブステム当接壁(30)の下側部分を中心にして幅寄せ方向に圧縮成形して、両側壁(30)の基端部に段付き側面部(31)を形成するように、バルブステム当接壁(30)の肉厚を増大させて、第4中間製品(120D)を得る。
【0043】
次に、必要に応じて、第4中間製品(120D)に対し、軟化焼鈍処理を施して、内部応力を除去する。
【0044】
続いて図9及び図12に示すように、第4中間製品(120D)における両側壁(22)の一端部の内面側、外面側及び前端面を拘束するように所定の金型にセットして、溝付け用の押圧パンチを、バルブステム当接壁(30)の下面側に押圧して、当接壁(30)の下面側中央領域を上方に凹没変形するとともに、その凹没部の両側を下方へ膨出させるように塑性変形し、両側に案内壁(41)を有する溝部(32)を形成して、第5中間製品(120E)を得る。
【0045】
次に上記図8に示すような幅寄せ加工と、図9に示すような溝付け加工とを繰り返し行うことにより、バルブステム当接壁(30)を徐々に上方へ移動させて、溝部(32)の深さを次第に深めつつ、案内壁(41)の高さを次第に高めていく。
【0046】
そして、最終的には、段付き側面部(31)を消失させるように、幅寄せ加工を行った後、最後の溝付け加工により、仕上げ用の押圧パンチを用いて、上記第1実施形態と同様に、案内溝(40)の底面を、所定の湾曲面(42)に形成し、図10及び図13に示すように、十分な深さの案内溝(41)を有する第6中間製品(120F)を得る。
【0047】
その後、上記第1実施形態と同様に、両側壁(22)の中央部に一対の軸固定孔(21)等を形成して、ロッカーアームを製造する。
【0048】
その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0049】
以上のように、この第2実施形態におけるロッカーアームの製造方法によれば、バルブステム当接壁(30)を、幅寄せ加工を行う際に、両側壁(22)におけるバルブステム当接壁(30)の下側部分を両側から押圧することにより、段付き側面(31)を形成するように、当接壁(30)の下側部分を中心にして増肉した後、溝付け加工を行うものであるため、両側壁(22)のバルブステム当接側における折曲部内側のコーナー部(C)を滑らかな円弧状に形成することができる。すなわち、上記第1実施形態のように、バルブステム当接壁(30)の全体を両側から押圧加工して、溝付け加工を行う場合、図5及び図6に示すように、両側壁(22)の折曲部内側のコーナー部(C)が食い込み状に鋭角に形成されることがあり、美観上好ましくなく、また場合によっては、内側コーナー部(C)にせん断現象によるクラックが発生することもあり、歩留まりが悪化することもある。
【0050】
これに対し、本第2実施形態のように、バルブステム当接壁(30)の下側部分を中心にして幅寄せ加工し、溝付け加工を行う場合には、図12及び図13に示すように、両側壁(22)の折曲部内側コーナー部(C)を、滑らか円弧状に維持できるため、良好な美観を得ることができるとともに、内側コーナー部(C)にせん断現象によるクラック等の不具合が発生するのを、より一層確実に防止することができる。
【0051】
しかも、本第2実施形態においては、幅寄せ加工と溝付け加工とを繰り返し行って、案内溝(40)の溝深さを次第に深めるように徐々に成形するものであるため、押圧時に局部的に多大な荷重が集中するのを防止でき、精度良くスムーズに製造することができる。
【0052】
なお本発明においては、言うもでもなく、押込代の形状は、上記のものだけに限られることはない。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本第1発明のロッカーアームの製造方法によれば、バルブステム当接壁を、押圧加工により幅寄せ方向に圧縮成形して、バルブステム当接壁を厚肉かつ高強度に成形した後、その当接壁に案内溝を形成するものであるため、案内溝を押圧加工等によって十分な深さに形成しようとも、せん断現象によるクラックの発生を有効に防止することができる。このため例えば、動弁機構に組み付けた際に、案内溝内にバルブステム先端を安定状態に十分収容することができて、動作信頼性を確実に向上させることができる。更に案内溝を押圧パンチの打ち込み等による押圧加工により形成できるため、案内溝を押圧パンチの形状に対応させて正確に形成でき、高い精度の案内溝を形成することができる。また鍛造や精密鋳造等とは異なり、鋼板を材料とするプレス加工のみでロッカーアームを製造できるので、ロッカーアーム自体の軽量化を図ることができるとともに、生産効率の向上及びコストの削減を図ることができるという効果がある。
【0054】
本第1発明において、一対の両側壁におけるバルブステム当接壁の下側に対応する部分を圧縮変形する場合には、バルブステム当接壁の下側部分を中心として増肉されるため、当接壁下面に溝付け加工を行った際に、バルブステム当接壁中央部全体が上方へ押し上げられるような不格好な位置変形を防止でき、当接壁と両側壁との間のコーナー部内側を円弧状に形成でき、良好な美観を得ることができるという利点がある。
【0055】
また本第1発明において、幅寄せ工程と溝付け工程を繰り返し行う場合には、増肉及び溝付けを徐々に無理なく行うことができ、例えば押圧加工によって一度に増肉及び溝付けを行う場合と比較して、押圧加工による多大な荷重が局部的に集中するのを回避でき、クラック等の不具合が発生するのを確実に防止できるという利点がある。
【0056】
更に本第1発明において、溝付け用の押圧加工と同時に、バルブステム案内溝の底面を所定の湾曲面に形成する場合には、ロッカーアームを動弁機構に組み付けた際に、案内溝の底面にバルブステム先端を円滑に摺接させることができ、弁の開閉動作をスムーズに行えて、より一層動作信頼性を向上させることができるとともに、案内溝底面における湾曲面の形成を効率良く行うことができるという利点がある。
【0057】
一方、本第2発明は、上記第1発明の製造方法により製造されたロッカーアームを特定するものであるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態であるロッカーアームの製造方法における第1中間製品を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の製造方法における第2中間製品を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の製造方法における第3中間製品を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態の製造方法における第4中間製品を示す斜視図である。
【図5】第1実施形態の製造方法における第5中間製品を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態の製造方法により得られたロッカーアームを示す斜視図である。
【図7】同図(a)は第1実施形態の製造方法における第3中間製品を示す平面図、同図(b)は第4中間製品におけるバルブステム当接壁周辺を示す平面図である。
【図8】この発明の第2実施形態の製造方法における第4中間製品を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態の製造方法における第5中間製品を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態の製造方法における第6中間製品を示す斜視図である。
【図11】第2実施形態における第4中間製品のバルブステム当接部を示す断面図である。
【図12】第2実施形態における第5中間製品のバルブステム当接部を示す断面図である。
【図13】第2実施形態における第6中間製品のバルブステム当接部を示す断面図である。
【図14】従来の車両における内燃機関の動弁機構を示す断面図である。
【図15】従来の動弁機構に適用されたロッカーアームのバルブステム当接部を示す断面図である。
【符号の説明】
20…ロッカーアーム
20C、120D、120E…中間製品
22…両側壁
30…バルブステム当接壁
31…段付き側面部
32…溝部
40…バルブステム案内溝
42…湾曲面(底面)
Claims (6)
- 一対の両側壁と、その両側壁における長手方向の一端部間を連結するバルブステム当接壁とを具備する中間製品を得る第1工程と、
前記中間製品の前記バルブステム当接壁を、押圧加工により両側から幅寄せ方向に圧縮成形して増肉処理を行って、そのバルブステム当接壁の肉厚を増大させる第2工程と、
増肉された前記バルブステム当接壁の下面側に、溝部を形成する第3工程とを含み、
前記溝部を、バルブステム案内溝として構成するものとしたロッカーアームの製造方法。 - 前記第2工程が、前記一対の両側壁における前記バルブステム当接壁の下側に対応する部分を圧縮成形して、段付き側面部を形成する工程を含むものとした請求項1記載のロッカーアームの製造方法。
- 前記第2工程及び前記第3工程を繰り返し行うものとした請求項1又は2記載のロッカーアームの製造方法。
- 前記第3工程が、溝付け用押圧パンチの打ち込みにより前記溝部を形成するものとした請求項1ないし3のいずれかに記載のロッカーアームの製造方法。
- 前記第3工程が、前記溝付け用押圧パンチの打ち込みと同時に、前記バルブステム案内溝の底面を、所定の湾曲面に形成する工程を含むものとした請求項4記載のロッカーアームの製造方法。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載のロッカーアームの製造方法によって製造されてなることを特徴とするロッカーアーム。
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