JP3692484B2 - 印刷用紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般の上質紙系印刷用紙に関するもので、上質紙の風合いを損なうことなく軽量コ−ト紙並みの印刷面インキ光沢度を発現する印刷用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に上質紙系印刷用紙は製紙用木材パルプを主原料として抄造されており、紙層構造が粗いので印刷した場合インクが紙層中に浸透するため、印刷面インキ光沢度など印刷品質が劣るという欠点がある。この欠点を補うために、紙の表面に微細な顔料を主成分とする塗料を塗工した塗工紙がつくられている。
【0003】
すなわち、印刷用紙において、写真などの多い多色印刷を行なう印刷用紙は、その印刷による網点の再現性、インキ濃度、インキ光沢度など印刷品質を良好ならしめるため、顔料塗料の塗工量が片面当たり20g/m2 と多いア−ト紙や、10g/m2 前後のコ−ト紙が多く使用され、雑誌などの下級用途においても7g/m2 前後の軽量コ−ト紙や5g/m2 前後の微塗工印刷用紙が使用されるようになってきた。
【0004】
また、塗工紙は一般に表面の平滑性を良くする程、印刷品質が向上するため、塗被面をキャレンダ−処理して平滑にしているのが普通である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
印刷用紙の印刷品質を良好にするため、紙の表面に顔料塗料を塗工し平滑な塗工層を形成させたア−ト紙、コ−ト紙、軽量コ−ト紙や微量コ−ト紙などの塗工紙が広く製造、使用されるようになって来たが、これらの塗工紙は顔料として使用されるカオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタンなど無機物のもつ冷たく硬い触感と重量感をもち、製紙用木材パルプを主原料として抄造された紙本来のもつ自然な風合いが失われている。尚、紙の風合いとは、肌合い、重さなどの感触、色調、平滑、光沢、などの視感を総合した感覚的品位を云う。
【0006】
近時、非塗工紙のもつ軽量感、肌合いなどの風合いを失うことなく塗工紙並みの印刷品質を有する上質紙系の印刷用紙が要望されるようになって来た。
【0007】
その対応としていくつかの試みがなされ実用化されているが、その多くは製紙塗料用として使用されている顔料や接着剤などの中から特殊な性状をもつもののみを選定して塗料を調製、抄紙機外の塗工設備、すなわちオフコ−タ−で塗工、製品としているので、製造コストが高くなり、また、小ロット品を手軽に製造出来ないという欠点がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決すべく種々検討の結果、上質紙の抄紙工程中において、スチレン・マレイン酸樹脂及び脂肪族イソシアネ−ト系ポリエステル・ポリウレタン樹脂を顔料塗料中に配合すると、微量コ−ト紙の塗工量よりもさらに少ない片面当たり固形分2〜5g/m2 の塗工量で、上質紙のもつ風合いを損なうことなく印刷面インキ光沢度の良好な印刷用紙を得ることを見いだし本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、塗工紙用顔料塗料に一般的に使用されているカオリン、炭酸カルシウムなどの顔料に接着剤としてスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを配合して調製した塗料に、スチレン・マレイン酸樹脂と脂肪族イソシアネ−ト系ポリエステル・ポリウレタン樹脂を配合した塗工液を、上質紙系の印刷用紙の抄造工程において、抄紙機上のサイズプレスにより塗工量が片面当たり固形分2〜5g/m2 になるよう塗工、乾燥せしめたところ、キャレンダ−処理せずとも印刷面インキ光沢度が良好で、しかも上質紙の風合いを失うことのない印刷用紙を得ることができたものである。尚、塗工液の塗工量は、片面当たり固形分2g/m2 以下では印刷面インキ光沢度の向上は見られず、5g/m2 以上になると上質紙の風合いが失われる。
【0010】
インクの浸透を抑えるものとして、ふすま紙や段ボ−ルシ−トなどの多孔質基材の印刷に使用される水性フレキソ印刷用インキ用のビヒクルに注目して、カゼイン、可溶性蛋白、セラック、アクリル樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、種々の部分エステル、フマル化およびマレイン化ロジンなどのを比較検討の結果、いずれも効果が見られたが、スチレン・マレイン酸樹脂が最も適していることが判明した。スチレン・マレイン酸樹脂の配合率は2〜8%(対塗工液固形分重量 %。以下同じ。)が良い。2%以下では印刷面インキ光沢度の向上は見られず、8%以上にするとコスト的に不利となる。
【0011】
また、脂肪族イソシアネ−ト系ポリエステル・ポリウレタン樹脂は弾性があるため、その配合により圧縮性の高い薄い塗工層が形成されるので柔軟性のある紙が得られ、キャレンダ−処理などで表面の平滑度を改良することなく、上質紙のもつ平滑度のままで印刷面インキ光沢度の良好な結果が得られるものと推測される。その配合率は5〜20%(対塗工液固形分重量%。以下同じ。)が良い。5%以下では紙への柔軟性付与の効果は現われず、20%以上ではコスト的に不利となる。
【0012】
なお、塗料用顔料としては、カオリンなどのクレ−、炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルクなどの無機顔料のほか、プラスチックピグメントなど、一般に使われているものはいずれも使用できる。また、塗料用接着剤としては、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレ−ト・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の合成樹脂系ラテックス、酢酸ビニル共重合体、アクリル共重合体のビニルポリマ−系ラテックス、あるいは、澱粉系、カゼインなどの蛋白 系、ポリビニルアルコ−ルなどの合成系の水溶性接着剤など一般に使われている接着剤のいずれもが使用できる。塗工する基紙としては、上質紙の他、中質紙も使用できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
【0014】
なお、印刷品質の評価は、明RIテスタ−(明製作所製)にてオフセットインキ(藍)をインキ量(ウェット量)2〜3g/m2 の範囲で同一量になるように印刷、その印刷面インキ光沢度をJIS P 8142「紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法」に従って測定、比較した。
【0015】
〔実施例1〕
広葉樹晒クラフトパルプ(以下、LBKPと略称する。)100重量%からなるパルプスラリ−をリファイナ−で叩解しフリ−ネス350ml(JIS P 8121「パルプのろ水度試験方法:カナダ標準形」による。以下同じ。)に調整し、このパルプスラリ−に、ロジン系エマルジョンサイズ剤0.5、硫酸アルミニウム2.5(Al2 3 8%液として。以下、同じ。)、各対絶乾パルプ重量%を添加して、長網多筒式抄紙機にて抄紙し、サイズプレスにて以下に示す配合の塗工液を片面当たり固形分4.5g/m2 塗工し、坪量120g/m2 の印刷用紙を得た。
【0016】
塗工液の薬品配合率(重量%)
カオリン 12
炭酸カルシウム 5
変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス 5
スチレン・マレイン酸樹脂 1.5
脂肪族イソシアネ−ト系ポリエステル・ポリウレタン樹脂 5
その他(分散剤、消泡剤など) 若干量
分散水 残量
【0017】
得られた印刷用紙は、顔料の塗工量が少ないこと、キャレンダ−処理をしていないことなどから、上質紙本来のもつ自然な風合いで、且つ嵩高で軽量感のあるものであり、また、以下に示すとおり印刷面インキ光沢度が優れた印刷用紙であった。
【0018】
印刷面インキ光沢度(%)
実施例1の印刷用紙 44.5
上質系非塗工印刷用紙(市販品) 6.4
【0019】
〔実施例2〕
針葉樹晒クラフトパルプ20、LBKP50、模造古紙再生パルプ30各重量%からなるパルプスラリ−をリファイナ−で叩解し、フリ−ネス400mlに調整、このパルプスラリ−に、ロジン系エマルジョンサイズ剤0.5、硫酸アルミニウム3.0、黄色直接染料0.02、各対絶乾パルプ重量%を添加し、長網多筒式抄紙機にて抄紙し、抄紙機上に設置されたエンボスロ−ルにて微細な波状模様マ−クを付し、その上にサイズプレスにて以下に示す塗工液を片面当たり固形分4.5g/m2 塗被し、坪量104.7g/m2 の印刷用紙を得た。
【0020】
塗工液の薬品配合率(重量%)
カオリン 10
炭酸カルシウム 10
変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス 7
スチレン・マレイン酸樹脂 1
脂肪族イソシアネ−ト系ポリエステル・ポリウレタン樹脂 3
その他(分散剤、消泡剤など) 若干量
分散水 残量
【0021】
得られた印刷用紙はエンボス処理により高級感を持ち、以下に示すとおり印刷面インキ光沢度が優れた印刷用紙であった。
【0022】
印刷面インキ光沢度(%)
実施例2の印刷用紙 40.5
エンボス処理非塗工印刷用紙(当社製品) 5.1
【0023】
〔実施例3〕
ケナフ晒クラフトパルプ20、LBKP80各重量%からなるパルプスラリ−をリファイナ−で叩解し、フリ−ネス400mlに調整し、このパルプスラリ−に対絶乾パルプ、ロジン系エマルジョンサイズ剤0.5、硫酸アルミニウム3.0、赤色直接染料0.1各重量%を添加し、長網多筒式抄紙機にて抄紙し、サイズプレスにて以下に示す塗工液を片面当たり固形分4.5g/m2 塗被し、弱キャレンダ−処理をして平滑度10秒(JIS P 8119「紙及び板紙のベック試験機による平滑度試験方法」による。)に調整し、坪量70g/m2 の本文用紙を得た。
【0024】
塗工液の薬品配合率(%)
カオリン 12
炭酸カルシウム 8
変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス 7
スチレン・マレイン酸樹脂 2
脂肪族イソシアネ−ト系ポリエステル・ポリウレタン樹脂 5
その他(分散剤、消泡剤など) 若干量
分散水 残量
【0025】
得られた本文用紙は、嵩高で自然な風合いを持ち、且つ以下に示すごとく印刷面インキ光沢度が優れた本文用紙であった。
【0026】
印刷面インキ光沢度(%)
実施例3の本文用紙 40.8
非塗工本文用紙(市販品) 3.8
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、木材パルプを主原料として抄造した原紙の風合いを損なうことなく、軽量コ−ト紙並みの印刷面インキ光沢度を発現する印刷用紙が得られ た。さらに、エヤ−ナイフなどを備えたコ−タ−などを使用することなく、抄紙機上のサイズプレスでも塗工出来るので、低価格で高級印刷用紙を提供出来るものであり、また、塗工量が少ないので損紙の再利用も容易であるなどの利点を有する。

Claims (1)

  1. 上質紙系印刷用紙を抄造する工程において、スチレン・マレイン酸樹脂、脂肪族イソシアネ−ト系ポリエステル・ポリウレタン樹脂をカオリン、炭酸カルシウムなどの無機顔料を含む塗工液に配合し、片面当たり塗工量が固形分2〜5g/m2 となるよう塗被、乾燥したことを特徴とする印刷用紙。
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