JP3691988B2 - 多気孔型エポキシ砥石およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱により収縮する性質の発泡樹脂製気孔形成剤により形成された多数の気孔を有する多気孔型エポキシ砥石、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
研削砥石において、砥粒を結合するためのボンド(結合剤)は、一般に、ビトリファイド(ガラス質)ボンド、レジノイド(樹脂質)ボンド、メタル(金属質)ボンド、電着金属などが用いられているが、その中でレジノイドボンドに用いられる樹脂としては、その作業や使用条件に適合するように、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)樹脂などが用いられている。そして、それらレジノイドボンドの中においても、特に鋳込み製法によるエポキシ砥石は、ボンドとして用いるエポキシ樹脂の低い弾性率と、鋳込みによる砥粒とボンドとの良好な濡れ状態(コーティング状態)とが相まって、深切り込みなどの高負荷研削加工に対しても好適に用いられ、高耐久性すなわち砥石寿命が得られるという特徴がある。そして、上記エポキシ砥石の切れ味および研削焼けの防止のために、無機系中空物質や有機系中空物質から成る気孔形成剤を鋳込み段階で混入させて均質な多数の気孔を砥石組織中に設けることが行われている。なかでも、発泡スチロールから成る気孔形成剤は、比較的大きな気孔が容易に得られ、且つ大幅な切れ味の向上が期待できることから多用されている。この発泡スチロールから成る気孔形成剤は、ポリスチレン樹脂が数十倍の体積に発泡させられた球体であり、エポキシ樹脂を本硬化させる120℃程度の熱処理工程において収縮させられる。
【0003】
このように製造されたエポキシ砥石70は、たとえば図6に示すように、多数の砥粒72がエポキシ樹脂74により結合された砥石組織から構成されたものであり、人工的に形成された多数の気孔76を備えている。その各気孔76内には、それを形成するために用いられた気孔形成剤の残査78が残されている。この気孔形成剤はスチロール樹脂が数十倍に発泡させられた球体であり、上記残査78は上記エポキシ樹脂74の主硬化などの目的で加熱処理されたときにその気孔形成剤が熱収縮させられたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような発泡スチロールから成る気孔形成剤を用いたエポキシ砥石は以下のような問題点があった。すなわち、▲1▼砥石組織内の気孔76の内周面に熱収縮した発泡スチロールを構成するポリスチレン樹脂すなわち残査78が強固に固着されることから、気孔76の周囲に位置することにより最も研削に関与する砥粒72が上記強固なポリスチレン樹脂すなわち残査78に覆われることにより却って研削の邪魔となり、研削抵抗を上げたり切れ味が損なわれたりして十分な研削性能が得られない。▲2▼上記気孔76の内周面に固着したポリスチレン樹脂すなわち残査78は硬いと同時に脆い性質があることから、気孔76の外周縁部にチッピング或いは欠け80が発生し易くなり、それがワークの研削面にスクラッチ傷を発生させる。▲3▼ポリスチレン樹脂自体が耐薬品性に乏しいため、ボンドとして使用したエポキシ樹脂74とそのポリスチレン樹脂とが反応して、気孔の周囲の樹脂79が本体の物性とは異なる柔軟性のない物質となり、一層上記チッピング或いは欠け80の原因となる。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エポキシ砥石本来の特徴を損なうことなく、一層切れ味に優れしかもワークの研削面にスクラッチ傷を発生させない多気孔型エポキシ砥石を提供することにある。
【0006】
本発明者等は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、気孔形成剤として、ポリメチルメタアクリレートが添加されたポリスチレンを発泡させたものを用いると、加熱収縮した残査が気孔中央部に網状となりしかもエポキシ樹脂との反応が抑制されて、従来のように気孔内面に固着することがないので、エポキシ砥石の切れ味が向上し且つスクラッチ傷の発生が好適に防止されることを見いだした。また、気孔形成剤として、ポリプロピレンを発泡させたものを用いると、加熱収縮した残査が気孔内面に膜状に形成されるが、その膜状の残査は砥石組織との接着力が全くなくしかもエポキシ樹脂と全く反応しないので、エポキシ砥石の切れ味が向上し且つスクラッチ傷の発生が好適に防止されることを見いだした。本発明はこのような知見に基づいて為されたものである。
【0007】
【課題を解決するための第1の手段】
すなわち、本発明の要旨とするところは、加熱により収縮する性質の発泡樹脂製気孔形成剤の熱収縮により形成された多数の気孔を有する多気孔型エポキシ砥石であって、その発泡樹脂製気孔形成剤が、ポリメチルメタアクリレートを含むことにある。
【0008】
【第1発明の効果】
このようにすれば、発泡樹脂製気孔形成剤が、ポリメチルメタアクリレートを含んで構成されることから、加熱収縮した残査が気孔中央部に網状となりしかもエポキシ樹脂との反応が抑制されて、従来のように気孔内面に固着することがないので、エポキシ砥石の切れ味が向上し且つスクラッチ傷の発生が好適に防止される。
【0009】
【課題を解決するための第2の手段】
また、上記第1発明の多気孔型エポキシ砥石を好適に製造するための第2発明の要旨とするところは、加熱により収縮する性質の発泡樹脂製気孔形成剤の熱収縮により形成された多数の気孔を有する多気孔型エポキシ砥石の製造方法であって、(a) 砥粒、流動性エポキシ樹脂、ポリメチルメタアクリレートを含む発泡樹脂製気孔形成剤を所定の割合で混合する混合工程と、(b) その混合工程により混合された材料を成形金型内に鋳込むことにより成形する成形工程と、(c) 成形された成形品を熱処理することにより、前記エポキシ樹脂を本硬化するとともに前記気孔形成剤を熱収縮させる熱処理工程とを、含むことにある。
【0010】
【第2発明の効果】
このようにすれば、混合工程において、砥粒、流動性エポキシ樹脂、ポリメチルメタアクリレートを含む発泡樹脂製気孔形成剤が所定の割合で混合され、成形工程において、その混合材料が成形金型内に鋳込まれることにより、成形が行われる。さらに、熱処理工程において、その成形品に熱処理が加えられることにより、気孔形成剤が熱収縮させられると同時にエポキシ樹脂が本硬化させられる。このようにして製造されたエポキシ砥石は、ポリメチルメタアクリレートを含む発泡樹脂製気孔形成剤の熱収縮により形成された多数の気孔を備えるが、その気孔内に残された気孔形成剤の残査は気孔内において網状となりしかもエポキシ樹脂との反応が抑制されて、従来のように気孔内面に固着したり欠けなどが発生したりすることがないので、一層切れ味が向上し且つスクラッチ傷の発生が好適に防止される。
【0011】
【課題を解決するための第3の手段】
また、前記目的を達成するための第3発明の要旨とするところは、加熱により収縮する性質の発泡樹脂製気孔形成剤の熱収縮により形成された多数の気孔を有する多気孔型エポキシ砥石であって、その発泡樹脂製気孔形成剤が、ポリプロピレンを含むことにある。
【0012】
【第3発明の効果】
このようにすれば、発泡樹脂製気孔形成剤が、ポリプロピレンを含んで構成されることから、加熱収縮した残査が気孔内面に膜状に形成されるが、その膜状の残査は砥石組織との接着力が全くなくしかもエポキシ樹脂と全く反応しないので、エポキシ砥石の切れ味が向上し且つスクラッチ傷の発生が好適に防止される。
【0013】
【課題を解決するための第4の手段】
また、上記第3発明の多気孔型エポキシ砥石を好適に製造するための第4発明の要旨とするところは、加熱により収縮する性質の発泡樹脂製気孔形成剤の熱収縮により形成された多数の気孔を有する多気孔型エポキシ砥石の製造方法であって、(a) 砥粒、流動性エポキシ樹脂、ポリプロピレンを含む発泡樹脂製気孔形成剤を所定の割合で混合する混合工程と、(b) その混合工程により混合された材料を成形金型内に鋳込むことにより成形する成形工程と、(c) 成形された成形品を熱処理することにより、前記エポキシ樹脂を本硬化するとともに前記気孔形成剤を熱収縮させる熱処理工程とを、含むことにある。
【0014】
【第4発明の効果】
このようにすれば、混合工程において、砥粒、流動性エポキシ樹脂、ポリプロピレンを含む発泡樹脂製気孔形成剤が所定の割合で混合され、成形工程において、その混合材料が成形金型内に鋳込まれることにより成形が行われる。さらに、熱処理工程において、その成形品に熱処理が加えられることにより、気孔形成剤が熱収縮させられると同時にエポキシ樹脂が本硬化させられる。このようにして製造されたエポキシ砥石は、ポリプロピレンを含む発泡樹脂製気孔形成剤が熱収縮により形成された多数の気孔を備えるが、その気孔内に残された気孔形成剤の残査は気孔内面に膜状に形成されるが、その膜状の残査は砥石組織との接着力が全くなくしかもエポキシ樹脂と全く反応しないので、一層切れ味が向上し且つスクラッチ傷の発生が好適に防止される。
【0015】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施例のエポキシ砥石10の表面の一部を拡大して示す図である。このエポキシ砥石10は、砥粒12をエポキシ樹脂14により結合した砥石組織から構成されたものであり、人工的に形成された多数の気孔16を備えている。その各気孔16内には、それを形成するために用いられた球状の発泡樹脂製気孔形成剤18の残査20が残されている。この残査20は、気孔16の内壁面からかなり剥がれた状態で蜘蛛の巣状を成して気孔16の中央部に位置させられている。
【0017】
図2は、上記エポキシ砥石10の製造工程を説明する図である。図2において、混合工程24では、エポキシ砥石10の原料である砥粒12、流動性のエポキシ樹脂14、ポリメチルメタアクリレートを含む球状の発泡樹脂製気孔形成剤18が予め定められた所定の混合割合となるようにそれぞれ秤量され、よく知られた混合機により相互に混合されることにより流動性の混合材料が得られる。鋳込工程26では、その混合工程24により混合された材料が成形金型に設けられた成形キャビティ内に鋳込(注入)まれる。硬化工程28では、上記成形キャビティ内に鋳込まれた流動性の混合材料に含まれるエポキシ樹脂14が、たとえば常温で12時間放置されることにより硬化させられる。それら鋳込工程26および硬化工程28が成形品を成形するための成形工程に対応している。そして、熱処理工程30では、硬化工程28でエポキシ樹脂14が硬化させられることにより得られた成形品に、たとえば150℃の温度で3時間の熱処理が施されることにより、上記発泡樹脂製気孔形成剤18が収縮させられると同時に、エポキシ樹脂14の強度を高めるための本硬化が行われる。
【0018】
上記エポキシ砥石10に用いられる砥粒12は、アルミナ質砥粒、炭化珪素質砥粒、ジルコニヤ−アルミナ系砥粒、CBN砥粒、ダイヤモンド砥粒、或いはそれらの混合物である。また、上記発泡樹脂製気孔形成剤18は、たとえば図3の外形図および図4の断面図に示すように、樹脂が数十倍の容積となるように球形に発泡させられたものであり、多数の気泡を含むものである。このように構成されたエポキシ砥石10によれば、発泡樹脂製気孔形成剤18が、ポリメチルメタアクリレートを含んで構成されることから、加熱収縮した残査20が気孔16の中央部に網状となりしかもエポキシ樹脂との反応が抑制されて、従来のように気孔16の内壁面に固着することがないので、深切込でも高耐久性が得られるというエポキシ砥石本来の特徴を損なうことなく、一層切れ味が向上し且つスクラッチ傷の発生が好適に防止される。
【0019】
上記ポリメチルメタアクリレートを含む発泡樹脂製気孔形成剤18は、ポリメチルメタアクリレート(メタクリル樹脂)の単体、或いはポリメチルメタアクリレートとポリスチレン(スチロール樹脂)との混合樹脂が、5〜100倍の体積となるように発泡させられて球形とされたものである。上記発泡樹脂製気孔形成剤18を構成する樹脂に含まれるポリメチルメタアクリレートは、5容積%以上、好ましくは10容積%以上の割合で混合される。そのポリメチルメタアクリレートの混合割合が10容積%特に5容積%を下まわると、スチロール樹脂とエポキシ樹脂との反応や気孔内面の固着の発生が顕著となって切れ味の向上効果が明確に得られずしかもスクラッチ傷の原因となる欠けが発生し易くなる。上記発泡樹脂製気孔形成剤18を構成する樹脂に含まれるポリメチルメタアクリレートの割合は、上記5容積%以上、好ましくは10容積%以上であって100容積%までであれば、スチロール樹脂とエポキシ樹脂との反応や気孔内面の固着のがなく、欠けやチッピングが好適に解消され、切れ味、砥石寿命が向上させられるとともに、スクラッチ傷の発生が好適に防止される。
【0020】
また、上記発泡樹脂製気孔形成剤18としては、0.5乃至10mmφの範囲の径寸法、好ましくは1乃至3mmφの範囲の径寸法を備えたものが用いられる。径寸法が1mmφ、特に0.5mmφを下まわると、チップポケットとしての気孔16の機能が低下し、反対に、径寸法が3mmφ、特に10mmφを上まわると、砥石組織の全体的な密度が低下してエポキシ砥石10の研削性能が損なわれる。また、上記発泡樹脂製気孔形成剤18は、研削目的に応じて、エポキシ砥石10の砥石組織中において5乃至70容積%の範囲内、好ましくは10乃至50容積%の範囲内で使用される。この発泡樹脂製気孔形成剤18の容積割合が10容積%特に5容積%を下回ると気孔16の効果が明確に得られ難くなり、反対に50容積%特に70容積%を越えるとエポキシ砥石10の砥石組織の強度が低下して摩耗が多くなり、実用的に十分な耐久性が得られ難くなる。
【0021】
図5は、本発明の他の実施例のエポキシ砥石40の表面の一部を拡大して示す図である。このエポキシ砥石40は、砥粒42をエポキシ樹脂44により結合した砥石組織から構成されたものであり、人工的に形成された多数の気孔46を備えている。その各気孔46内には、それを形成するために用いられた発泡樹脂製気孔形成剤48の残査50が残されている。この残査50は、軟質であって球殻状を成し、気孔46の内壁面上において、非接着状態すなわち接着力がなくその内壁面から略浮いた状態で位置させられている。この球殻状の残査50は、軽微な力によって簡単に気孔46内から脱落させられる。
【0022】
上記エポキシ砥石40は、エポキシ砥石10の製造工程を示す図2と同様の工程を経て製造されるので、以下、図2を用いて説明する。混合工程24では、エポキシ砥石40の原料である砥粒42、流動性のエポキシ樹脂44、ポリプロピレン樹脂を含む発泡樹脂製気孔形成剤48が予め定められた所定の混合割合となるようにそれぞれ秤量され、よく知られた混合機により相互に混合されることにより流動性の混合材料が得られる。鋳込工程26では、その混合工程24により混合された材料が成形金型に設けられた成形キャビティ内に鋳込(注入)まれる。硬化工程28では、上記成形キャビティ内に鋳込まれた流動性の混合材料に含まれるエポキシ樹脂44が、たとえば常温で12時間放置されることにより硬化させられる。そして、熱処理工程30では、硬化工程28でエポキシ樹脂44が硬化させられることにより得られた成形品に、たとえば180℃程度の温度で3時間の熱処理が施されることにより、上記発泡樹脂製気孔形成剤48が収縮させられると同時に、エポキシ樹脂44の強度を高めるための本硬化が行われる。
【0023】
上記エポキシ砥石40に用いられる砥粒42は、エポキシ砥石10と同様に、アルミナ質砥粒、炭化珪素質砥粒、ジルコニヤ−アルミナ系砥粒、CBN砥粒、ダイヤモンド砥粒、或いはそれらの混合物である。また発泡樹脂製気孔形成剤48は、前述の図3および図4に示すものと同様である。このように構成されたエポキシ砥石40によれば、発泡樹脂製気孔形成剤48が、ポリプロピレンを含んで構成されることから、加熱収縮した残査50が接着力のない状態で気孔46の内壁面に付着して、従来のように気孔16の内壁面に固着することがないので、深切込でも高耐久性が得られるというエポキシ砥石本来の特徴を損なうことなく、一層切れ味が向上し且つスクラッチ傷の発生が好適に防止される。
【0024】
上記ポリプロピレンを含む発泡樹脂製気孔形成剤48は、ポリプロピレン樹脂の単体、或いはポリプロピレンとポリスチレン(スチロール樹脂)との混合樹脂が、5〜100倍の体積となるように発泡させられて球形とされたものである。上記発泡樹脂製気孔形成剤48を構成する樹脂に含まれるポリプロピレンは、たとえば20容積%以上、好ましくは30容積%以上の割合で混合される。そのポリプロピレンの混合割合が30容積%特に20容積%を下まわると、スチロール樹脂とエポキシ樹脂との反応や気孔内面の固着の発生が顕著となって切れ味の向上効果が明確に得られずしかもスクラッチ傷の原因となる欠けが発生し易くなる。上記発泡樹脂製気孔形成剤48を構成する樹脂に含まれるポリプロピレンの割合は、上記20容積%以上、好ましくは30容積%以上であって100容積%までであれば、スチロール樹脂とエポキシ樹脂との反応や気孔内面の固着がなく、欠けやチッピングが好適に解消され、切れ味、砥石寿命が向上させられるとともに、スクラッチ傷の発生が好適に防止される。
【0025】
また、上記発泡樹脂製気孔形成剤48としては、0.5乃至10mmφの範囲の径寸法、好ましくは1乃至3mmφの範囲の径寸法を備えたものが用いられる。径寸法が1mmφ、特に0.5mmφを下まわると、チップポケットとしての気孔16の機能が低下し、反対に、径寸法が3mmφ、特に10mmφを上まわると、砥石組織の全体的な密度が低下してエポキシ砥石40の研削性能が損なわれる。また、上記発泡樹脂製気孔形成剤48は、研削目的に応じて、エポキシ砥石40の砥石組織中において5乃至70容積%の範囲内、好ましくは10乃至50容積%の範囲内で使用される。この発泡樹脂製気孔形成剤48の容積割合が10容積%特に5容積%を下回ると気孔46の効果が明確に得られ難くなり、反対に50容積%特に70容積%を越えるとエポキシ砥石40の砥石組織の強度が低下して摩耗が多くなり、実用的に十分な耐久性が得られ難くなる。
【0026】
以下、本発明者が以下の研削試験条件に従って行った実験例の一部を説明する。以下の試料1、試料2、試料3、試料4、試料5、比較例1、比較例2、比較例3は、粒度#220のアルミナ質砥粒および2液混合常温硬化型エポキシ樹脂(主剤:変性エポキシ樹脂、硬化剤:芳香族アミン系)を用いて作製した305mmφ(外径)×20mm(厚み)×50.8mmφ(内径)の砥石である点は共通し、その他は表1に示す材料を用いて、図2に示すものと同様の工程を経て作成されたものである。表1において、PMMAはポリメチルメタアクリレートを示し、PSはポリスチレンを示し、PPはポリプロピレンを示している。
【0027】
〔研削試験条件〕
研削盤: 横軸平面研削盤
砥石周速: 1600m/min
被削材: SS41(生材)
被削材寸法:長さ120mm×幅10mm 切込量: 5μm/pass
【0028】
【0029】
表2は上記の研削試験結果を示している。表2において、消費電力値は研削加工時に研削砥石を回転駆動するために消費された電力であって、切れ味のよい砥石ほど低い値を示す。また、砥石摩耗量は、上記の研削試験条件下において一定の研削加工(上記1個の被削材の表面を5μmの切込量で平面研削加工)したときの砥石の摩耗量であって、砥石寿命の長い砥石ほど低い値を示す。スクラッチ傷の有無は、被削材の表面(長さ120mm×幅10mm)内において研削加工後に存在するスクラッチ傷を示し、そのスクラッチ傷が少ないほど、欠けやチッピングが少ないことを示す。
【0030】
【0031】
表2の実験結果によれば、ポリスチレン樹脂から成る樹脂製気孔形成剤を用いた比較例1、2、3に比較して、ポリスチレン樹脂にポリメチルメタアクリレートを混入した樹脂製気孔形成剤を用いた試料1、2、3や、ポリプロピレンから成る樹脂製気孔形成剤を用いた試料4、5は、切れ味に優れ、砥石摩耗も少なくて砥石寿命が長く、しかもスクラッチ傷が殆ど発生しない良好な研削性能を示している。
【0032】
以上、本発明の一実施例を図面を用いて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0033】
たとえば、前述の実施例において、発泡樹脂製気孔形成剤18は、ポリメチルメタアクリレートの単体であるか、或いはポリスチレン樹脂にポリメチルメタアクリレートを混合したものであったが、ポリスチレン樹脂以外の樹脂にポリメチルメタアクリレートを混合したものであってもよい。また、前述の発泡樹脂製気孔形成剤48は、ポリプロピレンの単体であるか、或いはポリスチレン樹脂にポリプロピレンを混合したものであったが、ポリスチレン樹脂以外の樹脂にポリメチルメタアクリレートを混合したものであってもよい。
【0034】
また、前述の実施例において、エポキシ樹脂14、44は、2液混合常温硬化型エポキシ樹脂(主剤:変性エポキシ樹脂、硬化剤:芳香族アミン系)の他に、1液性、或いは加熱硬化型のエポキシ樹脂であってもよい。
【0035】
また、前述の図2の工程において、たとえば混合原料が鋳込型内に鋳込まれた
状態で、熱処理工程30がおこなわれてもよい。
【0036】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のエポキシ砥石の表面の一部を拡大して模式的に説明する図である。
【図2】図1のエポキシ砥石の製造工程の要部を説明する工程図である。
【図3】図2の製造工程において用いられる発泡樹脂製気孔形成剤を拡大して示す外形図である。
【図4】図3の発泡樹脂製気孔形成剤を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施例のエポキシ砥石の表面の一部を拡大して模式的に説明する図であって、図1に相当する図である。
【図6】従来のエポキシ砥石の表面の一部を拡大して模式的に説明する図である。
【符号の説明】
10、40:エポキシ砥石
12、42:砥粒
14、44:エポキシ樹脂
16、46:気孔
18、48:発泡樹脂製気孔形成剤
24:混合工程
26:鋳込工程
28:硬化工程
30:熱処理工程
Claims (4)
- 加熱により収縮する性質の発泡樹脂製気孔形成剤の熱収縮により形成された多数の気孔を有する多気孔型エポキシ砥石であって、
前記発泡樹脂製気孔形成剤が、ポリメチルメタアクリレートを含むことを特徴とする多気孔型エポキシ砥石。 - 加熱により収縮する性質の発泡樹脂製気孔形成剤の熱収縮により形成された多数の気孔を有する多気孔型エポキシ砥石の製造方法であって、
砥粒、流動性エポキシ樹脂、ポリメチルメタアクリレートを含む発泡樹脂製気孔形成剤を所定の割合で混合する混合工程と、
該混合工程により混合された材料を成形金型内に鋳込むことにより成形する成形工程と、
成形された成形品を熱処理することにより、前記エポキシ樹脂を本硬化するとともに前記気孔形成剤を熱収縮させる熱処理工程と
を、含むことを特徴とする多気孔型エポキシ砥石の製造方法。 - 加熱により収縮する性質の発泡樹脂製気孔形成剤の熱収縮により形成された多数の気孔を有する多気孔型エポキシ砥石であって、
前記発泡樹脂製気孔形成剤が、ポリプロピレンを含むことを特徴とする多気孔型エポキシ砥石。 - 加熱により収縮する性質の発泡樹脂製気孔形成剤の熱収縮により形成された多数の気孔を有する多気孔型エポキシ砥石の製造方法であって、
砥粒、流動性エポキシ樹脂、ポリプロピレンを含む発泡樹脂製気孔形成剤を所定の割合で混合する混合工程と、
該混合工程により混合された材料を成形金型内に鋳込むことにより成形する成形工程と、
成形された成形品を熱処理することにより、前記エポキシ樹脂を本硬化するとともに、前記気孔形成剤を熱収縮させる熱処理工程と
を、含むことを特徴とする多気孔型エポキシ砥石の製造方法。
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