JP3690887B2 - 自動二輪車のチェーンケース構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車において、エンジンの出力を後輪に伝達するためのチェーンに対してその上半部を覆うために、後輪のリヤアームに取り付けられているチェーンケースの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車では、通常、車体の後部に位置する後輪の上部をリヤフェンダーで覆うと共に、エンジンの出力を後輪に伝達するためのチェーンに対して、その上半部を覆うように形成されたチェーンケース(チェーンカバー)を、後輪を軸架するリヤアームに取り付けた状態で設置するということが行われており、そのような自動二輪車のチェーンケースでは、該チェーンケースの後端は、チェーンを掛け渡した後輪スプロケットの円周方向に沿うように下方に曲げられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようなチェーンケースを設けた従来の自動二輪車では、チェーンケースの後端部分(後輪の車軸よりも後方の部分)が短いと、チェーンの駆動によって飛散したチェーングリースが、チェーンケースによって充分に阻止されることなく、その一部がリヤフェンダーの裏側だけでなく表側にも付着することとなり、取り外して掃除することが困難なリヤフェンダーの裏側をチェーングリースで汚して、その掃除が面倒なものとなると共に、見栄え良く塗装されたリヤフェンダーの表側をチェーングリースで汚して、その外観を悪化させることにもなる。
【0004】
一方、チェーングリースの飛散を充分に阻止して、リヤフェンダーにチェーングリースを付着させないように、チェーンケースの後端部分を長くすると、該チェーンケースの後端が、後輪スプロケットの円周方向に沿って下方にまで延びることとなるため、センタースタンド(メインスタンド)により後輪を浮かせて車体を自立させた状態で、リヤアームに対して後輪を着脱しようとしたときに、チェーンケースの後端(下端)に後輪のスプロケットが引っ掛かり、そのため、チェーンケースをも取り外すか、または、更にリヤアームを持ち上げた状態で後輪の着脱作業を行わなければならず、その作業が面倒なものとなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、上記の請求項1に記載したように、車体後部の後輪に対して、その上部を覆うようにリヤフェンダーが設置され、該後輪を軸架するリヤアームに対して、エンジン出力軸のスプロケットと後輪のスプロケットとに掛け渡されたチェーンの上半部を覆うためのチェーンケースが取り付けられている自動二輪車において、センタースタンドにより後輪を浮かせて車体を自立させた状態でのチェーンケース後端下面の路面からの高さが、後輪を浮かせない状態での後輪のタイヤ下端からスプロケット上端までの高さよりも低くならないように、且つ、チェーンケースの後端を通る後輪スプロケットの接線の延長線が、側面視でリヤフェンダーの後端よりも後方を通るように、チェーンケースの後端部分の下面が後方に延ばされていることを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の自動二輪車のチェーンケース構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0007】
図1は、本発明のチェーンケース構造が適用されている自動二輪車について、側方から見た全体の外観を示すもので、自動二輪車1は、ヘッドライト2やスピードメーター3が配置されたステアリングの上部前面がカウリングで覆われることなく、前輪4を操作するステアリングハンドル5が上方に大きく延ばされていると共に、車体フレームに跨がるように設置された水滴型の燃料タンク6の後方に、後輪7の上方にまで延びる段付きのタンデムシート8が設置され、燃料タンク6の下方に、エンジン本体9がカウリングで覆われることなく設置されている、所謂アメリカンタイプに属する自動二輪車である。
【0008】
図2および図3は、そのような自動二輪車1の車体フレームを示すもので、車体フレーム10はセミクレードルタイプのフレームであって、フレームの各構成部材を溶接により連結して一体化したものである。
【0009】
すなわち、車体フレーム10の前部では、ステアリングを枢支するヘッドパイプ11に対して、後方に延ばされて途中で下方に屈曲した一本のメインパイプ12の前端部と、下方に延ばされた一本の大径のダウンチューブ13aの前端部とが、フレーム連結用ガセット14によって補強された状態で、それぞれ連結されていて、メインパイプ12とダウンチューブ13aとに渡ってテンションパイプ15が連結されている。
【0010】
一本の大径ダウンチューブ13aの下端には、左右に別れて後方に延びる小径のダウンチューブ13bが連結されており、メインパイプ12の下端と各ダウンチューブ13bの後端は、図4に示すように、何れも、車体の幅方向に延びるフレーム連結用のクロスパイプ16にそれぞれ連結されていて、該クロスパイプ16の両端には、斜上後方に延びる左右の各バックステー17がそれぞれ連結されている。
【0011】
メインパイプ12の途中屈曲部の前方には、左右に別れて後方に延びる各シートレール18がそれぞれ連結されており、各シートレール18の後端は、各バックステー17の途中にそれぞれ連結されていて、左右の各バックステー17のそれぞれには、その途中に、同乗者用フットレストの取付ブラケット21を溶接したチューブ19がそれぞれ連結されている。
【0012】
上記のようにフレームの各構成部材が一体的に連結された車体フレーム10には、メインパイプ12の上部に、燃料タンクの前部を係止するためのタンク係止ブラケット22が設けられており、シートレール18の前部に、燃料タンクの後端を固定すると共にシートの前端を係止するためのタンク固定ブラケット23が、左右のシートレール18に渡って設けられている。
【0013】
また、左右それぞれのシートレール18とバックステー17の連結部には、両者に渡って、板金の中空構造からなる中空ガセット24がそれぞれ溶接で一体的に付設されていると共に、該左右の中空ガセット24に渡って、前後二本のクロスチューブ25が溶接で一体的に固着され、該二本のクロスチューブ25に渡って、リヤクッションの上端を取り付けるための取付ブラケット26が設けられている。
【0014】
また、中空ガセット24の後方には、リヤフェンダーを上方から支持したり、シートの後部を載置して固定したりするリヤブラケット27が、左右のバックステー17の後端部に渡って設けられている。
【0015】
また、メインパイプ12の下端近傍には、フレーム連結用クロスパイプ16よりも上方で、リヤアーム取付用の中空管状のピボットボス28が、車体の幅方向でメインパイプ12を串刺しにした状態で一体的に固着されており、該ピボットボス28の取付けの補強を兼ねて、ピボットボス28とその下方のメインパイプ12に渡って、エンジン取付用ブラケット29が溶接されている。
【0016】
さらに、車体フレーム10には、上記のような各ブラケット以外にも、リヤアームのピボット軸固定用ブラケット31、レギュレーター取付用ブラケット32、エンジン取付用ブラケット33、サイドスタンド取付用ブラケット34、サイドカバー取付用ブラケット35,36、エアクリーナー取付用ブラケット37、メインスタンド取付用ブラケット38等の各種の部品取付用ブラケットが、車体フレーム10の適所に溶接で一体的に固着されている。
【0017】
上記のように形成された車体フレーム10に対して、図1に示すように、上方にステアリングハンドル5を備え、下方にフロントフォーク41を備えたステアリング部分が、メインパイプの上端に固設されたステアリングヘッドパイプ11によって一定の範囲で左右に回動可能に枢支されており、クッション部を有するフロントフォーク41の下端に前輪4が軸架されている。
【0018】
この前輪4に対しては、その一側には、フロントフォーク41側に取り付けられたキャリパー42aと、前輪のホイール側に取り付けられたディスク42bとからなるディスクブレーキ42が配置されており、また、前輪4の上部を上方から覆うように、フロントフェンダー43がフロントフォーク41に対して取り付けられている。
【0019】
一方、メインパイプ12の下端近傍に車体の幅方向で串刺し状態に固着されたピボットボス28には、図5に示すように、それよりも長いピボット軸30が挿通されており、このピボット軸30によって、ピボットボス28の両端外側で、リヤアーム45の左右の前端部45aが、該軸30と前端部45aの間にそれぞれグリースを塗布したブッシュとその内端側のオイルシール(何れも図示せず)を介在させた状態で、それぞれ回動自在に軸支されている。
【0020】
そして、リヤアーム前端部45aから外側に突出したピボット軸30の両端部は、左右のバックステー17に固着された各ピボット軸支持用ブラケット31によって支持されており、ピボット軸30(ボルト)は該ブラケット31に対してナット締めにより固定されていて、ピボット軸30に嵌挿された各リヤアーム前端部45aの外端側は、各ピボット軸支持用ブラケット31の内側に設けられたカバー状のシール部材31aによってそれぞれオイルシールされている。
【0021】
リヤアーム45は、複数の構成部材を溶接により一体的に連結したものであって、図6および図7に示すように、ピボット軸30に嵌挿される前端部45aを有する左右のリヤアーム本体45bに対して、両者を一体化するように、その後端部にU字状パイプ45cの両端部がそれぞれ連結され、その途中にクロス部材45dが連結されていて、U字状パイプ45cとクロス部材45dに渡って、左右にそれぞれ連結パイプ45eが連結され、更に、左右それぞれの連結パイプ45eとリヤアーム本体45bとに渡って、補強パイプ45fがそれぞれ連結されている。
【0022】
また、リヤアーム45には、クロス部材45dに対して、リヤクッションの下端を取り付けるための取付ブラケット46が溶接で一体的に固着されており、チェーンカバーを取り付けるための取付ブラケット47が適当な箇所に溶接で一体的に固着されていると共に、左右のリヤアーム本体45bの後端部には、後輪の車軸を調整可能に固定するための長孔部45gがそれぞれ開設されていて、図1に示すように、リヤアーム45の後端部に後輪7が軸架される。
【0023】
そのようなリヤアーム45のリヤクッション下端取付ブラケット46に対応して、図2および図3で既に示したように、左右の中空ガセット24に、前後二本のクロスチューブ25がそれぞれ溶接で一体的に固着され、該二本のクロスチューブ25に渡ってリヤクッション上端取付ブラケット26が設けられていて、それによって、図8に示すように、車体フレーム10とリヤアーム45との間に介装されるリヤクッション50は、車体フレーム側(クロスチューブ25)の上端取付ブラケット26とリヤアーム45側の下端取付ブラケット46とに渡って取り付けられる。
【0024】
上記のように車体フレーム10に対して前輪4と後輪7がそれぞれ設置される自動二輪車1には、図1〜図3で示すように、燃料タンク6が、メインパイプ12とシートレール13に跨がって、タンク係止ブラケット22とタンク固定ブラケット23により位置決めされるように設置されており、タンデムシート8が、燃料タンク6の後方で中空ガセット24の上方に、タンク固定ブラケット23とリヤブラケット27により位置決めされるように設置されている。
【0025】
また、後輪7の上部を上方から覆うリヤフェンダー51が、バックステー17とリヤブラケット27により固定されていると共に、リヤフェンダー51の外側には、車体の左右にそれぞれリヤステー52が、該リヤフェンダー51と共締めされるように設置されていて、左右両側のリヤステー52の後部には、両者を連結するように、タンデムシート8のバックレスト54を取り付けるためのバックレスト取付ステー53が立設されている。
【0026】
そして、リヤステー52の後部下方には、左右それぞれにウインカー55が設置されており、リヤフェンダー51には、その後部上面にテールライト56が設置され、その後部下面に、ライセンスプレートを取り付けるためのライセンスブラケット57と、ライセンスプレートを照射するためのライセンスランプ58とがそれぞれ設置されている。
【0027】
前輪4と後輪7の間で燃料タンク6の下方には、メインパイプ12とダウンチューブ13a,13bとバックステー17によって囲まれた空間に、エンジン本体9およびキャブレター60やエアクリーナ(図示せず)等の部品が設置されており、エンジン本体9の前側からは、エキゾーストパイプ61が、図1に示すように一旦下方に延ばされてから、図9に示すように車体の右側を通って後方に延ばされていて、後輪7の右側に位置するマフラー62にその後端が接続されている。
【0028】
一方、マフラー62が配置されていない車体の左側では、図1に示すように、エンジン本体9の下部後方に続くトランスミッション部分から側方に突出された出力軸のスプロケット(図示せず)と、後輪7のハブに固定されたスプロケット63とに渡って、エンジン本体9の回転駆動力を後輪7に伝達するためのチェーン64が掛け渡されている。
【0029】
なお、前輪4と後輪7の間の車体の下部には、図9に示すように、車体の両側に運転者用のフットレスト65がそれぞれ設置され、車体の左側にチェンジペダル68やサイドスタンド67が設置され、車体の右側にブレーキレバー69やキックペダル70が設置されていると共に、図1に示すように、後輪7の前方には同乗者用フットレスト66が車体の両側にそれぞれ設置され、サイドスタンド67の後方には、一つのセンタースタンド71が車体の両側に渡って設置されている。
【0030】
さらに、上記のように各部品が設置された自動二輪車1には、燃料タンク6に対して、燃料メーター73を取り付けたメーターカバー72がその上面に設けられていると共に、ステアリングヘッドパイプ11の後方から燃料タンク5の前側を覆うようなフレームカバー74と、燃料タンク5の下方両側を覆うようなフレームカバー75がそれぞれ設けられている。
【0031】
また、タンデムシート8前部の下方両側には、エアクリーナ(図示せず)の両側を覆うように、それぞれ二部材からなるサイドカバー76が設けられていると共に、該サイドカバー76の下方を覆うカバー77や、同乗者用フットレスト66の内側を覆うカバー78等が車体両側にそれぞれ設けられていて、その後方には、エンジン出力軸のスプロケット(図示せず)と後輪7のスプロケット63とに掛け渡されたチェーン64の上半部を覆うためのチェーンケース79が、車体の左側で、リヤアーム45に対して設けられている。
【0032】
ところで、上記のような構成を有する本実施形態の自動二輪車1において、エンジンの出力を後輪7に伝達するためのチェーン64に対してその上半部を覆うように設けられているチェーンケース79は、従来のものと比べて、その後端が車体後方に向けて比較的長く延ばされたようなものとなっている。
【0033】
すなわち、本実施形態では、図10に示すように、センタースタンド71により後輪7を浮かせて車体を自立させた状態で、路面Aからチェーンケース79の後端79aの下面までの高さが、後輪7を浮かせない状態での後輪7のタイヤ下端からスプロケット上端までの高さHよりも低くならないように、且つ、チェーンケース79の後端79aを通る後輪スプロケット63の接線の延長線Bがリヤフェンダー51とは重ならないように、すなわち、側面視でリヤフェンダー51の後端よりも後方を通るように、従来の自動二輪車におけるチェーンケースと比べて、チェーンケース79の後端部分の下面が車体の後方に向かって延ばされている。
【0034】
そのような本実施形態のチェーンケース79によれば、運転中にチェーン64の駆動によりリヤフェンダー51に向かって飛散するチェーングリースは、後方に長く延びたチェーンケース79によって殆ど全てが阻止されることとなるため、例えば、リヤフェンダー51の後端付近の裏面側においてライセンスブラケット57に対して取り付けられるライセンスプレートの幅がリヤフェンダー51の幅よりも小さいような場合でも、飛散したチェーングリースがリヤフェンダー51に対して付着するのを確実に防止することができる。
【0035】
しかも、チェーングリースの飛散を防止するためにチェーンケース79の後端部分が長くされているにもかかわらず、チェーンケース79の後端79aが、路面Aから充分に高い位置にあるため、センタースタンド71により車体を自立させた状態で、後輪7をリヤアーム45から取り外そうとするときには、まず、車軸を抜いて後輪7を路面Aに接地させてから、車体後方に後輪7を転がせば、後輪7のスプロケット63がチェーンケース79に引っ掛かるようなことがなく、該後輪7の取り外しをスムーズに行うことができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の自動二輪車のチェーンケース構造によれば、運転中にチェーンからリヤフェンダーに向かって飛散するチェーングリースがリヤフェンダーに付着するのを確実に防止することができると共に、センタースタンドにより車体を自立させた状態で後輪を着脱するときに、後輪のスプロケットがチェーンケースに引っ掛かるようなことがなく、その作業をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のチェーンケース構造が適用されている自動二輪車の外観を示す側面図。
【図2】図1に示した自動二輪車の車体フレームを示す側面図。
【図3】図2に示した車体フレームの上面図。
【図4】図2に示した車体フレームにおけるメインパイプとダウンチューブとバックステーの連結部分を示す上面図。
【図5】図1に示した自動二輪車におけるリヤアームの枢支部の一部断面上面図。
【図6】図1に示した自動二輪車におけるリヤアームを示す側面図。
【図7】図6に示したリヤアームの上面図。
【図8】図1に示した自動二輪車におけるリヤクッションの配置関係と取付状態を示す側面説明図。
【図9】図1に示した自動二輪車におけるマフラー,チェーン,サイドスタンドのような車体の下部に設置される各部品の配置関係を示す上面説明図。
【図10】本発明のチェーンケース構造の一実施形態における後輪の着脱時の状態を示す側面説明図。
【符号の説明】
1 自動二輪車
7 後輪
45 リヤアーム
51 リヤフェンダー
63 (後輪の)スプロケット
64 チェーン
71 センタースタンド
79 チェーンケース
79a チェーンケースの後端
A 路面
B チェーンケースの後端を通る後輪スプロケットの接線の延長線
H 後輪のタイヤ下端からスプロケット上端までの高さ
Claims (1)
- 車体後部の後輪に対して、その上部を覆うようにリヤフェンダーが設置され、該後輪を軸架するリヤアームに対して、エンジン出力軸のスプロケットと後輪のスプロケットとに掛け渡されたチェーンの上半部を覆うためのチェーンケースが取り付けられている自動二輪車において、センタースタンドにより後輪を浮かせて車体を自立させた状態でのチェーンケース後端下面の路面からの高さが、後輪を浮かせない状態での後輪のタイヤ下端からスプロケット上端までの高さよりも低くならないように、且つ、チェーンケースの後端を通る後輪スプロケットの接線の延長線が、側面視でリヤフェンダーの後端よりも後方を通るように、チェーンケースの後端部分の下面が後方に延ばされていることを特徴とする自動二輪車のチェーンケース構造。
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JPH10100965A JPH10100965A (ja) | 1998-04-21 |
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