JP3690492B2 - 間仕切壁の設置構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物に設置される間仕切壁、特に耐火性を有する耐火間仕切壁の設置構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の耐火間仕切壁においては、要求される性能は遮熱性や遮炎性等であり、このような性能を備えた種々の耐火間仕切壁の構造が提供されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来の間仕切壁においては、地震時における躯体の変形や火災時における躯体の熱変形等に対する変形追従性については特に要求されていないのが実状であり、そのため、図8に示すように地震時あるいは火災時に間仕切壁1の周囲の柱2や梁3等の躯体が変形した場合には、そのような変形によって間仕切壁1の周縁部の損壊が生じたり、柱2や梁3と間仕切壁1との間に小さからぬ隙間4が生じることが想定され、そのような場合には間仕切壁1に要求される耐火性能や遮煙性能を保持することができなくなることも懸念される。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は、地震時や火災時における躯体の変形に起因して間仕切壁が損壊したり、躯体と間仕切壁との間に隙間が生じるようなことを防止して、耐火性能や遮煙性能を維持することのできる有効な間仕切壁の設置構造を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、耐火性を有する間仕切壁とその周囲の躯体との間の間隙に、それら間仕切壁と躯体との面内相対変形に追従して変形しつつ間仕切壁を躯体に対して支持せしめる継手部材を配設した間仕切壁の設置構造であって、前記継手部材は、前記間仕切壁の面内方向への弾性変形が可能でありかつ面外方向への変形が規制された状態で間仕切壁と躯体との間に介装される板バネを有し、該継手部材を前記間隙に配設して該継手部材により前記間仕切壁を前記躯体に対して支持せしめるとともに、膨縮可能な柔軟な耐火材を前記間隙に充填して該耐火材により前記間隙を塞いだことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明の間仕切壁の設置構造であって、前記継手部材は、前記間仕切壁と前記躯体に対してそれぞれ固定される対のランナーの間に前記板バネを複数取り付けてなることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明の間仕切壁の設置構造であって、前記板バネは側面視形状が円形あるいは菱形もしくはくの字状をなすことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1〜図3は本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態は図1に示す継手部材5を用い、それを図2および図3に示すように間仕切壁1とその周囲の躯体である柱2および梁3との間に配設することを主眼とする。
【0009】
その継手部材5は2本のランナー6の間に複数(図示例では3つ)の板バネ7を設けたものである。ランナー6としては通常の軽量溝形鋼が用いられ、板バネ7としては帯鋼をリング状とした円形のものが採用され、上記2本のランナー6を対向配置してそれらの間に板バネ7をビス止めあるいは溶接等により固定して一体化した構成とされている。この継手部材5は(a)に示す通常の状態から、全体の厚み方向(ランナー6どうしの対向方向)の荷重がかかると板バネ7が弾性変形して(b)に示すようにランナー6間の間隔が自由に変化し得るものであり、またランナー6どうしを長さ方向にずらすような荷重には同じく板バネ7の弾性変形により追従可能であるが、ランナー6どうしを横方向にずらすような横方向の荷重に対しては板バネ7自体の強度により対抗し得る剛性を有するものとされている。
【0010】
上記の継手部材5は、図3に示すように間仕切壁1の上縁と梁3の下面との間、および間仕切壁1の側縁と柱2の表面との間の間隙にそれぞれ配されて使用される。間仕切壁1の上縁と梁3の下面との間における継手部材5の配設状態を図2により詳細に説明すると、本実施形態における間仕切壁1はプラスターボードあるいはケイ酸カルシウム板等の不燃ボード8をランナー9により中空部10を確保して4重に積層した構造とされているので、上記の継手部材5を中空部10の上部に配設してその下側のランナー6を間仕切壁1内のランナー9に対してビス止めあるいは溶接により固定し、上側のランナー6を梁3の下面に対して直接的にビス止めして固定している。
【0011】
そして、そのように配設された継手部材5の両側に、ロックウールファイバーやセラミックファイバー等の膨縮可能な柔軟性を有する繊維系の耐火材11が詰め込まれて充填され、その耐火材11により間仕切壁1と梁3との間の間隙が塞がれ、さらにその耐火材11の表面側には不燃ボードや不燃シート等の化粧材12が取り付けられて耐火材11を隠蔽している。間仕切壁1の側縁と柱2表面との間にも、上記と同様に継手部材5の一方のランナー6を間仕切壁1内のランナー9に固定し、他方のランナー6を柱2に対して固定し、その両側に耐火材11,化粧材12を取り付ければ良い。
【0012】
以上のように、間仕切壁1の面内方向に弾性変形可能な継手部材5によって間仕切壁1を躯体に対して支持せしめ、かつ間仕切壁1と躯体との間の間隙を膨縮可能な繊維系の耐火材11により塞いだことにより、継手部材5によって間仕切壁1を躯体に対して安定かつ確実に固定でき、かつ耐火材11により所望の耐火性能を確保できるものである。そして、地震時や火災時に図8に示したように躯体が変形したような場合においても、その変形に追従して継手部材5の板バネ7が弾性変形してそのまま間仕切壁1を支持し続け、したがって間仕切壁1に無理な力がかかって損壊したり継手部材5から外れて倒壊してしまうようなことはない。勿論、そのような変形に追従して耐火材11が自由に膨張収縮して間隙の閉塞状態を維持するから耐火性能や遮煙性能が損なわれることはない。なお、上記のような変形により化粧材12は破壊されることがあるが、それが破壊されても耐火性能や遮煙性能には影響が及ばない。
【0013】
図4および図5は継手部材5の他の構成例を示すものである。図4に示すものは板バネ7を菱形状としたもの、図5に示すものは板バネ7をくの字状にしたものであり、いずれも円形の板バネ7を用いる場合と同様の効果が得られる。
【0014】
なお、上記実施形態では、間仕切壁1の上縁と梁3との間のみならず、間仕切壁1の側縁と柱2との間にも上記の継手部材5と耐火材11による構造を採用したが、間仕切壁1の側縁と柱2との間の構造としては図6あるいは図7に示す構造も採用可能である。
【0015】
図6に示すものは(a)に示すようなランナー20を用いるものである。このランナー20はチャンネル状の断面のものであるが、その両壁部には外側に「く」の字状に折り曲げられたバネ部20aが形成されており、それらバネ部20aの弾性変形によりランナー20全体がその高さ方向に伸縮できるものとされており、そのランナー20により(b)に示すように間仕切壁1の側縁を柱2に対して支持するようにしたものである。このようなランナー20を用いることで、バネ部20aの弾性変形により躯体の変形に追従できるし、ランナー20自体やその内部に装着したスペーサ21に耐火性を持たせることで上記実施形態における耐火材11を省略することができる。
【0016】
図7(a)〜(f)に示すものは、いずれも間仕切壁1を2枚の不燃ボード8の間に中空部を確保した構成とし、その不燃ボード8の側縁部を、柱2に固定したガイド部材30により変形吸収可能に支持せしめた構造であり、必要に応じて不燃ボード8とガイド部材30や柱2との間に耐火ガスケットや耐火シーリング材等のシール部材31を挟み込んだ構成としたものである。
【0017】
【発明の効果】
請求項1の発明は、間仕切壁の面内方向への弾性変形が可能でありかつ面外方向への変形が規制された状態で間仕切壁と躯体との間に介装される板バネを有する継手部材を採用し、その継手部材により間仕切壁を躯体に対して支持せしめるとともに、間仕切壁と躯体との間の間隙を膨縮可能な柔軟な耐火材により塞ぐ構造であるから、継手部材によって間仕切壁を躯体に対して安定かつ確実に固定でき、かつ耐火材により所望の耐火性能を確保できるものであり、特に、地震時や火災時に躯体が変形したとしてもその変形に追従して継手部材の板バネが弾性変形してそのまま間仕切壁を支持し、したがって間仕切壁に無理な力がかかって損壊したり継手部材から外れて倒壊してしまうようなことはないし、変形に追従して耐火材が自由に膨張収縮して間隙の閉塞状態を維持するから、地震時や火災時の躯体の変形により間仕切壁の耐火性能や遮煙性能が損なわれることを確実に防止することができる。
【0018】
請求項2の発明は、間仕切壁と躯体に対してそれぞれ固定される対のランナーの間に板バネを複数取り付けた構成の継手部材を用いるので、その継手部材の各ランナーを間仕切壁と躯体に固定することのみでその継手部材により間仕切壁を確実強固に支持することができ、施工性に優れる。
【0019】
請求項3の発明は、継手部材における板バネを円形あるいは菱形もしくはくの字状としたので、その継手部材に確実な変形吸収性能をもたせることはもとより、構成が簡単で容易かつ安価に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の設置構造を示すもので、継手部材の構成例を示す図である。
【図2】 同、要部立断面図である。
【図3】 同、正面図である。
【図4】 同、継手部材の他の構成例を示す図である。
【図5】 同、継手部材のさらに他の構成例を示す図である。
【図6】 柱に対する間仕切壁の支持構造の例を示す図である。
【図7】 柱に対する間仕切壁の支持構造の他の例を示す図である。
【図8】 躯体の変形挙動を説明する図である。
【符号の説明】
1 間仕切壁
2 柱(躯体)
3 梁(躯体)
5 継手部材
6 ランナー
7 板バネ
Claims (3)
- 耐火性を有する間仕切壁とその周囲の躯体との間の間隙に、それら間仕切壁と躯体との面内相対変形に追従して変形しつつ間仕切壁を躯体に対して支持せしめる継手部材を配設した間仕切壁の設置構造であって、前記継手部材は、前記間仕切壁の面内方向への弾性変形が可能でありかつ面外方向への変形が規制された状態で間仕切壁と躯体との間に介装される板バネを有し、該継手部材を前記間隙に配設して該継手部材により前記間仕切壁を前記躯体に対して支持せしめるとともに、膨縮可能な柔軟な耐火材を前記間隙に充填して該耐火材により前記間隙を塞いだことを特徴とする間仕切壁の設置構造。
- 請求項1記載の間仕切壁の設置構造であって、前記継手部材は、前記間仕切壁と前記躯体に対してそれぞれ固定される対のランナーの間に前記板バネを複数取り付けてなることを特徴とする間仕切壁の設置構造。
- 請求項1または2記載の間仕切壁の設置構造であって、前記板バネは側面視形状が円形あるいは菱形もしくはくの字状をなすことを特徴とする間仕切壁の設置構造。
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