JP3690490B2 - 止水壁設置井戸及び施工法並びに地下水処理機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、止水壁設置井戸及び施工法並びに止水壁の地下水処理機構に関し、特に、透水層の地山に適切に接着して所望の地下水処理を確保できるように構成した止水壁設置井戸及び、止水壁設置井戸の施工法、並びに止水壁設置井戸を活用することで掘削部内の揚水井戸を廃止し、地下水流を確保する止水壁の地下水処理機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
構造物を構築するための地盤構造は、洪積層や沖積層等で地下水が浸透し易い透水層と低透水性層から構成されている。そして、透水層に多量の地下水を含んでいる帯水層の地下水は、一定の勾配を持った水流として流動している。
このような地盤に、図9のように、鉄道、道路など施工区間の長い構造物が建設され、その構築が地下に及んで地下構造物70を建設する際には、止水性が高い、工期が短い、廉価で壁深を深くできる等の理由から、セメントモルタル柱列で構成する止水壁71、71’を適用することが多い。
セメントモルタル柱列で構成する止水壁は遮水壁であるために、地下構造物70に適用すると、図9のように、地盤中の帯水層72を遮断して地下水流を阻害することから、止水壁71の上流側では、地下水の水位が上昇して、漏水、既設構造物の浮き上がり等の問題が発生し、止水壁71’の下流側では逆に地下水位の低下が発生して、周辺の井戸等に井戸枯れ、地盤沈下等の障害を発生させていた。又、工事終了後に止水壁を撤去するのには、撤去に必要な作業スペース並びに多くの費用を要し、しかも完全に撤去するのは不可能であり、部分的に壊すことで対処してきた。しかし、除去が不完全の場合にはさらなる環境問題に発展しかねない状況があった。
【0003】
このような事態を避けるために、図10に示すように、止水壁の背面側に井戸73を設けて地下水を導水する施工法が提案されている。
しかし、この施工法では、都市部のように敷地に余裕のない場合には上流側に設置される井戸73は横方向に限られた範囲にしか設置できなかった。又、止水壁の背面側にある地山には、止水壁を施工する際に堆積されたベントナイトやセメントが浸透、付着しているために、透水層の地山と井戸との透水状況は掘削面を洗浄した流通状況になかった。
従って、施工全体の透水係数は低位の値になっており、躯体部導通管74と下流側の井戸75を通じて流れる人工的な導水は、必要としている全ての地下水流動量を確保することが困難であった。
【0004】
又、図11に示すように、止水壁71、71’に水平ボーリングを行って導水管76を貫通させる方法も提案されている。この施工法は、止水壁に透水機能を持たせるものであるが、水平ボーリングは、地盤を掘削している途中での工事になるために、その施工が困難になる問題点を抱えていた。
【0005】
以上のように、従来の施工法では、結果的に下流側の水位は図示のように若干の回復はあっても、従来の水位から低下したままの状態になっていることが多かった。さらに、井戸を特別に設置するための費用を要することから、容易に施工できる状況になかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の状況に鑑みて改善を図ったものであり、透水地山に容器の前面開口を接触させながらフィルターを交換して、表面が正常状態にある透水層の地山に適切に接着させ不純物を除去することで所望の地下水処理を確保できるように構成した止水壁設置井戸を提供し、加えて、この止水壁設置井戸を止水壁の地山透水層に位置する部分に適用して集水、注水用として有効に活用することで、掘削部内の揚水井戸を廃止し、併せて止水壁の上流側と下流側の水位を同等に保つのに充分な人工導水を確保する止水壁の地下水処理機構の提供を課題にしている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明である止水壁設置井戸は、前面開口をフイルターで構成し、フイルターに臨んで開口する洗浄管とフイルターの後方空間に臨んで開口する集水管を上面に配備した容器と、容器の前面を閉塞する着脱自在の前面カバー及び容器の後面に装備された伸縮可能なジャッキから構成されており、透水地山の正常面を露出させ、容器の前面開口を透水層の地山に接着させるようにしたり、集水管にポンプを挿入することで集水・注水状態を事前に把握して所望の地下水処理を確保している。
【0008】
請求項2に記載の発明である止水壁設置井戸は、前面開口をフイルターで構成し、フイルターに臨んで開口する洗浄管を上面に配備した容器と、容器の前面を閉塞する着脱自在の前面カバーと、容器の後面に併置する集水管及び容器と集水管との間に配備される伸縮可能な導水管とジャッキから構成されており、集水管を孔壁の全域に圧着させることで容器の前面開口を透水層の地山に適切かつ安定的に接着させて集水・注水状態を事前に把握して所望の地下水処理を確保し、地山掘削後に集水管をソイルセメント壁から露出させずに躯体のコンクリート打設を容易にしている。
【0009】
請求項3に記載の発明である止水壁設置井戸は、請求項1又は2に記載の止水壁設置井戸において、前面カバーを地表面から引き上げ可能に構成することを特徴としており、上記機能に加えて、前面カバーを取り除くことでセメント分が侵入していない地山を露出させて前面開口を透水地山に適切に接着させている。
【0010】
請求項4に記載の発明である止水壁設置井戸は、請求項1乃至3のいずれかに記載の止水壁設置井戸において、前面開口を構成するフィルターを交換自在にすることを特徴としており、上記機能に加えて、透水地山の洗浄とフィルター性能の向上を図って上記機能の強化を図っている。
【0011】
請求項5に記載の発明である止水壁設置井戸は、請求項1乃至4のいずれかに記載の止水壁設置井戸において、洗浄管にノズル付高圧ジェットホースを装備することを特徴としており、透水地山を洗浄して清浄な掘削壁を露出させて上記機能の強化を図っている。
【0012】
請求項6に記載の発明である止水壁設置井戸は、請求項1乃至5のいずれかに記載の止水壁設置井戸において、集水管にポンプを装備することを特徴としており、上記機能に加えて、集水・注水状態を事前に把握して所望の地下水処理を確保している。
【0013】
請求項7に記載の発明である止水壁設置井戸の施工法は、地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に止水壁を構築し、止水壁の固化以前に請求項1乃至6のいずれかに記載の止水壁設置井戸を吊り下げて、容器内に水を満たしつつ止水壁内に挿入して止水壁内の掘削面の透水部位に配備し、次いで該止水壁設置井戸に装備されたジャッキを伸長して止水壁設置井戸の前面を掘削面に圧着させながら、容器の前面を閉塞する前面カバーを撤去することで構成しており、セメント分が侵入していない地山を露出させて表面が正常状態にある透水層の地山に容器の前面開口を適切に接着させることを確立している。
【0014】
請求項8に記載の発明である止水壁設置井戸の施工法は、請求項7に記載の止水壁設置井戸の施工法において、前面カバーを掘削面にスライドして地表面に引き上げることを特徴としており、上記機能に加えて、前面カバーを取り除くことでセメント分が侵入していない地山を露出させて前面開口を透水地山に適切に接着させている。
【0015】
請求項9に記載の発明である止水壁設置井戸の施工法は、請求項7又は8に記載の止水壁設置井戸の施工法において、前面開口を構成するフィルターを止水壁の固化後に交換することを特徴としており、上記機能に加えて、透水地山の洗浄とフィルター性能の向上を図って上記機能の強化を図っている。
【0016】
請求項10の発明による止水壁の地下水処理機構は、地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁と、止水壁の掘削面の透水部位に配備される上記止水壁設置井戸及び止水壁設置井戸間を連通する導通管で構成されており、止水壁の上流側と下流側の水位を同等に保つのに充分な人工導水を確保できる。
【0017】
請求項11の発明による止水壁の地下水処理機構は、地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁と、止水壁内側の掘削された掘削面の透水部位に配備される上記止水壁設置井戸及び止水壁設置井戸に接続する集水管のポンプで構成されており、掘削部内の揚水井戸を廃止して止水壁内の掘削を支障なく施工できる。
【0018】
請求項12の発明による止水壁の地下水処理機構は、地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁と、止水壁内外側の掘削面の透水部位にそれぞれ配置される上記各止水壁設置井戸及び止水壁内の止水壁設置井戸に接続する集水管のポンプと止水壁外側の止水壁設置井戸間に接続する導水管で構成されており、掘削部内の揚水井戸を廃止して止水壁内の掘削を障害無く施工することができ、併せて止水壁の上流側と下流側の水位を同等に保つのに充分な人工導水を確保できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明による止水壁設置井戸は、構造物を地中透水部に建設する際に、構造物の上流側と下流側に設置される止水壁の内部に設置することで、地盤の掘削時における地下水の揚水あるいは止水壁を通しての地下水の流通を円滑に行うことを基本的な目的としており、以下に、本発明による止水壁設置井戸とその施工法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明による止水壁設置井戸の斜視図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。
止水壁設置井戸1は、集水管2と洗浄管8とを配備した容器3と容器の前面6を閉塞する前面カバー4及びジャッキ5から構成されている。
集水管2は、容器3の上部に配置され、フィルター13を支持しているスクリーン16の後方に形成されている空間に臨んで開口しており、地上部に設置したポンプと接続することで容器内の地下水を集水したり、注水できるようになっている。又、集水管2から空間9に挿入したポンプ15を稼働することで、止水壁を施工する前に集水・注水の能力状態を把握するために吸い上げることを可能にしている。
【0021】
容器3は、透水地山の掘削面に幅広く接着できるように前面6を広くした扇形状に形成されている。容器3の材質は、強度面からは鋼鉄製が適当であるが、状況によってはステンレス製も考慮されるところである。
容器の前面6は開口面を構成しており、フイルター13によって覆われることで浄化された地下水が開口面から容器内に導入されるようにしている。フイルター13は、フィルター材14を開口面に設けられたスクリーン16の前方に充填するように構成されており、泥水等によってフィルター材14が汚染された場合に、上述した洗浄管8を利用してフィルター材14の交換ができるようになっている。
【0022】
洗浄管8は、容器3の上部に配置され、スクリーン16の前方に充填されているフィルター13に臨んで開口しており、地上部からの操作でフィルター13に充填されているフィルター材14を抽出し浄化した後に再充填することでフィルター材14の交換をしたり、ノズル付高圧ジェットホースを挿入して掘削壁の透水部位を洗浄することを可能にしている。
【0023】
容器3の前面6は、止水壁内に設置される前には前面カバー4で閉塞されており、容器3内にソイルセメントが侵入してこないように保護されている。
前面カバーは、一枚物として形成することもできるが、図示のように分割した複数のカバーを一体に結合することでも可能であり、分割したカバーを順番に引き上げることで前面カバーの引き上げ操作を容易にしている。
【0024】
容器3の後面7にはジャッキ5が装備されている。ジャッキ5は、後述するようにシリンダー17と伸縮脚18によるピストン機構によって伸縮可能であり、容器3が地山側の透水部位に配備された段階で伸長し、容器前面6の開口面を透水地山の掘削面に押圧して開口面と透水地山が密接に接着するように機能している。
【0025】
又、前面カバー4は、開口面のフイルターを全域で閉鎖し前面カバー側面に接着されたシール材によって普通には取り外せないように容器3に係止されている。
但し、シール材は、前面カバー4を容器3から上方に引き上げると上記係止状態から開放される機構を構成しているので、前面カバーを遠隔から取り外すことが容易である。
【0026】
図2は、攪拌を終了して固化はしていない状態の止水壁に、本発明による止水壁設置井戸を配置した状態を説明する部分断面図である。図において、10は止水壁の掘削孔、11はセメント等の浸透した掘削壁、12はセメント等が浸透していない掘削壁の透水部位である透水地山を示している。図示の状態は、止水壁用の掘削孔10の透水部位に止水壁設置井戸1を吊り下げて配備する時点を現しており、前面カバー4は、地上からの引き上げで上方に移動している。
【0027】
前面カバー4は、容器3の前面6に接触している状態では、ジャッキ5の伸長によって容器3の後面7側の地山から反力を取ってセメント等の浸透した掘削壁11に圧接されている。従って、前面カバーを地上に引き上げた後に、フィルター材を一旦取り除いてから、高圧ジェット水で掘削壁を洗浄しつつセメント等が浸透していない正常な透水地山12を露出させて、図示のようにジャッキ5で押圧され続けている止水壁設置井戸1を透水地山12に接着させることになる。
【0028】
止水壁設置井戸1は、その前面6をセメント等が浸透していない透水地山12に接着しているから、地下水はフイルター13を通って容器3に導入される。集水管2には必要に応じてポンプ15を挿入することが可能になっている。従って、容器内の地下水は、スクリーン16を通して集水されたり、逆に集水管2からの通水で容器外に注水することが行われ、場合によっては挿入されたポンプ15の稼働で止水壁を施工する前に集水・注水の能力状態を把握するために吸い上げることもできる。
【0029】
止水壁設置井戸1の設置は、ジャッキ5の伸縮によって安定した固定状態を確立させているが、設置前のジャッキ5はシリンダー17によって容器3の後面7に近接した状態に納められている。
止水壁設置井戸1を止水壁の透水部位に配備してからは、シリンダー17のピストン機能によって伸縮脚18を押出してジャッキ5を上述した設定状態に形成している。設定後は、止水壁設置井戸の固定を強固にして止水壁のコンクリート固化にも移動が生じないようにし、容器前面と透水地山との緊密な接着状態が維持されるように押圧力を保持している。
【0030】
図において、掘削孔10の透水部位からの地下水はフィルター13で浄化されながら集水管から挿入されたポンプ15で揚水されて孔壁の透水度を観測しているが、透水部位やフィルター材14がセメントや汚泥等によって汚染されて目詰まりが生じるようになった場合には、フィルター材14をバキュームポンプ等で洗浄管8を経由させて除去する。
【0031】
その後に、洗浄管8にノズル付高圧ジェットホースを挿入して高圧ジェット水で掘削孔壁やスクリーンを洗浄しながら集水管2のポンプ15で汚染水の廃棄を行い、汚染水が綺麗に浄化された段階で、精錬されたフィルター材14を洗浄管8から開口面のスクリーン16の前方に投下して再充填する。これによって、常に最適な地下水の流通を確保することが可能になる。
【0032】
図3は、本発明による止水壁設置井戸の他の形態を示している。本形態では、止水壁設置井戸20は、前面開口を有する容器21と集水管22とに分離して構成しており、その間にホースもしくは伸縮自在のパイプ等の導水管23と伸縮可能なジャッキ5を配置して、それぞれの形態を機能別に簡潔な形態に構成している。
容器は上記実施の形態と同様に前面6の開口をフィルター13で構成し、上部に洗浄管24を配置してフィルターと掘削壁における透水部位の洗浄を可能にしている。又、集水管22は、伸縮可能なジャッキ5の掘削壁に対する押圧面としての働きを分担しており、容器の設置を安定した状態に維持している。
そして、本実施の形態では、地山掘削後に集水管をソイルセメント壁から露出させずに施工することが可能であるから、躯体のコンクリート打設を容易にしている。
尚、容器21と集水管22との先端には楔状の案内板25が設けられており、掘削孔への止水壁設置井戸20の吊り下げを安定、かつ容易にしている。
【0033】
次に、本発明による止水壁設置井戸の施工法について説明する。
図4は、施工の前半に相当する止水壁設置井戸を山留め壁の掘削孔に設置するまでの工程を示している。
山留め壁の施工が行われると、図4(a)では、攪拌を終了して固化はしていない状態の止水壁31の中に止水壁設置井戸1を挿入するために、クレーンに設けたワイヤー33で吊り下げて、止水壁設置井戸1を止水壁内に挿入する状態を示している。又、図4(b)は、止水壁設置井戸1を止水壁内に設置する状態を示し、図4(c)は前面カバーを引き上げる状態を示している。
【0034】
ワイヤー33で吊り下げられた止水壁設置井戸1は、止水壁内に挿入されて止水壁内の透水部位に配備されると、ジャッキ5の伸長によって容器3の後面側の地山から反力を取ってセメント等の浸透した掘削壁に圧接されている。
容器3の前面6は、止水壁内に設置される前には脱却の容易な前面カバー4で閉塞されており、開口面のフイルターが外部の障害物によって破損されないように保護され、前面カバー4によってソイルセメントが容器内に浸入するのを防止している。
【0035】
前面カバー4は、容器3が掘削地山の透水部位に圧着される直前に容器3の前面6から撤去され開口面のフイルター13が水中に露出される。
前面カバー4は、基本的に鋼材で構成されるが、貧配合モルタルのような切削撤去の容易な材料で構成されることも可能である。その場合には、容器に設けられた洗浄管8から挿入されるノズル付高圧ジェットホースからの水流によってモルタルの切削除去が行われる。
従って、前面カバーの制作費は廉価で済み、同時に地表面への吊り上げ作業も省略できるので、作業も簡単に行うことができる。
【0036】
次いで、前面カバー4が引き上げられ、フィルター13が露出して掘削壁の透水部位に接触する。前面カバー4の上方への引き上げ時には、集水管内に水を地表面付近まで常に満たしておくことでソイルセメントの容器内への浸入を阻止することができる。
【0037】
図5は、施工の後半に相当するもので、止水壁のソイルセメントが自立する強度を発揮する養生を経てからの工程を示している。
所定の養生が行われると、図5(a)のようにフィルター材の除去が行われ、図5(b)では、高圧ジェット水による孔壁の洗浄が行われる。又、図5(c)は、孔壁の洗浄後にフィルター材を再充填する状態を示している。
【0038】
ソイルセメントの養生期間中は、フィルター13によって容器3の内部にセメントが浸入してくるのを阻止していることから、フィルター材14は目詰まりに近い状態に到る。そこでフィルター材14の交換が必要になる。フィルター材14の除去は、図示のように地上に設置されているバキュームポンプ35によって吸い出され、洗浄処置が施される。
【0039】
この間に、洗浄管8にはノズル付高圧ジェットホース37を挿入して、地上に設置されている高圧洗浄装置36によって高圧ジェット水38の供給が行われ、孔壁の洗浄が行われる。洗浄によって汚れた水は集水管2に挿入されたポンプ15によって地上に揚水されて廃棄されるが、揚水量の変化を監視することで孔壁の洗浄度を確認している。
【0040】
フィルター材の洗浄処置と孔壁の洗浄が完了すると、洗浄管を利用して容器3のスクリーン間にフィルター材14の再充填が行われる。フィルター材の存在しない期間は短期間であり、その間にも容器内には洗浄水が充満していることから、容器内がソイルセメント等で汚染される可能性は極めて低い。
【0041】
以上のように、本発明による止水壁設置井戸の施工法は、止水壁設置井戸を止水壁の透水部位に配備してから、ジャッキを押し出して安定した設定状態を形成しており、前面カバーの引き上げで容器の前面と透水地山との接着状態を良好に維持し、止水壁設置井戸の固定を強固にして止水壁のコンクリート固化にも移動が生じないようにしている。次いで、洗浄管を用いて孔壁の洗浄やフィルター材の交換を必要に応じて適宜に実施したり、さらに、集水管を通してポンプを容器内に挿入することで事前に透水地山との集水・注水状態を確認できるものであるから、透水部位の透水度を高いレベルに維持することが可能であり、地下構造物の構築に採用されるソイルセメント止水壁に適用しても、表面が正常状態にある透水層の地山に適切に接着し不純物を除去することで所望の地下水処理を確保できる。
【0042】
図6〜8は、上記の止水壁設置井戸を活用した、本発明による止水壁の地下水処理機構を示している。
図6は、本発明による止水壁の地下水処理機構を地下水導通機構として実施した実施の形態の断面図(a)と平面図(b)である。
図6(a)に示す止水壁の地下水導通機構は、帯水層40に建設する構造物41の上流側と下流側に止水壁42、42’を設置している。各止水壁の地山側透水部位には上記した止水壁設置井戸1が配備されて集水部43と注水部44を構成しており、両止水壁設置井戸間を導通管45で連通している。
【0043】
止水壁設置井戸1は、図6(b)に示すように、止水壁に所定の間隔で配置されており、周辺部の水流と広角的な広い範囲で接触して、上流側の集水部43の止水壁設置井戸1には、多量の地下水流46が集められて導通管45に送り込まれ、下流側の注水部44の止水壁設置井戸1からは送り込まれた多量の地下水流を連続的に下流側に注水している。
従って、集水、注水される水量が地下水流として流れていた流量を維持するのに充分な量を確保しているので、本発明による止水壁の地下水処理機構を採用すると、帯水層に止水壁42、42’を施工する以前と同様の地下水流を継続させることができる。
【0044】
図7は、本発明による止水壁の地下水処理機構を、揚水井戸に代わる地下水集水機構として実施した地山掘削時の断面図(a)と平面図(b)である。
図7(a)に示すように、止水壁51、51’は、帯水層52の地下水流53を遮断した状態で地下構造物を建築する地山の上流側と下流側に設置されている。止水壁51、51’の壁内の帯水層54に対応する部分には各集水部55が形成されており、止水壁設置井戸1が配備されている。
各止水壁設置井戸1には、揚水用の集水管56を接続して、図示していない揚水ポンプと接続されており、掘削井戸を特別に設置しなくとも、揚水ポンプを稼動することによって壁内の掘削地山の水位を下げて、掘削を円滑に推進できるようにしている。
【0045】
図7(b)は、止水壁の地下水集水機構の平面図である。
止水壁設置井戸1は、止水壁51、51’に所定の間隔で配置されており、図示のように帯水層54に残った地下水と広角的な広い範囲で接触しており、帯水層54の地下水を集めて集水管56を経由して外部に連続的に放出している。
【0046】
図8は、本発明による止水壁の地下水処理機構を地下水集水機構及び地下水導通機構として配備した実施の形態の部分断面図(a)と平面図(b)である。
図8(a)には、止水壁設置井戸を、地下水集水機構及び地下水導通機構として止水壁内に交互に配備している状態を部分断面で示している。
【0047】
止水壁61、61’は、帯水層62の地下水流63を遮断した状態で地下構造物を建築する地山の上流側と下流側に設置されている。図8(a)、(b)に示すように、止水壁61、61’の壁内の帯水層62に対応する部分には各集水部64が形成されており、止水壁設置井戸1が透水地山に接着して配備されている。
各止水壁設置井戸1には、揚水用の集水管65を接続して、図示していない揚水ポンプと接続してあるから、止水壁内側の地盤を掘削している時には、掘削井戸を特別に設置しなくとも、揚水ポンプを稼動することによって止水壁内側の掘削地山における地下水の水位を下げて、掘削を円滑に推進できるようにしている。
【0048】
又、各止水壁61、61’の外側の地山側透水部位には上記した止水壁設置井戸1が止水壁外の透水地山に接着して配備され、集水部64と注水部66を構成しており、両止水壁設置井戸間を導通管67で連通している。そして、集水、注水される水量は、地下水流として流れていた流量を維持するのに充分な量を確保しているので、帯水層に止水壁61、61’を施工する以前と同様の地下水流を継続させることができる。
【0049】
以上のように、本発明による止水壁の地下水処理機構は、地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁に、上記止水壁設置井戸を配備して、集水・注水管として構成し、掘削部内の揚水井戸を廃止して止水壁内の掘削を支障なく施工すると共に、止水壁設置井戸間を導通管で連通して止水壁の上流側と下流側の水位を同等に保つのに充分な人工導水を確保している。
【0050】
以上、実施の態様に基づいて詳細に説明してきたが、本発明は、上記実施の態様に何ら制限されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において他の態様についても本発明に含まれるものである。
【0051】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明である止水壁設置井戸は、前面開口をフイルターで構成し、フイルターに臨んで開口する洗浄管とフイルターの後方空間に臨んで開口する集水管を上面に配備した容器と、容器の前面を閉塞する着脱自在の前面カバー及び容器の後面に装備された伸縮可能なジャッキから構成されているので、透水地山の正常面を露出させ、容器の前面開口を透水層の地山に接着させるようにしたり、集水管にポンプを挿入することで集水・注水状態を事前に把握して所望の地下水処理を確保する効果を奏している。
【0052】
請求項2に記載の発明である止水壁設置井戸は、前面開口をフイルターで構成し、フイルターに臨んで開口する洗浄管を上面に配備した容器と、容器の前面を閉塞する着脱自在の前面カバーと、容器の後面に併置する集水管及び容器と集水管との間に配備される伸縮可能な導水管とジャッキから構成されているので、集水管を孔壁の全域に圧着させることで容器の前面開口を透水層の地山に適切かつ安定的に接着させて集水・注水状態を事前に把握して所望の地下水処理を確保し、地山掘削後に集水管をソイルセメント壁から露出させずに躯体のコンクリート打設を容易にする効果を奏している。
【0053】
請求項3に記載の発明である止水壁設置井戸は、請求項1又は2に記載の止水壁設置井戸において、前面カバーを地表面から引き上げ可能に構成することを特徴としているので、上記効果に加えて、フィルターを保護していた前面カバーを取り除くことでセメント分が侵入していない地山を露出させて前面開口を透水地山に適切に接着させる効果を奏している。
【0054】
請求項4に記載の発明である止水壁設置井戸は、請求項1乃至3のいずれかに記載の止水壁設置井戸において、前面開口を構成するフィルターを交換自在にすることを特徴としているので、上記効果に加えて、透水地山の洗浄とフィルター性能の向上を図る効果を奏している。
【0055】
請求項5に記載の発明である止水壁設置井戸は、請求項1乃至4のいずれかに記載の止水壁設置井戸において、洗浄管にノズル付高圧ジェットホースを装備することを特徴としているので、透水地山を洗浄して清浄な掘削壁を露出させて上記効果の強化を図る効果を奏している。
【0056】
請求項6に記載の発明である止水壁設置井戸は、請求項1乃至5のいずれかに記載の止水壁設置井戸において、集水管にポンプを装備することを特徴としているので、上記効果に加えて、集水・注水状態を事前に把握して所望の地下水処理を確保する効果を奏している。
【0057】
請求項7に記載の発明である止水壁設置井戸の施工法は、地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に止水壁を構築し、止水壁の固化以前に請求項1乃至6のいずれかに記載の止水壁設置井戸を吊り下げて、容器内に水を満たしつつ止水壁の掘削面の透水部位に配備し、次いで該止水壁設置井戸に装備されたジャッキを伸長して止水壁設置井戸の前面を掘削面に圧着させながら、容器の前面を閉塞する前面カバーを撤去することで構成しているので、セメント分が侵入していない地山を露出させて表面が正常状態にある透水層の地山に容器の前面開口を適切に接着させることを確立する効果を奏している。
【0058】
請求項8に記載の発明である止水壁設置井戸の施工法は、請求項7に記載の止水壁設置井戸の施工法において、前面カバーを掘削面にスライドして地表面に引き上げられることを特徴としているので、上記効果に加えて、前面カバーを取り除くことでセメント分が侵入していない地山を露出させて前面開口を透水地山に適切に接着させる効果を奏している。
【0059】
請求項9に記載の発明である止水壁設置井戸の施工法は、請求項7又は8に記載の止水壁設置井戸の施工法において、前面開口を構成するフィルターを止水壁の固化後に交換することを特徴としているので、上記効果に加えて、透水地山の洗浄とフィルター性能の向上を図って上記効果の強化を図る効果を奏している。
【0060】
請求項10の発明による止水壁の地下水処理機構は、地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁と、止水壁の掘削面の透水部位に配備される上記止水壁設置井戸及び止水壁設置井戸間を連通する導通管で構成されているので、止水壁の上流側と下流側の水位を同等に保つのに充分な人工導水を確保できる効果を奏している。
【0061】
請求項11の発明による止水壁の地下水処理機構は、地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁と、止水壁内側の掘削された掘削面の透水部位に配備される上記止水壁設置井戸及び止水壁設置井戸に接続する集水管のポンプで構成されているので、掘削部内の揚水井戸を廃止して止水壁内の掘削を支障なく施工できる効果を奏している。
【0062】
請求項12の発明による止水壁の地下水処理機構は、地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁と、止水壁内外側の掘削面の透水部位にそれぞれ配置される上記各止水壁設置井戸及び止水壁内の止水壁設置井戸に接続する集水管のポンプと止水壁外側の止水壁設置井戸間に接続する導水管で構成されているので、掘削部内の揚水井戸を廃止して止水壁内の掘削を障害無く施工することができ、併せて止水壁の上流側と下流側の水位を同等に保つのに充分な人工導水を確保できる効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【 図1】本発明による止水壁設置井戸の正面図と側面図
【 図2】本発明による止水壁設置井戸の配置図
【 図3】本発明による止水壁設置井戸における他の実施形態図
【 図4】本発明による止水壁設置井戸の施工法における止水壁設置井戸を設置するまでの実施形態図
【 図5】本発明による止水壁設置井戸の施工法におけるソイルセメント養生後の実施形態図
【 図6】本発明による地下水処理(導通)機構図
【 図7】本発明による地下水処理(集水)機構図
【 図8】本発明による地下水処理(集水・導通)機構図
【 図9】止水壁による地下水流の遮断状態図
【 図10】従来の止水壁における地下水導通図
【 図11】従来の止水壁における他の地下水導通図
【符号の説明】
1 止水壁設置井戸、 2 集水管、 3 容器、 4 前面カバー、
5 ジャッキ、 6 容器の前面、 7 容器の後面、 8 洗浄管、
9 スクリーン後方の空間、 10 止水壁の掘削孔、
11 セメント等の浸透した掘削壁、 12 掘削壁の透水部位、
13 フイルター、 14 フィルター材、 15 ポンプ、
16 スクリーン、 17 ジャッキのシリンダー、 18 伸縮脚、
20 止水壁設置井戸、 21 容器、 22 集水管、
23 導水管、 24 洗浄管、 25 案内板、
31 止水壁、 33 ワイヤー、 35 バキュームポンプ、
36 高圧洗浄装置、 37 ノズル付高圧ジェットホース、
38 高圧ジェット水、
40 帯水層、 41 構造物、 42、42’ 止水壁、 43 集水部、
44 注水部、 45 導通管、 46 地下水流、
51、51’ 止水壁、 52 帯水層、 53 地下水流、
54 帯水層、 55 集水部、 56 集水管、
61、61’ 止水壁、 62 帯水層、 63 地下水流、
64 集水部、 65 集水管、 66 注水部、 67 導通管、
70 地下構造物、 71、71’ 止水壁、 72 帯水層、
73 井戸、 74 躯体部導通管、 75 井戸、 76 導水管、
Claims (12)
- 前面開口をフイルターで構成し、該フイルターに臨んで開口する洗浄管と該フイルターの後方空間に臨んで開口する集水管を上面に配備した容器、該容器の前面を閉塞する着脱自在の前面カバー及び該容器後面に装備された伸縮可能なジャッキから構成される止水壁設置井戸。
- 前面開口をフイルターで構成し、該フイルターに臨んで開口する洗浄管を上面に配備した容器、該容器の前面を閉塞する着脱自在の前面カバー、該容器の後面に併置する集水管及び容器と集水管との間に配備される伸縮可能な導水管とジャッキから構成される止水壁設置井戸。
- 前面カバーが、地表面から引き上げ可能に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の止水壁設置井戸。
- 前面開口を構成するフィルターが、交換自在であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の止水壁設置井戸。
- 洗浄管にノズル付高圧ジェットホースを装備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の止水壁設置井戸。
- 集水管にポンプを装備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の止水壁設置井戸。
- 地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に止水壁を構築し、該止水壁の固化以前に請求項1乃至6のいずれかに記載の止水壁設置井戸を吊り下げて容器内に水を満たしつつ該止水壁内に挿入して止水壁の掘削面の透水部位に配備し、次いで該止水壁設置井戸に装備されたジャッキを伸長して止水壁設置井戸の前面を掘削面に圧着させながら、容器の前面を閉塞する前面カバーを撤去することで構成される止水壁設置井戸の施工法。
- 前面カバーが、掘削面をスライドして地表面に引き上げられることを特徴とする請求項7に記載の止水壁設置井戸の施工法。
- 前面開口を構成するフィルターが、止水壁の固化後に交換されることを特徴とする請求項7又は8に記載の止水壁設置井戸の施工法。
- 地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁、該止水壁の掘削面の透水部位に配備される請求項1乃至6のいずれかに記載の止水壁設置井戸及び該止水壁設置井戸間を連通する導通管で構成する止水壁の地下水処理機構。
- 地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁、該止水壁内側の掘削された掘削面の透水部位に配備される請求項1乃至6のいずれかに記載の止水壁設置井戸及び該止水壁設置井戸に接続する集水管のポンプで構成する止水壁の地下水処理機構。
- 地中透水部に建設する構造物の上流側と下流側に設置される止水壁、該止水壁内外側の掘削面の透水部位にそれぞれ配置される請求項1乃至6のいずれかに記載の各止水壁設置井戸及び該止水壁内の止水壁設置井戸に接続する集水管のポンプと該止水壁外側の止水壁設置井戸間に接続する導水管で構成する止水壁の地下水処理機構。
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