JP3690442B2 - 唾液分泌促進剤、口腔用組成物及び義歯安定剤 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、口腔の乾燥を癒すことができる唾液分泌促進剤、これを配合した口腔用組成物及び義歯安定剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、口の中の唾液量が病的に少ない口内乾燥症と呼ばれる症状があることは知られているが、健康体であっても「口の中が乾く」と感じることは、極自然に起きることであり、例えば個人差はあるが、緊張したり、ストレスを感じた時、運動した後などに口内の唾液量が減少し、「口の中が乾燥した」と感じることがある。
【0003】
このように、口の中が乾くと話しずらくなったり、ベトベトして不快感をもたらすことがある上、場合によっては、味覚障害、口臭、う蝕、歯周疾患、粘膜の感染症などの口腔機能不全を起こすこともあり、乾燥の度合いによってはかなり深刻な問題になるといえる。
【0004】
そこで、口腔内を爽快に保ち、口腔疾患を予防するために、唾液の分泌を促進し口腔内を潤すことが要求され、例えば、特開昭56−22719号公報には梅干しや梅酢を、特開平7−101856号公報には有機酸をそれぞれ唾液分泌促進剤として使用することが提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの提案は、酸味による刺激が強く、提案された成分を唾液分泌促進剤として利用するには用途が著しく制限される上、このような酸味による唾液分泌パターンを見ると、唾液分泌促進効果が最初の5分間に集中しており、効果の持続性に欠ける上、上記効果を十分に発揮し得る量を用いると歯牙の脱灰が懸念されるという問題をも有する。
【0006】
そこで、投与時に刺激が少なく、催唾剤として用いられる副交感神経興奮剤ピロカルピン(ヤボランジ葉成分)を配合する提案もあるが、このピロカルピンには副作用の心配もある。
【0007】
また、義歯安定剤の使用者には高齢者が多いが、一般に年をとるに従って唾液の分泌が少なくなると言われており、このため、口腔乾燥で義歯が固定されず疼痛を伴い、咀嚼や会話が困難になることがある。
【0008】
このような場合、たびたび口を漱いだり、あるいは催唾剤としてビタミンC、レモン、梅干しなど酸味の植物が用いられていた(歯科ジャーナル21(4)、445〜451)。しかし、これらの催唾剤は味刺激が強い等の理由から義歯安定剤への配合には不向きであり、義歯安定剤の上記問題点の良好な改善策が望まれる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、口内が乾いた場合、唾液の分泌を緩やかに促すことができる上、効果に持続性があり、かつ安全性の高い唾液分泌促進剤、これを配合した口腔用組成物及び義歯安定剤を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、西アフリカ、ジャマイカ、インド、ブラジル等で栽培されているアオギリ科コーラノキとして知られる2種の木、即ち、コラ・アクミナータ(学名:Cola acuminata)及びコラ・ニティダ(学名:Cola nitida A.Chev.)から採取できる種子に着目した。即ち、従来、アオギリ科コーラノキは、現地では噛みものとして利用され、一般にはコーラ飲料の材料として知られているものであるが、本発明者は、上記コーラノキから採取した種子を粉砕し粉末にしたもの、あるいはその抽出物には、その機構は不明であるが、僅かな量を含んだだけでも唾液の分泌が起こる上、この唾液の分泌は一過性のものではなく数十分もの間持続して口内に良好な量の唾液を満たすことができるという唾液分泌促進作用があることを知見した。
【0011】
更に、本発明者は、コーラノキの種子は、口に含んでも低刺激なので気にならず、コーラ飲料の原料として用いられているもので、安全性の高いものであり、口の中で使用する食品、医薬品、各種口腔用組成物、義歯安定剤に配合する唾液分泌促進剤として好適に使用し得るものであることを知見した。
【0012】
この場合、上記コーラノキ種子粉末又はその抽出物を配合した義歯安定剤は、義歯固定力が向上し、咬合に伴う疼痛を低減、歯牙、義歯、口唇、舌を潤すことができ、かつ咀嚼機能や会話機能を改善することができ、しかも味刺激もないことを見出した。
【0013】
また、本発明者は、更に検討を進めた結果、上記コーラノキ種子粉末又はその抽出物と唾液分泌パターンの異なる有機酸を組み合わせて配合すると、意外にもコーラノキの活性をより増強させることができ、コーラノキ種子粉末又はその抽出物の緩和な唾液分泌促進作用を強力にし得ること、従ってコーラノキ種子粉末又はその抽出物を単独配合した場合よりも非常に高い唾液分泌促進効果が発揮されることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0014】
従って、本発明は、
〔1〕 アオギリ科植物コーラノキ種子粉末又はその抽出物のみからなる唾液分泌促進剤、
〔2〕 アオギリ科植物コーラノキ種子粉末又はその抽出物と有機酸とのみからなる唾液分泌促進剤、
〔3〕 有機酸がクエン酸及び/又は乳酸である〔2〕記載の唾液分泌促進剤、
〔4〕 〔1〕記載の唾液分泌促進剤を配合してなり、アオギリ科植物コーラノキ種子粉末又はその抽出物の含有量が組成物全体の1〜10重量%であり、洗口剤、口腔用軟膏、うがい用錠剤、咀嚼錠、口腔スプレー又は人工唾液として調製されることを特徴とする唾液分泌促進用口腔用組成物。
〔5〕 〔2〕又は〔3〕記載の唾液分泌促進剤を配合してなり、アオギリ科植物コーラノキ種子粉末又はその抽出物の含有量が組成物全体の1〜10重量%であり、歯磨、洗口剤、口腔用軟膏、うがい用錠剤、咀嚼錠、口腔スプレー又は人工唾液として調製されることを特徴とする唾液分泌促進用口腔用組成物。
〔6〕 〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の唾液分泌促進剤を配合してなることを特徴とする義歯安定剤
を提供する。
【0015】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の唾液分泌促進剤は、コーラノキ種子粉末又はその抽出物を有効成分とするもので、この有効成分は、コーラノキ種子を原料とし、コラ・アクミナータ(学名:Cola acuminata)及びコラ・ニティダ(学名:Cola nitida A.Chev.)と呼ばれるコーラノキに属する木より採取される種子を粉砕して粉状にしたもの、又はこれの抽出物である。
【0016】
ここで、上記コーラノキ種子の粉末としては、特に制限されるものではないが、粒径500μm以下のものが好適に用いられる。
【0017】
また、抽出物としては、生又は乾燥した種子をそのまま、あるいは上記粉砕した粉末を原料として用い、公知の抽出方法にて抽出すればよく、具体的には抽出溶媒を用いて室温ないし加熱下で通常0.5〜24時間、特に1〜10時間加熱して抽出を行う方法などを好適に採用し得る。この場合、溶媒抽出を採用するに際しては、上記原料のほか、溶媒抽出によって得られた抽出物や抽出残渣を原料として用いることができ、特に抽出物を原料とする場合、極性、非極性の二溶媒への分配により抽出することが好ましい。
【0018】
この抽出に使用する溶媒としては、通常の極性又は非極性溶媒でよく、特に制限されるものではないが、具体的には、エチルエーテル、エチレンクロライド、ジオキサン、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、プロピレングリコール、n−ヘキサン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、トルエン、ベンゼン、水、酸溶液、アルカリ溶液、塩溶液、またその他の水溶液を使用することができ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
なお、上記抽出を行うに際し、必要に応じて抽出前又は後に脱精油、脱色を行ってもよい。
【0020】
抽出残渣には必要により上記抽出処理を再度施して抽出液を得、これを先の抽出液と合わせることもできる。この場合、抽出溶媒として先の溶媒と異なる溶媒を使用することもできる。また、得られた抽出物は、必要に応じて更に別の溶媒を用いて抽出処理することもできる。
【0021】
最終的に得られた抽出液は、溶媒を留去して唾液分泌促進剤に配合されるが、この場合、溶媒が水やエタノール等の非毒性溶媒の場合は、そのまま又はある程度濃縮して用いることができる。
【0022】
本発明の唾液分泌促進剤は、上記有効成分と共に有機酸を併用することが好ましく、有機酸を配合することにより、より優れた唾液分泌促進効果を発揮させることができる。
【0023】
ここで、有機酸としては、通常口腔用組成物に配合できる種々の有機酸を使用することができ、例えばクエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、乳酸、酒石酸、ピルビン酸、アスコルビン酸等を挙げることができる。これらの中では、特にクエン酸、乳酸が好適である。
【0024】
上記有機酸の配合量は、上記コーラノキ種子粉末又はその抽出物100重量部に対して1〜10000重量部、特に5〜5000重量部である。
【0025】
本発明の唾液分泌促進剤は、そのまま又は水に希釈するなどして使用することができるが、口腔用組成物、義歯安定剤、食品、医薬品などに配合して使用することもできる。この場合、唾液分泌促進剤の添加量は製品に応じて選定されるが、通常抽出物の配合量が製剤全体の0.001〜50%(重量%、以下同様)、特に0.01〜10%とすることが好ましく、0.001%に満たないと満足な唾液分泌促進効果が発揮されない場合があり、50%を超えると組成物の安定性又は香味を損なう場合がある。
【0026】
本発明の唾液分泌促進剤は、特に口腔用組成物、義歯安定剤に配合することが好適である。この場合、口腔用組成物は、歯磨、洗口剤、口腔用軟膏、うがい用錠剤、咀嚼錠、口腔スプレー、人工唾液として、口腔内で適用して直接唾液分泌をはかるものを包含する。
【0027】
ここで、口腔用組成物を構成する成分としては、その種類に応じた公知の成分を常用量で使用することができる。
【0028】
例えば、歯磨類の場合には、上記唾液分泌促進剤と研磨剤、粘結剤、粘稠剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、香料、着色剤、上記以外の各種有効成分などを配合し、これら成分を水と混合して製造することができる。
【0029】
この場合、研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、酢酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、合成樹脂系研磨剤などが好適に用いられる。
【0030】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カーボポール、グアガム、モンモリロナイト、ゼラチンなどが好適に用いられる。
【0031】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチットなどが好適に用いられる。
【0032】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を配合し得、具体的にはラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−アシルサルコシネート、N−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−アシルタウレート、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プルロニック、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどが好適に用いられる。
【0033】
更に、甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチンなどが挙げられる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0034】
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、リモネン等のテルペン類又はその誘導体などが好適である。着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタンなどが好適である。
【0035】
また、各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化第1スズ、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェロール、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロール、クエン酸亜鉛、トウキ、オウバク、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナなどの抽出物、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロロカルバニリドなどが挙げられる。なお、これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0036】
また、義歯安定剤の場合には、上記唾液分泌促進剤と義歯を粘膜に固定するための主剤に加え、必要に応じて適宜他の成分、例えば無毒性油脂・ワックス類、乳化剤、水不溶性粉体、湿潤剤、剥離性改良剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤、香料及び水等を加え、粉末状、ゴム状、ペースト状、液状、シート状などの種々の剤型に加工することができる。
【0037】
この場合、主剤としては、酢酸ビニル樹脂、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラヤガム、アラビアガム、トラガカントガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、グルコマンナン、アルギン酸の塩及びプロピレングリコールエステル、ポリアクリル酸の金属塩、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、低級アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体及びその誘導体などが好適に用いられる。
【0038】
無毒性油脂・ワックス類としては、ワセリン、流動パラフィン、ポリブテンやポリイソブチレン等の炭化水素類、植物性硬化油、ミツロウ、木ロウ、キャンデリラワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンロウ、カルナウバロウ等が挙げられる。乳化剤としては、ステアリン酸のモノ乃至トリグリセライド、オレイン酸のモノ乃至トリグリセライド、ショ糖脂肪酸エステル、アセチル化グリセリルモノステアレート、ソルビタンモノステアレート等が挙げられる。水不溶性粉体としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、リン酸水素カルシウム、シリカ、タルク、ゼオライト、ポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチックパウダー、セルロースパウダー等が用いられる。湿潤剤としては、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、糖アルコール等が用いられる。
【0039】
剥離性改良剤としては、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が好適に用いられる。
【0040】
着色剤としては、赤色3号、赤色102号、コチニール色素等の合成又は天然水溶性色素及びベンガラ、赤色3号アルミニウムレーキ等の水不溶性顔料が好適に用いられる。
【0041】
【発明の効果】
本発明の唾液分泌促進剤は、優れた唾液分泌促進作用を有し、口腔用組成物として適用した場合、唾液分泌量を速効性で明らかに増加させることができるもので、これにより、口腔内の乾燥に伴うべとべとした不快感、会話の困難さ、口臭の発生等を速やかに解消し得る。また、う蝕、歯周疾患、粘膜の感染症等の口腔機能の不全を予防することもできる。
【0042】
更に、本発明の唾液分泌促進剤は、コーラ飲料の原料として用いられてきたコーラノキ種子粉末又はその抽出物と有機酸とを併用したものであるため、安全性が高く、口腔用組成物、義歯安定剤の素材として最適である。
【0043】
一方、本発明の唾液分泌促進剤を配合した義歯安定剤は、義歯装着時に溶け出すコーラノキ由来の唾液分泌促進作用により、口腔乾燥を防ぎ、義歯固定力が向上、咬合に伴う疼痛が低減、歯牙、義歯、口唇又は舌が潤うため、咀嚼機能や会話機能が改善される。
【0044】
【実施例】
以下、実施例、比較例、配合例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において%はいずれも重量%である。
〔実施例1〜5、比較例1〜6〕
表1に示すコーラノキ種子粉末(コラ・アクミナータの乾燥した種子を粒径500μm以下に粉砕したもの)、及び表1に示す原料を各種溶媒で常法に従って抽出した抽出物をそれぞれ用いて、下記方法により唾液分泌促進評価を行った。比較のため、表1に示す比較品の試料を用いて同様に唾液分泌促進評価を行った。なお、各試料はいずれも水に懸濁又は可溶化した1%濃度液として用いた。結果を表1に示す。
唾液分泌促進評価試験方法:
試験前日に激しい運動等をして、口渇状態になっているパネル3名について、次の手順で唾液分泌量を測定する。
(1)生理食塩水20mlで30秒間洗口する。
(2)その後唾液を目盛り付き試験管に吐き出し、蓄積された唾液量を5分毎、30分まで測定する。
(3)直後、被検液20mlで30秒間洗口する。
(4)(2)と同様に30分までの唾液分泌量を測定する。
生理食塩水(コントロール)洗口後30分間の唾液分泌量に対する被検液洗口後30分間の唾液分泌量の増加率の3名の平均を表1に示した。
【0045】
また、各時間毎に被検液洗口後の分泌唾液量から生理食塩水(コントロール)洗口後の分泌唾液量を差し引いた分泌増加量の3名の平均をグラフにプロットした。その結果を図1,2に示す。なお、図1は実施例3の抽出物を0.1〜2.0%濃度の水溶液として用いた場合の結果、図2には比較例2,4,6の結果(いずれも1%水溶液)である。
【0046】
【表1】
* 懸濁液で評価
**ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(1.5%)、エタノール(10%)を用いて可溶化
【0047】
表1の結果より、本発明の唾液分泌促進剤は味刺激が弱いものであるが、唾液分泌を促進することが認められ、また図1の結果より、唾液分泌は徐々にかつ長時間にわたって生じることが認められる。これに対し、クエン酸やコショウエキスは唾液分泌促進能は高いが、刺激が強く、また図2の結果から明らかなように、唾液分泌は5分程度まで急激に起こるが、それ以後は殆ど生じさせるものではなかった。
【0048】
〔実施例6〜9、比較例7,8〕
コーラノキ種子粉末(コラ・アクミナータの乾燥した種子を粒径500μm以下に粉砕したもの)を常法に従って水抽出し、コーラノキエキスを得た。
【0049】
表2に示すように上記コーラノキエキスと有機酸を配合し、常法に従って洗口剤、錠剤を調製し、下記方法で評価した。結果を表2に示す。
唾液分泌促進評価試験:
被験者:試験前日に激しい運動等をして、口渇状態になっている被験者3名。
製剤の使用法:
洗口剤は、洗口液20mlで30秒間洗口後吐き出した。
錠剤は、錠剤1錠(サイズ:φ12mm、厚さ5mm、500mg)を舌上で約15秒間で溶かして飲み込んだ。
測定法:
(1)コントロールを使用し、30分間の唾液分泌量を測定した。
(2)直後、サンプルを使用し、30分間の唾液分泌量を測定した。
唾液分泌増加率の算出:
30分間の唾液分泌量について、コントロール値に対するサンプル値の百分率を求め、この百分率の被験者3名の平均値を求めた。
【0050】
【表2】
【0051】
表2の結果より、有機酸とコーラノキエキスとを併用すると、これらの単独使用の場合に比べて唾液分泌増加率が明らかに向上することが確認された。
【0052】
〔実施例10〕
下記の2種類の組成の義歯安定剤について、義歯使用者8名にコーラノキ種子粉末又はその抽出物を配合した組成と無配合の組成とを交互に1日ずつ4日間使用してもらい、その咀嚼機能と会話機能評価結果を表3に人数で示した。
義歯安定剤1(ガム状)
酢酸ビニル樹脂 60.00%
軽質炭酸カルシウム 3.00
ミツロウ 3.00
ポリプロピレングリコール 3.00
コーラノキ種子の50%エタノール抽出物 0.50
60%エタノール 残
合 計 100.00%
義歯安定剤2(粉状)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 74.00%
ポリエチレンオキサイド 24.00
コーラノキ種子粉末 2.00
合 計 100.00%
【0053】
【表3】
【0054】
表3の結果より、コーラノキ種子粉末又はその抽出物を配合することによって、明らかに義歯安定剤の咀嚼機能、会話機能が改善されることが確認された。
【0061】
〔配合例1〕口腔用軟膏
流動パラフィン 15.0%
セタノール 10.0
グリセリン 20.0
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 5.0
香料 0.5
サッカリンナトリウム 0.1
コーラノキ種子抽出物(実施例3) 1.0
水 残
合 計 100.0%
【0063】
〔配合例2〕うがい用錠剤
炭酸水素ナトリウム 54.0%
クエン酸 17.0
無水硫酸ナトリウム 12.8
第2リン酸ナトリウム 10.0
ポリエチレングリコール 3.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.1
香料 2.0
オレイン酸 0.1
コーラノキ種子抽出物(実施例5) 1.0
合 計 100.0%
【0066】
〔配合例3〕人工睡液
塩化ナトリウム 0.6%
リン酸二水素カリウム 0.05
塩化カルシウム 0.02
ムチン 0.1
コーラノキ種子抽出物(実施例3) 1.0
水 残
(希苛性ソーダ溶液にてpH6.5に調整)
合 計 100.0%
【0067】
〔配合例4〕人工睡液口腔スプレー
塩化ナトリウム 0.4%
リン酸二水素カリウム 0.04
塩化カルシウム 0.02
塩化マグネシウム 0.01
コーラノキ種子抽出物(実施例5) 5.0
水 残
合 計 100.0%
【0069】
〔配合例5〕練歯磨
第2リン酸カルシウム・2水和物 50.00%
グリセリン 20.00
カルボキシメチルセルロース 2.00
ラウリル硫酸ナトリウム 2.00
香料 1.00
サッカリンナトリウム 0.10
コーラノキ種子抽出物(実施例3) 1.00
リンゴ酸 0.05
水 残
合 計 100.00%
【0070】
〔配合例6〕練歯磨
水酸化アルミニウム 45.00%
ゲル化性シリカ 2.00
ソルビット 25.00
カルボキシメチルセルロース 1.00
ラウリル硫酸ナトリウム 2.00
香料 1.00
サッカリンナトリウム 0.10
コーラノキ種子抽出物(実施例3) 1.00
シュウ酸 0.10
水 残
合 計 100.00%
【0071】
〔配合例7〕練歯磨
沈降性シリカ 25.00%
グリセリン 25.00
ソルビット 25.00
ラウロイルポリグリセリンエステル 1.00
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート 2.00
香料 1.00
サッカリンナトリウム 0.20
コーラノキ種子抽出物(実施例5) 1.00
コハク酸 0.05
水 残
合 計 100.00%
【0072】
〔配合例8〕液状歯磨
水酸化アルミニウム 25.00%
グリセリン 40.00
ソルビット 15.00
カルボキシメチルセルロース 0.20
プロピレングリコール 2.00
ラウリル硫酸ナトリウム 1.50
モノラウリン酸デカグリセリル 1.00
香料 1.00
サッカリンナトリウム 0.10
コーラノキ種子抽出物(実施例5) 1.00
マレイン酸 0.05
水 残
合 計 100.00%
【0075】
〔配合例9〕うがい用錠剤
炭酸水素ナトリウム 54.00%
クエン酸 17.00
無水硫酸ナトリウム 12.80
第2リン酸ナトリウム 10.00
ポリエチレングリコール 3.00
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.10
香料 2.00
オレイン酸 0.10
コーラノキ種子抽出物(実施例3) 1.00
合 計 100.00%
【0081】
〔配合例10〕義歯安定剤(ガム状)
酢酸ビニル樹脂 60.00%
軽質炭酸カルシウム 3.00
ミツロウ 3.00
ポリプロピレングリコール 3.00
コーラノキ種子の50%エタノール抽出物 0.50
60%エタノール 残
合 計 100.00%
【0082】
〔配合例11〕義歯安定剤(粉状)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 74.00%
ポリエチレンオキサイド 24.00
コーラノキ種子粉末 2.00
合 計 100.00%
【0083】
〔配合例12〕義歯安定剤(ペースト状)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 32.00%
ポリエチレンオキサイド 13.00
ワセリン 40.00
コーラノキ種子の水抽出物 1.00
pH調整剤 0.20
香料 0.30
防腐剤 微 量
色素 微 量
流動パラフィン 残
合 計 100.00%
【0084】
〔配合例13〕義歯安定剤(シート状)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 30.00%
ポリエチレンオキサイド 10.00
ポリエチレングリコール 20.00
コーラノキ種子の80%エタノール抽出物 2.00
香料 0.30
防腐剤 微 量
色素 微 量
ワセリン 残
合 計 100.00%
【0085】
〔配合例14〕義歯安定剤(液状)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 45.00%
ポリエチレンオキサイド 15.00
コーラノキ種子のメタノール抽出物 1.00
pH調整剤 0.20
香料 0.30
防腐剤 微 量
色素 微 量
流動パラフィン 残
合 計 100.00%
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3のコーラノキ種子抽出物を用いた場合における、抽出物濃度による唾液分泌増加量の経時変化を示すグラフである。
【図2】比較例2,4,6による唾液分泌増加量の経時変化を示すグラフである。
Claims (6)
- アオギリ科植物コーラノキ種子粉末又はその抽出物のみからなる唾液分泌促進剤。
- アオギリ科植物コーラノキ種子粉末又はその抽出物と有機酸とのみからなる唾液分泌促進剤。
- 有機酸がクエン酸及び/又は乳酸である請求項2記載の唾液分泌促進剤。
- 請求項1記載の唾液分泌促進剤を配合してなり、アオギリ科植物コーラノキ種子粉末又はその抽出物の含有量が組成物全体の1〜10重量%であり、洗口剤、口腔用軟膏、うがい用錠剤、咀嚼錠、口腔スプレー又は人工唾液として調製されることを特徴とする唾液分泌促進用口腔用組成物。
- 請求項2又は3記載の唾液分泌促進剤を配合してなり、アオギリ科植物コーラノキ種子粉末又はその抽出物の含有量が組成物全体の1〜10重量%であり、歯磨、洗口剤、口腔用軟膏、うがい用錠剤、咀嚼錠、口腔スプレー又は人工唾液として調製されることを特徴とする唾液分泌促進用口腔用組成物。
- 請求項1、2又は3記載の唾液分泌促進剤を配合してなることを特徴とする義歯安定剤。
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