JP3689845B2 - 頭部保護エアバッグ装置のエアバッグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、頭部保護エアバッグ装置のエアバッグに関し、詳しくは、膨張用ガスを流入させて膨張する複数の膨張部を有したエアバッグ本体と、膨張用ガスを各膨張部に導くように前記エアバッグ本体内に配設されるインナチューブと、を備えたエアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来の頭部保護エアバッグ装置のエアバッグは、膨張用ガスの流入時に、車内側のドア等の開口を覆うように展開膨張可能に、車内側開口の上縁側の周縁に折り畳まれて収納されるエアバッグ本体と、エアバッグ本体内に配設されて、インフレーターからの膨張用ガスをエアバッグ本体内に案内するインナチューブと、を備えて構成されていた(特開平11−235965号公報参照、特に、図9・10参照)。
【0003】
エアバッグ本体は、前記膨張用ガスを流入させて車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨張可能なガス流入部と、膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備えて構成され、ガス流入部は、非流入部で区画されるように、インナチューブの軸方向に沿って複数並設されて、それぞれ、インナチューブ側を開口させた膨張部を備えていた。
【0004】
そして、インナチューブは、各膨張部内に膨張用ガスを供給可能な供給口を開口させて、エアバッグ本体内に配設されていた。なお、インナチューブは、流入当初の高温・高圧の膨張用ガスによるエアバッグ本体の破損を招くことなく、所定の膨張部内に素早く、あるいは、各膨張室を均等に膨張可能に、膨張用ガスを供給するために、配設されていた。
【0005】
この種の頭部保護エアバッグ装置においては、エアバッグを迅速に展開膨張させるために、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターの出力が増大する傾向にある。そして、高出力のインフレーターを使用する場合、エアバッグ本体内にインナチューブを配置させても、インフレーター近傍の膨張部の周囲に配置される非流入部の部位と、その膨張部との境界付近から、ガス漏れが発生する虞れがあった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、出力を増大させたインフレーターを使用しても、エアバッグからのガス漏れを防止することが可能な頭部保護エアバッグ装置のエアバッグを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置のエアバッグは、膨張用ガスの流入時に、車内側の前記開口を覆うように展開膨張可能なエアバッグ本体と、
エアバッグ本体内に配設されて、インフレーターからの膨張用ガスをエアバッグ本体内に案内するインナチューブと、
を備えて構成されるとともに、
エアバッグ本体が、膨張用ガスを流入させて車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨張可能なガス流入部と、膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備え、
ガス流入部が、非流入部で区画されるように、インナチューブの軸方向に沿って複数並設されて、それぞれ、インナチューブ側に流入口部を開口させた膨張部を、備えて構成され、
インナチューブが、各流入口部に対応して配置されて、各膨張部内に膨張用ガスを供給可能に、流入口部の開口幅寸法より小さく開口する供給口を、備えて構成される頭部保護エアバッグ装置のエアバッグであって、
少なくともインフレーター近傍に配置されるインナチューブの供給口が、供給口に連通した流入口部における幅方向の中央よりも、インフレーター側にオフセットされて、配置されていることを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置のエアバッグでは、少なくともインフレーター近傍に配置されるインナチューブの供給口の中心を、その供給口に連通した流入口部の中央よりも、インフレーター側にオフセットさせて配置させている。すなわち、インフレーター近傍の供給口と、その供給口に連通した膨張部の流入口部周囲におけるインフレーターと離れた側の非流入部と、の間の距離を長くすることができる。そのため、この非流入部の部位に対する膨張用ガスの圧力を、極力低く抑えることが可能となって、この非流入部と膨張部との境界付近からのガス漏れを防止することが可能となる。
【0009】
従って、本発明の頭部保護エアバッグ装置のエアバッグでは、出力を増大させたインフレーターを使用しても、エアバッグからのガス漏れを防止することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
実施形態のエアバッグ11は、図1に示すように、車両Vに搭載される頭部保護エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Mに使用されるものであり、車内側のドアや窓部の開口Wの上縁側周縁におけるフロントピラー部FPの下縁側、ルーフサイドレール部RRの下縁側、及び、リヤピラー部RPの上方側にわたって、折り畳まれて収納されている。
【0012】
エアバッグ装置Mは、エアバッグ11、インフレーター39、取付ブラケット37・40、及び、エアバッグカバー8を、備えて構成されている。
【0013】
インフレーター39は、図1・3に示すように、折り畳まれたエアバッグ11に膨張用ガスGを供給するシリンダタイプとしており、エアバッグ11の後述する接続口部14aと、インナチューブ32の後端32aと、が外装されることとなる。実施形態のインフレーター39は、円柱状の本体部39aと、膨張用ガスGをインナチューブ32に案内する金属製の案内筒部39cと、を備えて構成され、案内筒部39cは、本体部39aに対して、部分的に内径寸法を縮径させるようにかしめて固定されている。本体部39aは、小径の円柱状とした先端部に、膨張用ガスGを吐出させる複数のガス吐出口39bを配設させている。
【0014】
取付ブラケット40は、板金製として、エアバッグ11の接続口部14aとインナチューブ32の後端32aとを外装させたインフレーター39を、接続口部14a及びインナチューブ後端32aごと外周側から挟持する円筒状の保持部40aと、2本の取付ボルト41を利用して、リヤピラー部RPの車内側におけるボディ1側の板金製のインナパネル2に取り付ける取付部40bと、を備えて構成されている。保持部40aは、内径寸法を縮径させるようにかしめて、インフレーター39等を保持することとなる。取付部40bには、取付ボルト41を挿通させる取付孔40cが形成されている。
【0015】
取付ブラケット37は、図1・2に示すように、板金製として、エアバッグ11における後述する各取付部24を挟持するもので、それぞれ、車内側Iの内プレート37aと車外側Oの外プレート37bとを備えて構成されている。内・外プレート37a・37bには、各取付部24の取付孔24aに対応する取付孔37cが貫通されている。そして、取付ボルト38を、取付孔24a・37cに挿通させて、インナパネル2の取付孔2a周縁に固着されたナット2bに螺合させることにより、各取付部24がインナパネル2に取り付けられることとなる。
【0016】
エアバッグカバー8は、図1・2に示すように、フロントピラー部FPに配置されるピラーガーニッシュ4とルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5とのそれぞれの下縁側から構成されている。なお、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRの車内側Iにおけるボディ1のインナパネル2に取付固定されている。また、ルーフヘッドライニング5は、フロントピラー部FPの上方付近から、センターピラー部CPの上方を経て、リヤピラー部RPの上方付近まで、配設されている。
【0017】
エアバッグ11は、図1・2・4〜8に示すように、膨張用ガスGの流入時に、車内側Iの開口W(W1・W2)を覆うように展開膨張可能なエアバッグ本体12と、エアバッグ本体12内に配設されて、インフレーター39からの膨張用ガスGをエアバッグ本体12内に案内するインナチューブ32と、を備えて構成される。
【0018】
エアバッグ本体12は、ポリアミド糸等を使用した袋織りにより製造されて、図1・2・4〜8に示すように、インフレーター39からの膨張用ガスGを流入させて、折り畳み状態から展開して、開口W(W1・W2)やセンターピラー部CPのピラーガーニッシュの車内側Iを覆うように展開膨張する構成である。また、エアバッグ本体12は、車内側壁部13aと車外側壁部13bとを離すようにして、膨張用ガスGを内部に流入可能なガス流入部13と、膨張用ガスGを流入させない非流入部23と、から構成されている。
【0019】
ガス流入部13は、実施形態の場合、チューブ配設部14、前席用流入部15、後席用流入部16、及び、連通流入部21、から構成されている。チューブ配設部14は、エアバッグ本体12の上縁12a側で車両Vの前後方向に沿って直線状に配設され、内部に、インナチューブ32を配設させることとなる。前席用流入部15は、チューブ配設部14の前部側の下方に配置され、エアバッグ11の展開膨張時、車両Vの前席の側方に配置されて、前席側方の開口W1を覆うように膨張することとなる。後席用流入部18は、チューブ配設部14の後部側の下方に配置され、エアバッグ11の展開膨張時、車両Vの後席の側方に配置されて、後席側方の開口W2を覆うこととなる。連通流入部21は、前席用流入部15の後端下部と後席用流入部18の前端下部とを連通するように、後述する板状部28の下方側におけるエアバッグ本体12の下縁12b側で、下縁12bに沿って前後方向に配置されている。
【0020】
チューブ配設部14は、後端側に接続口部14aを備えている。接続口部14aは、後端を開口させて、エアバッグ本体12から突出するように略円筒状に形成されている。チューブ配設部14は、接続口部14aから直線状に前方に延びて、前席用流入部15の上方まで配設されている。また、接続口部14aは、既述したように、インナチューブ後端32aを介在させて、インフレーター39に外装されることとなる。
【0021】
前席用・後席用流入部15・18は、それぞれ、後述する区画結合部27で区画されて、上下方向に延びるように、車両の前後方向に配設される複数の膨張部16・19から構成されている。前席用流入部15の膨張部16は、4つの膨張部16A・16B・16C・16Dから構成されている。各膨張部16A・16B・16C・16Dの上端には、それぞれ、チューブ配設部14に連通される流入口部17A・17B・17C・17Dが形成されている。また、後端側に配置される膨張部16Dは、後述する板状部28の前縁側に接しており、下端16aを、連通流入部21の前端と連通させている。膨張部16D以外の各膨張部16A・16B・16Cは、全て、下端側が、非流入部23の後述する周縁結合部25の下縁側部25bによって閉塞されている。
【0022】
流入口部17Aは、非流入部23の後述する周縁結合部25の前縁側部25cと、区画結合部27の上端27aと、の間に形成されている。流入口部17B・17Cは、それぞれ、前後に配置される区画結合部27・27の上端27a・27aの間に形成されている。流入口部17Dは、区画結合部の上端27aと、後述する長方形板状部28cの周囲に配置される周縁結合部25eと、の間に形成されている。
【0023】
後席用流入部18の膨張部19も、4つの膨張部19A・19B・19C・19Dから構成されている。そして、各膨張部19A・19B・19C・19Dの上端には、それぞれ、チューブ配設部14に連通される流入口部20A・20B・20C・20Dが形成されている。また、前端側に配置される膨張部19Aは、下端19aを連通流入部21の後端と連通させている。膨張部19A以外の各膨張部19B・19C・19Dは、全て、下端側が周縁結合部25の下縁側部25bによって閉塞されている。
【0024】
流入口部20Aは、長方形板状部28cの周囲に配置される周縁結合部25eと、区画結合部27の上端27aと、の間に形成されている。流入口部20B・20Cは、それぞれ、前後に配置される区画結合部27・27の上端27a・27aの間に形成されている。流入口部20Dは、区画結合部の上端27aと、周縁結合部25の後縁側部25dと、の間に形成されている。
【0025】
非流入部23は、車内側壁部13aと車外側壁部13bとを結合させたように構成されており、取付部24、周縁結合部25、区画結合部27、及び、板状部28と、から構成されている。
【0026】
周縁結合部25は、ガス流入部13の周囲で、後述する長方形板状部28cの周囲を含めて、ガス流入部13と接する部位に配設されて、ガス漏れが生じないように密に織成されている。
【0027】
取付部24は、エアバッグ本体12の上縁12a側における周縁結合部25の上縁側部25aや板状部28(三角板状部28a・28b)から上方へ突出するように、複数(実施形態では8個)配置されて、インナパネル2に取り付けるための取付ブラケット37が固着されることとなる。各取付部24には、取付ボルト38を挿通させる取付孔24aが開口されている。
【0028】
板状部28は、エアバッグ本体12の前端側と後端側とに配置される三角板状部28a・28bと、前後の前席用流入部15と後席用流入部18との間におけるチューブ配設部14と連通流入部21との間に配設される長方形板状部28cと、から構成されている。板状部28は、エアバッグ本体12の全体形状を確保するとともに、ガス流入部13の容積を小さくして、膨張完了までの時間を短くするために設定されている。なお、前方側の三角板状部28aは、周縁結合部25の前縁側から前方に突出するように配設され、後方側の三角板状部28bは、周縁結合部25の後縁側から後方に突出するように配設されている。また、長方形板状部28cの周囲におけるガス流入部13(前席用・後席用流入部15・18・連通流入部21・チューブ配設部14)との間に、周縁結合部25が配設されている。
【0029】
区画結合部27は、各前席用・後席用流入部15・18の領域内で、上端27aを前後方向に突出させて、周縁結合部25の下縁側部25bから連通流入部21まで上方に延びるような略「T」字形状として、車両Vの前後方向に複数並設されている。各区画結合部27は、各流入部15・18内を複数の膨張部16A・16B・16C・16D・19A・19B・19C・19Dに区画するものであり、各流入部15・18が膨張用ガスGを流入させて膨張した際、各流入部15・18の厚さを略均等にするために配設されるものである。また、各区画結合部27は、接続口部14a付近からエアバッグ本体12の前部にかけて、すなわち、三角板状部32bの後端の取付部24Bから三角板状部32aの前端の取付部24Fにかけての前後方向に張力を発揮させて、エアバッグ本体12が、車内側Iや車外側Oへの押圧力を受けても、大きく揺動しないように、配置されるものである。
【0030】
インナチューブ32は、円筒状として、エアバッグ本体12のチューブ配設部14内に挿入されて配置されている。インナチューブ32の後端32aは、インフレーター39への外装時に、ずれないように、接続口部14aの内周面側に熱溶着されている。インナチューブ32は、ポリアミド糸・ポリエステル糸等を使用した織布からなる一枚のシート材の端部相互をポリアミド糸等からなる縫合糸Sにより縫合して、円筒状に形成されている。なお、接続口部14aから離れたインナチューブ32の前端32bは、閉塞されている。
【0031】
そして、インナチューブ32における周壁32cの下部側には、図4・7・8に示すように、エアバッグ本体12における各流入部15・18内に膨張用ガスGを供給可能な複数の供給口34が設けられている。各供給口34は、インナチューブ32における各膨張部16A・16B・16C・16D・19A・19B・19C・19Dの上方で、各流入部17A・17B・17C・17D・20A・20B・20C・20Dに対応して配置されて、インナチューブ32内から各膨張部16A・16B・16C・16D・19A・19B・19C・19D内に、膨張用ガスGを供給可能に形成されている。また、各供給口34の内径寸法は、各流入部17A・17B・17C・17D・20A・20B・20C・20Dの開口幅寸法より小さい。
【0032】
そして、インフレーター39近傍となる後席用流入部18の上方に配置される供給口34A・34B・34C・34Dは、図4・8・9に示すごとく、各供給口34A・34B・34C・34Dに連通した各流入口部20A・20B・20C・20Dにおける幅方向の中央よりも、インフレーター39側にオフセットされて、配置されている。このオフセット量は、最もインフレーター39側に位置する膨張部19Dに連通する供給口34Dが最も大きく設定され、インフレーター39から離れるにつれて、順次、オフセット量も小さくなるように設定される。実施形態では、膨張部19Dにおける流入口部20Dの幅寸法(区画結合部上端27aの後縁から周縁結合部25における後縁側部25cの前縁までの距離)w1を115mm、膨張部19Dの上方に配置される供給口34Dの内径寸法d1を19mmとした場合、流入口部20Dの幅方向の中央から供給口34Dの中心までの距離L1(オフセット量)は、10mmに設定されている。また、幅寸法w2に設定されている流入口部19Cの幅方向における中央から供給口34Cの中心までの距離L2は、距離L1より小さく設定され、幅寸法w3に設定されている流入口部19Bの幅方向における中央から供給口34Bの中心までの距離L3は距離L2より小さく設定されている。そして、幅寸法w4に設定されている流入口部19Aの幅方向における中央から供給口34Aの中心までの距離L4は、距離L3より小さく設定されている。
【0033】
なお、実施形態では、前席用流入部15側の供給口34は、各流入口部17の幅方向の中央に配置されている。
【0034】
次に、このエアバッグ11の車両への搭載について説明する。まず、インナチューブ32を、エアバッグ本体12に挿入する。インナチューブ32を、接続口部14aの開口側から、所定の治具を使用して、エアバッグ本体12のチューブ配設部14内に挿入し、後端32a側を高周波溶着等を利用して、接続口部14a付近に熱溶着させて、エアバッグ11を製造する。次いで、平らに展開したエアバッグ本体12を、図4の二点鎖線に示すように、インナチューブ32とともに、順次、山折りと谷折りとの折り目Cをいれて、エアバッグ本体12の下縁12b側を上縁12a側に接近させるように、蛇腹折りする(図2参照)。
【0035】
そして、折り畳んだ後には、折り崩れ防止用の破断可能なテープ36(図2参照)により、エアバッグ11の所定箇所をくるむとともに、インフレーター39・取付ブラケット37・40を取り付けて、エアバッグ組付体を形成する。
【0036】
その後、各取付ブラケット37・40をインナパネル2の所定位置に配置させ、各取付孔24a・37c・40cを挿通させてボルト38・41止めし、各取付ブラケット37・40をインナパネル2に固定して、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。次いで、インフレーター39に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1に取り付け、さらに、リヤピラーガーニッシュ6・センターピラーガーニッシュ7をボディ1に取り付ければ、エアバッグ11がエアバッグ装置Mとともに車両Vに搭載されることとなる。
【0037】
エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、インフレーター39が作動されれば、インフレーター39からの膨張用ガスGが、図4の二点鎖線に示すように、チューブ配設部14のインナチューブ32内を前方側に流れ、供給口34を経て、各流入口部17・20から、各膨張部16A・16B・16C・16D・19A・19B・19C・19D内に供給され、エアバッグ本体12の各流入部15・18が、折りを解消させつつ、膨張し始める。そして、エアバッグ11は、くるんでおいたテープ36を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5の下縁側のエアバッグカバー8を押し開いて、図1・2の二点鎖線で示すように、下方へ突出しつつ、開口W1・W2・センターピラー部CP・リヤピラー部RPの車内側Iを覆うように、大きく展開膨張することとなる。
【0038】
このとき、インフレーター39近傍に配置される膨張部19Dでは、流入する膨張用ガスGが最も高圧であるため、インフレーター39から離れた側の非流入部23である区画結合部27の上端27aに作用する圧力が最も高い。
【0039】
しかし、実施形態のエアバッグ11では、インフレーター39の最も近傍に配置されるインナチューブ32の供給口34Dを、流入口部20Dの中央よりもインフレーター39側に最もオフセットさせて配置させている。すなわち、インフレーター39近傍の供給口34Dと、その供給口34Dに連通した膨張部19Dの流入口部20D周囲におけるインフレーター39と離れた側の区画結合部27の上端27aと、の間の距離を長くすることができる。そのため、区画結合部27の上端27aに対する膨張用ガスGの圧力を、極力低く抑えることが可能となって、区画結合部27の上端27aと、膨張部19Dと、の境界付近からのガス漏れを防止することが可能となる。
【0040】
さらに、実施形態では、後席用流入部18における膨張部19A・19B・19Cに連通した供給口34A・34B・34Cも、インフレーター39から離れるにつれてオフセット量を順次小さくするように、インフレーター39側にオフセットさせて配置されていることから、流入する膨張用ガスGの圧力が高いインフレーター39近傍でも、区画結合部27の上端27a若しくは周縁結合部25eと、膨張部19A・19B・19Cと、の境界付近からのガス漏れが生じる虞れがない。
【0041】
なお、実施形態では、後席用流入部18の各膨張部19A・19B・19C・19Dに連通した供給口34A・34B・34C・34Dの中心をインフレーター39側にオフセットさせているが、中心をオフセットさせる供給口34A・34B・34C・34Dはこれに限られるものではなく、インフレーター39の最も近くに位置する膨張部19Dに連通する供給口34Aのみをオフセットさせる構成としてもよい。また、実施形態では、各供給口34A・34B・34C・34Dのオフセット量を、インフレーター39側に配設される供給口34Dが最も大きく設定され、インフレーター39から離れるにつれて、順次、小さくなるように設定されているが、各供給口34A・34B・34C・34Dのオフセット量を、略同一に設定してもよい。さらに、前席用流入部15側の各供給口34を、流入口部17の幅方向の中央からインフレーター39側にオフセットされて配置させる構成としてもよい。
【0042】
また、実施形態のエアバッグでは、後端側に接続口部を配置させているが、本発明を適用可能なエアバッグはこれに限られるものではなく、例えば、前席用流入部と後席用流入部との間に、インフレーターを配置させる構成としてもよい。この場合、インナチューブは、前席用流入部と後席用流入部とに、それぞれ、膨張用ガスを案内するように、配設されることとなる。そして、インナチューブの前席用流入部側に配設される部位では、前席用流入部のインフレーター近傍となる後方側に配置された膨張部に連通する供給口を、インフレーターに接近するように、後方側にオフセットして配設させることとなり、後席用流入部側に配設される部位では、後席用流入部のインフレーター近傍となる前方側に配置された膨張部に連通する供給口を、インフレーターに接近するように、前方側にオフセットして配設させることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるエアバッグが使用される頭部保護エアバッグ装置の使用態様を示す車内側から見た概略正面図である。
【図2】図1のII−II部位の概略拡大断面図である。
【図3】同実施形態のインフレーターの配設部位の部分断面図である。
【図4】同実施形態のエアバッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
【図5】同実施形態のエアバッグの膨張時を示す部分拡大横断面図であり、図4のV−V部位が膨張した状態を示す。
【図6】同実施形態のエアバッグの膨張時を示す部分拡大縦断面図であり、図4のVI−VI部位が膨張した状態を示す。
【図7】同実施形態のエアバッグの膨張時を示す部分拡大縦断面図であり、図4のVII−VII部位が膨張した状態を示す。
【図8】同実施形態のエアバッグにおけるインナチューブを挿入する前の状態を示す正面図である。
【図9】同実施形態のエアバッグにおける後席用流入部の上部側付近を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
11…エアバッグ、
12…エアバッグ本体、
13…ガス流入部、
13a…車内側壁部、
13b…車外側壁部、
15…前席用流入部、
16(16A・16B・16C・16D)…膨張部、
17(17A・17B・17C・17D)…流入口部、
18…後席用流入部、
19(19A・19B・19C・19D)…膨張部、
20(20A・20B・20C・20D)…流入口部、
23…非流入部、
25・25e…周縁結合部、
27…区画結合部、
27a…(区画結合部)の上端、
32…インナチューブ、
34(34A・34B・34C・34D)…供給口、
39…インフレーター、
G…膨張用ガス、
W(W1・W2)…開口、
M…頭部保護エアバッグ装置。
Claims (1)
- 膨張用ガスの流入時に、車内側の開口を覆うように展開膨張可能なエアバッグ本体と、
該エアバッグ本体内に配設されて、インフレーターからの膨張用ガスを前記エアバッグ本体内に案内するインナチューブと、
を備えて構成されるとともに、
前記エアバッグ本体が、前記膨張用ガスを流入させて車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨張可能なガス流入部と、膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備え、
前記ガス流入部が、前記非流入部で区画されるように、前記インナチューブの軸方向に沿って複数並設されて、それぞれ、前記インナチューブ側に流入口部を開口させた膨張部を、備えて構成され、
前記インナチューブが、前記各流入口部に対応して配置されて、前記各膨張部内に前記膨張用ガスを供給可能に、前記流入口部の開口幅寸法より小さく開口する供給口を、備えて構成される頭部保護エアバッグ装置のエアバッグであって、少なくともインフレーター近傍に配置される前記インナチューブの前記供給口が、前記供給口に連通した前記流入口部における幅方向の中央よりも、インフレーター側にオフセットされて、配置されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置のエアバッグ。
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