JP3689679B2 - 円筒形金属缶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、円筒形電池の電池缶などに好適に用いることができる円筒形金属缶を低コストで製造することのできる製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、円筒形金属缶、例えば円筒形電池の金属製電池缶は、一般に、図7に示すような製造過程を経て製造されている。すなわち、同図(a)に示すように、先ず、ニッケルめっき鋼板からなる帯状金属平板である電池缶素材1を打ち抜き加工して、(b)に示すように、目的とする円筒形電池缶に対応した円板形状の板材2を形成する。この板材2は、深絞り加工が施されることにより、(c)に示すような皿状の第1の中間カップ体3に成形される。さらに、第1の中間カップ体3は、深絞り工程による再絞り加工が施されることにより、(d)に示すような第2の中間カップ体4に成形される。最後に、第2の中間カップ体4は、DI(Drawing とIroning 、つまり絞り加工としごき加工の両方を連続的に一挙に行う)加工されることにより、(e)に示すような所望の有底円筒状の電池缶7に成形加工される。
【0003】
この製造方法では、帯状金属平板の電池缶素材1を円形に打ち抜いて得られた円板状の板材2を連続的に深絞り加工して横断面形状がそれぞれ円形の第1および第2の中間カップ体3,4に成形したのちに、この第2の中間カップ体4をDI加工している。そのため、DI加工では、横断面形状が円形の第2の中間カップ体4から同じ横断面形状が円形の円筒形電池缶7への相似形加工となることから、DI加工におけるしごき工程において周壁全体の肉厚が均等に減少する加工時に、材料が均一に流れてスムーズに変形し、安定した加工を行える。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記製造方法では、帯状金属平板からなる電池缶素材1に対し上述の理由で円板状の板材2を打ち抜いて材料取りしているので、図7(a)に横平行線で図示するように、電池缶素材1における材料取りにより円形の打ち抜き孔1aが形成された後の打ち抜きカス1bは、打ち抜き孔1aを可及的に近接させた配置で材料取りしたとしても、比較的大きな面積で残存する。具体的には電池缶素材1に対して22%の面積分の打ち抜きカス1bが残存する。したがって、電池缶素材1に対する歩留りは、上述の大きな材料ロスに伴って78%と非常に低いものになっている。しかも、打ち抜きカス1bは、残存量が多いだけでなく、取扱い難い形状として残存するので、これの処理にも多くの費用を要するという課題がある。そのため、従来の円筒形電池缶の製造方法では、上記の材料ロスおよび打ち抜きカスの残存処理がコスト高の一因になっており、これは、円筒形電池の生産量が極めて多いことから、大きな経済的損失を招いている。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、帯状金属平板の素材から無駄の無い極めて効率的な材料取りをしながらも高精度な円筒形金属缶を円滑に製造することのできる製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明に係る円筒形金属缶の製造方法は、帯状金属平板からなる金属缶素材を打ち抜き加工して正六角形の板材を形成する板材打ち抜き工程と、前記板材を成形して横断面形状が正六角形の第1の中間カップ体に加工する第1のカップ体成形工程と、前記第1の中間カップ体を、絞り加工としごき加工とを連続的に一挙に行うDI加工することにより、横断面形状が円形の円筒形金属缶を成形する金属缶成形工程とを有し、前記第1の中間カップ体は、その底面部分を、後工程の金属缶成形工程を経て得られる円筒形電池缶の所望の径と同一またはほぼ同一の直径の内接円を有する平面底板部と、この平面底板部から外方に向け弧状に膨らみながら角筒部に延びる湾曲部とを有するすり鉢形状に形成するようにしていることを特徴としている。
【0007】
この円筒形金属缶の製造方法では、金属缶素材に正六角形の各打ち抜き孔をこれらの互いに隣接する同一長さの一辺を重合して連続する配置で形成することができるから、隣接する各打ち抜き孔の間に打ち抜きカスが発生せず、金属缶素材を打ち抜き加工した後の打ち抜きカスは、帯状の金属缶素材における幅方向の両端部に沿った個所に三角形状で僅かに残存するだけであるから、従来の製造方法による打ち抜きカスの70〜90%程度を削減することができる。そのため、金属缶素材に対する歩留りは、約93〜98%と格段に向上し、材料ロスと打ち抜きカスの処理費用が共に大幅に低減して、相当のコストダウンを達成することができる。
【0008】
また、この製造方法では、正六角形の板材に対し深絞り加工やDI加工を施して直接的に円筒形電池缶を成形するのではなく、板材を、これとほぼ相似形となる正六角形の横断面形状を有する第1の中間カップ体に一旦成形加工したのちに、この第1の中間カップ体を横断面形状が円形になるよう修正する成形を施して目的とする円筒形金属缶に加工するので、板材が正六角形であるにも拘わらず、所望の円筒形金属缶を無理無くスムーズに成形して高精度な形状に加工することができる。
【0009】
上記第1の発明において、第1のカップ体成形工程と金属缶成形工程との間に、第1の中間カップ体を成形して横断面形状が円形の第2の中間カップ体に加工する第2のカップ体成形工程を介設し、金属缶成形工程では前記第2の中間カップ体をDI加工することが好ましい。これにより、第1の中間カップ体に横断面形状が円形になるよう修正する成形加工を施して得られた第2の中間カップ体を、これと相似形の横断面形状を有する円筒形金属缶に成形加工するので、所望の円筒形金属缶を一層無理無く極めて円滑に成形して高精度な形状に加工することができる。
【0010】
第2の発明に係る円筒形金属缶の製造方法は、帯状金属平板からなる金属缶素材を打ち抜き加工して正方形の板材を形成する板材打ち抜き工程と、前記板材を成形して横断面形状が正方形の第1の中間カップ体を加工する第1のカップ体成形工程と、前記第1の中間カップ体を成形して横断面形状が正多角形の第2の中間カップ体に加工する第2のカップ体成形工程と、前記第2の中間カップ体を、絞り加工としごき加工とを連続的に一挙に行うDI加工することにより、横断面形状が円形の円筒形金属缶を成形する金属缶成形工程とを有し、前記第2の中間カップ体は、それらの底面部分を、後工程の金属缶成形工程を経て得られる円筒形電池缶の所望の径と同一またはほぼ同一の直径の内接円を有する平面底板部と、この平面底板部から外方に向け弧状に膨らみながら角筒部に延びる湾曲部とを有するすり鉢形状に形成するようにしていることを特徴としている。
【0011】
この円筒形金属缶の製造方法では、金属缶素材に正方形の打ち抜き孔をこれらの互いに隣接する同一長さの一辺を重合して連続する配置で形成することができるので、隣接する各2つの打ち抜き孔の間には打ち抜きカスが全く残存しないとともに、帯状の金属缶素材の長手方向に対し直交する両側辺に沿って各板材の一辺をそれぞれ合致させる配置で打ち抜けば、金属缶素材を打ち抜き加工したあとには、理論上、打ち抜きカスが全く残存しないことになる。したがって、この製造方法では、従来の製造方法による打ち抜きカスをほぼ100%削減することができ、金属缶素材に対する歩留りはほぼ100%と格段に向上するため、材料ロスと打ち抜きカスの処理費用が共にほぼゼロとなって、大幅なコストダウンを達成することができる。
【0012】
また、この製造方法では、正方形の板材に対し深絞り加工やDI加工を施して直接的に円筒形電池缶を成形するのではなく、板材を、これとほぼ相似形となる正方形の横断面形状を有する第1の中間カップ体に一旦成形加工したのちに、この第1の中間カップ体を、正方形よりも円形に近い形状である正多角形の横断面形状を有する第2の中間カップ体に加工して、この第2の中間カップ体を、横断面形状が円形となるよう修正する成形を施して目的とする円筒形金属缶に加工するので、板材が正方形であるにも拘わらず、所望の円筒形金属缶を無理無くスムーズに製作して高精度な形状に加工することができる。
【0013】
上記第2の発明において、第2のカップ体成形工程と金属缶成形工程との間に、第2の中間カップ体を成形して横断面形状が円形の第3の中間カップ体に加工する第3のカップ体成形工程を介設し、金属缶成形工程では前記第3の中間カップ体をDI加工することが好ましい。これにより、横断面形状が正多角形の第2の中間カップ体に横断面形状が円形になるよう修正する成形加工を施して得られた第3の中間カップ体を、これと相似形の横断面形状を有する円筒形金属缶に成形加工するので、所望の円筒形金属缶を一層無理無く極めて円滑に製作して高精度な形状に加工することができる。
【0014】
上記第1の発明における第1の中間カップ体および上記第2の発明における第2の中間カップ体は、それらの底面部分を、後工程の金属缶成形工程を経て得られる円筒形電池缶の所望の径と同一またはほぼ同一の直径の内接円を有する平面底板部と、この平面底板部から外方に向け弧状に膨らみながら角筒部に延びる湾曲部とを有するすり鉢形状に形成しているので、次のような作用を営むことができる。
【0015】
すなわち、横断面形状が正六角形または正多角形の中間カップ体は、次工程において円形の横断面形状に変形加工されるときに、平面底板部に対しこれの内接円とほぼ同じ外径のパンチで押動されるから、その加工による変形に伴い余剰となる材料が下方のすり鉢状部分に逃がすように流動されることにより、材料が均一に延びるようにスムーズに流動することによって歪な形状となる個所が発生することがないとともに、平面底面部の内接円に合致するように全体形状を変形加工できるので、所望の円形の横断面形状を有する中間カップ体に円滑、且つ高精度に変形加工することができる。
【0016】
上記構成における平面底板部は、目的とする円筒形金属缶の内径に対し100〜130%の直径の内接円を有する横断面形状に形成することが好ましい。
【0017】
これにより、横断面形状が正六角形または正多角形の中間カップ体は、その平面底板部が目的とする円筒形金属缶の内径に対し130%以下の直径の内接円を有する横断面形状に形成されていることにより、DI加工時において底面部分に破損が生じるおそれがないとともに、変形加工に伴い余剰となる材料の集中を無くして、横断面形状が正六角形または正多角形の中間カップ体を円形の横断面形状を有する中間カップ体に容易、且つ高精度に変形加工できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明の円筒形金属缶の製造方法に係る一実施の形態を具現化した製造過程における加工品の形状を工程順に示したものであり、この実施の形態では円筒形電池の金属電池缶を製造する場合を例示してある。(a)は材料取りしたあとの帯状金属平板からなる電池缶素材8の平面図、(b)は電池缶素材8を打ち抜いて得られた板材9の斜視図、(c)はその板材9を成形加工した第1の中間カップ体10の斜視図、(d)はその第1の中間カップ体10を成形加工して得られた第2の中間カップ体11の斜視図、(e)はその第2の中間カップ体11を成形加工して得られた最終製品である円筒形電池缶12の斜視図である。
【0019】
この実施の形態では、(a)の電池缶素材8を正六角形に打ち抜加工して、(b)に示す正六角形の板材9を得ることを特長としている。したがって、電池缶素材8には、正六角形の各打ち抜き孔8aを、これらの互いに隣接する同一長さの一辺を重合して連続する配置で形成することができるから、電池缶素材8を打ち抜き加工した後の打ち抜きカス8bは、図1(a)に横平行線で図示するように、電池缶素材8における幅方向の両側辺に沿った個所に三角形状で僅かに残存するだけである。これに対し従来の円形の打ち抜き孔1aの場合には、隣接する各2つを可及的に近接させても、各打ち抜き孔1aの間にほぼ三角形状の打ち抜きカスが残存するとともに、電池缶素材1の幅方向の両側辺に沿った個所にも比較的大きな面積で打ち抜きカスが残存する。なお、図1(a)では、隣接する各二つの打ち抜き孔8aの重合する箇所を2点鎖線で図示すべきであるが、明確な図示とするために、敢えて実線で図示してある。
【0020】
したがって、電池缶素材8から材料取りしたあとの打ち抜きカス8bは、従来の製造方法による打ち抜きカス1bの70〜90%程度に削減することができるから、電池缶素材8に対する歩留りは、約93〜98%と格段に向上する。そのため、この製造方法では、材料ロスと打ち抜きカス8bの処理費用が共に大幅に低減するので、相当のコストダウンを達成することができる。
【0021】
そして、この円筒形電池缶12の製造方法では、正六角形の板材9を、これとほぼ相似形となる正六角形の横断面形状を有する第1の中間カップ体10に一旦成形加工したのちに、この第1の中間カップ体10から、横断面形状が円形になるよう修正する成形加工を施して第2の中間カップ体11を製作し、この第2の中間カップ体11から、これと相似形の横断面形状を有する円筒形電池缶12を成形加工する製造過程を経ている。この製造過程を経ることにより、板材9が正六角形であるにも拘わらず、この板材9から円筒形電池缶12を無理無くスムーズに製作することが可能となる。
【0022】
もし仮に、正六角形の板材9に対し深絞り加工やDI加工を施して直接的に円筒形電池缶を成形加工した場合には、出来上がった円筒形電池缶が歪な形状になるだけでなく、正六角形の各角部に対応する箇所にDI加工時のしごき加工によってちぎれなどの不具合が生じて円筒形電池缶の歩留りが低下し、さらに、成形加工直後の円筒形電池缶には、図1(e)に仮想線で示すように、上端面に比較的大きな形状のイヤリングEが突出形成されるので、このイヤリングE部分を切断して除去する無駄が生じてしまう結果、電池缶素材8から効率的に材料取りした利点が半減してしまう。
【0023】
つぎに、上記製造方法を具現化した製造工程について説明する。図2は、図1の電池缶素材8の打ち抜き加工および板材9の深絞り加工を共に行うプレス機を示す。なお、上記打ち抜き加工と深絞り加工とは、実用化に際して、一連に連設された別工程として設けてもよいが、この実施の形態では、説明を簡略化するために、同一工程とした場合を例示している。
【0024】
図2において、ダイスホルダ13に固定されたカッピングダイス14の開口端には、ブランキングダイス17が突出状態に外嵌固定されている。このブランキングダイス17の端面上には、同図(a)に示すように、電池缶素材8が供給される。電池缶素材8としては、この実施の形態の製造対象である円筒形電池缶12の耐圧強度や封口部の強度を確保するために、ニッケルめっき鋼板が用いられている。このニッケルメッキ鋼板からなる電池缶素材8は、フープ材としてブランキングダイス17の端面上に供給されて、順次位置決めされる。
【0025】
電池缶素材8が位置決めされると、(b)に示すように、第1および第2のパンチホルダ18,19にそれぞれ保持されたブランキングパンチ20およびカッピングパンチ(絞りパンチ)21は共にダイス14,17側に近接移動する。それにより、電池缶素材8は、ブランキングダイス17における正六角形の孔形状の孔縁部に沿って設けられた刃部(図示せず)と、横断面形状が正六角形のブランキングパンチ20先端周縁部に設けられた刃部(図示せず)とにより打ち抜かれる。この電池缶素材8を打ち抜いて得られた図1の板材9は、ブランキングパンチ20とカッピングダイス14との間に挟まれて一旦保持される。
【0026】
つぎに、打ち抜かれてブランキングパンチ20とカッピングダイス14との間に挟持されている板材9は、正六角形の横断面形状を有するカッピングパンチ21の押動により、図2(c)に示すように、カッピングダイス14の内部に引き込まれながら、カッピングパンチ21の正六角形の横断面形状の外形に沿った形状に絞られていき、図1(c)に示すように、正六角形の横断面形状を有する皿状の第1の中間カップ体10が成形加工される。
【0027】
上記の工程における深絞り加工時において、ブランキングパンチ20は、電池缶素材8を打ち抜いた板材9に対し一定の力(つまり、板材9を圧延させない程度の力)でカッピングダイス14の上端面に押し付けてテンションを付与していることにより、恰もしわ押さえとして機能する。したがって、このプレス機は、深絞り加工に必要なしわ押さえを具備していないが、ブランキングパンチ20がしわ押さえとして機能することによって支障無く深絞り加工を行える。上述のように成形された第1の中間カップ体10は、ばねを有するストリッパ22に係止され、カッピングパンチ21およびブランキングパンチ20のみが(a)に示す元の位置に復帰し、以後、上述と同様の動作を繰り返す。
【0028】
上記工程を経て成形された第1の中間カップ体10は、図1(c)および図3(a)の正面図並びに図3(b)の縦断面図にそれぞれ示すような形状に設定されている。すなわち、第1の中間カップ体10は、ほぼ上半部が正六角形の横断面形状を有する角筒部10aで、且つ内接円を有する形状の平面底板部10bを有し、この円形の平面底板部10bから外方に向け弧状に膨らみながら角筒部10aに延びる湾曲部10dを有するすり鉢状の形状になっている。
【0029】
上記角筒部10aは、図1(a)に示す正六角形の板材9の外接円の直径Dに対し60〜70%の直径D1(図3)の外接円を有する正六角形の横断面形状に設定されている。また、平面底板部10bの内接円の直径D2は、目的とする円筒形電池缶12の外径D3と同じか僅かに大きく設定されている。具体的には、平面底板部10bの内接円の直径D2は、円筒形電池缶12の内径に対し100〜130%に設定されている。また、角筒部10aの6つの角部10cは、1〜3mmの半径を有するアール形状になっている。第1の中間カップ体10は、上述した条件の形状に設定したことにより、次工程において、横断面形状が円形の第2の中間カップ体11にスムーズに変形加工することが可能となる。これについての詳細は、次工程で説明する。
【0030】
上記の第1の中間カップ体10は、図4の絞りプレス機を用いた工程による4段の再絞り加工を経て第2の中間カップ体11とされる。この絞りプレス機は、4段の絞り加工を一挙に施すことによって第2の中間カップ体11を製作するもので、中間製品搬送部23、円柱状のカッピングパンチ24、ダイス機構27およびストリッパ28などを備えて構成されている。
【0031】
上記中間製品搬送部23は前工程で製作された第1の中間カップ体10を順次成形箇所に搬送する。ダイス機構27には第1ないし第4の絞りダイス27A〜27Dが配設されており、これら各絞りダイス27A〜27Dは、順次小さい径の円形の絞り加工孔を有しており、カッピングパンチ24の軸心と同心となるように直列に配されている。
【0032】
成形箇所に搬送されて位置決めされた第1の中間カップ体10は、はずみホィール(図示せず)によって駆動されるカッピングパンチ24の押動を受けて第1ないし第4の絞りダイス27A〜27Dの各々の絞り加工孔内に順次通過されていく。これにより、第1の中間カップ体10は、横断面形状が正六角形の直線部分が各絞りダイス27A〜27Dの各々の絞り加工孔に沿うように押し拡げられながら変形されるので、この変形加工に伴い余剰となる材料の集中を無くして円形の横断面形状に円滑に変形加工されていくとともに、この変形に伴い余った材料が下方の湾曲部10dに逃がすように流動されて、湾曲部10dが底面部10bから直交して立ち上がる形状に変形されていく。したがって、上記成形加工時には、材料が均一に延びるようにスムーズに流動することによって歪な形状となる個所が発生することがなく、所望の円形の横断面形状を有する第2の中間カップ体11に円滑に変形加工されていく。このようにして製作された第2の中間カップ体11は、ストリッパ28によって絞りプレス機から取り外される。
【0033】
最後に、上記の中間カップ体11は、図5に示す工程において、絞り兼しごき加工機によって1段の絞り加工と3段のしごき加工とを連続的に一挙に施すDI加工されることにより、所望形状の円筒形電池缶12となる。この絞り兼しごき加工機は、中間製品搬送部29、DIパンチ30、ダイス機構31およびストリッパ32などを備えて構成されている。ダイス機構31には、絞りダイス31Aおよび第1ないし第3のしごきダイス31B〜31Dが配設されている。これらダイス31A〜31DはDIパンチ30の軸心と同心となるよう直列に配されている。
【0034】
中間製品搬送部29は、先ず第2の中間カップ体11を順次成形個所に搬送する。成形個所に搬送されて位置決めされた第2の中間カップ体11は、はずみホィール(図示せず)によって駆動されるDIパンチ30の押動により、絞りダイス31Aでその形状がDIパンチ30の外形状に沿った形状になるように絞られる。すなわち、第2のカップ体11は最終製品の円筒形電池缶12の内径とほぼ同一の内径、つまり第1の中間カップ体10の底面部10bの径D2(図3に図示)に絞られる。
【0035】
上記絞りダイス31Aを通過し終えたカップ体は、DIパンチ30の押動が進ことにより、第1のしごきダイス31Bによって第1段のしごき加工が施され、側周部が展延されてその肉厚が小となるとともに加工硬度によって硬度が高められる。この第1のしごきダイス31Bを通過し終えたカップ体は、DIパンチ30の押動がさらに進ことにより、第1のしごきダイス31Bよりも小さい径のしごき加工孔を有する第2のしごきダイス31C、次いで第2のしごきダイス31Cよりも小さい径のしごき加工孔を有する第3のしごきダイス31Dによって、第2段および第3段のしごき加工が順次施され、その周壁部は順次展延され、肉厚がさらに小となるとともに加工硬度によって硬度が高められる。
【0036】
カップ体が第3のしごきダイス31Dを通過し終えると、所望形状の円筒形電池缶12が出来上がる。このDI加工では、横断面形状が円形の第2の中間カップ体11を円筒形電池缶12に形成する相似形加工であるから、無理なくDI加工して所望形状の円筒形電池缶12を安定に製作できる。この円筒形電池缶12は、ストリッパ32によって絞り兼しごき加工機から取り外されたのち、その側上部(耳部)が種々の加工を経たことによって多少歪な形状になっているので、その耳部が切断されて所定形状に整形される。
【0037】
上述のように、上記実施の形態の円筒形電池缶12の製造方法では、電池缶素材8を打ち抜いた正六角形の板材9を用いながらも、この正六角形の板材9を、これに対応する正六角形の横断面形状を有する第1の中間カップ体10に一旦成形加工したのちに、その第1の中間カップ体10を、円形の横断面形状を有する第2の中間カップ体11に変形加工して、その中間カップ体11をこれと相似形の横断面形状の円筒形電池缶12に成形加工するので、正六角形の板材9を用いるにも拘わらず、高精度な円筒形電池缶12を得ることができる。但し、第1の中間カップ体10をそのままDI加工しても、上記実施の形態の製造方法により得られる円筒形電池缶12に比較して形状の精度が多少劣るが、正六角形の板材9をそのままDI加工する場合よりも格段に優れて上述とほぼ同様の効果を得られる所望形状の円筒形電池缶を得ることができる。
【0038】
なお、上記実施の形態では、説明の便宜上、打ち抜き加工および深絞り加工、再絞り加工およびDI加工を個々の工程として説明しているが、実用化に際しては、電池缶素材8の打ち抜き加工からDI加工までを一連の工程として連設することができるのは勿論である。
【0039】
図6は本発明の円筒形金属缶の製造方法に係る他の実施の形態を具現化した製造過程における加工品の形状を工程順に示したもので、この実施の形態においても、円筒形電池の電池缶を製造する場合を例示してある。(a)は材料取りしたあとの帯状金属平板からなる電池缶素材8の平面図、(b)は電池缶素材8から正方形に打ち抜いて得られた板材33の斜視図、(c)はその板材33を成形加工して得られた横断面形状が正方形の第1の中間カップ体34の斜視図、(d)はその第1の中間カップ体34を成形加工して得られた横断面形状が正六角形の第2の中間カップ体37の斜視図、(e)はその第2の中間カップ体37を成形加工して得られた横断面形状が円形の第3の中間カップ体38の斜視図、(f)はその第3の中間カップ体38を成形加工して得られた最終製品である円筒形電池缶39の斜視図である。
【0040】
この実施の形態では、(a)の電池缶素材8を打ち抜加工して、(b)に示す正方形の板材33を得ることを特長としている。したがって、電池缶素材8には、正方形の打ち抜き孔8cを、これらの互いに隣接する同一長さの一辺を重合して連続する配置で形成することができるので、隣接する各2つの打ち抜き孔8cの間には打ち抜きカスが全く残存しないとともに、(a)に示すように、帯状の電池缶素材8の幅方向の両側辺に、これに沿って形成する各板材33の一辺をそれぞれ合致させる配置で打ち抜けば、電池缶素材8を打ち抜き加工したあとには、理論上、打ち抜きカスが全く残存しないことになる。
【0041】
したがって、この製造方法では、従来の製造方法による打ち抜きカス1bをほぼ100%程度削減することができ、電池缶素材8に対する歩留りは、ほぼ100%と格段に向上する。そのため、この製造方法では、材料ロスと打ち抜きカスの処理費用が共にほぼゼロとなるので、大幅なコストダウンを達成することができる。なお、図6(a)では、隣接する各二つの打ち抜き孔8cの重合する箇所を2点鎖線で図示すべきであるが、明確な図示を目的として敢えて実線で図示してある。
【0042】
そして、この円筒形電池缶39の製造方法では、正方形の板材33を、これとほぼ相似形となる正方形の横断面形状を有する第1の中間カップ体34に一旦成形加工したのちに、この第1の中間カップ体34を、正方形よりも円形に近い形状である横断面形状が正多角形の第2の中間ップ体37に成形加工する。この実施の形態では、第2の中間カップ体37として、正六角形の横断面形状を有する形状のものを例示しているが、横断面形状が正多角形であればよく、例えば、正八角形の横断面形状を有する形状としてもよい。
【0043】
上記第2の中間カップ体37は、横断面形状が円形になるよう修正する成形加工を施されて、第3の中間カップ体38とされる。この第3の中間カップ体38は、これと相似形の横断面形状を有する円筒形電池缶39に成形加工される。なお、第1の中間カップ体34に横断面形状が円形になるよう修正する成形加工を施すことにより、第2の中間カップ体37を製作する過程を省略して、第1の中間カップ体34から第3の中間カップ体38を製作しても、図1(e)に仮想線で図示したようなイヤリングEが多少大きくなるが、ほぼ所要の形状を有する第3の中間カップ体38を得ることができる。
【0044】
上記第2の中間カップ体37から円筒形電池缶39を成形加工するまでの工程は、一実施の形態と同様であるから、重複する説明を省略する。上記製造方法では、板材33が正方形であるにも拘わらず、この板材33から円筒形電池缶39を無理無くスムーズに製作することが可能となる。
【0045】
もし仮に、正方形の板材33に対し深絞り加工やDI加工を施して直接的に円筒形電池缶を成形加工した場合には、出来上がった円筒形電池缶が極めて歪な形状になるだけでなく、正方形の4つの角部に対応する箇所にDI加工時のしごき加工によってちぎれなどの不具合が生じて円筒形電池缶の歩留りが低下し、さらに、成形加工直後の円筒形電池缶には上端面に極めて大きな形状のイヤリングが突出形成されてしまい、このイヤリング部分を切断して除去する無駄が生じるから、電池缶素材8から効率的に材料取りした利点が半減してしまう。
【0046】
板材33の打ち抜き加工および板材33を第1の中間カップ体34に成形加工する工程は、図2に示したプレス機とほぼ同様のプレス機を用いて実施することができ、第1の中間カップ体34を第2の中間カップ体37に変形加工する工程および第2の中間カップ体37を第3の中間カップ体38に変形加工する工程は、図4の絞りプレス機とほぼ同様の絞りプレス機を用いて実施することができ、第3の中間カップ体38から円筒形電池缶39を成形加工する工程は図5の絞り兼しごき加工機を用いて実施することができる。また、形状の条件などは、一実施の形態の場合とほぼ同様に設定される。
【0047】
なお、本発明の円筒形金属缶の製造方法は、上記各実施の形態で説明した円筒形電池の電池缶12,39を製造するのに特に好適なものであるが、これに限定されるものではなく、円筒形電池缶12,39以外の他の用途に用いられる比較的小型の種々の円筒形金属缶の製造にも適用して、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る円筒形金属缶の製造方法によれば、金属缶素材を打ち抜き加工して正六角形または正方形の板材を形成するので、金属缶素材を打ち抜き加工した後の打ち抜きカスは、従来の製造方法による打ち抜きカスの70〜90%程度さらには100%にまで削減することができ、金属缶素材に対する歩留りは、約93〜98%さらには100%と格段に向上し、材料ロスと打ち抜きカスの処理費用が共に大幅に低減さらにはほぼゼロとなるので、大幅なコストダウンを達成することができる。しかも、正六角形または正方形の板材に対し深絞り加工やDI加工を施して直接的に円筒形電池缶を成形するのではなく、板材を、これとほぼ相似形となる正六角形または正方形の横断面形状を有する中間カップ体に一旦成形加工したのちに、この第1の中間カップ体を直接または正多角形の横断面形状を有する中間カップ体に変形加工したのに、横断面形状が円形になるよう修正する成形を施して目的とする円筒形金属缶に加工するので、板材が正六角形または正方形であるにも拘わらず、所望の円筒形金属缶を無理無くスムーズに成形して高精度な形状に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の円筒形金属缶の製造方法に係る一実施の形態を具現化した製造過程における加工品の形状を工程順に示したもので、(a)は材料取りしたあとの電池缶素材の平面図、(b)〜(e)はそれぞれ板材、第1,第2の中間カップ体および円筒形電池缶の斜視図。
【図2】同上の実施の形態における打ち抜き加工と第1の絞り加工とを行う工程を工程順に示した断面図。
【図3】(a)は同上の工程を経て成形加工された第1の中間カップ体を示す正面図、(b)はその縦断面図。
【図4】同上の実施の形態における再絞り加工を行う工程の縦断面図。
【図5】同上の実施の形態におけるDI加工を行う工程の縦断面図。
【図6】本発明の円筒形金属缶の製造方法に係る他の実施の形態を具現化した製造過程における加工品の形状を工程順に示したもので、(a)は材料取りしたあとの電池缶素材の平面図、(b)〜(e)はそれぞれ板材、第1ないし第3の中間カップ体および円筒形電池缶の斜視図。
【図7】(a)〜(e)は従来の円筒形金属缶の製造方法による製造過程を工程順に示した平面図および斜視図。
【符号の説明】
8 電池缶素材(金属缶素材)
9,33 板材
10,34 第1の中間カップ体
10a 角筒部
10b 平面底板部
10d 湾曲部
11,37 第2の中間カップ体
12,39 円筒形電池缶(円筒形金属缶)
38 第3の中間カップ体
Claims (6)
- 帯状金属平板からなる金属缶素材を打ち抜き加工して正六角形の板材を形成する板材打ち抜き工程と、
前記板材を成形して横断面形状が正六角形の第1の中間カップ体に加工する第1のカップ体成形工程と、
前記第1の中間カップ体を、絞り加工としごき加工とを連続的に一挙に行うDI加工することにより、横断面形状が円形の円筒形金属缶を成形する金属缶成形工程とを有し、前記第1の中間カップ体は、その底面部分を、後工程の金属缶成形工程を経て得られる円筒形電池缶の所望の径と同一またはほぼ同一の直径の内接円を有する平面底板部と、この平面底板部から外方に向け弧状に膨らみながら角筒部に延びる湾曲部とを有するすり鉢形状に形成するようにしていることを特徴とする円筒形金属缶の製造方法。 - 第1のカップ体成形工程と金属缶成形工程との間に、第1の中間カップ体を成形して横断面形状が円形の第2の中間カップ体に加工する第2のカップ体成形工程を介設し、
金属缶成形工程では前記第2の中間カップ体をDI加工するようにした請求項1に記載の円筒形金属缶の製造方法。 - 第1の中間カップ体の平面底板部は、目的とする円筒形金属缶の内径に対し100〜130%の直径の内接円を有する横断面形状に形成するようにした請求項1または2に記載の円筒形金属缶の製造方法。
- 帯状金属平板からなる金属缶素材を打ち抜き加工して正方形の板材を形成する板材打ち抜き工程と、
前記板材を成形して横断面形状が正方形の第1の中間カップ体を加工する第1のカップ体成形工程と、
前記第1の中間カップ体を成形して横断面形状が正多角形の第2の中間カップ体に加工する第2のカップ体成形工程と、
前記第2の中間カップ体を、絞り加工としごき加工とを連続的に一挙に行うDI加工することにより、横断面形状が円形の円筒形金属缶を成形する金属缶成形工程とを有し、前記第2の中間カップ体は、それらの底面部分を、後工程の金属缶成形工程を経て得られる円筒形電池缶の所望の径と同一またはほぼ同一の直径の内接円を有する平面底板部と、この平面底板部から外方に向け弧状に膨らみながら角筒部に延びる湾曲部とを有するすり鉢形状に形成するようにしていることを特徴とする円筒形金属缶の製造方法。 - 第2のカップ体成形工程と金属缶成形工程との間に、第2の中間カップ体を成形して横断面形状が円形の第3の中間カップ体に加工する第3のカップ体成形工程を介設し、
金属缶成形工程では前記第3の中間カップ体をDI加工するようにした請求項4に記載の円筒形金属缶の製造方法。 - 第2の中間カップ体の平面底板部は、目的とする円筒形金属缶の内径に対し100〜130%の直径の内接円を有する横断面形状に形成するようにした請求項4または5に記載の円筒形金属缶の製造方法。
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