JP3689328B2 - 光ヘッド用対物レンズ - Google Patents

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JP3689328B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、保護層の厚さが異なる複数種類の光ディスクに対する記録/再生が可能な光ヘッドに使用される高NA(開口数)の対物レンズに関し、特に屈折レンズのレンズ面に回折レンズ構造を形成した屈折・回折ハイブリッドレンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクは、情報が記録される記録面と、この記録面を覆う透明な保護層とを有し、この保護層を介して光ヘッドからのレーザー光が記録面に集光される。そして、光ディスクは、光ディスク装置のターンテーブルに搭載されて回転駆動され、光ディスクのラジアル方向に移動可能な光ヘッドにより情報が記録/再生される。ここで光ディスクの保護層の厚さが異なると、ターンテーブル面を基準とした記録面の位置が異なることとなり、これは、光ヘッドと記録面との距離が保護層の厚さによって変化することを意味する。
【0003】
したがって、保護層の厚さが異なる複数の光ディスクに対応するためには、光ヘッドは保護層の厚さが大きくなるほどスポットを遠くに形成する必要がある。例えば、CD(コンパクトディスク)やCD−Rの保護層の厚さは1.2mmであるのに対し、DVD(デジタルバーサタイルディスク)の保護層の厚さは半分の0.60mmであるため、これら両方の光ディスクに対する記録/再生を可能とするためには、レーザー光の集光位置を保護層中で0.6mm(空気換算で約0.4mm)移動させる必要がある。
【0004】
対物レンズを光軸方向に移動させれば、近軸的な集光位置を移動させることはできるが、保護層の厚さが変化すると球面収差が変化するため、単に対物レンズを移動させるのみではレーザー光の波面が乱れ、スポットを必要な径に収束させることができず、情報の記録/再生が不可能となる。
【0005】
一方、記録密度の高いDVDの記録再生には、ビームスポットを小さく絞るため、635nm〜660nm程度の短波長のレーザー光が利用されるのに対し、CD−Rの再生には、その分光反射率の特性から780nm程度のレーザー光を利用する必要がある。したがって、これら複数種類の光ディスクの使用を可能にするためには、光ヘッドは少なくとも2つの発光波長が異なるレーザー光源を備える必要がある。
【0006】
そこで、使用されるレーザー光の波長の違いを利用して保護層の厚さの違いによる球面収差の変化を補正するために、対物レンズの表面に回折レンズ構造を形成する技術が知られている。形成される回折レンズ構造は、球面収差の波長依存性を有し、保護層の厚さの変化による球面収差の変化を、レーザー光の波長の切換により生じる回折レンズ構造の球面収差の変化により相殺する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、回折レンズ構造は波長依存性を有するため、温度変化や半導体レーザーの個体差により使用波長が設計波長からずれると、波面収差を劣化させる。このことは、記録密度の低いCD,CD−Rの使用時にはさほど問題とならないが、記録密度の高いDVDの使用時には、波面収差の許容量が小さいため、情報の記録再生に支障を来す可能性がある。
【0008】
この発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、光ディスク切換時の保護層の厚さ変化による球面収差を補正するための回折レンズ構造を一面に備えつつ、温度変化や光源の個体差により波長が設計波長からずれた場合にも、最適なビームスポットを形成することができる対物レンズを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる光ヘッド用対物レンズは、上記の目的を達成させるため、正のパワーを有する屈折レンズと、屈折レンズの少なくとも一方のレンズ面に形成された微細な段差を有する複数の同心の輪帯から成る回折レンズ構造とを有し、回折レンズ構造は、記録密度の低い光ディスクに必要充分な低NAの光束が透過する共用領域と、記録密度の高い光ディスクに対してのみ必要な高NAの光束が透過する高NA専用領域とに区分され、共用領域の回折レンズ構造は、光ディスクの保護層の厚さの相違に基づく球面収差の変化を入射光の波長の変化により補正するような球面収差の波長依存性を有し、高NA専用領域の回折レンズ構造は、共用領域の回折レンズ構造より球面収差の波長依存性が小さく、波長の長波長側へのシフトにより球面収差が補正不足となる方向に変化するような特性を有し、かつ、高NAに対応する波長において、前記屈折レンズの温度変化に伴う屈折率変化による球面収差の変化を、温度変化に伴う入射光の波長変化により補正するような球面収差の波長依存性を有することを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、共用領域を透過した光束は、その波長を切り替えることにより、保護層の厚さの異なる複数の光ディスクに対し、良好に球面収差の補正された波面を形成する。一方、高NA専用領域を透過した高NAに対応する波長の光束は、球面収差が良好に補正されるため、共用領域を透過した光束と共にスポットを形成する。
【0011】
共用領域の回折レンズ構造による光路長の付加量は、光軸からの高さh、n次(偶数次)の光路差関数係数PnC、回折次数m、波長λを用いて、
φC(h)=(P2C2+P4C4+P6C6+…)×m×λ
により定義される光路差関数φC(h)により表され、高NA専用領域の回折レンズ構造による光路長の付加量は、n次(偶数次)の光路差関数係数PnEを用いて、
φE(h)=(P2E2+P4E4+P6E6+…)×m×λ
により定義される光路差関数φE(h)により表される。この表現形式では2次の項の係数P2C、P2Eが負の時に近軸的に正のパワーを持ち、4次の項の係数P4C、P4Eが負の時に周辺に向かって正のパワーが増加し、アンダーの球面収差を発生する作用を持つこととなる。
【0012】
この発明の光ヘッド用対物レンズは、2次及び4次の光路差関数係数が、以下の関係を持つことが望ましい。
2C>P2E
4C<P4E ただし P4C<0
【0013】
また、高NA専用領域の回折レンズ構造の最も内側の輪帯の幅を、共用領域の回折レンズ構造の最も外側の輪帯の幅より大きく設定することができる。すなわち、回折レンズ構造を規定する(P2E2+P4E4+P6E6+…)をhで微分したものの絶対値を格子密度と定義すると、共用領域と高NA専用領域との境界部分において、共用領域の格子密度の方が大きいこととなる。
さらに、屈折レンズが樹脂製である場合には、4次の光路差関数係数が、P4C<P4E<0の関係を満たすことが望ましい。より詳細には、高NA専用領域の回折レンズ構造は、屈折レンズの温度変化に伴う屈折率変化による球面収差の変化を、半導体レーザーの温度変化に伴う波長変化により補正するような球面収差の波長依存性を有することが望ましい。
【0014】
なお、回折レンズ構造は、共用領域及び高NA専用領域内においては、外側の輪帯の内周が、隣接する内側の輪帯の外周に対してレンズが厚くなる方向の段差を有する。そして、共用領域の光路差関数との連続性を保ちつつ、4次の係数の絶対値を小さくし、かつ、2次の係数の絶対値を大きくして高NA専用領域の光路差関数を決定すると、高NA専用領域の最も内側の輪帯の内周が、共用領域の最も外側の輪帯の外周に対してレンズが薄くなる方向の段差を有することとなる。
【0015】
ただし、上記のように領域の境界部のみ段差の方向が逆になると、回折レンズ構造の形成が困難である。そこで、高NA専用領域の最も内側の輪帯を当該輪帯の内周と外周との光路差関数の値が波長より長くなる幅広の輪帯とすることができ、この場合には、回折レンズ構造の段差は全域において同一方向となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる光ヘッド用対物レンズの実施形態を説明する。図1は、実施形態にかかる対物レンズ10を示す説明図であり、(A)は正面図、(B)は縦断面図、(C)は縦断面の一部拡大図である。この対物レンズ10は、DVD、CD、CD−R互換装置の光情報記録再生装置の光ヘッドに適用され、光源である半導体レーザーから発したレーザー光をディスク等の媒体上に収束させる機能を有している。
【0017】
対物レンズ10は、非球面である2つのレンズ面11,12を有する両凸の樹脂製単レンズであり、第1面11に図1(A)に示したように光軸を中心とする同心輪帯状の回折レンズ構造が形成されている。回折レンズ構造は、図1(C)に示す通り、フレネルレンズのように各輪帯の境界に光軸方向の段差を持つ。第2面12は、回折レンズ構造を持たない連続面である。
【0018】
対物レンズ10の表面は、記録密度の低いCD,CD−R等の光ディスクに必要充分な低NAの光束が透過する共用領域RCと、この共用領域RCの周囲に位置し、DVD等の記録密度の高い光ディスクに対してのみ必要な高NAの光束が透過する高NA専用領域REとに区分することができる。回折レンズ構造は、共用領域RCと高NA専用領域REとを含む全域に形成されている。なお、共用領域RCは、NA0.45〜0.50の光束が透過する位置より内側の領域であり、高NA専用領域REは、それより外側の領域である。
【0019】
図2はこの発明にかかる光ヘッド用対物レンズを使用した光ヘッドの光学系の説明図である。この光学系は、DVD用モジュール21、CD用モジュール22、ビームコンバイナ23、コリメートレンズ24、対物レンズ10で構成されている。各モジュール21,22は、半導体レーザーとセンサーとを一体化した素子である。対物レンズ10は、図示しない公知のフォーカシング機構によりその光軸方向に移動可能であり、かつ、トラッキング機構により光ディスクの半径方向にも移動可能である。
【0020】
0.6mmの保護層を有する光ディスク(以下、「薄保護層型光ディスク」という)であるDVDを使用するためには、小さいビームスポットを作るために波長635〜665nmの赤色光が必要とされ、1.2mmの保護層を有する光ディスク(以下、「厚保護層型光ディスク」という)のうち、少なくともCD−Rを使用するためには、その分光反射率の関係で近赤外光が必要となる。そこで、DVD用モジュール21は、発振波長656nmまたは659nmの半導体レーザーを備え、CD用モジュール22は、発振波長790nmの半導体レーザーを備える。
【0021】
薄保護層型光ディスクD1(図中実線で示す)の使用時には、DVDモジュール21を作動させる。対物レンズ10は図2中に実線で示した位置に配置され、DVDモジュール21の半導体レーザーから発した波長656nmまたは659nmのレーザー光L1は、図中実線で示したように薄保護層型光ディスクD1の情報記録面に集光する。他方、厚保護層型光ディスクD2(図中破線で示す)の使用時には、CDモジュール22を作動させる。対物レンズ10は図中破線で示したように、相対的に光ディスクに近づいた位置に配置され、CDモジュール21の半導体レーザーから発した波長790nmのレーザー光L2は、図中破線で示したように厚保護層型光ディスクD2の情報記録面に集光する。各光ディスクからの反射光は、各モジュールに設けられた受光素子により受光され、フォーカシングエラー信号、トラッキングエラー信号、そして再生時には記録された情報の再生信号が検出される。
【0022】
次に、対物レンズ10の第1面11に形成された回折レンズ構造の構成について説明する。
対物レンズ10の共用領域RCに形成された回折レンズ構造は、所定の次数の回折光、実施形態では1次回折光が、短波長(656nmまたは659nm)においては薄保護層型光ディスクD1に対して良好な波面を形成し、長波長(790nm)においては厚保護層光ディスクD2に対して良好な波面を形成するよう波長依存性を有するよう設計されている。具体的には、共用領域RCの回折レンズ構造は、光ディスクの保護層の厚さの相違に基づく球面収差の変化を入射光の波長の変化により補正するような球面収差の波長依存性、すなわち、波長が長波長側に変化した際に補正不足となるような球面収差の波長依存性を有している。
【0023】
光ディスク光学系の球面収差は、ディスク厚が厚くなるとより補正過剰となる方向に変化する。一方、薄保護層型ディスクD1については短波長、厚保護層型光ディスクD2については長波長のレーザー光が用いられる。そこで、上記のように共用領域RCの回折レンズ構造に波長が長波長側に変化した場合に球面収差が補正不足となる方向に変化する特性を持たせることにより、ディスク厚が厚くなることにより補正過剰となる球面収差を、波長が長くなることにより補正不足となる回折レンズ構造の球面収差の波長依存性を利用して打ち消すことができる。
【0024】
高NA専用領域REの回折レンズ構造は、共用領域RCの回折レンズ構造より球面収差の波長依存性が小さく、高NAに対応する波長(656nmまたは659nm)において薄保護層型ディスクD1に対して球面収差が十分補正されるよう設定されている。
【0025】
このような構成によれば、薄保護層型ディスクD1の記録再生時には、共用領域RC、高NA専用領域REを透過した波長656nmまたは659nmのレーザー光が、いずれも良好に球面収差が補正された状態で薄保護層型ディスクD1の記録面に集光し、高NA、短波長で薄保護層型ディスクD1の記録密度に適合した径の小さいスポットが形成される。これに対して厚保護層型光ディスクD2の記録再生時には、共用領域RCを透過した波長790nmのレーザー光は、良好に球面収差が補正された状態で厚保護層型光ディスクD2の記録面に集光するが、高NA専用領域REを透過した波長790nmのレーザー光は、球面収差が充分に補正されないため、共用領域RCを介して形成されるスポットから離れた位置にドーナツ状に広がる。この結果、低NA、長波長で厚保護層型光ディスクD2の記録密度に適合した径の大きなスポットが形成される。
【0026】
このように、対物レンズの有効径内を共用領域と高NA専用領域とに区分する場合、回折レンズ構造の設計手法には次の3通りの考え方がある。
(1) 共用領域RCと高NA専用領域REとの回折レンズ構造を共通の光路差関数で定義し、各領域のブレーズ化波長を異ならせる。
(2) 高NA専用領域REを段差のない連続面とし、DVDに対して良好な波面を形成するよう非球面形状を設定する。
(3) 高NA専用領域REにおける球面収差の波長依存性を、共用領域RCより小さく設定する(本発明)。
【0027】
(1)の方法では、共用領域のブレーズ化波長λBを2つの光源の波長の間の波長に設定し、高NA専用領域のブレーズ化波長を短い側の波長に設定する。例えば、DVD用の光源の発光波長を660nm、CD,CD−R用の光源の発光波長を780nmとすると、共用領域のブレーズ化波長を720nm、高NA専用領域のブレーズ化波長を660nmとする。この方法では、厚保護層型光ディスクD2の使用時に、高NA専用領域を透過した光束が共用領域を透過した光束と共に集光する。したがって、収差が良好に補正されていれば、スポットが小さくなりすぎて信号の再生に支障をきたし、収差が残存している場合にはスポットが広がって隣接するトラックの信号が混入(ジッターが発生)する可能性がある。このため、(1)の方法を用いる場合には、前述したように、厚保護層型光ディスクD2の使用時に高NAの部分を遮る絞り機構が必要となる。
【0028】
さらに、(1)の方法で設計された対物レンズは、レンズ面の全域において波長に対する球面収差変化の感度が高いため、波長が僅かに変化するだけで波面収差が急激に劣化する。このことは、記録密度の低い厚保護層型ディスクD2の使用時にはさほど問題とならないが、記録密度の高い薄保護層型ディスクD1の使用時には、波面収差の許容量が小さいため、半導体レーザーの発光波長に対する許容幅を狭めるという問題を生じる。
【0029】
次に、(2)の方法では、高NA専用領域REが軸上色収差を発生させ、かつ、球面収差の波長依存性も持たないため、厚保護層型ディスクD2の使用時には高NA専用領域REを透過した光束は軸上色収差と球面収差とを大きく発生させ、共用領域RCを透過した光束により形成されるスポットから十分に離れたところにドーナツ状にぼけて広がる。また、薄保護層型ディスクD1の使用時にも、レーザー光の波長が設計波長に一致していれば、収差が良好に補正された径の小さいスポットを形成することができる。
【0030】
しかし、(2)の方法では、共用領域RCは波長の変化により球面収差を大きく変化させる回折面であるのに対し、高NA専用領域REは非回折面であるため、共用領域を透過した光束と高NA専用領域を透過した光束との波面の連続性がなく、薄保護層型ディスクD1の使用時にレーザー光の波長が設計波長からずれると、波面収差が急激に劣化する。したがって、この場合にも半導体レーザーの発光波長に対する許容幅を狭めるという問題を生じる。
【0031】
そこで、本発明では(3)の方法を採用している。すなわち、全面に回折レンズ構造を形成することにより、波長が変化した際の波面の連続性を保ちつつ、高NA専用領域における球面収差の波長依存性を小さくすることにより、薄保護層型ディスクD1の使用時の波長変動による波面収差の劣化を防ぐことを可能としている。
【0032】
また、高NA専用領域REの回折レンズ構造は、樹脂製の屈折レンズの温度変化に伴う屈折率変化による球面収差の変化を、光源として利用される半導体レーザーの温度変化に伴う波長変化により補正するような球面収差の波長依存性を有する。樹脂レンズはガラスレンズと比較して温度変化による屈折率変化や形状変化が大きいため、それによる性能変化が問題となり易い。例えば、温度が上昇すると、樹脂レンズの屈折率は低下するため、これに伴って球面収差が補正過剰となる方向に変化し、波面収差が劣化する。樹脂レンズの温度変化に対する屈折率の変化率は、ほぼ−10×10-5/℃である。一方、光ヘッドの光源として用いられる半導体レーザーは、温度上昇により発振波長が長波長側にシフトする特性を有する。変化の度合いは、40℃の上昇で+8nm程度である。
【0033】
そこで、高NA専用領域REの回折レンズ構造に波長の長波長側へのシフトにより球面収差が補正不足となる方向に変化するような特性を残すことにより、温度上昇により補正過剰となる屈折レンズの球面収差の変化を、温度上昇による半導体レーザーの長波長側への波長シフトにより補正不足となる回折レンズ構造の球面収差の変化により打ち消すことができる。
【0034】
共用領域RCの回折レンズ構造による光路長の付加量は、光軸からの高さh、n次(偶数次)の光路差関数係数PnC、回折次数m、波長λを用いて、
φC(h)=(P2C2+P4C4+P6C6+…)×m×λ
により定義される光路差関数φC(h)により表し、高NA専用領域REの回折レンズ構造による光路長の付加量は、n次(偶数次)の光路差関数係数PnEを用いて、
φE(h)=(P2E2+P4E4+P6E6+…)×m×λ
により定義される光路差関数φE(h)により表す。この表現形式では2次の項の係数P2C、P2Eが負の時に近軸的に正のパワーを持ち、4次の項の係数P4C、P4Eが負の時に周辺に向かって正のパワーが増加し、アンダーの球面収差を発生する作用を持つこととなる。
【0035】
実際の回折レンズ構造の微細形状は、上記の光路差関数で表わされる光路長から波長の整数倍の成分を消去することにより、フレネルレンズ状の光路長付加量を持つように決定する。すなわち、輪帯幅は、実施形態のように1次回折光を用いる場合には、輪帯の内周と外周とで光路差関数が一波長分の差を持つように決定される。また、輪帯間の段差は、入射光に1波長の光路差を与えるように決定される。
【0036】
実施形態の光ヘッド用対物レンズは、2次及び4次の光路差関数係数が、以下の(a),(b)の関係を持つ。
(a) P2C>P2E
(b) P4C<P4E<0
【0037】
回折レンズは、分散に関して回折レンズは負のアッベ数を持つ屈折レンズと等価であるため、正の回折レンズと正の屈折レンズとを組み合わせることにより軸上色収差を補正することができ、このためには2次の光路差関数係数が負の値をとることとなる。一方、球面収差に波長が長くなるにしたがってアンダーとなる波長依存性を持たせるためには、4次の光路差関数係数は負の値をとる必要がある。
【0038】
共用領域RCにおいては、回折レンズ構造は主として球面収差の波長依存性を実現すればよいため、4次の係数の絶対値は比較的大きくする必要があるが、2次の係数の絶対値は小さく設定される。反対に、高NA専用領域においては、回折レンズ構造は球面収差の波長依存性を小さくし、温度補償分に相当する依存性を持てば足りるため、4次の係数は負である必要はあるが、その絶対値は比較的小さいものとなる。また、高NA専用領域では、球面収差の波長依存性が減少させつつ、波長変動時における共用領域RCとの波面の連続性を保つために2次の係数の絶対値は比較的大きく設定される。したがって、2次、4次の光路差関数係数は、上記の条件(a),(b)の関係を満たすこととなる。
【0039】
次に、回折レンズ構造の具体的な形状について説明する。図3は、対物レンズ10の第1面11における共用領域RCと高NA専用領域REとの境界部分を拡大して示す断面図である。回折レンズ構造は、共用領域及び高NA専用領域内においては、外側の輪帯の内周が、隣接する内側の輪帯の外周に対してレンズが厚くなる方向の段差を有する。
【0040】
そして、共用領域RCの光路差関数との連続性を保ちつつ、4次の係数の絶対値を小さくし、かつ、2次の係数の絶対値を大きくして高NA専用領域REの光路差関数を決定すると、図3(A)に示すように、高NA専用領域REの回折レンズ構造の最も内側の輪帯の幅は、共用領域RCの回折レンズ構造の最も外側の輪帯の幅より大きくなり、かつ、高NA専用領域REの最も内側の輪帯の内周が、共用領域RCの最も外側の輪帯の外周に対してレンズが薄くなる方向(図中右方向)の段差を有することとなる。
【0041】
実施形態のように屈折レンズの非球面上にフレネルレンズ状の回折レンズ構造を形成する場合にはリソグラフィの手法を用いることは困難であるため、精密旋盤を用いてバイトで回折レンズ構造のパターンを含む型を作成し、モールドによりパターンを転写する手法が採られる。しかし、上記のように領域の境界部のみ段差の方向が逆になると、この部分の型は両側の輪帯に対して窪んだ形状となり、例えば精密旋盤で輪帯構造の型を加工する際にエッジを加工できない可能性がある。
【0042】
そこで、図3(B)に示すように、高NA専用領域REの内側の2つの輪帯を埋めて3つ目の輪帯を領域の境界部分まで延長してもよい。このようにすれば、回折レンズ構造の段差は、全域において方向が同一となるため、エッジの加工が容易となる。このように3つ目の輪帯を延長した形状とすると、結果的に高NA専用領域REの最も内側の輪帯は、内周と外周との光路差関数値が波長より長くなる幅広の輪帯となる。この形状では、2次、あるいは3次等の高次回折光を利用するのと等価とるため、使用波長がブレーズ化波長に一致している場合には問題ないが、波長がブレーズ化波長から外れると、回折効率が低下することとなる。ただし、この領域は薄保護層型ディスクD1使用時にのみスポット形成に寄与する領域であり、ブレーズ化波長と使用波長とのズレが小さいこと、及び全体の中に占める面積的な割合は僅かであることから、回折効率の低下は実用上は何ら問題とならない。
【0043】
【実施例】
次に、上述した実施形態に基づく具体的な実施例を2例提示する。いずれも保護層の厚さが0.6mmの薄保護層型ディスクD1と、保護層の厚さが1.2mmの厚保護層型ディスクD2とに兼用される光ヘッド用の対物レンズである。なお、いずれの実施例においても、回折レンズ構造は対物レンズ10の第1面11に形成されており、1次回折光を光ディスクの記録面上に収束させる。
【0044】
【実施例1】
以下の表1は、実施例1にかかる対物レンズ10のデータを示す。実施例1の対物レンズ10の第1面11には、0≦h<1.69となる共用領域と1.69≦hとなる高NA専用領域とに互いに異なる光路差関数で定義される回折レンズ構造が形成され、かつ、共用領域のベースカーブ(回折レンズ構造を除く屈折レンズとしての形状)と高NA専用領域のベースカーブとは別個の係数で定義される独立した非球面である。また、第2面は回折レンズ構造を有さない非球面である。
【0045】
非球面の形状は、光軸からの高さがhとなる非球面上の座標点の非球面の光軸上での接平面からの距離(サグ量)をX(h)、非球面の光軸上での曲率(1/r)をC、円錐係数をK、4次、6次、8次、10次、12次の非球面係数をA4,A6,A8,A10,A12として、以下の式で表される。
X(h)=Ch2/(1+√(1-(1+K)C2h2))+A4h4+A6h6+A8h8+A10h10+A12h12
【0046】
表1では、第1面の共用領域のベースカーブと回折レンズ構造とを定義する各係数、第1面の高NA専用領域のベースカーブと回折レンズ構造とを定義する各係数、面間隔、使用波長での屈折率、そして、第2面の非球面形状を定義する各係数が示されている。表中、NA1、f1、λ1は、それぞれ薄保護層型光ディスクD1使用時の開口数、回折レンズ構造を含めた対物レンズの焦点距離(単位:mm)、波長(単位:nm)であり、NA2、f2、λ2は、それぞれ厚保護層型光ディスクD2使用時の開口数、回折レンズ構造を含めた対物レンズの焦点距離(単位:mm)、波長(単位:nm)である。
【0047】
【表1】
NA1=0.60 f1=3.360 λ1=656nm
NA2=0.50 f2=3.384 λ2=790nm
第1面
共用領域(0<h<1.69)
ベースカーブ
近軸曲率半径 r 2.101
非球面係数
κ -0.500
A4 -1.81100×10-3
A6 -2.44900×10-4
A8 -1.75000×10-5
A10 -3.51400×10-6
A12 -2.56000×10-6
回折レンズ構造
ブレーズ化波長 720nm
輪帯間段差 1.3372μm
光路差関数係数
2C 0.0
4C -1.65300
6C -0.15050
8C 0.0
10C 0.0
12C 0.0
高NA専用領域(1.69<h<2.02)
ベースカーブ
近軸曲率半径 r 2.129
非球面係数
κ -0.500
A4 -6.72000×10-4
A6 -1.46200×10-5
A8 -8.69200×10-5
A10 2.19000×10-5
A12 -5.36100×10-6
回折レンズ構造
ブレーズ化波長 657nm
輪帯間段差 1.2154μm
光路差関数係数
2E -2.56044
4E -0.80000
6E -0.09000
8E 0.0
10E 0.0
12E 0.0
第1面第2面間隔 d 2.210
屈折率 n656 1.54059
n790 1.53653
第2面
近軸曲率半径 r -8.450
非球面係数
κ 0.0
A4 1.60200×10-2
A6 -3.26800×10-3
A8 1.29900×10-4
A10 3.20300×10-5
A12 -3.74500×10-6
【0048】
実施例1の回折レンズ構造の輪帯番号Nと各輪帯の中心側の境界点の光軸からの高さhin、外側の境界点の光軸からの高さhout、輪帯幅Wの関係を以下の表2に示す。光軸を含む円形の領域の輪帯番号を0とし、その外側のリング状の領域に内側から順に1,2,3,…と輪帯番号を付する。最も外側の輪帯の番号は30である。0〜16輪帯が共用領域RC、17〜30輪帯が高NA専用領域REである。
【0049】
【表2】
N hin〜hout W N hin〜hout W
0 0.000〜0.733 0.733 16 1.655〜1.690 0.035
1 0.733〜0.957 0.224 17 1.690〜1.738 0.048
2 0.957〜1.081 0.124 18 1.738〜1.766 0.028
3 1.081〜1.171 0.090 19 1.766〜1.793 0.027
4 1.171〜1.243 0.072 20 1.793〜1.819 0.026
5 1.243〜1.303 0.060 21 1.819〜1.844 0.025
6 1.303〜1.355 0.052 22 1.844〜1.868 0.024
7 1.355〜1.401 0.046 23 1.868〜1.891 0.023
8 1.401〜1.442 0.041 24 1.891〜1.913 0.022
9 1.442〜1.480 0.038 25 1.913〜1.934 0.021
10 1.480〜1.514 0.034 26 1.934〜1.955 0.021
11 1.514〜1.546 0.032 27 1.955〜1.975 0.020
12 1.546〜1.576 0.030 28 1.975〜1.994 0.019
13 1.576〜1.604 0.028 29 1.994〜2.013 0.019
14 1.604〜1.630 0.026 30 2.013〜2.031 0.018
15 1.630〜1.655 0.025
【0050】
図4は、実施例1にかかる回折レンズ構造の光路差関数の値を示すグラフであり、実線が共用領域RC、破線が高NA専用領域REの値を示す。横軸が光路差、縦軸が光軸からの距離を示す。また、図5は、表2に示した輪帯幅Wの変化を示すグラフである。各領域で、輪帯幅は輪帯番号が大きくなるに伴い、したがって、中心からの高さが高くなるに伴って漸減するが、両領域の境界である16,17輪帯において一旦増加する。なお、16輪帯は、NAによって決まる切替点の高さを光路差関数の値の区切りが良い値となるように幅広の輪帯とされており、17輪帯は図3Bのように段差の方向を揃えるために幅広の輪帯とされている。
【0051】
続いて、実施例1の対物レンズ10の性能を、対物レンズと光ディスクの保護層とを含めた光学系の収差図を用いて説明する。図6〜図8は、所定の基準温度(例えば25℃)における薄保護層型光ディスクD1使用時の収差を示し、図6(A)は使用波長656nmでの球面収差SAと正弦条件SCを示すグラフ、図6(B)は651nm、656nm、661nmでの球面収差を示すグラフ、図7は651nm、656nm、661nmでの波面収差を示すグラフ、図8は651nm、656nm、661nmでのデフォーカスと波面収差のrms値との関係を示すグラフである。図7によれば、共用領域を透過した光束と高NA専用領域を透過した光束との波面がほぼ連続していることが理解できる。また、図8によれば、±5nmの波長変動があっても、波面収差の最小値は0.016〜0.017λ程度に抑えられ、ベストフォーカス位置では充分に小さなスポットを形成することが理解できる。
【0052】
図9〜図11は、温度が基準温度から40度上昇した際の薄保護層型光ディスクD1使用時における図6〜図8と同様の収差を示すグラフである。40度の温度変化が生じても、設計使用波長656nmでの波面収差は0.010λ程度、±5nmの波長変動がある場合にも波面収差の最小値は0.020λ以下に抑えられる。
【0053】
図12〜図14は、基準温度における厚保護層型光ディスクD2使用時の収差を示し、図12(A)は使用波長790nmでの球面収差SAと正弦条件SCを示すグラフ、図12(B)は785nm、790nm、795nmでの球面収差を示すグラフ、図13は785nm、790nm、795nm での波面収差を示すグラフ、図14は785nm、790nm、795nmでのデフォーカスと波面収差のrms値との関係を示すグラフである。図6と図12とを比較すると、保護層の厚さの違いにかかわらず、両波長で良好に球面収差が補正されていることがわかる。
【0054】
次に、実施例1との比較のため、本発明とは異なる方法により定義された実施例1と同一仕様の対物レンズを用いた場合の薄保護層型光ディスクD1使用時における光学系の性能を、収差図を用いて説明する。
図15は、前述の(1)の方法(共用領域RCと高NA専用領域REとの回折レンズ構造を共通の光路差関数で定義)による比較例1の対物レンズを用いた場合の651nm、656nm、661nmでのデフォーカスと波面収差のrms値との関係を示すグラフである。±5nmの波長差により波面収差の最小値が0.02λを越えるため、半導体レーザーの個体差による波長差により、スポットを充分に小さくできない可能性がある。
【0055】
図16〜図19は、前述の(2)の方法(高NA専用領域REを段差のない連続面とする)による比較例2の対物レンズを用いた場合の収差を示す。図16及び図17は、基準温度における収差を示し、図16は651nm、656nm、661nmでの波面収差を示すグラフ、図17は651nm、656nm、661nmでのデフォーカスと波面収差のrms値との関係を示すグラフである。図16によれば、共用領域を透過した光束と高NA専用領域を透過した光束との波面が不連続であることが理解できる。また、図17によれば、±5nmの波長変動によりベストフォーカス位置が光軸方向に大きく移動し、かつ、特に長波長側へのシフトにより、波面収差の最小値が0.020λを越えることがわかる。
【0056】
また、図18及び図19は、温度が基準温度に対して40度上昇した際の図16及び図17と同様の収差を示すグラフである。高NA専用領域が球面収差補正効果を持たないため、40度の温度変化による屈折率の変化により球面収差が大きくオーバーとなり、波面収差が極端に劣化する。rms値の最小値は、設計使用波長656nmにおいても0.05λを越え、スポットをDVDの再生に必要な径にまで絞ることができなくなる。
【0057】
【実施例2】
以下の表3は、実施例2にかかる対物レンズ10のデータを示す。実施例2の対物レンズ10の第1面11には、0≦h<1.62となる共用領域と1.62≦hとなる高NA専用領域とに互いに異なる光路差関数で定義される回折レンズ構造が形成され、かつ、共用領域のベースカーブ(回折レンズ構造を除く屈折レンズとしての形状)と高NA専用領域のベースカーブとは別個の係数で定義される独立した非球面である。また、第2面は回折レンズ構造を有さない非球面である。
【0058】
【表3】
NA1=0.60 f1=3.214 λ1=659nm
NA2=0.50 f2=3.236 λ2=790nm
第1面
共用領域(0<h<1.62)
ベースカーブ
近軸曲率半径 r 2.004
非球面係数
κ -0.480
A4 -2.09747×10-3
A6 -3.84200×10-4
A8 -1.85400×10-4
A10 3.52100×10-5
A12 -9.00000×10-6
回折レンズ構造
ブレーズ化波長 720nm
輪帯間段差 1.3400μm
光路差関数係数
2C -0.09161
4C -1.96470
6C -0.21942
8C 0.0
10C 0.0
12C 0.0
高NA専用領域(1.62<h<1.93)
ベースカーブ
近軸曲率半径 r 2.033
非球面係数
κ -0.48000
A4 -9.02700×10-4
A6 -6.75000×10-5
A8 -5.56000×10-5
A10 -2.73200×10-5
A12 -9.40000×10-8
回折レンズ構造
ブレーズ化波長 660nm
輪帯間段差 1.2237μm
光路差関数係数
2E -3.00000
4E -1.17700
6E 0.10970
8E -0.03958
10E 0.0
12E 0.0
第1面第2面間隔 d 2.080
屈折率 n659 1.54048
n790 1.53653
第2面
近軸曲率半径 r -8.307
非球面係数
κ 0.0
A4 2.00430×10-2
A6 -7.51300×10-3
A8 1.63800×10-3
A10 -1.98100×10-4
A12 1.02900×10-5
【0059】
実施例2の回折レンズ構造の輪帯番号Nと各輪帯の中心側の境界点の光軸からの高さhin、外側の境界点の光軸からの高さhout、輪帯幅Wの関係を以下の表4に示す。0〜17輪帯が共用領域RC、18〜29輪帯が高NA専用領域REである。
【0060】
【表4】
N hin〜hout W N hin〜hout W
0 0.000〜0.686 0.686 15 1.547〜1.571 0.024
1 0.686〜0.903 0.217 16 1.571〜1.594 0.023
2 0.903〜1.023 0.120 17 1.594〜1.615 0.021
3 1.023〜1.110 0.087 18 1.615〜1.697 0.082
4 1.110〜1.178 0.068 19 1.697〜1.723 0.026
5 1.178〜1.236 0.058 20 1.723〜1.749 0.026
6 1.236〜1.285 0.049 21 1.749〜1.773 0.024
7 1.285〜1.329 0.044 22 1.773〜1.795 0.022
8 1.329〜1.368 0.039 23 1.795〜1.817 0.022
9 1.368〜1.404 0.036 24 1.817〜1.838 0.021
10 1.404〜1.437 0.033 25 1.838〜1.858 0.020
11 1.437〜1.467 0.030 26 1.858〜1.877 0.019
12 1.467〜1.496 0.029 27 1.877〜1.896 0.019
13 1.496〜1.522 0.026 28 1.896〜1.914 0.018
14 1.522〜1.547 0.025 29 1.914〜1.931 0.017
【0061】
図20は、光路差関数の値を示すグラフであり、実線が共用領域RC、破線が高NA専用領域REの値を示す。横軸が光路差、縦軸が光軸からの距離を示す。また、図21は、表4に示した輪帯幅Wの変化を示すグラフである。各領域で、輪帯幅は輪帯番号が大きくなるに伴い、したがって、中心からの高さが高くなるに伴って漸減するが、両領域の境界である18輪帯において一旦増加する。
【0062】
続いて、実施例2の対物レンズ10の性能を、対物レンズと光ディスクの保護層とを含めた光学系の収差図を用いて説明する。図22及び図23は、基準温度における薄保護層型光ディスクD1使用時の収差を示し、図22(A)は使用波長659nmでの球面収差SAと正弦条件SCを示すグラフ、図22(B)は654nm、659nm、664nmでの球面収差を示すグラフ、図23は654nm、659nm、664nmでの波面収差を示すグラフである。実施例2の対物レンズも、実施例1と同様に球面収差が補正され、かつ、薄保護層型光ディスクD1使用時の波長変動による収差の劣化が小さく、温度変化による収差変動も小さく抑えられている。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、保護層の厚さの違いに起因する球面収差の変化を、回折レンズ構造の球面収差の変化により打ち消すことができ、かつ、保護層が厚く記録密度の低いCD,CD−Rを利用する際には、高NA専用領域を透過した光束が広がるため、絞り機構等を設けなくともスポット径が必要以上に小さくなるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態にかかる対物レンズの外形を示す説明図であり、(A)は正面図、(B)は縦断面図、(C)は縦断面の一部拡大図である。
【図2】 実施形態にかかる対物レンズを使用した光ピックアップ装置の光学系の説明図である。
【図3】 実施形態にかかる対物レンズの回折レンズ構造の共用領域と高NA専用領域との境界部分を示す断面図である。
【図4】 実施例1にかかる回折レンズ構造の光路差関数の値を示すグラフである。
【図5】 実施例1にかかる回折レンズ構造の輪帯幅の変化を示すグラフである。
【図6】 実施例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度における薄保護層型光ディスク使用時の球面収差を示すグラフである。
【図7】 実施例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差を示すグラフである。
【図8】 実施例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差(rms値)とデフォーカスとの関係を示すグラフである。
【図9】 実施例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度から40度上昇した場合における薄保護層型光ディスク使用時の球面収差を示すグラフである。
【図10】 実施例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度から40度上昇した場合における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差を示すグラフである。
【図11】 実施例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度から40度上昇した場合における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差(rms値)とデフォーカスとの関係を示すグラフである。
【図12】 実施例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度における厚保護層型光ディスク使用時の球面収差を示すグラフである。
【図13】 実施例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度における厚保護層型光ディスク使用時の波面収差を示すグラフである。
【図14】 実施例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度における厚保護層型光ディスク使用時の波面収差(rms値)とデフォーカスとの関係を示すグラフである。
【図15】 比較例1の対物レンズを利用した光学系の基準温度における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差(rms値)とデフォーカスとの関係を示すグラフである。
【図16】 比較例2の対物レンズを利用した光学系の基準温度における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差を示すグラフである。
【図17】 比較例2の対物レンズを利用した光学系の基準温度における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差(rms値)とデフォーカスとの関係を示すグラフである。
【図18】 比較例2の対物レンズを利用した光学系の基準温度から40度上昇した場合における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差を示すグラフである。
【図19】 比較例2の対物レンズを利用した光学系の基準温度から40度上昇した場合における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差(rms値)とデフォーカスとの関係を示すグラフである。
【図20】 実施例2にかかる回折レンズ構造の光路差関数の値を示すグラフである。
【図21】 実施例2にかかる回折レンズ構造の輪帯幅の変化を示すグラフである。
【図22】 実施例2の対物レンズを利用した光学系の基準温度における薄保護層型光ディスク使用時の球面収差を示すグラフである。
【図23】 実施例2の対物レンズを利用した光学系の基準温度における薄保護層型光ディスク使用時の波面収差を示すグラフである。
【符号の説明】
10 対物レンズ
11 第1面
12 第2面
RC 共用領域
RE 高NA専用領域
1 薄保護層型光ディスク
2 厚保護層型光ディスク
21 DVD用モジュール
22 CD用モジュール
23 ビームコンバイナ
24 コリメートレンズ

Claims (7)

  1. 正のパワーを有する屈折レンズと、該屈折レンズの少なくとも一方のレンズ面に形成された微細な段差を有する複数の同心の輪帯から成る回折レンズ構造とを有し、前記回折レンズ構造は、記録密度の低い光ディスクに必要充分な低NAの光束が透過する共用領域と、記録密度の高い光ディスクに対してのみ必要な高NAの光束が透過する高NA専用領域とに区分され、前記共用領域の回折レンズ構造は、光ディスクの保護層の厚さの相違に基づく球面収差の変化を入射光の波長の変化により補正するような球面収差の波長依存性を有し、前記高NA専用領域の回折レンズ構造は、前記共用領域の回折レンズ構造より球面収差の波長依存性が小さく、波長の長波長側へのシフトにより球面収差が補正不足となる方向に変化するような特性を有し、かつ、高NAに対応する波長において、前記屈折レンズの温度変化に伴う屈折率変化による球面収差の変化を、温度変化に伴う入射光の波長変化により補正するような球面収差の波長依存性を有することを特徴とする光ヘッド用対物レンズ。
  2. 前記共用領域の回折レンズ構造による光路長の付加量を、光軸からの高さh、n次(偶数次)の光路差関数係数PnC、回折次数m、波長λを用いて、
    φC(h)=(P2C2+P4C4+P6C6+…)×m×λ
    により定義される光路差関数φC(h)により表し、前記高NA専用領域の回折レンズ構造による光路長の付加量を、n次(偶数次)の光路差関数係数PnEを用いて、
    φE(h)=(P2E2+P4E4+P6E6+…)×m×λ
    により定義される光路差関数φE(h)により表したとき、
    2C>P2E
    4C<P4E ただし P4C<0
    の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光ヘッド用対物レンズ。
  3. 前記高NA専用領域の回折レンズ構造の最も内側の輪帯の幅が、前記共用領域の回折レンズ構造の最も外側の輪帯の幅より大きいことを特徴とする請求項2に記載の光ヘッド用対物レンズ。
  4. 前記屈折レンズは樹脂製であり、前記4次の光路差関数係数が、P4C<P4E<0の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ヘッド用対物レンズ。
  5. 前記高NA専用領域の回折レンズ構造は、前記屈折レンズの温度変化に伴う屈折率変化による球面収差の変化を、半導体レーザーの温度変化に伴う波長変化により補正するような球面収差の波長依存性を有することを特徴とする請求項4に記載の光ヘッド用対物レンズ。
  6. 前記回折レンズ構造は、前記共用領域及び前記高NA専用領域内においては、外側の輪帯の内周が、隣接する内側の輪帯の外周に対してレンズが厚くなる方向の段差を有し、前記共用領域と前記高NA専用領域との境界部分においては、前記高NA専用領域の最も内側の輪帯の内周が、前記共用領域の最も外側の輪帯の外周に対してレンズが薄くなる方向の段差を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光ヘッド用対物レンズ。
  7. 前記回折レンズ構造は、全域において、外側の輪帯の内周が、隣接する内側の輪帯の外周に対してレンズが厚くなる方向の段差を有し、前記高NA専用領域の最も内側の輪帯は、当該輪帯の内周と外周との光路差関数値の差が波長より長くなる幅広の輪帯であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光ヘッド用対物レンズ。
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