JP3688553B2 - 透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨方法およびこれを利用する装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透過電子顕微鏡用の試料を作製するための電解研磨方法およびこれを利用する装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、研磨が終了した試料表面への金属付着物の生成を防止する電解研磨方法およびこれを利用する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば原子炉圧力容器鋼の照射脆化研究においては、透過電子顕微鏡による材料ミクロ組織、特に材料中に含有されている銅の状態変化を調べることが必要である。このような材料を利用して電子顕微鏡用の試料を作製するために、いわゆるツインジェット電解研磨法が広く用いられている。この研磨法を実施するために、図5に示すような電解研磨装置(例えばテヌポール電解研磨装置、ストラース社製)100が利用される。
【0003】
この装置100では、金属製の直径3mm程度の円板形状の試料101を鉛直に支持して、該試料101の両側面に電極102を向かい合わせて配置する。そして、試料101と電極102との間に電解液から成る研磨液103を流すと同時に試料101および電極102に電圧を印加して試料101の両面を電解研磨する。そして、試料101の両側面がすり鉢形に減肉して中央が貫通して微小の孔が開いた時点で研磨液103の供給と電圧印加を停止して、試料101を取り外す。取り外された試料101は洗浄液等で洗浄されて、付着していた研磨液を洗い落とす。この試料101の孔の周縁は、厚さ例えば200nm以下に成るので、透過電子顕微鏡を利用して観察することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した電解研磨方法では、研磨の終了後に試料101を装置100より取り外してから洗浄しているので、研磨終了後しばらくは試料101や試料ホルダ104に研磨液103が付着したままであり、試料2から研磨液103中に溶出した銅等の金属イオンが試料101の表面に対して無電解めっきにより再析出して付着してしまうことがある。例えば試料101が銅を含む鉄基合金製であったりすると、銅より鉄の方がイオン化傾向が高いので試料101の表面の一部に銅めっきが形成されてしまう。
【0005】
このような金属付着物が試料表面に生成してしまうと、試料内部の適正な電子顕微鏡観察や分析の大きな障害に成ってしまう。例えば、試料101に内在している析出物や欠陥を観察するときに、表面の銅めっきの悪影響を受けてしまうことがある。
【0006】
このような金属付着物を取り除く方法の一つとして、試料101に対して再び電解研磨を行うことがある。この場合、試料101の材質ごとに電圧や時間などの条件を異ならせて処理しなければならず、条件の探索に多くの時間や手間を要してしまう。また、他の方法として、イオンスパッタ法等によって試料101のめっき部分を引き剥がすことがある。この場合、めっきの形成されていない正常な部分も削って傷めてしまうことがあり、また試料101として元から存在する欠陥とめっきを引き剥がすときに生じた欠陥との区別は困難であることから、電子顕微鏡の観察や分析に悪影響を与えてしまう。
【0007】
このように、従来の電解研磨方法では一旦試料101の研磨を終了してから表面の付着物を取り除くために事後処理を必要としており、良好な試料101を得るためには偶発性に頼らなければならず、電子顕微鏡による観察および分析に最適な試料の作製効率は著しく低くなっていた。
【0008】
そこで、本発明は、試料表面への付着物の生成を防止できる透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨方法およびこれを利用する装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、透過電子顕微鏡用の試料と該試料に向き合う電極との間に研磨液を供給すると同時に試料および電極に電圧を印加して試料を研磨する透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨方法において、試料が所定の厚さに研磨されて電圧の印加と研磨液の供給とを停止した直後に、試料および電極にバイアス電圧を印加すると共に試料に洗浄液を供給して洗浄するようにしている。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、透過電子顕微鏡用の試料と、該試料に向き合う電極と、試料および電極の間に研磨液を供給する研磨液供給手段と、試料および電極の間に電圧を印加することにより試料を研磨する印加手段と、試料が研磨されて所定の厚さに成ったことを検出して研磨液供給手段および印加手段を停止する検出手段とを備える透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置において、試料が所定の厚さに成ったことを検出手段が検出した直後に試料および電極の間にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、検出の直後に試料に洗浄液を供給して洗浄する洗浄液供給手段とを備えるようにしている。この電解研磨装置では、印加手段と研磨液供給手段との作動により試料が研磨される。そして、該試料が所定の厚さまで研磨されると、印加手段および研磨液供給手段が停止される。その直後に、バイアス電圧印加手段および洗浄液供給手段が作動して、試料および電極にバイアス電圧を印加すると同時に試料に洗浄液を流し掛けて洗浄する。
【0011】
したがって、電解研磨の終了直後にバイアス電圧が印加されるので、試料の表面や試料ホルダに残留した研磨液が試料に対して無電解めっきを行うのを防止することができる。また、バイアス電圧の印加と共に試料に洗浄液を供給しているので、残留した研磨液を強制的に排出あるいは洗い流すことができる。このため、残留した研磨液による試料への無電解めっきを防止することができる。
【0012】
また、請求項2および4記載の発明では、バイアス電圧は、試料と電極との間の標準電極電位差と同じであるようにしている。この場合、無電解めっきによる試料表面への金属付着物の生成を防止しながらも、バイアス電圧による電解研磨の進行を最小限に抑えることができる。
【0013】
さらに、請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置において、試料を保持すると共に、試料の少なくとも両側面に洗浄液を供給するノズルを有する試料ホルダを備えるようにしている。したがって、各ノズルから試料の両側面に洗浄液を供給することにより、試料の電子顕微鏡観察を行う薄膜部分に付着した研磨液を残さず洗い流すことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。図1に本発明の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置1の実施形態を示す。この電解研磨装置1は、透過電子顕微鏡用の試料2と、該試料2に向き合う電極3と、試料2および電極3の間に研磨液4を流す研磨液供給手段5とを備えている。そして、電解研磨装置1は、試料2および電極3の間に電圧を印加することにより試料2を研磨する印加手段6と、試料2が研磨されて所定の厚さに成ったことを検出して研磨液供給手段5および印加手段6を停止する検出手段7とを備えている。
【0015】
さらに、電解研磨装置1は、試料2が所定の厚さに成ったことを検出手段7が検出した直後に試料2および電極3の間にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段8と、検出の直後に試料2に洗浄液9を流し掛けて洗浄する洗浄液供給手段10とを備えるようにしている。この電解研磨装置1では、印加手段6と研磨液供給手段5との作動により試料2が所定の厚さまで研磨されると、これら印加手段6および研磨液供給手段5が停止される。その直後に、バイアス電圧印加手段8および洗浄液供給手段10が作動して、試料2および電極3にバイアス電圧を印加すると同時に試料2に洗浄液9を流し掛けて洗浄する。このため、電解研磨の終了直後にバイアス電圧が印加されるので、試料2の表面や試料ホルダ11に残留した研磨液4が試料2に対して無電解めっきを行うのを防止することができる。また、バイアス電圧の印加と同時に試料2に洗浄液9を流し掛けているので、残留した研磨液4を洗い流して研磨液4による試料2への無電解めっきを防止することができる。
【0016】
試料2は直径3mm程度の銅を含んだ鉄基合金から成る円板を使用している。電極3は白金製で、試料2の両側面に向き合って配置されている。このため、試料2を両面から研磨することができる。また、研磨液4としては、過塩素酸とメタノールの混合液を使用している。
【0017】
試料2および電極3にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段8は、電源切替装置12により印加手段6と切替可能に接続されている。このバイアス電圧印加手段8は、例えば定電圧電源装置から成り、検出手段7から研磨終了の信号を受けると作動する。そして、バイアス電圧印加手段8は、電源切替装置12により選択されたときに印加手段6と同極性で試料2と電極3とにバイアス電圧を印加する。本実施形態では、試料2を正極、電極3を負極にしている。
【0018】
電圧切替装置12は、試料2の研磨中は印加手段6を選択している。しかし、印加手段6が停止して電圧が0になったことを検知すると、バイアス電圧印加手段8を選択して試料2にバイアス電圧を印加する。また、これと同時に、洗浄液供給手段10に駆動信号を送信して洗浄液9の供給を開始する。
【0019】
ここで、各印加手段6,8の印加電圧は、試料2および電極3の材質、並びに研磨液4の種類によって最適値が異なるが、本実施形態では印加手段6は約20〜30V、バイアス電圧印加手段8は約1.0〜2.0Vを印加するようにしている。印加手段6は試料2を研磨して孔を空けるための電圧を印加するので、バイアス電圧に比べて大きく設定する。
【0020】
また、バイアス電圧は、試料2と電極3との間の標準電極電位差と同じであることが好ましい。この標準電極電位差は試料2と電極3との材質により固有に定まる値であり、例えば本実施形態のように鉄と白金との間では約1.6Vになる。ここで、標準電極電位差より大きなバイアス電圧を印加すると、理論的には試料2への無電解めっきを防止できるものの試料2の電解研磨が僅かに進行する可能性がある。一方、標準電極電位差より小さなバイアス電圧を印加すると、理論的には試料2の電解研磨を停止できるものの試料2への無電解めっきが僅かに行われる可能性がある。そこで、本実施形態では上述のようにバイアス電圧を約1.0〜2.0Vに設定しているが、試料2への無電解めっきを確実に防止するためにバイアス電圧を約1.6〜2.0Vに設定することがより好ましい。これにより、バイアス電圧による電解研磨の進行を最小限に抑えることができると共に、無電解めっきによる試料表面への金属付着物の生成を確実に防止することができる。
【0021】
試料2に洗浄液9を供給する洗浄液供給手段10は、洗浄液9を貯める洗浄液槽13と、該洗浄液槽13から洗浄液9を吸い上げて試料2に供給するポンプ14と、洗浄液槽13からポンプ14を介して試料2に洗浄液9を流通させる管15とを備えている。管15はテフロン製としている。
【0022】
洗浄液9としては、メタノールを使用している。但し、洗浄液9としてはこれに限られず、酢酸等を使用しても良い。
【0023】
試料2は試料ホルダ11により支持されている。試料ホルダ11は、図2〜図4に示すように試料2の両側面と上部とに洗浄液9を流すノズル16を有している。各ノズル16は洗浄液供給手段10の管15に連結されている。このため、各ノズル16から洗浄液9を供給することができ、試料2を上部から全体的に洗浄できると共に特に両側面を集中的に洗浄することができるので、試料2から研磨液4を残さず洗い流すことができる。
【0024】
試料ホルダ11はテフロン製で、向き合った2つの側部材17,18を組み合わせて試料2を挟持している。各側部材17,18の試料2を挟持する部分には、外側に開いた円錐形状の孔19が形成されている。2つの側部材17,18は、一方の側部材17の円筒形状部17aの内側に他方の側部材18の円柱形状部18aのフランジ18bが嵌合することにより試料2を挟持したままで組み付けられる。そして、組み付け後にも一方の側部材17の円筒形状部17aの内側は空間を有しており、この空間が試料2の周囲にホルダ室20を形成している。
【0025】
洗浄液9を流すノズル16は、ホルダ室20の上部と各孔19,19の上部とに設けられている。ホルダ室20の上部は切り欠かれていて、そこにノズル16がホルダ室20の内側に向けて設けられている。また、本実施形態では、各ノズル16は洗浄液供給手段10の管15の先端部により形成されている。
【0026】
さらに、ホルダ室20の下部には、ホルダ室20内に貯まった研磨液4や洗浄液9を排出する溝21が形成されている。溝21は図4に示すように、ホルダ室20の最下部とその両側方との3カ所に形成されている。また、試料2の縁面や側面の一部には、金属製の導電部材22が接触されている。この導電部材は試料ホルダ11の外部に連通して、電源切替装置12を介して各印加装置6,8の正極に接続されている。
【0027】
ここで、本実施形態の電解研磨装置1では、電極3と研磨液供給手段5と印加手段6と検出手段7として既存の電解研磨装置1(例えばテヌポール電解研磨装置)を利用している。すなわち、電極3は白金製であり、試料2の両側面に向き合って配置されている。研磨液供給手段5は、研磨液4を貯める研磨液槽23と、該研磨液槽23から研磨液4を吸い上げて試料2および電極3の間に研磨液4を供給するポンプ24と、研磨液槽23からポンプ24を介して試料2に研磨液4を流通させる管25とを備えている。印加手段6は定電圧電源装置から成るようにしている。この印加手段6は、試料2を正極、電極3を負極にして、これらの間に電圧を与えるようにしている。また、印加手段6は検出手段7から研磨終了の信号を受けると停止する。
【0028】
さらに、検出手段7は、試料2の一方の側面に向き合ったランプ26と、試料2の他方の側面に向き合った光センサ27とを有している。そして、試料2に研磨で孔が形成されるとランプ26からの光が光センサ27で検知されて、孔が空いた旨の信号が各印加手段6,8に送信される。ここで、本実施形態では検出手段7による検出結果が各印加手段6,8に送信されるようにしているが、これには限られず例えば印加手段6のみに送信されるようにして該印加手段6からバイアス電圧印加手段8に作動開始信号が送信されるようにしたり、あるいは検出手段7による検出結果が各印加手段6,8の他に電源切替装置12や洗浄液供給手段10に送信されてこれらを作動させるようにしても良い。
【0029】
上述した電解研磨装置1により試料2の電解研磨を行う動作を以下に説明する。
【0030】
試料ホルダ11に試料2を挟持して電解研磨装置1に装着してから、研磨液供給手段5を作動させて試料2と電極3との間に研磨液4を供給する。このときは、試料2および電極3に印加手段6が接続するように電源切替装置12を切り替えておく。この状態で、印加手段6により電圧を印加して、試料2を両面から研磨する。
【0031】
研磨が進行して試料2に微小の孔が形成されると、ランプ26の光が光センサ27で検出される。この検出を受けて印加手段6による電圧印加が停止すると共に研磨液供給手段5が停止される。そして、印加手段6の出力電圧が0になると電源切替装置12が電源の切替を行って、バイアス電圧印加手段8を試料2および電極3に接続すると共に洗浄液供給手段10を作動させる。
【0032】
ここで、洗浄液供給手段10のポンプ14に電力が与えられても、洗浄液9を汲み上げて試料2に供給するまでにはタイムラグがある。このため、電源切替装置12により切り替えられた直後は、試料2に洗浄液9は供給されず研磨液4が表面に残留している。これに対し、バイアス電圧印加手段8によるバイアス電圧の印加は、電源切替装置12により切り替えられた直後から作用する。
【0033】
よって、電源切替装置12により切り替えられた直後は、バイアス電圧の印加のみにより無電解めっきの生成が防止される。そして、これより僅かに遅れて試料2に洗浄液9が供給されて、残留研磨液中の金属イオン濃度を低下させて試料2への付着物生成を防止する。また、バイアス電圧は定電圧で印加されているが、洗浄液9の供給により試料2と電極3との間のイオン濃度が薄まるので、通電する電流値は徐々に小さくなっていく。
【0034】
本実施形態によれば、電解研磨の終了直後は研磨液4を残しながらもバイアス電圧の印加により遅滞なく無電解めっきの生成を防止して、僅かなタイムラグで試料2に洗浄液9を供給して試料ホルダ11のホルダ室20から研磨液4を強制的に排出すると共に試料2の両側面を洗浄するようにしている。このため、無電解めっきの生成をバイアス電圧の印加と洗浄液9の供給との2段階で行うようにしているので、一旦研磨した試料2を傷めることなく試料表面への付着物の生成を確実に防止することができるように成る。このように、試料表面への付着物の生成を防止することにより、電子顕微鏡観察および分析に最適な試料の作製効率を従来より著しく高めることができる。
【0035】
また、本実施形態の電解研磨装置1によれば、既存の電解研磨装置にバイアス電圧印加手段8と電源切替装置12と洗浄液供給手段10とを追加して取り付けているので、既存の電解研磨装置を殆ど改造することなく利用することができる。よって、既存の設備を利用しながらも電子顕微鏡観察に最適な試料2を得ることができるようになる。
【0036】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では試料2が銅を含む鉄基合金であるようにしているが、これには限られず電解研磨後に表面に無電解めっきを生ずるような金属材料、例えばモネル合金としても良い。また、本実施形態では研磨液4は過塩素酸とメタノールの混合液としているが、これに限られず、過塩素酸と酢酸の混合液等の電解液を使用しても良い。さらに、本実施形態では電極3は白金としているが、これには限られず、銅から成るものとしても良い。いずれの場合も試料表面への付着物の生成を防止できるので、電子顕微鏡観察および分析に最適な試料の作製効率を高めることができる。
【0037】
また、上述した実施形態ではバイアス電圧を約1.0〜2.0Vとしているが、これは鉄基合金製の試料2と白金製の電極3とを使用していることから標準電極電位差が約1.6Vであるためであり、試料2と電極3の材質を変更して標準電極電位差が変わればバイアス電圧をこれに合わせて設定することが好ましい。
【0038】
さらに、本実施形態では既存の電解研磨装置にバイアス電圧印加手段8と電源切替装置12と洗浄液供給手段10とを追加して取り付けているが、これには限られず既存の電解研磨装置を使用せずに新たに設計するようにしても良い。
【0039】
この場合、例えば印加手段6とバイアス電圧印加手段8とを一つの電源装置により形成することができる。すなわち、試料2および電極3にバイアス電圧を印加することが必須要件であるので、これを印加する電源装置の数は特に限られない。そして、研磨により試料2に孔が開いて研磨の終了が検出されたときに、電圧印加を停止せずにタイマや遅延回路で電圧を出力し続けると共に研磨用の電圧からバイアス電圧に落とすようにする。このときの電圧の低減は例えばステップ状に立ち下がるようにしたり、あるいは徐々に下がるようにしても良い。そして、電源装置による電圧の低下を検知して洗浄液9を試料2に供給するようにする。この電解研磨装置1によれば、一つの電源装置で足りるので2つの電源装置を有する場合に比べて設備を簡略化することができる。
【0040】
また、上述した各実施形態では試料2を研磨した孔が開いたときに研磨を停止するようにしているが、これには限られず試料2が例えば200nm以下の厚さに成ったことを検出できる検出手段を利用して試料2に孔が開く前に研磨を停止するようにしても良い。この場合、試料2が例えば200nm以下の厚さであれば電子顕微鏡で観察できるので、観察および分析用の試料2として使用することができる。
【0041】
【実施例】
図1に示す電解研磨装置1を利用して、銅を含む鉄基合金の試料2の電解研磨を行った。印加手段6による印加電圧を23V、バイアス電圧を1.6Vとした。その結果、洗浄後の試料2には銅の付着が見られなかった。このため、本電解研磨装置1により試料2の作製を行うことにより、試料表面への付着物の生成を防止して、電子顕微鏡観察および分析に最適な試料の作製効率を高められることが判明した。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、請求項1記載の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨方法および請求項3記載の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置によれば、電解研磨の終了直後にバイアス電圧が印加されると共に試料に洗浄液が供給されて研磨液が洗い流されるので、試料周辺に残留した研磨液による試料への無電解めっきを防止することができる。よって、電子顕微鏡観察および分析に最適な試料の作製効率を従来より高めることができる。
【0043】
また、請求項2記載の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨方法および請求項4記載の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置によれば、無電解めっきによる試料表面への金属付着物の生成を防止しながらも、バイアス電圧による電解研磨の進行を最小限に抑えることができる。よって、電子顕微鏡観察用に良好な試料を得ることができる。
【0044】
さらに、請求項5記載の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置によれば、各ノズルから試料の両側面に洗浄液を供給することにより、試料の電子顕微鏡観察を行う薄膜部分に付着した研磨液を残さず洗い流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置を示すブロック図である。
【図2】試料ホルダを示す中央縦断面側面図である。
【図3】試料ホルダを分解した状態を示す中央縦断面側面図である。
【図4】試料ホルダの一方の側部材を示す背面図である。
【図5】従来の電解研磨装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置
2 試料
3 電極
4 研磨液
5 研磨液供給手段
6 印加手段
7 検出手段
8 バイアス電圧印加手段
9 洗浄液
10 洗浄液供給手段
11 試料ホルダ
Claims (5)
- 透過電子顕微鏡用の試料と該試料に向き合う電極との間に研磨液を供給すると同時に前記試料および前記電極に電圧を印加して前記試料を研磨する電解研磨方法において、前記試料が所定の厚さに研磨されて前記電圧の印加と前記研磨液の供給とを停止した直後に、前記試料および前記電極にバイアス電圧を印加すると共に前記試料に洗浄液を供給して洗浄することを特徴とする透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨方法。
- 前記バイアス電圧は、前記試料と前記電極との間の標準電極電位差と同じであることを特徴とする請求項1記載の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨方法。
- 透過電子顕微鏡用の試料と、該試料に向き合う電極と、前記試料および前記電極の間に研磨液を供給する研磨液供給手段と、前記試料および前記電極の間に電圧を印加することにより前記試料を研磨する印加手段と、前記試料が研磨されて所定の厚さに成ったことを検出して前記研磨液供給手段および前記印加手段を停止する検出手段とを備える電解研磨装置において、前記試料が所定の厚さに成ったことを前記検出手段が検出した直後に前記試料および前記電極の間にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、前記検出の直後に前記試料に洗浄液を供給して洗浄する洗浄液供給手段とを備えることを特徴とする透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置。
- 前記バイアス電圧は、前記試料と前記電極との間の標準電極電位差と同じであることを特徴とする請求項3記載の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置。
- 前記試料を保持すると共に、前記試料の少なくとも両側面に前記洗浄液を供給するノズルを有する試料ホルダを備えることを特徴とする請求項3または4記載の透過電子顕微鏡試料作製における電解研磨装置。
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