JP3687507B2 - エチレン−α−オレフィン共重合体 - Google Patents

エチレン−α−オレフィン共重合体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒の存在下、気相重合法により得られるエチレン−α−オレフィン共重合体に関する。さらに詳細には、冷キシレン可溶部(CXS)が少ないエチレン−α−オレフィン共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックフィルムを用いた包装用材料が持つ取り扱い易さ等の特徴が評価され、エチレン系樹脂等を用いたプラスチックフィルムの需要が伸びて来ている。包装用材料に用いるフィルムの特性としては、フィルム、フィルムから作られた袋等が取り扱い易いことや内容物の充填時、特に自動充填時に袋の口が開き易いこと等に関係してフィルムの耐ブロッキング性、滑り性等に優れることが要求される。
【0003】
このようなフィルムに用いられるエチレン系樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体が好適に用いられる。
例えば、特開昭52−125590号公報には、触媒の存在下、高圧イオン重合法によりエチレン−α−オレフィン共重合体を製造する方法が開示されている。しかし、高圧イオン重合法により得られたエチレン−α−オレフィン共重合体は、プロセス上の問題により成形加工時の発煙、ガスの発生の原因となる揮発成分を含むことがある。
【0004】
そこで、高圧イオン重合法で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体に替えて、気相重合法で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を使用することが報告されている。実質的に溶媒の不存在下で重合が進む気相重合法により得られるエチレン−α−オレフィン共重合体は、成形加工時の発煙、ガスの発生の原因となる揮発成分の含有量が低いという利点がある。
【0005】
例えば、特開昭54−154488号公報には、気相重合法で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法とその方法により製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体が開示されている。しかし、そのエチレン−α−オレフィン共重合体は、ブロッキング等の原因となる冷キシレン可溶部(CXS成分)を多く含んでいた。
【0006】
また、特開平5−155938号公報には、気相重合法で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体中に存在するヘキサン抽出分の減少法とその方法により製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体が開示されている。しかし、この方法を用いても、冷キシレン可溶部(CXS成分)は多いものであった。
【0007】
上記のように、一般に気相重合法で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体はブロッキング等の原因となる冷キシレン可溶部(CXS成分)が多いため、エチレン−α−オレフィン共重合体中の冷キシレン可溶部(CXS成分)の削減及び改良が望まれていた。
【0008】
以上のような状況の中で、揮発成分の含有量が少なく成形加工時に発煙、ガスの発生等の問題が無く、かつ、冷キシレン可溶部(CXS成分)が少なく、フィルム、シートに加工した際ブロッキング等の問題が起りにくい材料が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて気相重合法により得られ、冷キシレン可溶部(CXS成分)が少なく、フィルム、シートに加工した際ブロッキング等の問題が起りにくいエチレン−α−オレフィン共重合体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、メルトフローレート(MFR)、密度及び冷キシレン可溶部(CXS成分)が特定の関係を満たす気相重合法により得られたエチレン−α−オレフィン共重合体が本発明の目的を達成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
触媒の存在下、気相重合法により得られる
(A)メルトフローレート(MFR):0.3〜5.0g/10分
(B)メルトフローレート比(MFRR):20以上
(C)密度(d):0.910〜0.930g/cm3
(D)冷キシレン可溶部(CXS)(重量%)が式(1)に示される範囲
1.5×10-4×d-125×MFR0.5+0.3≧CXS 式(1)
であるエチレン−α−オレフィン共重合体に係るものである。
【0012】
また、本発明は、触媒の存在下、気相重合法により得られる
(A)メルトフローレート(MFR):0.5〜3.0g/10分
(B)メルトフローレート比(MFRR):21以上
(C)密度(d):0.915〜0.930g/cm3
(D)冷キシレン可溶部(CXS)(重量%)が式(1)に示される範囲
1.5×10-4×d-125×MFR0.5+0.3≧CXS 式(1)
(E)示差走査型熱量計(DSC)により測定した全融解熱量に対する110℃以下の融解熱量割合(HL110)が式(2)に示される範囲
Figure 0003687507
(F)組成分布変動係数 Cx≦0.85
であるエチレン−α−オレフィン共重合体に係るものである。
以下、本発明につき詳細に説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明における触媒の存在下に行う気相重合法とは、実質的に溶媒が存在せず、固相及び気相下において重合が進行して重合体を製造する方法であれば特に何ら制限はない。縦型反応器や横型反応器等の公知の反応器を用いることができ、それらは撹拌機を有していても、有していなくても良く、またそれらを複数個用いても良い。そして、その製造方法は連続式でも回分式でも良い。重合圧力は常圧〜40kg/m2、重合温度は55〜95℃の範囲で任意の値を選ぶことができる。
【0014】
本発明に使用される触媒は、エチレンとα-オレフィンを共重合させることができるオレフィン重合用固体触媒である。該触媒としては、例えば、特願平10−59846号公報、特願平10−59848号公報、特願平11−065433号公報等に記載の触媒系が挙げられる。
【0015】
本発明に使用される具体的なオレフィン重合用固体触媒は、マグネシウム、ハロゲン、チタン及び電子供与体を含む固体触媒成分(I)である。
【0016】
固体触媒成分(I)に含まれるマグネシウムとは周期律表第2族元素のマグネシウム原子であり、チタンとは周期律表第4族元素のチタン原子である。
【0017】
固体触媒成分(I)に含まれるハロゲンとは、周期律表第17族元素のハロゲンであり、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等であり、好ましくは塩素原子である。
【0018】
固体触媒成分(I)に含まれる電子供与体とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子及び/又はリン原子の少なくとも1種を含む有機化合物であり、例えば、アミン類、スルホキシド類、エーテル類又はエステル類等が挙げられ、好ましくは、エーテル類またはエステル類である。
【0019】
エーテル類としては、ジアルキルエーテル類が挙げられ、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。好ましくは、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランである。
【0020】
エステル類としては、飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等が挙げられる。例えば、酢酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、安息香酸ブチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル等が挙げられ、好ましくは、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチルである。
【0021】
固体触媒成分(I)として、好ましくは、マグネシウム、チタンおよびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体触媒成分前駆体に、第14族元素のハロゲン化合物と電子供与体とを接触させて得られる接触生成物に、さらにTi−ハロゲン結合を有する化合物を接触させて得られるものである。
【0022】
マグネシウム、チタンおよびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体触媒成分前駆体として、好ましくは、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物の存在下に、一般式Ti(OR1a4-a(式中、R1は炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、aは0<a≦4を満足する数を表す)で表されるチタン化合物を有機マグネシウムで還元して得られる3価のチタン原子を含有する固体生成物である。
【0023】
Si−O結合を有する有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシラン等が挙げられ、好ましくはテトラブトキシシランである。
【0024】
一般式Ti(OR1a4-a(式中、R1は炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、aは0<a≦4を満足する数を表す)で表されるチタン化合物の炭化水素基(R1)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくはブチル基である。
【0025】
一般式Ti(OR1a4-aで表されるチタン化合物のハロゲン原子(X)としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは、塩素原子である。また、aとしては、1、2、3または4であり、好ましくは4である。
【0026】
一般式Ti(OR1a4-aで表されるチタン化合物としては、例えば、ブトキシトリクロロチタン、ジブトキシジクロロチタン及びトリブトキシクロロチタン、テトラブトキシチタン等が挙げられ、好ましくはテトラブトキシチタンである。
【0027】
有機マグネシウムとしては、Mg−炭素結合を有するグリニャール化合物等が挙げられる。例えば、メチルクロロマグネシウム、エチルクロロマグネシウム、プロピルクロロマグネシウム、ブチルクロロマグネシウム等が挙げられ、好ましくはブチルクロロマグネシウムである。
【0028】
固体触媒前駆体と接触させる第14族元素のハロゲン化合物としては、炭素原子またはケイ素原子のハロゲン化合物が挙げられ、好ましくは一般式SiR2 4-bb(式中、R2は炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を表す。bは0<b≦4を満足する数を表す)で表されるケイ素原子のハロゲン化合物である。
【0029】
一般式SiR2 4-bb(式中、R2は炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を表す。bは0<b≦4を満足する数を表す)で表されるケイ素化合物の炭化水素基(R2)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられ、好ましくはブチル基である。
【0030】
一般式SiR2 4-bbで表されるケイ素化合物のハロゲン原子(X)としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子である。また、bとしては、1、2、3及び4が挙げられ、好ましくは3または4である。
【0031】
一般式SiR2 4-bbで表されるケイ素化合物としては、例えば、ブチルトリクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、トリクロロブチルシラン及びテトラクロロシラン等が挙げられ、好ましくはテトラクロロシランである。
【0032】
固体触媒前駆体と接触させる電子供与体としては、前述のものが挙げられる。
【0033】
固体触媒成分前駆体に第14族元素のハロゲン化合物と電子供与体とを接触させて得られる接触生成物に、さらに接触させるTi−ハロゲン結合を有する化合物のハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0034】
Ti−ハロゲン結合を有する化合物としては、例えば、テトラクロロチタン、トリクロロブトキシチタン、ジクロロジブトキシチタン及びクロロトリブトキシチタン等が挙げられ、好ましくはテトラクロロチタンである。
【0035】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体は、固体触媒成分(I)、有機アルミニウムとエチレン及びα−オレフィンを接触させることによって、固体触媒成分(I)上に生成する。
【0036】
実質的に溶媒が存在しない気相重合法においては、溶媒の回収、精製工程が省略でき、得られたエチレン−α−オレフィン共重合体を用いてフィルムを成形加工する時に、発煙、ガス発生の原因となる揮発成分の含有率を低くすることができる。
【0037】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体とは、エチレンと1種類以上の炭素原子数3〜12個のα−オレフィンとの共重合体である。
α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられ、好ましくはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1であり、さらに好ましくはブテン−1、ヘキセン−1である。
【0038】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、さらに好ましくはエチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体である。
【0039】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンの含有量は、好ましくは0.5〜30モル%であり、特に好ましくは1.0〜20モル%である。
【0040】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.3〜5.0g/10分であり、好ましくは0.5〜3.0g/10分であり、特に好ましくは0.7〜2.5g/10分である。
【0041】
メルトフローレート(MFR)が0.3g/10分未満では、フィルムに適用した場合に、製膜加工時の押出し負荷が過大になりメルトフラクチャーが発生する等の問題が生じ易くなることがあり、5.0g/10分を超えた場合、フイルムの機械特性が損なわれたり、製膜安定性が不充分なことがある。
【0042】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート比(MFRR)は、20以上であり、好ましくは21以上である。
【0043】
メルトフローレート比(MFRR)が20未満では、フィルムに適用した場合に、製膜加工時の押出し負荷が過大になりメルトフラクチャーが発生する等の問題が生じ易くなることがある。
【0044】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、0.910〜0.930g/cm3であり、好ましくは0.915〜0.930g/cm3、特に好ましくは0.918〜0.927g/cm3である。
【0045】
密度が0.910g/cm3未満では、フィルムに適用した場合に耐ブロッキング性の悪化や剛性の不足等が起こり、フィルムの取り扱い性が悪くなることがあり、0.930g/cm3を超えた場合、フィルムの光沢性、透明性が不充分なことがある。
【0046】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の冷キシレン可溶部(CXS)(重量%)は、式(1)に示される範囲
1.5×10-4×d-125×MFR0.5+0.3≧CXS 式(1)
であり、好ましくは式(3)の範囲
1.5×10-4×d-125×MFR0.5≧CXS 式(3)
である。
【0047】
冷キシレン可溶部(CXS)が上記式(1)の上限を超えた場合、フィルムの耐ブロッキング性、滑り性が不充分となることがある。なお、下限については0以上である。
【0048】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の示差走査型熱量計(DSC)により測定した全融解熱量に対する110℃以下の融解熱量割合(HL110)は式(2)に示される範囲が好ましい。
Figure 0003687507
【0049】
HL110が式(2)を超えた場合、フィルムに適用した場合に、フィルムの腰や剛性、及び耐ブロッキング性に劣ることがある。
なお、示差走査型熱量計(DSC)により測定した全融解熱量に対する110℃以下の融解熱量割合(HL110)とはエチレン−α−オレフィン共重合体の剛性を示すものであり、DSC測定より求める事ができる。この値が小さいほどエチレン−α−オレフィン共重合体の剛性が高いことを示す。
【0050】
組成分布変動係数Cxとはエチレン−α−オレフィン共重合体の組成分布の尺度を示すものであり、下式により求めることが出来る。
Cx=σ/SCBave
σ:組成分布の標準偏差
SCBave:1000炭素原子当たりの短鎖分岐数の平均値
この値が小さいほど組成分布が狭いことを示す
【0051】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の組成分布変動係数Cxは好ましくは0.85以下であり、さらに好ましくは0.83以下である。
組成分布変動係数Cxが0.85を超えた場合、フィルムに適用した場合に、フィルムの強度の低下や、耐ブロッキング性及び透明性等に劣ることがある。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0053】
試片調整(メルトフローレート(MFR)、メルトフローレート比(MFRR)及び密度測定用試料)
メルトフローレート(MFR)、メルトフローレート比(MFRR)及び密度測定用の試片は、あらかじめ押出機を用いて170〜250℃において溶融押出して試片を調整した。
【0054】
評価は下記の方法に従って行なった。
(1)発煙評価
(株)ユニオン社製φ30mm押出機にTダイスを装着し、各ヒーターの温度を290℃に設定した。本押出機よりスクリュー回転数100rpmで各樹脂を押出し、1分間に発生する煙を捕集し、(株)日本カノマックス社製デジタル粉塵計MODEL3411を用いて発煙量を測定した。これを5回繰り返したものを平均して得られた数値を発煙量とし、CMP単位で示した(1CMP=0.01mg/m3、但しφ0.3μmステアリン酸粒子換算)。この数値が小さいほど発煙量が少ないことを示す。
【0055】
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS K 6760に規定された方法に従った。荷重2.16kg、温度190℃で行った。
【0056】
(3)メルトフローレート比(MFRR)
JIS K 6760に規定された方法に従った。荷重2.16kg、温度190℃で行ったMFR値を、荷重21.6kg、温度190℃で行ったMFR値で除した値を求め、メルトフローレート(MFRR)とした。
【0057】
(4)密度(d)
JIS K 6760に規定された方法に従った。
【0058】
(5)冷キシレン可溶部(CXS)
米国のCode of federal regulations,Foodand Drugs Administrationの§175.1520に規定された方法に従った。
【0059】
(6)示差走査型熱量計(DSC)により測定した全融解熱量に対する110℃以下の融解熱量割合(HL110)
示差走査型熱量計(DSC)により測定した全融解熱量に対する110℃以下の融解熱量割合(HL110)は、装置としてパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC−7型装置を用い、試料約5mgをアルミパンに詰め、100℃/分で150℃まで昇温し、150℃で5分間保持したのち5℃/分で40℃まで降温し、40℃で5分間保持したのち5℃/分で150℃まで昇温して融解曲線を測定し、融解曲線が高温側のベースラインに戻る点と、融解曲線の40℃の点を直線で結び、この直線と融解曲線で囲まれる部分の総面積から融解熱量を求め、総面積を110℃で2分割し、総面積に対する110℃以下の部分の面積割合を110℃以下の融解熱量割合(HL110)とした。
【0060】
(7)組成分布変動係数 Cx
東ソー社製多機能LCを用いて測定した。測定に用いるエチレン−α−オレフィン共重合体を所定の温度145℃に加熱したオルトジクロルベンゼン(ODCB)溶媒に溶解(濃度0.2g/20ml)させ、カラムオーブンの中に海砂を充填したカラムに入れ、オーブンの温度を40℃/60分の速度で125℃まで降温し、125℃から−15℃まで14時間をかけて降温した。続いて、10℃/60分の速度で昇温し、125℃まで上昇させて、その間に流出した共重合体の相対濃度と分岐度をカラムに接続したFT−IRで測定した。データは10℃の間を等間隔で7点取り込んだ。設定した各温度毎に流出した共重合体の相対濃度と主鎖炭素1000個あたりの分岐度(SCB)を求めながら、最終温度まで昇温していった。ただし、各溶出温度と分岐度の関係は、コモノマーの種類に関係なく式(4)に従った。また、SCBがマイナスになる温度では、溶出無しとした。
SCB=−0.7322×溶出温度(℃)+70.68 式(4)
得られた相対濃度と分岐度より組成分布曲線を求め、この曲線より炭素1000個あたりの平均短鎖分岐度(SCBave)と組成分布の標準偏差(σ)を得て分布の広さを表す組成分布変動係数Cxを得た。
平均短鎖分岐度(SCBave)=ΣN(i)・W(i) 式(5)
N(i):i番目のデータサンプリング点の短鎖分岐度
W(i):i番目のデータサンプリング点の相対濃度、即ち、ΣW(i)=1
組成分布の標準偏差(σ)={Σ(N(i)−SCBave)2・W(i)}0.5 式(6)
【0061】
(8)ブロッキング
成形フィルムを23±2℃、50±5%RHで24時間以上状態調整した後、成形フィルムを二枚重ね合わせ、40℃に調整されたオーブン中、800g/cm2の荷重下、7日間密着させた後、島津製作所製マッケンジー式単繊維引張試験機改造型ブロッキング測定装置を用い、試験片サイズ10cm×22cm、剥離面積50cm2、剥離荷重速度20g/minの条件で試験片を上下のクランプにそれぞれ固定し、駆動モーターを回し剥離荷重を移動させながら、2枚のフィルムが完全に剥離したときの荷重を記録した。この荷重をg/50cm2の単位であらわしブロッキングの指標とした。この値が小さいほど耐ブロッキング性に優れることを示す。
【0062】
実施例1
(1)固体触媒成分(I)の合成
撹拌機を備えた内容積200LのSUS製の反応槽を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラエトキシシラン20.6kg、テトラブトキシチタン2.2kgを投入し、5℃とした。次にブチルマグネシウムクロリド(ジブチルエーテル溶媒2.1mol/L)50Lを温度を5℃に保ちながら4時間かけて攪拌下で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、更に20℃で1時間撹拌した後、濾過、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した後、トルエン63L、フェニルトリクロロシラン14.4kg、ジイソブチルフタレート9.5kgを加え、105℃にて2時間反応を行った。その後、濾過、トルエン90Lで3回洗浄を行った後、トルエン63Lを加え、70℃に昇温し、TiCl4 13.0kgを投入、105℃で2時間反応を行った。その後、固液分離し、95℃にてトルエン90Lでの洗浄6回、室温にてヘキサン90Lでの洗浄を2回行い、乾燥して粉体性状に優れた固体触媒成分(I)15.2kgを得た。得られた固体生成物は、Ti:1.17wt%を含有していた。
【0063】
(2)固体触媒成分の予備重合
内容積210Lの攪拌付きオートクレーブを窒素で置換した後、上記(1)で得られた固体触媒成分1.515kg、ブタン98.4L、トリエチルアルミニウム3.2337モルを投入した。次に温度を40℃に設定し、水素を全圧が0.928MPaになるまで加え、更にエチレンを固体触媒成分1g当り2.44g/g固体触媒成分・hrの割合で28kg加えた。反応終了後ブタンをフラッシュし、予備重合触媒28.55kgを得た。
【0064】
(3)重合
上記予備重合触媒を用い連続式流動床気相重合設備を使用してエチレンとブテン−1のランダム共重合を実施した。重合槽を90℃に昇温後、予め減圧乾燥したポリエチレンパウダー80kgを分散剤として投入し、次いでエチレン/ブテン−1/水素のモル比が63/27/10となるように調整した混合ガスを2MPaの圧力下、重合槽内で0.34m/秒の流速となるように循環させた。またエチレン/ブテン−1/水素のモル比が設定値からずれた場合は、追添することによりモル比を調整した。次いでトリエチルアルミニウム46.7ミリモル/hr、上記予備重合触媒0.73g/hrの流量で槽内へ投入し、エチレン/ブテン−1の流動床気相共重合を連続で24時間行った。得られた重合体の粒子性状は良好であり、重合壁への付着はほとんど見られなかった。触媒当たりの重合体の生成量(重合活性)は、28100g重合体/g固体触媒成分であった。得られたエチレン−ブテン−1共重合体の物性を表2に示した。
【0065】
次いで得られたエチレン−ブテン−1共重合体に、ステアリン酸カルシウム1000ppm、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート1000ppm、テトラキス(2,4ジターシャリーブチルフェニル)4,4’ビフェニレンジフォスフォナイト800ppmを加えたのち田辺プラスチック社製20mmφ押出機、ダイ25mmφ、リップ2.0mmのインフレーション成形機により、加工温度180〜190℃、押出量1.2kg/hr、ブロー比1.8の条件で製膜して厚み20μのフィルムを得、ブロッキング値を測定し、その結果を表2に示した。
【0066】
実施例2〜7
実施例1と同様の固体触媒成分(I)を用いて得られた予備重合触媒を用い、表1に示した条件以外は、実施例1と同様の気相重合法によりエチレン−ブテン−1共重合体を製造し、実施例1と同様の方法でそのフィルムを得た。表2にそれらの物性及びブロッキング値を示した。
【0067】
比較例1〜5
比較例として示した気相重合により得られたエチレン−ブテン−1共重合体を下記に示す。
比較例1:住友化学工業株式会社製スミカセン-L CA1010
比較例2:住友化学工業株式会社製スミカセン-L FS150A
比較例3:住友化学工業株式会社製スミカセン-L FS140A
比較例4:住友化学工業株式会社製スミカセン-L FS150C
比較例5:住友化学工業株式会社製スミカセン-L FS240A
これらのエチレン−ブテン−1共重合体を用い、実施例1と同様の方法でそのフィルムを得た。表2にそれらの物性及びブロッキング値を示した。
【0068】
同MFR及び同密度である実施例1及び2と比較例1及び2を比較すると、実施例1及び2の方が冷キシレン可溶部(CXS)が少なく、組成分布変動係数(Cx)が小さく、また、ブロッキング値も小さくなっている。即ち、実施例はフィルムに製膜した際のエチレン−ブテン−1共重合体の耐ブロッキング性に優れることが分かる。
【0069】
MFR及び密度の値がほぼ同等である実施例4と比較例3、実施例5と比較例4、実施例7と比較例5を比較すると、実施例の方が冷キシレン可溶部(CXS)が少なく、組成分布変動係数(Cx)が小さく、またブロッキング値も小さい。即ち、実施例はフィルムに製膜した際のエチレン−ブテン−1共重合体の耐ブロッキング性に優れることが分かる。
【0070】
そして、差走査型熱量計(DSC)により測定した全融解熱量に対する110℃以下の融解熱量割合(HL110)と式(2’)の計算値の比較から実施例1〜7、比較例1〜5は式(2)を満足することがわかるが、一方で冷キシレン可溶部(CXS)と式(1’)の計算値の比較から実施例1〜7は式(1)を満足し、比較例1〜5は満足しないことがわかる。
【0071】
実施例8、比較例6
揮発成分(発煙)量の評価
実施例8の気相重合法により得られたエチレン−ブテン−1共重合体(実施例7で用いたエチレン−ブテン−1共重合体と同じもの)と比較例6の高圧イオン重合法により得られたエチレン−ブテン−1共重合体(住友化学工業株式会社製スミカセン-L CL2060)について、揮発成分(発煙)量の比較を行なった。本サンプルには、中和剤として揮発成分(発煙)となり難いハイドロタルサイトを0.05重量部添加し評価を行なった。表3に物性と発煙評価結果を示した。
実施例8の気相重合法により得られたエチレン−ブテン−1共重合体(実施例7で用いたエチレン−ブテン−1共重合体と同じもの)は、比較例6の高圧イオン重合法により得られたエチレン−ブテン−1共重合体に比べて、成形加工中の揮発成分(発煙)が少なく成形加工時の取り扱いに優れることを示した。
【0072】
また、差走査型熱量計(DSC)により測定した全融解熱量に対する110℃以下の融解熱量割合(HL110)と式(2’)の計算値の比較から実施例8は式(2)を満足し、比較例6は満足しないことがわかる。つまり実施例8はフィルムにした際、良好なフィルムの腰と剛性、及び耐ブロッキングを有し、比較例6はフィルムの腰と剛性、及び耐ブロッキング性が不充分であることがわかる。
【0073】
【表1】
重合条件
Figure 0003687507
【0074】
【表2】
Figure 0003687507
*1:式(1')=1.5×10-4×dー125×MFR0.5+0.3
*2:式(2')=−68858×d2+124830×d−56505
【0075】
【表3】
Figure 0003687507
【0076】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、揮発成分の含有量が少なく、冷キシレン可溶分(CXS)が少ないエチレン−α−オレフィン共重合体を提供でき、冷キシレン可溶分(CXS)が少ないことから、とりわけ耐ブロッキング性等に優れた特性を有する良好なフィルムを提供できる。
また、そのフィルムは、優れた特性を生かして、例えば食品、繊維、医薬品、肥料、雑貨品、工業用品等の包装材料用として、また農業用被覆剤および建築用被覆剤として最適に使用できる。

Claims (3)

  1. マグネシウム、ハロゲン、チタン及び電子供与体を含む固体触媒成分の存在下、気相重合法により得られる
    (A)メルトフローレート(MFR):0.3〜5.0g/10分
    (B)メルトフローレート比(MFRR):20以上
    (C)密度(d):0.910〜0.930g/cm3
    (D)冷キシレン可溶部(CXS)(重量%)が式(1)に示される範囲
    1.5×10-4×d-125×MFR0.5+0.3≧CXS 式(1)
    であることを特徴とするエチレン−α−オレフィン共重合体。
  2. 請求項1記載のエチレン−α−オレフィン共重合体が、(A)〜(D)に加えて、
    (E)示差走査型熱量計(DSC)により測定した全融解熱量に対する110℃以下の融解熱量割合(HL110)が式(2)に示される範囲
    −68858×d2+124830×d−56505≧HL110 式(2)
    (F)組成分布変動係数 Cx≦0.85
    を満足することを特徴とする請求項1記載のエチレン−α−オレフィン共重合体。
  3. 冷キシレン可溶部(CXS)が、3.1〜8.7重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレン−α−オレフィン共重合体。
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