JP3687301B2 - 回転電機の電機子鉄心に組み立てられるコイル導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転電機の電機子鉄心に組み立てられる電機子コイルの製造方法 に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば、特開平8−140324号公報に、回転電機の電機子鉄心に組み立てられる略コの字状のコイル導体を製造する方法が記載されている。なお、コイル導体は、直線状のコイル辺と、このコイル辺の両端から略直角に伸びる一組のコイル端部と、このコイル端部の先端から略直角に曲がってコイル辺と反対側へ突出する一組のコイル突出部とから成り、一組のコイル端部がコイルを中心として互いに反対方向へ所定角度傾斜(ひねり)して設けられている。
上記公報に記載されたコイル導体の製造方法を図11を参照して説明する。
先ず、断面角形の線材を所定長さに切断してワーク100を得る(a)。
続いて、ワーク100の両側をワーク100の幅方向に所定角度曲げる(b)。
続いて、コイル端部となるワーク100の両端部(以下コイル端部101と言う)を厚み方向に潰して幅広形状に整形する(c)。
続いて、金型(図12参照)により、コイル端部101を略直角に曲げ、更にコイル突出部となる先端部102を略直角に曲げて完成する(d)。
【0003】
この金型による直角曲げ工程について説明する。
金型は、図12に示す様に、上型台200に固定されたパンチ210、上型台200に対しスプリング220で予圧されながらパンチ210の内部を上下方向に移動可能に保持されたノックアウト230、及び下型台240に固定されたダイ250等より構成される。
先ず、上記(c)の工程まで終了したワーク100をダイ250の上にセットする。
続いて、上型台200が下降すると、スプリング220にて予圧されたノックアウト230がワーク100のコイル辺103をダイ250の上面に押しつける。
更に上型台200が下降すると、パンチ210の角部211がワーク100を押圧しながら曲げ加工を開始する(図12に示す状態)。
その後、図13に示す様に、上型台200の下面がノックアウト230の上面に当接するまで下降して曲げ加工が完了する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の製造方法では、以下の問題が生じる。
コイル端部101に拡がりや捩じれを生じる。
コイル端部101の輪郭形状が変形してバラツキを生じる。
ワーク100の曲げ角部の外周面がダレてRが大きくなってしまう。
【0005】
以下、上記の各問題点について詳述する。
a)コイル端部101が捩じれる問題。
上記(c)の工程まで終了したワーク100は、図14に示す様に、コイル端部101がコイル辺103に対して最大L1 の偏芯量(ヒネリ)を有している。このワーク100を上記金型にて加工した場合、ダイ250の角部251とワーク100との接触位置はパンチ210が下降しても変わらないが、パンチ210の角部211とワーク100との接触位置は、パンチ210が下降するに連れてワーク100の先端側へ移動する。また、パンチ210の角部211とダイ250の角部251との間には、ワーク100の板厚より少し大きいクリアランスC(図12参照)が曲げ加工上必要となる。これを図14で説明すると、ダイ250の角部251は常時ワーク100のコイル辺103の端部Aに当たっているが、パンチ210の角部は、加工開始時にはコイル端部101の上部位置Bを押圧し、パンチ210の下降に伴って次第にコイル端部101を先端側へ移動し、コイル端部101の下部位置Cを押圧する。
【0006】
このため、パンチ210とダイ250の押圧位置の偏芯量が、最小L0 から最大L1 へと増加して行く。この偏芯量の変動により、パンチ210の角部211による曲げ力がダイ250の角部251付近のワーク100に働かないため、曲げ加工完了時には、図15(a)に示す様な拡がりW0 と、図15(b)に示す様な捩じれW1 とが合成された変形を生じる。
この様に、コイル端部101に拡がりや捩じれが生じると、コイル端部をブラシが摺接する整流子面として使用した場合、図16に示す様に、ブラシ300が片当たりして密着できなくなる。そのため、ブラシ接触面積が不足して電流密度が増加し、ブラシ300及びコイル端部101の温度上昇を招く。その結果、ブラシ300の寿命が低下して回転電機の出力低下を引き起こすことになる。
【0007】
b)コイル端部101の輪郭形状が変形してバラツキを生じる問題。
上記の金型による曲げ加工では、パンチ210の角部211がコイル端部101を押圧しながら下降するため、コイル端部101が先端方向(図13の下方向)へ引っ張られる。これにより、製造後のコイル導体を電機子鉄心に組み立てた場合、例えば、図17に示す様に、本来なら二点鎖線で示す形状に成形されるはずのコイル端部101が、先端方向へ引っ張られることにより、実線で示す形状に変形する可能性があった。
また、前記a)に記載した様に、コイル端部101に捩じれが生じるため、パンチ210の角部211がコイル端部101を押圧しながら下降する際に、パンチ210の押圧力がコイル端部101の表面に均等に加わらず、コイル端部101の縁部を強く押圧する場合が生じる。この場合、押圧されたコイル端部101の縁部が潰されて変形し、図17に示す様に、コイル端部101の幅方向へ突き出ることがある。
これにより、コイル端部101の先端部101aや変形部101bにて隣接する他のコイル端部101と接触するため、電気的に短絡して回転電機の出力低下や作動不良を招くという問題を生じる。
【0008】
c)曲げ角部の外周面がダレてRが大きくなってしまう問題。
コイル辺103に対してコイル端部101を直角に曲げると、コイル辺103とコイル端部101との境となる曲げ角部の外側ではワーク100が引っ張られて伸び変形を生じるため、図18に示す様に、必然的に曲げ角部の外側にワーク100の板厚寸法より曲率半径の大きなダレRが生じる。この場合、コイル端部101の外径側にブラシ300との間で非接触部が生じ、コイル端部101とブラシ300との接触面積が不足する。その結果、前記a)に記載した様に、電流密度が増加してブラシ300及びコイル端部101の温度上昇を招くことにより、ブラシ300の寿命が低下して回転電機の出力低下を引き起こすことになる。
【0009】
なお、曲げ角部外側のダレRが大きくても、ブラシ300とコイル端部101との接触面積を確保する手段として、▲1▼ブラシ300を内周側へ移動させる、▲2▼曲げ角部を電機子の外周側へ伸ばす等の方法が考えられる。
しかし、▲1▼の方法では、図17に示した様に、コイル端部101の周方向幅が外周側より内周側の方が狭くなっているため、1個当たりのコイル端部101とブラシ300との接触面積が減少する。その結果、電流密度の増加による性能低下となる。
また、▲2▼の方法では、電機子外径が大きくなるため、必然的に回転電機の全体寸法が大きくなり、且つ重量も増加するという不具合を生じる。
【0010】
また、曲げ角部外側のダレRを小さくする方法として、特願平7−326983号公報に記載された従来技術がある。
この方法は、コイル端部101を直角に曲げ加工した後、図19(a)に示す様に、コイル端部101をコイル辺103の中心方向(矢印方向)へ向かって押圧する工程(圧縮据え込み工程)を追加するものであり、これにより、図19(a)の二点鎖線で示す様に、曲げ角部外側のダレを小さくすることができる。
しかし、上記の方法では、コイル端部101をコイル辺103の中心方向へ押圧することから、コイル辺103に大きな圧縮力が加わるため、図19(b) に示す様に、コイル辺103の途中にワーク100の一部が押し出されて膨らみ変形103aを生じる。この膨らみ変形103aにより、コイル辺103と電機子鉄心のスロット内壁面との間に介在される絶縁材が破れてアース不良を生じる可能性があった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、電機子鉄心に組み立てられるコイル導体を最適な形状に整形できるコイル導体の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、コイル辺に相当するワーク直線部とコイル端部に相当する一対のワーク端部とを有するワークを製作した後、ワーク保持具にてワークの直線部を保持し、ワーク端部の4面を拘束して塑性加工することにより、ワーク端部の輪郭を所望のコイル端部形状に整形する。続いて、ワーク端部の4面を拘束した状態で、ワーク直線部とワーク端部との折り曲げ部をワーク直線部側からワーク端部側へ圧縮据え込み加工することにより、折り曲げ部を所望の直角曲げ部形状に整形することができる。なお、ワーク端部の4面とは、周方向の2面と軸方向の2面である。
この製造方法によれば、ワーク直線部に対してワーク端部を略直角に折り曲げた後に、そのワーク端部に生じる捩じれや輪郭形状の変形、及びワーク直線部に対する曲げ不足等は、端部整形手段にてワーク端部の4面を拘束して塑性加工することにより、全て解消できる。
また、ワーク直線部とワーク端部との折り曲げ部外側に生じるダレは、圧縮据え込み加工により、ワーク端部の据え込み代の肉をダレ部に充填することでダレを解消することができる。特に、この圧縮据え込み加工では、ワーク直線部とワーク端部との折り曲げ部をワーク直線部側からワーク端部側へ押圧するため、従来の様にワーク直線部(コイル辺)に膨らみ変形が生じる恐れはない。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1(a)は金型の正面図、(b)は金型の側面図である。
本実施例の電機子1は、例えばスタータモータに用いるもので、図7に示す様に、回転軸2、電機子鉄心3、電機子コイル(後述する)等より構成される。
電機子鉄心3は、複数枚の円盤状コアシートを積層して構成され、回転軸2の外周に嵌合して回転軸2と一体に回転可能に設けられている。電機子鉄心3の外周部には、所定数(例えば25個)のスロット4(図9参照)がそれぞれ軸方向に沿って凹設され、各スロット4が電機子鉄心3の周方向に等ピッチに設けられている。
【0013】
電機子コイルは、それぞれスロット4の数と同数の下層コイル導体5と上層コイル導体6から成る。その下層コイル導体5と上層コイル導体6は、電気抵抗の低い純銅または純アルミニウムを材料として、それぞれ以下に述べる所定の形状に整形されている。
下層コイル導体5は、図8に示す様に、直線状のコイル辺5aと、このコイル辺5aの両端からコイル辺5aに対して略直角に伸びる一組のコイル端部5bと、各コイル端部5bの先端から略直角にコイル辺5aと反対側へ伸びる一組のコイル突出部5cとから成り、コイル辺5aが下層側スロット絶縁紙7を介してスロット4内に挿入されている(図9参照)。
【0014】
上層コイル導体6は、直線状のコイル辺6aと、このコイル辺6aの両端からコイル辺6aに対して略直角に伸びる一組のコイル端部6bと、各コイル端部6bの先端から略直角にコイル辺6aと反対側へ伸びる一組のコイル突出部6cとから成り、コイル辺6aが上層側スロット絶縁紙8を介してスロット4内の下層コイル辺5aの外側に挿入されている(図9参照)。なお、上層コイル導体6の全体形状は、図8に示した下層コイル導体5と略同じであるが、一方のコイル端部6bは、その端面上をブラシ9(図7参照)が摺動する整流子辺として形成されている。
【0015】
ここで、上層コイル導体6の製造方法について図5を参照して説明する。
先ず、断面角形の線材を所定長さに切断してコイル素材10(以下ワーク10と言う)を得る(a)。但し、ここでは、後述の圧縮据え込み工程の据え込み代L3 (図6参照)の2倍だけ従来寸法より長く切断する。
続いて、切断されたワーク10の両端側をワーク10の幅方向に、且つ互いに反対方向へ所定角度曲げる(b)。
続いて、コイル端部6bとなるワーク10の両端部(以下ワーク端部10aと呼ぶ)を厚み方向に潰して幅広形状に整形する(c)。この時、ワーク端部10aは、ワーク10の直線部10b側では幅広く、先端に向かって次第に細くなる先細り形状に押し潰す。
続いて、コイル辺6aとなるワーク直線部10bに対してワーク端部10aを略直角に折り曲げる(d)。但し、ここでは、ワーク端部10aに上記の据え込み代L3 が含まれている。つまり、折り曲げ部よりワーク端部10a側に据え込み代L3 が含まれている。従って、ワーク直線部10bの長さは従来と同じである。
最後に、下述の金型11(図1〜4参照)によりワーク10を所定の形状に整形する(e)。
【0016】
次に、本発明の特徴である金型11の構造と、この金型11によるワーク10の整形工程について説明する。
(金型11の構造)
金型11は、図1に示す様に、固定された下型台12と、上下にスライド可能に設けられた上型台13とを備え、下型台12には、クッションリテーナ14、クッションブロック15、輪郭拘束パンチ16、端面拘束パンチ17等が設けられ、上型台13には、据え込みパンチ18、輪郭拘束パンチスライドカム19、及び端面拘束パンチスライドカム20等が設けられている。
【0017】
クッションリテーナ14は、下型台12に固定され、その上端面にはクッションブロック15の移動をガイドするガイド溝14aと、端面拘束パンチ17の移動をガイドするガイド溝14bとが設けられている。
クッションブロック15は、ワーク10を保持するもので、クッションリテーナ14に対してスプリング21により予圧されながらクッションリテーナ14のガイド溝14aに沿って上下方向に移動可能に設けられている。なお、クッションブロック15の上端面には、ワーク直線部10bを保持する溝15aが形成されている。
一組の輪郭拘束パンチ16は、ワーク端部10aを図1(b)の両側から押圧してワーク端部10aの側面を拘束するもので、スプリング22に予圧されながら下型台12上を前後方向(図1(b)の左右方向)に移動可能に保持されている。各輪郭拘束パンチ16には、完成品となるコイル端部6bの側面形状に沿った拘束面16a、16bが形成されており、両パンチ16の拘束面16a、16bによって所望の輪郭形状が形成される。なお、輪郭拘束パンチ16の前後方向外側への移動は、下型台12上に固定された一組のストッパ23に当接して規制され、前後方向内側への移動は、互いの端面同士が当接して規制される(図3(b)参照)。
【0018】
一組の端面拘束パンチ17は、クッションブロック15の側面15bに対しワーク端部10aを板厚方向に押圧してワーク端部10aの端面を拘束するもので、スプリング24に予圧されながらクッションリテーナ14のガイド溝14bに沿って左右方向(図1(a)の左右方向)に移動可能に保持されている。
据え込みパンチ18は、ワーク端部10aの4面が拘束された状態で、クッションブロック15に保持されたワーク直線部10bを下方へ押圧するもので、上型台13に固定されている。この据え込みパンチ18の下面には、ワーク直線部10bの外周面(クッションブロック15の溝から出ている部分)を拘束する拘束溝18aが形成されている。なお、ワーク端部10aの4面とは、一組の輪郭拘束パンチ16によって拘束される周方向の2面と一組の端面拘束パンチ17によって拘束される軸方向(板厚方向)の2面である。
輪郭拘束パンチスライドカム19は、上型台13の前後両側に固定され、上型台13の下降に伴って輪郭拘束パンチ16を内側へ押圧する。
端面拘束パンチスライドカム20は、上型台13の左右両側に固定され、上型台13の下降に伴って端面拘束パンチ17を内側へ押圧する。
【0019】
(金型11による整形工程)
まず、予め図5(d)の形状まで加工されたワーク10の直線部10bをクッションブロック15の上端面に形成された溝15aに挿入してセットする(図1に示す状態)。この時、ワーク端部10aは、図5(d)に示す直角曲げ加工時に生じた捩じれ、輪郭の変形、及び曲がり不足等により、クッションブロック15の側面15bに密着することなく、図1(a)に示す様に、少し離れた状態となっている。
次に、上型台13が下降すると、上型台13に固定された端面拘束パンチスライドカム20が下降して、端面拘束パンチスライドカム20の先端傾斜面が端面拘束パンチ17の傾斜面に当接し、そのまま両傾斜面が滑りながら移動することにより、端面拘束パンチ17が内側へ押し出される(図2(a)参照)。これにより、押し出された端面拘束パンチ17がワーク端部10aを押圧してクッションブロック15の側面15bとの間に強圧することにより、ワーク端部10aの捩じれ、及び直角曲げ不足が修正される。
【0020】
更に上型台13が下降すると、図2(b)に示す様に輪郭拘束パンチスライドカム19の先端傾斜面が輪郭拘束パンチ16の傾斜面に当接し、そのまま両傾斜面が滑りながら移動することにより、輪郭拘束パンチ16が内側へ押し出される。これにより、押し出された輪郭拘束パンチ16がワーク端部10aの両側面を強圧しながら、互いの端面同士が密着するまで前進することにより、ワーク端部10aの直角曲げ加工時に生じたワーク端部10aの輪郭の変形が矯正される。
【0021】
続いて、圧縮据え込み加工を行う。具体的には、図3に示す様に、輪郭拘束パンチ16と端面拘束パンチ17とクッションブロック15とでワーク端部10aの4面が拘束された状態で、更に上型台13が下降すると、据え込みパンチ18がワーク直線部10bの上面と密着しながら、スプリング21で予圧されたクッションブロック15を、クッションブロック15の下面がクッションリテーナ14のガイド溝14a底面に当接するまで押し下げる(図4参照)。これにより、ワーク直線部10bがクッションブロック15と据え込みパンチ18により拘束され、且つワーク端部10aは既に4面が拘束されているため、ワーク端部10aに含まれている据え込み代L3 の肉は、ワーク10の曲げ角部に移動する。
その後、上型台13を上方へ移動させて金型11から整形されたワーク10、即ち上層コイル導体6を取り出して完了する。
【0022】
(本実施例の効果)
本実施例によれば、ワーク直線部10bがクッションブロック15の溝15aに保持された状態でワーク端部10aの4面を拘束することにより、ワーク端部10aを折り曲げた後に生じる捩じれや輪郭形状の変形が矯正され、所望のコイル端部6b形状を得ることができる。
また、ワーク端部10aの4面が拘束された状態で圧縮据え込み加工を行うと、ワーク直線部10bがクッションブロック15と据え込みパンチ18により拘束されるため、ワーク端部10aに含まれている据え込み代に相当する肉が、図6に示す様に、ワーク10の曲げ角部へ移動して曲げ角部のダレを小さくすることができる。更に、この場合、ワーク端部10aの捩じれ矯正、及び輪郭矯正後にワーク10内部に残る不均一な残留歪みが均一な圧縮歪みに改善されるため、形状のバラツキを防止できる。
【0023】
また、本実施例では、ワーク端部10aとワーク直線部10bの両方を略全拘束した状態で圧縮据え込み加工を行うため、加工後のワーク端部10aに対するワーク直線部10bの変形を防止できる。これにより、従来の圧縮据え込み加工(ワーク端部10aをワーク直線部10bの中心方向へ向かって押圧する/図19参照)の場合に生じるコイル辺6aの膨らみ変形を防止できる。
【0024】
(変形例)
本実施例では、上層コイル導体6の製造方法について説明したが、下層コイル導体5も同様の方法で製造することができる。
ワーク10を整形する際の金型11動作の順序に関して、本実施例では、端面拘束パンチ17によりワーク端部10aの表面を拘束してから、輪郭拘束パンチ16によりワーク端部10aの側面を拘束する順序で行っているが、両工程を略同時に行っても良いし、逆に輪郭拘束パンチ16によりワーク端部10aの側面を拘束してから、端面拘束パンチ17によりワーク端部10aの表面を拘束する順序で行っても良い。
本実施例では、図5に示した様に、線材を所定長さに切断したワーク10を使用しているが、図10に示す様に、板材から加工したワーク10を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はワークを金型にセットした状態を示す正面図、(b)は側面図である。
【図2】(a)はワーク端部の端面を拘束した状態を示す正面図、(b)は側面図である。
【図3】(a)はワーク端部の側面を拘束した状態を示す正面図、(b)は側面図である。
【図4】(a)は圧縮据え込み工程を示す正面図、(b)は側面図である。
【図5】上層コイル導体の製造過程を示す斜視図である。
【図6】圧縮据え込み工程の作用を示すワーク曲げ角部の側面図である。
【図7】電機子の半断面図である。
【図8】(a)は下層コイル導体の側面図、(b)は(a)のA視図、(c)は(a)のB視図である。
【図9】下層コイル辺と上層コイル辺がスロット内に挿入されている状態を示す断面図である。
【図10】上層コイル導体の製造過程を示す斜視図である(変形例)。
【図11】コイル導体の製造過程を示す斜視図である(従来例)。
【図12】金型にてコイル端部を曲げ加工する過程を示す正面図である(従来例)。
【図13】金型にてコイル端部を曲げ加工する過程を示す正面図である(従来例)。
【図14】コイル端部を曲げる前のワークの平面図である(従来例)。
【図15】(a)はコイル端部を曲げた後のワークの側面図、(b)はコイル端部を曲げた後のワークの平面図である(従来例)。
【図16】コイル端部とブラシとの接触状態を示す断面図である(従来例)。
【図17】コイル導体を電機子鉄心に組み立てた時のコイル端部の正面図である(従来例)。
【図18】コイル端部とブラシとの接触状態を示す側面図である(従来例)。
【図19】(a)はワークの曲げ角部の形状を示す側面、(b)はコイル辺に生じる変形を示す側面図である(従来例)。
【符号の説明】
3 電機子鉄心
4 スロット
6 上層コイル導体
6a コイル辺(上層コイル導体)
6b コイル端部(上層コイル導体)
9 ブラシ
10 ワーク
10a ワーク端部
10b ワーク直線部
11 金型
15 クッションブロック(ワーク保持具)
16 輪郭拘束パンチ(端部整形手段)
17 端面拘束パンチ(端部整形手段)
18 据え込みパンチ(折り曲げ部整形手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転電機の電機子鉄心に組み立てられる電機子コイルの製造方法 に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば、特開平8−140324号公報に、回転電機の電機子鉄心に組み立てられる略コの字状のコイル導体を製造する方法が記載されている。なお、コイル導体は、直線状のコイル辺と、このコイル辺の両端から略直角に伸びる一組のコイル端部と、このコイル端部の先端から略直角に曲がってコイル辺と反対側へ突出する一組のコイル突出部とから成り、一組のコイル端部がコイルを中心として互いに反対方向へ所定角度傾斜(ひねり)して設けられている。
上記公報に記載されたコイル導体の製造方法を図11を参照して説明する。
先ず、断面角形の線材を所定長さに切断してワーク100を得る(a)。
続いて、ワーク100の両側をワーク100の幅方向に所定角度曲げる(b)。
続いて、コイル端部となるワーク100の両端部(以下コイル端部101と言う)を厚み方向に潰して幅広形状に整形する(c)。
続いて、金型(図12参照)により、コイル端部101を略直角に曲げ、更にコイル突出部となる先端部102を略直角に曲げて完成する(d)。
【0003】
この金型による直角曲げ工程について説明する。
金型は、図12に示す様に、上型台200に固定されたパンチ210、上型台200に対しスプリング220で予圧されながらパンチ210の内部を上下方向に移動可能に保持されたノックアウト230、及び下型台240に固定されたダイ250等より構成される。
先ず、上記(c)の工程まで終了したワーク100をダイ250の上にセットする。
続いて、上型台200が下降すると、スプリング220にて予圧されたノックアウト230がワーク100のコイル辺103をダイ250の上面に押しつける。
更に上型台200が下降すると、パンチ210の角部211がワーク100を押圧しながら曲げ加工を開始する(図12に示す状態)。
その後、図13に示す様に、上型台200の下面がノックアウト230の上面に当接するまで下降して曲げ加工が完了する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の製造方法では、以下の問題が生じる。
コイル端部101に拡がりや捩じれを生じる。
コイル端部101の輪郭形状が変形してバラツキを生じる。
ワーク100の曲げ角部の外周面がダレてRが大きくなってしまう。
【0005】
以下、上記の各問題点について詳述する。
a)コイル端部101が捩じれる問題。
上記(c)の工程まで終了したワーク100は、図14に示す様に、コイル端部101がコイル辺103に対して最大L1 の偏芯量(ヒネリ)を有している。このワーク100を上記金型にて加工した場合、ダイ250の角部251とワーク100との接触位置はパンチ210が下降しても変わらないが、パンチ210の角部211とワーク100との接触位置は、パンチ210が下降するに連れてワーク100の先端側へ移動する。また、パンチ210の角部211とダイ250の角部251との間には、ワーク100の板厚より少し大きいクリアランスC(図12参照)が曲げ加工上必要となる。これを図14で説明すると、ダイ250の角部251は常時ワーク100のコイル辺103の端部Aに当たっているが、パンチ210の角部は、加工開始時にはコイル端部101の上部位置Bを押圧し、パンチ210の下降に伴って次第にコイル端部101を先端側へ移動し、コイル端部101の下部位置Cを押圧する。
【0006】
このため、パンチ210とダイ250の押圧位置の偏芯量が、最小L0 から最大L1 へと増加して行く。この偏芯量の変動により、パンチ210の角部211による曲げ力がダイ250の角部251付近のワーク100に働かないため、曲げ加工完了時には、図15(a)に示す様な拡がりW0 と、図15(b)に示す様な捩じれW1 とが合成された変形を生じる。
この様に、コイル端部101に拡がりや捩じれが生じると、コイル端部をブラシが摺接する整流子面として使用した場合、図16に示す様に、ブラシ300が片当たりして密着できなくなる。そのため、ブラシ接触面積が不足して電流密度が増加し、ブラシ300及びコイル端部101の温度上昇を招く。その結果、ブラシ300の寿命が低下して回転電機の出力低下を引き起こすことになる。
【0007】
b)コイル端部101の輪郭形状が変形してバラツキを生じる問題。
上記の金型による曲げ加工では、パンチ210の角部211がコイル端部101を押圧しながら下降するため、コイル端部101が先端方向(図13の下方向)へ引っ張られる。これにより、製造後のコイル導体を電機子鉄心に組み立てた場合、例えば、図17に示す様に、本来なら二点鎖線で示す形状に成形されるはずのコイル端部101が、先端方向へ引っ張られることにより、実線で示す形状に変形する可能性があった。
また、前記a)に記載した様に、コイル端部101に捩じれが生じるため、パンチ210の角部211がコイル端部101を押圧しながら下降する際に、パンチ210の押圧力がコイル端部101の表面に均等に加わらず、コイル端部101の縁部を強く押圧する場合が生じる。この場合、押圧されたコイル端部101の縁部が潰されて変形し、図17に示す様に、コイル端部101の幅方向へ突き出ることがある。
これにより、コイル端部101の先端部101aや変形部101bにて隣接する他のコイル端部101と接触するため、電気的に短絡して回転電機の出力低下や作動不良を招くという問題を生じる。
【0008】
c)曲げ角部の外周面がダレてRが大きくなってしまう問題。
コイル辺103に対してコイル端部101を直角に曲げると、コイル辺103とコイル端部101との境となる曲げ角部の外側ではワーク100が引っ張られて伸び変形を生じるため、図18に示す様に、必然的に曲げ角部の外側にワーク100の板厚寸法より曲率半径の大きなダレRが生じる。この場合、コイル端部101の外径側にブラシ300との間で非接触部が生じ、コイル端部101とブラシ300との接触面積が不足する。その結果、前記a)に記載した様に、電流密度が増加してブラシ300及びコイル端部101の温度上昇を招くことにより、ブラシ300の寿命が低下して回転電機の出力低下を引き起こすことになる。
【0009】
なお、曲げ角部外側のダレRが大きくても、ブラシ300とコイル端部101との接触面積を確保する手段として、▲1▼ブラシ300を内周側へ移動させる、▲2▼曲げ角部を電機子の外周側へ伸ばす等の方法が考えられる。
しかし、▲1▼の方法では、図17に示した様に、コイル端部101の周方向幅が外周側より内周側の方が狭くなっているため、1個当たりのコイル端部101とブラシ300との接触面積が減少する。その結果、電流密度の増加による性能低下となる。
また、▲2▼の方法では、電機子外径が大きくなるため、必然的に回転電機の全体寸法が大きくなり、且つ重量も増加するという不具合を生じる。
【0010】
また、曲げ角部外側のダレRを小さくする方法として、特願平7−326983号公報に記載された従来技術がある。
この方法は、コイル端部101を直角に曲げ加工した後、図19(a)に示す様に、コイル端部101をコイル辺103の中心方向(矢印方向)へ向かって押圧する工程(圧縮据え込み工程)を追加するものであり、これにより、図19(a)の二点鎖線で示す様に、曲げ角部外側のダレを小さくすることができる。
しかし、上記の方法では、コイル端部101をコイル辺103の中心方向へ押圧することから、コイル辺103に大きな圧縮力が加わるため、図19(b) に示す様に、コイル辺103の途中にワーク100の一部が押し出されて膨らみ変形103aを生じる。この膨らみ変形103aにより、コイル辺103と電機子鉄心のスロット内壁面との間に介在される絶縁材が破れてアース不良を生じる可能性があった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、電機子鉄心に組み立てられるコイル導体を最適な形状に整形できるコイル導体の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、コイル辺に相当するワーク直線部とコイル端部に相当する一対のワーク端部とを有するワークを製作した後、ワーク保持具にてワークの直線部を保持し、ワーク端部の4面を拘束して塑性加工することにより、ワーク端部の輪郭を所望のコイル端部形状に整形する。続いて、ワーク端部の4面を拘束した状態で、ワーク直線部とワーク端部との折り曲げ部をワーク直線部側からワーク端部側へ圧縮据え込み加工することにより、折り曲げ部を所望の直角曲げ部形状に整形することができる。なお、ワーク端部の4面とは、周方向の2面と軸方向の2面である。
この製造方法によれば、ワーク直線部に対してワーク端部を略直角に折り曲げた後に、そのワーク端部に生じる捩じれや輪郭形状の変形、及びワーク直線部に対する曲げ不足等は、端部整形手段にてワーク端部の4面を拘束して塑性加工することにより、全て解消できる。
また、ワーク直線部とワーク端部との折り曲げ部外側に生じるダレは、圧縮据え込み加工により、ワーク端部の据え込み代の肉をダレ部に充填することでダレを解消することができる。特に、この圧縮据え込み加工では、ワーク直線部とワーク端部との折り曲げ部をワーク直線部側からワーク端部側へ押圧するため、従来の様にワーク直線部(コイル辺)に膨らみ変形が生じる恐れはない。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1(a)は金型の正面図、(b)は金型の側面図である。
本実施例の電機子1は、例えばスタータモータに用いるもので、図7に示す様に、回転軸2、電機子鉄心3、電機子コイル(後述する)等より構成される。
電機子鉄心3は、複数枚の円盤状コアシートを積層して構成され、回転軸2の外周に嵌合して回転軸2と一体に回転可能に設けられている。電機子鉄心3の外周部には、所定数(例えば25個)のスロット4(図9参照)がそれぞれ軸方向に沿って凹設され、各スロット4が電機子鉄心3の周方向に等ピッチに設けられている。
【0013】
電機子コイルは、それぞれスロット4の数と同数の下層コイル導体5と上層コイル導体6から成る。その下層コイル導体5と上層コイル導体6は、電気抵抗の低い純銅または純アルミニウムを材料として、それぞれ以下に述べる所定の形状に整形されている。
下層コイル導体5は、図8に示す様に、直線状のコイル辺5aと、このコイル辺5aの両端からコイル辺5aに対して略直角に伸びる一組のコイル端部5bと、各コイル端部5bの先端から略直角にコイル辺5aと反対側へ伸びる一組のコイル突出部5cとから成り、コイル辺5aが下層側スロット絶縁紙7を介してスロット4内に挿入されている(図9参照)。
【0014】
上層コイル導体6は、直線状のコイル辺6aと、このコイル辺6aの両端からコイル辺6aに対して略直角に伸びる一組のコイル端部6bと、各コイル端部6bの先端から略直角にコイル辺6aと反対側へ伸びる一組のコイル突出部6cとから成り、コイル辺6aが上層側スロット絶縁紙8を介してスロット4内の下層コイル辺5aの外側に挿入されている(図9参照)。なお、上層コイル導体6の全体形状は、図8に示した下層コイル導体5と略同じであるが、一方のコイル端部6bは、その端面上をブラシ9(図7参照)が摺動する整流子辺として形成されている。
【0015】
ここで、上層コイル導体6の製造方法について図5を参照して説明する。
先ず、断面角形の線材を所定長さに切断してコイル素材10(以下ワーク10と言う)を得る(a)。但し、ここでは、後述の圧縮据え込み工程の据え込み代L3 (図6参照)の2倍だけ従来寸法より長く切断する。
続いて、切断されたワーク10の両端側をワーク10の幅方向に、且つ互いに反対方向へ所定角度曲げる(b)。
続いて、コイル端部6bとなるワーク10の両端部(以下ワーク端部10aと呼ぶ)を厚み方向に潰して幅広形状に整形する(c)。この時、ワーク端部10aは、ワーク10の直線部10b側では幅広く、先端に向かって次第に細くなる先細り形状に押し潰す。
続いて、コイル辺6aとなるワーク直線部10bに対してワーク端部10aを略直角に折り曲げる(d)。但し、ここでは、ワーク端部10aに上記の据え込み代L3 が含まれている。つまり、折り曲げ部よりワーク端部10a側に据え込み代L3 が含まれている。従って、ワーク直線部10bの長さは従来と同じである。
最後に、下述の金型11(図1〜4参照)によりワーク10を所定の形状に整形する(e)。
【0016】
次に、本発明の特徴である金型11の構造と、この金型11によるワーク10の整形工程について説明する。
(金型11の構造)
金型11は、図1に示す様に、固定された下型台12と、上下にスライド可能に設けられた上型台13とを備え、下型台12には、クッションリテーナ14、クッションブロック15、輪郭拘束パンチ16、端面拘束パンチ17等が設けられ、上型台13には、据え込みパンチ18、輪郭拘束パンチスライドカム19、及び端面拘束パンチスライドカム20等が設けられている。
【0017】
クッションリテーナ14は、下型台12に固定され、その上端面にはクッションブロック15の移動をガイドするガイド溝14aと、端面拘束パンチ17の移動をガイドするガイド溝14bとが設けられている。
クッションブロック15は、ワーク10を保持するもので、クッションリテーナ14に対してスプリング21により予圧されながらクッションリテーナ14のガイド溝14aに沿って上下方向に移動可能に設けられている。なお、クッションブロック15の上端面には、ワーク直線部10bを保持する溝15aが形成されている。
一組の輪郭拘束パンチ16は、ワーク端部10aを図1(b)の両側から押圧してワーク端部10aの側面を拘束するもので、スプリング22に予圧されながら下型台12上を前後方向(図1(b)の左右方向)に移動可能に保持されている。各輪郭拘束パンチ16には、完成品となるコイル端部6bの側面形状に沿った拘束面16a、16bが形成されており、両パンチ16の拘束面16a、16bによって所望の輪郭形状が形成される。なお、輪郭拘束パンチ16の前後方向外側への移動は、下型台12上に固定された一組のストッパ23に当接して規制され、前後方向内側への移動は、互いの端面同士が当接して規制される(図3(b)参照)。
【0018】
一組の端面拘束パンチ17は、クッションブロック15の側面15bに対しワーク端部10aを板厚方向に押圧してワーク端部10aの端面を拘束するもので、スプリング24に予圧されながらクッションリテーナ14のガイド溝14bに沿って左右方向(図1(a)の左右方向)に移動可能に保持されている。
据え込みパンチ18は、ワーク端部10aの4面が拘束された状態で、クッションブロック15に保持されたワーク直線部10bを下方へ押圧するもので、上型台13に固定されている。この据え込みパンチ18の下面には、ワーク直線部10bの外周面(クッションブロック15の溝から出ている部分)を拘束する拘束溝18aが形成されている。なお、ワーク端部10aの4面とは、一組の輪郭拘束パンチ16によって拘束される周方向の2面と一組の端面拘束パンチ17によって拘束される軸方向(板厚方向)の2面である。
輪郭拘束パンチスライドカム19は、上型台13の前後両側に固定され、上型台13の下降に伴って輪郭拘束パンチ16を内側へ押圧する。
端面拘束パンチスライドカム20は、上型台13の左右両側に固定され、上型台13の下降に伴って端面拘束パンチ17を内側へ押圧する。
【0019】
(金型11による整形工程)
まず、予め図5(d)の形状まで加工されたワーク10の直線部10bをクッションブロック15の上端面に形成された溝15aに挿入してセットする(図1に示す状態)。この時、ワーク端部10aは、図5(d)に示す直角曲げ加工時に生じた捩じれ、輪郭の変形、及び曲がり不足等により、クッションブロック15の側面15bに密着することなく、図1(a)に示す様に、少し離れた状態となっている。
次に、上型台13が下降すると、上型台13に固定された端面拘束パンチスライドカム20が下降して、端面拘束パンチスライドカム20の先端傾斜面が端面拘束パンチ17の傾斜面に当接し、そのまま両傾斜面が滑りながら移動することにより、端面拘束パンチ17が内側へ押し出される(図2(a)参照)。これにより、押し出された端面拘束パンチ17がワーク端部10aを押圧してクッションブロック15の側面15bとの間に強圧することにより、ワーク端部10aの捩じれ、及び直角曲げ不足が修正される。
【0020】
更に上型台13が下降すると、図2(b)に示す様に輪郭拘束パンチスライドカム19の先端傾斜面が輪郭拘束パンチ16の傾斜面に当接し、そのまま両傾斜面が滑りながら移動することにより、輪郭拘束パンチ16が内側へ押し出される。これにより、押し出された輪郭拘束パンチ16がワーク端部10aの両側面を強圧しながら、互いの端面同士が密着するまで前進することにより、ワーク端部10aの直角曲げ加工時に生じたワーク端部10aの輪郭の変形が矯正される。
【0021】
続いて、圧縮据え込み加工を行う。具体的には、図3に示す様に、輪郭拘束パンチ16と端面拘束パンチ17とクッションブロック15とでワーク端部10aの4面が拘束された状態で、更に上型台13が下降すると、据え込みパンチ18がワーク直線部10bの上面と密着しながら、スプリング21で予圧されたクッションブロック15を、クッションブロック15の下面がクッションリテーナ14のガイド溝14a底面に当接するまで押し下げる(図4参照)。これにより、ワーク直線部10bがクッションブロック15と据え込みパンチ18により拘束され、且つワーク端部10aは既に4面が拘束されているため、ワーク端部10aに含まれている据え込み代L3 の肉は、ワーク10の曲げ角部に移動する。
その後、上型台13を上方へ移動させて金型11から整形されたワーク10、即ち上層コイル導体6を取り出して完了する。
【0022】
(本実施例の効果)
本実施例によれば、ワーク直線部10bがクッションブロック15の溝15aに保持された状態でワーク端部10aの4面を拘束することにより、ワーク端部10aを折り曲げた後に生じる捩じれや輪郭形状の変形が矯正され、所望のコイル端部6b形状を得ることができる。
また、ワーク端部10aの4面が拘束された状態で圧縮据え込み加工を行うと、ワーク直線部10bがクッションブロック15と据え込みパンチ18により拘束されるため、ワーク端部10aに含まれている据え込み代に相当する肉が、図6に示す様に、ワーク10の曲げ角部へ移動して曲げ角部のダレを小さくすることができる。更に、この場合、ワーク端部10aの捩じれ矯正、及び輪郭矯正後にワーク10内部に残る不均一な残留歪みが均一な圧縮歪みに改善されるため、形状のバラツキを防止できる。
【0023】
また、本実施例では、ワーク端部10aとワーク直線部10bの両方を略全拘束した状態で圧縮据え込み加工を行うため、加工後のワーク端部10aに対するワーク直線部10bの変形を防止できる。これにより、従来の圧縮据え込み加工(ワーク端部10aをワーク直線部10bの中心方向へ向かって押圧する/図19参照)の場合に生じるコイル辺6aの膨らみ変形を防止できる。
【0024】
(変形例)
本実施例では、上層コイル導体6の製造方法について説明したが、下層コイル導体5も同様の方法で製造することができる。
ワーク10を整形する際の金型11動作の順序に関して、本実施例では、端面拘束パンチ17によりワーク端部10aの表面を拘束してから、輪郭拘束パンチ16によりワーク端部10aの側面を拘束する順序で行っているが、両工程を略同時に行っても良いし、逆に輪郭拘束パンチ16によりワーク端部10aの側面を拘束してから、端面拘束パンチ17によりワーク端部10aの表面を拘束する順序で行っても良い。
本実施例では、図5に示した様に、線材を所定長さに切断したワーク10を使用しているが、図10に示す様に、板材から加工したワーク10を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はワークを金型にセットした状態を示す正面図、(b)は側面図である。
【図2】(a)はワーク端部の端面を拘束した状態を示す正面図、(b)は側面図である。
【図3】(a)はワーク端部の側面を拘束した状態を示す正面図、(b)は側面図である。
【図4】(a)は圧縮据え込み工程を示す正面図、(b)は側面図である。
【図5】上層コイル導体の製造過程を示す斜視図である。
【図6】圧縮据え込み工程の作用を示すワーク曲げ角部の側面図である。
【図7】電機子の半断面図である。
【図8】(a)は下層コイル導体の側面図、(b)は(a)のA視図、(c)は(a)のB視図である。
【図9】下層コイル辺と上層コイル辺がスロット内に挿入されている状態を示す断面図である。
【図10】上層コイル導体の製造過程を示す斜視図である(変形例)。
【図11】コイル導体の製造過程を示す斜視図である(従来例)。
【図12】金型にてコイル端部を曲げ加工する過程を示す正面図である(従来例)。
【図13】金型にてコイル端部を曲げ加工する過程を示す正面図である(従来例)。
【図14】コイル端部を曲げる前のワークの平面図である(従来例)。
【図15】(a)はコイル端部を曲げた後のワークの側面図、(b)はコイル端部を曲げた後のワークの平面図である(従来例)。
【図16】コイル端部とブラシとの接触状態を示す断面図である(従来例)。
【図17】コイル導体を電機子鉄心に組み立てた時のコイル端部の正面図である(従来例)。
【図18】コイル端部とブラシとの接触状態を示す側面図である(従来例)。
【図19】(a)はワークの曲げ角部の形状を示す側面、(b)はコイル辺に生じる変形を示す側面図である(従来例)。
【符号の説明】
3 電機子鉄心
4 スロット
6 上層コイル導体
6a コイル辺(上層コイル導体)
6b コイル端部(上層コイル導体)
9 ブラシ
10 ワーク
10a ワーク端部
10b ワーク直線部
11 金型
15 クッションブロック(ワーク保持具)
16 輪郭拘束パンチ(端部整形手段)
17 端面拘束パンチ(端部整形手段)
18 据え込みパンチ(折り曲げ部整形手段)
Claims (3)
- 直線状のコイル辺と、このコイル辺の両端より略直角に折り曲げられた一対のコイル端部とを有し、この一対のコイル端部が前記コイル辺を中心として互いに反対側へ所定角度傾斜して設けられたもので、前記コイル辺が電機子鉄心のスロット内に挿入されて前記電機子鉄心に組み立てられ、且つ前記一対のコイル端部のうち一方がブラシと当接する整流子面を形成するコイル導体の製造方法であって、
前記コイル辺に相当するワーク直線部と、このワーク直線部の両端より略直角に折り曲げられて前記コイル端部に相当する一対のワーク端部とを有するワークを製作した後、
このワークを前記ワーク直線部にて保持し、前記ワーク端部の4面を拘束して塑性加工することにより、前記ワーク端部の輪郭を所望のコイル端部形状に整形し、且つ前記ワーク端部の4面を拘束した状態で、前記ワーク直線部と前記ワーク端部との折り曲げ部を前記ワーク直線部側から前記ワーク端部側へ圧縮据え込み加工することにより、前記折り曲げ部を所望の直角曲げ部形状に整形することを特徴とするコイル導体の製造方法。 - 前記ワーク端部の長さは、前記圧縮据え込み加工によって圧縮される据え込み代だけ、予め前記コイル端部の長さより長く設けられていることを特徴とする請求項1に記載したコイル導体の製造方法。
- 請求項1または2に記載した製造方法に用いる金型であって、
前記ワークを前記ワーク直線部にて保持するワーク保持具と、
前記ワーク端部の4面を拘束して塑性加工する端部整形手段と、
この端部整形手段により前記ワーク端部の4面を拘束した状態で、前記ワーク直線部と前記ワーク端部との折り曲げ部を前記ワーク直線部側から前記ワーク端部側へ圧縮据え込み加工する折り曲げ部整形手段と
を具備していることを特徴とする金型。
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