JP3685595B2 - 絶縁樹脂皮膜で被覆しているコイン型電池とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の表面を薄い膜状の絶縁樹脂皮膜で被覆している電池と、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電池が多く使用される用途、すなわち、携帯用の電気機器は、外形を小さくすることが大切である。このため、小さい部品を、高い密度で互いに接近して配設している。接近する部品を絶縁するために、表面の全体をプラスチック皮膜で被覆しているコイン型電池が開発されている。この構造のコイン型電池は、隣接する部品に短絡することがなく、また、プリント基板の導電部分に接触して短絡することもない。コイン型電池の表面を被覆する方法として、熱収縮性のPVCチューブで被覆する方法と、未硬化の絶縁性の樹脂を塗布して硬化させる方法とがある。
【0003】
熱収縮性のPVCチューブで絶縁する方法は、コイン型電池をプリント基板に半田付けする時に、溶融された半田でチューブが溶けて、短絡する恐れがある。また、非常に小さいコイン型電池は、チユーブに入れて被覆するのが非常に難しくなる。
【0004】
絶縁樹脂皮膜で被覆している電池は、このような欠点がない。コイン型電池を未硬化の絶縁樹脂に浸漬して表面を絶縁樹脂皮膜でコーティングした樹脂ディップ外装電池は、下記の公報に記載される。
(1) 特開平4−248249号公報
(2) 特開平5−190159号公報
(3) 特開平7−037573号公報
【0005】
(1)の公報には、コイン型電池を未硬化で液状の絶縁樹脂に浸漬して、電気接続部分を除く表面全体を絶縁樹脂皮膜でコーティングする技術が記載される。絶縁樹脂皮膜として、常温硬化型、熱硬化型、あるいは紫外線硬化型のエポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が使用できることを記載している。
【0006】
(2)の公報には、コイン型電池の表面全体に均一に絶縁樹脂皮膜を設ける技術が記載される。この公報に記載される方法は、有機溶媒で希釈した樹脂液であって、粘度を10〜1000cpとするシリコン樹脂にコイン型電池を浸漬して、表面に絶縁樹脂皮膜を形成する。
【0007】
さらに、(3)の公報には、有機溶媒で希釈して、粘度を10〜1000cpに調整した紫外線硬化型樹脂にコイン型電池を浸漬して、表面に絶縁樹脂皮膜を形成する技術が記載される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
これ等の公報に記載される樹脂ディップ外装電池の製造方法は、常温硬化型の樹脂、熱硬化型の樹脂、あるいは、紫外線硬化型の樹脂を使用して、コイン型電池の表面を絶縁樹脂皮膜でコーティングしている。常温硬化型の樹脂は、経時的に硬化を開始するので能率よく使用するのが難しい。それは、コイン型電池に塗布するまでの時間に制約を受けるからである。熱硬化型の樹脂は、コイン型電池の表面に塗布した後に、加熱して硬化できるので、コイン型電池に塗布するまでに時間的な制約がない。このため、能率よく樹脂ディップ外装電池を多量生産できる特長がある。ただ、熱硬化型の樹脂を硬化させるために、コイン型電池を加熱する必要があるので、この加熱工程で電池性能を低下させることがある。(3)の公報に記載される紫外線硬化型の樹脂は、このような欠点がない。紫外線を照射すると、極めて短時間で硬化するからである。したがって、紫外線硬化型の樹脂は、熱硬化型の樹脂や常温硬化型の樹脂に比較すると、より理想に近い状態で電池ケースをコーティングできる特長がある。
【0009】
しかしながら、実際に紫外線硬化型の樹脂を使用して電池ケースをコーティングすると、必ずしも理想的な状態では絶縁樹脂皮膜を形成できない。とくに、端子を固定したコイン型電池は、塗布された絶縁樹脂皮膜を完全に硬化させることが難しく、紫外線を照射して紫外線硬化型の樹脂を硬化させた後に、液垂れ等の弊害が発生する。液垂れは、コイン型電池の表面全体に塗布された紫外線硬化型樹脂の全体に、紫外線を照射できないことが原因で発生する。とくに、端子を固定しているコイン型電池は、端子の影になる、端子と電池ケースとの狭い空隙に、紫外線を確実に照射するのが極めて難しく、この部分の樹脂を完全に硬化させるのが難しい。さらに、極めて小さいコイン型電池になると、端子と電池ケースとの隙間も極めて狭く、この微細な隙間に紫外線を確実に照射するのが難しく、液垂れの原因となっている。
【0010】
本発明は、さらにこのような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、紫外線と嫌気触媒の両方で、塗布した紫外線硬化型樹脂を硬化して、電池ケースの表面に塗布された紫外線硬化型樹脂を残らず均一に硬化して、液垂れを有効に阻止できる絶縁樹脂皮膜で被覆しているコイン型電池とその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1のコイン型電池は、コイン型の電池ケースに端子を固定している。コイン型電池は、端子の電気接続部分を除くほぼ全体に、未硬化状態の紫外線硬化型樹脂が塗布され、この紫外線硬化型樹脂は紫外線で硬化されている。さらに、紫外線硬化型の絶縁樹脂皮膜1は嫌気触媒を含み、嫌気触媒によって、紫外線と嫌気触媒の両方で硬化されている。
【0012】
さらに、本発明のコイン型電池の製造方法は、端子を固定している電池ケースに、端子の電気接続部分を除くほぼ全体に、未硬化状態にある紫外線硬化型の絶縁樹脂を塗布し、その後に、紫外線を照射して絶縁樹脂を硬化させる方法を改良したものである。本発明のコイン型電池の製造方法は、未硬化状態の紫外線硬化型の樹脂に、嫌気触媒を添加して電池の表面に塗布する。その後、紫外線を照射して絶縁樹脂皮膜1を硬化させると共に、嫌気触媒で絶縁樹脂皮膜1を硬化させる。
【0013】
【0014】
【作用】
本発明のコイン型電池は、表面に塗布した紫外線硬化型樹脂を紫外線で硬化させ、さらに、嫌気触媒でもって硬化させる。紫外線に照射される部分に塗布された紫外線硬化型樹脂は、紫外線で硬化される。紫外線を照射するのが極めて難しい部分、すなわち、端子と電池ケースとの狭い隙間に侵入した紫外線硬化型樹脂は、嫌気触媒で硬化される。紫外線を照射して、紫外線硬化型樹脂の表面を硬化させると、紫外線の照射され難い部分にある樹脂は、硬化した紫外線硬化型樹脂で覆われて、空気から遮断される。このため、紫外線硬化型樹脂を紫外線で硬化させると、その後は嫌気触媒が有効に作用して、紫外線の照射されない部分の樹脂を速やかに硬化させる。このため、本発明のコイン型電池は、紫外線硬化型樹脂を使用して能率よく表面をコーティングできると共に、紫外線硬化型樹脂の全体を均一に硬化できて、液垂れを有効に防止できる特長がある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのコイン型電池とその製造方法を例示するものであって、本発明はコイン型電池とその製造方法を下記のものに特定しない。
【0016】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0017】
図1は、絶縁樹脂皮膜1でコーティングされた端子付コイン型リチウム電池を示す。図2は、図1のコイン型電池の正面図、図3は図2に示すコイン型電池の要部拡大断面図である。これ等の図に示すコイン型電池は、正極缶2と負極缶3に、それぞれ金属板を裁断した正極端子4と負極端子5をスポット溶接して固定している。図2に示すコイン型電池は、正極端子4を下方に折曲すると共に、負極端子5と同一平面となる位置でさらに折曲して、正極端子4と負極端子5とを同一平面に位置させている。同一平面に位置する正極端子4と負極端子5は、図1に示すように、左右に離されて接触しないように位置させている。正極端子4と負極端子5は、その先端部分を、プリント基板に半田付けして接続する電気接続部分としている。電気接続部分は、予備半田して表面をコーティングしている。
【0018】
これ等の図に示すコイン型電池は、正極端子4と負極端子5の電気接続部分を除く全ての表面を、絶縁樹脂皮膜1でコーティングしている。絶縁樹脂皮膜1は紫外線硬化型樹脂で、この紫外線硬化型樹脂は、紫外線を照射すると硬化する。さらに、紫外線硬化型樹脂である絶縁樹脂皮膜1は、塗布される状態で嫌気触媒を含んでおり、嫌気触媒によっても硬化される。
【0019】
この構造のコイン型電池は下記の工程で製造される。
(1) コイン型電池に正極端子4と負極端子5とをスポット溶接して固定する。正極端子4と負極端子5は、先端の電気接続部分となる部分を、予備半田でコーティングしており、正極端子4は所定の位置で折曲加工されている。
【0020】
(2) 正極端子4と負極端子5の電気接続部分をチャッキングして、コイン型電池の他の全ての部分を、未硬化で液状の紫外線硬化型樹脂液に浸漬して引き上げて、紫外線硬化型樹脂でコーティングする。コイン型電池を浸漬する未硬化の紫外線硬化型樹脂は、嫌気触媒を添加して混練りしている。
【0021】
紫外線硬化型樹脂は、未硬化のときに液状で、紫外線を照射すると硬化する全ての樹脂を使用できる。紫外線硬化型樹脂には、たとえば株式会社スリーボンド社のTB3068Bを使用する。嫌気触媒には、紫外線硬化型樹脂に添加されて、この樹脂を嫌気状態として硬化できる全ての触媒が使用できる。紫外線硬化型樹脂に前述の樹脂を使用する場合、嫌気触媒には、たとえば、株式会社スリーボンド社のレドックス触媒を使用する。
【0022】
紫外線硬化型樹脂に混合される嫌気触媒の添加量は、好ましくは0.5〜4重量%とする。嫌気触媒の添加量が少ないと、紫外線照射した後に、紫外線の照射されない部分を速やかに硬化できず、また、反対に添加量が多すぎると、コイン型電池に塗布する前にゲル化して塗布できなくなるからである。
【0023】
図4は、嫌気触媒の添加量に対する、ゲル化時間(曲線A)と、液垂れの発生率(曲線B)を示している。この図において、ゲル化時間は、嫌気触媒を添加した紫外線硬化型樹脂を常温で保存して、ゲル化が開始する時間を示している。ただし、ゲル化時間は、嫌気触媒を添加しない紫外線硬化型樹脂がゲル化を開始する時間を100として表示している。
【0024】
液垂れの発生率は、コイン型電池を嫌気触媒を添加している紫外線硬化型樹脂に浸漬し、表面に紫外線硬化型樹脂を塗布した後、その上下と周囲から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させた後、10分経過後に液垂れが発生するコイン型電池の個数をカウントして、その割合を測定した。
【0025】
この図から明らかなように、嫌気触媒の添加量を0.5重量%よりも少なくすると、液垂れの発生率が急激に増加する。嫌気触媒の添加量を0.5重量%とすると、液垂れの発生率は10%以下に極減される。このように、わずかの嫌気触媒を添加して液垂れを極減できるのは、嫌気触媒によって、紫外線で硬化されない紫外線硬化型樹脂が硬化されるからである。
【0026】
嫌気触媒の添加量を4重量%よりも多くすると、紫外線硬化型樹脂がゲル化する時間が次第に短くなって作業性が悪くなる。このため、嫌気触媒の添加量は、液垂れを有効に阻止して、ゲル化を速くしないように、好ましくは0.5〜4重量%に調整する。最適には、1〜4重量%に設定する。
【0027】
(3) 紫外線硬化型樹脂でコーティングしたコイン型電池に、図2の矢印で示すように、上下と周囲から紫外線を照射して、紫外線硬化型樹脂を硬化させる。紫外線硬化型樹脂が硬化した後、添加された嫌気触媒が、紫外線の照射されない未硬化部分を硬化させる。
【0028】
【発明の効果】
本発明のコイン型電池は、照射される紫外線と添加された嫌気触媒の両方で硬化させた、紫外線硬化型樹脂の絶縁樹脂皮膜で、電気接続部分を除く部分をコーティングしている。紫外線と嫌気触媒の両方で硬化される紫外線硬化型樹脂は、紫外線を照射した後、全体を速やかに硬化できる。それは、紫外線を照射して、紫外線の照射されるほとんどの部分を短時間で硬化させた後、嫌気触媒の働きで、端子の影になって紫外線が照射されなかった部分を速やかに硬化させるからである。
【0029】
とくに、本発明のコイン型電池とその製造方法に使用される、紫外線と嫌気触媒の両方で硬化される紫外線硬化型樹脂の絶縁樹脂皮膜は、紫外線を照射すると極めて短時間に硬化するが、紫外線を照射するまでは硬化しない。このため、未硬化の紫外線硬化型樹脂が、コイン型電池に塗布する前に硬化するのを防止して、能率よくコイン型電池に塗布できる。さらに、コイン型電池に塗布されて、紫外線で硬化された紫外線硬化型樹脂は、硬化部分が紫外線の照射されない未硬化部分を被覆して、嫌気状態として嫌気触媒で速やかに硬化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の絶縁樹脂皮膜で被覆しているコイン型電池の平面図
【図2】 図1に示すコイン型電池の一部断面側面図
【図3】 図2に示すコイン電池の要部拡大断面図
【図4】 嫌気触媒の添加量に対するゲル化時間と液垂れ発生率の関係を示すグラフ
【符号の説明】
1…絶縁樹脂皮膜
2…正極缶
3…負極缶
4…正極端子
5…負極端子
Claims (3)
- 電池ケースに端子が固定されると共に、端子の電気接続部分を除くほぼ全体に、未硬化状態の紫外線硬化型樹脂が塗布され、この紫外線硬化型樹脂を紫外線で硬化させてなるコイン型電池において、
紫外線硬化型の絶縁樹脂皮膜(1)が嫌気触媒を含み、紫外線と嫌気触媒の両方で硬化されてなることを特徴とする表面を絶縁樹脂皮膜で被覆しているコイン型電池。 - 電池がリチウム電池である請求項1に記載される絶縁樹脂皮膜で被覆しているコイン型電池。
- 電池ケースに固定された端子の電気接続部分を除くほぼ全体に、未硬化状態にある紫外線硬化型の絶縁樹脂を塗布した後、紫外線を照射して絶縁樹脂を硬化させる絶縁樹脂皮膜(1)で被覆している電池の製造方法において、
未硬化状態の紫外線硬化型の絶縁樹脂に、嫌気触媒を添加して電池の表面に塗布し、紫外線を照射して絶縁樹脂皮膜(1)を硬化させると共に、嫌気触媒で絶縁樹脂皮膜(1)を硬化させることを特徴とする絶縁樹脂皮膜で被覆している電池の製造方法。
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- 1997-07-01 JP JP17585597A patent/JP3685595B2/ja not_active Expired - Fee Related
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